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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170300
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241129BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241129BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241129BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20241129BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241129BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C08L101/00
G02B5/30
C08J5/18 CER
C08J7/04 A CEZ
B32B27/20 Z
C08K3/36
C08J5/18 CEZ
C08J7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081011
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2023087194
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390005728
【氏名又は名称】AGCエスアイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山隅 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加茂 博道
【テーマコード(参考)】
2H149
4F006
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB17
2H149CA02
2H149FD03
2H149FD12
2H149FD25
2H149FD47
4F006AA35
4F006AB23
4F006AB54
4F006AB76
4F006BA09
4F006BA14
4F006CA05
4F071AA28
4F071AB26
4F071AD06
4F071AE11
4F071AF28Y
4F071AF30Y
4F071AG12
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH19
4F071BB02
4F071BC02
4F071BC12
4F071BC16
4F100AA20A
4F100AK22A
4F100AK42B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA10A
4F100CA23A
4F100DD07A
4F100DE04A
4F100GB41
4F100JK16A
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN18A
4F100YY00A
4J002AA001
4J002AB011
4J002AB021
4J002BB001
4J002BB121
4J002BB171
4J002BC031
4J002BC061
4J002BD121
4J002BD151
4J002BF021
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG061
4J002BN151
4J002CB001
4J002CC031
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF211
4J002CG011
4J002CH071
4J002CK021
4J002CN011
4J002CN031
4J002CP031
4J002DJ016
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】フィルムにアンチブロッキング性を付与しつつ、高い透明性を持つフィルムを提供すること。
【解決手段】樹脂と球状シリカ粒子を含む樹脂層を有し、前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.5m/g以下であるフィルムとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と球状シリカ粒子を含む樹脂層を有し、前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.5m/g以下であるフィルム。
【請求項2】
前記球状シリカ粒子のメジアン径(D50)が1.0~30.0μmである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記球状シリカ粒子の円形度が0.85以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記樹脂層中の前記球状シリカ粒子の含有量が0.1~60.0質量%である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.0m/g以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記樹脂の屈折率が1.40~1.50である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
さらに透明基材層を有し、前記透明基材層の少なくとも一方の面に前記樹脂層が直接又は一層以上の他の層を介して積層されている、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
動摩擦係数が0.80以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
ヘーズが20.0%以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
膜厚が1.0~100μmである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
光学フィルムである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルムを有する表示装置。
【請求項13】
液晶表示装置又は有機ELディスプレイである、請求項12に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関し、さらに詳しくは、光学用途に適したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイにおける画像表示面や成形品等の表面を傷つきから保護するためにハードコート付きのフィルムを貼付することが行われている。また、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置には、偏光板保護フィルムなどの光学フィルムが用いられている。
【0003】
このような各種樹脂フィルムは、透明基材の表面平滑性のため、ロール状に巻回する際にフィルムの表裏が張り付いてしまい(ブロッキング)、フィルムをロールから繰り出したときにブロッキングによる摩擦が生じ、フィルム表面を傷つけてしまうことがある。
【0004】
そこでブロッキングを改善する方法として、透明基材上に不活性粒子を含有した塗膜を形成し、フィルムの表面に凹凸を作り、該フィルムの表面粗さを大きくすることがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には活性エネルギー線硬化性化合物(A)及びシリカ粒子(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いてフィルムを形成することが提案されている。引用文献1では、シリカ粒子(B)は湿式法で製造されたものであって、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したものであり、平均粒子径が50nm以上500nm以下であるものを用いることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、光透過性基材層(A)の少なくとも一方の面に、樹脂層(B)が直接または一以上の他の層を介して積層された積層構成を有する積層体を備える透明電極フィルムが提案されている。引用文献2には、樹脂層(B)は、粒子(R)と、活性エネルギー線により硬化性を示す硬化性化合物(Q)とを含有する硬化性組成物(S)を硬化させた層であり、平均粒子径(メジアン径)が1000nm以下の粒子(R)を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6508559号公報
【特許文献2】特許第7078169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フィルムの表面に凹凸を形成した場合、ブロッキング耐性は良好になる一方でフィルムの透明性は低下しやすくなる。
本発明は、フィルムにアンチブロッキング性を付与しつつ、高い透明性を持つフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、比表面積が4.5m以下の球状シリカ粒子を用いることで上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記(1)~(13)に関するものである。
(1)樹脂と球状シリカ粒子を含む樹脂層を有し、前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.5m/g以下であるフィルム。
(2)前記球状シリカ粒子のメジアン径(D50)が1.0~30.0μmである、前記(1)に記載のフィルム。
(3)前記球状シリカ粒子の円形度が0.85以上である、前記(1)に記載のフィルム。
(4)前記樹脂層中の前記球状シリカ粒子の含有量が0.1~60.0質量%である、前記(1)に記載のフィルム。
(5)前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.0m/g以下である、前記(1)に記載のフィルム。
(6)前記樹脂の屈折率が1.40~1.50である、前記(1)に記載のフィルム。
(7)さらに透明基材層を有し、前記透明基材層の少なくとも一方の面に前記樹脂層が直接又は一層以上の他の層を介して積層されている、前記(1)に記載のフィルム。
(8)動摩擦係数が0.80以下である、前記(1)に記載のフィルム。
(9)ヘーズが20.0%以下である、前記(1)に記載のフィルム。
(10)膜厚が1.0~100μmである、前記(1)に記載のフィルム。
(11)光学フィルムである、前記(1)に記載のフィルム。
(12)前記(1)~(11)のいずれか1つに記載のフィルムを有する表示装置。
(13)液晶表示装置又は有機ELディスプレイである、前記(12)に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンチブロッキング性と高い透明性を両立したフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
本発明のフィルムは、樹脂と球状シリカ粒子を含む樹脂層を有する。該樹脂層は本発明のフィルムの少なくとも一方の表面に位置しており、フィルムは樹脂層のみからなるものでもよいし、樹脂層に積層された任意の層を含んでいてもよい。以下、各成分について説明する。
【0014】
<樹脂層>
(球状シリカ粒子)
本発明のフィルムに含まれる球状シリカ粒子は、中実シリカであって、そのBET比表面積が4.5m/g以下である。球状シリカ粒子のBET比表面積が4.5m/g以下であると、粒子内における細孔の存在が減らされ、球状シリカ粒子は無孔質に近くなる。球状シリカ粒子の細孔が減ることにより、細孔に起因する光散乱を起こし難くなるため、球状シリカ粒子を含有することにより樹脂層の表面に凹凸を形成することでフィルムにアンチブロッキング性を付与するとともに、光散乱を起こし難い透明性の高いフィルムとなる。
球状シリカ粒子のBET比表面積は、4.0m/g以下であるのが好ましく、3.5m/g以下がより好ましく、3.0m/g以下がさらに好ましい。また、球状シリカ粒子のBET比表面積は、0.09m/g以上であるのが好ましく、0.20m/g以上がより好ましく、0.30m/g以上がさらに好ましい。すなわち、球状シリカ粒子のBET比表面積は0.09~4.5m/gの範囲が好ましい。
【0015】
なお、BET比表面積は、窒素吸着法により吸着等温線を得た後、BETの理論を用いて算出できる。
【0016】
また、シリカ粒子が球状であることで、フィルム表面の粗さが小さくなるので摩擦力が小さくなり、また樹脂とシリカ粒子の界面の面積が最小となり光を反射し難くなるため透明性も維持できる。
【0017】
球状シリカ粒子の円形度は、0.85以上であるのが好ましい。円形度が0.85以上であると、粒子の形状が球状に近くなるので、異方散乱を抑制できる。円形度は、0.87以上であることが好ましく、0.89以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.91以上が特に好ましい。円形度の上限は特に限定されず、1であることが最も好ましい。
【0018】
なお、円形度は、走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影して得られる写真投影図における任意の100個の粒子について、それぞれの最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)とを測定し、最大径(DL)に対する最小径(DS)の比(DS/DL)を算出した平均値で表す。
【0019】
球状シリカ粒子の体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)は、1.0~30.0μmであるのが好ましい。球状シリカ粒子のメジアン径(D50)が1.0μm以上であると、フィルム表面に突出する部分がナノサイズの粒子に比べて大きくなるためアンチブロッキング性を発揮しやすく、また、ナノサイズの粒子に比べて凸部の間隔が大きくなるため摩擦力も小さくできる。球状シリカ粒子のメジアン径(D50)が30.0μm以下であると、高い透明性が期待できる。
球状シリカ粒子のメジアン径(D50)は、2.0μm以上であるのがより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましく、5.0μm以上が特に好ましく、また、25.0μm以下であるのがより好ましく、20.0μm以下がさらに好ましく、15.0μm以下が特に好ましい。
【0020】
メジアン径(D50)は、電気的検知帯法による粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製「MultisizerIII」)を用いてコールターカウンター法によって測定し、体積基準にて算出できる。
【0021】
球状シリカ粒子は、微小粒子による樹脂と球状シリカ粒子の界面の面積が低下することによりフィルムのヘーズの上昇が起こりにくくなるという観点から、粒径が1.0μm以下である粒子の体積割合が7%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0022】
また、球状シリカ粒子は、粗大粒子によるフィルム表面の粗さを低減することによりフィルムのヘーズの悪化が起こりにくくなるという観点から、粒径が40.0μm以上である粒子の体積割合が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、粒径が1.0μm以下である粒子の体積割合および40.0μm以上である粒子の体積割合は、上記した電気的検知帯法による粒度分布測定装置を用いて算出できる。
【0024】
球状シリカ粒子は、細孔容積が0.001~0.15cm/gであるのが好ましい。ここで、細孔容積とは、細孔直径が1~100nmの細孔に由来する細孔容積を意味する。
球状シリカ粒子の細孔容積は、0.1cm/g以下であることがより好ましく、0.05cm/g以下がさらに好ましく、0.01cm/g以下が特に好ましい。細孔容積が0.01cm/g以下であると、光散乱を減らしてフィルムの透明性を高められる。
【0025】
なお、細孔容積は、窒素吸着法によりBJH法を用いて算出できる。
【0026】
本実施形態に用いられる球状シリカ粒子は、製造により得てもよいし、市販品を用いてもよい。球状シリカ粒子の製造方法としては、例えば、湿式法、造粒法が挙げられる。中でも、比表面積が小さく、粒径分布が適度に狭い球状シリカ粒子を得られるという観点から、湿式法により製造されたシリカ粒子であるのが好ましい。
【0027】
湿式法とは、シリカ源として液体のものを用い、これをゲル化させることでシリカ粒子の原料を得る工程を含む方式を指す。湿式法を用いることで、シリカ粒子の形状を調整しやすくなる。特に球状のシリカ粒子が調整しやすくなり、粉砕等により粒子の形状を整える必要が無く、結果、比表面積の小さい粒子が得られやすい。また、湿式法は、平均粒径に対して大幅に小さい粒子が生成しにくく、焼成後に比表面積が小さくなりやすい傾向がある。また、湿式法では、シリカ源の不純物を調整することで、チタンなどの不純物元素の量を調整でき、さらに前述の不純物元素を、粒子中に均一に分散させた状態にできる。
【0028】
湿式法としては、例えば、噴霧法、エマルション・ゲル化法等が挙げられる。エマルション・ゲル化法としては、例えば、シリカ前駆体を含む分散相と連続相とを乳化し、得られたエマルションをゲル化して球状シリカ粒子を得る。乳化方法としては、シリカ前駆体を含む分散相を連続相に微小孔部または多孔質膜を介して供給しエマルションを作製する方法が好ましい。これによって、均一な液滴径のエマルションを作製して、結果として均一な粒子径の球状シリカ粒子が得られる。ここで、乳化時の撹拌速度を調整することによって、シリカ粒子の粒子径を調整できる。
【0029】
このような乳化方法としては、マイクロミキサー法や膜乳化法を使用できる。例えば、マイクロミキサー法は国際公開第2013/062105号に開示されている。
【0030】
本実施形態に用いられる球状シリカ粒子は、熱処理が施されていることが好ましい。熱処理では、球状シリカ粒子を焼き締め、シェルの緻密化を行う作用がある。
【0031】
熱処理の手段としては特に限定されないが、静置による熱処理、回転炉による熱処理、噴霧燃焼による熱処理等が挙げられる。静置による熱処理には、静置式の電気炉、ローラーハースキルン、トンネル炉に分類される連続炉等が使用できる。回転炉による熱処理には、水平回転炉(ロータリーキルン)、回転式管状炉等が使用できる。これらの中でも、焼成の均一性の観点から、連続炉あるいは、回転炉による熱処理により焼成するのが好ましい。
【0032】
熱処理温度は、700℃以上であるのが好ましく、800℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましく、1000℃以上が特に好ましい。また、結晶化を抑制する観点から、熱処理温度は1600℃以下であるのが好ましく、1500℃以下がより好ましく、1400℃以下がさらに好ましい。
【0033】
熱処理の時間は、使用する装置に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0.5~50時間で行うのが好ましく、1~10時間がより好ましい。
【0034】
本実施形態に用いられる球状シリカ粒子は、シランカップリング剤によって表面処理が施されていてもよい。球状シリカ粒子の表面がシランカップリング剤によって処理されていることで、樹脂との親和性が向上し、分散性、及びフィルムの強度を向上できる。
【0035】
表面処理の条件は特に制限はなく、一般的な表面処理条件でよく、湿式処理法や乾式処理法を使用できる。均一な処理を行う観点から、湿式処理法が好ましい。
【0036】
シランカップリング剤の種類としては、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、光学フィルムの色味に影響を及ぼさないという観点から、二重結合を持たないシランカップリング剤を用いるのが好ましい。
【0037】
具体的に表面処理剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、CF(CFCHCHSi(OCH、CF(CFCHCHSiCl、CF(CFCHCHSi(CH)(OCH、CF(CFCHCHSi(CH)C1、CF(CFCHCHSiCl、CF(CFCHCHSi(OCH、CFCHCHSiCl、CFCHCHSi(OCH、C17SON(C)CHCHCHSi(OCH、C15CONHCHCHCHSi(OCH、C17COCHCHCHSi(OCH、C17-O-CF(CF)CF-O-CSiCl、C-O-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CONH-(CHSi(OCH等のフッ素含有シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物等が挙げられる。
【0038】
シランカップリング剤の処理量としては、球状シリカ粒子100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上がさらに好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下がより好ましい。
【0039】
シランカップリング剤で処理する方法としては、例えば、球状シリカ粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、球状シリカ粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
【0040】
なお、球状シリカ粒子の表面がシランカップリング剤で処理されていることは赤外分光(IR)によるシランカップリング剤の置換基によるピークの検出により確認できる。また、シランカップリング剤の付着量は、炭素量により測定できる。
【0041】
球状シリカ粒子は、樹脂層中に0.1~60.0質量%の範囲で含まれるのが好ましい。樹脂層における球状シリカ粒子の含有量が0.1質量%以上であるとフィルム同士の面接触が減るのでアンチブロッキング性を発揮でき、60.0質量%以下であると樹脂とシリカ粒子の界面の面積が減るためフィルムの透明性の低下を抑制できる。
樹脂層における球状シリカ粒子の含有量は、0.5質量%以上であるのがより好ましく、0.7質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以上が特に好ましく、また、30.0質量%以下であるのがより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましく、10.0質量%以下が特に好ましい。
【0042】
(樹脂)
樹脂層に用いられる樹脂は、フィルムの用途に応じて適宜選択でき特に限定されないが、光学用途に用いる場合は透明性のものが好ましい。樹脂層は、機械的強度をより良くする観点から、硬化性樹脂の硬化物を含むのが好ましい。硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。つまり、樹脂層は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物または電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により硬化する樹脂組成物である。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0045】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルの総称を意味する。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称を意味する。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも使用できる。
【0046】
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0047】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用できる。
【0048】
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0049】
また、樹脂混練物の粘度を調整するなどの目的で、電離放射線硬化性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速められるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0051】
樹脂層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む場合、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物に加えて、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂を含むことで、樹脂混練物の粘度が上がるため、球状シリカ粒子が沈みにくくなり、球状シリカ粒子に基づく凸部の間にバインダー樹脂が流れ落ちにくくなる。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル(AN)樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられ、透明性の観点からアクリル系樹脂を用いるのが好ましく、環境負荷の観点からセルロース系樹脂を用いるのが好ましい。
【0053】
本発明において、樹脂層に用いられる樹脂は屈折率が1.40~1.50の範囲にある樹脂であるのが好ましい。前記範囲の屈折率はシリカの屈折率と近いため、屈折率が前記範囲にある樹脂は光の干渉を受けにくく、よってフィルムの透明性を高められる。
【0054】
屈折率が1.40~1.50の範囲である樹脂としては、例えば、ポリ-4-メチルペンテン-1(屈折率1.47)、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.50)、酢酸セルロース樹脂(屈折率1.46~1.50)、シリコーン樹脂(屈折率1.43)、ジエチレングリコールビスアリルカーボ―ネート樹脂(屈折率1.50)、ポリアセタール(屈折率1.48)、ポリプロピレン(屈折率1.49)、ポリ三フッ化塩化エチレン(屈折率1.43)、ポリフッ化ビニリデン(屈折率1.42)、四フッ化エチレンエチレン共重合体(屈折率1.42)等が挙げられる。屈折率は1.41~1.49がより好ましく、1.42~1.48がさらに好ましい。
【0055】
なお、樹脂の屈折率はアッベ屈折計(JIS K 7142)により測定するものである。
【0056】
樹脂層における樹脂の含有量は、40.0~99.9質量%の範囲であるのが好ましい。樹脂の含有量が40.0質量%以上であると樹脂層をフィルム状に成型でき、99.9質量%以下であると添加したシリカ粒子によりアンチブロッキング性を付与できる。
樹脂層における樹脂の含有量は、70.0質量%以上であるのがより好ましく、80.0質量%以上がさらに好ましく、90.0質量%以上が特に好ましく、また、99.5質量%以下であるのがより好ましく、99.7質量%以下がさらに好ましく、99.0質量%以下が特に好ましい。
【0057】
(その他の成分)
樹脂層には本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、紫外線吸収剤などの光安定剤、紫外線散乱剤、赤外線吸収剤、赤外線散乱剤、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、色材、体質顔料、樹脂粒子、分散剤、難燃剤、滑剤、消泡剤等が挙げられる。
任意成分の含有量は、本発明のフィルムの用途や厚み等にもよるが、樹脂層中60.0質量%以下であるのが好ましく、30.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下がさらに好ましい。
【0058】
(樹脂層の厚み)
樹脂層の厚みは特に限定されないが、1.0~100μmであることが好ましく、1.5~50μmがより好ましく、2.0~30μmであることがさらに好ましい。
フィルムが樹脂層のみからなるときのフィルムの厚みも前記範囲であるのが好ましく、用途に応じて適宜設定できる。
【0059】
樹脂層(フィルム)の厚みは、デジタルノギス(例えば、株式会社ミツトヨ製「クーラントプールフマイクロメータ」)を使用し、層中の3点を測り、その平均値を求める。
【0060】
(樹脂層の製造)
樹脂層の製造方法は特に限定されないが、例えば、球状シリカ粒子および樹脂を混練した樹脂混練物を調製した後、前記樹脂混練物を支持体上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて溶剤等の揮発性の成分を除去することを含む。これにより、樹脂層が支持体上に形成される。前記樹脂混練物は各種溶剤を含んでいてもよく、作製後の樹脂層(フィルム)が防眩性を失わない範囲であれば、前述した添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0061】
使用する溶剤は、樹脂や添加剤の種類によって適宜選択でき、少なくとも固形分を均一に溶解できるものであればよい。溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等を例示できる。これらの溶剤は単独で使用してもよいし、2種以上の溶剤を使用してもよい。樹脂の溶解性の観点から、溶剤は極性基を含むことが好ましい。
【0062】
支持体としては、特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム等の公知のフィルムが挙げられる。支持体の表面には、形成されたシートである樹脂混練物の剥離性を向上させる目的で、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素等の表面処理剤によりあらかじめ表面処理してもよい。支持体の厚さは特に限定されず、例えば10~100μmが挙げられる。
【0063】
樹脂混練物を支持体上に塗布する方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーター等の方法が挙げられる。
【0064】
塗布膜の乾燥は、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線等が用いられる。乾燥温度及び乾燥時間は特に限定されず、例えば、乾燥温度60~200℃、かつ、乾燥時間1~360分の範囲が挙げられる。
【0065】
塗布膜の厚さは、特に限定されず、乾燥後の厚みで、例えば1.0~100μmとすることが挙げられ、1.5~50μmであってもよく、2.0~30μmであってもよい。
【0066】
また、前記乾燥工程後、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂の種類に応じて、電離放射線の照射や加熱によって樹脂を硬化させてもよい。
電離放射線が紫外線である場合、光源として、遠紫外線ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザー等の光源)等を使用できる。
【0067】
球状シリカ粒子の密着性等の観点から、樹脂混練物に対する球状シリカ粒子の総含有量は0.1~60質量部であるのが好ましく、0.5~30質量部がより好ましく、1.0~10質量部が更に好ましい。
【0068】
そして、支持体上に形成された樹脂層を当該支持体から分離することでフィルムが得られる。樹脂層は球状シリカ粒子によって光学機能を持ち、例えば、防眩性を示す防眩層等として光学フィルムに好適に用いられる。
【0069】
<積層体>
本発明のフィルムは、樹脂層単層からなるものでもよいし、樹脂層に任意の層が積層された2層以上の積層体であってもよい。任意の層としては、例えば、基材層、反射防止層、帯電防止層、防汚層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられ、これらの層の順番は特に限定されない。前記樹脂層は単一の層であってもよいし、複数の樹脂層が積層されたものであってもよい。また、前記樹脂層自体に、紫外線吸収性能、帯電防止性能、屈折率調整機能、硬度調整機能などの機能が更に付与されていてもよい。各層間の接着性向上のために、各層間にプライマー層や接着層等を設けてもよい。
【0070】
積層体が光学用途で用いられる場合、積層体の構成の一例としては、基材層の上に光学機能層である防眩層を有し、防眩層の基材とは反対側の表面が光学積層体の凹凸表面であるものである。防眩層は、基材層の少なくとも一方の面に積層されていればよく、両面に積層されていてもよいが、取り扱い性、機械的特性、生産性などの点から、通常、片面のみに積層されていることが好ましい。
【0071】
積層体が基材層を有する場合、本発明の積層体の基材層は、フィルムの透明性を高める観点から、透明基材層であるのが好ましい。樹脂層は、透明基材層の少なくとも一方の面に直接又は一層以上の他の層を介して積層されているのが好ましい。
【0072】
基材層の材質は特に限定されず、ガラス、セラミックス、及び樹脂を使用できる。この中でも、加工性という観点から、樹脂を用いるのが好ましい。好ましい樹脂としては、透明性ポリマー、例えば、セルロース誘導体(セルローストリアセテート(TAC)、セルロースジアセテート等のセルロースアセテート等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート系樹脂等)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)等)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等)、ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィン系樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニリデン等)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、酢酸ビニル又はビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール等)等を例示できる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの総称を意味する。これらの中でも透明性の観点からアクリル系樹脂がより好ましい。
【0073】
透明基材層の透明度は、可視光線透過率(T、ISO 9050:2003により測定される可視光線透過率)が80%以上であるのが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0074】
基材層の厚みは特に限定されないが、例えば、1.0~99μmであることが好ましく、1.5~50μmがより好ましく、2.0~50μmであることがさらに好ましい。
【0075】
(積層体の厚み)
積層体の厚みは、用途に応じて適宜調整すればよいが、例えば、液晶表示装置や有機ELディスプレイ等の表示装置に用いる場合は、3~100μmであるのが好ましく、5~70μmがより好ましく、20~50μmがさらに好ましい。
【0076】
積層体の厚みは、デジタルノギスにより測定でき、測定方法は樹脂層(フィルム)の測定と同様である。
【0077】
(積層体の製造)
積層体は、上記した樹脂層と任意の層を積層することを含んで製造される。例えば、球状シリカ粒子および樹脂組成物を混練した樹脂混練物を調製した後、前記樹脂混練物を基材層の上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて溶剤等の揮発性の成分を除去することにより、前記樹脂層を基材層上に形成する。前記樹脂混練物は各種溶剤を含んでいてもよく、作製後の積層体(フィルム)が防眩性を失わない範囲であれば、前述した添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0078】
溶剤としては、前記樹脂層の製造に用いるものと同様のものを使用できる。
【0079】
樹脂混練物を基材層上に塗布する方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーター等の方法が挙げられる。
【0080】
塗布膜の乾燥は、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線等が用いられる。乾燥温度及び乾燥時間は特に限定されず、例えば、乾燥温度40~120℃、かつ、乾燥時間1~20分の範囲が挙げられる。
【0081】
塗布膜の厚さは、フィルムの厚みが上記した1.0~100μmの範囲となるように調整すればよく特に制限されないが、例えば、乾燥後の厚みで、塗布膜を1.0~99μmとすることが挙げられ、1.5~50μmであってもよく、2.0~30μmであってもよい。
【0082】
また、前記乾燥工程後、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂の種類に応じて、電離放射線の照射や加熱によって樹脂を硬化させてもよい。
電離放射線が紫外線である場合、光源として、遠紫外線ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザー等の光源)等を使用できる。
【0083】
シリカ粒子の密着性等の観点から、樹脂混練物に対する球状シリカ粒子の総含有量は0.1~10質量部であるのが好ましく、0.5~5.0質量部がより好ましく、1.0~3.0質量部が更に好ましい。
【0084】
<フィルムの光学特性の評価>
(動摩擦係数)
本発明のフィルムは最表層のいずれか一方に樹脂層を備え、樹脂層の表面に凹凸を有しており、そのラフネスは動摩擦係数によって表される。なお、本明細書において、動摩擦係数はフィルムの樹脂層の表面における動摩擦係数を指す。
【0085】
動摩擦係数の測定は、静・動摩擦測定機(例えば、株式会社トリニティーラボ製「TL201Tt」)を用い、以下の手順によって実施できる。
接触子はウレタン製疑似指とし、荷重は50gfとし、走査距離は40mmとし、走査速度は10mm/secとし、フィルムの樹脂層表面が接触子と接するようにしてフィルムを静・動摩擦測定機にセットし測定する。得られた摩擦係数のうち、1,000msecから4,000msecの範囲の平均値を動摩擦係数とする。
【0086】
動摩擦係数は、0.80以下であるのが好ましく、0.78以下がより好ましく、0.76以下がさらに好ましい。動摩擦係数の値が小さいほど摩擦力が小さくアンチブロッキング性に優れるため、下限は特に限定されない。
【0087】
(Haze)
本発明のフィルムの透明性は、ヘーズ(Haze)によって表される。
Hazeは、ヘーズメーター(例えば、日本電色工業株式会社製「HAZE METER NDH 7000」)を用いて、JIS K7136:2000に規定されている方法に従って測定できる。
【0088】
Hazeは、20.0%以下であるのが好ましく、15.0%以下がより好ましく、10.0%以下がさらに好ましい。Hazeは測定値が小さいほど好ましいため下限は特に限定されない。
【0089】
(全光透過率)
また、本発明のフィルムの透明性は、全光透過率によって表される。
全光透過率は、ヘーズメーター(例えば、日本電色工業株式会社製「HAZE METER NDH 7000」)を用いて、JIS K7136:2000に規定されている方法に従って測定できる。
【0090】
全光透過率は、90.0%以上であるのが好ましく、95.0%以上がより好ましく、98.0%以上がさらに好ましい。全光透過率は測定値が高いほど好ましいため上限は特に限定されない。
【0091】
(粗さ曲線の算術平均粗さ:Ra)
本発明のフィルムの粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定する。基準長さ(カットオフ値)λcは0.8mmとする。測定に際しては、表面粗さ測定機(例えば、株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SJ-310」)を用い、フィルムの製造時の流れ方向に対して直交する方向について3か所、および平行な方向について3か所の計6か所についてRaを求め、それらの平均値をフィルム表面のRaとする。
【0092】
(粗さ曲線の最大高さ粗さ:Rz)
本発明のフィルムの粗さ曲線の粗さ曲線の(Rz)は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定する。基準長さ(カットオフ値)λcは0.8mm、λsは2.5μmとする。測定に際しては、表面粗さ測定機(例えば、株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SJ-310」)を用い、基準長さの中で、最大山高さZpと最大谷深さZvの差をRzとする。
【0093】
(十点平均粗さ:RzJIS)
本発明のフィルムの十点平均粗さ(RzJIS)、はJIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定する。基準長さ(カットオフ値)λcは0.8mm、λsは2.5μmとする。測定に際しては、表面粗さ測定機(例えば、株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SJ-310」)を用い、基準長さの粗さ曲線において、最大山高さから5番目までの山高さの平均と、最大谷深さから5番目までの谷深さの平均との和をRzJISとする。
【0094】
<用途>
本発明のフィルムは、防眩性等の光学機能を示し、ぎらつきやヘーズ、干渉による構造色の影響を抑えられるため光学フィルムとして好適に利用できる。例えば、種々の表示装置、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ、タッチパネル付き表示装置などの防眩フィルムや光拡散OCR、光拡散粘着層として利用でき、特に、LCD、有機ELディスプレイの光学要素として有用である。
【0095】
上記したとおり、本発明には以下の<1>~<13>の構成が含まれる。
<1>樹脂と球状シリカ粒子を含む樹脂層を有し、前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.5m/g以下であるフィルム。
<2>前記球状シリカ粒子のメジアン径(D50)が1.0~30.0μmである、前記<1>に記載のフィルム。
<3>前記球状シリカ粒子の円形度が0.85以上である、前記<1>又は<2>に記載のフィルム。
<4>前記樹脂層中の前記球状シリカ粒子の含有量が0.1~60.0質量%である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のフィルム。
<5>前記球状シリカ粒子のBET比表面積が4.0m/g以下である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載のフィルム。
<6>前記樹脂の屈折率が1.40~1.50である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載のフィルム。
<7>さらに透明基材層を有し、前記透明基材層の少なくとも一方の面に前記樹脂層が直接又は一層以上の他の層を介して積層されている、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のフィルム。
<8>動摩擦係数が0.80以下である、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載のフィルム。
<9>ヘーズが20.0%以下である、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載のフィルム。
<10>膜厚が1.0~100μmである、前記<1>~<9>のいずれか1つに記載のフィルム。
<11>光学フィルムである、前記<1>~<10>のいずれか1つに記載のフィルム。
<12>前記<1>~<11>のいずれか1つに記載のフィルムを有する表示装置。
<13>液晶表示装置又は有機ELディスプレイである、前記<12>に記載の表示装置。
【実施例0096】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。例1~4、11~14は実施例であり、例5~10、15~19は比較例である。
【0097】
<試験例1>
(例1)
容器にメタノール4.95gとポリ酢酸ビニル4.95gを加え、ポリ酢酸ビニルの50質量%メタノール溶液を調製した。そこに、メタノール9.9g、球状シリカ粒子(BET比表面積:1.3m/g、メジアン径(D50):3.0μm、円形度:0.92)0.2gを加え、混練機「あわとり練太郎」(商品名、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで120秒間混練し、樹脂混練物を得た。
この樹脂混練物を、透明基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、東レ株式会社製「ルミラー50U-48」、厚み26~75μm、可視光線透過率91%)上に、自動塗工装置(オールグッド社製「小型自動フィルムアプリケーター」)を用いてバード式アプリケーターで塗布厚みが90μmとなるように塗工した。塗工速度は10mm/sとした。
その後、40℃で3時間乾燥し、透明基材の表面に樹脂層が形成されたフィルムを得た。
【0098】
(例2)
球状シリカ粒子としてBET比表面積が4.0m/g、メジアン径(D50)が3.0μm、円形度が0.93の球状シリカ粒子を使用した以外は、例1と同様の操作でフィルムを得た。
【0099】
(例3)
球状シリカ粒子としてBET比表面積が0.8m/g、メジアン径(D50)が4.1μm、円形度が0.94の球状シリカ粒子を使用した以外は、例1と同様の操作でフィルムを得た。
【0100】
(例4)
容器にメタノール4.75gとポリ酢酸ビニル4.75gを加え、ポリ酢酸ビニルの50質量%メタノール溶液を調製した。そこに、メタノール9.5g、球状シリカ粒子(BET比表面積:0.8m/g、メジアン径(D50):4.1μm、円形度:0.94)1.0gを加え、混練機「あわとり練太郎」(商品名、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで120秒間混練し、樹脂混練物を得た。
この樹脂混練物を用いて、例1と同様にして透明基材上に塗膜を形成した後、40℃で3時間乾燥し、透明基材の表面に樹脂層が形成されたフィルムを得た。
【0101】
(例5)
容器にメタノール5.0gとポリ酢酸ビニル5.0gを加え、ポリ酢酸ビニルの50質量%メタノール溶液を調製した。そこに、メタノール10.0gを加え、混練機「あわとり練太郎」(商品名、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで120秒間混練し、樹脂混練物を調製した。
この樹脂混練物を用いて、例1と同様にして透明基材上に塗膜を形成した後、40℃で3時間乾燥し、透明基材の表面に樹脂層が形成されたフィルムを得た。
【0102】
(例6)
球状シリカ粒子に代えて不定形シリカ粒子(水澤化学工業社製「ミズカシル P-603」、BET比表面積:30.0m/g、メジアン径(D50):3.0μm、円形度:0.80)を使用した以外は、例1と同様の操作でフィルムを得た。
【0103】
(例7)
球状シリカ粒子に代えて粒子状の珪藻土(オプライト工業社製「オプライト W3005K」、メジアン径(D50):2.5μm、円形度:0.75)を使用した以外は、例1と同様の操作でフィルムを得た。
【0104】
(例8)
球状シリカ粒子に代えてポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂粒子(松本油脂製薬社製「M-201」、メジアン径(D50):5.0μm、円形度:0.90)を使用した以外は、例4と同様の操作でフィルムを得た。
【0105】
(例9)
球状シリカ粒子に代えてBET比表面積の大きい球状シリカ粒子(AGCエスアイテック社製「NP-30」、BET比表面積:34.0m/g、メジアン径(D50):4.2μm、円形度:0.93)を使用した以外は、例4と同様の操作でフィルムを得た。
【0106】
(例10)
球状シリカ粒子に代えて不定形シリカ粒子(水澤化学工業社製「ミズカシル P-603」、BET比表面積:30.0m/g、メジアン径(D50):3.0μm、円形度:0.80)を使用した以外は、例4と同様の操作でフィルムを得た。
【0107】
例1~10で用いた粒子および得られたフィルムについて、以下の測定を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0108】
<メジアン径の測定>
粒子のメジアン径は、コールターカウンター装置(ベックマン・コールター社製「MultisizerIII」)を用いて、コールターカウンター法によって測定し、体積基準にて算出した。
【0109】
<BET比表面積、細孔容積>
粒子のBET比表面積、細孔容積は、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「BELSORP-mini II」)を用いてBET法とBJH法によって測定した。
【0110】
<円形度>
粒子の円形度は、走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影して得られる写真投影図における任意の100個の粒子について、それぞれの最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)とを測定し、最大径(DL)に対する最小径(DS)の比(DS/DL)を算出し、平均値を求めた。
【0111】
<膜厚>
デジタルノギス(クーラントプールフマイクロメータ、株式会社ミツトヨ製)を使用し、フィルムの樹脂層中の3点の厚みを測り、その平均値を樹脂層の膜厚とした。
【0112】
<ヘーズ、全光透過率>
ヘーズ、全光透過率は、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製「HAZE METER NDH 7000」)を用いて、JIS K7136:2000に規定されている方法に従って測定した。
【0113】
<動摩擦係数>
動摩擦係数は、静・動摩擦測定機(株式会社トリニティーラボ製「TL201Tt」)を用いて求めた。接触子はウレタン製疑似指とし、荷重は30gfとし、走査距離は40mmとし、走査速度は10mm/secとし、透明基材上に樹脂層が形成されたフィルムを、樹脂層表面が接触子と接するようにして静・動摩擦測定機にセットし測定した。得られた摩擦係数のうち、1,000msecから4,000msecの範囲の平均値を動摩擦係数とした。
【0114】
<粗さ曲線の算術平均粗さ:Ra>
粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定した。基準長さ(カットオフ値)λcは0.8mmとした。測定に際しては、表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SJ-310」)を用い、フィルムの製造時の流れ方向に対して直交する方向について3か所、および平行な方向について3か所の計6か所についてRaを求め、それらの平均値をフィルム表面のRaとした。
【0115】
<粗さ曲線の最大高さ粗さ:Rz>
粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定した。基準長さ(カットオフ値)λcは0.8mm、λsは2.5μmとした。測定に際しては、表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SJ-310」)を用い、基準長さの中で、最大山高さZpと最大谷深さZvの差をRzとした。
【0116】
<十点平均粗さ:RzJIS>
十点平均粗さ(RzJIS)は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定した。基準長さ(カットオフ値)λcは0.8mm、λsは2.5μmとした。測定に際しては、表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製「SURFTEST SJ-310」)を用い、基準長さの粗さ曲線において、最大山高さから5番目までの山高さの平均と、最大谷深さから5番目までの谷深さの平均との和をRzJISとした。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
例1~10のフィルムは基材表面に膜厚が15μm付近の樹脂層を形成している。表1及び表2に示すとおり、例1~4のフィルムは、例5のフィルムと比べて、樹脂層に球状シリカ粒子を添加することで動摩擦係数が小さくなりアンチブロッキング性が向上した。例1~3と例6,7の比較より、BET比表面積が4.5m/g以下である球状シリカ粒子を用いることでヘーズを小さくでき、透明性が向上することがわかった。また、例4と例8~10の比較より、フィラー粒子を高配合しても透明性が下がり難いことがわかった。
【0120】
<試験例2>
(例11)
容器にメタノール4.95gとポリ酢酸ビニル4.95gを加え、ポリ酢酸ビニルの50質量%メタノール溶液を調製した。そこに、メタノール9.9g、球状シリカ粒子(BET比表面積:0.4m/g、メジアン径(D50):11.0μm、円形度:0.92)0.2gを加え、混練機「あわとり練太郎」(商品名、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで120秒間混練し、樹脂混練物を得た。
この樹脂混練物を、透明基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、東レ株式会社製「ルミラー50U-48」、厚み26~75μm、可視光線透過率91%)上に、自動塗工装置(オールグッド社製「小型自動フィルムアプリケーター」)を用いてバード式アプリケーターで塗布厚みが200μmとなるように塗工した。塗工速度は10mm/sとした。
その後、40℃で3時間乾燥し、透明基材の表面に樹脂層が形成されたフィルムを得た。
【0121】
(例12)
容器にメタノール4.75gとポリ酢酸ビニル4.75gを加え、ポリ酢酸ビニルの50質量%メタノール溶液を調製した。そこに、メタノール9.5g、球状シリカ粒子(BET比表面積:4.0m/g、メジアン径(D50):3.0μm、円形度:0.93)1.0gを加え、混練機「あわとり練太郎」(商品名、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで120秒間混練し、樹脂混練物を得た。
この樹脂混練物を用いて、例11と同様にして透明基材上に塗膜を形成した後、40℃で3時間乾燥し、透明基材の表面に樹脂層が形成されたフィルムを得た。
【0122】
(例13)
球状シリカ粒子としてBET比表面積が0.8m/g、メジアン径(D50)が4.1μm、円形度が0.94の球状シリカ粒子を使用した以外は、例12と同様の操作でフィルムを得た。
【0123】
(例14)
球状シリカ粒子としてBET比表面積が0.4m/g、メジアン径(D50)が11.0μm、円形度が0.92の球状シリカ粒子を使用した以外は、例12と同様の操作でフィルムを得た。
【0124】
(例15)
容器にメタノール5.0gとポリ酢酸ビニル5.0gを加え、ポリ酢酸ビニルの50質量%メタノール溶液を調製した。そこに、メタノール10.0gを加え、混練機「あわとり練太郎」(商品名、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで120秒間混練し、樹脂混練物を調製した。
この樹脂混練物を用いて、例11と同様にして透明基材上に塗膜を形成した後、40℃で3時間乾燥し、透明基材の表面に樹脂層が形成されたフィルムを得た。
【0125】
(例16)
球状シリカ粒子に代えて不定形シリカ粒子(水澤化学工業社製「ミズカシル P-603」、BET比表面積:30.0m/g、メジアン径(D50):3.0μm、円形度:0.80)を使用した以外は、例11と同様の操作でフィルムを得た。
【0126】
(例17)
球状シリカ粒子に代えて不定形シリカ粒子(水澤化学工業社製「ミズカシル P-603」、BET比表面積:30.0m/g、メジアン径(D50):3.0μm、円形度:0.80)を使用した以外は、例12と同様の操作でフィルムを得た。
【0127】
(例18)
球状シリカ粒子に代えて粒子状の珪藻土(オプライト工業社製「オプライト W3005K」、メジアン径(D50):2.5μm、円形度:0.75)を使用した以外は、例12と同様の操作でフィルムを得た。
【0128】
(例19)
球状シリカ粒子に代えてBET比表面積の大きい球状シリカ粒子(AGCエスアイテック社製「NP-100」、BET比表面積:127.0m/g、メジアン径(D50):10.4μm、円形度:0.95)を使用した以外は、例12と同様の操作でフィルムを得た。
【0129】
例11~19で用いた粒子および得られたフィルムについて、試験例1と同様の測定を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
例11~19のフィルムは基材表面に膜厚が30μm付近の樹脂層を形成している。表3及び表4に示すとおり、例11~14のフィルムは、例15のフィルムと比べて、樹脂層に球状シリカ粒子を添加することで動摩擦係数が小さくなりアンチブロッキング性が向上した。例11と例16の比較より、BET比表面積が4.5m/g以下である球状シリカ粒子を用いることでヘーズを小さくでき、透明性が向上することがわかった。また、例11~13と例17~19の比較より、フィラー粒子を高配合しても透明性が下がり難いことがわかった。