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特開2024-170332MFI型ゼオライト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170332
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】MFI型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20241129BHJP
   C01B 39/36 20060101ALI20241129BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B01J20/18 B
C01B39/36
B01J20/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160700
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2024060729の分割
【原出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2023062985
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023198053
(32)【優先日】2023-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篠田 美雪
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇禎
(72)【発明者】
【氏名】福井 めぐ
(57)【要約】
【課題】
分散剤の使用や、粉砕を必須とすることなく、ゼオライトスラリーとしたときのハンドリング性に優れ、かつ有機化合物に対する高い吸着性能を有するMFI型ゼオライト、その製造方法及びこれを含む吸着剤の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【解決手段】
積算体積粒度分布におけるD50が0.5μm以上5.0μm以下であり、なおかつ、粉末X線回折パターンにおける、(101)面のピーク高さに対する(020)面のピーク高さが65%以上95%以下である、MFI型ゼオライトを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積算体積粒度分布におけるD50が0.5μm以上5.0μm以下であり、なおかつ、粉末X線回折パターンにおける、(101)面のピーク高さに対する(020)面のピーク高さが65%以上95%以下であり、アルミナに対するシリカのモル比が1000以上3000以下である、MFI型ゼオライトを含む有機化合物吸着剤。
【請求項2】
前記MFI型ゼオライトの頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型である、請求項1に記載の有機化合物吸着剤。
【請求項3】
前記MFI型ゼオライトの体積粒度分布における標準偏差が10μm以下である、請求項1又は2のいずれかに記載の有機化合物吸着剤。
【請求項4】
前記MFI型ゼオライトの平均結晶径が0.1μm以上5.0μm以下である、請求項1又は2のいずれかに記載の有機化合物吸着剤。
【請求項5】
前記MFI型ゼオライトのBET比表面積が300m/g以上である、請求項1又は2のいずれかに記載の有機化合物吸着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MFI型ゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MFI型ゼオライトは、有機化合物の吸着剤として様々な工業分野で利用されている。一般的に、吸着剤としてMFI型ゼオライトを使用する場合、吸着効率を高くする観点から、一次粒子径を小さくし、また、比表面積を大きくすることが好ましい。吸着剤として適したMFI型ゼオライトとして、例えば、特許文献1では、構造指向剤としてノルマルプロピルアミンを使用して得られた、一次粒子径が1μm程度のペンタシル型ゼオライトが開示されている。
【0003】
一方、一次粒子径が5μm以下程度になると、一次粒子同士が凝集し、粗大な二次粒子を形成しやすくなる。その結果、ゼオライトスラリーとしたときの粘度が高くなり、ハンドリング性が低下する。
【0004】
スラリーに含まれるゼオライトの粒子、特に二次粒子の粒子径を小さくする方法として、ゼオライトスラリーに有機物等の分散剤を添加する方法(例えば、特許文献2)、ゼオライト粉末を粉砕する方法、が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-11422号
【特許文献2】特開2004-67976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されたMFI型ゼオライトでは、一次粒子の凝集が著しく、粗大な粒子を形成してしまう。そのため、粉末としての平均粒子径が小さなMFI型ゼオライトを得ることができなかった。
【0007】
一方、特許文献2で開示された分散剤を加える方法は、分散剤が、MFI型ゼオライト吸着特性に影響するため好ましくない。
【0008】
また、MFI型ゼオライトを粉砕して粒子径を小さくする方法があるが、粉砕では、粒子径の低下とともに、ゼオライトの結晶性が低下するため、吸着性能が低下する。
【0009】
本開示は、分散剤の使用や、粉砕を必須とすることなく、平均粒子径が小さく、かつ有機化合物に対する高い吸着性能を有するMFI型ゼオライト、その製造方法及びこれを含む吸着剤の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、粉砕や、分散剤を使用することなく、ゼオライトスラリーとしたときのハンドリング性に優れているMFI型ゼオライトを製造する方法について検討した。その結果、原料を結晶化する工程において、密閉容器内の圧力を操作することで、従来の製造方法では得られなかった、平均粒子径が小さくかつ有機化合物に対する高い吸着性能を有するMFI型ゼオライトを直接結晶化できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1]積算体積粒度分布におけるD50が0.5μm以上5.0μm以下であり、なおかつ、粉末X線回折パターンにおける、(101)面のピーク高さに対する(020)面のピーク高さが65%以上95%以下である、MFI型ゼオライト。
[2]アルミナに対するシリカのモル比が50以上3000以下である、前記[1]に記載のMFI型ゼオライト。
[3]頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型である、前記[1]又は[2]のいずれかに記載のMFI型ゼオライト。
[4]体積粒度分布における標準偏差が10μm以下である、前記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のMFI型ゼオライト。
[5]平均結晶径が0.1μm以上5.0μm以下である、前記[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のMFI型ゼオライト。
[6]BET比表面積が300m/g以上である、前記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載のMFI型ゼオライト。
[7] シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、ノルマルブチルアミン及び水を含む組成物を、100℃以上150℃以下、0.15MPa以上で水熱処理した後に、0.10MPa/時間以上の減圧速度で減圧しながら100℃以上150℃以下で水熱処理する工程を含む、前記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のMFI型ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、分散剤を添加する方法やゼオライト粉末を粉砕する方法を必須とすることなく、ゼオライトスラリーとしたときのハンドリング性に優れ、かつ有機化合物に対する高い吸着性能を有するMFI型ゼオライト及びその製造方法の少なくともいずれか、を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示のMFI型ゼオライトについて、実施形態の一例を示して説明する。本開示には、本明細書で開示した各構成及びパラメータは任意の組合せを含むものとし、また、本明細書で開示した値の上限及び下限は任意の組合せを含むものとする。本実施形態における用語は以下の通りである。
【0014】
「アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造を有する複合酸化物である。アルミノシリケートのうち、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを有するものが「結晶性アルミノシリケート」、及び、結晶性のXRDピークを有さないものが「非晶質アルミノシリケート」である。
【0015】
本実施形態において、XRDパターンは以下の条件のXRD測定より得られるものが挙げられる。
【0016】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 10°/分
測定範囲 : 2θ=5°から40°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
散乱スリット : 開放
受光スリット : 開放
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra2)
フィルター : 不使用
XRDパターンは一般的な粉末X線回折装置(例えば、装置名:UltimaIV、リガク社製)を使用して測定することができる。また、結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフトを使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークであり、半値幅が2θ=0.10°以下のXRDピークが例示できる。
【0017】
「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子が金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかからなる化合物である。金属原子としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる1以上が例示でき、アルミニウムが好ましい。半金属原子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)の群から選ばれる1以上が例示でき、ケイ素が好ましい。
【0018】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子に少なくとも金属及び半金属以外の原子を含む化合物である。ゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。
【0019】
ゼオライトやゼオライト類似物質における「骨格構造(以下、「ゼオライト構造」ともいう。)」とは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めている骨格構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で特定される骨格構造である。例えば、MFI構造は構造コード「MFI」として、特定される骨格構造である。MFI構造は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-structure.org/databases/のZeolite Framework TypesのMFIに記載のXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比によって、ゼオライト構造は同定できる。ゼオライト構造に関し、骨格構造、結晶構造又は結晶相はそれぞれ同義で使用される。
【0020】
本実施形態において、「MFI型ゼオライト」など、「~型ゼオライト」は、当該構造コードのゼオライト構造を有するゼオライトを意味し、好ましくは当該構造コードのゼオライト構造を有する結晶性アルミノシリケートを意味する。構造コード「MFI」のゼオライト構造を有するゼオライトとは、そのXRDパターンに、MFI型のゼオライト構造として特定されるXRDピークを有するものであればよく、好ましくは、少なくともMFI型のゼオライト構造として同定できるXRDピークを有するものである。
【0021】
MFI型ゼオライトのXRDパターンの各ピークは参照パターンと比較することで、格子面(hkl)面、(h、k及びlは整数)に帰属することができる。
【0022】
「平均結晶径」とは、一次粒子の粒子径の平均値であり、また、一次粒子は、以下の条件による走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)観察で、独立して観察される最小単位の粒子である。SEM観察は、一般的な走査型電子顕微鏡(例えば、装置名:JSM-IT200、日本電子株式会社製)を使用して行えばよい。
【0023】
加速電圧 :6kV
倍率 :10,000±5,000倍
平均結晶径は、まず、SEM観察図において輪郭が途切れることなく観察される一次粒子100±10個を抽出し、抽出した各一次粒子の最長径を測定し、その平均値を求め、これを平均結晶径とすればよい。SEM観察図の数は、一次粒子が上述の個数観察できる数であればよく、1又は複数のSEM観察図を使用すればよい。
【0024】
「D10」、「D50」及び「D90」とは、それぞれ、積算体積粒度分布における、粒子径の頻度の積算量が10%を占めるときの粒子径[μm]、粒子径の頻度の積算量が50%を占めるときの粒子径[μm]及び粒子径の頻度の積算量が90%を占めるときの粒子径[μm]である。なお、D50は、「メジアン径」と互換的に使用される。
【0025】
MFI型ゼオライトの積算及び頻度体積粒度分布、並びに、D10、D50及びD90は、それぞれ、一般的なレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、装置名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて以下の条件で測定すればよい。
【0026】
測定範囲 :0.02~2000μm
粒子屈折率 :1.66
粒子透過性 :透過
粒子形状 :非球形
溶媒屈折率 :1.333
「固形分濃度」とはスラリーに占めるゼオライトの質量割合であり、以下の式で求められる濃度である。
【0027】
固形分濃度[質量%]
=(ゼオライト質量[g]/スラリー質量[g])×100
上式におけるスラリー質量は、スラリーの質量測定により得られる値である。また、ゼオライト質量は、スラリー質量測定後のスラリーを乾燥して固形分を得、これを大気中、600℃で1時間処理後に質量測定により測定される値である。
【0028】
以下、本実施形態のMFI型ゼオライトについて説明する。
【0029】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、D50が0.5μm以上5.0μm以下であり、なおかつ、粉末X線回折パターンにおける、(101)面のピーク高さに対する(020)面のピーク高さ(以下、「(020)/(101)ピーク比」ともいう。)が65%以上95%以下である。
【0030】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、D50が0.5μm以上5.0μm以下である。D50が0.5μm未満のMFI型ゼオライトは、これをスラリーにしたときの粘度が高く、また、ハンドリング性(操作性)が著しく低い。また、D50が5.0μmを超えると、高いせん断速度におけるスラリーの粘度が増加しやすく、流動性が低下する。本実施形態のMFI型ゼオライトのD50は1.0μm以上又は1.5μm以上であり、また、3.0μm以下であることが挙げられ、1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であることが好ましい。本実施形態において、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であることは、ピークがひとつである形状の分布を有する頻度体積粒度分布曲線であり、換言すると、積算体積粒度分布を測定して得られる頻度体積粒度分布曲線がひとつのピークを有する形状を有する曲線、好ましくは、頻度体積粒度分布曲線における粒子径の頻度の変極点がひとつである形状を有する曲線である。
【0032】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、その体積粒度分布における標準偏差(以下、単に「標準偏差」ともいう。)が、10μm以下であることが好ましい。本実施形態のMFI型ゼオライトの標準偏差は、7μm以下又は5μm以下であり、また、0μm超又は0.5μm以上であることが挙げられ、0μm超7μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下がより好ましい。標準偏差がこれを満たすことで、本実施形態のMFI型ゼオライトをスラリーとしたとき、得られるスラリーの粘度が増加しにくい。
【0033】
本実施形態における「標準偏差」とは、積算体積粒度分布における、D90とD10の差分を2で割って求めた値であり、以下の式で求めることができる。
【0034】
標準偏差[μm]=(D90[μm]-D10[μm])/2
本実施形態のMFI型ゼオライトは、そのXRDパターンにおける、(020)/(101)ピーク比が65%以上95%以下である。(020)/(101)ピーク比が上記範囲外では有機化合物の吸着量が小さくなる。MFI型ゼオライトに対し、粉砕など、粒子に強い応力がかかる操作を加えると、(020)/(101)ピーク比は高くなる傾向がある。これはMFI型ゼオライトの結晶性が低下するものと考えられ、その結果、有機化合物の吸着量が小さくなりやすい。以上の点から、本実施形態のMFI型ゼオライトの(020)/(101)ピーク比は、70%以上又は75%以上であり、また、85%以下であることが挙げられ、70%以上85%以下が好ましく、75%以上85%以下がより好ましい。
【0035】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、そのXRDパターンにおける、(501)面のピーク高さに対する(101)面のピーク高さ(以下、「(101)/(501)ピーク比」ともいう。)が50%以上140%以下であることが好ましい。(101)/(501)ピーク比は、MFI型ゼオライトの骨格構造における酸素10員環に起因する値と考えられ、後述する構造指向剤除去工程やカチオン交換工程により酸素10員環内の構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)やアルカリ金属元素が除去されることで、その数値が高くなる傾向がある。0.01kPa以上での平衡圧力における有機化合物の吸着量が向上しやすくなるため、本実施形態のMFI型ゼオライトの(101)/(501)ピーク比は80%以上又は90%以上であり、また、140%以下又は110%以下が挙げられ、80%以上140%以下が好ましく、90%以上110%以下がより好ましい。
【0036】
本実施形態において、「(101)面のピーク」とは、MFI型ゼオライトのXRDパターンにおける格子面間隔dが11.10±0.50Åに相当するXRDピークを示し、「(020)面のピーク」とは、MFI型ゼオライトのXRDパターンにおける格子面間隔dが9.97±0.10Åに相当するXRDピークを示し、「(501)面のピーク」とは、MFI型ゼオライトのXRDパターンにおける格子面間隔dが3.87±0.03Åに相当するXRDピークを示す。
【0037】
XRDパターンは、独立した個々のXRDピーク自体が結晶構造を示すのではなく、特定の相対強度を有する複数のXRDピークの群からなるひとつのXRDパターンにより、MFI型ゼオライトの結晶構造を示すものである。XRDピークの格子面間隔及び相対強度が変化することは結晶構造が変化することを意味する。そのため、本実施形態のMFI型ゼオライトは、これらの相対強度を有するXRDピークの群により、その結晶構造を特定することができる。したがって、結晶構造が変わることにより、複数のXRDピークの格子面間隔や相対強度が変化する。
【0038】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、そのXRDパターンにMFI構造として特定されるXRDピークを有するものであり、好ましくは、少なくとも以下のXRDピークを含むXRDパターンを有すること、が挙げられる。
【0039】
【表1】
【0040】
本実施形態において、該XRDパターンは上表における各XRDピークを含むものであればよく、MFI構造に帰属される他のXRDピークを含んでいてもよい。
【0041】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、そのXRDパターンに少なくとも以下のXRDピークを含むことがより好ましい。
【0042】
【表2】
【0043】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、そのXRDパターンに少なくとも以下のXRDピークを含むことが更に好ましい。
【0044】
【表3】
【0045】
本実施形態のMFI型ゼオライトは上記のピーク以外に、相対強度が1%未満であるXRDピークを含んでいてもよい。但し、これらの低強度のXRDピークは結晶構造の同定に考慮する必要はない。
【0046】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比(以下「SiO/Al比」ともいう。)が50以上3000以下であることが好ましい。SiO/Al比が上記の値であることで、有機化合物に対する吸着性能が高くなりやすい。水の存在下でも有機化合物に対する高い吸着特性が示しやすいという点で、本実施形態のMFI型ゼオライトのSiO/Al比は100以上3000以下であることが好ましく、1000以上3000以下がより好ましく、2000以上3000以下であることが更に好ましい。一方、有機化合物の吸着量を大きくしやすい点で、本実施形態のMFI型ゼオライトのSiO/Al比は50以上2000以下が好ましく、100以上1000以下がより好ましく、170以上500以下が更に好ましい。
【0047】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、有機化合物の吸着量が向上しやすくなる点で、MFI型ゼオライトのケイ素(Si)の含有量、アルミニウム(Al)の含有量及びアルカリ金属(M)の含有量の合計含有量(以下、「金属含有量」ともいう。)に対する、アルカリ金属の含有量の割合(以下、「アルカリ金属含有量」ともいう。)が0質量%以上又は0質量%超であり、また、0.5質量%以下又は0.1質量%以下であることが挙げられ、0質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0質量%超0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上0.05質量%以下であることが更に好ましい。
【0048】
MFI型ゼオライトに含有されるアルカリ金属元素が2種以上である場合、アルカリ金属含有量は各金属元素の含有量の合計値とすればよい。例えばアルカリ金属元素がナトリウム(Na)及びカリウム(K)を含む場合、MFI型ゼオライトの金属含有量に対する、ナトリウム及びカリウムの合計含有量の割合(以下、「(Na+K)含有量」ともいう。)とすればよく、以下のように求めればよい。
【0049】
(Na+K)含有量[質量%]
={(Na+K)[g]/(Si+Al+Na+K)[g]}×100
SiO/Al比及びアルカリ金属含有量は、フッ酸と硝酸の混合水溶液にMFI型ゼオライトを溶解して試料溶液を調製し、一般的なICP装置(例えば、装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定し、得られたSi、Al及びMの測定値から、求めることができる。
【0050】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、有機化合物に対する吸着性能に影響を及ぼさない程度であれば、SDAを含んでいてもよい。例えば、SDAを含むMFI型ゼオライト全体の質量(秤量値)を100質量%としたときの、MFI型ゼオライトが含有するSDAの質量割合(以下、「SDA含有量」ともいう。)が0質量%以上6.0質量%未満であることが挙げられる。
【0051】
本実施形態のMFI型ゼオライトの平均結晶径は、0.1μm以上、0.5μm以上又は1.0μm以上であり、また、5.0μm以下、3.0μm以下又は1.5μm以下であることが挙げられ、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上1.5μm以下が更に好ましい。MFI型ゼオライトの平均結晶径が上記の値であることで、本実施形態のMFI型ゼオライトをスラリーとした場合に、せん断速度によらず、低い粘度を示しやすくなる。
【0052】
なお、平均結晶径は、MFI型ゼオライトの一次粒子の平均径であり、これは、D10、D50及びD90などの凝集粒子を含む二次粒子の平均径とは異なる。また、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型の体積粒度分布を示す場合、平均結晶径は、D10より大きく、またD90より小さくなりやすい。本実施形態のMFI型ゼオライトは、D10<平均結晶径<D90(単位:μm)を満たすことが好ましく、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型の体積粒度分布を示し、なおかつD10<平均結晶径<D90(単位:μm)を満たすことがより好ましい。
【0053】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、BET比表面積が300m/g以上であることが好ましい。
【0054】
有機化合物の吸着量が多くなりやすいため、本実施形態のMFI型ゼオライトのBET比表面積は330m/g以上又は350m/g以上であり、また、800m/g以下又は500m/g以下であることが挙げられ、330m/g以上800m/g以下が好ましく、350m/g以上500m/g以下がより好ましい。
【0055】
BET比表面積は、JIS Z 8830:2013に準じた測定により求めることができる。すなわち、一般的な比表面積自動測定装置(例えば、装置名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)及び吸着ガスとして窒素を使用し、一点法により測定試料のBET比表面積を測定すればよい。前処理として、測定試料は真空雰囲気(10Pa以下)で、350±50℃で1時間以上5時間以下、保持すればよい。
【0056】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、従来の結晶化後のMFI型ゼオライトと比べ、高い結晶性を有しているにも関わらず、これをスラリーとしたときの粘度が低い。例えば、本実施形態のMFI型ゼオライトは、これを、純水を溶媒とし、なおかつ、固形分濃度が51質量%であるスラリーとしたとき、せん断速度1100s-1における粘度が50mPa・s以下、30mPa・s以下、更には20mPa・s以下であることが例示できる。粘度は低いことが好ましいが、せん断速度1100s-1における粘度が1mPa・s以上、更には3mPa・s以上であれば、吸着剤の担体への塗布に適した流動性となる。
【0057】
本実施形態における、せん断速度1100s-1の粘度は、一般的な粘度計(例えば、装置名:MCR 92、アントンパール社製)を用いて以下の方法で測定することができる。MFI型ゼオライトと純水と混合し、固形分濃度51質量%のゼオライトスラリーとし、試料スラリーとする。平行板型測定治具(PP50)を取り付けた測定装置のステージ上に試料スラリー2mLを滴下し、せん断速度1100s-1の粘度を測定すればよい。測定に際し、ステージ温度は20℃、及び、測定治具とステージ間のギャップは0.2mmとする。
【0058】
本実施例のMFI型ゼオライトは、平衡圧力が0.005kPaにおける、ゼオライト質量に対するトルエンの吸着量(以下、「トルエン吸着量」ともいう。)が5.0質量%以上であることが好ましく、5.5質量%以上であることがより好ましく、6.0質量%以上であることが更に好ましい。また、平衡圧力が0.01kPaにおけるトルエン吸着量が5.0質量%以上であることが好ましく、6.0質量%以上であることがより好ましく、7.0質量%以上であることが更に好ましい。また、平衡圧力が0.1kPaにおけるトルエン吸着量が6.0質量%以上であることが好ましく、7.0質量%以上であることがより好ましく、8.0質量%以上であることが更に好ましい。また、平衡圧力が1kPaにおけるトルエン吸着量が8.0質量%以上であることが好ましく、8.5質量%以上であることがより好ましく、9.0質量%以上であることが更に好ましい。各平衡圧力におけるトルエン吸着量はそれぞれ高いほど好ましいが、物理的なトルエン吸着量の上限として、25.0質量%以下又は20.0質量%以下が挙げられる。さらに、平衡圧力0.005kPa、0.01kPa、0.1kPa及び1kPaにおけるトルエン吸着力がいずれも上述の値を満たすことが好ましい。
【0059】
トルエン吸着量は、一般的な蒸気吸着量測定装置(例えば、装置名:BELSORP-maxII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて以下の方法で測定すればよい。前処理として、11cmの試料管に20±10mgのMFI型ゼオライトを充填し、真空雰囲気(10Pa以下)で、350±50℃で1時間以上5時間以下、保持し、測定試料とする。測定試料が充填された試料管を蒸気吸着量測定装置にセットし、25℃、平衡圧力0.001から1kPaまで変化させ、0.005kPa、0.01kPa、0.1kPa及び1kPaにおけるトルエン吸着量[質量%]を測定すればよい。
【0060】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、アルミノシリケートであることが好ましく、結晶性アルミノシリケートであることがより好ましい。そのため、本実施形態のMFI型ゼオライトは、リンを含まないことが好ましく、更には、T原子としてリン(P)を含まないことが好ましい。本実施形態のMFI型ゼオライトのリン含有量は100質量ppm以下又は1質量ppm以下、また0質量ppm以上又は0質量ppm超があることが好ましく、0質量ppm以上100質量ppm以下、0質量ppm以上1質量ppm以下、更には0質量ppm超1質量ppm以下が例示できる。
【0061】
次に、本実施形態のMFI型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0062】
本実施形態のMFI型ゼオライトの製造方法は、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、ノルマルブチルアミン及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を、100℃以上150℃以下、0.15MPa以上で水熱処理した後に、0.10MPa/時間以上の減圧速度で減圧しながら100℃以上150℃以下で水熱処理する工程(以下、「結晶化工程」ともいう。)、を含む製造方法である。当該結晶化工程により、原料組成物から本実施形態のMFI型ゼオライトが結晶化物として得られる。
【0063】
シリカ源は、ケイ素含有化合物及びケイ素(Si)の少なくともいずれかであり、例えば、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、無定形ケイ酸、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上が挙げられる。結晶化したMFI型ゼオライトのD50が粗大になりにくい観点から、シリカ源は無定形ケイ酸及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかであることが好ましく、非晶質アルミノシリケートであることがより好ましい。
【0064】
アルミナ源は、アルミニウムの化合物であり、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上である。結晶化したMFI型ゼオライトのD50が粗大になりにくい観点から、アルミナ源は、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上であることが好ましく、反応性の観点から、硫酸アルミニウム及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかであることがより好ましく、非晶質アルミノシリケートであることが更に好ましい。
【0065】
特に好ましいアルミナ源及びシリカ源として、無定形シリカ及び硫酸アルミニウム、並びに、非晶質アルミノシリケート、の少なくともいずれかが挙げられ、非晶質アルミノシリケートが好ましい。非晶質アルミノシリケートのSiO/Al比は10以上、15以上又は20以上、かつ、10000以下、1000以下又は80以下であることが挙げられ、10以上10000以下、15以上1000以下、又は、20以上80以下であることが好ましい。
【0066】
また、原料組成物に含有される他の出発原料がアルミニウムを含む場合、これをアルミナ源としてもよく、例えば、シリカ源がアルミニウムを含む場合、シリカ源は、同時にアルミナ源とみなすことができる。この様なシリカ源として、シリカ源全体の質量に対して、Al換算したアルミニウムの含有量が、0.001質量%以上1.000質量%以下である非晶質アルミノシリケートが例示できる。
【0067】
アルカリ源は、アルカリ金属元素を含有する化合物及びアルカリ金属の少なくともいずれかであり、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ケイ酸塩及びヨウ化物の群から選ばれる1以上が挙げられ、水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる1以上であることが好ましく、水酸化物であることがより好ましい。
【0068】
アルカリ金属元素として、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、ナトリウム及びカリウムの少なくともいずれかが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
【0069】
前記原料組成物は、ノルマルブチルアミン(以下、「NBA」ともいう。)を含む。これにより、結晶化したMFI型ゼオライトのD50が粗大になりにくく、有機化合物に対する高い吸着性能を有するMFI型ゼオライトが得られやすい。前記原料組成物は、SDA源としてNBAを含んでいればよく、SDA源はNBAのみであることが好ましい。しかしながら、NBAの以外に、MFI構造を指向するSDA源を含んでいてもよい。NBA以外のSDA源として、ジノルマルブチルアミン、トリブチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキサメチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン及びプロパノールアミンの群から選ばれる1以上のアミン、テトラプロピルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウムの少なくともいずれかの第4級アンモニウムカチオン、グリセロール、アルコール類及びモルフォリンの群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0070】
水は、蒸留水、脱イオン水及び純水の群から選ばれる1以上であればよい。さらに、溶媒や含水化合物等、原料組成物に含まれる他の出発原料に由来する水分も、原料組成物における水とみなす。
【0071】
原料コストを抑えることができる点で、原料組成物は種晶を含まなくてもよいが、結晶化に必要な処理時間が短縮できるため、原料組成物は、シリカ源及びアルミナ源に対して十分に少ない量の種晶を含んでいてもよい。
【0072】
種晶はMFI型ゼオライトであることが好ましく、該MFI型ゼオライトのSiO/Al比は10以上4000以下であることが好ましい。
【0073】
原料組成物が含む種晶は、原料組成物(種晶を含まない)中のアルミニウム及びケイ素を、それぞれ、Al及びSiO換算した合計質量に対する、種晶中のアルミニウム及びケイ素を、それぞれ、Al及びSiO換算した合計質量の割合(以下、「種晶含有量」ともいう。)が0質量%以上又は1質量%以上であり、かつ、20質量%以下又は10質量%以下であることが挙げられ、好ましい種晶含有量として0質量%以上20質量%以下、0質量%超20質量%以下、又は、1質量%以上10質量%以下が例示できる。
【0074】
原料組成物の好ましい組成として、以下のモル組成が挙げられる。
【0075】
SiO/Al比 =50以上、200以上又は1000以上、かつ
1500以下、3000以下又は5000以下
NBA/SiO比 =0.01以上、0.05以上、0.10以上、かつ
0.30以下、0.50以下、0.70以下
M/SiO比 =0.01以上、0.05以上又は0.10以上、かつ、 0.20以下、0.40以下又は0.60以下
OH/SiO比 =0.01以上、0.05以上又は0.10以上、かつ、
0.20以下、0.40以下又は0.60以下
O/SiO比 =2以上、6以上、8以上、かつ、
100以下、50以下、20以下
ただし、Mはアルカリ金属元素を示す。アルカリ金属元素が2種以上である場合、Mは各金属元素の合計値とすればよい。例えばアルカリ金属元素Mがナトリウム(Na)及びカリウム(K)を含む場合、M:(Na+K)とすればよい。
【0076】
原料組成物の特に好ましい組成として、以下のモル組成が挙げられる。
【0077】
SiO/Al比 =100以上5000以下
好ましくは200以上4500以下
より好ましくは1000以上4500以下
NBA/SiO比 =0.05以上0.30以下
好ましくは0.10以上0.30以下
M/SiO比 =0.01以上0.30以下
好ましくは0.05以上0.20以下
OH/SiO比 =0.01以上0.30以下、
好ましくは0.05以上0.20以下
O/SiO比 =5以上50以下、
好ましくは8以上15以下
本実施形態において、原料組成物はフッ素(F)及びフッ素含有化合物(以下、「フッ素等」ともいう。)を含まないことが好ましい。フッ素等は腐食性が特に高く、これを使用する製造方法は、耐腐食性を示す特殊な製造設備が必要となる。これにより、製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物はフッ素を含有しないことが好ましい。原料組成物のフッ素含有量が100質量ppm以下又は1質量ppm以下、また0質量ppm以上又は0質量ppm超があることが好ましく、0質量ppm以上100質量ppm以下、0質量ppm以上1質量ppm以下、更には0質量ppm超1質量ppm以下が例示できる。
【0078】
結晶化工程では、原料組成物を100℃以上150℃以下、0.15MPa以上で水熱処理する。これにより、原料組成物が結晶化する。
【0079】
水熱処理温度は、100℃未満の場合、原料組成物の結晶化に要する時間が非常に長くなる。一方、150℃を超えると、二次粒子径、特にD50が大きくなり過ぎる。このため、水熱処理温度は100℃以上150℃以下であり、115℃以上150℃以下が好ましい。
【0080】
水熱処理の圧力は、圧力(水熱処理圧力)0.15MPa以上である。圧力が0.15MPa未満となると、得られるMFI型ゼオライトの結晶性が低く、吸着性能が低くなる。水熱処理圧力は0.15MPa以上0.70MPa以下が好ましく、0.20MPa以上0.50MPa以下がより好ましい。
【0081】
本実施形態において、圧力(水熱処理圧力)は上記の値となるよう調整すればよく、自生圧、雰囲気ガスを導入又は吸引する方法及び原料組成物を充填した密閉容器の容積を圧縮又は膨張させる方法の群から選ばれる1以上が例示できる。
【0082】
本実施形態において、圧力(水熱処理圧力)の値は、絶対圧力の値を指す。絶対圧力とは大気圧とゲージ圧の和で表される。
【0083】
水熱処理において、原料組成物は撹拌又は静置のいずれの状態であってもよく、撹拌状態が好ましい。撹拌速度は結晶化に使用する装置の規模や構造により適宜調整すればよく、30rpm以上500rpm以下、又は、40rpm以上400rpm以下が例示できる。
【0084】
水熱処理の時間は、水熱処理に供する原料組成物の量や結晶化温度に応じて調整すればよいが、工業的に適用し得る結晶化時間として、例えば、5時間以上又は10時間以上であり、また、300時間以下、200時間以下又は100時間以下が挙げられ、5時間以上300時間以下、又は、10時間以上50時間以下が例示できる。
【0085】
結晶化工程における水熱処理は、原料組成物を密閉容器に充填して行う。密閉容器は、原料組成物を密閉でき、水熱処理を行った場合に生じる圧力に対して十分な耐久性を有するものであればよい。
【0086】
結晶化工程では、次いで0.10MPa/時間以上の減圧速度で減圧しながら100℃以上150℃以下で水熱処理する(以下、「減圧水熱処理」ともいう)。これにより、原料組成物から、本実施形態のD50を有するMFI型ゼオライトを、直接、結晶化することができる。上記の減圧速度および温度で水熱処理を行うことで、本実施形態のD50を有するMFI型ゼオライトを、直接、結晶化できる理由は明らかになっていないが、0.10MPa/時間以上の減圧速度で減圧することで、密閉容器内の原料組成物が転動し、結晶化した粒子同士の凝集が抑制され、その結果、D50が0.5μm以上5.0μm以下であるMFI型ゼオライトを、直接、結晶化できると考えられる。
【0087】
結晶化工程において、減圧処理をしながら熱処理する温度(以下、「減圧水熱処理温度」ともいう。)を、100℃以上150℃以下とすることで、本実施形態のD50を有するMFI型ゼオライトが得られる。該温度が100℃未満だと、MFI型ゼオライトの一次粒子が凝集しやすくなり、D50が過度に大きくなる。減圧水熱処理温度は、105以上又は110℃以上であり、また、140℃以下又は130℃以下が挙げられ、105℃以上140℃以下が好ましく、110℃以上130℃以下がより好ましい。
【0088】
結晶化工程における減圧速度は、0.10MPa/時間以上である。減圧速度が0.10MPa/時間未満であると、D50が大きくなりやすい。減圧速度は、0.10MPa/時間以上0.30MPa/時間以下が好ましく、0.15MPa/時間以上0.30MPa/時間以下がより好ましい。
【0089】
減圧水熱処理の開始時と終了時の圧力差は0.03MPa以上0.40MPa以下であることが好ましく、0.10MPa以上0.40MPa以下がより好ましく、0.10MPa以上0.35MPa以下が更に好ましい。これにより、D50がより小さくなりやすく、MFI型ゼオライトを含むスラリーのハンドリング性が高くなりやすい。
【0090】
減圧水熱処理を開始時の圧力は0.15MPa以上0.70MPa以下であることが好ましく、0.20MPa以上0.50MPa以下がより好ましい。
【0091】
減圧水熱処理の開始後、圧力の指示値が、指示値±5kPa(0.005MPa)未満の状態(以下、「安定状態」ともいう。)で1時間以上保持されたとき、減圧水熱処理の終了とすればよい。安定状態は、1時間以上であればよく、1時間以上10時間以内が例示できる。
【0092】
本実施形態の製造方法では、結晶化工程後に、洗浄工程、乾燥工程、構造指向剤除去工程、及びカチオン交換工程の群から選ばれる1以上を含んでいてもよい。
【0093】
洗浄工程では、ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0094】
乾燥工程では、ゼオライトに物理吸着している水分を除去する。乾燥条件は任意であり、ゼオライトを、大気中、50℃以上250℃以下、1時間以上120時間以下で静置又はスプレードライヤーによる乾燥が例示できる。
【0095】
構造指向剤除去工程は、ゼオライトに含まれるSDAを除去する。SDAの除去方法として、レジンによる交換処理、熱分解処理及び焼成処理の群から選ばれる1つ以上が例示できる。製造効率の観点から、構造指向剤除去工程は熱分解処理及び焼成処理の少なくともいずれかであることが好ましい。焼成処理の場合、焼成条件は処理に供するゼオライトの量により適宜調整すればよいが、例えば、大気中、400℃以上700℃以下で1時間以上24時間以下が挙げられる。
【0096】
結晶化後のMFI型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ源に由来するアルカリ金属元素を有する場合がある。カチオン交換工程では、これをアンモニウムカ
チオン(NH4+)や、プロトン(H)等の非金属カチオンにカチオン交換する。アンモニウムカチオンへのカチオン交換は、MFI型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液と接触させる方法が挙げられる。プロトンへのカチオン交換は、MFI型ゼオライトを塩酸と接触させる方法が挙げられる。
【実施例0097】
以下、実施例により本開示を説明する。しかしながら、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
(結晶相の同定)
粉末X線回折装置(装置名:UltimaIV、リガク社製)を使用し、以下の条件によりXRDパターンを得た。
【0098】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 10°/分
測定範囲 : 2θ=5°から40°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
散乱スリット : 開放
受光スリット : 開放
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra2)
フィルター : 不使用
得られたXRDパターンと、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-structure.org/databases/のZeolite Framework TypesのMFIに記載のXRDパターンとを比較することで、試料の結晶相を同定した。
(体積粒度分布)
体積粒度分布はレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(装置名:マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を使用して体積粒度分布の頻度曲線及び積算曲線を測定することで求めた。測定条件は以下のとおりである。
【0099】
測定範囲 :0.02~2000μm
粒子屈折率 :1.66
粒子透過性 :透過
粒子形状 :非球形
溶媒屈折率 :1.333
超音波前処理 :なし
得られた積算体積粒度分布から、D10、D50及びD90を得た。得られたD10、D50及びD90の値から、以下の式を用いて標準偏差を算出した。
【0100】
標準偏差[μm]=(D90[μm]-D10[μm])/2
また、頻度体積粒度分布曲線の形状を確認した。
(平均結晶径)
SEM観察は、一般的な走査型電子顕微鏡(装置名:JSM-IT200、日本電子株式会社製)を使用して、以下の条件で行った。
【0101】
加速電圧 :6kV
倍率 :10,000±5,000倍
平均結晶径は、まず、SEM観察図において輪郭が途切れることなく観察される一次粒子100±10個を抽出し、抽出した各一次粒子の最長径を測定し、その平均値を求め、これを平均結晶径とした。
【0102】
(組成分析)
組成分析はフッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Al及びNaの測定値から、試料のSiO/Al比及びNa含有量(アルカリ金属含有量)を求めた。
【0103】
(BET比表面積)
JIS Z 8830:2013に準じた測定により、試料のBET比表面積を求めた。測定には、一般的な比表面積測定装置(装置名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いた。前処理として測定試料を真空雰囲気(10Pa以下)で、350℃で2時間保持した。前処理後の測定試料について、吸着ガスとして窒素を使用し、1点法によりBET比表面積を測定した。
【0104】
(トルエン吸着量)
トルエン吸着量は、一般的な蒸気吸着量測定装置(装置名:BELSORP-MAXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて以下の方法で測定した。前処理として、11cmの試料管に20mgのMFI型ゼオライトを充填し、真空雰囲気(10Pa以下)、350℃で2時間保持し、測定試料とした。測定試料が充填された試料管を蒸気吸着量測定装置にセットし、25℃、平衡圧力0.001から1kPaまで変化させ、平衡圧力0.005kPa、0.01kPa、0.1kPa及び1kPaにおけるトルエン吸着量[質量%]を測定した。
【0105】
(粘度測定)
粘度は、一般的な粘度計(装置名:MCR 92、アントンパール社製)を用いて測定した。測定試料を、洗浄し、固液分離したのち、純水と混合して固形分濃度51質量%のゼオライトスラリーとし、試料スラリーとした。平行板型測定治具(PP50)を取り付けた測定装置のステージ上に試料スラリー2mLを滴下し、せん断速度を100s-1から1200s-1まで変化させ、せん断速度1100s-1の粘度[mPa・s]を測定した。測定に際し、ステージ温度は20℃、及び、測定治具とステージ間のギャップは0.2mmとした。
【0106】
実施例1
NBA、純水、水酸化ナトリウム及びAl含有量が0.04質量%である無定形ケイ酸を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0107】
SiO/Al比 =4100
Na/SiO比 =0.11
NBA/SiO比 =0.23
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.11
原料組成物に対して、種晶含有量が1.0質量%となるように種晶(MFI型ゼオライト、SiO/Al比:2015、東ソー株式会社製)を混合した後、該原料組成物3600gを容積4Lの密閉容器内に充填し、350rpmで攪拌しながら、圧力0.31MPa、120℃で24時間水熱処理した後、0.20MPa/時間の減圧速度で水熱処理圧力を0.20MPaまで下げながら、120℃で水熱処理した。水熱処理後70℃まで降温した後に結晶化物を回収し、これを本実施例のMFI型ゼオライトとした。
【0108】
本実施例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が76%、及び(101)/(501)ピーク比が67%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
本実施例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が2500、平均結晶径が1.25μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.4質量%、BET比表面積が392m/g、粒子径はD10が0.77μm、D50が1.64μm及びD90が3.05μmであり、なおかつ、標準偏差が1.14μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であった。
【0111】
実施例2
NBA、純水、水酸化ナトリウム及びAl含有量が0.77質量%である無定形ケイ酸を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0112】
SiO/Al比 =220
Na/SiO比 =0.11
NBA/SiO比 =0.23
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.11
原料組成物に対して、種晶含有量が1.0質量%となるように種晶(MFI型ゼオライト、SiO/Al比:2015、東ソー株式会社製)を混合した後、該原料組成物3600gを容積4Lの密閉容器内に充填し、350rpmで攪拌しながら、圧力0.40MPa、130℃で36時間水熱処理した後、0.20MPa/時間の減圧速度で0.27MPaまで減圧しながら130℃で水熱処理をした。水熱処理後、密閉容器を70℃まで降温した後に結晶化物を回収し、これを本実施例のMFI型ゼオライトとした。
【0113】
本実施例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が78%、及び(101)/(501)ピーク比が65%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0114】
【表5】
【0115】
本実施例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が200、平均結晶径が1.16μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.3質量%、BET比表面積が381m/g、粒子径はD10が1.40μm、D50が2.69μm及びD90が7.14μmであり、なおかつ、標準偏差が2.87μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であった。
【0116】
実施例3
実施例1のMFI型ゼオライトと7質量%塩酸とを25℃で5分接触させたあと、純水で洗浄し、固液分離し、次いで大気雰囲気、110℃で12時間乾燥して、本実施例のMFI型ゼオライトを得た。
【0117】
本実施例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が82%、及び(101)/(501)ピーク比が105%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0118】
【表6】
【0119】
本実施例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が2500、平均結晶径が1.25μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.01質量%、BET比表面積が338m/g、粒子径はD10が0.77μm、D50が1.64μm及びD90が3.05μmであり、なおかつ、標準偏差が1.14μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であった。
【0120】
実施例4
実施例1のMFI型ゼオライトを、大気雰囲気、600℃で2時間熱処理して、本実施例のMFI型ゼオライトを得た。
【0121】
本実施例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が82%、及び(101)/(501)ピーク比が137%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
本実施例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が2500、平均結晶径が1.25μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.4質量%、BET比表面積が392m/g、粒子径はD10が0.77μm、D50が1.64μm及びD90が3.05μmであり、なおかつ、標準偏差が1.14μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であった。
【0124】
実施例5
NBA、純水、水酸化ナトリウム及びAl含有量が0.08質量%である無定形ケイ酸を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0125】
SiO/Al比 =2100
Na/SiO比 =0.11
NBA/SiO比 =0.23
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.11
原料組成物に対して、種晶含有量が1.0質量%となるように種晶(MFI型ゼオライト、SiO/Al比:2015、東ソー株式会社製)を混合した後、該原料組成物3600gを容積4Lの密閉容器内に充填し、350rpmで攪拌しながら、圧力0.30MPa、120℃で36時間水熱処理した後、0.20MPa/時間の減圧速度で水熱処理圧力を0.20MPaまで下げながら、120℃で水熱処理した。水熱処理後70℃まで降温した後に結晶化物を回収し、これを本実施例のMFI型ゼオライトとした。
【0126】
本実施例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が95%、及び(101)/(501)ピーク比が76%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0127】
【表8】
【0128】
本実施例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が1500、平均結晶径が1.32μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.5質量%、BET比表面積が310m/g、粒子径はD10が1.15μm、D50が1.99μm及びD90が3.17μmであり、なおかつ、標準偏差が1.01μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であった。
【0129】
比較例1
実施例1と同様な方法で得られた原料組成物を350rpmで攪拌しながら、圧力0.31MPa、120℃で24時間水熱処理した。水熱処理後、30℃まで降温し、結晶化物を回収し、これを本比較例のMFI型ゼオライトとした。
【0130】
本比較例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が75%、及び(101)/(501)ピーク比が65%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0131】
【表9】
【0132】
本比較例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が2500、平均結晶径が1.22μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.4質量%、BET比表面積が360m/g、粒子径はD10が2.49μm、D50が37.1μm及びD90が76.1μmであり、なおかつ、標準偏差が36.8μmであった。また頻度体積粒度分布曲線がバイモーダル型であった。
【0133】
比較例2
実施例1と同様な方法で得られた原料組成物を圧力0.31MPa、120℃で24時間水熱処理した後、70℃まで降温した。降温後、0.20MPa/時間の減圧速度で0.10MPa(大気圧)まで減圧しながら70℃で水熱処理をした後、結晶化物を回収し、これを本比較例のMFI型ゼオライトとした。
【0134】
本比較例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が75%、及び(101)/(501)ピーク比が73%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であることを確認した。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0135】
【表10】
【0136】
本比較例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が2600、平均結晶径が1.29μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.4質量%、粒子径はD10が1.86μm、D50が8.29μm及びD90が38.8μmであり、なおかつ、標準偏差が18.5μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がバイモーダル型であった。
【0137】
比較例3
比較例1のMFI型ゼオライトを以下の方法で粉砕した。すなわち、比較例1で得られたMFI型ゼオライトを純水と混合して固形分濃度30質量%のゼオライトスラリーとした。湿式粉砕機(装置名:DYNO-MILL、MULTI LAB、WAB社製)の容量に対して直径1mmガラスビーズが80体積%、及び、該ゼオライトスラリーが20体積%となるように、ガラスビーズ及びゼオライトスラリーを湿式粉砕機に充填し、周速10m/sで10分間粉砕し、粉砕物を得た。
【0138】
得られた粉砕物と7質量%塩酸とを25℃で5分接触させたあと、純水で洗浄し、固液分離し、次いで大気雰囲気、110℃で12時間乾燥して、本比較例のMFI型ゼオライトを得た。
【0139】
本比較例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が99%、及び(101)/(501)ピーク比が106%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。本比較例のMFI型ゼオライトは、実施例のMFI型ゼオライトと比較して、粉砕により結晶性が低下していることが確認できた。本比較例のゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0140】
【表11】
【0141】
本比較例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が2500、平均結晶径が0.96μm、Na含有量(アルカリ金属含有量)が0.01質量%、BET比表面積が320m/g、粒子径はD10が0.52μm、D50が0.88μm及びD90が1.76μmであり、なおかつ、標準偏差が0.62であった。また頻度体積粒度分布曲線がモノモーダル型であった。
【0142】
比較例4
NBA、純水、水酸化ナトリウム及びAl含有量が6.0質量%である無定形ケイ酸を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0143】
SiO/Al比 =26
Na/SiO比 =0.20
NBA/SiO比 =0.23
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.20
原料組成物に対して、種晶含有量が1.0質量%となるように種晶(MFI型ゼオライト、SiO/Al比:2015、東ソー株式会社製)を混合した後、該原料組成物3600gを容積4Lの密閉容器内に充填し、350rpmで攪拌しながら、圧力0.41MPa、150℃で36時間水熱処理した後、0.22MPa/時間の減圧速度で0.27MPaまで減圧しながら130℃で水熱処理をした。水熱処理後、密閉容器を70℃まで降温した後に結晶化物を回収し、これを本比較例のMFI型ゼオライトとした。
【0144】
本比較例のMFI型ゼオライトはMFI構造の単一相からなり、(020)/(101)ピーク比が76%、及び(101)/(501)ピーク比が54%であるMFI型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であった。当該ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0145】
【表12】
【0146】
本比較例のMFI型ゼオライトはSiO/Al比が23、平均結晶径が0.1μm未満、Na含有量(アルカリ金属含有量)が2.1質量%、BET比表面積が298m/g、粒子径はD10が5.38μm、D50が33.7μm及びD90が74.7μmであり、なおかつ、標準偏差が34.7μmであった。また、頻度体積粒度分布曲線がバイモーダル型であった。
【0147】
比較例5
NBA、純水、水酸化ナトリウム及びAl含有量が0.04質量%である無定形ケイ酸を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0148】
SiO/Al比 =3900
Na/SiO比 =0.11
NBA/SiO比 =0.23
O/SiO比 =11
OH/SiO比 =0.11
原料組成物に対して、種晶含有量が1.0質量%となるように種晶(MFI型ゼオライト、SiO/Al比:2015、東ソー株式会社製)を混合した後、該原料組成物3600gを容積4Lの密閉容器内に充填し、350rpmで攪拌しながら、圧力1.0MPa、170℃で36時間水熱処理した後、0.20MPa/時間の減圧速度で水熱処理圧力を0.27MPaまで下げながら、130℃で水熱処理した。水熱処理後70℃まで降温した後に結晶化物を回収し、これを本比較例のゼオライトとした。
【0149】
本比較例のゼオライトはアモルファス(非晶質アルミノシリケート)であった。
【0150】
測定例1(ゼオライトスラリーの粘度測定)
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2及び比較例4のMFI型ゼオライトを、それぞれ、純水と混合し、固形分濃度51質量%のゼオライトスラリーとし、各ゼオライトスラリーの粘度を測定した。結果を下表に示す。
【0151】
【表13】
【0152】
上表より、実施例のMFI型ゼオライトは、1100s-1のせん断速度におけるゼオライトスラリーの粘度が比較例のMFI型ゼオライトよりも低かった。したがって、比較例のMFI型ゼオライトと比べて、実施例のMFI型ゼオライトは、粉砕や、分散剤を使用することなくゼオライトスラリーとしたときのハンドリング性に優れていることが確認できた。
【0153】
測定例2(トルエン吸着量の測定)
実施例1乃至5及び比較例3のMFI型ゼオライトのトルエン吸着量を測定した。結果を下表に示す。
【0154】
【表14】
【0155】
上表より、比較例のMFI型ゼオライトに対し実施例のMFI型ゼオライトは、各平衡圧力において、高いトルエンの吸着量を有していることが確認できた。
【0156】
比較例3のMFI型ゼオライトは、(020)/(101)ピーク比が95%を超えたため、すなわち、結晶性が低下したため、各平衡圧力において、トルエンの吸着量が低下したことが確認できた。
【0157】
【表15】
【0158】
実施例3は、Na含有量が0.1質量%以下であるため、実施例1と比較して、各平衡圧力において、トルエン吸着量が増加したことが確認できた。また、実施例3及び4は、(101)/(501)ピーク比が80%以上140%以下であるため、実施例1と比較して、平衡圧力0.01kPa以上でのトルエン吸着量が更に向上していることが確認できた。