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特開2024-170511ブレード、加工システム及び加工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170511
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ブレード、加工システム及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/14 20060101AFI20241203BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20241203BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20241203BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F01D5/14
B23K26/364
F01D25/00 L
F02C7/00 D
F02C7/00 C
F01D25/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151649
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2022516541の分割
【原出願日】2020-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真路
(57)【要約】
【課題】流体に対するブレードの抵抗を適切に低減することが可能なブレードを提供する。
【手段】ブレード(BL)は、流体中で用いられるブレードであって、基材(BM)と、基材上に形成されている被膜層(TBC)とを備え、被膜層の表面には、複数の第1の溝(9)と複数の第2の溝(7)とが形成され、複数の第1の溝のピッチ(P9)は、前記複数の第2の溝のピッチ(P7)と異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中で用いられるブレードであって、
基材と、
前記基材上に形成されている被膜層と
を備え、
前記被膜層の表面には、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、
前記複数の第1の溝のピッチは、前記複数の第2の溝のピッチと異なる
ブレード。
【請求項2】
前記第1の溝の深さは、前記第2の溝の深さと異なる
請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
流体機械に用いられるブレードであって、
基材と、
前記基材上に形成されている被膜層と
を備え、
前記被膜層の表面には、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、
前記複数の第1の溝の深さは、前記複数の第2の溝の深さと異なる
ブレード。
【請求項4】
前記第1の溝の深さは、前記被膜層の厚みの0.2%以上且つ20%以下である。
請求項1から3のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項5】
前記第2の溝の深さは、前記被膜層の厚みの30%以下である。
請求項1から4のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項6】
前記第2の溝の深さは、前記第1の溝の深さよりも深い
請求項1から5のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項7】
前記第2の溝の深さは、前記第1の溝の深さの1.5倍以上且つ15倍以下である。
請求項1から6のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項8】
前記第1の溝の幅は、前記第2の溝の幅と異なる
請求項1から7のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項9】
前記第2の溝の幅は、前記第1の溝の幅以上である
請求項1から8のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項10】
前記第2の溝の幅は、前記第1の溝の幅の1倍以上且つ10倍以下である
請求項1から9のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項11】
前記第2の溝のピッチは、前記第1の溝のピッチよりも大きい
請求項1から10のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項12】
前記第2の溝のピッチは、前記第1の溝のピッチの20倍以上且つ30倍以下である
請求項1から11のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項13】
前記第2の溝のピッチは、前記第1の溝のピッチの整数倍である
請求項1から12のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項14】
前記複数の第2の溝のうちの隣り合う二つの第2の溝の間に、前記複数の第1の溝のうちの少なくとも二つが形成されている
請求項1から13のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項15】
前記複数の第2の溝のうちの少なくとも一つが前記被膜層の表面に沿って延びる方向は、前記複数の第1の溝のうちの少なくとも一つが前記被膜層の表面に沿って延びる方向と同じである
請求項1から14のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項16】
前記複数の第2の溝のうちの少なくとも一つが前記被膜層の表面に沿って延びる方向は、前記複数の第1の溝のうちの少なくとも一つが前記被膜層の表面に沿った延びる方向と異なる
請求項1から15のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項17】
前記複数の第2の溝のうちの少なくとも一つは、前記被膜層の表面に沿った第1の方向に沿って延びており、
前記複数の第2の溝のうちの少なくとも他の一つは、前記被膜層の表面に沿っており且つ前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って延びており、
前記複数の第1の溝のうち少なくとも一つは、前記第1及び第2の方向のいずれか一方に沿って延びている
請求項1から16のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項18】
前記複数の第2の溝のうちの少なくとも一つは、前記被膜層の表面に沿った第1の方向に沿って延びており、
前記複数の第2の溝のうちの少なくとも他の一つは、前記被膜層の表面に沿っており且つ前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って延びており、
前記複数の第1の溝のそれぞれは、前記第1及び第2方向のいずれか一方に沿って延びている
請求項1から17のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項19】
前記複数の第2の溝によって前記被膜層の表面が複数の領域に区画化されており、
前記複数の領域のうちの第1の領域に形成されている前記第1の溝の特性は、前記複数の領域のうちの前記第1の領域とは異なる第2の領域に形成されている前記第1の溝の特性と異なる
請求項1から18のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項20】
前記特性は、深さ、幅、ピッチ及び延びる方向のうちの少なくとも一つを含む
請求項19に記載のブレード。
【請求項21】
前記第1の溝は、前記被膜層の流体に対する抵抗を低減可能な溝を含み、
前記第2の溝は、前記被膜層の応力を緩和可能な溝を含み、
請求項1から20のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項22】
前記第1の溝は、リブレット構造を形成する溝を含む
請求項1から21のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項23】
前記被膜層は、流体からの熱の前記基材への伝達を低減する耐熱層を含む
請求項1から22のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項24】
前記耐熱層は、セラミックを含む
請求項23に記載のブレード。
【請求項25】
前記耐熱層は、多孔質材料で形成されている
請求項23又は24に記載のブレード。
【請求項26】
前記ブレードは、タービンブレードである
請求項1から25のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項27】
前記基材の前記被膜層側の面は、曲面を有する
請求項1から26のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項28】
前記被膜層の表面は、前記ブレードの使用中に前記流体と接する
請求項1から27のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項29】
前記複数の第1の溝の間隔は、前記複数の第2の溝の間隔とは異なる
請求項1から28のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項30】
流体中で用いられるブレードであって、
基材と、
前記基材上に形成されている被膜層と
を備え、
前記被膜層の表面には、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、
前記複数の第1の溝の間隔は、前記複数の第2の溝の間隔とは異なる
ブレード。
【請求項31】
基材上に形成されており且つ複数の第2の溝が形成されている被膜層の表面にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、
複数の第1の溝を、前記複数の第2の溝のピッチとは異なるピッチで前記被膜層の表面に形成するように、前記ビーム照射装置を制御する制御装置と
を備える加工システム。
【請求項32】
前記複数の第2の溝を計測する計測装置を更に備え、
前記制御装置は、前記計測装置が計測した前記複数の第2の溝に関する情報に基づいて、前記複数の第1の溝を形成するように、前記ビーム照射装置を制御する
請求項31に記載の加工システム。
【請求項33】
基材上に形成されている被膜層の表面に、複数の第2の溝を形成することと、
前記表面に、前記複数の第2の溝のピッチとは異なるピッチで、複数の第1の溝を形成することと
を含む加工方法。
【請求項34】
流体中で用いられるタービンブレードであって、
基材と、
前記基材上に形成され、前記基材に面する第1面とは反対側の第2面にリブレット構造が形成され、且つ、流体からの熱の前記基材への伝達を低減する耐熱層と
を備えるタービンブレード。
【請求項35】
前記耐熱層の前記第2面は、前記タービンブレードの使用中に前記流体と接する
請求項34に記載のタービンブレード。
【請求項36】
前記リブレット構造は、前記第2面に沿った第1方向に延び且つ前記第2面から突き出す凸状構造体が、前記第2面に沿っており且つ前記第1方向に交差する第2方向に沿って複数並んだ構造を含む
請求項34又は35に記載のタービンブレード。
【請求項37】
前記複数の凸状構造体のうちの前記第2方向に沿って隣り合う二つの凸状構造体の間の凹状領域の表面は、平面及び曲面の少なくとも一方を含む
請求項36に記載のタービンブレード。
【請求項38】
前記凹状領域の表面は、前記隣り合う二つの凸状構造体の一方に接続される第1曲面と、前記隣り合う二つの凸状構造体の他方に接続される第2曲面と、前記第1及び第2曲面を接続する平面とを含む
請求項37に記載のタービンブレード。
【請求項39】
前記第1及び第2曲面の前記第2方向におけるサイズは、前記隣り合う二つの凸状構造体の前記第2方向における間隔よりも小さい
請求項38に記載のタービンブレード。
【請求項40】
前記第1及び第2曲面の少なくとも一方の曲率半径は、1マイクロメートルから9マイクロメートルの範囲である
請求項38又は39に記載のタービンブレード。
【請求項41】
前記複数の凸状構造体のうちの少なくとも一つは、互いに反対側を向いた一対の側面と、前記一対の側面に交差し且つ前記一対の側面を当該一対の側面の端部で接続する上面とを備える
請求項36から40のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項42】
前記上面は、平面及び曲面の少なくとも一方を含む
請求項41に記載のタービンブレード。
【請求項43】
前記上面は、前記一対の側面にそれぞれ接続される一対の曲面と、前記一対の曲面を接続する平面とを含む
請求項41又は42に記載のタービンブレード。
【請求項44】
前記一対の曲面の曲率半径は、1マイクロメートルから9マイクロメートルの範囲内である
請求項43に記載のタービンブレード。
【請求項45】
前記上面の前記第2方向におけるサイズは、少なくとも、前記隣り合う二つの凸状構造体の前記第2方向における間隔の1%から9%の範囲内である
請求項41から44のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項46】
前記第2面には、前記リブレット構造を構成する複数の第1の溝が形成されており、
前記第2面には、前記複数の第1の溝のピッチとは異なるピッチで、複数の第2の溝が形成されている
請求項34から45のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項47】
前記第2面には、前記リブレット構造を構成する複数の第1の溝が形成されており、
前記第2面には、前記複数の第1の溝の深さとは異なる深さを有する複数の第2の溝が形成されている
請求項34から46のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項48】
前記耐熱層は、セラミックを含む
請求項34から47のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項49】
前記耐熱層は、多孔質材料で形成されている
請求項34から48のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項50】
前記基材の前記耐熱層側の面は、曲面を有する
請求項34から49のいずれか一項に記載のタービンブレード。
【請求項51】
基材上に形成された、流体からの熱の前記基材への伝達を低減する耐熱層の表面に、エネルギビームを照射するビーム照射装置と、
前記表面にリブレット構造を形成するように前記ビーム照射装置を制御する制御装置と
を備える加工システム。
【請求項52】
流体中で用いられるブレードであって、
基材の表面にリブレット構造を形成し、
前記リブレット構造が形成されている前記表面に被覆層を形成してなる
ブレード。
【請求項53】
流体中で用いられるブレードであって、
表面にリブレット構造が形成されている基材と、
前記リブレット構造が形成されている前記表面に形成されている被膜層と
を備えるブレード。
【請求項54】
前記リブレット構造は、前記表面に沿った第1方向に延び且つ前記表面から突き出す凸状構造体が、前記表面に沿っており且つ前記第1方向に交差する第2方向に沿って複数並んだ構造を含む
請求項52又は53に記載のブレード。
【請求項55】
前記複数の凸状構造体のうちの前記第2方向に沿って隣り合う二つの凸状構造体の間の凹状領域の表面は、平面及び曲面の少なくとも一方を含む
請求項54に記載のブレード。
【請求項56】
前記凹状領域の表面は、前記隣り合う二つの凸状構造体の一方に接続される第1曲面と、前記隣り合う二つの凸状構造体の他方に接続される第2曲面と、前記第1及び第2曲面を接続する平面とを含む
請求項55に記載のブレード。
【請求項57】
前記第1及び第2曲面の前記第2方向におけるサイズは、前記隣り合う二つの凸状構造体の前記第2方向における間隔よりも小さい
請求項56に記載のブレード。
【請求項58】
前記第1及び第2曲面の少なくとも一方の曲率半径は、1マイクロメートルから9マイクロメートルの範囲内である
請求項56又は57に記載のブレード。
【請求項59】
前記複数の凸状構造体のうちの少なくとも一つは、互いに反対側を向いた一対の側面と、前記一対の側面に交差し且つ前記一対の側面を当該一対の側面の端部で接続する上面とを備える
請求項54から58のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項60】
前記上面は、平面及び曲面の少なくとも一方を含む
請求項59に記載のブレード。
【請求項61】
前記上面は、前記一対の側面にそれぞれ接続される一対の曲面と、前記一対の曲面を接続する平面とを含む
請求項59又は60に記載のブレード。
【請求項62】
前記一対の曲面の曲率半径は、1マイクロメートルから9マイクロメートルの範囲内である
請求項61に記載のブレード。
【請求項63】
前記上面の前記第2方向におけるサイズは、前記隣り合う二つの凸状構造体の前記第2方向における間隔の1%から9%の範囲内である
請求項59から62のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項64】
前記被膜層は、前記基材への焼入れにより形成される
請求項52から63のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項65】
流体中で用いられるブレードであって、
基材を備え、
前記基材には、前記基材の表面上の第1区画に第1ピッチ方向に並んだ複数の第1の溝と、前記基材の前記表面上の前記第1区画に隣接する第2区画に前記第1ピッチ方向と異なる第2ピッチ方向に並んだ複数の第2の溝とが形成されている
ブレード。
【請求項66】
流体中で用いられるブレードであって、
基材と、
前記基材上に形成されている被膜層と
を備え、
前記被膜層には、前記被膜層の表面上の第1区画に第1ピッチ方向に並んだ複数の第1の溝と、前記被膜層の前記表面上の前記第1区画に隣接する第2区画に前記第1ピッチ方向と異なる第2ピッチ方向に並んだ複数の第2の溝とが形成されている
ブレード。
【請求項67】
前記第1の溝と前記第2の溝とは、前記流体に接触する
請求項65又は66に記載のブレード。
【請求項68】
基材の表面にリブレット構造を形成することと、
前記リブレット構造が形成されている前記表面に、被膜層を形成することと
を含む加工方法。
【請求項69】
流体中で用いられるタービンブレードであって、
請求項1から30及び52から67のいずれか一項に記載のブレードを備える
タービンブレード。
【請求項70】
請求項34から50及び69のいずれか一項に記載のタービンブレードを備える
タービン機械。
【請求項71】
前記タービン機械は、発電機を駆動する
請求項70に記載のタービン機械。
【請求項72】
前記タービン機械は、ジェットエンジンである
請求項70に記載のタービン機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タービンブレード等のブレード、並びに、ブレードを加工する加工システム及び加工方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレードの一例として、タービンに用いられるタービンブレードがあげられる。例えば、特許文献1には、耐熱層が表面に形成されたタービンブレードが記載されている。このようなタービンブレード等のブレードは、流体に対するブレードの抵抗を適切に低減することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第2283169号
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、流体中で用いられるブレードであって、基材と、前記基材上に形成されている被膜層とを備え、前記被膜層の表面には、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、前記複数の第1の溝のピッチは、前記複数の第2の溝のピッチと異なるブレードが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、流体機械に用いられるブレードであって、基材と、前記基材上に形成されている被膜層とを備え、前記被膜層の表面には、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、前記複数の第1の溝の深さは、前記複数の第2の溝の深さと異なるブレードが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、流体中で用いられるブレードであって、基材と、前記基材上に形成されている被膜層とを備え、前記被膜層の表面には、複数の第1の溝と複数の第2の溝とが形成され、前記複数の第1の溝の間隔は、前記複数の第2の溝の間隔とは異なるブレードが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、基材上に形成されており且つ複数の第2の溝が形成されている被膜層の表面にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、複数の第1の溝を、前記複数の第2の溝のピッチとは異なるピッチで前記被膜層の表面に形成するように、前記ビーム照射装置を制御する制御装置とを備える加工システムが提供される。
【0008】
第5の態様によれば、基材上に形成されている被膜層の表面に、複数の第2の溝を形成することと、前記表面に、前記複数の第2の溝のピッチとは異なるピッチで、複数の第1の溝を形成することとを含む加工方法が提供される。
【0009】
第6の態様によれば、流体中で用いられるタービンブレードであって、基材と、前記基材上に形成され、前記基材に面する第1面とは反対側の第2面にリブレット構造が形成され、且つ、流体からの熱の前記基材への伝達を低減する耐熱層とを備えるタービンブレードが提供される。
【0010】
第7の態様によれば、基材上に形成された、流体からの熱の前記基材への伝達を低減する耐熱層の表面に、エネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記表面にリブレット構造を形成するように前記ビーム照射装置を制御する制御装置とを備える加工システムが提供される。
【0011】
第8の態様によれば、流体中で用いられるブレードであって、基材の表面にリブレット構造を形成し、前記リブレット構造が形成されている前記表面に被覆層を形成してなるブレードが提供される。
【0012】
第9の態様によれば、流体中で用いられるブレードであって、表面にリブレット構造が形成されている基材と、前記リブレット構造が形成されている前記表面に形成されている被膜層とを備えるブレードが提供される。
【0013】
第10の態様によれば、流体中で用いられるブレードであって、基材を備え、前記基材には、前記基材の表面上の第1区画に第1ピッチ方向に並んだ複数の第1の溝と、前記基材の前記表面上の前記第1区画に隣接する第2区画に前記第1ピッチ方向と異なる第2ピッチ方向に並んだ複数の第2の溝とが形成されているブレードが提供される。
【0014】
第11の態様によれば、流体中で用いられるブレードであって、基材と、前記基材上に形成されている被膜層とを備え、前記被膜層には、前記被膜層の表面上の第1区画に第1ピッチ方向に並んだ複数の第1の溝と、前記被膜層の前記表面上の前記第1区画に隣接する第2区画に前記第1ピッチ方向と異なる第2ピッチ方向に並んだ複数の第2の溝とが形成されているブレードが提供される。
【0015】
第12の態様によれば、基材の表面にリブレット構造を形成することと、前記リブレット構造が形成されている前記表面に、被膜層を形成することとを含む加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本実施形態の加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
図3図3は、タービンの外観を示す斜視図である。
図4図4は、タービンブレードの外観を示す斜視図である。
図5図5は、タービンブレードの構造を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態の加工ヘッドの構造を示す断面図である。
図7図7は、検出器に入射する計測光と、検出器が検出した干渉光とを示すタイミングチャートである。
図8図8(a)は、リブレット構造を示す斜視図であり、図8(b)は、リブレット構造を示す断面図(図8(a)のVIII-VIII’断面図)であり、図8(c)は、リブレット構造を示す上面図である。
図9図9(a)は、リブレット構造を形成するためにタービンブレードに照射される加工光ELを示す断面図であり、図9(b)は、タービンブレードの表面上での加工光の照射位置の移動軌跡を示す平面図である。
図10図10は、リブレット構造を示す斜視図である。
図11図11は、リブレット構造を示す斜視図である。
図12図12は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図13図13は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図14図14は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図15図15は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図16図16は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図17図17は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図18図18は、第1変形例で形成されるリブレット構造の一例を示す断面図である。
図19図19(a)は、複数の溝が形成されたタービンブレードを示す断面図であり、図19(b)は、複数の溝が形成されたタービンブレードを示す上面図である。
図20図20は、溝とリブレット構造との双方が形成されたタービンブレードを示す断面図である。
図21図21は、溝とリブレット構造との双方が形成されたタービンブレードを示す斜視図である。
図22図22は、溝とリブレット構造との双方が形成されたタービンブレードを示す上面図である。
図23図23は、リブレット構造と、リブレット構造の溝よりも浅い溝との双方が形成されたタービンブレードを示す斜視図である。
図24図24は、溝とリブレット構造との双方が形成されたタービンブレードを示す上面図である。
図25図25は、溝とリブレット構造との双方が形成されたタービンブレードを示す上面図である。
図26図26は、リブレット構造が形成されたタービンブレードを示す上面図である。
図27図27は、リブレット構造が形成されたラジアル型タービンブレードを示す斜視図である。
図28図28は、タービンブレードが組み込まれるタービン機械を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、ブレード、加工システム及び加工方法の実施形態について説明する。以下では、加工光ELを用いた加工処理を行う加工システムSYSを用いて、ブレード、加工システム及び加工方法の実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0018】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0019】
(1)加工システムSYSの構造
初めに、図1及び図2を参照しながら、本実施形態の加工システムSYSの構造について説明する。図1は、本実施形態の加工システムSYSの構造を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態の加工システムSYSのシステム構成を示すシステム構成図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、加工システムSYSは、加工装置1と、加工光源21と、計測光源22と、ステージ装置3と、制御装置4とを備えている。加工装置1及びステージ装置3の少なくとも一部は、筐体5の内部空間に収容されている。筐体5の内部空間は、窒素ガス等のパージガスでパージされていてもよいし、パージガスでパージされていなくてもよい。筐体5の内部空間は、真空引きされてもよいし、真空引きされていなくてもよい。但し、加工装置1及びステージ装置3は、筐体5の内部空間に収容されていなくてもよい。つまり加工システムSYSは、加工装置1及びステージ装置3を収容する筐体5を備えていなくてもよい。
【0021】
加工装置1は、制御装置4の制御下で、加工対象物であるワークWを加工可能である。ワークWは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、半導体(例えば、シリコン)であってもよいし、樹脂であってもよいし、複合材料(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)及び塗料(一例として基材に塗布された塗料層)等の少なくとも一つ)であってもよいし、ガラスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。
【0022】
本実施形態では、加工装置1は、ワークWの一例であるタービンブレードBLを加工してもよい。タービンブレードBLは、流体機械の一例であるタービンTに用いられる部材である。具体的には、タービンブレードBLは、タービンTの羽根を構成するブレード状の部材である。タービンTの一例が図3及び図4に示されている。図3は、タービンTの外観を示す斜視図である。図4は、タービンブレードBLの外観を示す斜視図である。図3及び図4に示すように、タービンTは、複数のタービンブレードBLを備えている。タービンブレードBLは、シャンク91と、シャンク91に結合され且つシャンク91からタービンTの半径方向外側に延びるブレード本体92とを含む。シャンク91及びブレード本体92の少なくとも一方は、単一の金属から構成されていてもよい。シャンク91及びブレード本体92の少なくとも一方は、複数の金属から構成されていてもよい。シャンク91及びブレード本体92の少なくとも一方は、既存の製造方法(例えば、鋳造、鍛造、付加加工、除去加工及び機械加工のうちの少なくとも一つを用いた製造方法)によって製造されてもよい。シャンク91及びブレード本体92が一体的に製造されていてもよい。或いは、別々に製造されたシャンク91及びブレード本体92が、既存の結合方法(例えば、溶接、ロウ付け及び接着等の少なくとも一つを用いた結合方法)によって結合されてもよい。複数のタービンブレードBLがそれぞれ備える複数のシャンク91は、互いに結合されていてもよい。結合された複数のシャンク91は、回転可能なロータRTの少なくとも一部を構成していてもよい。
【0023】
ブレード本体92は、シャンク91のプラットフォーム911から、タービンTの半径方向外側に延びる。プラットフォーム911は、正圧側プラットフォーム9111と、負圧側プラットフォーム9112とを含む。ブレード本体92は、正圧面921と、正圧面921とは反対側を向いた負圧面922と、シャンク91に結合される根本部923と、根本部923とは反対側の端部を構成する先端部924とを含む。ブレード本体92は更に、正圧面921と負圧面922との間に位置する前縁面925と、前縁面925とは反対側において正圧面921と負圧面922との間に位置する後縁面926とを含む。正圧面921、負圧面922、前縁面925及び後縁面926のうちの少なくとも一つの表面は、曲面を含んでいてもよい。例えば、図4に示す例では、少なくとも正圧面921及び負圧面922のそれぞれの表面は、曲面を含んでいる。
【0024】
尚、タービンTは、ロータRTとタービンブレードBLとを一体的に形成されたものであってもよい。
【0025】
タービンTは、タービンTに供給される流体の流れを用いて回転可能である。具体的には、タービンTには、流体(例えば、水、蒸気、空気及びガスの少なくとも一つ)が供給される。タービンTに供給された流体は、複数のタービンブレードBLのそれぞれの表面に沿って流れる。このため、タービンブレードBLは、流体中で用いられる。その結果、流体の運動エネルギは、複数のタービンブレードBLによって、タービンTの回転エネルギに変換される。このようなタービンTの一例として、流体として蒸気を用いる蒸気タービン及び流体としてガスを用いるガスタービンの少なくとも一方があげられる。このようなタービンTの他の一例として、流体として水を用いる水力タービン及び流体として空気を用いる浮力タービンの少なくとも一方があげられる。また、タービンTは、その回転によって流体の流れを生成するものであってもよい。
【0026】
タービンブレードBLに供給される流体の温度は、高い可能性がある。例えば、タービンブレードBLがジェットエンジンに用いられる場合(つまり、タービンブレードBLがガスタービンに用いられる場合)には、タービンブレードBLには、流体として、高温の燃焼ガスが供給される。この場合、タービンブレードBLを構成する基材BMの熱に対する影響を低減するために、タービンブレードBLには、耐熱処理が施されていてもよい。具体的には、タービンブレードBLの構造を示す断面図(図4のIV-IV’断面図)である図5に示すように、タービンブレードBLは、ブレード状の形状を有する基材BMと、基材BMの表面に形成された耐熱層TBCとを備えていてもよい。耐熱層TBCは、基材BMの表面のうち流体からの熱の影響を受ける部分に形成される。耐熱層TBCは、流体からの熱の基材BMへの伝達を低減するための被膜層である。このため、タービンブレードBLは、タービンブレードBLの使用中には(つまり、タービンブレードBLに流体が供給されている期間中には)、耐熱層TBCを介して流体に接する。つまり、タービンブレードBLの使用中には、耐熱層TBC(より具体的には、耐熱層TBCのうち基材BMに面する面とは反対側の面であり、外部に露出している耐熱層TBCの表面)が流体に接する。その結果、流体と基材BMとの間に存在する耐熱層TBCにより、流体からの熱の基材BMへの伝達が低減される。このため、基材BMの熱に対する影響が低減される。このような耐熱層TBCの一例として、セラミックを含む層があげられる。セラミックを含む層は、例えば、多孔質材料で形成される層であってもよい。
【0027】
尚、図5に示す例では、上述したように正圧面921及び負圧面922のそれぞれが曲面を含んでいるがゆえに、基材BM及び耐熱層TBCの表面もまた曲面を含んでいる。つまり、耐熱層TBCに面する基材BMの表面は、曲面を含む。耐熱層TBCの外部に露出した表面もまた、曲面を含む。但し、正圧面921及び負圧面922が曲面を含んでいるか否かに関わらず、基材BM及び耐熱層TBCの表面は、曲面を含んでいてもよいし、曲面を含んでいなくてもよい。尚、曲面は、円柱の一部のように表面上の各点の曲率が一方向に沿ってのみ変化する曲面であってもよいし、球の一部のように表面上の各点の曲率が二方向に沿って変化する曲面であってもよい。基材BM及び耐熱層TBCの表面は、平面であってもよい。
【0028】
再び図1及び図2において、加工装置1は、ワークWを加工するために、ワークWに対して加工光ELを照射する。このため、加工装置1は、ビーム照射装置と称されてもよい。加工光ELは、ワークWに照射されることでワークWを加工可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。本実施形態では、加工光ELがレーザ光である例を用いて説明を進めるが、加工光ELは、レーザ光とは異なる種類の光であってもよい。更に、加工光ELの波長は、ワークWに照射されることでワークWを加工可能である限りは、どのような波長であってもよい。例えば、加工光ELは、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光、紫外光及び極端紫外光等の少なくとも一つ)であってもよい。加工光ELは、パルス光(例えば、発光時間がピコ秒以下のパルス光)を含んでいてもよい。或いは、加工光ELは、パルス光を含んでいなくてもよい。言い換えると、加工光ELは、連続光であってもよい。
【0029】
加工装置1は、ワークWに加工光ELを照射することでワークWの一部を除去する除去加工を行ってもよい。除去加工を行う場合には、加工装置1は、後に図8(a)から図8(c)を参照しながら詳述するリブレット構造RBをワークWに形成してもよい。リブレット構造RBは、ワークWの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗及び乱流摩擦抵抗の少なくとも一方)を低減可能な構造である。尚、ここでいう流体とは、ワークWの表面に対して流れている媒質(例えば、気体及び液体の少なくとも一方)を意味する。例えば、媒質自体が静止している状況下でワークWの表面が媒質に対して移動する場合には、この媒質を流体と称してもよい。
【0030】
加工装置1は、除去加工に加えて又は代えて、ワークWに加工光ELを照射することでワークWに新たな構造物を付加する付加加工を行ってもよい。この場合、加工装置1は、付加加工を行うことで、上述したリブレット構造RBをワークWの表面に形成してもよい。或いは、加工装置1は、除去加工及び付加加工の少なくとも一方に加えて又は代えて、ワークWに工具を接触させることでワークWを加工する機械加工を行ってもよい。この場合、加工装置1は、機械加工を行うことで、上述したリブレット構造RBをワークWの表面に形成してもよい。
【0031】
加工光ELは、加工光ELを生成する加工光源21から、不図示の光伝搬部材(例えば、光ファイバ及びミラーの少なくとも一方)を介して加工装置1に供給される。加工装置1は、加工光源21から供給される加工光ELを、ワークWに照射する。
【0032】
加工装置1は更に、制御装置4の制御下で、ワークWを計測可能である。加工装置1は、ワークWを計測するために、ワークWに対して計測光MLを照射する。計測光MLは、ワークWに照射されることでワークWを計測可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。本実施形態では、計測光MLがレーザ光である例を用いて説明を進めるが、計測光MLは、レーザ光とは異なる種類の光であってもよい。更に、計測光MLの波長は、ワークWに照射されることでワークWを計測可能である限りは、どのような波長であってもよい。例えば、計測光MLは、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光、紫外光及び極端紫外光等の少なくとも一つ)であってもよい。計測光MLは、パルス光(例えば、発光時間がピコ秒以下のパルス光)を含んでいてもよい。或いは、計測光MLは、パルス光を含んでいなくてもよい。言い換えると、計測光MLは、連続光であってもよい。
【0033】
計測光MLの波長は、加工光ELの波長と異なっていてもよい。例えば、計測光MLの波長は、加工光ELの波長よりも短くてもよい。一例として、計測光MLとして266nm又は355nmの波長帯の光が用いられ、加工光ELとして532nm、1μm又は10μmの波長帯の光が用いられてもよい。この場合、ワークW上での計測光MLのスポット径が、ワークW上での加工光ELのスポット径よりも小さくなる。その結果、加工光ELによる加工分解能よりも、計測光MLによる計測分解能が高くなる。但し、計測光MLの波長は、加工光ELの波長よりも短くなくてもよい。計測光MLの波長は、加工光ELの波長と同じであってもよい。
【0034】
計測光MLは、計測光MLの発生源である計測光源22から、不図示の光伝搬部材(例えば、光ファイバ及びミラーの少なくとも一方)を介して加工装置1に供給される。加工装置1は、計測光源22から供給される計測光MLを、ワークWに照射する。
【0035】
本実施形態では、計測光源22は、光コム光源を含んでいてもよい。光コム光源は、周波数軸上で等間隔に並んだ周波数成分を含む光(以降、“光周波数コム”と称する)をパルス光として生成可能な光源である。この場合、計測光源22は、周波数軸上で等間隔に並んだ周波数成分を含むパルス光を、計測光MLとして射出する。但し、計測光源22は、光コム光源とは異なる光源を含んでいてもよい。
【0036】
図2に示す例では、加工システムSYSは、複数の計測光源22を備えている。例えば、加工システムSYSは、計測光源22#1と、計測光源22#2とを備えていてもよい。複数の計測光源22は、互いに位相同期され且つ干渉性のある複数の計測光MLをそれぞれ射出する。例えば、複数の計測光源22は、発振周波数が異なっていてもよい。このため、複数の計測光源22がそれぞれ射出する複数の計測光MLは、パルス周波数(例えば、単位時間当たりのパルス光の数であり、パルス光の発光周期の逆数)が異なる複数の計測光MLとなる。一例として、計測光源22#1は、パルス周波数が25GHzとなる計測光ML#1を射出し、計測光源22#2は、パルス周波数が25GHz+α(例えば、+100kHz)となる計測光ML#2を射出してもよい。但し、加工システムSYSは、単一の計測光源22を備えていてもよい。
【0037】
加工装置1は、計測光MLを用いて、ワークWの状態を計測可能であってもよい。ワークWの状態は、ワークWの位置を含んでいてもよい。ワークWの位置は、ワークWの表面の位置を含んでいてもよい。ワークWの表面の位置は、ワークWの表面を細分化した各面部分のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つにおける位置を含んでいてもよい。ワークWの表面の位置は、ワークWの表面を細分化した各面部分のθX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つにおける位置を含んでいてもよい。尚、各面部分のθX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つにおける位置は、各面部分の姿勢(つまり、各面部分の向き(例えば、各面部分の法線の向き)であり、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに対する各面部分の傾斜量と実質的に等価)と等価であるとみなしてもよい。この場合、ワークの状態は、実質的には、ワークWの形状(例えば、3次元形状)を含んでいるとも言える。また、ワークWの状態は、ワークWの大きさ(例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つにおける大きさ)を含んでいてもよい。
【0038】
ワークWを加工及び計測するために、加工装置1は、ワークWに対して加工光EL及び計測光MLのそれぞれを射出する加工ヘッド11と、加工ヘッド11を移動させるヘッド駆動系12と、位置計測装置13とを備える。更に、加工ヘッド11は、加工光学系111と、計測光学系112と、射出光学系113とを備える。尚、加工ヘッド11の構造については、後に詳述する。
【0039】
ヘッド駆動系12は、制御装置4の制御下で、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つに沿って加工ヘッド11を移動させる。尚、ヘッド駆動系12は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも一つに加えて又は代えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って加工ヘッド11を移動させてもよい。
【0040】
加工ヘッド11が移動すると、後述するステージ32(更には、ステージ32に載置されたワークW)と加工ヘッド11との位置関係が変わる。つまり、ステージ32が移動すると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との相対位置が変わる。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11が備える各光学系(つまり、加工光学系111、計測光学系112及び射出光学系113の少なくとも一つ)との位置関係が変わる。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ワークW上での加工光EL及び計測光MLのそれぞれの照射位置が変わる。
【0041】
位置計測装置13は、加工ヘッド11の位置を計測可能なセンサである。位置計測装置13は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計の少なくとも一方を含んでいてもよい。制御装置4は、位置計測装置13による計測結果に基づいて、加工ヘッド11を移動させてもよい。つまり、制御装置4は、位置計測装置13による計測結果に基づいて、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係を変更してもよい。
【0042】
ステージ装置3は、定盤31と、ステージ32と、ステージ駆動系33と、位置計測装置34とを備える。定盤31は、不図示の支持面上に配置される。定盤31上には、ステージ32が配置される。支持面と定盤31との間には、定盤31の振動のステージ32への伝達を低減するための不図示の防振装置が設置されていてもよい。
【0043】
ステージ32上には、ワークWが載置される。ステージ32は、載置されたワークWを保持してもよい。例えば、ステージ32は、ワークWを真空吸着及び/又は静電吸着することで、ワークWを保持してもよい。或いは、ステージ32は、載置されたワークWを保持しなくてもよい。
【0044】
ステージ駆動系33は、制御装置4の制御下で、ステージ32を移動させる。具体的には、ステージ駆動系33は、定盤31及び加工装置1の少なくとも一方に対してステージ32を移動させる。例えば、ステージ駆動系33は、制御装置4の制御下で、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってステージ32を移動させてもよい。
【0045】
ステージ32が移動すると、ステージ32(更には、ステージ32に載置されたワークW)と加工ヘッド11との位置関係が変わる。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11が備える各光学系との位置関係が変わる。更には、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係が変わると、ワークW上での加工光EL及び計測光MLのそれぞれの照射位置が変わる。
【0046】
位置計測装置34は、ステージ32の位置を計測可能なセンサである。位置計測装置34は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計の少なくとも一方を含んでいてもよい。制御装置4は、位置計測装置34による計測結果に基づいて、ステージ32を移動させてもよい。つまり、制御装置4は、位置計測装置34による計測結果に基づいて、ステージ32及びワークWと加工ヘッド11との位置関係を変更してもよい。
【0047】
制御装置4は、加工システムSYSの動作を制御する。例えば、制御装置4は、ワークWの加工条件を設定すると共に、設定した加工条件に従ってワークWが加工されるように加工装置1及びステージ装置3を制御する。例えば、制御装置4は、ワークWの計測条件を設定すると共に、設定した計測条件に従ってワークWが計測されるように加工装置1及びステージ装置3を制御する。
【0048】
制御装置4は、例えば、演算装置と記憶装置とを含んでいてもよい。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit))の少なくとも一方を含んでいてもよい。制御装置4は、演算装置がコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置4が行うべき後述する動作を制御装置4(例えば、演算装置)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSに後述する動作を行わせるように制御装置4を機能させるためのコンピュータプログラムである。演算装置が実行するコンピュータプログラムは、制御装置4が備える記憶装置(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置4に内蔵された又は制御装置4に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、演算装置は、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置4の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0049】
制御装置4は、加工システムSYSの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置4は、加工システムSYS外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置4と加工システムSYSとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置4と加工システムSYSとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置4は、ネットワークを介して加工システムSYSにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSは、制御装置4からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。或いは、制御装置4が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSの内部に設けられている一方で、制御装置4が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSの外部に設けられていてもよい。
【0050】
尚、演算装置が実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置4(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置4内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置4が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0051】
(2)加工ヘッド11の構造
続いて、図6を参照しながら、加工ヘッド11の構造の一例について説明する。図6は、加工ヘッド11の構造の一例を示す断面図である。
【0052】
図6に示すように、加工ヘッド11は、加工光学系111と、計測光学系112と、射出光学系113とを備える。加工光学系111、計測光学系112及び射出光学系113は、筐体114内に収容されている。但し、加工光学系111、計測光学系112及び射出光学系113の少なくとも一つが、筐体114内に収容されていなくてもよい。
【0053】
加工光学系111は、加工光源21から射出された加工光ELが入射する光学系である。加工光学系111は、加工光学系111に入射した加工光ELを、射出光学系113に向けて射出する光学系である。つまり、加工光学系111は、加工光源21から射出された加工光ELを、射出光学系113に導く光学系である。加工光学系111が射出した加工光ELは、射出光学系113を介してワークWに照射される。
【0054】
加工光学系111は、例えば、位置調整光学系1111と、角度調整光学系1112とを含んでいてもよい。位置調整光学系1111は、加工光学系111からの加工光ELの射出位置を調整可能である。位置調整光学系1111は、例えば、加工光ELの進行方向に対して傾斜可能な平行平面板を備え、平行平面板の傾斜角を変えることで加工光ELの射出位置を変更してもよい。角度調整光学系1112は、加工光学系111からの加工光ELの射出角度を調整可能である。角度調整光学系1112は、例えば、加工光ELの進行方向に対して傾斜可能なミラーを備え、このミラーの傾斜角を変えることで加工光ELの射出角度を変更してもよい。但し、加工光学系111は、位置調整光学系1111及び角度調整光学系1112の少なくとも一つを含んでいなくてもよい。加工光学系111は、位置調整光学系1111及び角度調整光学系1112の少なくとも一つに加えて又は代えて、その他の光学素子や光学部材を含んでいてもよい。
【0055】
加工光学系111から射出された加工光ELは、射出光学系113に入射する。射出光学系113は、ビームスプリッタ(例えば、偏光ビームスプリッタ)1131と、ガルバノミラー1132と、fθレンズ1133とを含む。
【0056】
ビームスプリッタ1131は、ビームスプリッタ1131に入射した加工光ELを、ガルバノミラー1132に向けて射出する。図6に示す例では、ビームスプリッタ1131に入射した加工光ELは、偏光分離面を通過することでガルバノミラー1132に向けて射出される。このため、図6に示す例では、加工光ELは、偏光分離面を通過可能な偏光方向(例えば、偏光分離面に対してp偏光となる偏光方向)を有する状態でビームスプリッタ1131の偏光分離面に入射する。
【0057】
ガルバノミラー1132には、ビームスプリッタ1131から射出された加工光ELが入射する。ガルバノミラー1132は、加工光ELを偏向する(つまり、加工光ELの射出角度を変更する)ことで、ワークW上での加工光ELの照射位置を変更する。例えば、ガルバノミラー1132は、X走査ミラー1132Xと、Y走査ミラー1132Yとを含む。X走査ミラー1132X及びY走査ミラー1132Yのそれぞれは、ガルバノミラー1132に入射する加工光ELの光路に対する角度が変更される傾斜角可変ミラーである。X走査ミラー1132Xは、ワークW上での加工光ELのX軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、加工光ELの光路に対するX走査ミラー1132Xの角度を変更する)ことで加工光ELを偏向する。Y走査ミラー1132Yは、ワークW上での加工光ELのY軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、加工光ELの光路に対するY走査ミラー1132Yの角度を変更する)ことで加工光ELを偏向する。
【0058】
fθレンズ1133には、ガルバノミラー1132からの加工光ELが入射する。fθレンズ1133は、ガルバノミラー1132からの加工光ELをワークWに照射するための光学系である。特に、fθレンズ1133は、ガルバノミラー1132からの加工光ELをワークW上に集光するための光学系である。このため、fθレンズ1133は、収斂状態の加工光ELをワークWに照射する。その結果、加工光ELによってワークWが加工される。
【0059】
計測光学系112は、計測光源22から射出された計測光MLが入射する光学系である。計測光学系112は、計測光学系112に入射した計測光MLを、射出光学系113に向けて射出する光学系である。つまり、計測光学系112は、計測光源22から射出された計測光MLを、射出光学系113に導く光学系である。計測光学系112が射出した計測光MLは、射出光学系113を介してワークWに照射される。
【0060】
計測光学系112は、例えば、ミラー1120と、ビームスプリッタ1121と、ビームスプリッタ1122と、検出器1123と、ビームスプリッタ1124と、ミラー1125と、検出器1126と、ミラー1127とを備える。
【0061】
計測光源22から射出された計測光MLは、ビームスプリッタ1121に入射する。具体的には、計測光源22#1から射出された計測光ML(以降、“計測光ML#1”と称する)は、ビームスプリッタ1121に入射する。計測光源22#2から射出された計測光ML(以降、“計測光ML#2”と称する)は、ミラー1120を介して、ビームスプリッタ1121に入射する。ビームスプリッタ1121は、ビームスプリッタ1121に入射した計測光ML#1及びML#2を、ビームスプリッタ1122に向けて射出する。
【0062】
ビームスプリッタ1122は、ビームスプリッタ1122に入射した計測光ML#1の一部である計測光ML#1-1を検出器1123に向けて反射する。ビームスプリッタ1122は、ビームスプリッタ1122に入射した計測光ML#1の他の一部である計測光ML#1-2をビームスプリッタ1124に向けて射出する。ビームスプリッタ1122は、ビームスプリッタ1122に入射した計測光ML#2の一部である計測光ML#2-1を検出器1123に向けて反射する。ビームスプリッタ1122は、ビームスプリッタ1122に入射した計測光ML#2の他の一部である計測光ML#2-2をビームスプリッタ1124に向けて射出する。
【0063】
ビームスプリッタ1122から射出された計測光ML#1-1及びML#2-1は、検出器1123に入射する。検出器1123は、計測光ML#1-1と計測光ML#2-1とが干渉することで生成される干渉光を検出する。具体的には、検出器1123は、干渉光を受光することで、干渉光を検出する。このため、検出器1123は、光を受光可能な受光素子(受光部であり、典型的には、光電変換素子)を備えていてもよい。検出器1123の検出結果は、制御装置4に出力される。
【0064】
ビームスプリッタ1122から射出された計測光ML#1-2及びML#2-2は、ビームスプリッタ1124に入射する。ビームスプリッタ1124は、ビームスプリッタ1124に入射した計測光ML#1-2の少なくとも一部をミラー1125に向けて射出する。ビームスプリッタ1124は、ビームスプリッタ1124に入射した計測光ML#2-2の少なくとも一部をミラー1127に向けて射出する。
【0065】
ビームスプリッタ1124から射出された計測光ML#1-2は、ミラー1125に入射する。ミラー1125に入射した計測光ML#1-2は、ミラー1125の反射面(反射面は、参照面と称されてもよい)によって反射される。具体的には、ミラー1125は、ミラー1125に入射した計測光ML#1-2をビームスプリッタ1124に向けて反射する。つまり、ミラー1125は、ミラー1125に入射した計測光ML#1-2を、その反射光である計測光ML#1-3としてビームスプリッタ1124に向けて射出する。ミラー1125から射出された計測光ML#1-3は、ビームスプリッタ1124に入射する。ビームスプリッタ1124は、ビームスプリッタ1124に入射した計測光ML#1-3をビームスプリッタ1122に向けて射出する。ビームスプリッタ1124から射出された計測光ML#1-3は、ビームスプリッタ1122に入射する。ビームスプリッタ1122は、ビームスプリッタ1122に入射した計測光ML#1-3を検出器1126に向けて射出する。
【0066】
一方で、ビームスプリッタ1124から射出された計測光ML#2-2は、ミラー1127に入射する。ミラー1127は、ミラー1127に入射した計測光ML#2-2を射出光学系113に向けて反射する。つまり、ミラー1127は、ミラー1127に入射した計測光ML#2-2を射出光学系113に向けて射出する。
【0067】
ミラー1127から射出された計測光ML#2-2は、射出光学系113に入射する。射出光学系113のビームスプリッタ1131は、ビームスプリッタ1131に入射した計測光ML#2-2を、ガルバノミラー1132に向けて射出する。図4に示す例では、ビームスプリッタ1131に入射した計測光ML#2-2は、偏光分離面において反射されることでガルバノミラー1132に向けて射出される。このため、図4に示す例では、計測光ML#2-2は、偏光分離面で反射可能な偏光方向(例えば、偏光分離面に対してs偏光となる偏光方向)を有する状態でビームスプリッタ1131の偏光分離面に入射する。
【0068】
ここで、上述したように、ビームスプリッタ1131には、計測光ML#2-2に加えて加工光ELが入射する。つまり、計測光ML#2-2及び加工光ELの双方がビームスプリッタ1131を通過する。ビームスプリッタ1131は、ビームスプリッタ1131に異なる方向からそれぞれ入射してきた加工光EL及び計測光ML#2-2を、同じ方向に向けて(つまり、同じガルバノミラー1132に向けて)射出する。従って、ビームスプリッタ1131は、実質的には、加工光EL及び計測光ML#2-2を合成する合成光学系として機能する。
【0069】
ガルバノミラー1132には、ビームスプリッタ1131から射出された計測光ML#2-2が入射する。ガルバノミラー1132は、計測光ML#2-2を偏向することで、ワークW上での計測光ML#2-2の照射位置を変更する。例えば、X走査ミラー1132Xは、ワークW上での計測光ML#2-2のX軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、計測光ML#2-2の光路に対するX走査ミラー1132Xの角度を変更する)ことで計測光ML#2-2を偏向する。Y走査ミラー1132Yは、ワークW上での計測光ML#2-2のY軸方向に沿った照射位置を変更するように揺動又は回転する(つまり、計測光ML#2-2の光路に対するY走査ミラー1132Yの角度を変更する)ことで計測光ML#2-2を偏向する。
【0070】
fθレンズ1133には、ガルバノミラー1132からの計測光ML#2-2が入射する。fθレンズ1133は、ガルバノミラー1132からの計測光ML#2-2をワークW上に集光するための光学系である。fθレンズ1133は、ガルバノミラー1132からの計測光ML#2-2をワークWに照射するための光学系である。計測光ML(具体的には、計測光ML#2-2)によってワークWが計測される。
【0071】
ここで、上述したように、ガルバノミラー1132には、計測光ML#2-2に加えて加工光ELが入射する。つまり、ガルバノミラー1132には、ビームスプリッタ1131が合成した加工光EL及び計測光ML#2-2が入射する。従って、計測光ML#2-2及び加工光ELの双方が同じガルバノミラー1132を通過する。このため、ガルバノミラー1132は、ワークW上での加工光ELの照射位置とワークW上での計測光ML#2-2の照射位置とを同期して変更可能である。つまり、ガルバノミラー1132は、ワークW上での加工光ELの照射位置とワークW上での計測光ML#2-2の照射位置とを連動して変更可能である。
【0072】
ワークWに計測光ML#2-2が照射されると、計測光ML#2-2の照射に起因した光がワークWから発生する。つまり、ワークWに計測光ML#2-2が照射されると、計測光ML#2-2の照射に起因した光がワークWから射出される。計測光ML#2-2の照射に起因した光(言い換えれば、計測光ML#2-2の照射に起因してワークWから射出される光)は、ワークWで反射された計測光ML#2-2(つまり、反射光)、計測光ML#2-2のワークWへの照射によって生じる散乱光、ワークWで回折された計測光ML#2-2(つまり、回折光)、及びワークWを透過した計測光ML#2-2(つまり、透過光)のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0073】
計測光ML#2-2の照射に起因してワークWから射出される光の少なくとも一部(以下、この光を“計測光ML#2-3”と称する)は、射出光学系113に入射する。射出光学系113に入射した計測光ML#2-3は、fθレンズ1133及びガルバノミラー1132を介して、ビームスプリッタ1131に入射する。ビームスプリッタ1131は、ビームスプリッタ1131に入射した計測光ML#2-3を、計測光学系112に向けて射出する。図6に示す例では、ビームスプリッタ1131に入射した計測光ML#2-3は、偏光分離面において反射されることで計測光学系112に向けて射出される。このため、図6に示す例では、計測光ML#2-3は、偏光分離面で反射可能な偏光方向を有する状態でビームスプリッタ1131の偏光分離面に入射する。
【0074】
ビームスプリッタ1131から射出された計測光ML#2-3は、計測光学系112のミラー1127に入射する。ミラー1127は、ミラー1127に入射した計測光ML#2-3をビームスプリッタ1124に向けて反射する。ビームスプリッタ1124は、ビームスプリッタ1124に入射した計測光ML#2-3の少なくとも一部をビームスプリッタ1122に向けて射出する。ビームスプリッタ1122は、ビームスプリッタ1122に入射した計測光ML#2-3の少なくとも一部を検出器1126に向けて射出する。
【0075】
上述したように、検出器1126には、計測光ML#2-3に加えて、計測光ML#1-3が入射する。つまり、検出器1126には、ワークWを介して検出器1126に向かう計測光ML#2-3と、ワークWを介することなく検出器1126に向かう計測光ML#1-3とが入射する。尚、計測光ML#1-3は、参照光と称されてもよい。検出器1126は、計測光ML#1-3と計測光ML#2-3とが干渉することで生成される干渉光を検出する。具体的には、検出器1126は、干渉光を受光することで、干渉光を検出する。このため、検出器1126は、光を受光可能な受光素子(受光部)を備えていてもよい。検出器1126の検出結果は、制御装置4に出力される。
【0076】
制御装置4は、検出器1123の検出結果及び検出器1126の検出結果に基づいて、ワークWの状態を算出する。ここで、図7を参照しながら、検出器1123の検出結果及び検出器1126の検出結果に基づいてワークWの状態を算出する原理について説明する。
【0077】
図7は、検出器1123に入射する計測光ML#1-1、検出器1123に入射する計測光ML#2-1、検出器1123が検出した干渉光、検出器1126に入射する計測光ML#1-3、検出器1126に入射する計測光ML#2-3及び検出器1126が検出した干渉光を示すタイミングチャートである。計測光ML#1のパルス周波数と計測光ML#2のパルス周波数とが異なるため、計測光ML#1-1のパルス周波数と計測光ML#2-1のパルス周波数とが異なる。従って、計測光ML#1-1と計測光ML#2-1との干渉光は、計測光ML#1-1を構成するパルス光と計測光ML#2-1を構成するパルス光とが同時に検出器1123に入射したタイミングに同期してパルス光が現れる干渉光となる。同様に、計測光ML#1-3のパルス周波数と計測光ML#2-3のパルス周波数とが異なる。従って、計測光ML#1-3と計測光ML#2-3との干渉光は、計測光ML#1-3を構成するパルス光と計測光ML#2-3を構成するパルス光とが同時に検出器1126に入射したタイミングに同期してパルス光が現れる干渉光となる。
【0078】
ここで、検出器1126が検出する干渉光を作るパルス光の位置(時間軸上の位置)は、加工ヘッド11とワークWとの位置関係に基づいて変動する。なぜならば、検出器1126が検出する干渉光は、ワークWを介して検出器1126に向かう計測光ML#2-3と、ワークWを介することなく検出器1126に向かう計測光ML#1-3との干渉光であるからである。一方で、検出器1123が検出する干渉光を作るパルス光の位置(時間軸上の位置)は、加工ヘッド11とワークWとの位置関係に基づいて変動することはない。このため、検出器1126が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1123が検出する干渉光を作るパルス光との時間差は、加工ヘッド11とワークWとの位置関係(典型的には、加工ヘッド11とワークWとの間の距離)を間接的に示していると言える。このため、制御装置4は、検出器1126が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1123が検出する干渉光を作るパルス光との時間差に基づいて、ワークWの状態を算出することができる。具体的には、制御装置4は、検出器1126が検出する干渉光を作るパルス光と検出器1123が検出する干渉光を作るパルス光との時間差に基づいて、ワークWのうち計測光ML#2-2が照射された部分の位置を算出することができる。つまり、制御装置4は、ワークWのうち計測光ML#2-2が照射された部分の位置に関する情報を求めることができる。更には、ワークWの複数個所に計測光ML#2-2が照射されれば及び/又はワークWの表面を走査するように計測光ML#2-2が照射されれば、制御装置4は、ワークWの形状も算出することができる。
【0079】
算出されたワークWの状態は、加工システムSYSを制御するために用いられてもよい。具体的には、算出されたワークWの状態は、加工装置1を制御するために用いられてもよい。算出されたワークWの状態は、加工ヘッド11を制御するために用いられてもよい。算出されたワークWの状態は、ヘッド駆動系12を制御するために用いられてもよい。算出されたワークWの状態は、ステージ装置3を制御するために用いられてもよい。算出されたワークWの状態は、ステージ駆動系33を制御するために用いられてもよい。
【0080】
例えば、制御装置4は、算出されたワークWの状態に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が所望の位置関係となるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を変更してもよい。つまり、制御装置4は、算出されたワークWの状態に基づいて、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係が所望の位置関係となるように、ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を変更可能な装置を制御してもよい。ワークWと加工ヘッド11との相対的な位置関係を変更可能な装置の一例として、ヘッド駆動系12及びステージ駆動系33の少なくとも一方があげられる。尚、「所望の位置関係」の一例として、ワークW上の所望位置に加工光EL及び/又は計測光MLが照射される位置関係があげられる。
【0081】
例えば、制御装置4は、算出されたワークWの状態に基づいて、ワークW上の所望位置に加工光ELが照射されるように、加工光ELの照射位置を変更してもよい。加工光ELの照射位置を変更可能な装置の一例として、加工光学系111の角度調整光学系1112、射出光学系113のガルバノミラー1132、ヘッド駆動系12及びステージ駆動系33があげられる。
【0082】
例えば、制御装置4は、算出されたワークWの状態に基づいて、ワークW上の所望位置に計測光MLが照射されるように、計測光MLの照射位置を変更してもよい。計測光MLの照射位置を変更可能な装置の一例として、加工光学系111の角度調整光学系1112、射出光学系113のガルバノミラー1132、ヘッド駆動系12及びステージ駆動系33があげられる。
【0083】
(3)リブレット構造RB
続いて、図8(a)から図8(b)を参照しながら、加工システムSYSによってワークWに形成されるリブレット構造RBについて説明する。図8(a)は、リブレット構造RBを示す斜視図であり、図8(b)は、リブレット構造RBを示す断面図(図8(a)のVIII-VIII’断面図)であり、図8(c)は、リブレット構造RBを示す上面図である。尚、以下では、特に、以下では、ワークWの一具体例であるタービンブレードBLに形成されるリブレット構造RBについて説明する。但し、タービンブレードBLとは異なるワークWに形成されるリブレット構造RBも同様の構造を有していてもよい。
【0084】
図8(a)から図8(c)に示すように、リブレット構造RBは、タービンブレードBLの表面(つまり、基材BM及び耐熱層TBCの少なくとも一方の表面)に沿った第1の方向に沿って延びる凸状構造体8が、タービンブレードBLの表面に沿っており且つ第1の方向に交差する第2方向に沿って複数配列された構造を含んでいてもよい。図8(a)から図8(c)に示す例では、リブレット構造RBは、X軸方向に沿って延びる凸状構造体8が、Y軸方向に沿って複数配列された構造を含んでいる。
【0085】
凸状構造体8は、凸状構造体8が延びる方向及び凸状構造体8が配列される方向の双方に交差する方向に沿って突き出た構造体である。凸状構造体8は、タービンブレードBLの表面から突き出た構造体である。図8(a)から図8(c)に示す例では、凸状構造体8は、Z軸方向に沿って突き出た構造体である。
【0086】
隣り合う凸状構造体8の間には、周囲と比較して窪んだ溝9が形成される。このため、リブレット構造RBは、タービンブレードBLの表面に沿った第1の方向に沿って延び且つタービンブレードBLの表面に沿っており且つ第1の方向に交差する第2方向に沿って配列された複数の溝9によって形成される構造を含んでいてもよい。
【0087】
上述したように、本実施形態の加工システムSYSは、除去加工を行うことでリブレット構造RBを形成する。このため、加工システムSYSは、タービンブレードBLのうち溝9が形成される部分を除去する除去加工を行うことで、リブレット構造RBを形成してもよい。つまり、加工システムSYSは、タービンブレードBLのうち凸状構造体8が形成される部分を残すようにタービンブレードBLの一部を除去する除去加工を行うことで、リブレット構造RBを形成してもよい。例えば、リブレット構造RBを形成するためにタービンブレードBLに照射される加工光ELを示す断面図である図9(a)及びタービンブレードBLの表面上での加工光ELの照射位置の移動軌跡を示す平面図である図9(b)に示すように、加工システムSYSは、タービンブレードBLの表面のうちの溝9が形成される部分に加工光ELが照射されるように、タービンブレードBLに加工光ELを照射してもよい。具体的には、加工システムSYSは、溝9が延びるX軸方向に沿って加工光ELの照射位置を移動させながらタービンブレードBLの表面に加工光ELを照射するスキャン動作と、タービンブレードBLの表面に加工光ELを照射することなく溝9が延びるX軸方向に交差するY軸に沿って加工光ELの照射位置を移動させるステップ動作とを繰り返すことで、リブレット構造RBを形成してもよい。この場合、加工システムSYSは、溝9を形成することでリブレット構造RBを形成している(つまり、凸状構造体8を形成している)とも言える。
【0088】
再び図8(a)から図8(c)において、凸状構造体8は、例えば、互いに反対側を向いた一対の側面81及び82を備える。図8(a)から図8(c)に示す例では、凸状構造体8は、-Y側を向いた側面81と、+Y側を向いた側面82とを備える。一対の側面81及び82のそれぞれは、平面である。但し、一対の側面81及び82の少なくとも一方は、曲面を含んでいてもよい。
【0089】
一対の側面81及び82は、互いに非平行であってもよい。この場合、凸状構造体8が備える一対の側面81及び82は、それらの一端部(図8(a)から図8(c)に示す例では、+Z側の上端部)を介して接続されてもよい。凸状構造体8が備える一対の側面81及び82が接続される部分は、凸状構造体8の頂部83を構成する。この場合、一対の側面81及び82は、凸状構造体8の頂部83を介して接続されているとみなしてもよい。図8(a)から図8(c)に示す例では、一対の側面81及び82は、側面81の上端部と側面82の上端部とが接するように接続される。この場合、凸状構造体8のZ軸を含む断面の形状は、三角形の形状となる。但し、凸状構造体8のZ軸を含む断面の形状は、三角形の形状とは異なる任意の形状を有していてもよい。また、一対の側面81及び82は、互いに平行であってもよい。
【0090】
一の凸状構造体8の側面81と、凸状構造体8が配列される方向に沿って一の凸状構造体8に隣接する他の凸状構造体8の側面82とは、それらの他端部(図8(a)から図8(c)に示す例では、-Z側の下端部)で接続されてもよい。一の凸状構造体8の側面81と他の凸状構造体8の側面82とが接続される部分は、一の凸状構造体8と他の凸状構造体8との境界部84を構成する。言い換えれば、隣り合う二つの凸状構造体8の間には、周囲と比較して窪んだ凹状領域に相当する境界部84が存在する。この場合、隣り合う二つの凸状構造体8は、境界部84を介して接続されているとみなしてもよい。図8(a)から図8(c)に示す例では、隣り合う二つの凸状構造体8は、一の凸状構造体8の側面81の下端部と他の凸状構造体8の側面82の下端部とが接するように接続される。この場合、溝9のZ軸を含む断面の形状は、逆三角形の形状となる。但し、溝9のZ軸を含む断面の形状は、逆三角形の形状とは異なる任意の形状を有していてもよい。
【0091】
タービンブレードBLが基材BM及び耐熱層TBCを備えている場合には、図8(a)から図8(c)に示すように、加工システムSYSは、耐熱層TBCにリブレット構造RBを形成してもよい。具体的には、加工システムSYSは、基材BMとは反対側を向いている耐熱層TBCの表面(図8(a)から図8(c)に示す例では、+Z側を向いている上面)にリブレット構造RBを形成してもよい。加工システムSYSは、耐熱層TBCのうち基材BMに面する表面とは反対側の表面にリブレット構造RBを形成してもよい。加工システムSYSは、タービンブレードBLの使用中に流体と接する耐熱層TBCの表面にリブレット構造RBを形成してもよい。この場合、加工システムSYSは、基材BMを直接的に加工しないがゆえに、リブレット構造RBを比較的容易に再形成することができる。具体的には、リブレット構造RBの再形成の際には、まずは、リブレット構造RBが形成された耐熱層TBCが一旦剥離され、その後、新たな耐熱層TBCが形成される。その後、加工システムSYSは、新たに形成された耐熱層TBCに新たなリブレット構造RBを形成してもよい。従って、リブレット構造RBの劣化(例えば、破損等)に対して、リブレット構造RBの再形成によって相対的に容易に対処可能となる。更に、加工システムSYSは、基材BMを直接的に加工しないがゆえに、直接の加工が困難な又はリブレット構造RBがもともと形成されていない基材BMの表面にもリブレット構造RBを形成することができる。つまり、基材BMの表面に耐熱層TBCが形成された後に加工システムSYSが耐熱層TBCを加工すれば、リブレット構造RBを比較的容易に形成可能である。
【0092】
或いは、タービンブレードBLが基材BM及び耐熱層TBCを備えている場合には、リブレット構造RBを示す斜視図である図10に示すように、加工システムSYSは、基材BMにリブレット構造RBを形成してもよい。具体的には、加工システムSYSは、耐熱層TBCに面する基材BMの表面(図に示す例では、+Z側を向いている上面)にリブレット構造RBを形成してもよい。この場合、図10に示すように、基材BMにリブレット構造RBが形成された後に、基材BMの表面(特に、リブレット構造RBが形成された表面)に耐熱層TBCが形成されてもよい。耐熱層TBCが基材BMの表面を覆うがゆえに、耐熱層TBCの表面の形状は、耐熱層TBCが形成されている基材BMの表面の形状と概ね同一になってもよい。このため、リブレット構造RBが形成された基材BMに耐熱層TBCが形成されているタービンブレードBLは、実質的には、耐熱層TBCにリブレット構造RBが形成されているタービンブレードBLと等価であるとみなしてもよい。
【0093】
或いは、タービンブレードBLが基材BMを備えている一方で耐熱層TBCを備えていない場合においても、リブレット構造RBを示す斜視図である図11に示すように、加工システムSYSは、基材BMにリブレット構造RBを形成してもよい。つまり、リブレット構造RBが形成された基材BMには、必ずしも耐熱層TBCが形成されなくてもよい。
【0094】
(4)リブレット構造RBを形成する動作の変形例
続いて、リブレット構造RBを形成する動作の変形例について説明する。
【0095】
(4-1)リブレット構造RBを形成する動作の第1変形例
第1変形例では、加工システムSYSは、凸状構造体8の頂部83及び凸状構造体8の境界部84のうちの少なくとも一方の形状が、上述した図8(a)から図8(c)及び図10から図11に示す形状とは異なるリブレット構造RBを形成してもよい。以下、図12から図18を参照しながら、第1変形例で形成されるリブレット構造RBについて説明する。図12から図18のそれぞれは、第1変形例で形成されるリブレット構造RBの一例を示す断面図である。
【0096】
図12に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の頂部83が平面831を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。平面831は、凸状構造体8が備える一対の側面81及び82の一端部(図12に示す例では、+Z側の上端部)を接続する。つまり、一対の側面81及び82は、頂部83を構成する平面831を介して接続されている。このため、図12に示す例では、側面81の上端部と側面82の上端部とが直接的に接することはない。平面831は、一対の側面81及び82のそれぞれに交差する。平面831は、基材BMとは反対側(図12に示す例では、+Z側であり、上方)を向いた面である。このため、平面831は、上面と称されてもよい。
【0097】
図13に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の頂部83が曲面832を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。曲面832は、凸状構造体8が備える一対の側面81及び82の一端部(図13に示す例では、+Z側の上端部)を接続する。つまり、一対の側面81及び82は、頂部83を構成する曲面832を介して接続されている。このため、図13に示す例では、側面81の上端部と側面82の上端部とが直接的に接することはない。曲面832は、一対の側面81及び82のそれぞれに交差する。曲面832は、基材BMとは反対側(図13に示す例では、+Z側であり、上方)を向いた面である。このため、曲面832は、上面と称されてもよい。曲面832は、基材BMとは反対側に凸となる曲面であってもよい。
【0098】
図14に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の頂部83が平面831及び曲面832の双方を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。例えば、頂部83は、平面831と、平面831を挟み込む一対の曲面832とを含んでいてもよい。一対の曲面832の一端部は、凸状構造体8が備える一対の側面81及び82の一端部(例えば、上端部)にそれぞれ接続されている。更に、平面831は、一対の曲面832の他端部を接続する。つまり、一対の曲面832のうちの一方は、平面831と側面81とを接続し、一対の曲面832のうちの他方は、平面831と側面82とを接続する。この場合、一対の側面81及び82は、頂部83を構成する平面831及び一対の曲面832を介して接続されている。このため、図14に示す例では、側面81の上端部と側面82の上端部とが直接的に接することはない。
【0099】
図12から図14に示す例において、頂部83のサイズD83は、凸状構造体8のピッチP8に基づいて設定されていてもよい。例えば、頂部83のサイズD83は、凸状構造体8のピッチP8の少なくとも1%から9%(つまり、数%)の範囲内にあるように設定されていてもよい。例えば、頂部83のサイズD83は、凸状構造体8のピッチP8の少なくとも1%から6%の範囲内にあるように設定されていてもよい。例えば、頂部83のサイズD83は、凸状構造体8のピッチP8の少なくとも1%から3%の範囲内にあるように設定されていてもよい。尚、本実施形態における「頂部83のサイズD83」は、凸状構造体8が配列される方向における、頂部83を構成する面のサイズ(典型的は、幅)を意味していてもよい。図12に示す例では、頂部83のサイズD83は、頂部83に含まれる平面831のY軸方向におけるサイズを意味していてもよい。図13に示す例では、頂部83のサイズD83は、頂部83に含まれる曲面832のY軸方向におけるサイズを意味していてもよい。図14に示す例では、頂部83のサイズD83は、頂部83に含まれる平面831及び一対の曲面832のY軸方向におけるサイズの総和を意味していてもよい。また、本実施形態における「凸状構造体8のピッチP8」は、凸状構造体8が延びる方向に交差する方向(ピッチ方向)において隣り合う二つの凸状構造体8の間隔を意味していてもよい。図12に示す例では、「凸状構造体8のピッチP8」は、Y軸方向において隣り合う二つの凸状構造体8の間隔を意味していてもよい。凸状構造体8が延びる方向に交差する方向において凸状構造体8と溝9とが交互に形成されているがゆえに、「凸状構造体8のピッチP8」は、「溝9のピッチP9」と実質的に同一であるとみなしてもよい。尚、本実施形態における「溝9のピッチP9」は、溝9が延びる方向に交差する方向(ピッチ方向)において隣り合う二つの溝9の間隔を意味していてもよい。図12に示す例では、「溝9のピッチP9」は、Y軸方向において隣り合う二つの溝9の間隔を意味していてもよい。
【0100】
図13から図14に示す例において、曲面832の曲率半径は、1マイクロメートルから9マイクロメートル(つまり、数マイクロメートル)の範囲内にあるように設定されてもよい。曲面832の曲率半径は、1マイクロメートルから6マイクロメートルの範囲内にあるように設定されてもよい。曲面832の曲率半径は、1マイクロメートルから4マイクロメートルの範囲内にあるように設定されてもよい。曲面832の曲率半径は、1マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲内にあるように設定されてもよい。
【0101】
このように頂部83が平面831及び曲面832のうちの少なくとも一つを含む場合には、頂部83が平面831及び曲面832を含まない(その結果、側面81の上端部と側面82の上端部とが直接接する)場合と比較して、頂部83に形成される角の角度が緩やかになる(つまり、大きくなる)。その結果、頂部83にクラックが発生する可能性が小さくなる。従って、加工システムSYSは、耐久性が相対的に高いリブレット構造RBを形成することができる。特に、曲面832を含む頂部83は、実質的には、面取り加工が施された頂部83と等価であるとみなしてもよい。その結果、頂部83が曲面832を含む場合には、頂部83が平面831を含む場合と比較して、頂部83にクラックが発生する可能性がより一層小さくなる。つまり、従って、加工システムSYSは、耐久性がより一層高いリブレット構造RBを形成することができる。
【0102】
図15に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の境界部84が平面841を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。平面841は、隣り合う二つの凸状構造体8を接続する。つまり、隣り合う二つの凸状構造体8は、境界部84を構成する平面841を介して接続されている。具体的には、平面841は、一の凸状構造体8の側面81の下端部と、一の凸状構造体8に隣接する他の凸状構造体8の側面82の下端部とを接続する。このため、図15に示す例では、一の凸状構造体8の側面81の下端部と他の凸状構造体8の側面82の下端部とが直接的に接することはない。平面841は、一対の側面81及び82のそれぞれに交差する。平面841は、基材BMとは反対側(図12に示す例では、+Z側であり、上方)を向いた面である。このため、平面841は、上面と称されてもよい。
【0103】
図16に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の境界部84が曲面842を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。曲面842は、隣り合う二つの凸状構造体8を接続する。つまり、隣り合う二つの凸状構造体8は、境界部84を構成する曲面842を介して接続されている。具体的には、曲面842は、一の凸状構造体8の側面81の下端部と、一の凸状構造体8に隣接する他の凸状構造体8の側面82の下端部とを接続する。このため、図16に示す例では、一の凸状構造体8の側面81の下端部と他の凸状構造体8の側面82の下端部とが直接的に接することはない。曲面842は、一対の側面81及び82のそれぞれに交差する。曲面842は、基材BMとは反対側(図12に示す例では、+Z側であり、上方)を向いた面である。このため、曲面842は、上面と称されてもよい。曲面842は、基材BM側に凸となる曲面であってもよい。
【0104】
図17に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の境界部84が平面841及び曲面842の双方を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。例えば、境界部84は、平面841と、一対の曲面842とを含んでいてもよい。一対の曲面842の一方の一端部は、一の凸状構造体8が備える側面81の他端部(例えば、下端部)に接続されている。一対の曲面842の他方の一端部は、一の凸状構造体8に隣接する他の凸状構造体8が備える側面82の他端部(例えば、下端部)に接続されている。更に、平面841は、一対の曲面842の他端部を接続する。つまり、一対の曲面842のうちの一方は、平面841と一の凸状構造体8の側面81とを接続し、一対の曲面842のうちの他方は、平面841と他の凸状構造体8の側面82とを接続してもよい。この場合、隣り合う二つの凸状構造体8は、境界部84を構成する平面841及び一対の曲面842を介して接続されている。このため、図17に示す例では、側面81の下端部と側面82の下端部とが直接的に接することはない。
【0105】
図17に示す例において、一対の曲面842のサイズD842の総和(つまり、2×D842)は、凸状構造体8のピッチP8に基づいて設定されていてもよい。例えば、一対の曲面842のサイズD842の総和は、凸状構造体8のピッチP8よりも小さくてもよい。尚、本実施形態における「曲面842のサイズD842」は、凸状構造体8が配列される方向における曲面842のサイズ(典型的には、幅)を意味していてもよい。図17に示す例では、曲面842のサイズD842は、曲面842のY軸方向におけるサイズを意味していてもよい。また、図16及び図17に示す例において、曲面842の曲率半径は、1マイクロメートルから9マイクロメートル(つまり、数マイクロメートル)の範囲内にあるように設定されてもよい。曲面842の曲率半径は、1マイクロメートルから6マイクロメートルの範囲内にあるように設定されてもよい。曲面842の曲率半径は、1マイクロメートルから4マイクロメートルの範囲内にあるように設定されてもよい。曲面842の曲率半径は、1マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲内にあるように設定されてもよい。
【0106】
このように境界部84が平面841及び曲面842のうちの少なくとも一つを含む場合には、境界部84が平面841及び曲面842を含まない(その結果、側面81の下端部と側面82の下端部とが直接接する)場合と比較して、境界部84に形成される角の角度が緩やかになる。その結果、境界部84にクラックが発生する可能性が小さくなる。従って、加工システムSYSは、耐久性が相対的に高いリブレット構造RBを形成することができる。特に、曲面842を含む境界部84は、実質的には、面取り加工が施された境界部84と等価であるとみなしてもよい。その結果、境界部84が曲面842を含む場合には、境界部84が平面841を含む場合と比較して、境界部84にクラックが発生する可能性がより一層小さくなる。従って、加工システムSYSは、耐久性がより一層高いリブレット構造RBを形成することができる。
【0107】
図18に示すように、加工システムSYSは、凸状構造体8の頂部83が平面831及び曲面832の少なくとも一方を含み、且つ、凸状構造体8の境界部84が平面841及び曲面842の少なくとも一方を含むように、リブレット構造RBを形成してもよい。図18は、頂部83が平面831及び一対の曲面832を含み、且つ、境界部84が平面841及び一対の曲面842を含むリブレット構造RBを示している。この場合においても、加工システムSYSは、耐久性がより一層高いリブレット構造RBを形成することができる。
【0108】
尚、上述した図12から図18は、加工システムSYSが耐熱層TBCにリブレット構造RBを形成する例を示している。しかしながら、加工システムSYSは、図12から図18に示す形状を有するリブレット構造RBを、基材BMに形成してもよい。この場合においても、加工システムSYSは、耐久性が相対的に高いリブレット構造RBを形成することができる。
【0109】
また、図12から図18に示す形状を有するリブレット構造RBが基材BMに形成される場合には、上述したように、リブレット構造RBを形成する凸状構造体8の頂部83及び境界部84の少なくとも一方に形成される角の角度が緩やかになる。その結果、頂部83及び境界部84の少なくとも一方に形成される角の角度が相対的に急である(つまり、相対的に小さい)場合と比較して、当該角に対する耐熱層TBCの付着性が向上する。
【0110】
また、頂部83及び境界部84の少なくとも一方に形成される角の角度が緩やかになる場合には、頂部83及び境界部84の少なくとも一方に形成される角の角度が相対的に急である場合と比較して、リブレット構造RBが形成された基材BMの表面に対する表面処理が適切に行われる可能性が高くなるという効果も享受可能である。例えば、リブレット構造RBが形成された基材BMの表面に対して、表面処理の一例である焼入れが適切に行われる可能性が高くなるという効果も享受可能となる。その結果、後述するように基材BMの表面に焼入れ等の表面処理を行うことで基材BMに任意の被膜層が形成される場合には、リブレット構造RBが形成された基材BMに任意の被膜層が適切に形成される可能性が高くなるという効果が享受可能となる。
【0111】
(4-2)リブレット構造RBを形成する動作の第2変形例
第2変形例では、加工システムSYSは、リブレット構造RBを形成するための溝9とは異なる溝7が形成されたタービンブレードBLに、リブレット構造RBを形成してもよい。ここで、図19(a)及び図19(b)を参照しながら、溝7が形成されたタービンブレードBLについて説明する。図19(a)は、溝7が形成されたタービンブレードBLを示す断面図であり、図19(b)は、溝7が形成されたタービンブレードBLを示す上面図である。
【0112】
図19(a)及び図19(b)に示すように、タービンブレードBLには、タービンブレードBLの表面に沿った方向に沿って延びる溝7が形成されていてもよい。例えば、タービンブレードBLには、タービンブレードBLの表面に沿った第3の方向に沿って延びる単一の溝7が形成されていてもよい。例えば、タービンブレードBLには、タービンブレードBLの表面に沿った第3の方向に沿って延びる複数の溝7が形成されていてもよい。第3の方向に沿って延びる複数の溝7は、第3の方向に交差する第4の方向に沿って配列されていてもよい。例えば、タービンブレードBLには、タービンブレードBLの表面に沿った複数の異なる方向に沿ってそれぞれ延びる複数の溝7が形成されていてもよい。例えば、タービンブレードBLには、タービンブレードBLの表面に沿った第3の方向に沿って延びる少なくとも一つの溝7と、タービンブレードBLの表面に沿った方向であり且つ第3の方向に交差する第4の方向に沿って延びる少なくとも一つの溝7とが形成されていてもよい。図19(a)及び図19(b)に示す例では、タービンブレードBLには、X軸方向に沿って延び且つY軸方向に沿って配列された複数の溝7(以降、X軸方向に沿って延びる溝7を、“溝7X”と称する)と、Y軸方向に沿って延び且つX軸方向に沿って配列された複数の溝7(以降、Y軸方向に沿って延びる溝7を、“溝7Y”と称する)とが形成されている。
【0113】
溝7の深さD7(図19(a)に示す例では、Z軸方向に沿ったサイズ)は、溝7が形成される耐熱層TBCの厚みD(図19(a)に示す例では、Z軸方向に沿ったサイズ)に基づいて設定されてもよい。例えば、溝7の深さD7は、耐熱層TBCの厚みD9よりも小さくなるように設定されていてもよい。溝7の深さD7は、耐熱層TBCの厚みD9の30%以下になるように設定されてもよい。例えば、耐熱層TBCの厚みD9が300マイクロメートルから1ミリメートルである場合には、溝7の深さD7は、90マイクロメートル(=300マイクロメートル×30%)から300マイクロメートル(=1ミリメートル×30%)以下になるように設定されてもよい。
【0114】
複数の溝7が形成される場合には、複数の溝7の深さD7は、互いに同一であってもよい。或いは、複数の溝7のうちの少なくとも二つの深さD7は、互いに異なっていてもよい。例えば、タービンブレードBLの表面の第1部分に形成される溝7の深さは、タービンブレードBLの表面の第2部分に形成される溝7の深さと異なっていてもよい。例えば、第3の方向に沿って延びる溝7の深さD7は、第3の方向に交差する第4の方向に沿って延びる溝7の深さD7と異なっていてもよい。
【0115】
複数の溝7が形成される場合には、複数の溝7は、同一のピッチP7で配列するように形成されていてもよい。尚、本実施形態における「溝7のピッチP7」は、溝7が延びる方向に交差する方向(ピッチ方向)において隣り合う二つの溝7の間隔を意味していてもよい。図19に示す例では、「溝7XのピッチP7」は、Y軸方向において隣り合う二つの溝7Xの間隔を意味していてもよい。「溝7YのピッチP7」は、X軸方向において隣り合う二つの溝7Xの間隔を意味していてもよい。或いは、複数の溝7は、異なるピッチP7で配列するように形成されていてもよい。例えば、第3の方向に沿って延びる溝7のピッチP7は、第4の方向に沿って延びる溝7のピッチP7と異なっていてもよい。例えば、タービンブレードBLの表面の第3部分に形成されている溝7のピッチP7は、タービンブレードBLの第4部分に形成されている溝7のピッチP7と異なっていてもよい。
【0116】
溝7は、タービンブレードBLの応力を緩和可能な溝であってもよい。つまり、溝7は、タービンブレードBLの応力を緩和可能であるという機能を有していてもよい。特に、溝7が耐熱層TBCに形成されているため、溝7は、耐熱層TBCの応力を緩和可能な溝であってもよい。例えば、耐熱層TBCの温度が変わると、耐熱層TBCが伸縮する可能性がある。つまり、耐熱層TBCが膨張又は収縮する可能性がある。溝7は、耐熱層TBCの伸縮に起因して耐熱層TBCに発生する応力を緩和する溝であってもよい。例えば、この場合、耐熱層TBCの伸縮に合わせて溝7の幅が変わるように耐熱層TBCが変形すれば、耐熱層TBCの伸縮に起因して耐熱層TBCに発生する応力が関われる。その結果、応力によって耐熱層TBCが破損する可能性が相対的に小さくなる。このため、応力に対する耐性が相対的に強く且つ流体に対する抵抗が適切に低減されたタービンブレードBLが製造可能となる。
【0117】
溝7は、加工システムSYSとは異なる加工システムによって形成されてもよい。例えば、溝7は、レーザカッティング又はレーザエッチングによって溝7を形成可能な他の加工システムによって形成されてもよい。加工システムSYSは、制御装置4の制御下で、他の加工システムによって溝7が形成されたタービンブレードBLに、上述したリブレット構造RBを形成してもよい。この場合、加工システムSYSは、形成済みの溝7に関する情報に基づいて、リブレット構造RBを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、計測光MLを用いて形成済みの溝7を計測し、計測光MLによる溝7の計測結果に関する情報に基づいて、リブレット構造RBを形成してもよい。一具体例として、加工システムSYSは、計測光MLによる溝7の計測結果に関する情報に基づいて、タービンブレードBLの表面(例えば、耐熱層TBCの表面)における溝7の位置を特定し、特定した溝7の位置と所定の位置関係にある位置に加工光ELを照射することでリブレット構造RBを形成してもよい。つまり、溝7の計測結果に関する情報は、加工光ELの照射位置を制御するための情報(いわゆる、サーボ情報)として用いられてもよい。
【0118】
或いは、溝7は、加工システムSYSによって形成されてもよい。つまり、加工システムSYSは、制御装置4の制御下で、リブレット構造RBを形成するための溝9を形成する場合と同様に、加工光ELを用いた除去加工によって溝7を形成してもよい。この場合、加工システムSYSは、制御装置4の制御下で、溝9を形成した後に、リブレット構造RBを形成してもよい。或いは、加工システムSYSは、制御装置4の制御下で、リブレット構造RBを形成した後に、溝7を形成してもよい。
【0119】
加工システムSYSは、溝7が形成されたタービンブレードBLにリブレット構造RBを形成する(或いは、溝7を形成する前にタービンブレードBLにリブレット構造RBを形成する)場合には、以下に示す構造条件を満たすリブレット構造RBを形成してもよい。以下、図20から図22を参照しながら、リブレット構造RBが満たすべき構造条件について説明する。図20は、溝7とリブレット構造RBとの双方が形成されたタービンブレードBLを示す断面図である。図21は、溝7とリブレット構造RBとの双方が形成されたタービンブレードBLを示す斜視図である。図22は、溝7とリブレット構造RBとの双方が形成されたタービンブレードBLを示す上面図である。尚、図20から図22に示す例では、加工システムSYSは、頂部83が平面831を含み、境界部84が平面841を含み、且つ、構造条件を満たすリブレット構造RB(つまり、図12に示す頂部83及び図15に示す境界部84を含み、且つ、構造条件を満たすリブレット構造RB)を形成している。しかしながら、加工システムSYSは、図12に示す形状とは異なる形状を有する頂部83及び/又は図15に示す形状とは異なる形状を有する境界部84を含むと共に後述する構造条件を満たすリブレット構造RBを形成してもよい。
【0120】
構造条件は、リブレット構造RBを形成する溝9の深さD9に関する深さ条件を含んでいてもよい。例えば、深さ条件は、溝9の深さD9そのものに関する第1の深さ条件を含んでいてもよい。第1の深さ条件は、溝9の深さD9が1マイクロメートルから99マイクロメートル(つまり、数マイクロメートルから数十マイクロメートル)になるという条件を含んでいてもよい。例えば、深さ条件は、第1の深さ条件に加えて又は代えて、溝9の深さD9と耐熱層TBCの厚みDとの関係に関する第2の深さ条件を含んでいてもよい。第2の深さ条件は、図20及び図21に示すように、溝9の深さD9が耐熱層TBCの厚みDよりも小さいという条件を含んでいてもよい。第2の深さ条件は、溝9の深さD9が耐熱層TBCの厚みDの0.2%以上且つ20%以下になるという条件を含んでいてもよい。例えば、深さ条件は、第1及び第2の深さ条件の少なくとも一方に加えて又は代えて、溝9の深さD9と溝7の深さD7との関係に関する第3の深さ条件を含んでいてもよい。第3の深さ条件は、図20及び図21に示すように、溝9の深さD9が溝7の深さD7と異なるという条件を含んでいてもよい。第3の深さ条件は、図20及び図21に示すように、溝9の深さD9が溝7の深さD7よりも小さい(つまり、溝9が溝7よりも浅い)という条件を含んでいてもよい。言い換えれば、第3の深さ条件は、図20及び図21に示すように、溝7の深さD7が溝9の深さD9よりも大きい(つまり、溝7が溝9よりも深い)という条件を含んでいてもよい。第3の深さ条件は、溝7の深さD7が溝9の深さD9の1.5倍以上且つ15倍以下になるという条件を含んでいてもよい。
【0121】
ここで、深さ条件のうちの第3の深さ条件(特に、溝9の深さD9が溝7の深さD7よりも小さいという条件)が満たされる場合には、リブレット構造RBによる効果(つまり、タービンブレードBLの表面の流体に対する抵抗の低減効果)が、溝9によって妨げられる可能性が小さくなる。具体的には、図23に示すように、仮に溝9の深さD9が溝7の深さD7よりも大きい場合には、溝9の底部(つまり、境界部84)よりも溝7の底部71の方が上方に来る。その結果、複数の凸状構造体8の間に、溝7の底部71が上面となる隔壁72が現れる。この隔壁72は、図23に示すように、複数の凸状構造体8の間(つまり、溝9の内部)を複数の凸状構造体8に沿って流れる流体を遮る可能性がある。つまり、隔壁72は、図23に示すように、凸状構造体8に沿った流体の流れを乱す可能性がある。特に、凸状構造体8が延びる方向と溝7が延びる方向とが交差する場合には、凸状構造体8に沿った流体の流れを隔壁72が乱す可能性が高くなる。しかるに、溝9の深さD9が溝7の深さD7よりも小さい場合には、図21に示すように、複数の凸状構造体8の間に、溝7の底部71が上面となる隔壁72が現れることはない。その結果、図21に示すように、複数の凸状構造体8の間(つまり、溝9の内部)を複数の凸状構造体8に沿って流れる流体の流れが、隔壁72によって乱される可能性は小さい。このため、リブレット構造RBによるタービンブレードBLの表面の流体に対する抵抗の低減効果が適切に享受可能となる。尚、凸状構造体8が延びる方向と溝7が延びる方向が平行である場合には、複数の凸状構造体8で構成されるリブレット構造RB中に、溝7によって高さの異なる部分(例えば、凸状構造体8とは高さが異なる構造体)が形成されてしまうため、リブレット構造RBの効果が低減してしまう恐れがある。
【0122】
構造条件は、リブレット構造RBを形成する溝9のピッチP9に関するピッチ条件を含んでいてもよい。ピッチ条件は、溝9のピッチP9と溝7のピッチP7との関係に関する条件を含んでいてもよい。特に、ピッチ条件は、一の方向における溝9のピッチP9と、同じ一の方向における溝7のピッチP7との関係に関する条件を含んでいてもよい。図20及び図22に示す例では、ピッチ条件は、Y軸方向における溝9のピッチP9と、Y軸方向における溝7のピッチP7との関係に関する条件を含んでいてもよい。但し、ピッチ条件は、一の方向における溝9のピッチP9と、一の方向とは異なる他の方向における溝7のピッチP7との関係に関する条件を含んでいてもよい。図20及び図22に示す例では、ピッチ条件は、Y軸方向における溝9のピッチP9と、X軸方向における溝7のピッチP7との関係に関する条件を含んでいてもよい。例えば、ピッチ条件は、溝9のピッチP9と溝7のピッチP7とが異なるという条件を含んでいてもよい。例えば、ピッチ条件は、溝9のピッチP9よりも溝7のピッチP7の方が大きいという条件を含んでいてもよい。例えば、ピッチ条件は、溝7のピッチP7が、溝9のピッチP9の2倍以上になるという条件を含んでいてもよい。溝7のピッチP7が溝9のピッチP9の2倍以上になるという条件が満たされる場合には、図20及び図22に示すように、溝7が延びる方向に交差する方向(つまり、溝7の短手方向)に沿って隣り合う二つの溝7の間に二つ以上の溝9が形成される。この場合、ピッチ条件は、溝7が延びる方向に交差する方向に沿って隣り合う二つの溝7の間に二つ以上の溝9が形成されるように溝7のピッチP7及び溝9のピッチP9が設定されるという条件を含んでいてもよい。例えば、ピッチ条件は、溝7のピッチP7が、溝9のピッチP9の20倍以上且つ30倍以下の範囲にあるという条件を含んでいてもよい。言い換えれば、ピッチ条件は、溝7が延びる方向に交差する方向に沿って隣り合う二つの溝7の間に20本以上且つ30本以下の溝9が形成されるように溝7のピッチP7及び溝9のピッチP9が設定されるという条件を含んでいてもよい。例えば、ピッチ条件は、溝7のピッチP7が、溝9のピッチP9の整数倍になるという条件を含んでいてもよい。溝7のピッチP7が溝9のピッチP9の整数倍になるという条件が満たされる場合には、溝7が延びる方向に交差する方向に沿って隣り合う二つの溝7の間に整数本の溝9が形成される。この場合、加工システムSYSは、規則的な構造を有するリブレット構造RBを、溝7が形成されたタービンブレードBLに相対的に容易に形成することができる。
【0123】
構造条件は、リブレット構造RBを形成する溝9の幅W9に関する幅条件を含んでいてもよい。幅条件は、溝9の幅W9と溝7の幅W7との関係に関する条件を含んでいてもよい。尚、本実施形態における「溝9の幅W9」は、溝9が延びる方向に交差する方向(つまり、溝9の短手方向)における溝9のサイズを意味していてもよい。同様に、本実施形態における「溝7の幅W7」は、溝7が延びる方向に交差する方向(つまり、溝7の短手方向)における溝7のサイズを意味していてもよい。例えば、幅条件は、溝9の幅W9と溝7の幅W7とが異なるという条件を含んでいてもよい。例えば、幅条件は、溝9の幅W9よりも溝7の幅W7の方が広いという条件を含んでいてもよい。例えば、幅条件は、溝7の幅W7が、溝9の幅W9の1倍以上且つ10倍以下の範囲にあるという条件を含んでいてもよい。
【0124】
構造条件は、リブレット構造RBを形成する溝9が延びる方向に関する延伸方向条件を含んでいてもよい。延伸方向条件は、少なくとも一つの溝9が延びる方向と少なくとも一つの溝7が延びる方向との関係に関する条件を含んでいてもよい。尚、本実施形態における「溝9が延びる方向」は、溝9が形成されているタービンブレードBLの表面(例えば、耐熱層TBCの表面)に沿って溝9が延びる方向を意味していてもよい。同様に、本実施形態における「溝7が延びる方向」は、溝7が形成されているタービンブレードBLの表面(例えば、耐熱層TBCの表面)に沿って溝7が延びる方向を意味していてもよい。例えば、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝9が延びる方向と少なくとも一つの溝7が延びる方向とが同じになるという条件を含んでいてもよい。つまり、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝9が延びる方向と少なくとも一つの溝7が延びる方向とが平行になるという条件を含んでいてもよい。例えば、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝9が延びる方向と少なくとも一つの溝7が延びる方向とが異なるという条件を含んでいてもよい。つまり、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝9が延びる方向と少なくとも一つの溝7が延びる方向とが交差するという条件を含んでいてもよい。特に、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝9が延びる方向と少なくとも一つの溝7が延びる方向とが直交するという条件を含んでいてもよい。図21及び図22に示す例では、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝7XがX軸方向に沿って延び、且つ、少なくとも一つの溝7YがY軸方向に沿って延びる状況下において、複数の溝9のそれぞれが延びる方向が、溝7Xが延びる方向(つまり、X軸方向)と同一になるという条件を含む。但し、延伸方向条件は、少なくとも一つの溝7がX軸方向に沿って延び、且つ、少なくとも一つの溝7がY軸方向に沿って延びる状況下において、複数の溝9のうちの少なくとも一つがX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って延びるという条件を含んでいてもよい。
【0125】
また、構造条件は、リブレット構造RBを形成する溝9のピッチ方向に関するピッチ方向条件を含んでいてもよい。ピッチ方向条件は、複数の溝9のピッチ方向と複数の溝7のピッチ方向との関係に関する条件を含んでいてもよい。尚、本実施形態における「複数の溝9のピッチ方向」は、複数の溝9が形成されているタービンブレードBLの表面(例えば、耐熱層TBCの表面)に沿ったピッチ方向を意味していてもよい。同様に、本実施形態における「複数の溝7のピッチ方向」は、溝7が形成されているタービンブレードBLの表面(例えば、耐熱層TBCの表面)に沿ったピッチ方向を意味していてもよい。例えば、ピッチ方向条件は、複数の溝9のピッチ方向と複数の溝7のピッチ方向とが同じになるという条件を含んでいてもよい。つまり、ピッチ方向条件は、複数の溝9のピッチ方向と複数の溝7のピッチ方向とが平行になるという条件を含んでいてもよい。例えば、ピッチ方向条件は、複数の溝9のピッチ方向と複数の溝7のピッチ方向とが異なるという条件を含んでいてもよい。つまり、ピッチ方向条件は、複数の溝9のピッチ方向と複数の溝7のピッチ方向とが交差するという条件を含んでいてもよい。特に、ピッチ方向条件は、複数の溝9のピッチ方向と複数の溝7のピッチ方向とが直交するという条件を含んでいてもよい。図21及び図22に示す例では、ピッチ方向条件は、複数の溝7Xのピッチ方向がY軸方向であり、且つ、複数の溝7Yのピッチ方向がX軸方向である状況下において、複数の溝9のそれぞれのピッチ方向が、溝7Xのピッチ方向(つまり、Y軸方向)と同一になるという条件を含む。但し、ピッチ方向条件は、複数の溝7のピッチ方向がX軸方向であり、且つ、複数の溝7のピッチ方向がY軸方向である状況下において、複数の溝9のピッチ方向がX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方と同じ方向であるという条件を含んでいてもよい。
【0126】
以上説明した構造条件は、例えば、応力に対する耐性が相対的に強く且つ流体に対する抵抗が適切に低減されたタービンブレードBLが製造するという観点から設定された条件の一例である。このため、構造条件が満たされる場合には、構造条件が満たさない場合と比較して、タービンブレードBLの応力に対する耐性が相対的に強くなる、及び/又は、流体に対するタービンブレードBLの抵抗が小さくなる。
【0127】
複数の溝7が形成される場合には、図22に示すように、タービンブレードBLの表面(例えば、耐熱層TBCの表面)は、複数の溝7によって複数の表面領域SAに区分可能である。この場合、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SAに形成される溝9に関する構造条件は、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SAとは異なる第2の表面領域SAに形成される溝9に関する構造条件と同一であってもよい。構造条件は、上述したように、溝9の深さW9、ピッチP9、幅W9、ピッチ方向及び延びる方向の少なくとも一つに関する条件である。溝9の深さW9、ピッチP9、幅W9、ピッチ方向及び延びる方向の少なくとも一つは、溝9の特性の一例である。このため、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SAに形成される溝9の特性は、複数の表面領域SAのうちの第2の表面領域SAに形成される溝9の特性と同一であってもよい。尚、図22は、複数の表面領域SAの全てにおいて構造条件が同一となる例を示している。
【0128】
或いは、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SAに形成される溝9に関する構造条件と、複数の表面領域SAのうちの第2の表面領域SAに形成される溝9に関する構造条件とが異なっていてもよい。つまり、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SAに形成される溝9の特性と、複数の表面領域SAのうちの第2の表面領域SAに形成される溝9の特性とが異なっていてもよい。例えば、溝7とリブレット構造RBとの双方が形成されたタービンブレードBLを示す上面図である図24に示すように、表面領域SA#1からSA#3に形成される溝9のピッチP9と、表面領域SA#4からSA#6に形成される溝9のピッチP9とが異なっていてもよい。図24に示すように、表面領域SA#1からSA#3に形成される溝9が延びる方向と、表面領域SA#4からSA#6に形成される溝9が延びる方向とが異なっていてもよい。また、図24に示すように、表面領域SA#1からSA#3に形成される複数の溝9のピッチ方向と、表面領域SA#4からSA#6に形成される複数の溝9のピッチ方向とが異なっていてもよい。
【0129】
また、溝7とリブレット構造RBとの双方が形成されたタービンブレードBLを示す上面図である図25に示すように、表面領域SA#1に形成される溝9のピッチP9と、表面領域SA#1の溝9の延伸方向において隣接する表面領域SA#2に形成される溝9のピッチP9とが異なっていてもよい。表面領域SA#2に形成される溝9の延伸方向(又はピッチ方向)と、表面領域SA#2の溝9の延伸方向において隣接する表面領域SA#3に形成される溝9の延伸方向(又はピッチ方向)とが異なっていてもよい。表面領域SA#2に形成される溝9の延伸方向(又はピッチ方向)と、当該表面領域SA#2に形成される溝9の延伸方向に交差する方向(ピッチ方向)に隣接する表面領域SA#5に形成される溝9の延伸方向(又はピッチ方向)とが異なっていてもよい。また、表面領域SA#5に形成される溝9の延伸方向(又はピッチ方向)及びピッチP9と、当該表面領域SA#5の溝9の延伸方向において隣接する表面領域SA#6に形成される溝9の延伸方向(又はピッチ方向)及びピッチP9とのそれぞれが異なっていてもよい。
【0130】
各表面領域SAに適用される構造条件(言い換えれば、溝9の特性)は、各表面領域SAに接する流体の特性に応じて設定されてもよい。例えば、各表面領域SAに適用される構造条件(言い換えれば、溝9の特性)は、各表面領域SAに接する流体に対する各表面領域SAの抵抗を低減可能な条件(特性)に設定されてもよい。その結果、複数の表面領域SAに適用される構造条件(言い換えれば、溝9の特性)が同一である場合と比較して、流体に対する抵抗が適切に低減されたタービンブレードBLが製造可能となる。
【0131】
尚、上述した図19から24は、耐熱層TBCに溝7が形成される例を示している。しかしながら、溝7は、基材BMに形成されていてもよい。この場合、加工システムSYSは、溝7が形成された基材BMにリブレット構造RBを形成してもよい。或いは、加工システムSYSは、基材BMにリブレット構造RBを形成した後に、基材BMに溝7を形成してもよい。この場合においても、加工システムSYSは、上述した構造条件を満たすように基材BMにリブレット構造RBを形成してもよい。
【0132】
また、図26に示すように耐熱層TBCに溝7が形成されていなくてもよい。尚、図26では、理解を容易にするために各表面領域SA#1からSA#6の境界を示す線を図示しているが、この線は仮想的なものである。
【0133】
(5)変形例
加工システムSYSは、加工光ELをワークWに照射する一方で計測光MLをワークWに照射しない加工ヘッドと、計測光MLをワークWに照射する一方で加工光ELをワークWに照射しない計測ヘッドとを別個に備えていてもよい。
【0134】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工光EL及び計測光MLの双方をワークWに向けて射出する射出光学系113を備えている。しかしながら、加工システムSYSは、加工光ELをワークWに向けて射出する射出光学系113と、計測光MLをワークWに向けて射出する射出光学系113とを別々に備えていてもよい。この場合、各射出光学系113は、加工光ELと計測光MLとを合成するビームスプリッタ1131を備えていなくてもよい。
【0135】
上述した説明では、加工装置1は、ワークWを計測可能である。しかしながら、加工装置1は、ワークWを計測可能でなくてもよい。この場合、加工装置1は、計測光学系112を備えていなくてもよい。加工システムSYSは、計測光源22を備えていなくてもよい。
【0136】
上述した説明では、加工装置1は、ヘッド駆動系12を備えている。しかしながら、加工装置1は、ヘッド駆動系12を備えていなくてもよい。つまり、加工ヘッド11は、移動可能でなくてもよい。この場合、加工装置1は、位置計測装置13を備えていなくてもよい。
【0137】
上述した説明では、ステージ装置3は、ステージ駆動系33を備えている。しかしながら、ステージ装置3は、ステージ駆動系33を備えていなくてもよい。つまり、ステージ32は、移動可能でなくてもよい。この場合、ステージ装置3は、位置計測装置34を備えていなくてもよい。
【0138】
上述した説明では、加工システムSYSは、基材BMと、耐熱層TBCとを備えるタービンブレードBLを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、基材BMと、基材BM上に形成され且つ耐熱層TBCとは異なる任意の被膜層とを備えるタービンブレードBLを加工してもよい。この場合、加工システムSYSは、任意の被膜層にリブレット構造RBを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、任意の被膜層に、図12から図18を参照しながら説明した頂部83及び境界部84の少なくとも一方を含むリブレット構造RBを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、リブレット構造RBを形成する溝7とは異なる溝9が形成された任意の被膜層に、リブレット構造RBを形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、任意の被膜層に、リブレット構造RBと、リブレット構造RBを形成する溝7とは異なる溝9とを形成してもよい。例えば、加工システムSYSがリブレット構造RBを形成した基材BMに、任意の被膜層が形成されてもよい。尚、任意の被膜層の一例として、基材BMを保護するための保護層があげられる。
【0139】
基材BMに形成される任意の被膜層は、基材BMに材料を付加することで新たに形成される層を含んでいてもよい。或いは、基材BMに形成される任意の被膜層は、基材BMのうち特性が変化した一部に相当する層を含んでいてもよい。つまり、任意の被膜層は、基材BMの一部の特性を変化させることで、基材BMのうちの特性が変化していない部分に接するように新たに形成される、基材BMのうちの特性が変化した部分に相当する層を含んでいてもよい。言い換えれば、基材BMのうちの特性が変化した部分が被膜層として用いられ、基材BMのうちの特性が変化していない部分が基材BMとして用いられてもよい。このような基材BMのうちの特性が変化した部分に相当する層の一例として、焼入れによって特性が変化した部分があげられる。この場合、被膜層は、基材BMの表面に対する表面処理によって形成されてもよい。表面処理の一例として、焼入れがあげられる。焼入れは、例えば、高周波焼入れ、炎焼入れ、レーザ焼入れ及び電子ビーム焼入れのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。このような焼入れによって形成される被膜層は、基材BMのうちの焼入れによって特性が変化していない部分よりも固くなる。焼入れは、基材BMの表面を硬化するための表面硬化処理の一具体例であるとも言える。この場合、被膜層は、基材BMの表面を保護するための保護層として機能可能である。
【0140】
上述した説明では、加工システムSYSは、軸流型のタービンブレードBLを加工している。しかしながら、図27に示すように、加工システムSYSは、半径流型(ラジアル型)タービンブレードBLを加工してもよい。図27において、矢印F1及びF2で示すように、流体は、タービンブレードBLの回転軸120に対して平行にタービンブレードBLに侵入し、出口部分160から、回転軸線120と交差する方向に流出する。
【0141】
この場合においても、リブレット構造RBは、複数の表面領域SAに区分可能である。複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SA#1に形成される溝9に関する構造条件は、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SA#1とは異なる第2の表面領域SA#2に形成される溝9に関する構造条件と同一であってもよい。構造条件は、上述したように、溝9の深さW9、ピッチP9、幅W9、ピッチ方向及び延びる方向の少なくとも一つに関する条件である。溝9の深さW9、ピッチP9、幅W9、ピッチ方向及び延びる方向の少なくとも一つは、溝9の特性の一例である。このため、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SAに形成される溝9の特性は、複数の表面領域SAのうちの第2の表面領域SAに形成される溝9の特性と同一であってもよい。そして、複数の表面領域SAのうちの第1の表面領域SA#1に形成される溝9に関する構造条件と、複数の表面領域SAのうちの第3の表面領域SA#3に形成される溝9に関する構造条件とが異なっていてもよい。ここで、複数の表面領域SA#1からSA#4の区画形状は、図27に示すように矩形でなくてもよい。
【0142】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの一例であるタービンブレードBLを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、タービンブレードBLとは異なり且つワークWの他の一例である任意のブレードを加工してもよい。任意のブレードは、上述したタービンブレードBLと同様に、基材と、基材の表面に形成される任意の被膜層とを備えていてもよい。この場合、例えば、加工システムSYSは、タービンブレードBLとは異なる任意のブレードに、リブレット構造RBを形成してもよい。つまり、加工システムSYSは、任意のブレードが備える基材及び被膜層の少なくとも一方に、リブレット構造RBを形成してもよい。任意のブレードの一例として、プロペラの羽根を構成するブレードがあげられる。プロペラは、例えば、エンジン及びモータの少なくとも一方を含む原動機から出力される回転力を、飛行機及び船舶等の少なくとも一つを含む移動体の推進力に変換する部材である。
【0143】
或いは、加工システムSYSは、ブレードとは異なり且つワークWの他の一例である任意の物体を加工してもよい。任意の物体は、上述したタービンブレードBLと同様に、基材と、基材の表面に形成される任意の被膜層とを備えていてもよい。この場合、例えば、加工システムSYSは、任意の物体に、リブレット構造RBを形成してもよい。つまり、加工システムSYSは、任意の物体が備える基材及び被膜層の少なくとも一方に、リブレット構造RBを形成してもよい。
【0144】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減させる機能を有するリブレット構造RBを形成している。しかしながら、加工システムSYSは、ワークWの表面の流体に対する抵抗を低減させる機能とは異なる機能を有する構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、流体とワークWの表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減するためのリブレット構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、ワークWの表面上の流体の流れに対して渦を発生するリブレット構造をワークWに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、ワークWの表面に疎水性を与えるための構造をワークWに形成してもよい。
【0145】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWの表面にリブレット構造RBを形成している。しかしながら、加工システムSYSは、ワークWの表面上に、任意の形状を有する任意の構造を形成してもよい。任意の構造の一例として、規則的又は不規則的に形成されたマイクロ・ナノメートルオーダの微細テクスチャ構造(典型的には凹凸構造)があげられる。このような微細テクスチャ構造は、流体(気体及び/又は液体)による抵抗を低減させる機能を有するサメ肌構造及びディンプル構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、撥液機能及びセルフクリーニング機能の少なくとも一方を有する(例えば、ロータス効果を有する)ハスの葉表面構造を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、液体輸送機能を有する微細突起構造(米国特許公開第2017/0044002号公報参照)、親液性機能を有する凹凸構造、防汚機能を有する凹凸構造、反射率低減機能及び撥液機能の少なくとも一方を有するモスアイ構造、特定波長の光のみを干渉で強めて構造色を呈する凹凸構造、ファンデルワールス力を利用した接着機能を有するピラーアレイ構造、空力騒音低減機能を有する凹凸構造、液滴捕集機能を有するハニカム構造、及び、表面上に形成される層との密着性を向上させる凹凸構造等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0146】
上述した説明では、加工システムSYSは、ワークWに加工光ELを照射することで、ワークWを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、光とは異なる任意のエネルギビームをワークWに照射して、ワークWを加工させてもよい。この場合、加工システムSYSは、加工光源21に加えて又は代えて、任意のエネルギビームを照射可能なビーム照射装置を備えていてもよい。任意のエネルギビームの一例として、荷電粒子ビーム及び電磁波の少なくとも一方があげられる。荷電粒子ビームの一例として、電子ビーム及びイオンビームの少なくとも一方があげられる。
【0147】
上述した説明において、タービンTはタービン機械と称されてもよい。このタービン機械は複数のタービンTを備えていてもよい。また、図28に示すように、タービン機械TMは発電機DYに接続されてその発電機DYを駆動してもよい。図28において、タービン機械TMは、空気を圧縮する圧縮機COと、圧縮機COによって圧縮された空気に燃料FUを混合して燃焼させる燃焼器BUと、複数のタービンTを備えたタービンユニットTUと、圧縮機CO及びタービンユニットTUを接続する回転可能な軸SHとを備えている。そして、燃焼器BUからの燃焼ガスによってタービンユニットTUを軸SH廻りに回転させる。この回転力は軸SHによって発電機DYに伝達されるとともに、圧縮機COにも伝達される。また、タービン機械は、ジェットエンジンを含んでいてもよい。
【0148】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0149】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うブレード、加工システム及び加工方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1 加工装置
11 加工ヘッド
111 加工光学系
112 計測光学系
113 射出光学系
4 制御装置
8 凸状構造体
81、82 側面
83 頂部
84 境界部
7、9 溝
EL 加工光
ML 計測光
SYS 加工システム
W ワーク
BL タービンブレード
BM 基材
TBC 耐熱層
RB リブレット構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図19
図20
図21
図22
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図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2024-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、流体に対する抵抗を低減するリブレット構造を形成するための複数の溝を有し、
前記リブレット構造は、前記複数の溝が配列される配列方向に沿って形成される複数の凸状構造体を有し、
前記溝は、隣り合う前記複数の凸状構造体の間に形成され、
前記複数の凸状構造体のそれぞれは、一対の曲面及び、前記一対の曲面と接続し、前記一対の曲面より曲率の小さい面を含む頂部を有する、
ブレード。