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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170288
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】画像形成装置及び塗膜調整方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
G03G21/00 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048260
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023087177
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小暮 成一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 裕
(72)【発明者】
【氏名】八田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】石塚 脩之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 優
(72)【発明者】
【氏名】舘 昌志
【テーマコード(参考)】
2H134
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GB02
2H134HD01
2H134HD17
2H134HD19
2H134KD08
2H134KD13
2H134KD16
2H134KH01
(57)【要約】
【課題】クリーニングブレードと潤滑剤を用いた場合に、初期と経時でクリーニング不良を防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体3と、前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレード62と、制御部と、を備える画像形成装置である。前記クリーニングブレードは、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、前記制御部は、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整処理を行い、前記初期塗膜調整処理は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部を露出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、
制御部と、を備える画像形成装置であって、
前記クリーニングブレードは、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、
前記制御部は、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整処理を行い、
前記初期塗膜調整処理は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部を露出させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、前記像担持体を画像形成時とは逆方向に回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、前記像担持体を30秒以上10分以下回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を有し、
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を行うか、行わないかの制御が可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、下記(1)~(3)のいずれかを行う
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
(1)前記像担持体の回転の開始にあわせて、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を開始し、前記像担持体を回転させている間、潤滑剤を塗布する
(2)前記像担持体を回転させる前に、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を開始する
(3)前記像担持体を回転させる期間のうち、一部の期間のみ前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を行う
【請求項6】
画像形成装置が行うクリーニングブレードの塗膜調整方法であって、
前記画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、を備え、
初期に画像を形成する前に初期塗膜調整工程を行い、
前記クリーニングブレードは、前記初期塗膜調整工程の前に、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、
前記初期塗膜調整工程は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部分を露出させる
ことを特徴とする塗膜調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び塗膜調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、像担持体をクリーニングするクリーニング装置にクリーニングブレードを用いることが知られている。クリーニングブレードは、像担持体と当接して像担持体の残留物を除去する。
【0003】
クリーニングブレードとしては、ポリウレタンゴム等の弾性部材と支持部材を用いたものが広く用いられており、弾性部材を像担持体に当接させる。クリーニングブレードには、像担持体の回転を阻害しにくくすること、像担持体との摩擦力を軽減すること等の観点から潤滑性が求められる。このため、金属石鹸等の潤滑剤をクリーニングブレードに付与している。潤滑剤は、クリーニングブレードから脱離しないようにするため、クリーニングブレードに対する付着力が求められる。
【0004】
例えば特許文献1~5では、フッ素系化合物を含有する潤滑剤が開示されており、フッ素系化合物としてフッ化ビニリデンを用いているものがある。また、特許文献6では、クリーニングブレードの像担持体に圧接する部分に、フッ素系不活性液体に分散させた潤滑剤分散液を塗布することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
潤滑剤が付与されることで、クリーニングブレードにおける像担持体と当接する部分に潤滑剤の塗膜が形成される。しかし、従来技術では、潤滑剤の塗膜の厚みにより、クリーニングブレードにおける像担持体と当接する部分のエッジが丸くなり、像担持体の残留物を除去しきれないクリーニング不良が生じていた。従来技術では、画像形成を続けていくうちに、潤滑剤の塗膜が削れ、クリーニングブレードのエッジが露出する場合も考えられるが、初期のクリーニング不良を防止できていない。
【0006】
そこで本発明は、クリーニングブレードと潤滑剤を用いた場合に、初期と経時でクリーニング不良を防止できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、制御部と、を備える画像形成装置であって、前記クリーニングブレードは、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、前記制御部は、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整処理を行い、前記初期塗膜調整処理は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部分を露出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クリーニングブレードと潤滑剤を用いた場合に、初期と経時でクリーニング不良を防止できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の一例を説明するための要部概略図である。
図2】本発明に含まれない例を模式的に説明するための概略図である。
図3】本発明の一例を模式的に説明するための概略図である。
図4】本発明の他の例を模式的に説明するための概略図である。
図5】本発明の他の例を模式的に説明するための概略図である。
図6】初期塗膜調整処理の一例である例1~例3を説明するための図である。
図7】画像形成装置の他の例を説明するための概略図である。
図8】初期塗膜調整処理の制御ブロック図の一例である。
図9】初期塗膜調整処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成装置及び塗膜調整方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、制御部と、を備える画像形成装置であって、前記クリーニングブレードは、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、前記制御部は、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整処理を行い、前記初期塗膜調整処理は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部分を露出させることを特徴とする。
【0012】
本発明の塗膜調整方法は、画像形成装置が行うクリーニングブレードの塗膜調整方法であって、前記画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、を備え、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整工程を行い、前記クリーニングブレードは、前記初期塗膜調整工程の前に、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、前記初期塗膜調整工程は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部分を露出させることを特徴とする。
【0013】
図1は、本実施形態の画像形成装置を説明するための要部概略図である。
本実施形態の画像形成装置は、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。像担持体は、感光体、静電潜像担持体などと称してもよい。像担持体としては、ドラム状の感光体3の他にも、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0014】
感光体3の周囲には、帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10(潤滑剤塗布手段)等が配置されている。その他にも、除電ランプ等を有する除電手段、転写ローラ等を有する転写手段などが配置されていてもよい。
【0015】
帯電装置4は、感光体3を帯電させる帯電部材を有する。現像装置5は、感光体3にトナーを供給し、感光体3の表面上に形成された潜像(静電潜像などと称してもよい)をトナー像化する。感光体3上のトナー像は、転写手段により中間転写ベルト等の中間転写体に転写される。感光体3上のトナー像は、記録媒体に転写されてもよい。
【0016】
クリーニング装置6は、トナー像を転写した後の感光体3をクリーニングする。クリーニング装置6は、クリーニングブレード62を有する。クリーニングブレード62は、感光体3の表面に当接する弾性部材を有し、感光体3の表面の残留物を除去する。残留物としては、例えば転写残トナーが挙げられる。本実施形態において、クリーニングブレード62は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。クリーニングされたトナーは、トナー回収部61に回収される。
【0017】
潤滑剤塗布装置10は、クリーニング装置6がクリーニングした後の感光体3の表面上に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段である。潤滑剤塗布装置10は、潤滑剤塗布回転体101、塗布ブレード104等を有する。
【0018】
潤滑剤塗布回転体101は、例えば塗布ブラシ、塗布ローラを用いることができ、塗布ブラシを用いることが好ましい。潤滑剤塗布回転体101は、感光体3の回転方向に対して連れ回り方向に回転し、回転しながら潤滑剤102を感光体3に付与する。感光体3に付与された潤滑剤は、塗布ブレード104により均されて、潤滑剤の厚みが調整される。塗布ブレード104を均しブレードなどと称してもよい。
【0019】
潤滑剤102は、例えばブラケットに保持され、潤滑剤加圧スプリング等の付勢手段102aにより潤滑剤塗布回転体101側に加圧されている。例えば、付勢手段を制御することで、感光体3に対する潤滑剤の塗布を行うか、行わないかを制御できる。
【0020】
本実施形態の画像形成装置は、制御部400を有する。制御部400は、画像を形成する際の各装置(各手段)の制御のほか、初期塗膜調整処理や初期塗膜調整工程を行う際の各装置(各手段)の制御を行う。
【0021】
図2は、従来技術を説明するための概念図である。図3は、本実施形態を説明するための概念図である。図2及び図3は、画像形成時におけるクリーニングブレード62の当接部を模式的に示した図である。図2及び図3は、クリーニングブレード62が感光体3上に残留したトナー50を掻き落とすことを説明する図である。
【0022】
従来技術では、クリーニングブレード62のエッジ部を覆うように潤滑剤の塗膜100が形成され、この状態で画像形成や像担持体のクリーニングを行っていた。この場合、クリーニングブレードは、潤滑剤の塗膜100の厚みにより、感光体3と当接する部分が丸くなり曲率半径が大きくなる。クリーニングブレードにおける感光体3と当接する部分の曲率半径が大きいことにより、トナーがすり抜けやすくなり、残トナーを除去しきれないクリーニング不良が発生していた。特に、画像面積率の大きな画像が出力された場合、転写残トナーが多くなり、クリーニング不良が発生しやすい。
【0023】
一方、本実施形態では、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整処理を行い、クリーニングブレード62に形成された潤滑剤の塗膜100の一部を削り、クリーニングブレード62のエッジ部を露出させる。これにより、クリーニングブレード62のエッジの先端で感光体3に当接するため、クリーニング性を向上させることができ、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0024】
クリーニングブレード62のエッジ部は、エッジ先端などと称してもよい。初期塗膜調整処理は、塗膜調整処理などと称してもよい。初期塗膜調整工程は、塗膜調整工程などと称してもよい。初期塗膜調整処理は、制御部400により各装置(各手段)が制御されて実行される。初期塗膜調整工程も初期塗膜調整処理と同様にして行われる。
【0025】
初期塗膜調整処理は、感光体3を回転させ、感光体3とクリーニングブレード62とを摺動させる。このようにすることで、クリーニングブレード62に形成された潤滑剤の塗膜100の一部を削り、クリーニングブレード62のエッジ部を露出させることができる。
【0026】
初期に画像を形成する前にクリーニングブレードに潤滑剤の塗膜が形成される場合としては、例えばタッチアップが挙げられる。タッチアップでは、例えば画像形成装置の組み立て時に、クリーニングブレードに潤滑剤を付与する工程を行う。タッチアップは、この他にも、クリーニングブレードの交換時、クリーニング装置の交換時、潤滑剤塗布装置の交換時などにも行う場合がある。タッチアップを行うことで、クリーニングブレードの破損などを防ぐことができる。
【0027】
初期に画像を形成する前とあるのは、例えば、装置を初期に組み立てた場合、像担持体を交換した場合、クリーニング装置を交換した場合、クリーニングブレードを交換した場合などにおいて、初回の画像を形成する前のことをいう。初期に画像を形成する前のことを使用初期などと称してもよい。
【0028】
初期塗膜調整処理としては、例えば、感光体3を回転させてクリーニングブレード62のエッジ部を覆う潤滑剤の塗膜100を削る方法が挙げられる。初期塗膜調整処理において像担持体を回転させる方向は、画像形成時と同方向であってもよいし、画像形成時と逆方向であってもよい。逆方向であることが好ましい。
【0029】
図4は、初期塗膜調整処理において、感光体3を画像形成時と同方向に回転させた場合の例を模式的に説明する図である。画像形成時と同方向に感光体3を回転させることを、正回転、正転などとも称する。
【0030】
図5は、初期塗膜調整処理において、感光体3を画像形成時と逆方向に回転させた場合の例を模式的に説明する図である。画像形成時と逆方向に感光体3を回転させることを、逆回転、逆転などとも称する。
【0031】
図4の例に示すように、初期塗膜調整処理において感光体3を正回転させた場合、クリーニングブレード62のエッジを覆う潤滑剤の塗膜100を削ることができるものの、潤滑剤の塗膜100が浮きやすい。図示するように、クリーニングブレード62のエッジよりも下流のところで、潤滑剤の塗膜100がクリーニングブレード62から浮いている部分が生じている。このように、潤滑剤の塗膜100がクリーニングブレード62から浮く部分があると、隙間が生じ、隙間にトナーが入り込む場合がある。
【0032】
また、初期塗膜調整処理において感光体3を正回転させた場合、クリーニングブレード62のエッジを覆う潤滑剤の塗膜100が盛り上がってしまう場合がある。潤滑剤の塗膜100が盛り上がる部分が生じると、クリーニングブレード62のエッジと感光体3との接触が不安定になってしまう場合がある。
【0033】
一方で、初期塗膜調整処理において感光体3を正回転させた場合、感光体3を画像形成時と同方向に回転させればよいため、制御がしやすいという利点がある。
【0034】
図5の例に示すように、初期塗膜調整処理において感光体3を逆回転させた場合、クリーニングブレード62のエッジを覆う潤滑剤の塗膜100を削ることができる。また、図5図4と比較すると、逆回転させる場合、正回転させる場合に比べて安定して潤滑剤の塗膜100を削ることができる。
【0035】
初期塗膜調整処理において感光体3を逆回転させた場合、潤滑剤の塗膜100は、感光体3に沿った形に崩れていく。そのため、潤滑剤の塗膜100は、感光体3を逆回転させた場合、正回転させた場合に比べて剥がれにくくなり、クリーニングブレード62から浮きにくくなる。また、潤滑剤の塗膜100がクリーニングブレード62から浮きにくくなるため、隙間が生じにくくなり、隙間にトナーが入り込むことを防止できる。また、画像形成時は感光体3が正回転するため、トナーが入り込みにくくなり、潤滑剤の塗膜100が盛り上がりにくくなる。
【0036】
初期塗膜調整処理において感光体3を回転させる時間としては、適宜選択することができ、30秒以上10分以下であることが好ましい。本発明者らの検討により、感光体3の状態(例えば新品かどうか)、感光体3の使用(例えばフィラーの量)、使用環境などによって、初期塗膜調整処理における感光体3の適切な回転時間は異なることがわかった。
【0037】
上記の範囲にすることで、クリーニングブレード62のエッジを覆う潤滑剤の塗膜100を適切に削ることができる。30秒以上にすることで、潤滑剤の塗膜100を十分に削ることができ、クリーニング不良を抑制できる。また、10分以下にすることで、ユーザーを不必要に待たせない。
【0038】
本実施形態の画像形成装置は、感光体3に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置10を有している。潤滑剤塗布装置10は、潤滑剤塗布手段の一例である。制御部400は、初期塗膜調整処理において、潤滑剤塗布装置10による潤滑剤の塗布を行うか、行わないかの制御が可能である。初期塗膜調整処理において、潤滑剤塗布装置10による潤滑剤の塗布を行うことで、初期塗膜調整処理におけるクリーニングブレードのめくれを防止できる。また、初期塗膜調整処理において、潤滑剤塗布装置10による潤滑剤の塗布を行う、行わないの制御を行うことで、潤滑剤が過剰に塗布されることを防止でき、クリーニングブレードのエッジ部の潤滑剤の塗膜を効率よく削ることができる。
【0039】
初期塗膜調整処理において、下記(1)~(3)のいずれかを行うことが好ましい。
(1)前記像担持体の回転の開始にあわせて、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を開始し、前記像担持体を回転させている間、潤滑剤を塗布する
(2)前記像担持体を回転させる前に、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を開始する
(3)前記像担持体を回転させる期間のうち、一部の期間のみ前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を行う
【0040】
初期に画像を形成する前は、クリーニングブレードに潤滑剤が付与されているが、感光体3には潤滑剤が付与されていない。そのため、この状態で初期塗膜調整処理を行うと、クリーニングブレードがめくれる場合がある。(1)~(3)のいずれかを行うことにより、初期塗膜調整処理を行った場合にクリーニングブレードがめくれることを抑制できる。(1)~(3)のようにする場合、初期塗膜調整処理では、クリーニングブレードのエッジ部の潤滑剤の塗膜を削ることと、像担持体に潤滑剤を塗布することがあわせて行われることになる。
【0041】
図6は、上記(1)~(3)を説明する図である。
(1)では、像担持体(感光体3)の回転の開始にあわせて潤滑剤の塗布を開始し、像担持体を回転させている間、潤滑剤を塗布している。像担持体を回転させる時間と、像担持体に潤滑剤を塗布する時間が同じもしくは略同じである。
【0042】
特に制限されるものではないが、潤滑剤の塗布のONとOFFは、例えば以下のようにして行う。潤滑剤加圧スプリング等の付勢手段により潤滑剤102を潤滑剤塗布回転体101側に加圧することで、潤滑剤を感光体3に塗布することができる。また、付勢手段の加圧を行わないことにより、潤滑剤の塗布を行わないようにすることができる。このような付勢手段の制御は、制御部400により行われる。
【0043】
(2)では、像担持体を回転させる前に潤滑剤の塗布を開始する。潤滑剤を像担持体に多く塗布しすぎると、その潤滑性のために、ブレードに塗布された潤滑剤の塗膜が削れにくくなることがある。このようなことから、必要以上に潤滑剤を塗布しないようにするため、事前に潤滑剤塗布回転体101を回転させて潤滑剤を塗布し、像担持体が回転を始める時点、もしくは前後で潤滑剤の塗布を終了する。
【0044】
図6に示す例では、潤滑剤の塗布の終了(OFF)と像担持体の回転の開始(ON)が同じ時点になっているが、(2)はこれに限られない。潤滑剤の塗布の終了(OFF)を像担持体の回転の開始(ON)よりも前にしてもよいし、後にしてもよい。
【0045】
(2)を行うには、潤滑剤塗布回転体101を回転させる駆動手段を用いるようにする。これにより、像担持体が回転してない場合でも潤滑剤塗布回転体101を回転させて潤滑剤を塗布することができる。
【0046】
(3)では、像担持体を回転させる期間のうち、一部の期間のみ潤滑剤の塗布を行う。一部の期間としては、適宜選択でき、図6に示す例のように、潤滑剤の塗布と停止(ONとOFF)を繰り返してもよい。潤滑剤を塗布しすぎないようにするため、像担持体の回転が停止(OFF)した後は、潤滑剤の塗布を停止することが好ましい。
【0047】
(1)の場合、初期塗膜調整処理において感光体3が回転している間、一緒に潤滑剤塗布回転体101が回転して潤滑剤が感光体3に塗布されるので、クリーニングブレードのめくれを抑制しやすい。(2)の場合、初期塗膜調整処理において感光体3が回転する前に潤滑剤が感光体3に塗布されるので、クリーニングブレードのめくれが発生しやすいときに潤滑剤が塗布された状態で感光体3を回転させることができる。また、初期塗膜調整処理において、潤滑剤を過剰に塗布することを防止できるため、クリーニングブレードのめくれを抑制しつつ効率よくエッジ部の塗膜を削ることができる。(3)の場合、初期塗膜調整処理における潤滑剤の塗布を必要最低限に抑えることができるため、効率よくエッジ部の塗膜を削ることができる。
【0048】
クリーニングブレード62は、像担持体の表面に当接する弾性部材を有する。弾性部材は、例えば支持部材により支持されており、短冊形状の弾性ブレード等として用いられる。
弾性部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えばポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロプレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。これらの中でも、耐久性や非汚染性の観点から、ポリウレタンゴムが好ましい。また、ポリウレタンゴムは、高い反発弾性体率を有し、感光体3の偏心や感光体3の表面の微小なうねりなどに追随しやすい。
【0049】
潤滑剤としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、PMMA(ポリメタクリル酸)粒子、フッ素系化合物などを含む潤滑剤が挙げられる。フッ素系化合物としては、例えばフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0050】
図7は、本発明の画像形成装置500の一例を示す概略構成図である。この画像形成装置500は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記載することがある。)用の4つの作像ユニット1Y、1M、1C、1Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY、M、C、Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。作像ユニットとしては、図1に示した構成のものを用いることができる。
【0051】
4つの作像ユニット1の上方には、中間転写体としての中間転写ベルト14を備える転写ユニット60が配置されている。各作像ユニット1Y、1M、1C、1Kが備える感光体3Y、3M、3C、3Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上に重ね合わせて転写される構成である。
【0052】
また、4つの作像ユニット1の下方に光書込ユニット40が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット40は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、各作像ユニット1Y、1M、1C、1Kの感光体3Y、3M、3C、3Kに照射する。これにより、感光体3Y、3M、3C、3K上にY、M、C、K用の静電潜像が形成される。
【0053】
なお、光書込ユニット40は、光源から発したレーザー光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー41によって偏光させながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y、3M、3C、3Kに照射するものである。前記構成のものに代えて、LEDアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
【0054】
光書込ユニット40の下方には、第1給紙カセット151、第2給紙カセット152が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録媒体Pが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されており、一番上の記録媒体Pには、第1給紙ローラ151a、第2給紙ローラ152aがそれぞれ当接している。
【0055】
第1給紙ローラ151aが図示しない駆動手段によって図7中反時計回りに回転駆動すると、第1給紙カセット151内の一番上の記録媒体Pが、カセットの図4中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路153に向けて排出される。また、第2給紙ローラ152aが図示しない駆動手段によって図7中反時計回りに回転駆動すると、第2給紙カセット152内の一番上の記録媒体Pが、給紙路153に向けて排出される。
【0056】
給紙路153内には、複数の搬送ローラ対154が配設されている。給紙路153に送り込まれた記録媒体Pは、これら搬送ローラ対154のローラ間に挟み込まれながら、給紙路153内を図7中下側から上側に向けて搬送される。
【0057】
給紙路153の搬送方向下流側端部には、レジストローラ対55が配設されている。レジストローラ対55は、記録媒体Pを搬送ローラ対154から送られてくる記録媒体Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録媒体Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
【0058】
図8は、初期塗膜調整処理の制御ブロック図の一例である。
制御部400は、演算手段たるCPU( Central Processing Unit) 、RAM( Random Access Memory) やROM ( Read Only Memory) 等の記憶手段を有している。制御部400のCPUは、ROM内に記憶している制御プログラムに基づいて、各種演算や制御を実行している。
【0059】
制御部400は、初期塗膜調整処理において、例えば、感光体3の回転の制御、潤滑剤の塗布のONとOFFの制御等を行う。制御部400は、制御プログラムに基づいて、例えば、感光体3の回転の開始、停止、回転の方向、潤滑剤塗布装置10における付勢手段の加圧の有無、潤滑剤塗布回転体101の回転などを制御する。制御部400がこれらの制御を行うことで、初期塗膜調整処理を行うことができる。
【0060】
図9は、初期塗膜調整処理のフローチャートの一例である。
S1では、初期塗膜調整処理を行うかどうかの判定を行う。初期塗膜調整処理を行うかどうかについては、特に制限されないが、例えば、クリーニングブレードが新品の場合等に初期塗膜調整処理を行う。この他にも例えば、塗膜の条件、装置の種類などに応じて判定してもよく、例えば、潤滑剤を塗布しないと塗膜が安定して削れない(例えば一部が早く削れる)場合などに初期塗膜調整処理を行う判定をしてもよい。機種ごとの条件、塗膜の条件などに応じた感光体3と潤滑剤塗布装置10の制御をメモリ等に設定しておいてもよい。
【0061】
本例では、初期塗膜調整処理を行う場合、図6で説明した上記(1)~(3)のどれを行うか選択する(S2)。ただし、本発明は上記(1)~(3)に限られるものではない。例えば、上記(1)を行う場合、図6にも示すように、感光体3の回転にあわせて潤滑剤の塗布を行う(S3)。所定の時間、感光体3の回転と潤滑剤の塗布を行った後、感光体3の回転と潤滑剤の塗布を停止する(S4)。これにより、上記(1)のように初期塗膜調整処理を行うことができる。
【0062】
上記(2)を行う場合、図6にも示すように、感光体3を回転させる前に、潤滑剤の塗布を開始する(S5)。感光体3を回転させる前に潤滑剤を塗布する場合、例えば潤滑剤塗布回転体101を回転させる。所定の時間、潤滑剤の塗布を行った後、潤滑剤の塗布を停止し、感光体3を回転させる(S6)。所定の時間、感光体3を回転させた後、感光体3の回転を停止させる(S7)。これにより、上記(2)のように初期塗膜調整処理を行うことができる。
【0063】
上記(3)を行う場合、図6にも示すように、感光体3の回転にあわせて潤滑剤の塗布を行う(S8)。所定の回数、潤滑剤の塗布と停止(ONとOFF)を繰り返す(S9)。潤滑剤を塗布する時間(潤滑剤の塗布をONにする時間)は適宜選択できる。その後、感光体3の回転と潤滑剤の塗布を停止する(S10)。感光体3の回転の停止と潤滑剤の塗布の停止は、同時でなくてもよい。これにより、上記(3)のように初期塗膜調整処理を行うことができる。
【0064】
上記のようにして初期塗膜調整を行った後、初期の画像を形成する。
なお、上記図9に示す例では、感光体3を正回転させている。図6の感光体3の回転ONとしているのを正回転ではなく逆回転にしてもよいし、正回転と逆回転を混在させてもよい。
【0065】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
像担持体と、
前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、
制御部と、を備える画像形成装置であって、
前記クリーニングブレードは、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、
前記制御部は、初期に画像を形成する前に初期塗膜調整処理を行い、
前記初期塗膜調整処理は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部を露出させる
ことを特徴とする画像形成装置。
<2>
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、前記像担持体を画像形成時とは逆方向に回転させる
ことを特徴とする<1>に記載の画像形成装置。
<3>
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、前記像担持体を30秒以上10分以下回転させる
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の画像形成装置。
<4>
前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を有し、
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を行うか、行わないかの制御が可能である
ことを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の画像形成装置。
<5>
前記制御部は、前記初期塗膜調整処理において、下記(1)~(3)のいずれかを行う
ことを特徴とする<4>に記載の画像形成装置。
(1)前記像担持体の回転の開始にあわせて、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を開始し、前記像担持体を回転させている間、潤滑剤を塗布する
(2)前記像担持体を回転させる前に、前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を開始する
(3)前記像担持体を回転させる期間のうち、一部の期間のみ前記潤滑剤塗布手段による潤滑剤の塗布を行う
<6>
画像形成装置が行うクリーニングブレードの塗膜調整方法であって、
前記画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面に当接する弾性部材を有し、前記像担持体の表面の残留物を除去するクリーニングブレードと、を備え、
初期に画像を形成する前に初期塗膜調整工程を行い、
前記クリーニングブレードは、前記初期塗膜調整工程の前に、少なくとも前記像担持体と当接するエッジ部に潤滑剤の塗膜が形成されており、
前記初期塗膜調整工程は、前記像担持体を回転させ、前記像担持体と前記クリーニングブレードとを摺動させ、前記クリーニングブレードに形成された潤滑剤の塗膜の一部を削り、前記クリーニングブレードのエッジ部分を露出させる
ことを特徴とする塗膜調整方法。
【符号の説明】
【0066】
3 像担持体
4 帯電装置
5 現像装置
50 トナー
61 トナー回収部
62 クリーニングブレード
100 塗膜
101 塗布ローラ
102 固形潤滑剤
104 均しブレード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2000-147972号公報
【特許文献2】特開2004-101551号公報
【特許文献3】特許第3278733号公報
【特許文献4】特開平10-214009号公報
【特許文献5】特開平6-348193号公報
【特許文献6】特許第2853598号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9