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特開2024-170373計測システム用の光学系、およびそのような光学系を備える計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170373
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】計測システム用の光学系、およびそのような光学系を備える計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20241203BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20241203BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G03F1/84
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074683
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10 2023 204 171.5
(32)【優先日】2023-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】アーネ ショーブ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス コッホ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル デッカー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヴァルト
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定精度が改善されるように物体を測定するための計測システム用の光学系をさらに開発すること。
【解決手段】物体を測定するための計測システム用の光学系が、物体平面13内の物体2を保持するための物体ホルダを有する。集束構成要素は、物体視野12の領域内の照射焦点16を生成するために使用される。分散型光学的構成要素18は、照射光4の少なくとも2つの波長成分(4i)を少なくとも部分的に空間的に分離するために使用される。少なくとも2つのセンサ素子(6i)を備える検出装置6が、分散型光学的構成要素18の下流側のビーム経路内の照射光4の相異なる波長成分(4i)のそれぞれを少なくとも部分的に別々に検出するために使用される。その結果、光学系の測定精度が改善される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(2)を測定するための計測システム(1)用の光学系(9;21)であって、
物体平面(13)内の前記物体(2)を保持するための物体ホルダ(14)を備え、
前記物体視野(12)の領域内の照射焦点(16;16’)を生成するための、前記計測システム(1)の光源(5)と前記物体平面(13)内の物体視野(12)との間の照射光(4)のビーム経路内に配置される透過型光学的集束構成要素(11)を備え、
前記照射光(4)の少なくとも2つの波長成分(4i)を少なくとも部分的に空間的に分離するための、前記物体視野(12)の下流側の前記照射光(4)の前記ビーム経路内の分散型光学的構成要素(18)を備え、
前記分散型光学的構成要素(18)の下流側の前記ビーム経路内の前記照射光(4)の相異なる波長成分(4i)のそれぞれを少なくとも部分的に別々に検出するための少なくとも2つのセンサ素子(6i)を有する検出装置(6)を備える、光学系(9;21)。
【請求項2】
前記透過型光学的集束構成要素(11)がゾーンプレートとして設計されることを特徴とする、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記分散型光学的構成要素(18)が格子として設計されることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記検出装置(6)がセンサ素子ラインとして設計されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記物体平面(13)に対して垂直に前記物体ホルダ(14)を変位させるためのアクチュエータ(15)を特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
前記照射光(4)から少なくとも1つの選択された波長成分(4i)をフィルタリングするための帯域フィルタを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項7】
前記帯域フィルタが前記検出装置(6)の一部であることを特徴とする、請求項6に記載の光学系。
【請求項8】
前記透過型光学的集束構成要素(11)によって生成された前記照射焦点(16)を前記物体視野(12)の前記領域内の別の照射焦点(16’)に結像する(imaging)ための結像光学ユニット(22)を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項9】
物体(2)を測定するための計測システム(1)であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の光学系(9;21)を備え、
少なくとも1×10-4のスペクトル幅(Δλ/λ)を有する照射光(4)を生成するための光源(5)を備える、計測システム(1)。
【請求項10】
前記光源(5)がEUV光源であることを特徴とする、請求項9に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドイツ特許出願第102023204171.5号の内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、物体を測定するための計測システム用の光学系に関する。本発明はさらに、そのような光学系で物体を測定するための計測システムに関する。
【背景技術】
【0003】
前述のタイプの計測システムは、たとえば米国特許出願公開第2012/0008123号から知られている。リソグラフィックマスクを測定するための別のシステムが、Na J. et al. "Application of actinic mask review system for the preparation of HVM EUV lithography with defect free mask", Proc. of SPIE Vol. 10145, 101450M-1、Goldberg K. et al. "Actinic mask imaging: recent results and future directions from the SHARP EUV microscope", Proc. of SPIE Vol. 9049, 90480Y-1、およびNaulleau et al. “Electro-optical system for scanning microscopy of extreme ultraviolet masks with a high harmonic generation source”, Optics Express, Vol. 22, 20144, 2014による専門家の記事から知られている。別の計測システムが米国特許第9904060号から知られている。ドイツ特許出願公開第102014116782号が顕微鏡用の検出器装置を開示している。米国特許出願公開第2013/0162982号が分光検出装置および共焦点顕微鏡を開示している。米国特許出願公開第2010/0294949号が走査型顕微鏡装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0008123号
【特許文献2】米国特許第9904060号
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第102014116782号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0162982号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0294949号
【特許文献6】米国特許出願公開第2012/0008123号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Na J. et al. "Application of actinic mask review system for the preparation of HVM EUV lithography with defect free mask", Proc. of SPIE Vol. 10145, 101450M-1
【非特許文献2】Goldberg K. et al. "Actinic mask imaging: recent results and future directions from the SHARP EUV microscope", Proc. of SPIE Vol. 9049, 90480Y-1
【非特許文献3】Naulleau et al. “Electro-optical system for scanning microscopy of extreme ultraviolet masks with a high harmonic generation source”, Optics Express, Vol. 22, 20144, 2014
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、測定精度が改善されるように物体を測定するための計測システム用の光学系をさらに開発することである。
【0007】
本発明によれば、この目的が、請求項1で指定される特徴を備える光学系によって達成される。
【0008】
本発明によれば、開始地点では一般に望ましくない透過型光学的集束構成要素(transmissive optical focusing component)の分散効果が、実際には光学系の性能を改善するために使用できることが発見された。この目的で使用される分散型光学的構成要素(dispersive optical component)は、透過型光学的集束構成要素を介して生成された照射光の様々な波長成分を空間的に分離するために、照射光用の透過型光学的集束構成要素の分散を使用する。次いで、検出装置の対応するセンサ素子を介して、空間的に分離された波長成分を検出することができ、それによって測定結果の情報内容が改善される。この結果、スペクトル選択性の検出となる。
【0009】
検出装置は、少なくとも2つのセンサ素子、少なくとも3つのセンサ素子、少なくとも5つのセンサ素子、少なくとも10個のセンサ素子、またはさらに多くのセンサ素子を有することができる。センサ素子は、1μm~100μmの間の範囲の空間範囲を有することができ、それに対応して検出装置の微細なスペクトル分解能が得られる。
【0010】
光学系は、物体視野(object field)内に入射する照射光の主光線角が0°より大きく、かつ具体的には6°未満となるように設計することができる。0°とは異なる、そのような主光線角により、陰影効果(shadowing effect)が低く、それに対応して物体の測定が高品質となる物体の照射が可能となる。照射光に対して反射的な物体を測定することが可能である。物体視野内に入射する照射光の主光線角は、照射光のすべてのビームについて0.1°超、さらには0.5°超でよい。
【0011】
透過型光学的集束構成要素としてのゾーンプレートは、そのような光学系で有用であることが証明されている。たとえば、この点で米国特許出願公開第2012/0008123号を参照されたい。そのようなゾーンプレートはゾーンレンズとも呼ばれる。
【0012】
分散型光学的構成要素としての格子により、照射光の波長成分の指定可能な空間分離が得られる。格子は、具体的には照射光の中心波長に対して最適化された、ブレーズ格子として設計することができる。格子は反射型格子(reflective grating)として設計することができる。
【0013】
請求項4に記載の検出装置が実際に有用であることが証明されている。検出装置はまた、2次元センサ素子アレイとして設計することができる。
【0014】
センサ素子はCCDまたはCMOS素子でよい。
【0015】
請求項5に記載のアクチュエータを使用して、物体平面に対して垂直に物体を調節することが可能である。さらに、物体ホルダが、対応するアクチュエータによって、物体平面に平行な少なくとも1つの方向に、具体的には物体平面に平行な2つの相互に独立した方向に変位可能にすることもできる。物体平面に対して垂直に物体ホルダを変位させるためのアクチュエータを使用して、具体的には焦点スタックとして知られるものを記録することによって、3D空中像を測定することができる。ここで、物体ホルダ、すなわち物体の相異なるz位置での各ケースで、物体像が測定される。
【0016】
物体平面に対して垂直な物体ホルダの変位のための、対応するアクチュエータを使用して、照射光の相異なる波長成分について別々の集束を保証すること、すなわち対応する波長成分について、検出装置の配置平面または検出平面に物体がはっきりと結像される(imaged)ことを保証することも可能である。
【0017】
請求項6に記載の帯域フィルタにより、各ケースで検出すべき照射光の波長成分の選択が可能となる。最も単純なケースでは、分散型光学的構成要素を帯域フィルタとして使用することができる。代替または追加として、光源と検出装置との間、具体的には透過型光学的集束構成要素と検出装置との間の照射光のビーム経路内に、分散型光学的構成要素とは独立した帯域フィルタを配置することができる。
【0018】
請求項7に記載の、検出装置の一部としての帯域フィルタは、たとえば検出装置のセンサ素子に直接的に割り当てられるフィルタ素子によって実現することができる。そのようなフィルタ素子は、センサ素子に対するフィルタ層として適用することができる。このケースでは、蛍光層やシンチレーション層などの周波数変換層も使用することができる。
【0019】
請求項8に記載の結像光学ユニットにより、広範囲に指定可能となるように透過型光学的集束構成要素の焦点距離を構成する可能性が得られる。透過型光学的集束構成要素のこの指定可能な焦点距離を介して、透過型光学的集束構成要素の分散効果を設定することができ、その結果、光学系の性能を改善するように透過型光学的集束構成要素の使用を最適化することができる。具体的には、検出装置の検出波長範囲内で、結果が50nm~200nmの範囲内の物体平面の領域内の焦点オフセットとなるように、透過型光学的集束構成要素の分散を設定することができる。そのような焦点オフセットは、光学系を使用して像スタック(空中像)を記録するとき、z間隔に適合される。
【0020】
分散効果を適合させるためのそのような結像光学ユニットは、ゾーンプレートを透過型光学的集束構成要素として使用するときに特に有利である。
【0021】
請求項9に記載の計測システムの利点は、光学系を参照しながら上記で既に説明したものに対応する。光源によって生成された照射光のスペクトル幅Δλ/λ(FWHM、半値全幅)は、少なくとも5×10-4、少なくとも1×10-3、少なくとも3×10-3、少なくとも5×10-3、少なくとも1×10-2でよく、たとえば1/250~1/300の間の範囲内でよい。
【0022】
物体ホルダは変位可能な設計を有することができ、具体的には物体変位ドライブに動作可能に接続され得る。物体変位は、物体平面に対して垂直に、かつ/または物体平面に及ぶ少なくとも1つの座標に沿って行うことができる。少なくとも1つの変位方向に沿った物体変位ドライブの変位精度は、1μmより良好でよく、0.5μmより良好でよく、具体的には250nmより良好でよい。具体的には、変位精度は100nmより良好でよい。変位精度についての下限は、通常は0.1nmの範囲内にある。
【0023】
測定すべき物体は、マスク、具体的にはリソグラフィックマスクまたはレチクルでよい。
【0024】
請求項10に記載のEUV光源により、具体的にはEUVリソグラフィマスクの、物体としての化学線測定(actinic measurement)が可能となる。EUV光源はプラズマ光源でよい。EUV光源の別の可能な実施形態は、たとえば周波数逓倍(高調波発生、HHG)を使用するコヒーレント光源である。
【0025】
本発明の例示的実施形態が、図面を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】物体を測定するための計測システムを概略的に示す図である。
図2】計測システムの光学系の物体視野の領域内の照射焦点を生成する透過型光学的集束構成要素としてのゾーンプレートの上面図を示す図である。
図3】ゾーンプレートの下流側のビーム経路内の、計測システムの光源からの照射光の相異なる波長成分についての光学系の物体平面の領域内の照射焦点を示す図である。
図4】光学系の検出装置のスペクトル感応性(spectrally sensitive)実施形態までの、ゾーンプレートの下流側の光学系の照射光ビーム経路の一実施形態を示す図である。
図5】アクチュエータによる物体平面に対して垂直に変位可能である物体ホルダの追加の使用と共に、図4による検出装置の使用の変形形態を概略的に示す図である。
図6】照射光から少なくとも1つの選択されたウェーブライト成分をフィルタリングするための帯域フィルタとして格子が設計される、光学系のスペクトル感応性検出装置の別の実施形態の図4と類似の図である。
図7】ゾーンプレートによって生成された照射焦点を物体視野の領域内の別の照射焦点に結像する(imaging)ための結像光学ユニットを使用する、ゾーンプレートと物体視野との間の光学系のビーム経路の別の実施形態を示す図である。
図8図7の細部VIIIの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、物体2を測定するための計測システム1を非常に概略的に示す。測定すべき物体2の一例は、マイクロ構造またはナノ構造の半導体構成要素の製造のための投影リソグラフィ(projection lithography)用のリソグラフィマスクである。計測システム1の光源5と検出装置6との間の照射光4の主光線3のビーム経路が示されている。
【0028】
光源5は、5nmと30nmとの間の範囲内の、具体的には13.5nmの中心使用波長を有するEUV照射光4を生成するためのEUV光源である。物体2の照射のために使用されるEUV照射光4のスペクトル幅Δλ/λ(FWHM、半値全幅)は、少なくとも1×10-4であり、たとえば1/250と1/300との間の範囲内でよい。光源5はプラズマ光源またはHHG光源でよい。
【0029】
中間焦点面7が、光源5の下流側の照射光4のビーム経路に配置され、中間焦点面7内に中間焦点絞り8が配置される。中間焦点絞り8は、使用される照射光4を、具体的には望まれずに共に搬送されるデブリから分離するために使用される。中間焦点絞り8の下流側で、使用される照射光4をビーム経路内で望まれずに共に搬送される波長成分から分離するための外部光フィルタを、照射光4のビーム経路内に配置することができる。
【0030】
光源5の下流側で、照射光4が計測システム1の光学系9によって誘導される。
【0031】
計測システムの構成要素間の位置関係を明らかにするために、図1にはデカルトxyz座標系が描かれている。x方向は図1において右向きである。y方向は、図1の図面の平面に対して直角に伸びる向きである。z方向は図1において上向きである。
【0032】
図1に示される光学系9の変形形態では、照射光4のための折り畳みミラー10が、中間焦点絞り8の下流側の照射光4のビーム経路内に配置される。折り畳みミラー10の下流側のビーム経路に、図2の上面図に示される、光学系9のゾーンプレート11が配置される。ゾーンプレート11は透過型光学的集束構成要素を表し、光源5と物体視野12との間の照射光4のビーム経路内の、光学系9の物体平面13内に配置される。
【0033】
光学系の物体ホルダ14が、物体平面13内の物体2を、物体2の一部が物体視野12内に配置されるように保持するために使用される。アクチュエータ15を介して、物体ホルダ14は、図1の両方向の変位矢印Δzによって示されるように、物体平面13に対して垂直に変位可能である。
【0034】
ゾーンプレート11は、物体視野12の領域内に照射焦点16(図4も参照)を生成する。
【0035】
照射光4が物体視野12内に入射する主光線角α(図1を参照)は6°未満でよい。
【0036】
照射光ビーム経路の物体側の開口数は0.1の範囲内でよい。
【0037】
物体2は反射性物体として設計される。物体2によって反射された照射光4は、光学系9から検出装置6に検出光として誘導される。図1による実施形態では、別の折り畳みミラー17が、物体2と検出装置6との間の検出光のビーム経路内に配置される。
【0038】
図3は、ゾーンプレート11の分散による物体平面13の領域内の集束条件を示す。図3では例示のために、相異なる波長成分41~45が、x方向に分割されて示されている。たとえば、波長成分41は最大の波長を有するものであり、波長成分45は、使用される照射光のスペクトル幅以内の最小の波長を有する成分である。ゾーンプレート11の分散のために、波長成分41~45は、物体平面13の領域内の照射焦点16で相異なるz位置に集束する。
【0039】
図4は、検出装置6に向かう物体2の下流側の照射光4の誘導の構成を示す。格子の形の分散型光学的構成要素18が、物体視野12と検出装置6との間の検出光4のビーム経路内に配置される。格子18は、検出光4の相異なる波長成分41~45を空間的に分割する。検出光4のウェーブライト成分41~45は、格子18に続くビーム経路で少なくとも部分的に空間的に分離される。
【0040】
検出装置6は配置平面または検出平面19内に配置され、その平面内で、波長成分41~45のこの少なくとも部分的な空間的分離が行われる。検出装置6はセンサラインとして設計され、センサラインは、図示される実施形態では、物体視野12の下流側のビーム経路内の照射光または検出光4の波長成分41~45の少なくとも部分的に別々の検出のための5つのセンサ素子61~65を備える。設計に応じて、検出装置は、2、3、5、または10個以上のセンサ素子6iを有することができる。検出装置6は、センサラインとして、あるいはたとえばCCDまたはCMOSアレイの形の2次元センサアレイとして設計することができる。
【0041】
図4による検出装置6を用いて、物体2のz位置で、様々な波長成分41~45を介して、そこに位置する物体構造の様々なz高さから、物体2についての情報を分解し、格子18および検出装置6によるスペクトル感応性検出を使用して、物体2のz変位なしに(シングルショット)z分解される形で物体2についての情報を検出することが可能である。
【0042】
代替または追加として、図5を参照しながら概略的に示されるように、図4によるスペクトル感応性検出と共にzアクチュエータ15を使用することができる。
【0043】
図5の第1の列は、物体2の全部で5つの異なるz位置を示し、z位置は、アクチュエータ15を介して物体ホルダ14と共に設定することができる。これらのz位置は、-2、-1、0、+1、+2と番号が付けられる。
【0044】
図5は、第2の列で、物体2のこうした様々なz位置での図4によるセンサライン検出装置6の測定結果を概略的に示す。z位置-2では、物体平面13が波長成分41の照射焦点16と一致するので、センサ素子61での信号が最大である。センサライン検出装置6で測定される最大検出強度は、より遠いz位置-1、0、+1、および+2では、それぞれのケースにおいて図5の第2の列で、それぞれのセンサ素子6iでの「X」によって示されるように、それに応じてセンサ素子62、63、64、および65にシフトする。
【0045】
較正によって事前に生成される、(図5のデコンボリューション演算子の後の第3の列で示される)デコンボリューション行列Mにより、たとえば物体平面13のz位置「z=0」についての測定結果が、物体ホルダ14による物体2のこのz変位位置での信号寄与を排他的に含む信号にデコンボリューションされ、このことが、例として図5の最後の行に示されている。別のデコンボリューション行列Mを介して、他のz値-2、-1、+1、および+2についての調節後の検出信号をそれに応じて生成することができる。光学系9の特性、具体的にはセンサライン検出装置6のセンサ素子6iの間の以前に測定されたチャネル漏話情報が、デコンボリューション行列M内に含まれる。
【0046】
図6は、図4のタイプによる検出構成の別の使用を示す。ここでは、格子18が様々なz物体構造高さのシングルショット検出のために使用されず、照射光または検出光4の使用されるスペクトル幅から少なくとも1つの選択された波長成分をフィルタリングするための帯域フィルタとして使用される。図6は、センサ素子64に入射する波長成分44の使用のための格子18の位置を示す。他の波長成分41~43および45は、格子18のこの位置ではセンサ素子6iの露出に寄与しない。
【0047】
帯域フィルタとしての使用のために、図6の両方向の変位矢印Δλによって示されるように、格子18を旋回させ(swivelling)、したがって検出のために使用される波長成分4iを選択するために、格子18はアクチュエータ20に動作可能に接続される。
【0048】
図7は、計測システム1についての光学系21の変形形態のビーム経路を示す。図1~6に関連して既に上記で説明された構成要素および機能は、同一の参照符号で示され、再び詳細には議論されない。
【0049】
図7は、ゾーンプレート11と物体視野12との間の5つの選択された個々の光線に基づく照射光4のビーム経路の変形形態を示す。図1によるビーム経路とは対照的に、照射光4のビーム経路はx方向に沿ってゾーンプレート11を通過する。したがって、図7によるビーム経路のこの実施形態では、折り畳みミラー10が省略される。
【0050】
ゾーンプレート11は焦点距離f1図8参照)を有し、焦点距離f1は5mm未満であり、2mm未満でよく、1mm未満でよく、図示される実施形態では0.5mmの範囲内にある。
【0051】
ゾーンプレート11によって生成された照射焦点16を物体視野12の領域内の別の照射焦点16’に結像する(imaging)ために、図7による光学系21の結像光学ユニット22が使用される。結像光学ユニット22はミラー光学ユニットとして設計される。図7による実施形態では、結像光学ユニット22は2つのミラー、具体的には、ゾーンプレート11の下流側の照射光4のビーム経路内の第1のミラーM1と、別の下流側ミラーM2とを有する。
【0052】
図7による実施形態では、ミラーM1が平面折り畳みミラー(planar folding mirror)として設計される。代替として、ミラーM1はまた、結像効果を有することができる。ミラーM2は、非球面ミラーとして設計される。代替として、ミラーM2はまた、球面ミラーとして設計することができる。ミラーM2は、具体的には自由形状表面ミラーとして設計することができる。
【0053】
ゾーンプレート11と物体視野12との間の作動距離は、中間結像光学ユニット22のために焦点距離f1よりも著しく長くてよく、たとえば10mmよりも長くてよく、20mmよりも長くてよく、50mmよりも長くてよく、100mm以上でよい。作動距離は、物体視野と光学系の最も近い構成要素との間の距離であり、光学系の最も近い構成要素は、通常は、透過型光学的集束構成要素によって生成された照射焦点を、物体視野の領域内の別の照射焦点に結像する(imaging)ための結像光学ユニットの構成要素である。作動距離は、物体視野の最も近い地点と、光学系の対応する最も近い構成要素との間の実際の距離として、または物体視野と、x/y方向では物体視野と重複し、z方向では離れている光学系の構成要素との間の純粋なz距離として測定することができる。
【0054】
中間結像光学ユニット22のために、たとえば検出装置6との組合せのために特に好ましい目的で、具体的には、必要な作動距離の如何に関わらず、設計で所望の分散を設定することが可能である。このケースでは、スペクトル検出装置6の隣接するセンサ素子6i間の分散がたとえば50nm~200nmのオフセットΔzとなる場合に有利である。これは、計測システム1によって記録されたzスタックまたは像スタック内のz間隔に対応することができるからである。
【0055】
物体視野12を配置平面19の領域内の像視野内に結像する(imaging)ときの結像スケールは、たとえば10超でよく、25超でよく、50超でよく、100超でよく、250超でよく、300超でよく、500または1000の範囲内でよい。
【0056】
物体2の構造を測定するために、物体視野12内の物体構造の像が検出装置6によって記録される。測定方法に応じて、単一の像が記録され、または複数のz位置での像スタック(空中像)が記録され、そのケースでは、物体2が、物体ホルダ14およびアクチュエータ15によって、対応するz位置に変位する。
【符号の説明】
【0057】
1 計測システム
2 物体
3 主光線
4 照射光
5 光源
6 検出装置
7 中間焦点面
8 中間焦点絞り
9 光学系
10 折り畳みミラー
11 ゾーンプレート
12 物体視野
13 物体平面
14 物体ホルダ
15 アクチュエータ
16 照射焦点
17 折り畳みミラー
18 分散型光学的構成要素、格子
19 配置平面、検出平面
20 アクチュエータ
21 光学系
22 結像光学ユニット
M1 ミラー
M2 ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(2)を測定するための計測システム(1)用の光学系(9;21)であって、
物体平面(13)内の前記物体(2)を保持するための物体ホルダ(14)を備え、
前記物体視野(12)の領域内の照射焦点(16;16’)を生成するための、前記計測システム(1)の光源(5)と前記物体平面(13)内の物体視野(12)との間の照射光(4)のビーム経路内に配置される透過型光学的集束構成要素(11)を備え、
前記照射光(4)の少なくとも2つの波長成分(4i)を少なくとも部分的に空間的に分離するための、前記物体視野(12)の下流側の前記照射光(4)の前記ビーム経路内の分散型光学的構成要素(18)を備え、
前記分散型光学的構成要素(18)の下流側の前記ビーム経路内の前記照射光(4)の相異なる波長成分(4i)のそれぞれを少なくとも部分的に別々に検出するための少なくとも2つのセンサ素子(6i)を有する検出装置(6)を備える、光学系(9;21)。
【請求項2】
前記透過型光学的集束構成要素(11)がゾーンプレートとして設計されることを特徴とする、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記分散型光学的構成要素(18)が格子として設計されることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記検出装置(6)がセンサ素子ラインとして設計されることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項5】
前記物体平面(13)に対して垂直に前記物体ホルダ(14)を変位させるためのアクチュエータ(15)を特徴とする、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項6】
前記照射光(4)から少なくとも1つの選択された波長成分(4i)をフィルタリングするための帯域フィルタを特徴とする、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項7】
前記帯域フィルタが前記検出装置(6)の一部であることを特徴とする、請求項6に記載の光学系。
【請求項8】
前記透過型光学的集束構成要素(11)によって生成された前記照射焦点(16)を前記物体視野(12)の前記領域内の別の照射焦点(16’)に結像する(imaging)ための結像光学ユニット(22)を特徴とする、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項9】
物体(2)を測定するための計測システム(1)であって、
請求項1または2に記載の光学系(9;21)を備え、
少なくとも1×10-4のスペクトル幅(Δλ/λ)を有する照射光(4)を生成するための光源(5)を備える、計測システム(1)。
【請求項10】
前記光源(5)がEUV光源であることを特徴とする、請求項9に記載の計測システム。
【外国語明細書】