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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170157
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】樹脂複合材及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241129BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20241129BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241129BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087162
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坪井 優之介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 訓之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL031
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】重量のばらつきの小さい成形品が得られる樹脂複合材と、重量ばらつきの小さい成形品を提供する。
【解決手段】樹脂複合材であって、前記樹脂複合材は、熱可塑性樹脂(a1)及び繊維状充填材(a2)を含む柱状ペレット(A)と、熱可塑性樹脂(b1)を含む柱状ペレット(B)とを含有し、前記柱状ペレット(A)及び(B)は、三角形断面柱及び四角形断面柱以外の柱状形状を有しており、下記式(I)~(V)を全て満たす、樹脂複合材。
0≦|SG-SG|≦0.50 ・・・(I)
1.0≦F/F≦4.0 ・・・(II)
0.8≦L/L≦1.5 ・・・(III)
0.6≦LD/LD≦1.2 ・・・(IV)
0.6≦SD/SD≦1.2 ・・・(V)
式(I)~(V)において、SGはペレットの比重、Lはペレット長、LD及びSDはペレット断面の長径及び短径、Fは樹脂複合材中の各ペレットの割合を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂複合材であって、
前記樹脂複合材は、
熱可塑性樹脂(a1)及び繊維状充填材(a2)を含む柱状ペレット(A)と、
熱可塑性樹脂(b1)を含む柱状ペレット(B)とを含有し、
前記柱状ペレット(A)及び(B)は、三角形断面柱及び四角形断面柱以外の柱状形状を有しており、
下記式(I)~(V)を全て満たす、樹脂複合材。
0≦|SG-SG|≦0.50 ・・・(I)
1.0≦F/F≦4.0 ・・・(II)
0.8≦L/L≦1.5 ・・・(III)
0.6≦LD/LD≦1.2 ・・・(IV)
0.6≦SD/SD≦1.2 ・・・(V)
(式(I)において、SGは前記柱状ペレット(A)の比重を表し、SGは前記柱状ペレット(B)の比重を表す。
式(II)において、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(A)の割合(質量%)を表し、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(B)の割合(質量%)を表す。
式(III)において、Lは前記柱状ペレット(A)の長さ(mm)を表し、Lは前記柱状ペレット(B)の長さ(mm)を表す。
式(IV)において、LDは前記柱状ペレット(A)の断面における長径(mm)を表し、LDは前記柱状ペレット(B)の断面における長径(mm)を表す。
式(V)において、SDは前記柱状ペレット(A)の断面における短径(mm)を表し、SDは前記柱状ペレット(B)の断面における短径(mm)を表す。)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、及び液晶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の樹脂複合材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、ポリアミド6樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド1010樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタールコポリマー、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、及び液晶性ポリエステルアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂である、請求項1または2に記載の樹脂複合材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、同じ熱可塑性樹脂である、請求項1または2に記載の樹脂複合材。
【請求項5】
さらに下記式(VI)を満たす、請求項1または2に記載の樹脂複合材。
50≦(F+F) ・・・(VI)
【請求項6】
前記樹脂複合材に含まれる、前記繊維状充填材(a2)を含む充填材の合計量が、前記樹脂複合材の総質量に対して5質量%以上である、請求項1または2に記載の樹脂複合材。
【請求項7】
請求項1または2に記載の樹脂複合材の、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合材及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、繊維含有熱可塑性樹脂のペレットと、熱可塑性樹脂含有ペレットとを混合した樹脂複合材を用いて、繊維含有量を調整した成形品を得る方法が知られている。例えば、特許文献1には、繊維含有率の異なる2種類の繊維含有樹脂ペレットを混合した混合原料において、混合原料の平均繊維含有率、2種類のペレットのペレット長を一定の範囲に制御することを特徴とする、ペレットの混合物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-23745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2種類以上のペレットを含む樹脂複合材は、得られる成形品の重量がばらつくことがある。そこで本開示は、重量のばらつきの小さい成形品が得られる樹脂複合材と、重量ばらつきの小さい成形品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様を有する。
[1]樹脂複合材であって、
前記樹脂複合材は、
熱可塑性樹脂(a1)及び繊維状充填材(a2)を含む柱状ペレット(A)と、
熱可塑性樹脂(b1)を含む柱状ペレット(B)とを含有し、
前記柱状ペレット(A)及び(B)は、三角形断面柱及び四角形断面柱以外の柱状形状を有しており、
下記式(I)~(V)を全て満たす、樹脂複合材。
0≦|SG-SG|≦0.50 ・・・(I)
1.0≦F/F≦4.0 ・・・(II)
0.8≦L/L≦1.5 ・・・(III)
0.6≦LD/LD≦1.2 ・・・(IV)
0.6≦SD/SD≦1.2 ・・・(V)
(式(I)において、SGは前記柱状ペレット(A)の比重を表し、SGは前記柱状ペレット(B)の比重を表す。
式(II)において、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(A)の割合(質量%)を表し、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(B)の割合(質量%)を表す。
式(III)において、Lは前記柱状ペレット(A)の長さ(mm)を表し、Lは前記柱状ペレット(B)の長さ(mm)を表す。
式(IV)において、LDは前記柱状ペレット(A)の断面における長径(mm)を表し、LDは前記柱状ペレット(B)の断面における長径(mm)を表す。
式(V)において、SDは前記柱状ペレット(A)の断面における短径(mm)を表し、SDは前記柱状ペレット(B)の断面における短径(mm)を表す。)
[2]前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、及び液晶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂である、[1]に記載の樹脂複合材。
[3]前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、ポリアミド6樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド1010樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタールコポリマー、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、及び液晶性ポリエステルアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂である、[1]または[2]に記載の樹脂複合材。
[4]前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、同じ熱可塑性樹脂である、[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂複合材。
[5]さらに下記式(VI)を満たす、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂複合材。
50≦(F+F) ・・・(VI)
[6]前記樹脂複合材に含まれる、前記繊維状充填材(a2)を含む充填材の合計量が、前記樹脂複合材の総質量に対して5質量%以上である、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂複合材。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の樹脂複合材の、成形品。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、重量のばらつきの小さい成形品が得られる樹脂複合材と、重量ばらつきの小さい成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明するが、本開示の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。また、本開示に記載されている数値範囲の下限値及び/又は上限値は、その数値範囲内の数値であって、実施例で示されている数値に置き換えてもよい。数値範囲を示す「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0008】
[樹脂複合材]
本実施形態は、樹脂複合材であって、前記樹脂複合材は、熱可塑性樹脂(a1)及び繊維状充填材(a2)を含む柱状ペレット(A)と、熱可塑性樹脂(b1)を含む柱状ペレット(B)とを含有し、前記柱状ペレット(A)及び(B)は、三角形断面柱及び四角形断面柱以外の柱状形状を有しており、下記式(I)~(V)を全て満たす、樹脂複合材に関する。
0≦|SG-SG|≦0.50 ・・・(I)
1.0≦F/F≦4.0 ・・・(II)
0.8≦L/L≦1.5 ・・・(III)
0.6≦LD/LD≦1.2 ・・・(IV)
0.6≦SD/SD≦1.2 ・・・(V)
(式(I)において、SGは前記柱状ペレット(A)の比重を表し、SGは前記柱状ペレット(B)の比重を表す。
式(II)において、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(A)の割合(質量%)を表し、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(B)の割合(質量%)を表す。
式(III)において、Lは前記柱状ペレット(A)の長さ(mm)を表し、Lは前記柱状ペレット(B)の長さ(mm)を表す。
式(IV)において、LDは前記柱状ペレット(A)の断面における長径(mm)を表し、LDは前記柱状ペレット(B)の断面における長径(mm)を表す。
式(V)において、SDは前記柱状ペレット(A)の断面における短径(mm)を表し、SDは前記柱状ペレット(B)の断面における短径(mm)を表す。)
本実施形態に係る樹脂複合材によれば、重量のばらつきの小さい成形品が得られる。
【0009】
<柱状ペレット(A)及び柱状ペレット(B)>
本実施形態に係る樹脂複合材は、熱可塑性樹脂(a1)及び繊維状充填材(a2)を含む柱状ペレット(A)と、熱可塑性樹脂(b1)を含む柱状ペレット(B)とを含む。ここで、「柱状ペレット」とは、柱に似た形状(幅よりも長さが大きい形状)を有するペレットを指す。柱状ペレット(A)及び(B)は、一方の側の断面形状と、他方の側の断面形状とが同じペレットである。なお、本明細書において、「柱状ペレットの断面形状」とは、柱状ペレットの長さ方向に対して垂直となるように柱状ペレットを切断した際の断面の形状を指す。以下、柱状ペレット(A)及び(B)の、一方側の断面を「一端面」と記載し、他方の側の断面を「他端面」として説明する。
【0010】
本実施形態に係る柱状ペレット(A)及び(B)は、三角形断面柱及び四角形断面柱以外の柱状形状を有する。「三角形断面柱」とは、一端面及び他端面の形状が三角形の柱状形状を指す。また、「四角形断面柱」とは、一端面及び他端面の形状が四角形(例えば、長方形、正方形、台形、ひし形等)の柱状形状を指す。
柱状ペレット(A)及び(B)の、一端面の面積と、他端面の面積とは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、より重量のばらつきの小さい成形品が得られやすい観点からは、一端面及び他端面の面積は同じであることが好ましい。
【0011】
一実施形態において、柱状ペレット(A)及び(B)は、一端面及び他端面の形状が、円、楕円、長円、ひょうたん型等の形状を有することが好ましく、円、楕円、又は長円であることがより好ましい。「ひょうたん型」とは、2つの円(楕円又は長円であってもよい)がその円周の一部で接合した形状を指す。一端面及び他端面が上記の形状を有する柱状ペレットとしては、例えば、円柱、楕円柱、長円柱、ひょうたん型柱(2つの円柱、楕円柱、又は長円柱が、長さ方向に沿って融着した構造)等が挙げられる。
一実施形態において、柱状ペレット(A)及び(B)の、一方の側の形状及び/又は他方の側の形状は、球、楕円球又はそれらが変形した立体不定形物であってもよい。
球や楕円球が変形した立体不定形物には、球や楕円球の少なくとも一部に凹部、凸部、又は凹凸を有するもの、球や楕円球の一部(複数箇所を含む)が切断されたもの、又はその両方を備えるもの(球や楕円球の一部が切断されたものであり、かつ、少なくとも一部に凹部、凸部、又は凹凸を有するもの)も含まれる。
【0012】
一実施形態において、柱状ペレット(A)及び(B)の形状は、同じであってもよく、異なっていてもよい。柱状ペレット(A)および(B)の接触点均一化の観点からは、同じであることが好ましく、柱状ペレット(A)及び(B)が、共に円柱及び/又は楕円柱の形状を有することがより好ましい。
【0013】
本実施形態に係る樹脂複合材は、柱状ペレット(A)及び(B)が下記式(I)~(V)を全て満たす。
0≦|SG-SG|≦0.50 ・・・(I)
1.0≦F/F≦4.0 ・・・(II)
0.8≦L/L≦1.5 ・・・(III)
0.6≦LD/LD≦1.2 ・・・(IV)
0.6≦SD/SD≦1.2 ・・・(V)
(式(I)において、SGは前記柱状ペレット(A)の比重を表し、SGは前記柱状ペレット(B)の比重を表す。
式(II)において、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(A)の割合(質量%)を表し、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(B)の割合(質量%)を表す。
式(III)において、Lは前記柱状ペレット(A)の長さ(mm)を表し、Lは前記柱状ペレット(B)の長さ(mm)を表す。
式(IV)において、LDは前記柱状ペレット(A)の断面における長径(mm)を表し、LDは前記柱状ペレット(B)の断面における長径(mm)を表す。
式(V)において、SDは前記柱状ペレット(A)の断面における短径(mm)を表し、SDは前記柱状ペレット(B)の断面における短径(mm)を表す。)
【0014】
・式(I)
式(I)は、柱状ペレット(A)及び(B)の比重差の絶対値を表す。式(I)における|SG-SG|は、0~0.50であり、0.10~0.50が好ましく、0.14~0.50がより好ましく、0.14~0.44がさらに好ましい。なお、樹脂ペレット(A)の比重(SG)及び樹脂ペレット(B)の比重(SG)は、JIS K7112に準拠し、測定装置(例えば、研精工業(株)製、製品名「SD-120L」)を用いて15個の樹脂ペレットの比重を水上置換法により測定し、その平均値を採用する。
式(I)は、例えば、柱状ペレット(A)として、後述する熱可塑性樹脂と、ガラス繊維とを含む柱状ペレット採用し、柱状ペレット(B)として、後述する熱可塑性樹脂を含み、繊維状充填材を含まない柱状ペレットを採用した場合に達成されやすい。
【0015】
・式(II)
式(II)は、樹脂複合材中の、柱状ペレット(B)の配合割合(質量%)に対する、柱状ペレット(A)の配合割合(質量%)である。式(II)におけるF/Fは、1.0~4.0である。すなわち、本実施形態に係る樹脂複合材は、柱状ペレット(B)が、柱状ペレット(A)に対して、1.0~4.0倍含まれる。一実施形態において、F/Fは、1.0~2.3であってもよく、2.3~4.0であってもよい。
【0016】
一実施形態において、樹脂複合材の総質量に対する柱状ペレット(A)の割合(F)は、20~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましく、30~50質量%が特に好ましい。また、樹脂複合材の総質量に対する柱状ペレット(B)の割合(F)は、20~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、50~80質量%がさらに好ましく、50~70質量%が特に好ましい。F及びFは、式(II)を満たす範囲内で、上記の好ましい割合を任意に組み合わせることができる。
【0017】
・式(III)
式(III)におけるL/Lは、0.8~1.5であり、0.8~1.0であってもよく、1.0~1.4であってもよい。なお、柱状ペレット(A)及び(B)の長さ(L)は、柱状ペレットの一端面の重心から、他端面の重心までの長さ(mm)を指す。柱状ペレット(A)及び(B)が、前述の立体不定形物である場合は、その最長部分の長さを「L」とする。なお、柱状ペレット(A)及び(B)の長さ(L)は、ノギスを用いて、15個の樹脂ペレットの長さを測定して平均値を算出し、小数点以下1桁目を四捨五入して一の位まで求める。
一実施形態において、Lは、3~20mmが好ましく、6~15mmがより好ましく、9~11mmが特に好ましい。また、Lは、3~20mmが好ましく、6~15mmがより好ましく、9~13mmが特に好ましい。L及びLは、式(III)を満たす範囲内で、上記の好ましい値を任意に組み合わせることができる。
【0018】
・式(IV)
式(IV)におけるLD/LDは、0.6~1.2であり、0.7~1.2であってもよく、0.8~1.2であってもよい。なお、柱状ペレット(A)及び(B)のLD(端面における長径)は、柱状ペレット(A)及び(B)の一端面又は他端面において、その重心を通る最も長い径を指す。すなわち、柱状ペレット(A)及び(B)が、一端面と他端面の面積が異なるペレットである場合、一端面又は他端面の長径のうち、最も長い方を長径(LD)とする。なお、柱状ペレット(A)及び(B)のLDは、15個の樹脂ペレットの長径を測定して平均値を算出し、小数点以下2桁目を四捨五入して、小数点以下1桁目まで求める。
一実施形態において、LDは、1.0~4.0mmが好ましく、2.0~4.0mmがより好ましく、2.5~3.2mmが特に好ましい。また、LDは、1.0~4.0mmが好ましく、1.5~3.5mmがより好ましく、1.8~3.2mmが特に好ましい。LD及びLDは、式(IV)を満たす範囲内で、上記の好ましい値を任意に組み合わせることができる。
【0019】
・式(V)
式(V)におけるSD/LDは、0.6~1.2であり、0.7~1.2であってもよく、0.8~1.2であってもよい。なお、柱状ペレット(A)及び(B)のSD(端面における短径)は、柱状ペレット(A)及び(B)の一端面又は他端面において、その重心を通る最も短い径を指す。すなわち、柱状ペレット(A)及び(B)が、一端面と他端面の面積が異なるペレットである場合、一端面又は他端面の短径のうち、最も短い方を短径(SD)とする。なお、柱状ペレット(A)及び(B)のSDは、15個の樹脂ペレットの短径を測定して平均値を算出し、小数点以下2桁目を四捨五入して、小数点以下1桁目まで求める。
一実施形態において、SDは、1.0~4.0mmが好ましく、1.5~3.0mmがより好ましく、1.7~2.5mmが特に好ましい。また、SDは、1.0~4.0mmが好ましく、1.5~3.5mmがより好ましく、1.8~3.2mmが特に好ましい。SD及びSDは、式(V)を満たす範囲内で、上記の好ましい値を任意に組み合わせることができる。
【0020】
本実施形態に係る樹脂複合材は、前述の式(I)~(V)を全て満たすことにより、重量のばらつきの小さい成形品を得ることができる。
【0021】
一実施形態において、樹脂複合材は、下記式(VI)を満たすことが好ましい。
50≦(F+F) ・・・(VI)
すなわち、樹脂複合材の総質量に対する、柱状ペレット(A)及び(B)の合計量(F+F)は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、(F+F)は100質量%であってもよい。すなわち、式(VI)における(F+F)は、50≦(F+F)≦100であることが好ましい。式(I)~(V)と、式(IV)とを満たすように、柱状ペレット(A)及び(B)を配合することにより、重量のばらつきの小さい成形品がより得られやすくなる。
【0022】
一実施形態において、柱状ペレット(A)又は(B)の一端面が楕円である場合、前記楕円の長径(LD)と短径(SD)の比率(LD/SD)は、重量ばらつきの小さい成形品がより得られやすくなる観点からは、1.1~1.6であってもよく、1.2~1.6であってもよく、1.2~1.5であって、もよい。
【0023】
一実施形態において、柱状ペレット(A)のペレット長さ(L)と、長径(LD)との比率(L/LD)は、3.0~5.0であってもよく、3.4~5.0であってもよく、3.4~4.5であってもよい。また、柱状ペレット(B)のペレット長さ(L)と、長径(LD)との比率(L/LD)は、2.5~6.5であってもよく、3.0~6.2であってもよい。
【0024】
(熱可塑性樹脂(a1)及び(b1))
柱状ペレット(A)及び(B)に含まれる、熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、及び液晶性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂が好ましい。
【0025】
・ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド46樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド612樹脂、ポリアミド1010樹脂等);芳香族ポリアミド樹脂[芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸等)と脂肪族ジアミン(ヘキサメチレンジアミン等)との反応で得られるポリアミド樹脂、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸等)と芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等)との反応で得られるポリアミド樹脂等。例えば、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂等];ラクタム(ε-カプロラクタム等)の単独又は共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリアミド樹脂は、ホモポリアミド樹脂に限らずコポリアミド樹脂であってもよい。このうち、ポリアミド6樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド1010樹脂、ポリアミド6T樹脂、又はポリアミド9T樹脂が好ましく、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂がより好ましい。
【0026】
・ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、炭素数2~6のオレフィンの単独重合体、又は炭素数2~6のオレフィンの共重合体が好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。ポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン樹脂であってもよく、ブロックポリプロピレン樹脂であってもよく、ランダムポリプロピレン樹脂であってもよく、またはこれらの混合物であってもよい。
【0027】
・ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、例えば、アルキレンテレフタレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート等)やアルキレンナフタレート(エチレンナフタレート、ブチレンナフタレート等)を繰り返し単位とするホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂(アジピン酸等の炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸等の非対称型芳香族ジカルボン酸と、炭素数2~6のアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA等を共重合成分とするコポリエステル等);芳香族ポリエステル(ビスフェノールA等の芳香族ジオールと、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸との反応により生成するポリアリレート系樹脂等);ラクトン(ε-カプロラクトン等)の単独又は共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
【0028】
・ポリアセタール樹脂
ポリアセタール樹脂としては、例えば、オキシメチレン基のみを構成単位とするポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン基に加えてオキシエチレン基等を構成単位とするポリアセタールコポリマー等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ポリアセタールコポリマーが好ましい。
【0029】
・ポリアリーレンエーテル樹脂
・ポリアリーレンエーテル樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。ポリアリーレンエーテル樹脂は1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
・ポリアリーレンスルフィド樹脂
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリビフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましい。
【0031】
・ポリスルホン樹脂
ポリスルホン樹脂としては、例えば、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルホン等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ポリエーテルスルホン樹脂が好ましい。
【0032】
・ポリアリーレンエーテルケトン樹脂
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂が好ましい。
【0033】
・液晶性樹脂
液晶性樹脂としては、液晶性ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステルアミドが好ましい。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
【0034】
一実施形態において、熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)は、ポリアミド6樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド1010樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタールコポリマー、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、及び液晶性ポリエステルアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド1010樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタールコポリマー、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶性ポリエステル樹脂及び液晶性ポリエステルアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂であることがより好ましい。熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)がこれらのうちの少なくとも1つの熱可塑性樹脂であれば、前記式(I)を満たしやすくなる。
【0035】
熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)は、同じ熱可塑性樹脂であってもよく、異なっていてもよい。より重量のばらつきの小さい成形品が得られやすくなる観点からは、熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、同じ熱可塑性樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が共にポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。ここで、「同じ熱可塑性樹脂」には、その熱可塑性樹脂を構成する単量体単位が同じであるが、分子量等の物性が異なるものも含まれる。例えば、熱可塑性樹脂(a1)がポリプロピレン樹脂である場合、熱可塑性樹脂(b1)もポリプロピレン樹脂であってもよい。ただし、これらポリプロピレン樹脂の平均分子量(Mw及び/又はMn)は、異なっていてもよく、同じであってもよい。また、熱可塑性樹脂(a1)がホモポリプロピレン樹脂で、熱可塑性樹脂(b1)がブロックポリプロピレン樹脂であってもよい。
【0036】
(繊維状充填材(a2))
柱状ペレット(A)は、繊維状充填材(a2)を含む。繊維状充填材(a2)としては、繊維含有樹脂組成物に配合されている、従来公知の充填材を使用できる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ウォラストナイト、金属繊維等が挙げられる。このうち、前述の式(I)を達成しやすい観点からは、比重が4.0未満の繊維状充填材を含むことが好ましく、ガラス繊維、炭素繊維、又はセルロース繊維を含むことがより好ましく、ガラス繊維を含むことがさらに好ましく、ガラス長繊維を含むことが特に好ましい。
【0037】
一実施形態において、繊維状充填材(a2)(以下、「充填材(a2)」と記載することもある)が、ガラス繊維を含む場合、該ガラス繊維の平均繊維径は、得られる成形品の機械物性や加工時の取り扱い性の観点からは、5~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。なお、ガラス繊維の平均繊維径は電子顕微鏡観察等の方法でガラス繊維300本の繊維径を測定し、その平均値を指す。
【0038】
一実施形態において、柱状ペレット(A)中の充填材(a2)の割合は、柱状ペレット(A)の総質量に対して、20~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。柱状ペレット(A)中の充填材(a2)の割合を前記範囲内とすることにより、得られる樹脂複合材が式(I)を満たしやすくなる。また、重量のばらつきの小さな成形品が得られやすくなる。
【0039】
一実施形態において、柱状ペレット(A)は、充填材(a2)(好ましくはガラス繊維)を長さ方向に揃えた繊維束に、熱可塑性樹脂(a1)を含浸させて一体化させたペレット(樹脂含浸繊維束)であってもよい。このとき、樹脂含浸繊維束における充填材(a2)の本数は、前述の式(I)~(V)を満たす範囲内で調整されるが、好ましくは、1,000~30,000本であり、より好ましくは、1,000~24,000本であり、特に好ましくは、2、000~12,000本である。
【0040】
樹脂含浸繊維束である柱状ペレット(A)は、ダイスを用いた周知の製造方法により製造することができる。具体的には、特開平6-293023号公報や、特開2013-107979号公報等に記載の製造方法により製造してもよい。
【0041】
柱状ペレット(A)は、熱可塑性樹脂(a1)及び充填材(a2)以外の公知の樹脂用添加剤が含まれていてもよい。樹脂用添加剤としては、例えば、粒状又は板状の充填材、顔料、着色剤(カラーコンセントレートを含む)、難燃剤、熱、光及び紫外線安定剤、相溶化剤、滑剤、発泡剤、抗菌剤等が挙げられる。これらは1種単独で含まれていてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、成形現場での微調整を可能にし、成形条件幅の拡張の観点からは、滑剤、着色剤を含むことがより好ましい。
【0042】
一実施形態において、柱状ペレット(B)は、熱可塑性樹脂(b1)のみを含んでいてもよく、充填材(以下、「充填材(b2)」と記載する)や、前述の樹脂用添加剤を含んでいてもよい。柱状ペレット(B)は、柱状ペレット(A)の繊維含有量を調整するための希釈剤として配合されてもよい。
【0043】
(充填材(b2))
一実施形態において、柱状ペレット(B)が充填材(b2)を含む場合、充填材(b2)は、繊維状充填材、板状充填材、及び粒状充填材から選択される少なくとも1つの充填材を含むことが好ましい。
繊維状充填材としては、前述の充填材(a2)と同じものが例示でき、好ましい例もまた同じである。
板状充填材としては、例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク、黒鉛、各種の金属箔(例えば、アルミ箔、鉄箔、銅箔)等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、タルク、ガラスフレークが好ましい。
粒状充填材としては、例えば、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ガラスビーズ、シリカが好ましい。
【0044】
柱状ペレット(B)が充填材(b2)を含む場合、柱状ペレット(B)の総質量に対する充填材(b2)の割合は、機械的物性保持の観点からは、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましい。
【0045】
樹脂複合材中の柱状ペレット(A)及び柱状ペレット(B)の配合量は、前述の式(II)、又は前述の式(II)及び式(VI)を満たす範囲内で任意に調整できる。
【0046】
一実施形態において、樹脂複合材に含まれる、繊維状充填材(a2)を含む充填材の合計量は、樹脂複合材の総質量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、一実施形態においては、前記合計量は、5~30質量%であってもよく、5~25質量%であってもよく、10~25質量%であってもよい。樹脂複合材中の充填材の合計量を前記範囲内とすることにより、成形品外観を良好に保持する効果が得られやすくなる。
【0047】
一実施形態において、柱状ペレット(A)及び柱状ペレット(B)は、リサイクル材を含むことができる。リサイクル材とは、目的の用途に使用された後に回収された、前述の熱可塑性樹脂(b1)を含む成形品の粉砕物をリペレット化したものである。成形品の元の用途は特に限定されず、自動車部品、電気機器、電化製品、事務用品、包装用品等を含むことができる。また、物性測定用試験片として成形されたものであってもよい。柱状ペレット(A)及び柱状ペレット(B)がリサイクル材を含む場合、リサイクル材の割合は、環境負荷の低減の観点からは、熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)の総質量に対して、25~75質量%が好ましい。また、物性保持の観点からは、熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)の総質量に対するリサイクル材の割合は、25~50質量%が好ましい。
【0048】
一実施形態において、樹脂複合材には、柱状ペレット(A)及び(B)以外の任意の成分を含むことができる。より重量のばらつきの小さい成形品を得る観点からは、樹脂複合材は、柱状ペレット(A)及び(B)のみを含むことが好ましい。
【0049】
[樹脂複合材の製造方法]
本実施形態に係る樹脂複合材は、柱状ペレット(A)及び(B)、必要に応じて任意の成分をドライブレンドすることで得ることができる。
【0050】
[成形品]
本実施形態に係る成形品は、前述の樹脂複合材を射出成形等の公知の樹脂成形法により成形して得られるものである。本実施形態に係る成形品の形状は特に限定されず、用途に応じた形状に成形できる。本実施形態に係る成形品は、成形時の重量のばらつきが小さい。一実施形態において、成形品の100ショット数における重量変動率((標準偏差/平均値)×100(%))が、1.0%以下が好ましく、1.0%未満がより好ましい。
従来の樹脂複合材から得られる成形品は、その重量が約2~3%変動することがある。本実施形態に係る樹脂複合材から得られる成形品は、その重量変動率を1.0%以下に抑えることができる。
【0051】
<用途>
本実施形態に係る成形品は、前述の通り、重量のばらつきが小さい。このような成形品は、特に自動車や電子機器を中心とした産業部品の分野等に好適に使用できる。
【0052】
本実施形態に係る樹脂複合材の好ましい一態様は、以下のとおりである。
<1>樹脂複合材であって、
前記樹脂複合材は、
熱可塑性樹脂(a1)及び繊維状充填材(a2)を含む柱状ペレット(A)と、
熱可塑性樹脂(b1)を含む柱状ペレット(B)とを含有し、
前記柱状ペレット(A)及び(B)は、円柱、楕円柱、長円柱、又はひょうたん型柱から選択される形状を有しており、
下記式(I)~(VI)を全て満たす、樹脂複合材。
0≦|SG-SG|≦0.50 ・・・(I)
1.0≦F/F≦4.0 ・・・(II)
0.8≦L/L≦1.5 ・・・(III)
0.6≦LD/LD≦1.2 ・・・(IV)
0.6≦SD/SD≦1.2 ・・・(V)
50≦(F+F) ・・・(VI)
(式(I)において、SGは前記柱状ペレット(A)の比重を表し、SGは前記柱状ペレット(B)の比重を表す。
式(II)及び(VI)において、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(A)の割合(質量%)を表し、Fは前記樹脂複合材中の前記柱状ペレット(B)の割合(質量%)を表す。
式(III)において、Lは前記柱状ペレット(A)の長さ(mm)を表し、Lは前記柱状ペレット(B)の長さ(mm)を表す。
式(IV)において、LDは前記柱状ペレット(A)の断面における長径(mm)を表し、LDは前記柱状ペレット(B)の断面における長径(mm)を表す。
式(V)において、SDは前記柱状ペレット(A)の断面における短径(mm)を表し、SDは前記柱状ペレット(B)の断面における短径(mm)を表す。)
<2>前記柱状ペレット(A)の長さ(L)が5~20mmであり、前記柱状ペレット(B)の長さ(L)が4~30mmである、<1>に記載の樹脂複合材。
<3>前記柱状ペレット(A)の長径(LD)が2.0~4.0mmであり、前記柱状ペレット(B)の長径(LD)が1.2~4.8mmである、<1>または<2>に記載の樹脂複合材。
<4>前記柱状ペレット(A)の短径(SD)が1.5~3.0mmであり、前記柱状ペレット(B)の長径(LD)が0.9~3.6mmである、<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂複合材。
<5>前記熱可塑性樹脂(a1)及び(b1)が、ポリアミド樹脂、及びポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂である、<1>から<4>のいずれかに記載の樹脂複合材。
<6><1>から<5>のいずれかに記載の樹脂複合材の、成形品。
【実施例0053】
柱状ペレット(A)の原料、及び柱状ペレット(B)として、以下を用いた。
[柱状ペレット(A)]
<熱可塑性樹脂(a1)>
・ポリエーテルスルホン樹脂(PES):住友化学(株)製、製品名「3600G」。
・ポリプロピレン樹脂(PP):サンアロマー(株)製、製品名「PMB60A」。
・ポリアミド66樹脂(PA66):インビスタ社製、製品名「U3600」。
<繊維状充填材(a2)>
・ガラス繊維:平均繊維径17μm、約4000本の繊維束。
・ステンレス繊維:直径11μm、約7000本の繊維束。
【0054】
[柱状ペレット(B)]
熱可塑性樹脂(b1)を二軸押出機に投入し、溶融混練して得られたストランドを冷却後、表1に示す長さ(L)で切断し、楕円柱(一端面及び他端面の面積が同じ楕円)として柱状ペレット(B)を得た。
柱状ペレット(B-1)~(B-4)の比重(SG)、長さ(L)、長径(LD)、及び短径(SD)は、後述の条件に沿って測定した。結果を表1~2に示す。
【0055】
製造例1:柱状ペレット(A-1)の製造
ガラス繊維(繊維状充填材(a2))をクロスヘッドダイに通して引きながら、PA66を二軸押出機から溶融状態でクロスヘッドダイに供給して、PA66をガラス繊維に含浸させた。その後、賦形ダイを通して得られたストランドを冷却後、表1に示す長さ(L)で切断し、楕円柱(一端面及び他端面の面積が同じ楕円)として柱状ペレット(A-1)を得た。柱状ペレット(A-1)の総質量に対するガラス繊維(繊維状充填材(a2))の含有量は50質量%であった。
【0056】
製造例2:柱状ペレット(A-2)の製造
熱可塑性樹脂(a1)としてPPを使用し、ガラス繊維の含有量が20質量%となるように樹脂を含浸させた以外は、製造例1と同じ方法で柱状ペレット(A-2)を得た。
【0057】
製造例3:柱状ペレット(A-3)の製造
熱可塑性樹脂(a1)としてPPを使用し、ガラス繊維の含有量が50質量%となるように樹脂を含浸させた以外は、製造例1と同じ方法で柱状ペレット(A-3)を得た。
【0058】
製造例4:柱状ペレット(A-4)の製造
熱可塑性樹脂(a1)としてPP、充填材(a2)としてステンレス繊維を用いて、ステンレス繊維の含有量が50質量%となるように樹脂を含浸させた以外は、製造例1と同じ方法で柱状ペレット(A-4)を得た。
【0059】
製造例5:柱状ペレット(A-5)の製造
熱可塑性樹脂(a1)としてPESを使用し、ガラス繊維の含有量が50質量%となるように樹脂を含浸させた以外は、製造例1と同じ方法で柱状ペレット(A-5)を得た。
【0060】
製造例6:柱状ペレット(A-6)の製造
ガラス繊維(繊維状充填材(a2))をクロスヘッドダイに通した。このとき、クロスヘッドダイには二軸押出機から溶融状態のPESを供給して、ガラス繊維にPESが含浸された、ペレットを得た。その後、クロスヘッドダイ出口の賦形ノズルで賦形し、表1に示す長さ(L)で切断し、四角形(正方形)断面柱(一端面及び他端面の面積が同じ正方形)として柱状ペレット(A-6)を得た。柱状ペレット(A-6)の総質量に対するガラス繊維(繊維状充填材(a2))の含有量は50質量%であった。
【0061】
柱状ペレット(A)及び(B)の比重(SG)の測定
JIS K7112に準拠して、比重計(研精工業(株)製、製品名「SD-120L」)を用い、水上置換法により15個のペレットの比重を測定してその平均値を求めた。
柱状ペレット(A)及び(B)の長さ(L)の測定
ノギス((株)ミツトヨ製、製品名「CD-15CX」)を用いて、15個のペレットの長さを測定して平均値を算出し、小数点以下1桁目を四捨五入して一の位まで求めた。
柱状ペレット(A)及び(B)の長径(LD)の測定
ノギス((株)ミツトヨ製、製品名「CD-15CX」)を用いて、15個のペレットの長径を測定して平均値を算出し、小数点以下2桁目を四捨五入して小数点以下1桁目まで求めた。
柱状ペレット(A)及び(B)の短径(SD)の測定
ノギス((株)ミツトヨ製、製品名「CD-15CX」)を用いて、15個のペレットの短径を測定して平均値を算出し、小数点以下2桁目を四捨五入して小数点以下1桁目まで求めた。
【0062】
[実施例1~10及び比較例1~14]
表1~2に示す割合で、柱状ペレット(A)及び(B)を配合して、樹脂複合材を得た。
得られた樹脂複合材を、下記の条件で射出成形して成形品を得た。また、成形品の100ショット数における重量変動率((標準偏差/平均値)×100(%))を算出した。結果を表1~2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1に示す通り、本実施形態に係る樹脂複合材から得られた成形品は、重量変動率が1.0%未満であり、重量のばらつきが小さかった。一方、式(I)~(V)の1以上を満たさない比較例1~2、4~14、及び四角形断面柱である柱状ペレット(A)を含む比較例3では、いずれも成形品の重量変動率が1.0%超であり、実施例よりも重量変動率の値が高かった。その中でも、ステンレス繊維を含む柱状ペレット(A)を含む比較例4の重量変動率が最も高かった。これらの結果より、式(I)~(V)を満たし、かつ特定の断面形状以外の柱状ペレット(A)及び(B)を含む樹脂複合材であれば、重量のばらつきの小さな成形品が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本実施形態に係る樹脂複合材は、重量のばらつきの小さな成形品が得られるため、例えば、自動車や電子機器を中心とした産業部品の分野等に好適に用いることができる。