(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017031
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電磁波シールド用フィルム、電子モジュール、電子モジュールの製造方法、及びインクジェット装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/00 20060101AFI20240201BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240201BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240201BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L23/00 C
H05K9/00 M
B05C5/00 101
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119396
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】福田 智男
(72)【発明者】
【氏名】志連 陽平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】増子 龍也
(72)【発明者】
【氏名】小西 鷹介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘司
(72)【発明者】
【氏名】中森 英雄
(72)【発明者】
【氏名】畑中 伸一
(72)【発明者】
【氏名】若林 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】平塚 弘行
【テーマコード(参考)】
4F041
4F100
5E321
【Fターム(参考)】
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA21
4F041BA34
4F041BA56
4F100AK19A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100JD08B
4F100JD08C
4F100JG04A
4F100JG06D
5E321AA23
5E321BB21
5E321BB23
5E321BB25
5E321BB31
5E321BB44
5E321BB53
5E321BB57
5E321CC16
5E321GG11
(57)【要約】
【課題】電磁波吸収または反射機能を向上する電磁波シールド用フィルムを提供する。
【解決手段】電磁波シールド用フィルムは、絶縁体層と、電磁波吸収/反射機能を有する機能層とを有し、下記構成1から構成3のうちの少なくとも1つを備える電磁波シールド用フィルム。構成1:前記絶縁体層上に、複数の前記機能層が形成される。構成2:前記絶縁体層の表面と裏面の双方に前記機能層が形成される。構成3:前記絶縁体層の表面に、面内方向に沿って複数の機能層が形成されると共に、前記複数の機能層のうちの少なくとも1つと重なる磁性体層を更に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層と、電磁波吸収/反射機能を有する機能層とを有し、
下記構成1から構成3のうちの少なくとも1つを備える電磁波シールド用フィルム。
構成1:前記絶縁体層上に、複数の前記機能層が形成される。
構成2:前記絶縁体層の表面と裏面の双方に前記機能層が形成される。
構成3:前記絶縁体層の表面に、面内方向に沿って複数の機能層が形成されると共に、前記複数の機能層のうちの少なくとも1つと膜厚方向で重なる磁性体層を更に有する。
【請求項2】
前記構成1及び前記構成2の少なくとも一方を備える電磁波シールド用フィルムが、前記機能層及び前記絶縁体層の少なくとも一方の所定領域を覆う磁性体層を更に有する、
請求項1に記載の電磁波シールド用フィルム。
【請求項3】
前記絶縁体層が、PVDFである、
請求項1又は2に記載の電磁波シールド用フィルム。
【請求項4】
電子部品と、前記電子部品を実装する電子基板を含む基材と、
前記基材の表面に設けられる請求項1又は2に記載の電磁波シールド用フィルムと、
を備える電子モジュール。
【請求項5】
絶縁体層と、電磁波吸収/反射機能を有する機能層とを含む電磁波シールド用フィルムを生成するフィルム生成工程と、
生成した電磁波シールド用フィルムを基材の表面に接着させる基材接着工程と、
を含み、
前記フィルム生成工程は、
前記絶縁体層上に、複数の前記機能層を膜厚方向に形成する工程、
前記絶縁体層の表面と裏面の双方に前記機能層を形成する工程、
前記絶縁体層上に、面内方向に沿って複数の機能層を形成する工程
の少なくとも1つを含む、
電子モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記電磁波シールド用フィルムの所定領域を覆う磁性体層を非接触で形成する磁性体層形成工程を更に含む、
請求項5に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁体層が、所定波長帯の光に対して所定の透過率を有し、
前記フィルム生成工程において、前記絶縁体層を通して、前記所定波長帯の光を前記絶縁体層上に形成された導電膜に照射し、前記導電膜を硬化させて前記機能層を形成する、
請求項5又は6に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記フィルム生成工程において、前記所定波長帯の光を前記絶縁体層の表面側及び裏面側から照射する、
請求項7に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記所定波長帯の光が、400nm以下の波長帯の光である、
請求項7に記載の電子モジュールの製造方法。
【請求項10】
電磁波シールド用フィルムの基部となる絶縁体層の第1の面と対向して電磁波吸収/反射機能を有する機能性インクを前記第1の面に吐出する第1ヘッドと、
前記絶縁体層の前記第1の面と反対側の第2の面と対向して、前記機能性インクを前記第2の面に吐出する第2ヘッドと、
を備えるインクジェット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド用フィルム、電子モジュール、電子モジュールの製造方法、及びインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(Integrated Circuit:IC)等の電子部品の高速化・高性能化を図るため、電子部品を実装する電子基板の高集積化が進んでいる。それに伴い、電子部品等に配線パターンを3次元に形成した立体回路により配線の高密度化・微細化を図る技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、電子部品は、例えば電磁波シールド用フィルムによって、外部から伝搬する不要電磁波から保護される。前述のように、電子部品の高速化・高性能化が図られると共に、第5世代(5G)移動通信システム等の高周波数帯の電磁波を用いる通信サービスの提供開始等の事情と相まって、電磁波シールド用フィルムの高機能化が求められている。
【0004】
ひとつの側面で、本発明は、電磁波吸収または反射機能を向上する電磁波シールド用フィルムを提供する。なお、以下で「電磁波吸収または反射」を示す場合に「電磁波吸収/反射」と表記する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、電磁波シールド用フィルムは、絶縁体層と、電磁波吸収/反射機能を有する機能層とを有し、下記構成1及び構成3のうちの少なくとも1つを備える。
構成1:前記絶縁体層上に、複数の前記機能層が形成される。
構成2:前記絶縁体層の表面と裏面の双方に前記機能層が形成される。
構成3:前記絶縁体層の表面に、面内方向に沿って複数の機能層が形成されると共に、前記複数の機能層のうちの少なくとも1つと膜厚方向で重なる磁性体層を更に有する。
【発明の効果】
【0006】
開示の実施形態によれば、電磁波吸収/反射機能を向上した電磁波シールド用フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る電磁波シールド用フィルムの構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る電子モジュールの製造方法の例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態における第1機能層形成工程を説明するための模式図である。
【
図4】第1実施形態における誘電体層形成工程を説明するための模式図である。
【
図5】第1実施形態における第2機能層形成工程を説明するための模式図である。
【
図6】第1実施形態における基材接着工程を説明するための模式図である。
【
図7A】第1実施形態に係る電子モジュールの部分断面図である。
【
図7B】第1実施形態の変形例に係る電子モジュールの部分断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る電磁波シールド用フィルムの構成例を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る電子モジュールの製造方法の例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における第1機能層形成工程を説明するための模式図である。
【
図11】第2実施形態における第2機能層形成工程を説明するための模式図である。
【
図12】第2実施形態における基材接着工程を説明するための模式図である。
【
図13】第2実施形態に係る電子モジュールの部分断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る電磁波シールド用フィルムの構成例を示す図である。
【
図16】第3実施形態に係る電子モジュールの製造方法の例を示すフローチャートである。
【
図17】第3実施形態における機能層形成工程を説明するための模式図である。
【
図18】第3実施形態における基材接着工程を説明するための模式図である。
【
図19】第3実施形態における磁性体層形成工程を説明するための模式図、及び電子モジュールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明の実施形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10について説明する。
【0010】
本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10は、例えば、電子モジュールの電磁両立性(Electromagnetic Compatibility:EMC)を高める用途で使用される。
【0011】
ここで、電子モジュールの例として、CPU(Central Processing Unit)パッケージ、メモリチップパッケージ、音源チップパッケージ、電源チップパッケージ等の半導体パッケージが挙げられる。また、実施形態に係る電子モジュールは、スマートフォン等の携帯通信端末や、パーソナルコンピュータ、各種サーバ等の情報処理装置に設けられてもよい。
【0012】
また、電子モジュールは、電子部品と、電子部品を実装するプリント基板とを含む。電子部品の例として、半導体チップ等の集積回路(Integrated Circuit:IC)、トランジスタ又はダイオード等の能動素子、コンデンサ、インダクタ、又は抵抗等の受動素子が挙げられる。なお、プリント基板は、「電子基板」の一例である。
【0013】
<電磁波シールド用フィルム10の構成例>
図1を参照して、第1実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10の構成の例を説明する。
図1(a)は、第1実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10の平面図である。また、
図1(b)は、第1実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10の断面図であり、
図1(a)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0014】
図1(a)に示されるように、電磁波シールド用フィルム10は、絶縁体層11と、絶縁体層11の表面11aに形成され、電磁波吸収/反射機能を有する複数の機能層12(12a,12b)とを含む。複数の機能層12aと12bは、間に誘電体層13を挟んで膜厚方向に一部重なり合っていてもよい。なお、本実施形態の絶縁体層11において、機能層12が設けられている側の面を「表面」又は「第1の面」と称する。また、本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10は、例えば、機能層12を覆い、磁気シールド機能を有する磁性体層を更に有してもよい。また、絶縁体層11を「基部」と言う場合がある。
【0015】
絶縁体層11の例として、可撓性を有する高分子フィルムが挙げられる。特に限定されないが、高分子フィルムの例として、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PolyVinylidene DiFluoride:PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(Polytetrafluoroethylene:PTFE))等が挙げられる。この中で、高誘電率を有するPVDFが好ましい。
【0016】
絶縁体層11として高分子フィルムを用いることで、フレキシブルな電磁波シールド用フィルム10を得ることができる。すなわち、曲面や屈曲面にも適用可能な電磁波シールド用フィルム10を得ることができる。
【0017】
また、本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10は、前述のように、電子モジュールに備わる電子部品やプリント基板等の基材50の表面に設けられる。このような基材50には、プリント基板の表面と、プリント基板の表面に突設される電子部品の側面及び表面を含む段差が形成される。フレキシブルな絶縁体層11を用いることで、このような段差形状を有する基材50にも、電磁波シールド用フィルム10を良好に接着することができる。
【0018】
本実施形態の複数の機能層12a,12bは、導電性を有し、絶縁体層11の表面11a上に形成される薄膜層である。また、機能層12a,12bは、金属や合金であってもよいし、例えば、金属粒子、炭素粒子、ナノカーボン材料、導電性樹脂粒子等の導電フィラーを含有する熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂であってもよい。
【0019】
熱硬化性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0020】
また、光硬化性樹脂として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0021】
本実施形態のこの構成によれば、少なくとも一部が重なり合う複数の機能層12a,12bを有することで、電磁波シールド用フィルム10の電磁波吸収/反射機能を高めることができる。複数の機能層12a、12bが重なり合う領域に所望のキャパシタンスを形成することができるからである。
【0022】
また、本実施形態の機能層12a,12bは、メタサーフェス構造を備えてもよい。より詳しくは、
図1(a)に示されるように、機能層12a,12bは、周期的に配置される導電体の複数の単位パターン121(121a,121b)を含む。なお、以下説明の便宜上、絶縁体層11に近い側で重なり合う領域を含む機能層12を「第1機能層12a」と言い、第1機能層12aの上側で重なる領域を含む機能層12を「第2機能層12b」と言う場合がある。また、第1機能層12aに含まれる単位パターン121を「第1単位パターン121a」と言い、第2機能層12bに含まれる単位パターン121を「第2単位パターン121b」と言う場合がある。なお、図示される単位パターンは、繰り返しパターンの一部に対応する。
【0023】
本実施形態の第1単位パターン121a及び第2単位パターン121bは、略同じ大きさの正方形の形状を呈しているが、これに限られない。ここで、「略同じ」とは、設計上大きさと形状が同じに設定されていることを意味し、許容範囲内の製造誤差が含まれていてもよい。また、第1単位パターン121a及び第2単位パターン121bの形状は、三角形や六角形のような正方形以外の形状であってもよい。
【0024】
また、
図1(a)に示されるように、複数の第1単位パターン121aの少なくとも一部は、第1単位パターン121aの外側に向かって延びる第1アーム122aを有する。更に、複数の第2単位パターン121bの少なくとも一部は、第2単位パターン121bの外側に向かって延びる第2アーム122bを有する。
【0025】
更に、
図1(b)に示されるように、第1単位パターン121aの第1アーム122aと、第1単位パターン121aに隣り合う第2単位パターン121bのアーム122bとは、誘電体層13を挟んで積層される。これにより、アーム122a,122b及び誘電体層13を含む容量結合部14が形成される。
【0026】
本実施形態のこの構成によれば、第1機能層12aと第2機能層12bとの重なり合いの面積と、間に挿入される誘電体層13の厚さ、及び誘電率を選択することで、所望の大きさの容量結合を得ることができる。すなわち、容量結合の大きさを所望の値に設定でき、より高い周波数に対するパターンサイズを維持しながら、機能層12の共振周波数を低周波側にシフトさせて、電磁波シールド用フィルム10の薄型化・小型化を図ることができる。電磁波シールド用フィルム10は、以下で述べるように、任意の基材、パッケージ基板、集積回路素子等の表面に適用してこれらの部品の電磁波特性を向上することができる。
【0027】
<電子モジュールの製造方法>
次に、
図2から
図7Bを参照して、第1実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10を含む電子モジュール70の製造方法を説明する。
図2は、本実施形態の製造方法を説明するフローチャートである。また、
図3から
図7Aは、本実施形態の製造方法の各工程の例、及びこれにより製造される電子モジュール70を説明するための模式図である。
図7Bは、本実施形態の変形例に係る電子モジュール71を説明するための模式図である。
【0028】
図2に示されるように、本実施形態の製造方法は、第1機能層形成工程S11と、誘電体層形成工程S12と、第2機能層形成工程S13と、基材接着工程S14とを含む。なお、第1機能層形成工程S11、誘電体層形成工程S12、第2機能層形成工程S13が、電磁波シールド用フィルム10の製造工程に対応する。そのため、これらの工程を総称して、「フィルム生成工程」と言う場合がある。
【0029】
図3を参照して、第1機能層形成工程S11を説明する。
図3(a)は、第1機能層12aが形成された状態の絶縁体層11の平面図である。また、
図3(b)は、第1機能層12aが形成された状態の絶縁体層11の断面図であり、
図3(b)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0030】
図3に示されるように、絶縁体層11の表面11a上に、第1機能層12aの第1単位パターン121aを形成する。第1アーム122aを含む第1単位パターン121aの全体を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。あるいは、第1単位パターン121aの第1アーム122aを除く本体部分を室温スパッタリング等で形成し、第1アーム122aをインクジェットのような印刷法で形成してもよい。ただし、第1単位パターン121aの形成方法は、これに限定されない。
【0031】
また、第1機能層12aを形成するための導電膜が、例えば、光硬化性樹脂を含む場合、導電膜に対して所定波長帯の光(例えば、400nm以下の波長帯の光)を絶縁体層11の表面11a側から照射し、導電膜を硬化させてもよい。
【0032】
また、絶縁体層11が、所定波長帯の光(例えば、400nm以下の波長帯の光)に対して所定の透過率(例えば、前記所定波長帯の光に対して70%以上の透過率)を有する場合、絶縁体層11の裏面11b側からも導電膜に対して光を照射してもよい。このようにすることで、第1機能層12aの形成スピードを速めることができる。
【0033】
続いて、誘電体層形成工程S12が行われる。
図4を参照して、誘電体層形成工程S12を説明する。
図4(a)は、第1機能層12a及び誘電体層13が形成された状態の絶縁体層11の平面図である。また、
図4(b)は、第1機能層12a及び誘電体層13が形成された状態の絶縁体層11の断面図であり、
図4(a)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0034】
図4に示されるように、第1機能層12aにおける第1単位パターン121aの第1アーム122aを覆うよう、誘電体層13を形成する。誘電体層13を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。ただし、誘電体層13の形成方法は、これに限定されない。また、全ての第1アーム122a上に、誘電体層13を形成せず、選択された所定のアーム122a上に形成するようにしてもよい。
【0035】
続いて、第2機能層形成工程S13が行われる。
図5を参照して、第2機能層形成工程S13を説明する。
図5(a)は、第1機能層12a、誘電体層13、第2機能層12bが形成された状態の絶縁体層11の平面図である。また、
図5(b)は、第1機能層12a、誘電体層13、第2機能層12bが形成された状態の絶縁体層11の断面図であり、
図5(a)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0036】
図5に示されるように、第1機能層12aの少なくとも一部と重ね合わせるよう、第2機能層12bを形成する。本実施形態の場合、誘電体層13を挟んで、第1機能層12aにおける第1単位パターン121aの第1アーム122aと、第2機能層12bにおける第2単位パターン121bの第2アーム122bとを重ねる。
【0037】
第2アーム122bを含む第2単位パターン121bの全体を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。あるいは、第2単位パターン121bの第2アーム122bを除く本体部分を室温スパッタリング等で形成し、第2アーム122bをインクジェットのような印刷法で形成してもよい。ただし、単位パターン121aの形成方法は、これに限定されない。また、第2機能層12bを形成するための導電膜が、例えば、光硬化性樹脂を含む場合、導電膜に対して所定波長帯の光(例えば、400nm以下の波長帯の光)を照射し、硬化させてもよい。
【0038】
続いて、基材接着工程S14が行われる。
図6を参照して、基材接着工程S14を説明する。
図6は、電磁波シールド用フィルム10に基材50を接着する基材接着装置60の断面模式図である。ここで、基材50は、電子部品51や電子部品51を実装するプリント基板52を含む。
【0039】
基材接着装置60は、電磁波シールド用フィルム10及び基材50を収容する筐体61と、電磁波シールド用フィルム10の端部を支持するフィルム支持部62と、筐体61内の空気を排気する排気手段63(例えば、ポンプ)と、基材50を電磁波シールド用フィルム10側に押し上げるリフト手段とを備える。
【0040】
基材接着装置60の排気手段63によって、筐体61内を排気し、リフト手段によって、電磁波シールド用フィルム10の絶縁体層11に基材50を押し当てる。これにより、電磁波シールド用フィルム10に基材50を接着させる。
【0041】
これらの工程を経た後、最終的に、
図7Aに示されるような電子モジュール70が得られる。本実施形態に係る電磁波シールド用フィルムの製造方法によれば、絶縁体層11に複数の機能層12a,12bを形成した後、基材50を絶縁体層11に接着させるため、絶縁体層11上に機能層12のパターンを高精度に形成することができる。また、電磁波シールド用フィルム10を基材50に接着させる簡便な工程によって電子モジュール70を生産できるため、電子モジュール70の生産性を高めることができる。
【0042】
図7Bは、電子モジュール70の変形例である電子モジュール71の模式図である。電子モジュール71では、基材50への電磁波シールド用フィルム10の貼付面を逆にする。より詳しくは、基材接着工程S14の際に、フィルム生成工程を経て製造された電磁波シールド用フィルム10の裏表を反転させて、機能層12a及び12bが形成された面を、基材50の表面に適用する。
図7Aに示される電子モジュール70のように、多層に形成された膜(機能層12、誘電体層13を含む膜)を電子モジュール70の表面(上)側に向けた場合、使用環境によっては表面の接触、摺擦等により、機能層12、または誘電体層13の一部が損傷する場合があり得る。
図7Bに示される電子モジュール71のように、電磁波シールド用フィルム10を反転させて、絶縁体層11を表面側に配置することで、絶縁体層11によって機能層12と誘電体層13を含む多層膜が保護される。これにより、機能層12と誘電体層13が安定して保持され、電子モジュール71の信頼性が向上する。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aについて説明する。第2実施形態では、絶縁体層の両面に機能層が形成された電磁波シールド用フィルム10aを提供する。第1実施形態と同様に、電磁波シールド用フィルム10aは任意の部品に適用可能である。
【0044】
<電磁波シールド用フィルム10aの構成>
図8を参照して、第2実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aの構成を説明する。
図8(a)は、第2実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aの平面図である。ただし、電磁波シールド用フィルム10aの裏側に配される要素(絶縁体層11の表面11a側に配される要素)を破線で示している。また、
図8(b)は、第2実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aの断面図であり、
図8(a)のA-A線に沿う断面図を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0045】
図8(a)に示されるように、本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aは、絶縁体層11と、第1機能層12aと、第2機能層12bとを含む。この点は、第1実施形態と同様である。これに対して、複数の機能層12のうちの第1機能層12aが、絶縁体層11の表面11aに形成され、第2機能層12bが、絶縁体層11の裏面11bに形成される。この点が、第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の絶縁体層11において、第1機能層12aが設けられている側の面を「表面」又は「第1の面」と称し、第2機能層12bが設けられている側の面を「裏面」又は「第2の面」と称する。また、本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aは、例えば、第1機能層12a及び第2機能層12bの少なくとも一方を覆い、磁気シールド機能を有する磁性体層を更に有してもよい。
【0046】
本実施形態のこの構成によれば、絶縁体層11を挟んで第1機能層12a及び第2機能層12bが位置するため、電磁波シールド用フィルム10aの電磁波吸収/反射機能を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態の機能層12a,12bは、第1実施形態と同様、メタサーフェス構造を備えてもよい。より詳しくは、第1機能層12aは、絶縁体層11の表面11a側に形成される複数の第1単位パターン121aを有する。また、第2機能層12bは、絶縁体層11の裏面11b側に形成される複数の第2単位パターン121bを有する。
【0048】
更に、第1実施形態と同様、第1単位パターン121aは、第1アーム122aを有し、第2単位パターン121bは、第2アーム122bを有する。
図8(b)に示されるように、第1単位パターン121aの第1アーム122aと、第1単位パターン121aに隣り合う第2単位パターン121bの第2アーム122bとが、絶縁体層11を挟んで重なり合う。これにより、アーム122a,122b及び絶縁体層11を含む容量結合部が形成される。
【0049】
本実施形態のこの構成によれば、第1機能層12aと第2機能層12bとの重なり合いの面積と、間に挿入される絶縁体層11の厚さ、及び誘電率を選択することで、所望の大きさの容量結合を得ることができる。すなわち、容量結合の大きさを所望の値に設定でき、より高い周波数に対するパターンサイズを維持しながら、機能層12の共振周波数を低周波側にシフトさせて、電磁波シールド用フィルムの薄型化・小型化を図ることができる。
【0050】
<電子モジュールの製造方法>
次に、
図9から
図13を参照して、第2実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aを含む電子モジュール70aの製造方法を説明する。
図9は、本実施形態の製造方法を説明するフローチャートである。また、
図10から
図13は、本実施形態の製造方法の各工程の例、及びこれにより製造される電子モジュール70aを説明するための模式図である。
【0051】
図9に示されるように、本実施形態の製造方法は、第1機能層形成工程S21と、第2機能層形成工程S22と、基材接着工程S23とを含む。なお、第1機能層形成工程S21、第2機能層形成工程S22が、電磁波シールド用フィルム10aの製造工程に対応する。そのため、これらの工程を総称して、「フィルム生成工程」と言う場合がある。
【0052】
図10を参照して、第1機能層形成工程S21を説明する。
図10(a)は、第1機能層12aが形成された状態の絶縁体層11の平面図である。また、
図10(b)は、第1機能層12aが形成された状態の絶縁体層11の断面図であり、
図10(a)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0053】
図10に示されるように、絶縁体層11の表面11a上に、第1機能層12aの第1単位パターン121aを形成する。また、第1単位パターン121aは、アーム122aを備える。第1アーム122aを含む第1単位パターン121aの全体を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。あるいは、第1単位パターン121aの第1アーム122aを除く本体部分を室温スパッタリング等で形成し、第1アーム122aをインクジェットのような印刷法で形成してもよい。ただし、第1単位パターン121aの形成方法は、これに限定されない。
【0054】
続いて、第2機能層形成工程S22が行われる。
図11を参照して、第2機能層形成工程S22を説明する。
図11(a)は、第1機能層12a、第2機能層12bが形成された状態の絶縁体層11の平面図である。また、
図11(b)は、第1機能層12a、第2機能層12bが形成された状態の絶縁体層11の断面図であり、
図11(a)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0055】
図11に示されるように、例えば、第1機能層12aが形成された絶縁体層11の表裏を反転させ、絶縁体層11の裏面11bを上方に向ける。その後、第2機能層12bを絶縁体層11の裏面11b上に形成する。このとき、第1機能層12aにおける第1単位パターン121aの第1アーム122aと、第2機能層12bにおける第2単位パターン121bの第2アーム122bとが、絶縁体層11を挟んで重なる。
【0056】
第2アーム122bを含む第2単位パターン121bの全体を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。あるいは、第2単位パターン121bの第2アーム122bを除く本体部分を室温スパッタリング等で形成し、第2アーム122bをインクジェットのような印刷法で形成してもよい。ただし、単位パターン121aの形成方法は、これに限定されない。
【0057】
なお、第1機能層12aを形成するための導電膜と、第2機能層12bを形成するための導電膜とが、例えば、光硬化性樹脂を含み、絶縁体層11が、所定波長帯の光に対して所定の透過率(例えば、前記所定波長帯の光に対して70%以上の透過率)を有する場合、絶縁体層11の表面11a側と裏面11b側の両方から、それぞれの導電膜を硬化させるための光を照射してもよい。このようにすることで、フィルム生成工程を簡素化でき、電磁波シールド用フィルム10aの生産性を高めることができる。
【0058】
続いて、基材接着工程S23が行われる。
図12を参照して、基材接着工程S23を説明する。
図12は、電磁波シールド用フィルム10aに基材50を接着する基材接着装置60aの断面を示す。ここで、
図12に示される基材接着装置60aは、第1実施形態における基材接着装置60と同様の構造を備えるものであってもよい。
【0059】
基材接着装置60aの排気手段63によって、筐体61内を排気し、リフト手段によって、電磁波シールド用フィルム10aに基材50を押し当てる。これにより、電磁波シールド用フィルム10aに基材50を接着させる。
【0060】
これらの工程を経た後、最終的に、
図13に示されるような電子モジュール70aが得られる。本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10aの製造方法によれば、絶縁体層11に複数の機能層12a,12bを形成した後、基材50を電磁波シールド用フィルム10aに接着させるため、絶縁体層11上に機能層12のパターンを高精度に形成することができる。また、電磁波シールド用フィルム10aを基材50に接着させる簡便な工程によって電子モジュール70aを生産できるため、電子モジュール70aの生産性を高めることができる。
【0061】
<フィルム生成工程の変形例>
次に、
図14を参照して、第2実施形態におけるフィルム生成工程の変形例を説明する。
図14は、第1機能層12a及び第2機能層12bを絶縁体層11に塗布するインクジェット装置100の模式図である。本変形例は、インクジェット装置100を用いる。
【0062】
図14に示されるように、インクジェット装置100は、噴射口が絶縁体層11の表面(第1の面)11aと向き合う第1ヘッド110と、噴射口が絶縁体層11の裏面(第2の面)11bと向き合う第2ヘッド120とを備える。また、インクジェット装置100は、第1ヘッド110及び第2ヘッド120を絶縁体層11に対して相対的に移動させる搬送機構を備えることが好ましい。搬送機構は、ロール状の絶縁体層11を所定のタイミングで長軸方向(たとえば図の矢印と反対方向)に送るフィルム搬送機構と、第1ヘッド110及び第2ヘッド120を絶縁体層11の幅方向に走査する走査機構とを含んでいてもよい。
【0063】
第1ヘッド110は、絶縁体層11の表面11aに向けて導電性インクを吐出する。これにより、第1機能層12aのパターンが、絶縁体層11の表面11a上に形成される。また、第2ヘッド120は、絶縁体層11の裏面11bに向けて導電性インクを吐出する。これにより、第2機能層12bのパターンが、絶縁体層11の表面11a上に形成される。なお、導電性インクは、各機能層を形成するための「機能性インク」の一例である。
【0064】
このようなインクジェット装置100を用いることで、絶縁体層11の表裏に、第1機能層12aと第2機能層12bとを同時に形成することができる。その結果、電磁波シールド用フィルム10aの生産性をより高めることができる。第1機能層12a及び第2機能層12bが形成された絶縁体層11は、その後に所望の大きさに切断されて、種々の部品に適用されてもよい。
【0065】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10b及び電子モジュール70bについて説明する。
【0066】
<電磁波シールド用フィルム10bの構成>
図15を参照して、第3実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10bの構成を説明する。
図15(a)は、第3実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10bの平面図である。ただし、電磁波シールド用フィルム10bの裏側に配される要素(絶縁体層11の表面11a側に配される要素)を破線で示している。また、
図15(b)は、第3実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10bの断面図であり、
図15(a)のA-A線に沿う断面図を示す。なお、第3実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0067】
図15(a)に示されるように、本実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10bは、絶縁体層11と、機能層12と、磁性体層80とを含む。より詳しくは、絶縁体層11の表面11a側に機能層12が設けられ、絶縁体層11の裏面11b側に磁性体層80が設けられる。ただし、磁性体層80は、機能層12を覆うよう絶縁体層11の表面11a側に設けられてもよい。また、本実施形態の機能層12は、絶縁体層11の面内方向に複数設けられる。なお、本実施形態の絶縁体層11において、機能層12が設けられている側の面を「表面」又は「第1の面」と称し、磁性体層80が設けられている側の面を「裏面」又は「第2の面」と称する。
【0068】
また、絶縁体層11の表面11aに、複数の機能層12(12a,12b,12c,・・・12n)が、絶縁体層11の面内方向に設けられる。これに対して、磁性体層80は、複数の機能層12のうちの少なくとも1つと、絶縁体層11を挟んで、絶縁体層11の膜厚方向に重ねられることが好ましい。
【0069】
本実施形態のこの構成によれば、絶縁体層11を挟んで機能層12と磁性体層80とが位置するため、電磁波シールド用フィルム10bの電磁波吸収/反射機能及び磁気シールド機能を向上させることができる。
【0070】
<電子モジュールの製造方法>
次に、
図16から
図19を参照して、第3実施形態に係る電磁波シールド用フィルム10bを含む電子モジュール70bの製造方法を説明する。
図16は、本実施形態の製造方法を説明するフローチャートである。また、
図17から
図19は、本実施形態の製造方法の各工程の例、及びこれにより製造される電子モジュール70bを説明するための模式図である。
【0071】
図16に示されるように、本実施形態の製造方法は、機能層形成工程S31と、基材接着工程S32と、磁性体層形成工程S33とを含む。なお、機能層形成工程S31、磁性体層形成工程S33が、電磁波シールド用フィルム10bの製造工程に対応する。そのため、これらの工程を総称して、「フィルム生成工程」と言う場合がある。
【0072】
図17を参照して、機能層形成工程S31を説明する。
図17(a)は、機能層12が形成された状態の絶縁体層11の平面図である。また、
図17(b)は、機能層12が形成された状態の絶縁体層11の断面図であり、
図17(a)のA-A線に沿う断面図を示す。
【0073】
図17に示されるように、絶縁体層11の表面11a上に、機能層12を形成する。機能層12を、インクジェット、スクリーン印刷などの印刷法で形成してもよい。ただし、機能層12の形成方法は、これに限定されない。
【0074】
続いて、基材接着工程S32が行われる。
図18を参照して、基材接着工程S32を説明する。
図18は、機能層12を含む絶縁体層11に基材50を接着する基材接着装置60bの断面を示す。ここで、
図18に示される基材接着装置60bは、第1実施形態における基材接着装置60や第2実施形態における基材接着装置60aと同様の構造を備えるものであってもよい。
【0075】
絶縁体層11の上下を反転し、機能層12を基材接着装置60bの内側に向ける。この状態で、機能層12を有する絶縁体層11を基材接着装置60bにセットする。続いて、基材接着装置60bの排気手段63によって、筐体61内を排気し、リフト手段によって、機能層12に、電子部品51a,51b,51cと、電子基板52を含む基材50を押し当てる。これにより、機能層12を含む絶縁体層11に基材50を接着させる。
【0076】
続いて、磁性体層形成工程S33が行われる。
図19を参照して、磁性体層形成工程S33を説明する。
図19は、磁性体層形成工程S33を説明するための模式図である。
図19に示されるように、絶縁体層11から所定距離離れたジェットディスペンサー装置のノズル90から絶縁体層11上に磁性体を塗布する。ここで、絶縁体層11を挟んで、複数の機能層12のうちの少なくとも1つと磁性体層80とを膜厚方向に重ねるよう、絶縁体層11の一部領域に磁性体層80を形成してもよい。これにより、電子モジュール70bが得られる。
【0077】
図19に示されるように、絶縁体層11の一部領域に磁性体層80を形成することで、基材50の特定の電子部品51に対して選択的に磁性体層80を被覆することができる。これにより、製造コストの高騰を防ぐことができる。ただし、磁性体層80の形成領域は、これに限定されない。
【0078】
本実施形態では、ジェットディスペンサー法を用いて磁性体層80を形成したが、磁性体層80の形成方法は、これに限定されない。磁性体層80の他の形成方法の例として、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、樹脂ポッティング法等が挙げられる。
【0079】
なお、前述の態様とは異なり、第3実施形態に係る電子モジュール70bの製造方法の各工程を、機能層形成工程S31、磁性体層形成工程S33、基材接着工程S32の順に行ってもよい。
【0080】
以上、実施形態に係る電磁波シールド用フィルム及び電子モジュールについて説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0081】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 絶縁体層と、電磁波吸収/反射機能を有する機能層とを有し、
下記構成1から構成3のうちの少なくとも1つを備える電磁波シールド用フィルム。
構成1:前記絶縁体層上に、複数の前記機能層が形成される。
構成2:前記絶縁体層の表面と裏面の双方に前記機能層が形成される。
構成3:前記絶縁体層の表面に、面内方向に沿って複数の機能層が形成されると共に、前記複数の機能層のうちの少なくとも1つと膜厚方向で重なる磁性体層を更に有する。
<2> 前記構成1及び前記構成2の少なくとも一方を備える電磁波シールド用フィルムが、前記機能層及び前記絶縁体層の少なくとも一方の所定領域を覆う磁性体層を更に有する、
前記<1>に記載の電磁波シールド用フィルム。
<3> 前記絶縁体層が、PVDFである、
前記<1>又は前記<2>に記載の電磁波シールド用フィルム。
<4> 電子部品と、前記電子部品を実装する電子基板を含む基材と、
前記基材の表面に設けられる前記<1>から前記<3>のいずれか1つの電磁波シールド用フィルムと、
を備える電子モジュール。
<5> 絶縁体層と、電磁波吸収/反射機能を有する機能層とを含む電磁波シールド用フィルムを生成するフィルム生成工程と、
生成した電磁波シールド用フィルムを基材の表面に接着させる基材接着工程と、
を含み、
前記フィルム生成工程は、
前記絶縁体層上に、複数の前記機能層を膜厚方向に形成する工程、
前記絶縁体層の表面と裏面の双方に前記機能層を形成する工程、
前記絶縁体層上に、面内方向に沿って複数の機能層を形成する工程
の少なくとも1つを含む、
電子モジュールの製造方法。
<6> 前記電磁波シールド用フィルムの所定領域を覆う磁性体層を非接触で形成する磁性体層形成工程を更に含む、
前記<5>に記載の電子デバイスの製造方法。
<7> 前記絶縁体層が、所定波長帯の光に対して所定の透過率を有し、
前記フィルム生成工程において、前記絶縁体層を通して、前記所定波長帯の光を前記絶縁体層上に形成された導電膜に照射し、前記導電膜を硬化させて前記機能層を形成する、
前記<5>又は前記<6>に記載の電子デバイスの製造方法。
<8> 前記フィルム生成工程において、前記所定波長帯の光を前記絶縁体層の表面側及び裏面側から照射する、
前記<7>に記載の電子デバイスの製造方法。
<9> 前記所定波長帯の光が、400nm以下の波長帯の光である、
前記<7>又は前記<8>に記載の電子デバイスの製造方法。
<10> 電磁波シールド用フィルムの基部となる絶縁体層の第1の面と対向して電磁波吸収/反射機能を有する機能性インクを前記第1の面に吐出する第1ヘッドと、
前記絶縁体層の前記第1の面と反対側の第2の面と対向して、前記機能性インクを前記第2の面に吐出する第2ヘッドと、
を備えるインクジェット装置。
【符号の説明】
【0082】
10,10a,10b 電磁波シールド用フィルム
11 絶縁体層
12 機能層
12a 第1機能層
12b 第2機能層
13 誘電体層
50 基材
51 電子部品
52 プリント基板
60,60a,60b 基材接着装置
61 筐体
62 フィルム支持部
63 排気手段
70,70a,70b,71 電子モジュール
80 磁性体層
90 ジェットディスペンサー装置のノズル
100 インクジェット装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】