(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170490
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】高タンパク質の乳原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/08 20060101AFI20241203BHJP
A23J 1/20 20060101ALI20241203BHJP
A23C 1/00 20060101ALI20241203BHJP
A23C 9/14 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A23J3/08
A23J1/20
A23C1/00
A23C9/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151038
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2020552643の分割
【原出願日】2019-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2018202203
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】川村 悠気
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 瑞恵
(72)【発明者】
【氏名】越膳 浩
(57)【要約】 (修正有)
【課題】風味が良好な高タンパク質の乳原料の製造方法を提供する。
【解決手段】乳原料から乳流体を調製し、この乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理することにより、本発明の液体状の高タンパク質の乳原料を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳原料から、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体を調製する工程、および、
該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する工程を含み、
該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する際の保持液の濃縮倍率が、屈折糖度として1.2倍以上1.4倍以下である、
液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願特許出願は、2018年10月26日に出願された日本出願である特願2018-202203号に基づく優先権の主張を伴うものであり、この日本出願の全開示内容は、引用することにより本願発明の開示の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、新規な乳原料の製造方法に関し、より詳細には、高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する工程を含む、乳原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質の含有の食品において、高タンパク質の乳原料を原料乳へ高濃度に配合すると、風味が悪くなる場合がある。これまでに、タンパク質の含有の食品において、リン酸架橋構造を有するデンプンを添加することにより、タンパク質に特有の臭いが低減されることは知られているが(特許文献1参照)、タンパク質に特有の臭いを低減させるため、特定の物質を添加する必要があった。
【0004】
また、これまでに、原料乳をナノ濾過膜の透析濾過で処理することにより、無脂乳固形分を多く含みながら風味に優れたバターを製造できることは知られているが(特許文献2参照)、ナノ濾過膜で処理することにより、高タンパク質の乳原料において、特定の風味を低減できることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-55710号公報
【特許文献2】WO2012/176719
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理して、高タンパク質の乳原料を製造すると、この乳原料において、スッキリ感が向上され、タンパク質臭が低減され、還元臭が低減されることを見出した。
【0007】
本発明によれば、スッキリ感が向上された、風味が良好な高タンパク質の乳原料を提供することができる。また、本発明によれば、タンパク質臭が低減された、風味が良好な高タンパク質の乳原料を提供することができる。また、本発明によれば、還元臭が低減された、風味が良好な高タンパク質の乳原料を提供することができる。
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]乳原料から、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体を調製する工程、および、
該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する工程を含む、
液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法。
[2]高タンパク質の乳流体を調製するために用いられる乳原料が、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である、[1]に記載の乳原料の製造方法。
[3]高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する際の保持液の濃縮倍率が、屈折糖度として1.1倍以上である、[1]または[2]に記載の乳原料の製造方法。
[4]高タンパク質の乳流体中の全固形分の濃度が2~20質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の乳原料の製造方法。
[5]高タンパク質の乳流体中のタンパク質の濃度が1.5~18質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の乳原料の製造方法。
[6]液体状の高タンパク質の乳原料が、液体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)または液体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)である、[1]~[5]のいずれかに記載の乳原料の製造方法。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の製造方法により製造された液体状の高タンパク質の乳原料を更に乾燥処理する工程を含む、該乾燥処理する工程を経て得られた固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法。
[8]固体状の高タンパク質の乳原料が、固体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)または固体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)である、[7]に記載の乳原料の製造方法。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の製造方法により製造された乳原料の屈折糖度(Brix)と、高タンパク質の乳流体の屈折糖度(Brix)とを同一(同等)に調整して、ジメチルジサルファイドの含有量を測定した場合、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法により製造された乳原料中のジメチルジサルファイドの含有量が、高タンパク質の乳流体中のジメチルジサルファイドの含有量に比較して、20%以上変化している、[1]~[8]のいずれかに記載の乳原料の製造方法。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の製造方法により製造された乳原料が、スッキリ感が向上されたものである、[1]~[9]のいずれかに記載の乳原料の製造方法。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の製造方法により製造された乳原料が、タンパク質臭が低減されたものである、[1]~[10]のいずれかに記載の乳原料の製造方法。
[12]乳原料から、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理して液体状の高タンパク質の乳原料を得る、乳原料のスッキリ感向上方法。
[13]乳原料から、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパ
ク質の乳流体を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理した後に乾燥処理して固体状の高タンパク質の乳原料を得る、乳原料のスッキリ感向上方法。
[14]乳原料から、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理して液体状の高タンパク質の乳原料を得る、乳原料のタンパク質臭低減方法。
[15]乳原料から、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理した後に乾燥処理して固体状の高タンパク質の乳原料を得る、乳原料のタンパク質臭低減方法。
[16][1]~[11]のいずれかに記載の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む、飲食品の製造方法。
[17]飲食品が殺菌されたものである、[16]に記載の飲食品の製造方法。
[18]飲食品が容器詰めされたものである、[16]または[17]に記載の飲食品の製造方法。
[19][1]~[11]のいずれかに記載の製造方法により製造された乳原料を含む、飲食品。
[20]殺菌されたものである、[19]に記載の飲食品。
[21]容器詰めされたものである、[19]または[20]に記載の飲食品。
【0009】
本発明の製造方法により製造された高タンパク質の乳原料では、スッキリ感が向上され、タンパク質臭が低減され、および/または還元臭が低減されているため、タンパク質の含有の飲食品において、高タンパク質の乳原料を原料乳へ高濃度に配合しても、風味が良い(風味が悪くならない)観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】未処理のMPC(ミルクタンパク質濃縮物:全固形分中のタンパク質の含有量が80質量%程度の乳原料)(未処理の乳原料)に対する、ナノ濾過膜で濃縮処理した後の液体状のMPC(ナノ濾過膜の濃縮処理後)および、ナノ濾過膜で濃縮処理してから乾燥処理した後の固体状(粉体状)のMPC(噴霧乾燥処理後)のジメチルジサルファイドの変化の割合を示す。
【
図2】未処理のMPC(未処理の乳原料)に対する、ナノ濾過膜で濃縮処理した後の液体状のMPC(ナノ濾過膜の濃縮処理後)および、ナノ濾過膜で濃縮処理してから乾燥処理した後の固体状(粉体状)のMPC(噴霧乾燥処理後)のノナナールの変化の割合を示す。
【
図3】未処理のMPC(未処理の乳原料)に対する、ナノ濾過膜で濃縮処理した後の液体状のMPC(ナノ濾過膜の濃縮処理後)および、ナノ濾過膜で濃縮処理してから乾燥処理した後の固体状(粉体状)のMPC(噴霧乾燥処理後)のペンタナールの変化の割合を示す。
【
図4】未処理のMPC(未処理の乳原料)に対する、ナノ濾過膜で濃縮処理した後の液体状のMPC(ナノ濾過膜の濃縮処理後)および、ナノ濾過膜で濃縮処理してから乾燥処理した後の固体状(粉体状)のMPC(噴霧乾燥処理後)のペンタノールの変化の割合を示す。
【
図5】MPCの粉末(NF膜)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後の栄養成分(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)の変化の割合を示す。
【
図6】MPCの粉末(NF膜)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後の塩類成分(Na、K、Mg、Ca、Cl、およびP)の変化の割合を示す。
【
図7】MPCの粉末(NF膜)(MPC6631)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後のジメチルジサルファイドの変化の割合を示す。
【
図8】MPCの粉末(NF膜)(MPC6631)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後のノナナールの変化の割合を示す。
【
図9】MPCの粉末(NF膜)(MPC6631)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後のペンタナールの変化の割合を示す。
【
図10】MPCの粉末(NF膜)(MPC6631)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後のペンタノールの変化の割合を示す。
【
図11】MPCの粉末(NF膜)(MPC6631)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後のアミノアセトフェノンの変化の割合を示す。
【
図12】MPC(MPC6631)の粉末(NF膜)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後の栄養成分(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)の変化の割合を示す。
【
図13】MPC(MPC6631)の粉末(NF膜)(粉体状の高タンパク質の乳原料)の還元液(5重量%)について、NF膜の処理前に対する処理後の塩類成分(Na、K、Mg、Ca、Cl、およびP)の変化の割合を示す。
【発明の具体的説明】
【0011】
[高タンパク質の乳原料の製造方法]
本発明は、乳原料(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体(全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体)を調製する工程、および、該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する工程を含む、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法である。このとき、本発明は、スッキリ感が向上された、および/または風味が良好な液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法でもある。また、本発明は、タンパク質臭が低減された、および/または風味が良好な液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法でもある。また、本発明は、還元臭が低減された、および/または風味が良好な液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法でもある。
【0012】
本発明の製造方法において出発原料として用いられる「乳原料」は、乳成分を含む液体状やゲル状などの流体や、乳成分を含む固体状(粉体状や顆粒状やタブレット状など)の乾燥体である。ここで、本発明において、「液体状の高タンパク質の乳原料」とは、タンパク質を高濃度で含む液体状やゲル状の流体であり、好ましくは、タンパク質を高濃度で含む液体状の流体である。そして、本発明において、「液体状の高タンパク質の乳原料」では、特に限定されるものではないが、好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が60質量%以上、すなわち、60質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が65質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が75質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%以上100質量%以下である。このとき、本発明において、「液体状の高タンパク質の乳原料」には、ミルクタンパク質濃縮物(MPC:全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%程度)の還元液、ホエイタンパク質濃縮物(WPC:全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%程度)の還元液、ホエイタンパク質単離物(WPI:全固形分のうち、タンパク質の含有量が90質量%程度)の還元液、カゼイネート(ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネートなど:全固形分のうち、タンパク質の含有量が95質量%程度)の還元液などを例示でき、これらの中でも、液体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)または液体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)が好ましい。
【0013】
本発明において、「固体状の高タンパク質の乳原料」とは、タンパク質を高濃度で含む粉体状や顆粒状やタブレット状などの乾燥体であり、好ましくは、タンパク質を高濃度で含む粉体状や顆粒状の乾燥体であり、より好ましくは、タンパク質を高濃度で含む粉体状の乾燥体である。そして、本発明において、「固体状の高タンパク質の乳原料」では、特に限定されるものではないが、好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が60質量%以上、すなわち、60質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が65質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が75質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%以上100質量%以下である。このとき、本発明において、「固体状の高タンパク質の乳原料」には、ミルクタンパク質濃縮物(MPC:全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%程度)の粉体、ホエイタンパク質濃縮物(WPC:全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%程度)の粉体、ホエイタンパク質単離物(WPI:全固形分のうち、タンパク質の含有量が90質量%程度)の粉体、カゼイネート(ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネートなど:全固形分のうち、タンパク質の含有量が95質量%程度)の粉体などを例示でき、これらの中でも、固体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)または固体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)が好ましい。
【0014】
本発明の製造方法において出発原料として用いられる乳原料は、上記の「液体状の高タンパク質の乳原料」であっても、または上記の「固体状の高タンパク質の乳原料」のいずれであってもよい。
【0015】
本発明において、「液体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)」とは、ミルクタンパク質濃縮物の還元液または液体状のミルクタンパク質濃縮物を出発原料の乳原料として得られた「液体状の高タンパク質の乳原料」を、液状のままで濃縮して調製したミルクタンパク質濃縮物であり、好ましくは、ミルクタンパク質を全固形分に対して60~100重量%で含む液体である。また、前記「液状のままで濃縮して調製」とは、好ましくは、限外ろ過処理により、液体状の高タンパク質の乳原料から灰分および乳糖を除去しつつ、ミルクタンパク質の濃縮などを行うことを意味する。
【0016】
本発明において、「液体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)」とは、ホエイタンパク質濃縮物の還元液または液体状のホエイタンパク質濃縮物を出発原料の乳原料として得られた「液体状の高タンパク質の乳原料」を、液状のままで濃縮して調製したホエイタンパク質濃縮物であり、好ましくは、ホエイタンパク質を全固形分に対して60~100重量%で含む液体である。また、前記「液状のままで濃縮して調製」とは、好ましくは、限外ろ過処理により、液体状の高タンパク質の乳原料から灰分および乳糖を除去しつつ、ホエイタンパク質の濃縮などを行うことを意味する。
【0017】
「固体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)」または「固体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)」は、それぞれ上記の「液体状のミルクタンパク質濃縮物(MPC)」または「液体状のホエイタンパク質濃縮物(WPC)」を乾燥処理する工程を経て得ることができる。
【0018】
本発明において、「乳流体」とは、乳成分を含む液体状やゲル状などの流体であり、好ましくは、液体状の流体である。そして、本発明において、「高タンパク質の乳流体」とは、タンパク質を高濃度で含む液体状やゲル状の流体であり、好ましくは、タンパク質を高濃度で含む液体状の流体であり、好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が60質量%以上、すなわち、60質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは、
全固形分のうち、タンパク質の含有量が65質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が75質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは、全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%以上100質量%以下である。このとき、本発明において、「高タンパク質の乳流体」には、ミルクタンパク質濃縮物(MPC:全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%程度)の還元液、ホエイタンパク質濃縮物(WPC:全固形分のうち、タンパク質の含有量が80質量%程度)の還元液、ホエイタンパク質単離物(WPI:全固形分のうち、タンパク質の含有量が90質量%程度)の還元液、カゼイネート(ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネートなど:全固形分のうち、タンパク質の含有量が95質量%程度)の還元液、液体状のミルクタンパク質濃縮物、液体状のホエイタンパク質濃縮物、液体状のホエイタンパク質単離物などを例示できる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する際の保持液の濃縮倍率が、屈折糖度(Brix)として1.1倍以上である、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。
【0020】
本発明において、「乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する」とは、ナノ濾過膜のユニット(圧力容器など)に、乳流体を回分式や連続式で供給し、乳流体(供給液)を保持液と透過液に分離してから、保持液(液体状の乳原料)を回収することを意味する。このとき、乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理すると、保持液には主に、タンパク質、糖質、二価イオン(マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)が濃縮され、透過液には主に、一価イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなど)の一部が移行する。そして、本発明において、乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する温度は、実際には、3~20℃であり、好ましくは、3~15℃であり、より好ましくは、3~10℃であり、さらに好ましくは、5~10℃である。
【0021】
本発明において、ナノ濾過膜(NF膜)の種類は、特に限定されないが、ナノ濾過膜の種類として、例えば、NF245-3838/30-FF(DOW Water & Process Solutions 社製)や、DK1812(GE Power & Water 社製)を例示できる。また、本発明において、ナノ濾過膜(NF膜)の形状は、特に限定されないが、例えば、ナノ濾過膜の形状として、平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、振動膜、回転膜などを例示できる。
【0022】
本発明において、高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する保持液の濃縮倍率は、特に限定されないが、屈折糖度(Brix)として、例えば、1.1倍以上であり、好ましくは、1.1倍以上2倍以下であり、より好ましくは、1.1倍以上1.7倍以下であり、さらに好ましくは、1.1倍以上1.5倍以下であり、さらに好ましくは、1.2倍以上1.4倍以下であり、さらに好ましくは、1.2倍以上1.3倍以下である。ここで、高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する保持液の濃縮倍率を上記の数値に設定することにより、乳原料として必要な風味などを適度に残存させながら、不要な風味などを適度に除去できるため、高タンパク質の乳原料において、風味を良好に調整できる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、乳原料(好ましくは、固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体を調製する際に、高タンパク質の乳流体中の全固形分の濃度が、2~20質量%であり、好ましくは2~15質量%である、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。ここで、本発明において、「乳原料(好ましくは、固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体を調製する」とは、例えば、固体状の高タンパク質の乳原料を水や湯(温水、熱水)に溶解(還元)し、高タンパク質の乳原料
の水溶液、乳濁液、懸濁液などを作成することを意味する。
【0024】
本発明において、高タンパク質の乳流体中の全固形分の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、1.5~18質量%であり、より好ましくは、2~15質量%(または1.5~13質量%)であり、さらに好ましくは、3~13質量%であり、さらに好ましくは、4~11質量%であり、さらに好ましくは、5~11質量%であり、さらに好ましくは、5~10質量%である。ここで、高タンパク質の乳流体の全固形分の濃度を上記の数値に設定することにより、例えば、固体状の高タンパク質の乳原料を水や湯に溶解(還元)しやすくなり、高タンパク質の乳原料の水溶液、乳濁液、懸濁液などを作成しやすくなる。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、乳原料(好ましくは、固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体を調製する際に、高タンパク質の乳流体中のタンパク質の濃度が1.5~13質量%である、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。
【0026】
本発明において、高タンパク質の乳流体中のタンパク質の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、1.5~13質量%であり、より好ましくは、2~11質量%であり、さらに好ましくは、2.5~9質量%であり、さらに好ましくは、3.5~9質量%であり、さらに好ましくは、4~9質量%である。ここで、高タンパク質の乳流体のタンパク質の濃度を上記の数値に設定することにより、例えば、固体状の高タンパク質の乳原料を水や湯に溶解(還元)しやすくなり、高タンパク質の乳原料の水溶液、乳濁液、懸濁液などを作成しやすくなる。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である固体状の高タンパク質の乳原料から、高タンパク質の乳流体(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体)を調製し、この高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理した後に乾燥処理する(前記のナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料を乾燥処理する)、該乾燥処理して得られた固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法である。このとき、本発明は、スッキリ感が向上された、および/または風味が良好な固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法でもある。また、本発明は、タンパク質臭が低減された、および/または風味が良好な固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法でもある。また、本発明は、還元臭が低減された、および/または風味が良好な固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法でもある。ここで、本発明において、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られる固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法では、各種の操作条件などは、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られる液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様であってもよい。
【0028】
本発明において、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料を乾燥処理する送風の温度は、好ましくは、150~250℃であり、より好ましくは、160~230℃であり、さらに好ましくは、170~210℃であり、さらに好ましくは、180~200℃である。そして、本発明において、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料を乾燥処理する排風の温度は、好ましくは、60~100℃であり、より好ましくは、65~95℃であり、さらに好ましくは、70~90℃であり、さらに好ましくは、75~85℃である。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料の屈折糖度(Brix)と、高タンパク質の乳流体の屈折糖度(Brix)とを同一(同等)に調整して、ジメチルジサルファイド(Dimethyldisulfide:DMDS)の含有量を測定した場合、本発明の製造方法により製造された乳原料中のジメチルジサルファイドの含有量が、乳流体中のジメチルジサルファイドの含有量に比較(対比)して、20
%以上変化する、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。すなわち、本発明の好ましい態様において、本発明の製造方法により製造された高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ジメチルジサルファイドの含有量の変化の割合は20%以上である。
【0030】
本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ジメチルジサルファイドの含有量の変化の割合は20%以上であり、好ましくは、20~90%であり、より好ましくは、40~85%であり、さらに好ましくは、60~85%である。また、本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られた固体状の高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ジメチルジサルファイドの含有量の変化の割合は10%以上であり、好ましくは、10~80%であり、より好ましくは、20~70%であり、さらに好ましくは、30~60%である。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料の屈折糖度と、高タンパク質の乳流体の屈折糖度を同一に調整して、ノナナール(Nonanal)の含有量を測定した場合、本発明の製造方法により製造された乳原料中のノナナールの含有量が、乳流体中のノナナールの含有量に比較して、40%以下で変化する、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。すなわち、本発明の好ましい態様において、本発明の製造方法により製造された高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ノナナールの含有量の変化の割合は40%以下である。
【0032】
本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ノナナールの含有量の変化の割合は40%以下であり、好ましくは、0~40%であり、より好ましくは、0~30%であり、さらに好ましくは、0~20%である。また、本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られた固体状の高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ノナナールの含有量の変化の割合は0%以上であり、好ましくは、0~50%であり、より好ましくは、0~40%であり、さらに好ましくは、0~30%である。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料の屈折糖度と、高タンパク質の乳流体の屈折糖度を同一に調整して、ペンタナール(Pentanal)の含有量を測定した場合、本発明の製造方法により製造された乳原料中のペンタナールの含有量が、乳流体中のペンタナールの含有量に比較して、40%以下で変化する、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。すなわち、本発明の好ましい態様において、本発明の製造方法により製造された高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ペンタナールの含有量の変化の割合は40%以下である。
【0034】
本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ペンタナールの含有量の変化の割合は40%以下であり、好ましくは、0~40%であり、より好ましくは、0~30%であり、さらに好ましくは、0~20%である。また、本発明の好ましい態様において、高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られた固体状の高タンパク質の乳原料では、屈折糖度を同一に調整した上で、ペンタナールの含有量の変化の割合は40%以下であり、好ましくは、0~50%であり、より好ましくは、0~40%であり、さらに好ましくは、0~30%である。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料の屈折糖度と、高タンパク質の乳流体の屈折糖度を同一に調整して、ペンタノール(Pentanol)の含有量を測定した場合、本発明の製造方法により製造された乳原料中のペンタノールの含有量が、乳流体中のペンタノールの含有量に比較して、5%以上変化している、前記の高タンパク質の乳原料の製造方法である。すなわち、本発明の好ましい態様において、本発明の製造方法により製造された高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ペンタノールの含有量の変化の割合は5%以上である。
【0036】
本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料では、高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ペンタノールの含有量の変化の割合は60%以下であり、好ましくは、5~60%であり、より好ましくは、10~50%であり、さらに好ましくは、20~50%である。また、本発明の好ましい態様において、固体状の高タンパク質の乳原料では、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られた高タンパク質の乳流体に比較して、屈折糖度を同一に調整した上で、ペンタノールの含有量の変化の割合は60%以下であり、好ましくは、0~40%であり、より好ましくは、0~30%であり、さらに好ましくは、0~20%である。
【0037】
本発明において、ジメチルジサルファイド、ノナナール、ペンタナール、ペンタノール、アミノアセトフェノンなどの香気成分(風味物質)の含有量の変化の割合では、例えば、次の方法により、各試料の相対値を評価できる。
(1)各試料の屈折糖度を5%に調整した後に、これら試料(容量:8mL)と塩化ナトリウム(重量:3g)をバイアルビン(容量:20mL)に採取し、内標準物質として、メチルイソブチルケトン(MIBK)を添加して密封する。
(2)バイアルビンを60℃、40分間で加温する。
(3)固相マイクロファイバー(50/30μm DVB/CAR/PDMS)により、バイアルビンのヘッドスペースの「香気(におい)成分」を抽出する。
(4)ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS、カラム:DB-WAX UI)により、前記の固相マイクロファイバーを分析する。
(5)固相マイクロ抽出法(SPME法)により、 香気成分の面積値を特定し、ナノ濾過膜の濃縮処理前に対するナノ濾過膜の濃縮処理後の香気成分の変化の割合(相対値)により、ナノ濾過膜の濃縮処理に伴う香気成分の変化の挙動を評価する。ここで、固相マイクロ抽出法は、揮発性の香気成分を高感度で迅速に分析できる技術である。
【0038】
本発明の好ましい態様において、ナノ濾過膜で濃縮処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜で濃縮処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料の栄養成分濃度(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)の変化割合が50%以下であり、および/または塩類成分濃度(Na、K、Mg、Ca、Cl、P)の変化の割合が80%以下である。本発明の製造方法により製造される液体状または固体状の高タンパク質の乳原料は、栄養成分および塩類成分を殆ど変化させることなく、スッキリ感が向上された、風味が良好な高タンパク質の乳原料を提供することができる点で更に有利である。
【0039】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料の全固形分濃度の変化割合は、20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。乳原料の全固形分濃度は、例えば下記実施例に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0040】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料の脂質濃度の変化の割合は、50%以下であり、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。乳原料の脂質濃度は、ゲルベル法(食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第9の第3欄に掲げる方法の詳細に対応する「別添栄養成分等の分析方法等」の「2 脂質(3)ゲルベル法」を参照)によって測定して決定することができる。
【0041】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料のタンパク質濃度の変化の割合は、20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。乳原料のタンパク質濃度は、ローリー法(「蛋白質の定量法I」 化学と生物 1966年第4巻1号37-44頁参照)によって測定して決定することができる。
【0042】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料の炭水化物(糖質)濃度の変化の割合は、例えば40%以下であり、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。乳原料の炭水化物(糖質)濃度は、例えば下記実施例に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0043】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料の灰分濃度の変化の割合は、20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。乳原料の灰分濃度は、例えば下記実施例に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0044】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料のナトリウム(Na)濃度の変化の割合は、35%以下であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
【0045】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料のカリウム(K)濃度の変化の割合は、例えば20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。
【0046】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料のマグネシウム(Mg)濃度の変化の割合は、例えば25%以下であり、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0047】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料のカルシウム(Ca)濃度の変化の割合は、例えば30%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。
【0048】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の液体状または固体状の高タンパク質の乳原料のリン(P)
濃度の変化の割合は、例えば20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。
【0049】
ここで、乳原料のナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびリン(P)濃度は、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法(食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第9の第3欄に掲げる方法の詳細に対応する「別添 栄養成分等の分析方法等」の「10 カリウム(3)誘導結合プラズマ発光分析法」、「11 カルシウム(3)誘導結合プラズマ発光分析法」、「16 ナトリウム(食塩相当量)(3)誘導結合プラズマ発光分析法」、および「21 リン(3)誘導結合プラズマ発光分析法」のそれぞれ参照)によって測定して決定することができる。
【0050】
本発明のより好ましい態様において、ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体に比較して、ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料の塩素(Cl)濃度の変化の割合は、例えば80%以下であり、好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下である。乳原料の塩素(Cl)濃度は、回転電極式ポーラログラフ法によって測定して決定することができる。
【0051】
[飲食品およびその製造方法]
本発明の一つの態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む飲食品の製造方法が提供される。
【0052】
本発明の製造方法により製造された乳原料を含有させる飲食品には、必要に応じて、本発明の製造方法により製造された乳原料以外の任意の成分を加えることができる。このような任意の成分としては、特段の制限はないが、通常、飲食品に配合される成分である、水系原料、油系原料、糖質、食物繊維、多糖類、タンパク質、ペプチド、アミノ酸類、脂質、有機酸、各種生理活性物質、ビタミン類、ミネラル類、酸味料、香料、甘味料、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、機能性素材、油脂類、賦形剤、着色料、保存料、水(熱水、温水、常温水、冷水)等が挙げられる。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、水系原料、油系原料、香料、甘味料、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、機能性素材、油脂類、賦形剤、および水からなる群から選択される1種または2種以上を、本発明の製造方法により製造された乳原料に混合して飲食品に含有させる工程を含む飲食品の製造方法が提供される。ここで、水とは、例えば、熱水、温水、常温水、または冷水が挙げられる。ここで、混合とは、本発明の製造方法により製造された乳原料と、上記の任意の成分とを飲食品に加える前に混合して、その混合物を飲食品に加えてもよく、または、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に加えた後、上記の任意の成分を飲食品に加えてその飲食品中で乳原料と任意成分とを混合してもよい。
【0054】
本発明の飲食品に含有することができる水系原料としては、例えば、本発明の乳原料以外の乳原料(牛乳、脱脂乳、低脂肪乳、成分調整牛乳等)、乳飲料、発酵乳、豆乳、果汁、野菜汁、果実/野菜ペースト、果実/野菜エキス、酒類、液糖、等が挙げられる。
【0055】
本発明の飲食品に含有することができる油系原料としては、例えば、バター、マーガリン、ショートニング、クリーム、チョコレート、カカオマス、ココアバター、アーモンドペースト、等が挙げられる。
【0056】
本発明のより好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む飲食品の製造方法において、前記乳原料が、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質の乳原料である飲食品の製造方法が提供される。
【0057】
本発明のより好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む飲食品の製造方法において、前記乳原料が、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られた固体状(粉末状)の高タンパク質の乳原料である飲食品の製造方法が提供される。
【0058】
本発明の製造方法により製造された液体状または固体状の高タンパク質の乳原料を含有することができる飲食品は、どのような形態のものであってもよく、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、ペースト、半固体成形物、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく特に限定されず、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、珈琲飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、バー、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、ムース、デザート菓子、氷菓などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品、流動食などが挙げられる。また、飲食品には、健康食品、機能性食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品または機能性表示食品を含む)、栄養補助食品、特別用途食品(例えば、病者用食品、乳児用調製粉乳、妊産婦、授乳婦用粉乳またはえん下困難者用食品を含む)または乳児用液体調製乳(乳児用液体ミルクともいう)も包含される。これらの中でも、飲料類、菓子類、乳製品、流動食が好ましく、発酵乳、乳飲料、珈琲飲料、茶飲料、清涼飲料、粉末飲料、流動食、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、氷菓、プリンがさらに好ましく、珈琲飲料が特に好ましい。本発明の製造方法により製造された液体状または固体状の高タンパク質の乳原料は、スッキリ感が向上し、配合された飲食品本来の風味を阻害せず、好ましい風味を維持したまま飲食品中のタンパク質量を強化することが可能である点で有利である。
【0059】
本発明のより好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む飲食品の製造方法において、前記飲食品が、乳製品、発酵乳、乳飲料、珈琲飲料、茶飲料、清涼飲料、流動食、氷菓、またはアイスクリーム類である、飲食品の製造方法が提供される。ここで、アイスクリーム類としては、例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスが挙げられる。
【0060】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む、スッキリ感が向上した飲食品の製造方法が提供される。ここで、「スッキリ感が向上した」とは、タンパク質の含有の飲食品において、雑味が低減、加熱臭が低減、硫黄臭が低減、粉っぽい風味が低減することなどを意味する。
【0061】
本発明の好ましい別の態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む、タンパク質臭が低減された飲食品の製造方法が提供される。ここで、「タンパク質臭が低減された」とは、タンパク質の含有の飲食品において、高濃度のタンパク質に由来する雑味が低減、ジメチルジサルファイドなどの風味物質が低減されるなどを意味する。
【0062】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む、還元臭が低減された飲食品の製造方法が提供される。
【0063】
本発明の別の態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む飲食品が提供される。本発明の製造方法により製造された乳原料を含む飲食品は、上記の本発明の製造方法により製造された液体状または固体状の高タンパク質の乳原料を含有することができる飲食品と同じであってもよい。
【0064】
本発明の飲食品は、上記の通り、本発明の製造方法により製造された乳原料以外の任意の成分を加えることができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料に加えて、水系原料、油系原料、香料、甘味料、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、機能性素材、油脂類、賦形剤、および水(熱水、温水、常温水、および冷水)からなる群から選択される1種または2種以上を更に含む飲食品が提供される。
【0065】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む飲食品において、前記乳原料が、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られた液体状の高タンパク質である、飲食品が提供される。
【0066】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む飲食品において、前記乳原料が、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られた固体状(粉末状)の高タンパク質である、飲食品が提供される。
【0067】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む飲食品において、前記飲食品が、乳製品、発酵乳、乳飲料、珈琲飲料、茶飲料、清涼飲料、流動食、氷菓、またはアイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)である、飲食品が提供される。
【0068】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む、スッキリ感が向上した飲食品が提供される。
【0069】
本発明の好ましい別の態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む、タンパク質臭が低減された飲食品が提供される。
【0070】
本発明の好ましい別の態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む、還元臭が低減された飲食品が提供される。
【0071】
本発明の飲食品は、本発明の製造方法により製造された乳原料が含有するように製造される限りどのような製造方法によって製造してもよいが、例えば、上記の任意の成分を、本発明の製造方法により製造された乳原料に混合して混合物とし、その混合物を飲食品に加えることにより製造することができる。
【0072】
また、本発明の飲食品を製造する際、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に加える前、飲食品に加えた後に、または加えながら殺菌(好ましくは、加熱殺菌)を行ってもよい。加熱殺菌は、食品分野において通常で用いられる方法や設備により殺菌することができ、例えば、低温保持殺菌法(LTLT)、高温保持殺菌法(HTLT)、高温短時間殺菌法(HTST)および超高温瞬間殺菌法(UHT)などの方法によって行ってもよい。加熱殺菌のための設備としては、間接加熱式殺菌機(プレート式殺菌機およびチューブ式殺菌機等)、直接加熱式殺菌機(スチームインジェクション式殺菌機およびスチームインフュージョン式殺菌機等)、通電加熱式殺菌機、レトルト殺菌機、撹拌・調温の機能付きのタンクおよび撹拌・調温・減圧・均質化の機能付きのタンクなどを用いることができる。また、上記の任意成分は、殺菌の前後にいずれのタイミングで加えてもよく、または殺菌中に加えてもよく、さらに後述する容器詰めされた後に加えてもよい。本発明の殺菌された飲食品は、殺菌処理(例えば、加熱殺菌処理)をされた後も、高タンパク
質の乳原料を含有しているにもかかわらず、スッキリ感が向上し、タンパク質臭が低減される効果が維持されている。なお、本発明の殺菌された飲食品は、加熱殺菌処理として最も過酷な条件であるレトルト殺菌処理された場合においても、前記効果は維持されるため、他のより緩やかな条件によって殺菌処理された場合も前記効果は維持されるものである。
【0073】
さらに、本発明の飲食品は、容器詰め飲食品(好ましくは、殺菌された容器詰め飲食品)であってもよい。例えば、本発明の製造方法により製造された乳原料と、任意成分とを混合した液を容器に充填し密封することにより、容器詰め飲料を得ることができる。容器詰め飲食品に使用される容器は、一般の飲食品と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態であれば制限なく用いることができる。また、容器詰め飲食品の加熱殺菌処理は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。本発明の容器詰め飲食品は、容器詰めされた後も(好ましくは、容器詰めおよび殺菌された後も)、高タンパク質の乳原料を含有しているにもかかわらず、スッキリ感が向上し、タンパク質臭が低減される効果が維持されている。なお、本発明の殺菌された容器詰め飲食品は、容器に充填された後の加熱殺菌処理として最も過酷な条件であるレトルト殺菌処理された場合においても、前記効果は維持されるため、他のより緩やかな条件で容器詰めおよび殺菌処理された場合も前記効果は維持されるものである。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を飲食品に含有させる工程を含む、殺菌された(好ましくは、加熱殺菌された)飲食品の製造方法が提供される。
【0075】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造された乳原料を含む、殺菌された(好ましくは、加熱殺菌された)飲食品が提供される。
【0076】
[乳原料のスッキリ感の向上方法]
本発明の別の態様によれば、乳原料(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体)を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理して液体状の高タンパク質の乳原料を得る、(ナノ濾過膜濃縮処理前の)乳原料のスッキリ感向上方法である。本発明の製造方法において出発原料として用いられる乳原料を、ナノ濾過膜で濃縮処理等することにより、その乳原料のスッキリ感を向上させることができる。ここで、本発明において、このナノ濾過膜濃縮処理前の乳原料のスッキリ感向上方法の各種操作条件などは、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られる液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様であってもよい。
【0077】
本発明の好ましい態様によれば、乳原料から調製された全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理した後に乾燥処理して(前記の液体状の高タンパク質の乳原料を乾燥処理する)固体状の高タンパク質の乳原料を得る、(ナノ濾過膜濃縮処理前の)乳原料のスッキリ感向上方法である。ここで、本発明において、このナノ濾過膜濃縮処理前の乳原料のスッキリ感向上方法の各種操作条件などは、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られる固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様である。
【0078】
本発明において、「スッキリ感の向上」とは、タンパク質の含有の飲食品において、雑味の低減、加熱臭の低減、硫黄臭の低減、粉っぽい風味の低減などを意味する。
【0079】
[乳原料のタンパク質臭の低減方法]
本発明の別の態様によれば、乳原料(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体)を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理して液体状の高タンパク質の乳原料を得る、(ナノ濾過膜濃縮処理前の)乳原料のタンパク質臭低減方法である。本発明の製造方法において出発原料として用いられる乳原料を、ナノ濾過膜濃縮処理等することにより、その乳原料のタンパク質臭を低減させることができる。ここで、本発明において、このナノ濾過膜濃縮処理前の乳原料のタンパク質臭低減方法の各種操作条件などは、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られる液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様である。
【0080】
本発明の好ましい態様によれば、乳原料から調製された全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理した後に乾燥処理して(前記の液体状の高タンパク質の乳原料を乾燥処理する)固体状の高タンパク質の乳原料を得る、(ナノ濾過膜濃縮処理前の)乳原料のタンパク質臭低減方法である。ここで、本発明において、このナノ濾過膜濃縮処理前の乳原料のタンパク質臭低減方法の各種操作条件などは、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られる固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様である。
【0081】
本発明において、「タンパク質臭の低減」とは、タンパク質の含有の飲食品において、高濃度のタンパク質に由来する雑味の低減、ジメチルジサルファイドなどの風味物質の低減などを意味する。
【0082】
[乳原料の還元臭の低減方法]
本発明の別の態様によれば、乳原料(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である固体状の高タンパク質の乳原料)から、高タンパク質の乳流体(好ましくは、全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体)を調製し、かつ該乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理して液体状の高タンパク質の乳原料を得る、(ナノ濾過膜濃縮処理前の)乳原料の還元臭低減方法である。本発明の製造方法において出発原料として用いられる乳原料を、ナノ濾過膜濃縮処理等することにより、その乳原料の還元臭を低減させることができる。ここで、本発明において、このナノ濾過膜濃縮処理前の乳原料の還元臭低減方法の各種操作条件などは、ナノ濾過膜で濃縮処理して得られる液体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様である。
【0083】
本発明の好ましい態様によれば、乳原料から調製された全固形分中のタンパク質の含有量が60質量%以上である高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理した後に乾燥処理して(前記の液体状の高タンパク質の乳原料を乾燥処理する)固体状の高タンパク質の乳原料を得る、(ナノ濾過膜濃縮処理前の)乳原料の還元臭低減方法である。ここで、本発明において、このナノ濾過膜濃縮処理前の乳原料の還元臭低減方法の各種操作条件などは、ナノ濾過膜濃縮処理後に乾燥処理して得られる固体状の高タンパク質の乳原料の製造方法と同様である。
【実施例0084】
以下、実施例により、本発明について、より具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これら実施例の内容に限定されるものではない。また、下記の実施例は、本発明者らが具体的に実施した態様の一部であり、下記の実施例以外の本発明の範囲内に含まれる他
の態様にしても発明の効果を確認しているものの、ここでは具体的に示さない。
【0085】
試験例1:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)の還元液(高タンパク質の乳流体)のナノ濾過膜(NF膜)の濃縮処理1
本試験は、以下の通り実施した。
(1-1)乳原料(MPC)(MPC4882、Fonterra社)を温水(60℃)に溶解し、MPCの還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%、タンパク質の含有量:8質量%)を10kgで調製した。
(1-2)MPCの還元液(10℃)をナノ濾過膜(DK1812、 GE Power & Water 社、膜面積:0.32m2)で濃縮処理しながら、屈折糖度(Brix、糖度計の測定値)の濃縮倍率として、1.2、1.3、1.4倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製した(未処理のMPCの還元液では、Brixが10.8%であり、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)では、Brixが13.2%であり、MPCの濃縮液(NF膜、1.3倍)では、Brixが14.2%であり、MPCの濃縮液(NF膜、1.4倍)では、Brixが15.3%であった)。なお、MPCの還元液(全固形分の含有量:10重量%、タンパク質の含有量:8質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理した際に、Brixの濃縮倍率として、1~1.2倍では、平均透過流速が約2kg/m2/hであり、Brixの濃縮倍率として、1.2~1.3倍では、平均透過流速が約1.5kg/m2/hであり、Brixの濃縮倍率として、1.3~1.4倍では、平均透過流速が約0.5kg/m2/hであった。
(1-3)MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)のBrix、MPCの濃縮液(NF膜、1.3倍)のBrix、MPCの濃縮液(NF膜、1.4倍)のBrixを、未処理のMPCの還元液のBrixと同一に調整(希釈)して、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:10%)、MPCの濃縮液(NF膜、1.3倍)の調整液(Brix:10%)、MPCの濃縮液(NF膜、1.4倍)の調整液(Brix:10%)を調製した。
【0086】
前記の(1-1)~(1-3)の工程により得られたMPCの濃縮液(NF膜)の調整液(Brix:10%)(3種類:「NF膜、1.2倍」、「NF膜、1.3倍」、「NF膜、1.4倍」)の風味について、専門パネルの10名で確認した。
【0087】
前記の風味について確認した結果から、未処理のMPCの還元液(Brix:10%)に比較して、前記の(1-1)~(1-3)の工程により得られたMPCの濃縮液(NF膜)の調整液(Brix:10%)(乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理する際の保持液の濃縮倍率が、屈折糖度(Brix)として1.2倍、1.3倍、1.4倍の3種類)では、いずれにおいても、専門パネルの10名(全員)が、スッキリ感が向上し、タンパク質臭や還元臭が低減したと評価した。
【0088】
試験例2:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)の還元液(高タンパク質の乳流体)のナノ濾過膜(NF膜)の濃縮処理2
本試験は、以下の通り実施した。本試験(試験例2)では、試験例1と比較して、大規模である(乳原料や乳流体が大量である)。
(2-1)乳原料(MPC)(MPC4882、Fonterra 社)を温水(60℃)に溶解し、MPCの還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%、タンパク質の含有量:8質量%)を60kgで調製した。
(2-2)MPCの還元液(10℃)をナノ濾過膜(NF245-3838/30-FF、 DOW Water & Process Solutions 社)、 膜面積:7.5m2×2)で濃縮処理しながら、屈折糖度(Brix、糖度計の測定値))の濃縮倍率として、1.2倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製した(未処理のMPCの還元液では、Brixが10.6%であり、MPCの濃縮液(NF膜、1.2
倍)では、Brixが13.2%であった)。なお、MPCの還元液(全固形分の含有量:10重量%、タンパク質の含有量:8質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理した際に、Brixの濃縮倍率として、1~1.2倍では、平均透過流速が約4.5kg/m2/hであった。
(2-3)MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)を噴霧乾燥処理(送風の温度:180℃、排風の温度:80℃)して、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)を調製した。
(2-4)MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)を、未処理のMPCの還元液のBrixと同一に調整(希釈)して、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:10%)を調製する一方で、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)を、未処理のMPCの還元液のBrixと同一に溶解して、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:10%)を調製した。
【0089】
前記の(2-1)~(2-4)の工程により得られたMPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:10%)と、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:10%)の風味について、専門パネルの10名で確認した。
【0090】
前記の風味について確認した結果から、未処理のMPCの還元液(Brix:10%)に比較して、前記の(2-1)~(2-4)の工程により得られたナノ濾過膜濃縮処理後のMPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:10%)と、噴霧乾燥後のMPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:10%)では、いずれにおいても、専門パネルの10名(全員)が、スッキリ感が向上し、タンパク質臭や還元臭が低減したと評価した。
【0091】
試験例3:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)の還元液(高タンパク質の乳流体)のナノ濾過膜(NF膜)の濃縮処理の香気成分の変化
本試験は、以下の通り実施した。本試験では、未処理のMPCの還元液、試験例2で調製したMPCの還元液(NF膜)、MPCの粉体(NF膜)の還元液の香気成分(風味物質)の変化を評価した。
(3-1)香気成分の測定用の試料として、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)を調製した(各試料の屈折糖度を5%に調整した)後に、これら試料(容量:8mL)と塩化ナトリウム(重量:3g)をバイアルビン(容量:20mL)に採取し、内標準物質として、メチルイソブチルケトン(MIBK)を添加して密封した。
(3-2)バイアルビンを60℃、40分間で加温した。
(3-3)固相マイクロファイバー(50/30μm DVB/CAR/PDMS)により、バイアルビンのヘッドスペースの「香気(におい)成分」を抽出した。
(3-4) ガスクロマトグラフ 質量分析計(GC/MS、カラム:DB-WAX UI)により、前記の固相マイクロファイバーを分析した。
(3-5) 固相マイクロ抽出法(SPME法)により、 香気成分の面積値を特定し、 ナノ濾過膜の濃縮処理前に対するナノ濾過膜の濃縮処理後の香気成分の変化の割合(相対値)により、ナノ濾過膜の濃縮処理に伴う香気成分の変化の挙動を評価した。ここで、固相マイクロ抽出法は、揮発性の香気成分を高感度で迅速に分析できる技術である。
【0092】
香気成分の評価の項目として、ジメチルジサルファイド(Dimethyldisulfide:DMDS、タンパク質の劣化の指標物質)、ノナナール(Nonanal、脂質の劣化の指標物質)、ペンタナール(Pentanal、牧草臭の指標物質)、ペンタノール(Pentanol、牧草臭の指標物質)を選抜した。
【0093】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくジメチルジ
サルファイドの面積値を1に設定し、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくジメチルジサルファイドの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図1に示した。
【0094】
図1によれば、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ジメチルジサルファイドの含有量が80%変化(減少)していた。また、
図1によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ジメチルジサルファイドの含有量が38%変化(減少)していた。
【0095】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくノナナールの面積値を1に設定し、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくノナナールの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図2に示した。
【0096】
図2によれば、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ノナナールの含有量が殆ど変化していなかった(2%変化(増加)していた)。また、
図2によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ノナナールの含有量が殆ど変化していなかった(15%変化(増加)していた)。
【0097】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタナールの面積値を1に設定し、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタナールの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図3に示した。
【0098】
図3によれば、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ペンタナールの含有量が殆ど変化していなかった(3%変化(減少)していた)。また、
図3によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ペンタナールの含有量が殆ど変化していなかった(17%変化(増加)していた)。
【0099】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタノールの面積値を1に設定し、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタノールの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図4に示した。
【0100】
図4によれば、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ペンタノールの含有量が32%変化(減少)していた。また、
図4によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ペンタノールの含有量が殆ど変化していなかった(5%変化(減少)していた)。
【0101】
以上の結果から、高タンパク質の乳原料から、高タンパク質の乳流体を調製し、この高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理すると、各種の香気成分が様々に変化することが分かった。このとき、特に、高タンパク質の乳原料から、高タンパク質の乳流体を調製し、この高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理すると、ジメチルジサルファイ
ドが明らかに変化(減少)することが分かった。
【0102】
試験例4:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)のナノ濾過(NF)膜の濃縮処理の栄養成分の変化(パイロットプラント規模の実験)[1]
本試験は、試験例2と同様に、乳原料(MPC)(MPC4882、Fonterra社)の還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理しながら、屈折糖度の濃縮倍率として、1.2倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製し、そのナノ濾過膜濃縮処理後のMPCの濃縮液を噴霧乾燥処理して得られたMPCの粉末を用いた。ナノ濾過膜濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)と得られたMPCの粉末について、代表的な栄養成分(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)を下記(1)~(5)に記載の通りに評価(分析)して、ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)に対する、ナノ濾過膜の濃縮処理後のMPCの粉末の栄養成分の変化割合(栄養成分の損失の程度)を確認した。MPCの粉末は還元液(5重量%)として、下記の所定の分析法により測定した。
【0103】
(1)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末の全固形分の濃度は、アルミニウム製の秤量皿(底径:50mm程度)に、試料(重量:3g程度)を量り取った後に、必要に応じて、ホットプレート上で、試料の水分の大部分を蒸発させてから、乾燥機(温度:98~100℃)で恒量となるまで保持し、これら処理前と処理後における試料の重量を測定して決定した。
【0104】
(2)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末の脂質濃度は、ゲルベル法(食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第9の第3欄に掲げる方法の詳細に対応する「別添栄養成分等の分析方法等」の「2 脂質(3)ゲルベル法」を参照)によって測定して決定した。
【0105】
(3)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末のタンパク質濃度は、ローリー法(「蛋白質の定量法I」 化学と生物 1966年第4巻1号37-44頁参照)によって測定して決定した。
【0106】
(4)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末の灰分濃度は、るつぼ(底径:10mm程度)に、試料(重量:3g程度)を量り取った後に、ホットプレート上で、試料の水分の大部分を蒸発させてから、電気炉(温度:550~600℃)で恒量となるまで保持し、これら処理前と処理後における試料の重量を測定して決定した。
【0107】
(5)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末の炭水化物(糖質)濃度は、MPCの還元液およびMPCの粉末の全固形分の濃度から、脂質の濃度、タンパク質の濃度、灰分の濃度を減じて決定した。
【0108】
[試験結果]
ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)および上記で得られたMPCの粉末(ナノ濾過膜の濃縮処理後)の還元液(5重量%)について、上記の所定の分析法により、ナノ濾過膜の処理前に対する処理後の栄養成分(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)の変化割合を確認し、その結果を
図5に示した。
【0109】
図5によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の全固形分の変化割合は、2%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0110】
図5によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較
して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の脂質の変化割合は、1%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0111】
図5によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のタンパク質の変化割合は、3%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0112】
図5によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の炭水化物(糖質)の変化割合は、22%の減少であった。
【0113】
図5によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の灰分の変化割合は、2%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0114】
試験例5:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)のナノ濾過(NF)膜の濃縮処理の塩類成分の変化(パイロットプラント規模の実験)[1]
本試験は、試験例2と同様に、乳原料(MPC)(MPC4882、Fonterra社)の還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理しながら、屈折糖度の濃縮倍率として、1.2倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製し、そのナノ濾過膜濃縮処理後のMPCの濃縮液を噴霧乾燥処理して得られたMPCの粉末を用いた。ナノ濾過膜濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)と得られたMPCの粉末について、代表的な塩類成分(Na、K、Mg、Ca、Cl、P)を下記(1)および(2)に記載の通りに評価(分析)して、ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)に対する、ナノ濾過膜の濃縮処理後のMPCの粉末の塩類成分の変化割合(塩類成分の損失の程度)を確認した。MPCの粉末は還元液(5重量%)として、下記の所定の分析法により測定した。
【0115】
(1)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末のナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびリン(P)濃度は、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法(食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第9の第3欄に掲げる方法の詳細に対応する「別添 栄養成分等の分析方法等」の「10 カリウム(3)誘導結合プラズマ発光分析法」、「11 カルシウム(3)誘導結合プラズマ発光分析法」、「16 ナトリウム(食塩相当量)(3)誘導結合プラズマ発光分析法」、および「21 リン(3)誘導結合プラズマ発光分析法」のそれぞれ参照)によって測定して決定した。
【0116】
(2)MPCの還元液(乳流体)およびMPCの粉末の塩素(Cl)濃度は、回転電極式ポーラログラフ法によって測定して決定した。
【0117】
[試験結果]
ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)および上記で得られたMPCの粉末(ナノ濾過膜の濃縮処理後)の還元液(5重量%)について、上記の所定の分析法により、ナノ濾過膜の処理前に対する処理後の塩類成分(Na、K、Mg、Ca、Cl、P)の変化割合を確認し、その結果を
図6に示した。
【0118】
図6によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のNaの変化割合は、2%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0119】
図6によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のKの変化割合は、5%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0120】
図6によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のMgの変化割合は、1%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0121】
図6によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のCaの変化割合は、5%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0122】
図6によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のClの変化割合は、47%の減少であった。
【0123】
図6によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のPの変化の割合は、2%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0124】
試験例6:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)の還元液(高タンパク質の乳流体)のナノ濾過膜(NF膜)の濃縮処理2[2]
本試験は、以下の通り実施した。
(6-1)試験例2とは異なる乳原料(MPC)(MPC6631、Fonterra社)を温水(60℃)に溶解し、MPCの還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%、タンパク質の含有量:8質量%)を60kgで調製した。
(6-2)MPCの還元液(10℃)をナノ濾過膜(NF245-3838/30-FF、DOW Water & Process Solutions社、膜面積:7.5m2×1)で濃縮処理しながら、屈折糖度(Brix、糖度計の測定値)の濃縮倍率として、1.2倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製した(未処理のMPCの還元液では、Brixが10.6%であり、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)では、Brixが13.2%であった)。なお、MPCの還元液(全固形分の含有量:10重量%、タンパク質の含有量:8質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理した際に、Brixの濃縮倍率として、1~1.2倍では、平均透過流速が約5.0kg/m2/hであった。
(6-3)MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)を噴霧乾燥処理(送風の温度:180℃、排風の温度:80℃)して、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)を調製した。
(6-4)MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)を、未処理のMPCの還元液のBrixと同一に調整(希釈)して、MPCの濃縮液(NF膜、1.2倍)の調整液(Brix:7%)を調製する一方で、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)を、未処理のMPCの還元液のBrixと同一に溶解して、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:7%)を調製した。
【0125】
未処理のMPCの還元液(Brix:7%)と、前記の(6-1)~(6-4)の工程により得られたMPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:7%)の風味について、専門パネルの5名で確認した。
【0126】
前記の風味について確認した結果から、未処理のMPCの還元液(Brix:7%)に比較して、前記の(6-1)~(6-4)の工程により得られたMPCの粉末(Brix:7%)は、専門パネルの5名(全員)が、スッキリ感が向上し、タンパク質臭や還元臭
が低減したと評価した。従って、試験例2とは異なる乳原料であっても、試験例2と同様の効果を有することが分かった。
【0127】
試験例7:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)の還元液(高タンパク質の乳流体)のナノ濾過膜(NF膜)の濃縮処理の香気成分の変化[2]
本試験では、未処理のMPCの還元液、試験例6で調製したMPCの粉体(NF膜)(乳原料としては、MPC(MPC6631、Fonterra社)を使用)の還元液の香気成分(風味物質)の変化を評価した。
(7-1)香気成分の測定用の試料として、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)を調製した(各試料の屈折糖度を5%に調整した)後に、これら試料(容量:8mL)と塩化ナトリウム(重量:3g)をバイアルビン(容量:20mL)に採取し、内標準物質として、メチルイソブチルケトン(MIBK)を添加して密封した。
(7-2)バイアルビンを60℃、40分間で加温した。
(7-3)固相マイクロファイバー(50/30μm DVB/CAR/PDMS)により、バイアルビンのヘッドスペースの「香気(におい)成分」を抽出した。
(7-4)ガスクロマトグラフ 質量分析計(GC/MS、カラム:DB-WAX UI)により、前記の固相マイクロファイバーを分析した。
(7-5)固相マイクロ抽出法(SPME法)により、香気成分の面積値を特定し、ナノ濾過膜の濃縮処理前に対するナノ濾過膜の濃縮処理後の香気成分の変化の割合(相対値)により、ナノ濾過膜の濃縮処理に伴う香気成分の変化の挙動を評価した。ここで、固相マイクロ抽出法は、揮発性の香気成分を高感度で迅速に分析できる技術である。
【0128】
香気成分の評価の項目として、ジメチルジサルファイド(Dimethyldisulfide:DMDS、タンパク質の劣化の指標物質)、ノナナール(Nonanal、脂質の劣化の指標物質)、ペンタナール(Pentanal、牧草臭の指標物質)、ペンタノール(1-Pentanol、牧草臭の指標物質)、およびアミノアセトフェノン(2-Aminoacetophenone、アルカリカゼイン臭の指標物質)を選抜した。
【0129】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくジメチルジサルファイドの面積値を1に設定し、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくジメチルジサルファイドの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図7に示した。
【0130】
図7によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ジメチルジサルファイドの含有量が43%変化(減少)していた。
【0131】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくノナナールの面積値を1に設定し、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくノナナールの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図8に示した。
【0132】
図8によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ノナナールの含有量が殆ど変化していなかった(22%変化(減少)していた)。
【0133】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタナールの面積値を1に設定し、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタナールの面積値の変化の割合(相対値)を算出し
て、
図9に示した。
【0134】
図9によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ペンタナールの含有量が殆ど変化していなかった(11%変化(増加)していた)。
【0135】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタノールの面積値を1に設定し、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくペンタノールの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図10に示した。
【0136】
図10によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、ペンタノールの含有量が殆ど変化していなかった(26%変化(増加)していた)。
【0137】
未処理のMPCの還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくアミノアセトフェノンの面積値を1に設定し、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)について、SPME法に基づくアミノアセトフェノンの面積値の変化の割合(相対値)を算出して、
図11に示した。
【0138】
図11によれば、MPCの粉体(NF膜、1.2倍)の還元液(Brix:5%)では、未処理のMPCの還元液(Brix:5%)に対して、アミノアセトフェノンの含有量が殆ど変化していなかった(40%変化(減少)していた)。
【0139】
以上の結果から、高タンパク質の乳原料から、高タンパク質の乳流体を調製し、この高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理すると、各種の香気成分が様々に変化することが分かった。このとき、特に、高タンパク質の乳原料から、高タンパク質の乳流体を調製し、この高タンパク質の乳流体をナノ濾過膜で濃縮処理すると、ジメチルジサルファイドが明らかに変化(減少)することが分かった。
【0140】
試験例8:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)のナノ濾過(NF)膜の濃縮処理の栄養成分の変化(パイロットプラント規模の実験)[2]
本試験は、試験例2と同様に、試験例1とは異なる乳原料(MPC)(MPC6631、Fonterra社)の還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理しながら、屈折糖度の濃縮倍率として、1.2倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製し、そのナノ濾過膜濃縮処理後のMPCの濃縮液を噴霧乾燥処理して得られたMPCの粉末を用いた。ナノ濾過膜濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)と得られたMPCの粉末について、代表的な栄養成分(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)を試験例4の(1)~(5)に記載の通りに評価(分析)して、ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)に対する、ナノ濾過膜の濃縮処理後のMPCの粉末の栄養成分の変化割合(栄養成分の損失の程度)を確認した。MPCの粉末は還元液(5重量%)として、試験例4の所定の分析法により測定した。
【0141】
[試験結果]
ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)および上記で得られたMPCの粉末(ナノ濾過膜の濃縮処理後)の還元液(5重量%)について、試験例4の所定の分析法により、ナノ濾過膜の処理前に対する処理後の栄養成分(全固形分、脂質、タンパク質、炭水化物(糖質)、灰分)の変化割合を確認し、その結果を
図12に示した。
【0142】
図12によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比
較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の全固形分の変化割合は、1%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0143】
図12によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の脂質の変化割合は、24%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0144】
図12によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のタンパク質の変化割合は、2%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0145】
図12によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の炭水化物(糖質)の変化割合は、19%の減少であった。
【0146】
図12によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)の灰分の変化割合は、2%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0147】
試験例9:ミルクタンパク質濃縮物(MPC)のナノ濾過(NF)膜の濃縮処理の塩類成分の変化(パイロットプラント規模の実験)[2]
本試験は、試験例2と同様に、試験例1とは異なる乳原料(MPC)(MPC6631、Fonterra社)の還元液(乳流体)(全固形分の含有量:10質量%)をナノ濾過膜で濃縮処理しながら、屈折糖度の濃縮倍率として、1.2倍に相当する濃度で、MPCの濃縮液(NF膜)を調製し、そのナノ濾過膜濃縮処理後のMPCの濃縮液を噴霧乾燥処理して得られたMPCの粉末を用いた。ナノ濾過膜濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)と得られたMPCの粉末について、代表的な塩類成分(Na、K、Mg、Ca、Cl、P)を試験例5の(1)および(2)に記載の通りに評価(分析)して、ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)に対する、ナノ濾過膜の濃縮処理後のMPCの粉末の塩類成分の変化割合(塩類成分の損失の程度)を確認した。MPCの粉末は還元液(5重量%)として、試験例5の所定の分析法により測定した。
【0148】
[試験結果]
ナノ濾過膜の濃縮処理前のMPCの還元液(乳流体)および上記で得られたMPCの粉末(ナノ濾過膜の濃縮処理後)の還元液(5重量%)について、試験例5の所定の分析法により、ナノ濾過膜の処理前に対する処理後の塩類成分(Na、K、Mg、Ca、Cl、P)の変化割合を確認し、その結果を
図13に示した。
【0149】
図13によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のNaの変化の割合は、4%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0150】
図13によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のKの変化の割合は、1%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0151】
図13によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)Mgの変化割合は、3%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0152】
図13によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のCaの変化割合は、5%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0153】
図13によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のClの変化割合は、1%の減少であった(殆ど変化しなかった)。
【0154】
図13によれば、MPCの還元液(ナノ濾過膜の処理前の高タンパク質の乳流体)に比較して、MPCの粉末(ナノ濾過膜の処理後の固体状の高タンパク質の乳原料)のPの変化割合は、4%の増加であった(殆ど変化しなかった)。
【0155】
試験例10:珈琲飲料における評価
下記表1に記載された原料をそれぞれ混合して容器に充填して封入した後、121℃で20分間殺菌して、ミルク珈琲(コーヒー)飲料を製造した。
【0156】
【0157】
上記で得られたそれぞれの飲料の風味について、専門パネルの5名で確認した。
【0158】
未処理のMPCが配合された珈琲飲料に比較して、本発明の方法により得られた固体状のMPC(NF膜、1.2倍)を配合した珈琲飲料は、専門パネルの5名(全員)が、タ
ンパク質臭や還元臭が感じられにくく、珈琲の好ましい風味がより感じられると評価した。
【0159】
また、珈琲飲料のように詳細には記載しないが、ゲル状食品(プリン等)、液体状食品(乳飲料、流動食等)、凍結状食品(アイスクリーム類等)、固体・粉体状食品(粉末飲料等)においても、珈琲飲料と同様に各食品の好ましい風味がより感じられると評価された。
【0160】
すなわち、本発明の方法により得られる乳原料は、スッキリ感が向上していることから、配合された食品本来の風味を阻害せず、好ましい風味を維持したまま食品中のタンパク質量を強化することが可能であることが分かった。