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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170460
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】物理量センサ付き配線部品
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20241203BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20241203BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20241203BHJP
   G01D 11/30 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G01K7/22 J
G01K1/14 L
G01K1/14 E
H02K11/25
G01D11/30 S
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146131
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2021112334の分割
【原出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】福地 圭介
(57)【要約】      (修正有)
【課題】検出対象の電線の長手方向の一部を覆うモールド材によって物理量センサを保持しながらも、モールド材の成形時の熱によって物理量センサが損傷を受けることを防ぐことが可能な物理量センサ付き配線部品を提供する。
【解決手段】物理量センサ付き配線部品1は、第1乃至第3の電線11~13と、第1乃至第3の電線11~13の物理量を検出する物理量センサ2と、第1乃至第3の電線11~13の長手方向の一部を覆うモールド材からなり、物理量センサ2を保持する保持穴50が形成された保持部材5と、保持部材5に取り付けられた取付部材6とを備える。取付部材6は、保持穴50における電線側の内面である被押付面50aに物理量センサ2を弾性的に押し付ける舌片601、及び物理量センサ2を係止する係止突起602が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の物理量を検出する物理量センサと、
前記電線の長手方向の一部を覆うモールド材からなり、前記物理量センサを保持する保持穴が形成された保持部材と、
前記保持部材に取り付けられた取付部材とを備え、
前記取付部材は、前記保持穴における前記電線側の内面である被押付面に前記物理量センサを弾性的に押し付ける舌片、及び前記物理量センサを係止する係止突起が設けられている、
物理量センサ付き配線部品。
【請求項2】
前記取付部材は、前記電線との間に前記物理量センサを挟むように前記物理量センサに対向する対向部と、前記電線側に向かって延びる複数の腕部と、前記複数の腕部のそれぞれの先端部に設けられた複数の係合突起とを有し、
前記保持部材には、前記取付部材の前記複数の係合突起がそれぞれ係合する複数の係合凹部が形成されている、
請求項1に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項3】
前記物理量センサは、前記取付部材の前記複数の腕部のうち一部の腕部と他の一部の腕部との間に配置されており、
前記複数の係合突起は、前記複数の腕部のそれぞれの先端部から前記物理量センサ側とは反対側に突出して設けられている、
請求項2に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項4】
前記保持部材は、前記取付部材の前記複数の腕部のうち所定の方向に並ぶ一対の腕部の間に介在する介在部を有し、前記介在部によって前記取付部材の前記保持部材に対する前記所定の方向への相対移動が規制されている、
請求項2又は3に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項5】
前記保持部材は、前記所定の方向に対して垂直な方向に並ぶ一対の側壁部を有し、前記一対の側壁部の間に前記物理量センサが保持されており、
前記介在部は、前記一対の側壁部の前記物理量センサ側にそれぞれ設けられている、
請求項4に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項6】
前記保持部材は、前記所定の方向に対して垂直な方向に並ぶ一対の側壁部を有し、前記一対の側壁部の間に前記物理量センサが保持されており、
前記介在部は、前記一対の側壁部の前記物理量センサ側とは反対側にそれぞれ設けられている、
請求項4に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項7】
前記取付部材は、前記保持部材及び前記取付部材の一方に設けられた凸部が他方に設けられた凹部に嵌合することによって前記保持部材に取り付けられている、
請求項1に記載の物理量センサ付き配線部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の物理量を検出する物理量センサ付きの配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばモータの固定子巻線の励磁電流が流れる電線の温度を温度センサによって検出し、固定子巻線の過熱による損傷等の発生を抑制することが行われている。検出対象の電線は、当該電線に電流が流れることによるジュール熱(銅損)によって発熱する他、モータからの熱伝導によっても温度が上昇する。
【0003】
特許文献1には、三相モータの中性線をステータコアの外部でU字形に曲げ、U字の底の円弧形状の部分に温度センサを配置した回転電機が記載されている。温度センサは、中性線がU字形に曲げられた部分と共に、樹脂製のモールド材に埋め込まれている。モールド材は、温度センサ及び中性線のU字状部分を囲むように型を配置し、型内に液状の溶融樹脂を注入して硬化させるインサート成形によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5621810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものでは、温度センサがインサート成形時の溶融樹脂の熱に晒されるので、この熱によって温度センサがダメージを受けると、温度の検出精度等に悪影響を及ぼすおそれがある。また、耐熱性が高い温度センサを採用する場合には、コストの上昇を招来してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、検出対象の電線の長手方向の一部を覆うモールド材によって物理量センサを保持しながらも、モールド材の成形時の熱によって物理量センサが損傷を受けることを防ぐことが可能な物理量センサ付き配線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電線と、前記電線の物理量を検出する物理量センサと、前記電線の長手方向の一部を覆うモールド材からなり、前記物理量センサを保持する保持穴が形成された保持部材と、前記保持部材に取り付けられた取付部材とを備え、前記取付部材は、前記保持穴における前記電線側の内面である被押付面に前記物理量センサを弾性的に押し付ける舌片、及び前記物理量センサを係止する係止突起が設けられている、物理量センサ付き配線部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る物理量センサ付き配線部品によれば、物理量センサを保持するモールド材の成形時の熱によって物理量センサが損傷を受けることを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す斜視図である。
図2】(a)は、第1乃至第3の電線ならびにスペーサを示す斜視図である。(b)は、第1乃至第3の電線とスペーサとを組み合わせた状態を示す斜視図である。
図3】(a)及び(b)は、第1乃至第3の電線ならびにスペーサが固定部材及び保持部材によって一体化された組立体、物理量センサ、及び取付部材を示す斜視図である。
図4】(a)は、取付部材の斜視図であり、(b)は、(a)のA-A線における取付部材の断面図である。
図5】物理量センサの内部構造を示す構成図である。
図6】(a)及び(b)は、物理量センサ付き配線部品の断面図である。
図7】第2の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す斜視図である。
図8】(a)及び(b)は、第2の実施の形態に係る組立体、物理量センサ、及び取付部材を示す斜視図である。
図9】(a)は、第2の実施の形態に係る取付部材の斜視図であり、(b)は、(a)のB-B線における取付部材の断面図である。
図10】第3の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す斜視図である。
図11】(a)及び(b)は、第3の実施の形態に係る組立体、物理量センサ、及び取付部材を示す斜視図である。
図12】(a)は、第3の実施の形態に係る取付部材の斜視図であり、(b)は、(a)のC-C線における取付部材の断面図である。
図13】(a)は、第4の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す斜視図である。(b)は、第4の実施の形態に係る組立体、物理量センサ、及び取付部材を示す斜視図である。
図14】(a)は、第4の実施の形態に係る取付部材の斜視図であり、(b)は、(a)のD-D線における取付部材の断面図である。
図15】(a)は、第5の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す斜視図である。(b)は、第5の実施の形態に係る組立体、物理量センサ、及び取付部材を示す斜視図である。
図16】第5の実施の形態に係る取付部材を示す斜視図である。
図17】第5の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品の断面図である。
図18】第5の実施の形態の変形例に係る物理量センサ付き配線部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を図1乃至図6を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す斜視図である。この物理量センサ付き配線部品1は、第1乃至第3の電線11~13と、第1乃至第3の電線11~13の物理量を検出する物理量センサ2と、第1乃至第3の電線11~13の間に配置された二つのスペーサ3,3と、二つのスペーサ3,3と第1乃至第3の電線11~13とを固定する第1及び第2の固定部材41,42と、第1乃至第3の電線11~13に対して物理量センサ2を保持する保持部材5と、保持部材5に取り付けられた取付部材6とを備えている。
【0012】
図2(a)は、第1乃至第3の電線11~13ならびにスペーサ3,3を示す斜視図であり、図2(b)は、第1乃至第3の電線11~13とスペーサ3,3とを組み合わせた状態を示す斜視図である。図3(a)及び(b)は、第1乃至第3の電線11~13ならびにスペーサ3,3が固定部材4,4及び保持部材5によって一体化された組立体10、物理量センサ2、及び取付部材6を示す斜視図である。図4(a)は、取付部材6の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のA-A線における取付部材6の断面図である。図5は、物理量センサ2の内部構造を示す構成図である。図6(a)及び(b)は、物理量センサ付き配線部品1の断面図である。
【0013】
本実施の形態では、物理量センサ2が、物理量として第1乃至第3の電線11~13の温度を検出する温度センサである場合について説明する。ただし、これに限らず、例えば第1乃至第3の電線11~13を流れる電流によって発生する磁界の強度を物理量として検出するようにしてもよい。
【0014】
物理量センサ2は、図5に示すように、直方体状に形成された樹脂からなるケース部材21と、物理量(本実施の形態では温度)を電気信号に変換する検出部としてのサーミスタ22と、サーミスタ22のリード線221,222を支持する支持部材23と、リード線221,222にそれぞれ接続された一対の信号線24,25と、ケース部材21内に充填された充填材26(図6(a)及び(b)参照)とを有している。充填材26は、例えばエポキシ樹脂である。ケース部材21、サーミスタ22、支持部材23、及び充填材26は、物理量センサ2の本体部20を構成する。ケース部材21や充填材26には、比較的熱伝導率が高いものが用いられる。
【0015】
一対の信号線24,25は、撚り線からなる芯線241,251を樹脂からなる絶縁体242,252で覆ってなる絶縁電線であり、例えば制御装置(不図示)にサーミスタ22の検出信号を伝送する。サーミスタ22は、温度によって電気抵抗が変化する検出素子としての金属酸化物焼結体223(図6(a)参照)と、金属酸化物焼結体223を封止する封止材224とを有しており、金属酸化物焼結体223の両端部にリード線221,222のそれぞれの一端部が接続されている。リード線221,222の他端部は、ケース部材21内で信号線24,25の芯線241,251にそれぞれ接続されている。
【0016】
第1乃至第3の電線11~13は、回転電機の三相巻線のそれぞれに接続される。回転電機は、例えば三相交流電流によってステータに発生する磁界によってロータを回転させるモータ、あるいはロータの回転によって三相交流電流を発生させるジェネレータ(発電機)、もしくはモータ及びジェネレータの機能を併せ持つモータ・ジェネレータである。
【0017】
第1乃至第3の電線11~13は、図6(a)に示すように、銅などの良導電性金属からなる導体111,121,131がエナメルなどの絶縁性樹脂からなる被覆層112,122,132に被覆された絶縁被覆電線である。なお、本実施の形態では、第1乃至第3の電線11~13が断面円形状の丸単線であるが、これに限らず、例えば断面矩形状の平角電線であってもよい。
【0018】
図2(a)及び(b)に示すように、第1乃至第3の電線11~13は、樹脂からなる二つのスペーサ3,3を介して互いに平行に並んでいる。一方のスペーサ3は、第1の電線11と第2の電線12との間に配置され、他方のスペーサ3は、第2の電線12と第3の電線13との間に配置されている。以下、第1乃至第3の電線11~13の長手方向をX方向、第1乃至第3の電線11~13の並び方向をY方向、X方向及びY方向に対して垂直な方向をZ方向という。
【0019】
スペーサ3は、射出成形された樹脂からなり、第1乃至第3の電線11~13の何れかを収容する断面半円状の凹溝30がそれぞれ形成された第1乃至第3の電線支持部31~33と、第1乃至第3の電線支持部31~33をX方向に沿って連結する板状の第1及び第2の連結部34,35とを一体に有している。第1の電線支持部31には、第1及び第2のアンカー部311,312が設けられ、第2の電線支持部32には、第3のアンカー部321が設けられている。また、第3の電線支持部33には、第4乃至第6のアンカー部331~333が設けられている。第1乃至第6のアンカー部311,312,321,331,332,333は、第1乃至第3の電線支持部31~33のZ方向両側に突出して設けられた突起である。
【0020】
第1の固定部材41は、第1のアンカー部311と第2のアンカー部312との間に設けられ、スペーサ3の第1の電線支持部31を第1乃至第3の電線11~13と共に囲んでいる。第2の固定部材42は、第5のアンカー部332と第6のアンカー部333との間に設けられ、スペーサ3の第3の電線支持部33を第1乃至第3の電線11~13と共に囲んでいる。
【0021】
保持部材5は、第3のアンカー部321と第4のアンカー部331との間に設けられている。保持部材5は、モールド成形された樹脂製のモールド材からなり、第1乃至第3の電線11~13の長手方向の一部をスペーサ3,3と共に覆っている。図3(a)及び(b)に示すように、保持部材5は、物理量センサ2が収容される保持穴50が形成された本体部51と、本体部51のX方向両側に設けられた一対の電線支持部52,52とを一体に有している。
【0022】
第1の固定部材41は、保持部材5のX方向一方側に設けられており、第2の固定部材42は、保持部材5のX方向他方側に設けられている。本実施の形態では、第1及び第2の固定部材41,42が、保持部材5と同時にモールド成形されたモールド材からなる。ただし、第1及び第2の固定部材41,42のそれぞれを、複数の樹脂部材の組み合わせによって構成してもよい。
【0023】
取付部材6は、射出成形された樹脂からなり、第1乃至第3の電線11~13との間に物理量センサ2を挟むように物理量センサ2とZ方向に対向する対向部60と、第1乃至第3の電線11~13側に向かってZ方向に延びる第1乃至第4の腕部61~64と、第1乃至第4の腕部61~64のそれぞれの先端部に設けられた第1乃至第4の係合突起65~68と、対向部60からX方向両側に張り出した第1及び第2の張り出し部691,692とを一体に有している。第1の張り出し部691は、対向部60と第1及び第3の腕部61,63のそれぞれの基端部とを接続している。第2の張り出し部692は、対向部60と第2及び第4の腕部62,64のそれぞれの基端部とを接続している。
【0024】
対向部60は、弾性変形可能な舌片601を有しており、保持部材5の保持穴50における第1乃至第3の電線11~13側の内面である被押付面50aに物理量センサ2を弾性的に押し付けている。舌片601は、取付部材6を保持部材5に取り付ける際に弾性変形し、その復元力によって物理量センサ2のケース部材21をZ方向に押し付ける。被押付面50aは、Z方向に対して垂直な平面である。
【0025】
また、対向部60は、物理量センサ2のケース部材21を係止して、物理量センサ2を保持穴50から抜け止めするための係止突起602を有している。係止突起602は、対向部60におけるY方向の端部に設けられ、ケース部材21から導出された部分の物理量センサ2の一対の信号線24,25とZ方向に向かい合っている。物理量センサ2は、被押付面50aから離間する方向への保持部材5に対するZ方向の移動、及び被押付面50aに沿って保持穴50からY方向に抜け出す方向への保持部材5に対する移動が取付部材6によって規制されている。
【0026】
取付部材6は、保持部材5よりも硬度が低く柔らかい樹脂からなる。保持部材5は、例えばガラス繊維や無機フィラー等の補強材で強化したPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂からなり、取付部材6は、例えば補強材で補強されていない、あるいは補強材の量が保持部材5よりも少ない、比較的柔らかいPPS樹脂からなる。これにより、取付部材6を保持部材5に取り付ける際に第1乃至第4の腕部61~64や舌片601が柔軟に弾性変形し、割れや欠けなどの発生が抑制される。
【0027】
保持部材5の本体部51には、取付部材6の第1乃至第4の係合突起65~68がそれぞれ係合する複数の係合凹部51a~51dが形成されている。取付部材6は、第1乃至第4の腕部61~64が弾性変形して第1乃至第4の係合突起65~68が係合凹部51a~51dに係合することで、保持部材5に取り付けられる。図1及び図3(a),(b)に示すように、第1の腕部61と第2の腕部62、及び第3の腕部63と第4の腕部64は、それぞれX方向に並んでいる。また、第1の腕部61と第3の腕部63、及び第2の腕部62と第4の腕部64は、それぞれY方向に並んでいる。
【0028】
物理量センサ2は、第1及び第3の腕部61,63と第2及び第4の腕部62,64との間に本体部20が配置されている。第1乃至第4の係合突起65~68は、第1乃至第4の腕部61~64のそれぞれの先端部から物理量センサ2の本体部20側に突出して設けられている。
【0029】
保持部材5の本体部51は、X方向に並ぶ第1及び第2の側壁部511,512を有しており、第1の側壁部511と第2の側壁部512との間に挟まれるように物理量センサ2が収容されている。第1の側壁部511は、Z方向の先端部が取付部材6の対向部60と第1及び第3の腕部61,63との間に位置し、取付部材6の第1の張り出し部691とZ方向に対向する。第2の側壁部512は、Z方向の先端部が取付部材6の対向部60と第2及び第4の腕部62,64との間に位置し、取付部材6の第2の張り出し部692とZ方向に対向する。
【0030】
また、保持部材5の本体部51は、取付部材6の第1の腕部61と第3の腕部63との間に介在する第1の介在部513、及び第2の腕部62と第4の腕部64との間に介在する第2の介在部514を有している。本実施の形態では、第1の介在部513が第1の側壁部511の物理量センサ2とは反対側に設けられ、第2の介在部514が第2の側壁部512の物理量センサ2とは反対側に設けられている。
【0031】
取付部材6は、第1及び第2の介在部513,514により、保持部材5に対するY方向への相対移動が規制されている。より詳細には、第1の腕部61が第1の介在部513におけるY方向の一端部に当接し、第2の腕部62が第2の介在部514におけるY方向の一端部に当接することで、取付部材6の保持部材5に対するY方向一側(図面下側)への移動が規制される。また、第3の腕部63が第1の介在部513におけるY方向の他端部に当接し、第4の腕部64が第2の介在部514におけるY方向の他端部に当接することで、取付部材6の保持部材5に対するY方向他側(図面上側)への移動が規制される。
【0032】
また、保持部材5の本体部51は、Y方向における保持穴50の開口方向とは反対側の端部に、底壁部515を有している。底壁部515は、第1の側壁部511と第2の側壁部512との間に跨って形成され、取付部材6の係止突起602によって抜け止めされる方向とは反対側の方向への物理量センサ2の移動を規制している。
【0033】
図6(a)及び(b)に示すように、第1乃至第3の電線11~13と被押付面50aとの間には、モールド成形時に溶融した樹脂が行き渡る程度に薄く形成された薄壁部516が設けられている。Z方向における薄壁部516の最薄部の厚さT1は、例えば0.5mm以上0.8mm以下である。また、この厚さT1は、保持部材5の電線支持部52,52におけるZ方向のモールド材の厚みT2よりも薄い。換言すれば、電線支持部52,52におけるZ方向のモールド材の厚みT2が薄壁部516の最薄部の厚さT1よりも厚く、電線支持部52,52による第1乃至第3の電線11~13の保持剛性が高められている。
【0034】
以上説明した第1の実施の形態によれば、予め成形された保持部材5の保持穴50に物理量センサ2を保持するので、保持部材5を成形する際の熱に物理量センサ2が晒されることがなく、この熱による物理量センサ2の損傷を防ぐことができる。また、取付部材6の第1乃至第4の腕部61~64の先端部に設けられた第1乃至第4の係合突起65~68が保持部材の複数の係合凹部51a~51dに係合する構成により、取付部材6を容易に保持部材5に取り付けることができると共に、第1及び第3の腕部61,63と第2及び第4の腕部62,64との間に物理量センサ2の本体部20が配置された構成により、取付部材6を小型に形成することができる。またさらに、保持部材5の第1及び第2の介在部513,514によって保持部材5に対するY方向への相対移動が規制されるので、保持部材5を小型に形成することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図7乃至図9を参照して説明する。なお、図7乃至図9において、第1の実施の形態において説明したものと機能が共通する構成要素については、図1乃至6に付したものと共通の符号を付して重複した説明を省略する。後述する第3乃至第5の実施の形態についても同様である。
【0036】
第1の実施の形態では、取付部材6の第1乃至第4の係合突起65~68が第1乃至第4の腕部61~64のそれぞれの先端部から物理量センサ2側に突出して設けられた場合について説明したが、第2の実施の形態では、第1乃至第4の係合突起65~68が第1乃至第4の腕部61~64のそれぞれの先端部から物理量センサ2側とは反対側に突出して設けられている。これにより、本実施の形態では、例えば第1乃至第4の腕部61~64の延伸方向(Z方向)に沿って相対移動する上型及び下型からなる一対の成形型を用いて取付部材6を成形することができる。
【0037】
また、本実施の形態では、第1の側壁部511とX方向に対向し、第1の側壁部511との間に第1及び第3の腕部61,63を挟む第1の外壁部517、及び第2の側壁部512とX方向に対向し、第2の側壁部512との間に第2及び第4の腕部62,64を挟む第2の外壁部518が、保持部材5に設けられている。
【0038】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、取付部材6を低コストに成形することができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図10乃至図12を参照して説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態をさらに変形したものであり、第1乃至第4の係合突起65~68が第1乃至第4の腕部61~64のそれぞれの先端部から物理量センサ2側とは反対側に突出して設けられている他、第1及び第2の介在部513,514が第1及び第2の側壁部511,512の物理量センサ2側に設けられている。なお、第2の実施の形態の第1及び第2の外壁部517,518は、本実施の形態では設けられていない。
【0040】
これにより、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様の効果に加え、保持部材5及び取付部材6を小型化することができる。また、第2の実施の形態と比較して、保持部材5及び取付部材6の体積を小さくすることができるので、第1乃至第3の電線11~13の熱が拡散しにくく、物理量センサ2による温度の検出精度を高めることが可能となる。
【0041】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図13及び図14を参照して説明する。第4の実施の形態では、物理量センサ2とZ方向に対向する対向部70と、対向部70からX方向の両側に突出した板状の第1及び第2の突片部71,72とを一体に有する取付部材7により、保持部材5の保持穴50に収容された物理量センサ2の本体部20が抜け止めされている。対向部70には、保持穴50の被押付面50aに物理量センサ2を弾性的に押し付ける舌片701、及び物理量センサ2のケース部材21を係止して保持穴50から抜け止めする係止突起702が設けられている。
【0042】
取付部材7は、保持部材5及び取付部材7の一方に設けられた凸部が他方に設けられた凹部に嵌合することによって保持部材5に取り付けられる。図13及び図14では、保持部材5の本体部51に設けられた第1乃至第4の凸部519a~519bが、取付部材7に設けられた第1乃至第4の凹部711,721,712,722に嵌合する場合を示している。第1及び第3の凸部519a,519cは、第1の側壁部511の先端面511aに立設され、第2及び第4の凸部519b,519dは、第2の側壁部512の先端面512aに立設されている。第1及び第2の凸部519a,519bは、図13(b)に示すように、一例として断面円形状であり、第3及び第4の凸部519c,519dは、一例として断面長円形状である。
【0043】
取付部材7は、第1の突片部71に第1及び第3の凹部711,712が設けられ、第2の突片部72に第2及び第4の凹部721,722が設けられている。第1乃至第4の凹部711,721,712,722の形状は、第1乃至第4の凸部519a~519bに対応する形状である。図13(a)に示すように、第1乃至第4の凸部519a~519bは、第1乃至第4の凸部519a~519bに挿通された先端部が加熱によって潰されて傘状に形成され、第1乃至第4の凹部711,721,712,722から抜けないようにされている。ただし、例えば第1乃至第4の凸部519a~519bを第1乃至第4の凹部711,721,712,722を圧入することにより、取付部材7が保持部材5から離脱しない程度の強度で取付部材7が保持部材5に取り付けられるのであれば、第1乃至第4の凸部519a~519bの先端部を潰さなくてもよい。
【0044】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様、保持部材5を成形する際の熱による物理量センサ2の損傷を防ぐことができる。
【0045】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について、図15乃至図17を参照して説明する。第5の実施の形態では、保持部材5に、保持穴50に連通して取付部材保持穴500が形成されており、取付部材8が取付部材保持穴500に収容されている。保持部材5は、保持穴50の被押付面50aとの間に物理量センサ2の本体部20の一部を収容する第1の保持壁部501と、被押付面50aとの間に物理量センサ2の本体部20の一部及び取付部材8を保持する第2の保持壁部502とを有している。
【0046】
取付部材8は、X方向に見た形状がU字状であり、物理量センサ2の本体部20を被押付面50aに弾性的に押し付ける第1の板部81と、第1の板部81に隙間を介してZ方向に対向する第2の板部82と、第1の板部81と第2の板部82とを接続する接続部83と、第1の板部81の先端部に設けられ、物理量センサ2を保持穴50から抜け止めする係止突起84と、第2の板部82の先端部に設けられ、第2の保持壁部502の端面502aに係止される被係止突起85とを一体に有している。
【0047】
取付部材8は、物理量センサ2のケース部材21と第2の保持壁部502との間で、第1の板部81と第2の板部82とが互いに接近するようにZ方向に弾性的に圧縮されて取付部材保持穴500に収容されている。第1の板部81は、物理量センサ2のケース部材21に弾接し、第2の板部82は、第2の保持壁部502に弾接している。物理量センサ2の本体部20は、第1の板部81によって被押付面50aに押し付けられている。
【0048】
取付部材8は、例えば接着剤によって保持部材5に固定される。この場合、取付部材8をアクリル等の透明樹脂により形成し、取付部材保持穴500に充填した光硬化型接着剤を光照射によって硬化させることで、取付部材8を強固に保持部材5に対して固定することができる。
【0049】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様、保持部材5を成形する際の熱による物理量センサ2の損傷を防ぐことができる。
【0050】
[第5の実施の形態の変形例]
図18は、第5の実施の形態の変形例を示す断面図である。この変形例では、取付部材8を取付部材保持穴500から抜け止めするための係合部86が第2の板部82に設けられており、第2の保持壁部502には、係合部86が係合する被係合部503が設けられている。この構成により、接着剤を用いなくても、取付部材8を取付部材保持穴500から抜け止めすることができる。
【0051】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]電線(11~13)と、前記電線(11~13)の物理量を検出する物理量センサ(2)と、前記電線(11~13)の長手方向の一部を覆うモールド材からなり、前記物理量センサ(2)を収容する保持穴(50)が形成された保持部材(5)と、前記保持部材(5)に取り付けられた取付部材(6)とを備え、前記物理量センサ(2)が前記取付部材(6)によって前記保持穴(50)から抜け止めされている、物理量センサ付き配線部品(1)。
【0052】
[2]前記取付部材(6)は、前記電線(11~13)との間に前記物理量センサ(2)を挟むように前記物理量センサ(2)に対向する対向部(60)と、前記電線(11~13)側に向かって延びる複数の腕部(61~64)と、前記複数の腕部(61~64)のそれぞれの先端部に設けられた複数の係合突起(65~68)とを有し、前記保持部材(5)には、前記取付部材(6)の前記複数の係合突起(65~68)がそれぞれ係合する複数の係合凹部(51a~51d)が形成されている、上記[1]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0053】
[3]前記物理量センサ(2)は、前記取付部材(6)の前記複数の腕部(61~64)のうち一部の腕部(61,63)と他の一部の腕部(62,64)との間に配置されており、前記複数の係合突起(65~68)は、前記複数の腕部(61~64)のそれぞれの先端部から前記物理量センサ(2)側とは反対側に突出して設けられている、上記[2]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0054】
[4]前記保持部材(5)は、前記取付部材(6)の前記複数の腕部(61~64)のうち所定の方向(Y方向)に並ぶ一対の腕部(61,63;62,64)の間に介在する介在部(513,514)を有し、前記介在部(513,514)によって前記取付部材(6)の前記保持部材(5)に対する前記所定の方向(Y方向)への相対移動が規制されている、上記[2]又は[3]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0055】
[5]前記保持部材(5)は、前記所定の方向(Y方向)に対して垂直な方向(X方向)に並ぶ一対の側壁部(511,512)を有し、前記一対の側壁部(511,512)の間に前記物理量センサ(2)が収容されており、前記介在部(513,514)は、前記一対の側壁部(511,512)の前記物理量センサ(2)側にそれぞれ設けられている、上記[4]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0056】
[6]前記保持部材(5)は、前記所定の方向(Y方向)に対して垂直な方向(X方向)に並ぶ一対の側壁部(511,512)を有し、前記一対の側壁部(511,512)の間に前記物理量センサ(2)が収容されており、前記介在部(513,514)は、前記一対の側壁部(511,512)の前記物理量センサ(2)側とは反対側にそれぞれ設けられている、上記[4]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0057】
[7]前記取付部材(7)は、前記保持部材(5)及び前記取付部材(7)の一方に設けられた凸部(第1乃至第4の凸部519a~519b)が他方に設けられた凹部(第1乃至第4の凹部711,721,712,722)に嵌合することによって前記保持部材(5)に取り付けられている、上記[1]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0058】
[8]前記保持部材(5)には、前記保持穴(50)に連通して取付部材保持穴(500)が形成されており、前記取付部材(8)が前記取付部材保持穴(500)に収容されている、上記[1]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0059】
[9]前記取付部材(7)は、前記保持穴(50)における前記電線(11~13)側の内面である被押付面(50a)に前記物理量センサ(2)を弾性的に押し付けている、上記[1]乃至[8]の何れかに記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することができ、例えば次のように変形して実施することも可能である。
【0061】
上記の各実施の形態では、第1乃至第3の電線11~13を物理量の検出対象とした場合について説明したが、一本の電線のみを物理量の検出対象としてもよい。この場合、保持部材に一本の電線のみが保持されるようにしてもよい。また、物理量センサ2の構成についても、図5に例示したものに限らない。
【符号の説明】
【0062】
1…物理量センサ付き配線部品 2…物理量センサ
5…保持部材 6,7,8…取付部材
11~13…第1乃至第3の電線 50…保持穴
50a…被押付面 51a~51d…第1乃至第4の係合凹部
60…対向部 61~64…第1乃至第4の腕部
65~68…第1乃至第4の係合突起 500…取付部材保持穴
511…第1の側壁部 512…第2の側壁部
513,514…第1及び第2の介在部











図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18