(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170320
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20241129BHJP
H04H 20/28 20080101ALI20241129BHJP
【FI】
H04L27/26 113
H04L27/26 114
H04H20/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084798
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023086773
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平林 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
(57)【要約】
【課題】階層伝送を行う放送伝送システムにおいて改善された階層間インターリーブを実現する。
【解決手段】階層伝送を行う放送伝送システムで用いる送信装置は、キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブを行う周波数インターリーブ手段を備える。前記周波数インターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数インターリーブである階層間インターリーブを行う階層間インターリーブ手段を含む。前記階層間インターリーブ手段は、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間で前記階層間インターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位インターリーブ手段と、前記キャリア単位インターリーブ手段が前記階層間インターリーブをキャリア単位で行った後に、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間インターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位インターリーブ手段と、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層伝送を行う放送伝送システムで用いる送信装置であって、
キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブを行う周波数インターリーブ手段を備え、
前記周波数インターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数インターリーブである階層間インターリーブを行う階層間インターリーブ手段を含み、
前記階層間インターリーブ手段は、
パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間で前記階層間インターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位インターリーブ手段と、
前記キャリア単位インターリーブ手段が前記階層間インターリーブをキャリア単位で行った後に、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間インターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位インターリーブ手段と、を含む
送信装置。
【請求項2】
前記所定帯域は、非部分受信帯域である
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記所定帯域は、部分受信帯域である
請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記セグメント単位インターリーブ手段は、前記所定帯域内の階層数が2以上であって、且つ、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が異なる階層が前記所定帯域内にある場合、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間インターリーブをセグメント単位で行う
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項5】
階層伝送を行う放送伝送システムで用いる受信装置であって、
キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブの逆処理である周波数デインターリーブを行う周波数デインターリーブ手段を備え、
前記周波数デインターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数デインターリーブである階層間デインターリーブを行う階層間デインターリーブ手段を含み、
前記階層間デインターリーブ手段は、
前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間デインターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位デインターリーブ手段と、
前記セグメント単位デインターリーブ手段が前記階層間デインターリーブをセグメント単位で行った後に、パイロット配置パターン及び/又はキャリア数が同一である階層間で前記階層間デインターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位デインターリーブ手段と、を含む
受信装置。
【請求項6】
コンピュータを請求項1に記載の送信装置又は請求項5に記載の受信装置として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送伝送システムで用いる送信装置、受信装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送の高品質化及び高機能化に向けて、非特許文献1で規定される現行のISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式の特長を継承した次世代地上放送の伝送方式(以下、「地上放送高度化方式」とも称する)の検討が進められている。
【0003】
ISDB-Tでは、階層伝送により、移動受信サービス及び固定受信サービスを1つのチャンネルで同時に提供している。地上放送高度化方式においても、階層伝送により1つのチャンネル内で複数のサービスやコンテンツを伝送することが想定される。
【0004】
ここで、ISDB-Tでは、周波数分割多重をベースとした階層伝送が可能である。具体的には、1つのチャンネルの伝送帯域を13個のセグメントに分割して、移動受信用及び固定受信用にそれぞれセグメントを割り当てることで、階層伝送を実現している。移動受信階層を中央の1セグメントに設定することで、狭帯域受信を行うことができ、受信装置にとっては省電力受信できることがメリットである。
【0005】
一方、欧米の放送規格であるDVB-T2やATSC(Advanced Television Systems Committee)3.0では、時分割多重をベースとした階層伝送が可能である。具体的には、階層をOFDMシンボル単位で区切り複数のサブフレーム、例えば、移動受信用サブフレーム及び固定受信用サブフレームを設けることができる(例えば、非特許文献2参照)。時分割多重の場合、サブフレームごとにFFT(Fast Fourier Transform)サイズを変えることができるため、サービスに応じて最適なFFTサイズの設定が可能である。
【0006】
また、放送伝送システムでは、コンテンツなどの本線系の信号の他に、伝送パラメータ等の制御情報も多重して伝送する必要がある。周波数分割多重をベースとするISDB-Tでは、特定のOFDMサブキャリアを制御情報伝送用として割り当てており、フレームを単位として、制御情報を伝送する。ISDB-Tの場合は、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号がこれに相当する。一方、時分割多重をベースとするDVB-T2やATSC3.0では、フレーム先頭の数シンボルにて制御情報を伝送する。ATSC3.0では、bootstrap、プリアンブル信号がこれに相当する。
【0007】
従来の放送方式は、多重方法として周波数分割多重もしくは時分割多重のどちらか一方をベースとした方式であったが、周波数分割多重及び時分割多重はそれぞれ異なるメリットがある。また、サービスの要求条件に応じて最適な多重方法は異なる。しかしながら、既存の放送伝送システムにおいては、周波数分割多重もしくは時分割多重のいずれか一方を選択する必要があり、サービスの要求条件に応じて最適な多重方法を適用することができない問題がある。
【0008】
特許文献1には、地上放送高度化方式においてサービスの要求条件に応じて最適な多重方法を適用可能な技術が記載されている。具体的には、特許文献1に記載の技術では、周波数分割多重及び時分割多重のいずれの階層伝送にも対応でき、フレームの先頭に、同期信号(プリアンブル信号)と、TMCCと呼ばれる伝送制御情報を配置して伝送している。
【0009】
また、特許文献1に記載の送信装置は、キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブを行う周波数インターリーブ手段を有する。従来の技術では、周波数インターリーブ手段は、階層間での周波数インターリーブである階層間インターリーブを行う階層間インターリーブ手段を含み、階層間インターリーブ手段は、階層間インターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位インターリーブ手段と、階層間インターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位インターリーブ手段と、を含む。従来の技術では、送信装置は、例えばパイロット配置パターンが階層間で同一であるか否かに基づいて、キャリア単位インターリーブ及びセグメント単位インターリーブのいずれか一方を択一的に適用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ARIB STD-B31 一般社団法人 電波産業会
【非特許文献2】ATSC 3.0 Standard:Physical Layer Protocol A/322:2020 P245-249, https://www.atsc.org/wp-content/uploads/2020/01/A322-2020-Physical-Layer-Protocol.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のような従来の階層間インターリーブ技術は、キャリア単位インターリーブ及びセグメント単位インターリーブのいずれか一方を択一的に適用するものであり、インターリーブ効果をさらに高める点で改善の余地がある。特に、従来の技術では3階層までの階層伝送しか考慮されていないが、地上放送高度化方式ではサブフレーム内で8階層までを周波数分割で多重できることが想定されており、そのような多階層での階層伝送に好適な階層間インターリーブ技術の実現が望まれる。
【0013】
そこで、本発明は、階層伝送を行う放送伝送システムにおいて改善された階層間インターリーブを実現する送信装置、受信装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様に係る送信装置は、階層伝送を行う放送伝送システムで用いる送信装置であって、キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブを行う周波数インターリーブ手段を備える。前記周波数インターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数インターリーブである階層間インターリーブを行う階層間インターリーブ手段を含む。前記階層間インターリーブ手段は、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間で前記階層間インターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位インターリーブ手段と、前記キャリア単位インターリーブ手段が前記階層間インターリーブをキャリア単位で行った後に、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間インターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位インターリーブ手段と、を含む。
【0015】
第2の態様に係る受信装置は、階層伝送を行う放送伝送システムで用いる受信装置であって、キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブの逆処理である周波数デインターリーブを行う周波数デインターリーブ手段を備える。前記周波数デインターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数デインターリーブである階層間デインターリーブを行う階層間デインターリーブ手段を含む。前記階層間デインターリーブ手段は、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間デインターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位デインターリーブ手段と、前記セグメント単位デインターリーブ手段が前記階層間デインターリーブをセグメント単位で行った後に、パイロット配置パターン及び/又はキャリア数が同一である階層間で前記階層間デインターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位デインターリーブ手段と、を含む。
【0016】
第3の態様に係るプログラムは、コンピュータを第1の態様に係る送信装置又は第2の態様に係る受信装置として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、階層伝送を行う放送伝送システムにおいて改善された階層間インターリーブを実現する送信装置、受信装置、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る放送伝送システムを示す図である。
【
図2】実施形態に係る放送伝送システムで用いるフレーム構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るサブフレーム区間の伝送パラメータの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る送信装置におけるフレーム構成部を示す図である。
【
図5】実施形態に係る各サブフレーム構成部におけるOFDM変調部を示す図である。
【
図6】実施形態に係る周波数IL部について説明するための図である。
【
図7】実施形態に係る階層内IL部について説明するための図である。
【
図8】実施形態に係る階層間IL部(階層間インターリーブ手段)を示す図である。
【
図9】実施形態に係る階層間セグメント単位インターリーブについて説明するための図である。
【
図10】実施形態に係る階層間IL部への入力階層数が1の場合の具体的な階層間インターリーブを示す図である。
【
図11】実施形態に係る階層間IL部への入力階層数が2の場合の具体的な階層間インターリーブを示す図である。
【
図12】実施形態に係る階層間IL部への入力階層数が3の場合の具体的な階層間インターリーブを示す図である。
【
図13】実施形態に係る受信装置の一例について説明するための図である。
【
図14】実施形態に係る階層間DIL部(階層間デインターリーブ手段)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)実施形態の概要
本実施形態に係る第1の特徴は、階層伝送を行う放送伝送システムで用いる送信装置であって、キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブを行う周波数インターリーブ手段を備え、前記周波数インターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数インターリーブである階層間インターリーブを行う階層間インターリーブ手段を含み、前記階層間インターリーブ手段は、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間で前記階層間インターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位インターリーブ手段と、前記キャリア単位インターリーブ手段が前記階層間インターリーブをキャリア単位で行った後に、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間インターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位インターリーブ手段と、を含む、送信装置である。
【0020】
このような送信装置の特徴によれば、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間でキャリア単位インターリーブを行ったうえで、全階層にわたってセグメント単位インターリーブを行うことにより、階層間インターリーブのインターリーブ効果をさらに高めることが可能である。特に、このような階層間インターリーブは、例えば8階層までを周波数分割で多重するような多階層での階層伝送において好適である。さらに、このような階層間インターリーブは、キャリア単位インターリーブ及びセグメント単位インターリーブのいずれか一方を択一的に適用する従来の方法に比べて、インターリーブの使い分け(場合分け)に要する処理負荷の増大を抑制できる。
【0021】
本実施形態に係る第2の特徴は、第1の特徴において、前記所定帯域は、非部分受信帯域である、送信装置である。
【0022】
このような送信装置の特徴によれば、非部分受信帯域には、部分受信帯域に比べて多くの階層を周波数分割で多重でき、且つ帯域幅も広いため、良好な周波数インターリーブ効果を得ることができる。
【0023】
本実施形態に係る第3の特徴は、第1の特徴において、前記所定帯域は、部分受信帯域である、送信装置である。
【0024】
このような送信装置の特徴によれば、部分受信帯域に複数の階層が周波数分割で多重される場合に、良好な周波数インターリーブ効果を得ることができる。
【0025】
本実施形態に係る第4の特徴は、第1乃至第3のいずれかの特徴において、前記セグメント単位インターリーブ手段は、前記所定帯域内の階層数が2以上であって、且つ、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が異なる階層が前記所定帯域内にある場合、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間インターリーブをセグメント単位で行う、送信装置である。
【0026】
このような送信装置の特徴によれば、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が異なる階層についてはキャリア単位インターリーブを適用できないが、そのような階層を含む全階層にわたって階層間セグメント単位インターリーブを行うことで、良好な周波数インターリーブ効果を得ることができる。
【0027】
本実施形態に係る第5の特徴は、階層伝送を行う放送伝送システムで用いる受信装置であって、キャリアシンボルを周波数方向に分散させるための周波数インターリーブの逆処理である周波数デインターリーブを行う周波数デインターリーブ手段を備え、前記周波数デインターリーブ手段は、所定帯域内の階層間での前記周波数デインターリーブである階層間デインターリーブを行う階層間デインターリーブ手段を含み、前記階層間デインターリーブ手段は、前記所定帯域内の全階層にわたって前記階層間デインターリーブをセグメント単位で行うセグメント単位デインターリーブ手段と、前記セグメント単位デインターリーブ手段が前記階層間デインターリーブをセグメント単位で行った後に、パイロット配置パターン及び/又はキャリア数が同一である階層間で前記階層間デインターリーブをキャリア単位で行うキャリア単位デインターリーブ手段と、を含む、受信装置である。
【0028】
本実施形態に係る第6の特徴は、コンピュータを第1の特徴に係る送信装置又は第5の特徴に係る受信装置として機能させる、プログラムである。
【0029】
以下において、図面を参照して実施形態に係る放送伝送システムについて説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0030】
(2)放送伝送システム
図1は、本実施形態に係る放送伝送システム1を示す図である。
【0031】
図1に示すように、放送伝送システム1は、地上放送高度化方式に対応したシステムであって、階層伝送を行う地上デジタルテレビジョン放送システムである。放送伝送システム1は、送信装置100と、受信装置200とを有する。送信装置100は、放送伝送路500を介して放送信号を受信装置200に送信する。受信装置200は、固定受信を行う固定受信機又は移動受信を行う移動受信機であってもよい。受信装置200は、狭帯域受信(部分受信)を行う狭帯域受信機であってもよい。
【0032】
現行の地上デジタルテレビジョン放送の放送方式であるISDB-T(非特許文献1参照)では、マルチパス耐性に優れる直交周波数分割多重(OFDM)を変調方式とし、部分受信が可能なセグメント構造を取っている。1つのチャンネルで固定受信向けサービス及び移動受信向けサービスを同時に実現できることがISDB-T方式の長所であり、本実施形態に係る放送伝送システム1では、この点は引き続き継承する。
【0033】
一方、固定受信及び移動受信に求められる要求条件は大きく異なるため、それぞれに対応するための最適な伝送パラメータも異なる。本実施形態に係る放送伝送システム1では、このような異なる要求条件に対応するために、1つの伝送チャンネル内で2種類以上の有効シンボル長及びガードインターバル長を用いて階層化を実現する複数シンボル長OFDM形式を採用する。
【0034】
図2は、本実施形態に係る放送伝送システム1で用いるフレーム構成例を示す図である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態に係る放送伝送システム1では、複数階層を周波数分割多重したサブフレームを移動受信向けのサービスに割り当てるとともに、FFTサイズの異なる固定受信向けサービスに割り当てるサブフレームを時分割多重するなど、多様な階層伝送が可能である。さらに、フレームの末尾に拡張区間(拡張サブフレーム)を設けることもできる。
【0036】
フレームは、フレームの先頭から末尾に向けて、フレーム同期信号区間、TMCC区間、サブフレーム区間、及び拡張区間の順で構成される。
【0037】
フレーム内には異なる構成の複数のサブフレームを格納することができる。サブフレームは、セグメント構造を持つ単一又は複数の階層で構成される。1つのサブフレームは、シンボル長が同じ複数のシンボルで構成される。TMCC区間で伝送する伝送制御情報は可変長の情報量を持つとともに、フレーム末尾には拡張区間を設けることができる。具体的には、伝送制御信号(「TMCC信号」とも称する)を伝送するTMCC区間の後にサブフレーム区間を配置することにより、受信装置200は、伝送制御信号を受信した後にこれを用いて続くサブフレーム区間の信号を復調できる。さらに、サブフレーム区間の後ろに拡張区間を配置し、現時点では定まっていない使途に将来利用することが可能である。
【0038】
本実施形態に係る放送伝送システム1では、特定のサブフレームだけを選択的に受信する間欠受信が可能であり、伝送信号の周波数帯域の一部だけを選択的に受信する部分受信にも対応する。
【0039】
フレーム同期信号区間は、フレームの先頭に配置され、受信装置200における同期再生のための信号を伝送する区間である。フレーム同期シンボルからなる信号を逆高速フーリエ変換(IFFT)した5つのOFDMシンボルを時間領域において巡回した後に、サイクリックプレフィックス及びサイクリックポストフィックスの付加を行った信号である。部分受信帯域ありの場合、5つのOFDMシンボルを2回繰り返すことで計10シンボルによりフレーム同期信号区間を構成してもよい。また、フレーム同期信号区間では、後続のTMCC区間の伝送方式等に関する制御信号を伝送する。
【0040】
フレーム同期信号区間に配置されるフレーム同期信号は、受信装置200が、送信装置100の送信信号の存在を検知するとともに同期再生を行い、TMCC区間の信号を受信するために用いられる。フレーム同期信号で数十ビットの情報を伝送する必要があることから、フレーム同期信号は、雑音やマルチパス、周波数オフセットに対して耐性を有する。これにより多様な階層伝送が可能となるとともに将来の拡張性を担保することができる。
【0041】
TMCC区間は、フレーム構成やサブフレーム区間に関する可変長の伝送制御情報(「TMCC情報」とも称する)を伝送する区間である。多様な階層伝送を実現するために、フレームの先頭でフレーム同期信号区間の後にTMCC区間がデータ伝送とは独立に配置される。将来の拡張性を考慮し、可変長の伝送制御情報の伝送にも対応している。
【0042】
サブフレーム区間は、映像・音声等のデータを伝送する区間である。1つのフレーム内には単一又は複数のサブフレームが格納され、順にサブフレーム1、サブフレーム2と呼ぶ。それぞれのサブフレームは、単一又は複数のシンボルによって構成するとともに、セグメント構造による階層化が可能である。サブフレーム数の最大値は8である。例えば、1チャンネル内で複数の事業者がサービスを行う場合、それぞれの事業者がそれぞれのサブフレームを利用することも可能である。
【0043】
各サブフレームは、単一又は複数の階層により構成され、セグメント構造を取ることとする。階層は、伝送耐性が強い方から順にA階層、B階層、C階層・・・H階層と呼ぶ。各階層には、想定する電波伝搬環境に応じて最適な伝送パラメータを設定することができる。
図2の例では、移動受信向け階層1は、超高耐性の階層であって、例えばA階層に相当する。移動受信向け階層2は、高耐性の階層であって、例えばB階層に相当する。固定受信向け階層は、例えばC階層に相当する。
【0044】
部分受信帯域ありの場合、A階層の全てのセグメントは中央の9セグメント内に格納される。この中央の9セグメントの帯域を部分受信帯域と呼び、その上下の13セグメント、合わせて26セグメントを非部分受信帯域と呼ぶ。そのときの部分受信の対象となる階層の最大セグメント数は9とする。なお、部分受信帯域なしの場合は、全帯域が非部分受信帯域である。また、階層数の最大値は8とする。
【0045】
図3は、本実施形態に係るサブフレーム区間の伝送パラメータの一例を示す図である。
【0046】
6MHzで区切られるチャンネルを複数のセグメントに分割する際の数は36であり、このうち最大35セグメントを信号伝送に用いる。これにより固定受信及び移動受信への帯域割り当てをより柔軟に行うことができる。また、パイロット信号の配置は、固定受信及び移動受信でそれぞれに最適な配置を選択できるようにする。さらに、1つのセグメントを3つのサブセグメントに分割可能とする。雑音耐性の高い1次変調パラメータを用いる高耐性階層と、これよりもさらに雑音耐性が高い1次変調パラメータを適用した超高耐性階層を構成することで、特に移動受信時のサービス可用性を高めることが可能である。
【0047】
FFTサイズは、現行地上デジタルテレビジョン放送では8k(8,192(213)ポイント)で運用されているが、本実施形態では、最大32k(32,768(215)ポイント)まで拡大する。FFTサイズを大きくするとキャリア周波数間隔が小さくなることから、有効シンボル長が長くなり、GI長を一定としたときのGI比が小さくなり、GIによるオーバーヘッドを削減できる。また、現行地上デジタルテレビジョン放送との両立性を考慮し、GI長や時間インターリーブ長が現行地上デジタルテレビジョン放送と同等であるパラメータも用意されている。
【0048】
誤り訂正符号は、LDPC(Low Density Parity Check)符号及びBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquenghem)符号の連接符号を用いる。これにより、雑音耐性を大幅に向上させることができる。また、信号点の配置を不均一(NUC:Non-Uniform Constellation)にすることにより、多値変調における雑音耐性の向上を図っている。
【0049】
(3)送信装置
図4は、本実施形態に係る送信装置100におけるフレーム構成部を示す図である。ここでは、フレーム内のサブフレームが3つであるものとしている。
【0050】
図4に示すように、送信装置100は、各種の情報が入力される入力インターフェース(IF)1100と、フレーム同期信号生成部1200と、TMCC生成部1300と、サブフレーム構成部1400(図示の例では、サブフレーム構成部1400a乃至1400c)と、Lch分離部1500と、時分割多重フレーム構成部1600とを有する。
【0051】
フレーム同期信号生成部1200は、フレーム同期信号を生成し、フレーム同期信号を時分割多重フレーム構成部1600に出力する。ここで、フレーム同期信号生成部1200は、所定数のシンボル(本実施形態では、5つのOFDMシンボル)により構成されるフレーム同期信号を生成する。
【0052】
TMCC生成部1300は、TMCC信号を生成し、TMCC信号を時分割多重フレーム構成部1600に出力する。
【0053】
サブフレーム構成部1400は、サブフレーム信号を生成し、サブフレーム信号を時分割多重フレーム構成部1600に出力する。図示の例では、サブフレーム構成部1400a乃至1400cは、サブフレーム1乃至3の信号を時分割多重フレーム構成部1600にそれぞれ出力する。
【0054】
Lch分離部1500は、高耐性、低遅延を特徴とする伝送路としても使用することのできるパイロット信号であるLch信号を、フレーム同期信号区間及びTMCC区間を除くフレーム全体に渡って振り分ける。
【0055】
時分割多重フレーム構成部1600は、フレーム同期信号生成部1200が出力するフレーム同期信号と、TMCC生成部1300が出力するTMCC信号と、各サブフレーム構成部1400が出力するサブフレーム信号とを時分割多重することにより、フレームを構成して出力する。時分割多重フレーム構成部1600の出力信号は、不図示のデジタル/アナログ変換部によりアナログ信号に変換された後、不図示の無線処理部により無線信号に変換され、不図示のアンテナから出力される。
【0056】
図5は、本実施形態に係る各サブフレーム構成部1400におけるOFDM変調部を示す図である。
【0057】
図5に示すように、各サブフレーム構成部1400は、入力IF1401と、階層ごとに設けられる1次変調部1402(1次変調部1402a乃至1402h)と、階層ごとに設けられるレベル調整部1403(レベル調整部1403a乃至1403h)と、階層合成部1404と、帯域分割部1405と、時間インターリーブ(「時間IL」とも称する)部1406と、周波数インターリーブ(「周波数IL」とも称する)部1407と、帯域合成部1408と、パイロット生成部1409と、差動基準付加部1410と、DBPSK変調部1411と、OFDMフレーム構成部1412と、IFFT部1413と、GI付加部1414と、を有する。
【0058】
入力IF1401には、単一又は複数系統の階層ごとにフレームを構成するデータ(階層別フレーム)及びLchフレームが入力される。
【0059】
1次変調部1402は、対応する階層別フレームに対して1次変調処理を行い、1次変調処理後の信号をレベル調整部1403に出力する。具体的には、対応する階層別フレームを、誤り訂正符号を格納するFEC(Forward Error Correction)ブロックに変換したうえで、エネルギー拡散、BCH符号化、LDPC符号化、ビットインターリーブ(以下「ビットIL」という)、及びマッピングを行い、キャリアシンボルを出力する。レベル調整部1403は、1次変調部1402が出力するキャリアシンボルのレベル調整を行い、レベル調整後のキャリアシンボルを階層合成部1404に出力する。
【0060】
階層合成部1404は、各階層のキャリアシンボルを階層合成して帯域分割部1405に出力する。具体的には、階層合成部1404は、各階層のキャリアシンボルを合成し、1つのOFDMシンボルで伝送するデータセグメントを構成し、0乃至34のセグメント番号を付与する。帯域分割部1405は、階層合成によりセグメント番号が振られた階層ごとのセグメントを再度、階層ごとに分割して時間IL部1406に出力する。時間IL部1406は、時間ILによりキャリアシンボルを時間方向に分散させて周波数IL部1407に出力する。周波数IL部1407は、周波数ILによりキャリアシンボルをキャリア方向(周波数方向)に分散させて帯域合成部1408に出力する。帯域合成部1408は、部分受信帯域ありの場合、帯域合成により、部分受信帯域を構成する9セグメントと非部分受信帯域を構成する26セグメントとを合成し、35セグメントとし、データセグメントをOFDMフレーム構成部1412に出力する。部分受信帯域なしの場合は、非部分受信帯域を構成するセグメント数が35であるため、帯域合成は行う必要がない。
【0061】
パイロット生成部1409は、パイロット配置情報に基づいてパイロット信号を生成し、パイロット信号をOFDMフレーム構成部1412に出力する。差動基準付加部1410は、Lchフレームに対して、サブフレームごとに先頭に差動基準ビットを付加してDBPSK変調部1411に出力する。DBPSK変調部1411は、差動基準付加部1410の出力信号にDBPSK変調を施してLch信号を生成し、Lch信号をOFDMフレーム構成部1412に出力する。Lchは、広帯域周波数同期及び雑音推定用のパイロット信号であり、データ伝送にも使用することができる。
【0062】
OFDMフレーム構成部1412は、データセグメントにパイロット及びLchを付加し、OFDMフレームを構成する。IFFT部1413は、OFDMフレーム構成後の信号をOFDM変調してGI付加部1414に出力する。GI付加部1414は、IFFT部1413の出力信号にGIを付加して出力する。
【0063】
図6は、本実施形態に係る周波数IL部1407について説明するための図である。なお、周波数ILは、キャリアシンボルを周波数方向(キャリア方向)に分散させることで、周波数選択性フェージングに対する耐性を確保するために施す処理である。
【0064】
図6に示すように、本実施形態に係る周波数IL部1407は、階層内IL部11と、部分受信帯域分離部12と、階層間IL部13(階層間IL部13a及び13b)と、セグメント内(「セグ内」とも称する)IL部14(セグ内IL部14a及び14b)とを有する。すなわち、本実施形態に係る周波数ILは、主に、「階層内IL」、「階層間IL」、「セグメント内IL(セグ内IL)」の3つで構成される。
【0065】
階層内IL部11は、各階層に含まれるセグメント間で
図7に示すようにキャリア(データキャリア)単位で周波数IL処理を行う。
図7では、階層内IL部11が、A階層を構成する7つのセグメント間でキャリア単位での周波数ILを行う一例を示しており、A階層(7つのセグメント)のデータキャリア数が174であるとしている。このような階層内ILは、キャリア方向に広い範囲で周波数ILを施すことにより、マルチパスによる特定のセグメントにおける振幅低下による誤りの発生を防ぐために行う。
【0066】
部分受信帯域分離部12は、A階層、B階層、C階層・・・等全ての階層のセグメントから、部分受信帯域及び非部分受信帯域を生成する。ここで、部分受信帯域分離部12は、A階層へのセグメント割り当てが少ない場合、部分受信帯域内にB階層を割り当てることができる。これにより、部分受信帯域は常に9セグメント幅とし、広い周波数範囲で周波数ILが施されるようにしている。これにより、周波数選択性フェージングに耐性を高めることができる。
【0067】
例えば、部分受信帯域分離部12は、A階層が9セグメント未満の場合、B階層のセグメント番号の低い方から必要セグメント数を付加し、部分受信帯域(9セグメント)となるようにする。残りのB階層のセグメントは非部分受信帯域とする。或いは、A階層が3セグメント、B階層が32セグメントの場合、部分受信帯域分離部12は、B階層を6セグメントと26セグメントに分割し、A階層の3セグメントとB階層の6セグメントを部分受信帯域とし、B階層の26セグメントを非部分受信帯域とする。或いは、A階層が9セグメントの場合、部分受信帯域分離部12は、A階層を部分受信帯域とし、B階層を非部分受信帯域とする。
【0068】
階層間IL部13は、部分受信帯域(9セグメント)の階層間ILを行う階層間IL部13aと、非部分受信帯域(26セグメント)の階層間ILを行う階層間IL部13bと、を有する。なお、部分受信帯域が設定されない場合、非部分受信帯域を構成するセグメント数が35であり、階層間IL部13bがこれら全帯域(35セグメント)にわたって階層ILを行う。以下において、部分受信帯域及び非部分受信帯域を特に区別しないときは「所定帯域」と称する。また、部分受信帯域用の階層間IL部13a及び非部分受信帯域用の階層間IL部13bを特に区別しないときは単に「階層間IL部13」と称する。階層間IL部13の詳細については後述する。
【0069】
セグ内IL部14は、セグメント内ILを行う。セグメント内ILは、階層間IL後のキャリア配置と周波数特性の周期とが一致した場合に低振幅のキャリアシンボルが連続することによる誤りの発生を防ぐように、キャリア配列の周期性を排除するために行う。セグメント内ILは、セグメント毎に処理するものであって、セグメント内キャリアローテーション及びセグメント内キャリアランダマイズを含む。セグ内IL部14は、部分受信帯域(9セグメント)のセグメント内ILを行うセグ内IL部14aと、非部分受信帯域(26セグメント)のセグメント内ILを行うセグ内IL部14bと、を有する。なお、部分受信帯域が設定されない場合、非部分受信帯域を構成するセグメント数が35であり、セグ内IL部14bがこれら全帯域(35セグメント)についてセグメント内ILを行う。
【0070】
図8は、本実施形態に係る階層間IL部13(階層間IL手段)を示す図である。階層間IL部13は、所定帯域(部分受信帯域又は非部分受信帯域)内の階層間での周波数ILである階層間ILを行う。
図8の階層間IL部13は、非部分受信帯域用の階層間IL部13bであってもよい。
【0071】
階層間IL部13は、キャリア単位IL部131(キャリア単位IL手段)と、セグメント単位IL部132(セグメント単位IL手段)とを含む。キャリア単位IL部131は、所定帯域内において、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間で、階層間ILをキャリア単位で行う(階層間キャリア単位IL)。セグメント単位IL部132は、キャリア単位IL部131が階層間ILをキャリア単位で行った後に、所定帯域内の全階層にわたって階層間ILをセグメント単位で行う(階層間セグメント単位IL)。
【0072】
例えば、非部分受信帯域用の階層間IL部13bにおいて、キャリア単位IL部131は、非部分受信帯域内において、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間で、階層間キャリア単位ILを行う。セグメント単位IL部132は、キャリア単位IL部131が階層間ILをキャリア単位で行った後に、非部分受信帯域内の全階層にわたって階層間セグメント単位ILを行う。
【0073】
このように、パイロット配置パターン及び/又はデータキャリア数が同一である階層間でキャリア単位ILを行ったうえで、全階層にわたってセグメント単位ILを行うことにより、階層間ILのIL効果をさらに高めることが可能である。特に、このような階層間ILは、例えば8階層までを周波数分割で多重するような多階層での階層伝送において好適である。さらに、このような階層間ILは、キャリア単位IL及びセグメント単位ILのいずれか一方を択一的に適用する従来の方法に比べて、ILの使い分け(場合分け)に要する処理負荷の増大を抑制できる。
【0074】
図8の例では、A階層乃至C階層は、パイロット配置パターン及びデータキャリア数が同一であり、パイロット配置パターン(Dx,Dy)=(3,1)である。ここで、Dxは、分散パイロット(SP:Scattered Pilot)のキャリア方向(周波数方向)の間隔を示し、Dyは、SPのシンボル方向(時間方向)の間隔を示す。キャリア単位IL部131aは、A階層乃至C階層の階層間でキャリア単位ILを行う。また、D階層及びE階層は、パイロット配置パターン及びデータキャリア数が同一であり、パイロット配置パターン(Dx,Dy)=(3,2)である。キャリア単位IL部131bは、D階層及びE階層の階層間でキャリア単位ILを行う。さらに、E階層乃至H階層は、パイロット配置パターン及びデータキャリア数が同一であり、パイロット配置パターン(Dx,Dy)=(3,4)である。キャリア単位IL部131cは、E階層乃至H階層の階層間でキャリア単位ILを行う。そして、セグメント単位IL部132は、A階層乃至C階層の全階層にわたってセグメント単位ILを行う。
【0075】
なお、階層間キャリア単位ILは、キャリア単位でILを行うものである。キャリア単位IL部131は、階層間IL部13に入力される各階層のSPパターン(パイロット配置パターン)が同じ場合、もしくは1階層のみの場合に、階層間キャリア単位ILを行う。A階層が9セグメント、B階層が26セグメントの場合は、部分受信帯域内にはA階層のデータのみが含まれるため、A階層とB階層のSPパターンが異なる場合においても、部分受信帯域では、階層間キャリア単位ILが施される。階層間キャリア単位IL処理の内容は、上述の階層内IL(
図7参照)に準ずる。
【0076】
一方、階層間セグメント単位ILは、セグメントのブロック単位でILを行うものであり、階層間IL部13に入力される各階層のSPパターンが異なる場合に行う。IL前後のセグメントの並びを
図9に示す。部分受信帯域ありの場合、部分受信帯域は9セグメントの並べ替えパターンであって非部分受信帯域は26セグメントの並べ替えパターンを用い、部分受信帯域なしの場合には35セグメントの並べ替えパターンを用いる。
【0077】
このように、階層間ILには、階層間セグメント単位IL及び階層間キャリア単位ILの2種類があり、階層間ILへ入力される各階層のSPパターンによって使い分けを行う。部分受信帯域あるいは非部分受信帯域への入力階層数が1の場合、及び同一のSPパターンである階層が複数ある場合、階層間キャリア単位ILの処理を行う。入力階層数が2以上であり、かつ階層間キャリア単位ILの処理を部分受信帯域あるいは非部分受信帯域全体にわたって行っていない場合は、次に部分受信帯域あるいは非部分受信帯域それぞれ全体にわたって階層間セグメント単位ILを行う。
【0078】
すなわち、SPパターンが同一である階層はデータキャリア数も同一であることから、ILの単位を最も細かいキャリア単位で周波数ILを行うこととしている。一方、SPパターンが異なる階層はデータキャリア数も異なるため、階層間キャリア単位ILを用いることができないため、セグメント単位での周波数ILを行うことで周波数選択性フェージングに対する耐性を確保している。
【0079】
図10乃至
図12は、本実施形態に係る階層間IL部13への入力階層数が1から3の場合の具体的な階層間ILを示す図である。これらの図において、N
A、N
B、N
Cは、それぞれA,B,C階層のデータキャリア数を示す。
【0080】
まず、
図10に示す例では、階層間IL部13への入力が1階層である。この場合、キャリア単位IL部131は、当該1つの階層(図示の例では、A階層)に対してキャリア単位ILを行って出力する。
【0081】
次に、
図11(a)に示す例では、階層間IL部13への入力が2階層であって、且つ当該2つの階層のデータキャリア数が同一である。この場合、キャリア単位IL部131は、当該2つの階層(図示の例では、A階層及びB階層)に対してキャリア単位ILを行って出力する。
【0082】
図11(b)に示す例では、階層間IL部13への入力が2階層であって、且つ当該2つの階層のデータキャリア数が異なる。この場合、セグメント単位IL部132は、当該2つの階層(図示の例では、A階層及びB階層)に対してセグメント単位ILを行って出力する。
【0083】
図12(a)に示す例では、階層間IL部13への入力が3階層であって、且つ当該3つの階層のデータキャリア数が同一である。この場合、キャリア単位IL部131は、当該3つの階層(図示の例では、A階層乃至C階層)に対してキャリア単位ILを行って出力する。
【0084】
図12(b)に示す例では、階層間IL部13への入力が3階層であって、そのうちの2つの階層のデータキャリア数が同一であり、残る1つの階層のデータキャリア数が他と異なる。図示の例では、B階層及びC階層はデータキャリア数が同一であるが、A階層のデータキャリア数はB階層及びC階層に比べて少ない。この場合、キャリア単位IL部131は、データキャリア数が同一である2つの階層(B階層及びC階層)に対してキャリア単位ILを行ってセグメント単位IL部132に出力する。そして、セグメント単位IL部132は、キャリア単位IL後の当該2つの階層(B階層及びC階層)と、データキャリア数が他と異なる1つの階層(A階層)とに対して、セグメント単位ILを行って出力する。
【0085】
図12(c)に示す例では、階層間IL部13への入力が3階層であって、そのうちの2つの階層のデータキャリア数が同一であり、残る1つの階層のデータキャリア数が他と異なる。図示の例では、A階層及びB階層はデータキャリア数が同一であるが、C階層のデータキャリア数はB階層及びC階層に比べて多い。この場合、キャリア単位IL部131は、データキャリア数が同一である2つの階層(A階層及びB階層)に対してキャリア単位ILを行ってセグメント単位IL部132に出力する。そして、セグメント単位IL部132は、キャリア単位IL後の当該2つの階層(A階層及びB階層)と、データキャリア数が他と異なる1つの階層(C階層)とに対して、セグメント単位ILを行って出力する。
【0086】
図12(d)に示す例では、階層間IL部13への入力が3階層であって、当該3つの階層のデータキャリア数がそれぞれ異なる。図示の例では、A階層に比べてB階層のデータキャリア数が多く、且つB階層に比べてC階層のデータキャリア数が多い。この場合、キャリア単位ILが行われずに、セグメント単位IL部132は、当該3つの階層(A階層乃至C階層)に対してセグメント単位ILを行って出力する。
【0087】
なお、
図10乃至
図12の具体例では、階層間IL部13への入力が複数階層であって、且つ当該複数の階層のデータキャリア数が同一である場合、キャリア単位IL部131が当該複数の階層に対してキャリア単位ILを行うが、セグメント単位IL部132はセグメント単位ILを行わないものとして説明した。これにより、セグメント単位ILによる処理負荷を削減できる。
【0088】
しかしながら、階層間IL部13への入力が複数階層であって、且つ当該複数の階層のデータキャリア数が同一である場合であっても、キャリア単位IL部131が当該複数の階層に対してキャリア単位ILを行った後に、セグメント単位IL部132が当該複数の階層に対してセグメント単位ILを行ってもよい。これにより、階層間ILの処理手順を統一し易くなり、場合分けを行うことによる処理負荷の増大を抑制できる。また、IL効果を向上させることができる。
【0089】
(4)受信装置
図13を参照して、本実施形態に係る受信装置200の一例について説明する。なお、以下において、デインターリーブを「DIL」とも称する。
【0090】
図13に示すように、本実施形態に係る受信装置200は、本実施形態に係る送信装置100が行う処理の逆処理を行うように構成される。具体的には、受信装置200は、受信部31と、FFT部32と、デフレーム化部33と、帯域分離部34と、セグメント内DIL部35と、階層間DIL部36と、部分受信帯域合成部37と、階層内DIL部38と、時間DIL部39と、復調部40とを有する。
【0091】
受信部31は、送信装置100によって送信された放送信号を受信してOFDM信号に変換し、OFDM信号をFFT部32に出力する。
【0092】
FFT部32は、受信部31が出力するOFDM信号に対してFFTを施してOFDM復調を行い、フレーム単位の受信データをデフレーム化部33に出力する。
【0093】
デフレーム化部33は、受信フレームから所望のサブフレームを取得するとともに、部分受信帯域データ及び非部分受信帯域データの合成データを取得し、取得した合成データを帯域分離部34に出力する。
【0094】
帯域分離部34は、デフレーム化部33が出力する合成データから、部分受信帯域データ及び非部分受信帯域データを分離し、部分受信帯域データをセグメント内DIL部35aに出力するとともに、非部分受信帯域データをセグメント内DIL部35bに出力する。
【0095】
セグメント内DIL部35aは、送信装置100におけるセグメント内IL(キャリアローテーション及びキャリアランダマイズ)の逆処理を行う。具体的には、セグメント内DIL部35aは、部分受信帯域データを構成するセグメント内で、送信装置100のセグメント内ILの逆処理を行い、部分受信帯域データを階層間DIL部36aに出力する。セグメント内DIL部35bは、非部分受信帯域データを構成するセグメント内で、送信装置100のセグメント内ILの逆処理を行い、部分受信帯域データを階層間DIL部36bに出力する。
【0096】
階層間DIL部36は、送信装置100における階層間ILの逆処理である階層間DILを行う。具体的には、階層間DIL部36aは、セグメント内DIL部35aが出力する部分受信帯域データを構成する階層間で周波数DILを行い、周波数DIL後の部分受信帯域データを部分受信帯域合成部37に出力する。階層間DIL部36bは、セグメント内DIL部35bが出力する非部分受信帯域データを構成する階層間で周波数DILを行い、周波数DIL後の非部分受信帯域データを部分受信帯域合成部37に出力する。階層間DIL部36の詳細については後述する。
【0097】
部分受信帯域合成部37は、階層間DIL部36aが出力する部分受信帯域データ及び階層間DIL部36bが出力する非部分受信帯域データから、各階層のデータを取得し、取得したデータを階層内DIL部38に出力する。
【0098】
階層内DIL部38は、階層内のセグメント間でキャリア単位での周波数DILを行い、周波数DIL後のデータを時間DIL部39に出力する。
【0099】
時間DIL部39は、階層内DIL部38が出力するデータに対して時間DILを行い、時間DIL後の階層データを復調部40に出力する。
【0100】
復調部40は、時間DIL部39が出力する各階層データのキャリアから階層データをデマッピング等して出力する。
【0101】
図14は、本実施形態に係る階層間DIL部36(階層間DIL手段)を示す図である。階層間DIL部36は、所定帯域(部分受信帯域又は非部分受信帯域)内の階層間での周波数DILである階層間DILを行う。
図14の階層間DIL部36は、非部分受信帯域用の階層間DIL部36bであってもよい。なお、階層間DIL部36が行う階層間DILで参照するサブフレーム情報、例えば、サブフレーム内の階層数や各階層のパイロット配置情報は、TMCC情報に含まれていてもよい。
【0102】
階層間DIL部36は、セグメント単位DIL部361(セグメント単位DIL手段)と、キャリア単位DIL部362(キャリア単位DIL手段)とを含む。セグメント単位DIL部361は、所定帯域内の全階層にわたって階層間DILをセグメント単位で行う(階層間セグメント単位DIL)。キャリア単位DIL部362は、セグメント単位DIL部361が階層間DILをセグメント単位で行った後に、パイロット配置パターン及び/又はキャリア数が同一である階層間で階層間DILをキャリア単位で行う(階層間キャリア単位DIL)。
【0103】
例えば、非部分受信帯域用の階層間DIL部36bにおいて、セグメント単位DIL部361は、非部分受信帯域の全階層にわたって階層間セグメント単位DILを行う。キャリア単位DIL部362は、セグメント単位DIL部361が階層間DILをセグメント単位で行った後に、非部分受信帯域内でパイロット配置パターン及び/又はキャリア数が同一である階層間で階層間キャリア単位DILを行う。
【0104】
図14の例では、まず、セグメント単位DIL部361は、A階層乃至C階層の全階層にわたってセグメント単位DILを行う。次に、キャリア単位DIL部362aは、パイロット配置パターン及びデータキャリア数が同一であるA階層乃至C階層の階層間でキャリア単位DILを行う。また、キャリア単位DIL部362bは、パイロット配置パターン及びデータキャリア数が同一であるD階層及びE階層の階層間でキャリア単位DILを行う。さらに、キャリア単位DIL部362cは、パイロット配置パターン及びデータキャリア数が同一であるE階層乃至H階層の階層間でキャリア単位DILを行う。
【0105】
なお、階層間キャリア単位DILは、キャリア単位でDILを行うものである。キャリア単位DIL部362は、階層間DIL部36に入力される各階層のSPパターン(パイロット配置パターン)が同じ場合、もしくは1階層のみの場合に、階層間キャリア単位DILを行う。一方、階層間セグメント単位DILは、セグメントのブロック単位でDILを行うものであり、階層間DIL部36に入力される各階層のSPパターンが異なる場合に行う。なお、階層間DIL部36は、
図10乃至
図12の階層間ILの逆処理を行ってもよい。
【0106】
(5)その他の実施形態
上述の各装置(送信装置100、受信装置200)が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、上述の各装置(送信装置100、受信装置200)が行う各処理を実行する回路を集積化し、当該装置を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。
【0107】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on/in response to)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」等の呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0108】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更などをすることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 :放送伝送システム
11 :階層内IL部
12 :部分受信帯域分離部
13 :階層間IL部
14 :セグ内IL部
31 :受信部
32 :FFT部
33 :デフレーム化部
34 :帯域分離部
35 :セグメント内DIL部
36 :階層間DIL部
37 :部分受信帯域合成部
38 :階層内DIL部
39 :時間DIL部
40 :復調部
100 :送信装置
131 :キャリア単位IL部
132 :セグメント単位IL部
200 :受信装置
361 :セグメント単位DIL部
362 :キャリア単位DIL部
500 :放送伝送路
1100 :入力IF
1200 :フレーム同期信号生成部
1300 :TMCC生成部
1400 :サブフレーム構成部
1401 :入力IF
1402 :1次変調部
1403 :レベル調整部
1404 :階層合成部
1405 :帯域分割部
1406 :時間IL部
1407 :周波数IL部
1408 :帯域合成部
1409 :パイロット生成部
1410 :差動基準付加部
1411 :DBPSK変調部
1412 :OFDMフレーム構成部
1413 :IFFT部
1414 :GI付加部
1500 :Lch分離部
1600 :時分割多重フレーム構成部