(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170566
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】抗原性呼吸器合胞体ウイルスポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/135 20060101AFI20241203BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C07K14/135 ZNA
C07K14/135
C12P21/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024153695
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2020554448の分割
【原出願日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】62/652,199
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ジェイ・ナーベル
(72)【発明者】
【氏名】チィ-ジェン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】カート・スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ・ダール
(72)【発明者】
【氏名】ラム・ダラニプラガダ
(72)【発明者】
【氏名】マグナス・ベセヴ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対する抗体の誘発に使用するための抗原性RSVポリペプチドを提供する。RSVポリペプチドおよびフェリチンタンパク質を含む抗原性ポリペプチドもまた開示される。
【解決手段】RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドであって、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている、前記抗原性RSVポリペプチドが提供される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドであって、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている、前記抗原性RSVポリペプチド。
【請求項2】
RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドであって、該RSV Fポリペプチドが、配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209、ならびに配列番号26の328、348、または507位に対応するアスパラギンを含む、前記抗原性RSVポリペプチド。
【請求項3】
融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている、請求項2に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項4】
融合前RSV Fを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項5】
D25またはAM14から選択される融合前RSV F特異的抗体によって認識される、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項6】
融合前RSV Fが、融合後RSV F上に見出されないエピトープを含む、請求項4または5に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項7】
融合後RSV Fを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項8】
エピトープが、アスパラギンに結合したN-グリカンでブロックされている、請求項1または3~6のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項9】
アスパラギンが野生型RSV F配列(配列番号26)中の非アスパラギン残基に対応し、場合により、該非アスパラギン残基が配列番号26の328、348、または507位に対応する、請求項8に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項10】
フェリチンタンパク質をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項11】
フェリチンが、表面に露出したアミノ酸をシステインで置き換える変異を含む、請求項10に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項12】
RSV Fポリペプチドおよびフェリチンタンパク質を含む抗原性RSVポリペプチドであって、該フェリチンタンパク質が、表面に露出したアミノ酸をシステインで置き換える変異を含む、前記抗原性RSVポリペプチド。
【請求項13】
フェリチンが、H.ピロリ(H. pylori)フェリチンのE12C、S26C、S72C
、A75C、K79C、S100C、およびS111C変異のうちの1つもしくはそれ以上、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける1つまたは複数の対応する変異を含む、請求項11または12に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項14】
表面に露出したアミノ酸を介してフェリチンに連結された1つまたはそれ以上の免疫刺
激性部分を含み、場合により、該表面に露出したアミノ酸が変異から生じるシステインである、請求項10~13のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項15】
フェリチンが、表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸で置き換える変異を含み、場合により、該アスパラギンが、H.ピロリフェリチンの19位、またはペアワイズまたは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの類似の位置にある、請求項10~14のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項16】
フェリチンが、内部システインを非システインアミノ酸で置き換える変異を含み、場合により、該内部システインが、H.ピロリフェリチンの31位、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置にある、請求項10~15のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項17】
RSV Fポリペプチドが、部位0エピトープである融合後RSV F上に見出されないエピトープを含み、場合により、該部位0エピトープが配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209を含む、請求項10~16のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項18】
RSV Fポリペプチドが、配列番号26の328位に対応する位置にアスパラギンを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項19】
RSV Fポリペプチドが、配列番号26の348位に対応する位置にアスパラギンを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項20】
RSV Fポリペプチドが、配列番号26の507位に対応する位置にアスパラギンを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項21】
RSV Fポリペプチドが、配列番号26のリシン498位に対応する位置にロイシンを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項22】
RSV Fポリペプチドが、配列番号26のイソロイシン217位に対応する位置にプロリンを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項23】
RSV Fポリペプチドが、配列番号26の155位に対応する位置にシステイン以外のアミノ酸、および/または配列番号26の290位に対応する位置にシステイン以外のアミノ酸を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項24】
配列番号26の155位に対応する位置にセリン、および/または配列番号26の290位に対応する位置にセリンを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項25】
RSV Fポリペプチドがフリン切断部位を欠損し、場合により、リンカーがフリン切断部位の代わりに存在する、請求項1~24のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項26】
RSV Fポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸1~478と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項27】
RSV Fポリペプチドが、配列番号17の配列と少なくとも85%、90%、95%
、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項28】
配列番号17のアミノ酸1~478を含む、請求項26または27に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項29】
RSVポリペプチドが、配列番号23のアミノ酸1~478と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項30】
RSVポリペプチドが、配列番号23の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、請求項1~19または29のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項31】
配列番号23のアミノ酸1~478を含む、請求項29または30に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項32】
配列番号3~23のいずれか1項に記載の配列を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド。
【請求項33】
請求項10~32のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチドを含むフェリチン粒子。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチドまたはフェリチン粒子、およびRSV Gポリペプチドを含む組成物。
【請求項35】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチドもしくはフェリチン粒子を含む組成物、または請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
RSVに対する免疫応答を誘発する方法において、またはRSV感染に対する対象の保護に使用するための、請求項1~35のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物。
【請求項37】
対象に請求項1~36のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物のうちのいずれか1つまたはそれ以上を投与することを含む、RSVに対する免疫応答を誘発する方法、またはRSV感染に対して対象を保護する方法。
【請求項38】
対象がヒトである、請求項36または37に記載の抗原性RSVポリペプチド、フェリチン粒子、組成物、または方法。
【請求項39】
請求項1~32のいずれか1項に記載の抗原性RSVポリペプチドをコードする核酸であって、場合により、核酸がmRNAである前記核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、2018年4月3日に提出された米国仮特許出願第62/652,199号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、配列表を含有し、それらはASCIIフォーマットで電子提出されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。前記ASCIIコピーは、2019年3月27日に作成され、名称は2019-03-27_01121-0031-00PCT_SL_ST25.txtであり、サイズは187,354バイトである。
【背景技術】
【0003】
ワクチン学の分野での多くの成功にも関わらず、生命を脅かす多くの感染疾患からヒトを保護するために、新規打開策が必要である。現在認可されている多くのワクチンは、何十年も前の技術に依存して生弱毒化または不活化死菌ワクチンを産生しているが、これらは固有の安全性の懸念を有し、多くの場合、ごく短命な弱い免疫応答を刺激するに過ぎず、複数回用量の投与を必要とする。遺伝子工学および生化学工学の進歩により、難題である疾患標的に対する治療薬を開発することが可能となっているが、ワクチン学の分野へのこれらの応用は、まだ十分に実現されていない。現在、組換えタンパク質技術は、最適な抗原の設計を可能にしている。さらに、ナノ粒子は、最適な抗原提示および標的薬物送達の可能性をますます実証している。複数の抗原を付着させたナノ粒子は、それらの分子カーゴの多価ディスプレイによってもたらされる結合アビディティを増加させ、それらのナノスケールのサイズのために生物学的障壁をより効率的に通過する能力が示されている。インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)タンパク質に融合したヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(H.ピロリ)フェリチンナノ粒子は、マウスインフルエン
ザモデルにおいて抗原安定性を改善し、免疫原性を増加させた(非特許文献1を参照されたい)。この融合タンパク質は、8面体の対称性ナノ粒子へと自己集合して8個の3量体HAスパイク構造を提示し、アジュバントと共に使用する場合、様々な前臨床モデルにおいて強力な免疫応答を与える。
【0004】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、乳児における重症呼吸器疾患の主要な原因であり、高齢者における呼吸器の病の主要な原因である。何十年にもわたる研究にもかかわらず、ワクチンの需要は依然として満たされていない。ワクチンの必要性は明らかであるが、RSVワクチンの開発は、ホルマリン不活化RSVウイルスを用いた臨床試験が、RSV感染後、乳児において疾患をより重症にした1960年代に妨げられた。非特許文献2を参照されたい。より最近では、融合後コンフォメーションにおいてRSV F抗原を用いた臨床プログラムでは、成人において十分な有効性を引き出すことができなかった。非特許文献3を参照されたい。しかしながら、融合前コンフォメーションで安定化されたRSV F抗原は、臨床において失敗した融合後の抗原よりも優れた中和反応を誘発する可能性がある。
【0005】
本明細書において、RSVポリペプチドを含む一連の新規なポリペプチド、ナノ粒子、組成物、方法、および使用を提示する。融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープが、例えば、変異によって付加されたグリコシル化部位のN-グリカンによってブロックされているポリペプチドを含む、新規なRSV Fポリペプチドを生成した。また、これらの新規なRSVポリペプチドおよびフェリチンを含む抗原性ポリペプチドおよびナノ粒子もまた生成した。RSV Gポリペプチドを含む抗原性フェリチンポリペプチドもまた生成した。さらに、RSVポリペプチドおよびフェリチンを含む自己アジュバント性抗原性ポリペプチドが開発され、アジュバントなどの
免疫刺激性部分が抗原性ポリペプチドに直接化学的に結合している。免疫刺激性部分の抗原性ポリペプチドへの直接結合は、単一の巨大分子実体中の免疫刺激性部分とRSVポリペプチドとの標的化された同時送達を可能にし、抗原、および別個の分子としてアジュバントなどの免疫刺激性分子を含む従来のワクチンで懸念される全身毒性の可能性を大幅に減少させることができる。巨大分子実体中のRSVポリペプチドとともに免疫刺激性部分の同時送達すること、およびそれらの多価提示もまた、防御を誘発するのに必要な総用量を減少させ、製造負荷およびコストを減少させることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kanekiyoら、Nature 499:102~106頁(2013)
【非特許文献2】Hurwitz(2011)Expert Rev Vaccines 10(10):1415~1433頁
【非特許文献3】Faloonら(2017)JID 216:1362~1370頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、上記の利点の1つまたはそれ以上を提供することができる、または有用な選択を公共に少なくとも提供する組成物、キット、方法、および使用を提供することである。したがって、以下の実施形態が本明細書で開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態1は、RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドであって、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている抗原性RSVポリペプチド。
【0009】
実施形態2は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209、ならびに配列番号26の328、348、または507位に対応するアスパラギンを含む、RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドである。
【0010】
実施形態3は、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている、実施形態2に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0011】
実施形態3bは、ブロックされたエピトープが、RSV Fの抗原部位1エピトープである、実施形態1または3に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0012】
実施形態3cは、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有される2つ以上のエピトープがブロックされている、実施形態1または3~3bに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0013】
実施形態3dは、RSV Fの抗原部位1の2つ以上のエピトープがブロックされている、実施形態1または3~3cに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0014】
実施形態3eは、ブロックされたエピトープとトポロジー的に重複する1つもしくはそれ以上の、または全てのエピトープもまたブロックされている、実施形態1または3~3dに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0015】
実施形態3fは、ブロックされたエピトープが、RSV Fの抗原部位1エピトープである、実施形態3eに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0016】
実施形態4は、融合前RSV Fを含む、実施形態1~3fのいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0017】
実施形態5は、D25またはAM14から選択される融合前RSV F特異的抗体によって認識される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0018】
実施形態6は、融合前のRSV Fが、融合後のRSV Fには見出されないエピトープを含む、実施形態4または5に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0019】
実施形態7は、融合後RSV Fを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0020】
実施形態8は、エピトープが、アスパラギンに結合したN-グリカンでブロックされている、実施形態1または3~6のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0021】
実施形態9は、アスパラギンが、野生型RSV F配列(配列番号26)中の非アスパラギン残基に対応し、非アスパラギン残基が、配列番号26の328、348、または507位に対応する、実施形態7に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0022】
実施形態10は、フェリチンタンパク質をさらに含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0023】
実施形態11は、フェリチンが、表面に露出したアミノ酸をシステインで置き換える変異を含む、実施形態11に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0024】
実施形態12は、フェリチンタンパク質が、表面に露出したアミノ酸をシステインで置き換える変異を含む、RSV Fポリペプチドおよびフェリチンタンパク質を含む抗原性RSVポリペプチドである。
【0025】
実施形態13は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのE12C、S26C、S72C、A75C、K79C、S100C、およびS111C変異の1つもしくはそれ以上、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける1つまたはそれ以上の対応する変異を含む、実施形態11~12のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0026】
実施形態14は、表面に露出したアミノ酸を介してフェリチンに連結された1つまたはそれ以上の免疫刺激性部分を含み、場合により、表面に露出したアミノ酸が変異から生じるシステインである、実施形態10~13のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0027】
実施形態15は、フェリチンが、表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸で置き換える変異を含み、場合により、アスパラギンが、H.ピロリフェリチンの19位、またはペアワイズまたは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの類似の位置にある、実施形態10~14のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリ
ペプチドである。
【0028】
実施形態16は、フェリチンが、内部システインを非システインアミノ酸で置き換える変異を含み、場合により、内部システインが、H.ピロリフェリチンの31位、またはペアワイズまたは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置にある、実施形態10~15のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0029】
実施形態17は、RSV Fポリペプチドが、部位0エピトープである融合後RSV F上に見出されないエピトープを含み、場合により、部位0エピトープが、配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209を含む、実施形態12~16のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0030】
実施形態18は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26の328位に対応する位置にアスパラギンを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0031】
実施形態19は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26の348位に対応する位置にアスパラギンを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0032】
実施形態20は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26の507位に対応する位置にアスパラギンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0033】
実施形態21は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26の498位に対応する位置にロイシンを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0034】
実施形態22は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26のイソロイシン217位に対応する位置にプロリンを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0035】
実施形態23は、RSV Fポリペプチドが、配列番号26の155位に対応する位置にシステイン以外のアミノ酸、および/または配列番号26の290位に対応する位置にシステイン以外のアミノ酸を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0036】
実施形態24は、配列番号26の155位に対応する位置にセリン、および/または配列番号26の290位に対応する位置にセリンを含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0037】
実施形態25は、RSV Fポリペプチドがフリン切断部位を欠損し、場合により、リンカーがフリン切断部位の代わりに存在する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0038】
実施形態26は、RSV Fポリペプチドが、配列番号17のアミノ酸1~478と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0039】
実施形態27は、RSV Fポリペプチドが、配列番号17の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0040】
実施形態28は、配列番号17のアミノ酸1~478を含む、実施形態20または21に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0041】
実施形態29は、配列番号23のアミノ酸1~478と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0042】
実施形態30は、RSV Fポリペプチドが、配列番号23の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~19または23のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0043】
実施形態31は、配列番号23のアミノ酸1~478を含む、実施形態23または24に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0044】
実施形態32は、配列番号3~23のいずれか1つの配列を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0045】
実施形態32aは、配列番号17の配列を含む、実施形態32に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0046】
実施形態32bは、配列番号23の配列を含む、実施形態32に記載の抗原性RSVポリペプチドである。
【0047】
実施形態33は、実施形態10~32bのいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドを含むフェリチン粒子である。
【0048】
実施形態34は、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドまたはフェリチン粒子、およびRSV Gポリペプチドを含む組成物である。
【0049】
実施形態34bは、組成物がフェリチン粒子を含み、フェリチン粒子がRSV Gポリペプチドを含み、場合により、RSV Gポリペプチドがフェリチン粒子に化学的にコンジュゲートされている、実施形態34の組成物である。
【0050】
実施形態34cは、RSV Gポリペプチドがグリコシル化されていない、実施形態34または34bに記載の組成物である。
【0051】
実施形態35は、実施形態1~33のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドまたはフェリチン粒子、または実施形態34~34cのいずれか1つに記載の組成物を含み、さらに薬学的に許容される担体を含む組成物である。
【0052】
実施形態36は、RSVに対する免疫応答を誘発する方法において、またはRSV感染に対する対象の保護において使用するための、実施形態1~35のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物である。
【0053】
実施形態37は、RSVに対する免疫応答を誘発する、またはRSV感染に対して対象を保護する方法であって、実施形態1~36のいずれか1つに記載の1つまたはそれ以上の抗原性RSVポリペプチド、フェリチン粒子、または組成物を対象に投与する工程を含む方法である。
【0054】
実施形態38は、対象がヒトである、実施形態36~37のいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチド、フェリチン粒子、組成物、または方法である。
【0055】
実施形態39は、場合により核酸がmRNAである、実施形態1~32bのいずれか1つに記載の抗原性RSVポリペプチドをコードする核酸である。
【0056】
実施形態39bは、実施形態39に記載の核酸、およびRSV Gポリペプチドをコードする核酸を含む組成物またはキットであり、場合により、一方または両方の核酸がmRNAである。
【0057】
追加の目的および利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的に説明から明白であり、または実践により学ぶことができるであろう。目的および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組合せによって実現および達成される。
【0058】
前述の一般的説明および以下の詳細な説明は、単なる例示および説明であり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0059】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する以下の図面は、いくつかの実施形態を例証し、説明と共に本明細書に記載する原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1A】例示的なRSV Pre-F-NPポリペプチド構造を示す図である。(
図1A)各セグメントのN末端に対応する残基番号を列挙する線形図。番号付けは配列番号26による。ドメイン1~3は、それぞれDI、DIIおよびDIIIで示され、7残基(heptad)反復領域A(HRA)および7残基反復領域B(HRB)もまた標識される。C末端フェリチンは標識される(フェリチンナノ粒子)。RSV F部分のF1およびF2断片を描画の下に表示する。ペプチド27断片(p27)融合ペプチド(FP)とフリン切断部位(フリン部位)を欠失させ、可撓性リンカーで置き換えて一本鎖F構築物を形成したF1とF2断片の間の領域をラインとして示し、描画の上に表示した。図の上の星印は、操作されたグリコシル化部位E328N、S348NおよびR507Nのおおよその位置を示す。
【
図1B】例示的なRSV Pre-F-NPポリペプチド構造を示す図である。(
図1B)D25、AM14、101F、およびパリビズマブ抗体についての鍵となる中和(Nab)エピトープを示す、融合前RSV F部分の構造モデル。共有される融合前および融合後の構造エピトープの近似領域は、白い三角形で示される。例示的な操作されたグリコシル化部位E328N、S348NおよびR507Nの位置は標識される。操作されたグリコシル化部位は、融合前と融合後のコンフォメーション間で構造的に共有され、D25、AM14、101Fおよびパリビズマブなどの抗体によって認識される鍵となる中和エピトープから離れた領域にマップされる。このように、これらの操作されたグリカン部位を含有する構築物は、依然として上記の中和抗体に結合する(データは示されていない)。
【
図1C】例示的なRSV Pre-F-NPポリペプチド構造を示す図である。(
図1C)HRAおよびHRB領域を有するRSV融合前Fタンパク質ナノ粒子(Pre-F-NP)の構造モデルはより濃い影の者である。得られた折り畳まれたPre-F-NP構築物は、
図1Bにリストされた鍵となるエピトープを提示する24-量体を形成することができる。
【
図1D】例示的なRSV Pre-F-NPポリペプチド構造を示す図である。(
図1D)RSV Pre-F-NP構築物RF8085(配列番号1)の電子顕微鏡写真の2Dクラス平均は、24マーのフェリチンナノ粒子上のRSV F三量体部分の対称性を示す。
【
図2】D25抗体ウエスタンブロットにより測定された、293細胞馴化培地中で発現された、いくつかのPre-F-NP構築物の小規模発現を示す図である。RF8090は、配列番号2であり、これは、RF8085と同じ配列、すなわち配列番号1を有するCHO発現において使用されるクローニング変異体である。RF8085およびRF8090は、
図1Aに記載の欠失および一本鎖リンカーを有するDS-CAVのジスルフィドおよび空洞充填変異を有するPre-F-NP構築物であり、N末端をフェリチンに融合させたものである。RF8100-RF8105およびRF8108-RF8112は、それぞれ配列番号3~8および11~14の配列を有する。scF-pFerr=RSV Fポリペプチドとフェリチンの融合タンパク質。RF8090ベンチマークに対する構築物の発現を改善すると思われる変異は、ウエスタンブロット下に示される。注目すべき変異には、E328N、S348NおよびR507N変異を介したグリカン部位の付加、ならびにウエスタンブロットで測定した馴化培地中へのRSV Fナノ粒子の発現および分泌を増加させた中央ヘリックスキャッピング変異I327Pがある。
【
図3】293発現からの馴化培地のウエスタンブロット分析により測定した、RF8085(配列番号1、対照構築物)およびRF8106(配列番号9、RF8108におけるI217P変異およびDS-CAV1のジスルフィド(DS)変異を欠如するI217P変異を含む)の発現を示す図である。DSを中心ヘリックスキャッピング変異I217Pで置き換えると、発現が有意に増加した。DSを中心ヘリックスキャッピング変異で置き換えても、融合前特異的抗体D25およびAM14への構築物の結合に影響を及ぼさない。
【
図4】RF8106構築物(配列番号9)のサイズ排除クロマトグラフィー精製の結果を示す。Superose 6調製SECカラム上の約65mlのRF8106ナノ粒子の保持体積は、折り畳まれた24マーのナノ粒子と一致しており、これは、RF8106における変異はナノ粒子形成を妨げなかったことを示唆する。
【
図5】
図5A-5Bは、非還元(5A)および還元(5B)RF8106の動的光散乱(DLS)分析を示す図である。SEC分析と同様に、DLSは、RSV Pre-F-NPが予想される折り畳みナノ粒子を形成することを実証した。さらに、還元データは、粒子が還元によって破壊されなかったことを示しており、これは、変異によってフェリチン上に導入された表面露出システインへのアジュバントコンジュゲーション前に行われた(
図6を参照されたい)。
【
図6】TLR9アゴニストCpGへのコンジュゲーションの有無に関わらず、RF8106のクーマシー染色SDS-PAGEゲル分析を示す図である。CpG処理ナノ粒子のゲルシフトの増加は、CpGアジュバントをRSV Fナノ粒子に約40~50%完了まで添加し得ることを実証した。CpG、またはTLR7/8アゴニストSM7/8などの他の免疫刺激性部分のコンジュゲーションは、融合前特異的抗体D25およびAM14に結合する粒子の能力を阻害しなかった。
【
図7】(RF8117、配列番号17)を有するRSV F、および追加のグリカン(RF8085、配列番号1、およびRF8113、配列番号16)を有しないRSV Fを含むナノ粒子のウエスタンブロットを示す図である。RF8113は、RF8106と同様であるが、RF8106からのS111C表面露出システイン(フェリチン残基番号付けを使用して、すなわち、配列番号208のフェリチン配列中の位置に対応する)を、K79C表面露出システイン(またフェリチン残基番号付けを使用する)に置き換えて、コンジュゲーション部位をPre-F部分からさらに離すようにした。RF8106と同様に、RF8113は、ベンチマーク分子RF8085に対して改善された発現を保持する。RF8117は、RF8113と同様であるが、
図2で同定された3つのグリコシル化変異、すなわち、E328N、S348NおよびR507Nをさらに含み、発現をさらに改善し、
図1Bに記載されるように、融合前Fおよび融合後Fコンフォメーション間で共有される非中和エピトープをブロックする。
【
図8】潜在的トリプシン様プロテアーゼ切断部位における異なる置換を有するRSV F構築物の発現を示す図である。RF8090(CHO発現ベクターに適合した異なるDNA配列を有するRF8085と同じタンパク質配列)のCHO細胞株発現において、ポリペプチドがFとフェリチン部分の間で切り取られ、発現の低下をもたらすことが観察された。F部分の得られた質量により、タンパク質分解は、Pre-F-NP構築物のHRB、ブル-フロッグリンカー領域の近くで起こる可能性があると推定された。この領域内のリシンおよびアルギニン残基(残基約450~550)の変異を、構築物の潜在的トリプシン様タンパク質分解を排除するために探索した。RF8117(K498LおよびK508Q)に対するRF8122(配列番号18)の変異は、293細胞における改善された発現をもたらし、CHO細胞におけるタンパク質分解を減少または排除し得る。選択的変異は、発現を制限した。
【
図9-1】
図9A-Bは、安定にトランスフェクトされたCHO細胞におけるRF8090、RF8117およびRF8140の発現を示す図である。RF8090(配列番号2)の発現収率は、低レベルで観察された。DS-CAV1のジスルフィドを置き換える変異、および潜在的なチプシン切断部位を除去するためのF部分とフェリチン部分の間のリンカーへの変異を上記のように導入して、RF8117(配列番号17)およびRF8140(配列番号23)を構築し、これを安定発現CHO細胞にクローニングした。(
図9A)CHO馴化培地中のCHO細胞の3つおよび4つのプールからのRF8117およびRF8140のそれぞれの発現を、D25-ウエスタンブロット分析によりCHO馴化培地中のRF8090の収率と比較した。RF8117の3つ全てのCHOプール、およびRF8140の4つ全てのCHOプールは、RF8090よりも高い収率で発現する。(
図9B)OctetによるD25融合前F特異抗体により測定したCHO馴化培地へのRF8117の発現。左のパネルは、標準曲線を提供するプロテインAチップ上のD25への結合の応答に対してプロットされた既知濃度の293培地から精製されたRF8140の応答を示す。個々のドットは、RF8117 CHO馴化培地からのD25結合に対する応答を表す。右のパネルは、D25結合応答に基づくCHOプール馴化培地中のRF8117またはRF8140の計算された収率を示す。RF8117とRF8140の両方は、D25およびAM14の結合によって測定すると培地中で発現され、293細胞と同様に、CHO細胞は、融合前F三量体構造を保持する折り畳まれた様式でPre-F-NPを発現することができることを実証した。
【
図10】
図10A-Bは、Pre-F-NP RF8117に対する中和抗体応答。(
図10A)DS-CAV1(Pre-F三量体、配列番号25)、融合後F三量体(Post-F三量体、配列番号24)または操作されたグリコシル化を有するPre-F-NP(Pre-F-NP、RF8117、配列番号17)の高用量(1μg)および低用量(0.1μg)免疫によって誘発されたRSV中和力価の比較をVERO細胞アッセイによって測定した。全てのRSVポリペプチドを、本明細書に記載されるように、アジュバントAF03とともに投与した。全体を通じて、別段の記載がない限り、AF03は、RSVポリペプチドまたはナノ粒子とともに投与されたが、それにコンジュゲートされなかった。RSVポリペプチドおよび用量は、x軸の下に表示される。Pre-F-NP免疫と比較した高用量反応の統計学的解析が示される。(
図10B)DS-CAV1(Pre-F三量体)、操作されたグリコシル化を伴わないPre-F-NP(RF8113、配列番号16)、または操作されたグリコシル化を伴うPre-F-NP(RF8117、配列番号17)を用いた高用量(1μg)および低用量(0.1μg)免疫によって誘発されたRSV中和力価の比較をVERO細胞アッセイによって測定した。全てのRSVポリペプチドは、本明細書に記載されるように、アジュバントAF03(いずれのポリペプチドまたはナノ粒子にもコンジュゲートしていない)とともに投与された。RSVポリペプチドおよび用量は、x軸の下に表示される。
【
図11-1】
図11A-Dは、マウスまたは非ヒト霊長類モデルにおいて、融合後F三量体(配列番号24)またはPre-F-NP(RF8140、配列番号23)を用いた免疫によって誘発されたRSV融合前F三量体(DS-CAV1)結合抗体およびRSV中和抗体の比較を示す図である。(
図11A)融合後FとPre-F-NP(RF8140、配列番号23)との間の免疫からマウスにおいて誘発された融合前F三量体結合抗体応答を比較する。(
図11B)融合後FおよびPre-F-NP(RF8140、配列番号23)による免疫からマウスにおいて誘発された中和抗体応答を示す。(
図11C)アジュバントの有無に関わらず、Pre-F-NPによって非ヒト霊長類において誘発された融合前F三量体結合抗体応答(AF03、下記括弧内に示される)を比較する。(
図11D)AF03アジュバントの有無に関わらず、Pre-F-NP(RF8140、配列番号23)による免疫によって誘発されたRSV中和力価を比較する。マウスにおいては、Pre-F-NPは、融合後三量体と比較して、高い融合前のF結合応答およびRSV中和反応を誘発する。非ヒト霊長類においては、Pre-F-NPは、強力な中和反応を誘発する。
【
図12】
図12A-12Bは、操作されたグリコシル化部位が融合後エピトープをブロックすることを示す図である。(
図12A)Octetにより測定した、高用量(1μg)および低用量(0.1μg)での操作されたグリコシル化を伴わないPre-F-NP(RF8113)、または操作されたグリコシル化を伴うPre-F-NP(操作されたGly粒子)による免疫によって誘発された融合前F(DS-CAV1)に対する抗体応答を示す。(
図12B)Octetにより測定した、高用量(1μg)および低用量(0.1μg)での操作されたグリコシル化を伴わないPre-F-NP(RF8113)、または操作されたグリコシル化を伴うPre-F-NP(RF8117)による免疫によって誘発された融合後三量体に対する抗体応答を示す。上記のように、全てのRSVポリペプチドを免疫中にAF03と混合した。RF8113とRF8117はいずれも、融合前Fに対する強固な抗体応答を誘発するが、RF8117によって誘発される融合後F抗体応答は、大幅に低下する。これは、共有される融合前エピトープおよび融合後エピトープへの操作されたグリカンマッピングによる(
図2B)。
【
図13-1】
図13A-Cは、操作されたグリコシル化部位による非中和エピトープのブロッキングを示す図である。(
図13A)VERO細胞アッセイにより測定したマウス試験における0.1μg用量での野生型グリコシル化部位(「Wtグリカン粒子」、RF8113、配列番号16)を有するPre-F NP対追加的な操作されたグリコシル化部位(「+グリカン粒子」、RF8117、配列番号17)を有するPre-F NPによる免疫によって誘発されたRSV中和力価の比較。(
図13B)マウス研究における0.1μg用量でのWtグリカン粒子(RF8113、配列番号16)対+グリカン粒子(RF8117、配列番号17)による免疫によって誘発されたRSV融合後F三量体結合抗体応答の比較。(
図13C)パネルAおよびBからの結合力価に対する測定された中和力価の比は、操作されたグリカンが、機能的な中和抗体応答を低下させなかったが、共有された融合前後エピトープに誘発された非中和抗体を低下させ(
図1B)、それによって中和/結合抗体比を改善したことを実証する。
【
図14-1】
図14A-Dは、フェリチンナノ粒子にコンジュゲートしたRSV G中央ドメインペプチド(Gcc)の特徴付けを示す図である。(
図14A)Gcc-NP抗原を形成する、RSV G中央ドメイン(配列番号29)のフェリチンナノ粒子へのクリックコンジュゲーションを示すクーマシー染色SDS-PAGEゲル。(
図14B)Gcc-NPの構造モデル。(
図14C)マウス研究における、Gccペプチド単独(Gccペプチド、配列番号29)対ナノ粒子にコンジュゲートしたGccペプチド(Gcc-NP)による免疫によって誘発されたGcc結合抗体応答の比較。未処理血清からの代表的な反応を白枠で示し、2回目の免疫後からの反応を薄灰色枠で示し、3回目の免疫後からの反応を濃灰色枠で示す。(
図14D)HAE細胞アッセイによって測定された、3回目の注射後のマウス研究におけるGccペプチド(配列番号29)対Gcc-NPによる免疫によって誘発されたRSV中和力価の比較。未処置動物からの血清およびGccペプチドで免疫した動物からの血清をプールし、力価をバーとして示した。
【
図15-1】
図15A-Cは、RSV Pre-F-NP(RF8140)およびGcc-NPの同時投与は、中和反応を誘発する。マウスを、抗原あたり1μg用量で、Pre-F-NP(RF8140)単独、Gcc-NP単独、またはPre-F-NPおよびGcc-NPを組み合わせて免疫した。上記のように、全ての免疫をAF03でアジュバント化した。(
図15A)RF8140単独(Pre-F-NP)またはRF8140およびGcc-NP(Pre-F-NP+Gcc-NP)によるマウスの免疫は、融合前F三量体に結合する抗体を誘発した。(
図15B)Gcc-NP単独(Gcc-NP)またはRF8140およびGcc-NP(Pre-F-NO+Gcc-NP)によるマウスの免疫は、Gccペプチドに結合する抗体を誘発した。(
図15C)Pre-F-NP単独、Gcc-NP単独、またはPre-F-NPとGcc-NPの同時投与のいずれかで免疫した動物は、HAE中和アッセイで測定した場合、第2および第3の免疫後に中和反応を誘発する。Pre-F-NP+Gcc-NPの同時投与は、Pre-F-NP単独による免疫によって誘発されるものよりも優れた中和反応を誘発した。
【
図16】
図16A-Bは、Pre-F-NPおよびGcc-NPの同時投与は、Pre-融合F三量体またはGcc-ナノ粒子に結合する抗体の誘発と干渉しない。F感受性VERO細胞アッセイによって測定された中和力価は、
図16Aの左側にあり、FおよびG感受性HAEアッセイによって測定された中和力価は、
図16Bの右側に示される。動物の免疫は、
図15と同様であった。免疫に使用されるRSVポリペプチドは、水平軸下にある。黒いバーは、
図15に記載される免疫群からプールされた血清を表し、同様に標識される。未処置動物の血清もまた黒いバーで示され、比較のために表示される。融合前F三量体で枯渇された血清は白色で示され、対応する黒いバーの右側にある。Gエクトドメインで枯渇された血清は、対応する黒いバーのちょうど右側に、斜めにストライプされた棒で示される。融合前F三量体で枯渇され、続いてGエクトドメインで枯渇された血清は、垂直にストライプされたバーで示される。(
図16A)中和力価は、RF8140免疫およびRF8140+Gcc-NP同時投与由来の血清について、VERO細胞アッセイにおいて観察されたが、未処理血清またはGcc-NP免疫単独由来の血清では観察されなかった。RF8140またはRF8140+Gcc-NP群の血清を融合前F三量体で枯渇させると、測定可能な中和力価が低下した。(
図16B)中和力価は、RF8140、Gcc-NP、またはGcc-NPと同時投与したRF8140で免疫した動物由来の血清について、HAE細胞アッセイにおいて観察された。未処置動物からの血清は中和反応を示さなかった。融合前F三量体で枯渇させたRF8140で免疫した動物由来の血清は、測定可能な中和力価の低下を示す。Gエクトドメインで枯渇させたGcc-NPで免疫した動物由来の血清は、測定可能な中和力価の低下を示す。RF8140とGcc-NPの同時投与で免疫した動物由来の血清は、融合前F三量体単独で枯渇させた場合、測定可能な中和力価の低下を示さないが、融合前F三量体とGエクトドメインの両方で枯渇させた場合、測定可能な中和力価の低下を示す。まとめると、これらのデータは、Pre-F-NPとGcc-NPの同時投与は、融合前FまたはGに対する中和抗体を誘発する抗原のそれぞれの能力と干渉しないことを示唆する。
【
図17】
図17A-Bは、AF03、SPA09もしくはミョウバンによるRF8117またはRF8140のアジュバント化は、非アジュバント化RF8117と比較して、マウスにおいて優れた中和反応を誘発する。(
図17A)非アジュバント化(No Adj)、ミョウバンでアジュバント化またはAF03でアジュバント化のいずれかのRF8117で免疫したマウス由来の血清の中和力価は、VERO細胞アッセイによって測定した場合に示される。(
図17B)非アジュバント化(Adjなし)のRF8117、SPA09でアジュバント化されたRF8117、またはAF03でアジュバント化されたRF8140のいずれかで免疫したマウス由来の血清の中和力価は、VERO細胞アッセイによって測定した場合に示される。RF8117またはRF8140のいずれについての全ての場合において、未処置マウスのアジュバント化群では、非アジュバント化非群よりも高い中和力価が誘発された。
【
図18-1】
図18A-Bは、AF03またはSPA09を用いたRF8140のアジュバント化は、非ヒト霊長類(NHP)において、非アジュバント化F8140免疫と比較して優れた中和反応を誘発する。(
図18A)ELISAで測定された、非アジュバント化(Adjなし)、AF03でアジュバント化またはSPA09でアジュバント化(以下に示されように、SPA09の2用量を使用した)のいずれかのRF8140による免疫後のNHP血清で測定された融合前F三量体応答。全ての時点で、AF03またはSPA09によるアジュバント化は、優れた中和反応を誘発する。(
図18B)非アジュバント化(No Adj)、AF03でアジュバント化された、またはSPA09でアジュバント化された(下記に示すように、SPA09の2用量を使用した)のいずれかの、RF8140で免疫したNHPからの血清の中和力価を、VERO細胞アッセイにより測定した。全ての場合において、アジュバントによるRF8140による免疫は、全ての時点において、アジュバント非アジュバント投与群よりも高い中和力価を誘導する。
【
図19】
図19A-Bは、RF8140のTLR7/8アゴニストSM7/8またはTLR9アゴニストCpGへのコンジュゲーションは、非アジュバント化RF8140単独と比較して優れた融合前F結合力価を誘導する。(
図19A)未処置マウス、非アジュバント化RF8140で免疫したマウス、SM7/8アジュバントとコンジュゲートされたRF8140で免疫したマウス、130ngのSM7/8でアジュバント化されたRF8140、または20μgのSM7/8でアジュバント化されたRF8140のいずれかからの血清において測定された融合前F三量体結合応答が示されている。SM7/8にコンジュゲートされたRF8140は、非アジュバント化群またはSM7/8アジュバント化群よりも高い融合前F三量体結合力価を誘発する。(
図19B)未処置マウス、非アジュバント化RF8140で免疫したマウス、CpGアジュバントとコンジュゲートされたRF8140、680ngのCpGでアジュバント化されたRF8140、または20μgのSM7/8でアジュバント化されたRF8140のいずれかで免疫したマウスからの血清において測定された融合前F三量体結合応答を示す。SM7/8にコンジュゲートされたRF8140は、非アジュバント化群またはSM7/8アジュバント化群よりも高い融合前Fトリマー結合力価を誘発する。
【
図20-1】
図20A-Gは、Fサブユニットワクチン候補は、MIMICシステムにおいて、Pre-F指向性中和抗体およびTh1 CD4
+T細胞反応を誘発する。(
図20A)MIMICシステムにおける抗pre-F力価は、10ng/mlのPre-F NPで各Agをモル等量濃度のFでプライミングした後、AFにより測定された(n=48~49ドナー/群)。(
図20B)微小中和力価を測定し、国際単位/ml(IU/ml)で表す。(
図20C)抗pre-Fとpost-Fとの比>1は、F結合後抗体と比較して、F結合前抗体のより高いレベルを表し、一方、比値<1は、ポストFに対するより大きな抗体応答を表す。(
図20D)Fタンパク質負荷された標的細胞で再刺激された活性化CD154
+/CD4
+T細胞におけるTNFαの産生は、フローサイトメトリーを用いて測定された(n=48)。統計的有意性は、Tukey-Kramer-HSD多重比較によって決定された。(
図20E)ヒト対象における既存の抗体力価(血清状態)は、MIMICシステムにおけるRSV免疫応答の大きさと強く相関する。各ドナーからの血清中の抗Pre-F IgGを示す線形回帰プロット対総抗Pre-F IgG応答をソフトウェアまたはアルゴリズムにより生成し、共通の勾配に関するp値を統計学的方法により分析した(n=50)。Y軸は、RSVによるプライミング後に得られた抗Pre-F IgGレベルを表す。(
図20F)
図20Eと同様に、Fサブユニットワクチン候補でプライミングした後の各ドナーからの血清中の抗Pre-F IgG対総抗Pre-F IgGを示す線形回帰プロット(ポストFは四角形、Pre-F-NPは円形、およびDC-Cav1は菱形)。抗Pre-IgF IgGの既存循環力価は、199,800~3,037,600,000の範囲であった。各ドナーは、各々、各ドナーのIgG値を表す。(
図20G)ヒトB細胞において、Gccペプチド単独(Gccペプチド)対ナノ粒子にコンジュゲートされたGccペプチド(Gcc-NP)による処置によって誘発されたGcc結合抗体応答の比較。上述のように、比較のために処置なし群を示す。
【
図21】
図21A-Cは、低用量(0.5μg)のRSV Gcc-フェリチンナノ粒子(「Gcc-NP」)によって誘発される中和抗体力価を示す図である。陰性対照および陽性対照として未処理および高度免疫血清を用いて、2回目の免疫の2週間後(2wp2)に採取された血清(
図21A)、または3回目の免疫の2週間後(2wp3)に採取された血清(
図21B)から、RSV A2 Gcc配列(AF03で製剤化される)を含有するRSV Gcc-NPによる免疫から誘発されたRSV A株HAE中和力価が示される。また、3回目の免疫の2週間後(2wp3)に採取された血清(
図21C)から、RSV A2 Gcc配列(AF03で製剤化される)を含有するRSV Gcc-NPによる免疫から誘発されたRSV B株HAE中和力価もまた示される。
【
図22】
図22A-Bは、RSV Gcc-NPによって誘発されたRSV A2株抗原結合抗体応答を示す図である。(
図22A)高用量(5μg)のRSV Gcc-NPによって誘発された、2回目の注射から2週間後(薄灰色枠)および3回目の注射から2週間後(濃灰色枠)に測定されたGcc A2株に対して誘発されたGcc結合抗体応答。未処置マウスの血清反応は陰性対照として示される。(
図22B)低用量(0.5μg)のRSV Gcc-NPによって誘発された、2回目の注射から2週間後(薄灰色枠)および3回目の注射から2週間後(濃灰色枠)に測定されたGcc A2株に対して誘発されたGcc結合抗体応答。
【
図23】
図23A-Bは、RSV Gcc-NPによって誘発されたRSV B1株抗原結合抗体応答を示す図である。(
図23A)高用量(5μg)のRSV Gcc-NPによって誘発された、2回目の注射から2週間後(薄灰色枠)および3回目の注射から2週間後(濃灰色枠)に測定されたGcc B1株に対して誘発されたGcc結合抗体応答。未処置マウスの血清反応は、陰性対照として示される。(
図23B)低用量(0.5μg)のRSV Gcc-NPによって誘発された、2回目の注射から2週間後(薄灰色枠)および3回目の注射から2週間後(濃灰色枠)に測定されたGcc B1株に対して誘発された、Gcc結合抗体応答。
【発明を実施するための形態】
【0061】
RSVポリペプチドは、単独で、別個の分子としてのアジュバントとともに、および/またはナノ粒子(例えば、フェリチン粒子またはルマジンシンターゼ粒子)の一部として投与した場合に抗原性であり得、自己アジュバント性であり得る。一部の実施形態では、抗原性RSVポリペプチドは、RSV Fポリペプチドおよびフェリチン、ならびに/または融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされているRSV Fポリペプチドを含む。RSV Fの融合前コンフォメーションに対する抗体の産生を導くRSV Fポリペプチドは、融合後のRSV Fと比較して、融合前のRSV Fに対するより高いインビボ抗体反応を誘導した。また、本明細書には、RSV Gの全部または一部を含むRSV Gポリペプチドが記載され、さらにフェリチンを含むことができる。RSV GおよびRSV Fタンパク質は、宿主細胞へのRSVの接着および融合に必須である。
【0062】
RSV Fは、2つのコンフォメーション状態、すなわち融合前と融合後のコンフォメ
ーションで存在する。自然の融合前状態では、RSV Fは3個のプロトマーで構成される三量体である。したがって、融合前コンフォメーションにおけるRSV Fポリペプチドによる免疫化は、改善された特性を有する可能性がある。一部の実施形態では、RSV
Fポリペプチドは、融合前コンフォメーションにおいてRSV Fに対する免疫を誘導するように設計される。RSV Gは、RSVとヒト気道上皮細胞との会合に関与する結合タンパク質である。
【0063】
A.定義
「抗原性部位0」または「部位0エピトープ」は、本明細書で使用される場合、野生型RSV F(配列番号26)のアミノ酸残基62~69および196~209を含む、融合前RSV F三量体の頂点に位置する部位を指す。部位0エピトープは、D25およびAM14などの、融合前RSV Fに対して特異性を有する抗体の結合部位であり、部位0エピトープに対する抗体の結合は、RSVの細胞表面接着をブロックする(Mclellanら、Science 340(6136):1113~1117頁(2013)を参照されたい)。
【0064】
本明細書で使用される場合、「抗原安定性」は、経時的なまたは溶液中での抗原の安定性を指す。
【0065】
「空洞充填置換」は、本明細書で使用される場合、融合前のRSV F三量体に存在する空洞を充填するための操作された疎水性置換を指す。
【0066】
「Fタンパク質」または「RSV Fタンパク質」は、ウイルス侵入時のウイルスエンベロープと宿主細胞膜との融合の促進に関与するRSVのタンパク質を指す。
【0067】
「RSVポリペプチド」または「Fポリペプチド」は、Fタンパク質の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを指す。
【0068】
「グリカン付加」は、本明細書で使用される場合、構築物の発現を増加させ、構築物の安定性を増加させ、または融合前および融合後のコンフォメーションの間で共有されるエピトープをブロックするように操作することができる、野生型RSV Fには存在しないグリコシル化部位を導入する変異の付加を指す。グリカン付加を含む修飾されたタンパク質は、より多くのグリコシル化を有し、したがって、より高い分子量を有する。グリカン付加は、RSV FポリペプチドがRSV Fの融合後コンフォメーションに対する抗体を誘発する程度を低減させることができる。
【0069】
「Gタンパク質」または「RSV Gタンパク質」は、本明細書で使用される場合、RSVとヒト気道上皮細胞との会合に関与する結合タンパク質を指す。例示的な野生型RSV Gアミノ酸配列を配列番号27として提供する。RSV Gタンパク質は、細胞外に存在するエクトドメイン(RSV G(配列番号27)のアミノ酸およそ66~297)を含む。RSV Gのエクトドメイン内に中央保存領域(GccまたはCCR、配列番号27のアミノ酸およそ151~193)がある。RSV GのCCRは、CX3Cモチーフを含む。CX3Cモチーフは、CX3CR1受容体に対するGタンパク質の結合を媒介する。
【0070】
「ヘリックスPROキャッピング」または「ヘリックスプロリンキャッピング」は、本明細書で使用される場合、ヘリックスキャップがプロリンを含む場合、ヘリックス形成を安定化できることを指す。
【0071】
「プロモーター内安定化置換」は、本明細書で使用される場合、RSV F三量体のプ
ロモーター内の相互作用を安定化することによって融合前のコンフォメーションを安定化させる、RSVにおけるアミノ酸置換を記載する。
【0072】
「プロモーター間安定化置換」は、本明細書で使用される場合、RSV F三量体のプロモーターと互いとの相互作用を安定化させることによって融合前コンフォメーションを安定化させる、RSVにおけるアミノ酸置換を記載する。
【0073】
「プロテアーゼ切断」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチド配列における感受性がある残基(例えば、リシンまたはアルギニン)のタンパク質分解(時に、当該技術分野において「クリッピング」とも呼ばれる)を指す。
【0074】
「融合後」は、RSV Fに関連して本明細書で使用される場合、ウイルスと細胞膜の融合後に起こるRSV Fの安定なコンフォメーションを指す。
【0075】
「融合前」は、RSV Fに関連して本明細書で使用される場合、ウイルス-細胞相互作用の前に取り入れられるRSV Fのコンフォメーションを指す。
【0076】
「プロトマー」は、本明細書で使用される場合、オリゴマータンパク質の構造単位を指す。RSV Fの場合、RSV F三量体の個々の単位はプロトマーである。
【0077】
「フェリチン」または「フェリチンタンパク質」は、本明細書で使用される場合、H.ピロリフェリチン(配列番号208または209)、またはP.フリオスス(P.furiosus)フェリチン、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)フェリチン、もしくはヒトフェリチンのような本明細書で考察される別のフェリチンと検出可能な配列同一性を有し、鉄を例えば細胞内もしくは組織内で貯蔵する、または鉄を血流に運ぶ役目を果たすタンパク質を指す。重鎖および軽鎖(例えば、イラクサギンウワバおよびヒトフェリチン)として知られる2つのポリペプチド鎖として存在するフェリチンを含むそのような例示的なフェリチンを、以下で詳細に考察する。一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に、例えば表1(配列表)に開示されるフェリチン配列と少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。フェリチンは、完全長の天然に存在する配列の断片であり得る。
【0078】
「野生型フェリチン」は、本明細書で使用される場合、その配列が天然に存在する配列からなるフェリチンを指す。フェリチンはまた、完全長のフェリチン、または野生型フェリチンとはそのアミノ酸配列において1つまたはそれ以上の差を有するフェリチンの断片も含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「フェリチン単量体」は、他のフェリチン分子と集合していない単一のフェリチン分子(例えば、該当する場合、単一のフェリチン重鎖または軽鎖)を指す。「フェリチン多量体」は、複数の会合したフェリチン単量体を含む。「フェリチンタンパク質」は、単量体フェリチンおよび多量体フェリチンを含む。
【0080】
本明細書で使用される場合、「フェリチン粒子」は、球状形態に自己集合したフェリチンを指す。フェリチン粒子は時に、「フェリチンナノ粒子」または単に「ナノ粒子」と呼ばれる。一部の実施形態では、フェリチン粒子は、24個のフェリチン単量体(または該当する場合、全体で24個の重鎖および軽鎖)を含む。
【0081】
「ハイブリッドフェリチン」は、本明細書で使用される場合、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部を有するH.ピロリフェリチンを含むフェリチンを指す。ウシガエルフ
ェリチンのアミノ末端伸長部として使用される例示的な配列を、配列番号217として示す。ハイブリッドフェリチンでは、免疫刺激性部分の結合部位がフェリチン粒子表面上に均一に分布するように、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部をH.ピロリフェリチンに融合することができる。「ウシガエルリンカー」は、本明細書で使用される場合、配列番号217の配列を含むリンカーである。ハイブリッドフェリチンはまた、時に「bfpFerr」または「bfpフェリチン」と呼ばれる。ウシガエル配列を含むいずれの構築物も、ウシガエル配列がなくとも、例えばリンカーまたは代替リンカーがなくとも提供することができる。例示的なウシガエルリンカー配列を、表1に提供する。表1はウシガエルリンカーを示すが、リンカーまたは代替リンカーを有しない同じ構築物を作製してもよい。
【0082】
「N-グリカン」は、本明細書で使用される場合、タンパク質のN(アスパラギン)残基のアミド窒素でタンパク質に結合した糖質鎖を指す。そのため、N-グリカンは、Nグリコシル化のプロセスによって形成される。このグリカンは多糖類であり得る。
【0083】
「グリコシル化」は、本明細書で使用される場合、タンパク質への糖質単位の付加を指す。
【0084】
「免疫応答」は、本明細書で使用される場合、抗原またはワクチンのような刺激に対する、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、または多形核細胞のような免疫系の細胞の応答を指す。免疫応答は、例えばインターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関係する体の任意の細胞を含み得る。免疫応答は、生得のおよび/または適応免疫応答を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「保護的免疫応答」は、対象を感染から保護する(例えば、感染を防止する、または感染に関連する疾患の発生を防止する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法は、当技術分野で周知であり、例えばリンパ球(例えば、BまたはT細胞)の増殖および/または活性、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生等を測定することを含む。「抗体応答」は、抗体が産生される免疫応答である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、生物に曝露または投与した場合に、免疫応答を誘発する作用物質、および/またはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)が結合する、もしくは抗体(例えば、B細胞によって産生される場合)に結合する作用物質を指す。一部の実施形態では、抗原は、生物において液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。あるいはまたは加えて、一部の実施形態では、抗原は、生物において細胞性応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞を含む)を誘発する。特定の抗原は、標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたはいくつかのメンバーにおいて免疫応答を誘発し得るが、標的生物種の全てのメンバーにおいて誘発するわけではない。一部の実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、抗原は、抗体および/またはT細胞受容体に結合するが、生物において特定の生理的応答を誘導しても誘導しなくてもよい。一部の実施形態では、例えば、抗原は、in vivoでそのような相互作用が起こるか否かによらず、in vitroで抗体および/またはT細胞受容体に結合し得る。一部の実施形態では、抗原は、異種免疫原によって誘導される産物を含む、特異的液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。抗原は、本明細書に記載されるフェリチン(例えば、1つまたはそれ以上の変異を含む)および非フェリチンポリペプチド(例えば、RSVポリペプチド)を含む抗原性フェリチンタンパク質を含む。
【0086】
「免疫刺激性部分」は、本明細書で使用される場合、フェリチンまたは抗原性フェリチンポリペプチドに共有結合し、免疫系の構成要素を活性化することができる(単独で、またはフェリチンまたは抗原性フェリチンポリペプチドに結合した場合)部分を指す。例示的な免疫刺激性部分は、toll-like受容体(TLR)、例えば、TLR4、7、8、または9のアゴニストを含む。一部の実施形態では、免疫刺激性部分はアジュバントである。
【0087】
「アジュバント」は、本明細書で使用される場合、抗原に対する免疫応答を非特異的に増強する物質またはビヒクルを指す。アジュバントには、抗原を吸着させた無機質(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、またはリン酸塩)の懸濁液、抗原溶液を鉱油または水中で乳化させた油中水型または水中油型乳剤(例えば、フロイント不完全アジュバント)を挙げることができるがこれらに限定されない。時に、抗原性をさらに増強するために死菌マイコバクテリア(例えば、フロイント完全アジュバント)を含める。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ)もまた、アジュバントとして使用することができる(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;および第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントはまた、Toll-Like受容体(TLR)アゴニストおよび共刺激分子のような生物学的分子も含み得る。アジュバントは、組成物中の個別の分子として、またはフェリチンもしくは抗原性フェリチンポリペプチドに共有結合(コンジュゲート)して投与してもよい。
【0088】
「抗原性RSVポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、分子がRSVに関して抗原性であるのに十分な長さのRSVアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドを指す。抗原性は、フェリチンのような異種配列、および/または免疫刺激性部分をさらに含む構築物の一部としてのRSV配列の特色であり得る。すなわち、RSV配列が異種配列をさらに含む構築物の一部である場合、構築物は、異種配列を有しないRSV配列がそうすることができるか否かによらず、抗RSV抗体を生成する抗原としての役目を果たすことができれば十分である。
【0089】
「抗原性フェリチンポリペプチド」および「抗原性フェリチンタンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、分子が非フェリチンポリペプチドに関して抗原性である十分な長さのフェリチンおよび非フェリチンポリペプチドを含むポリペプチドを指す。抗原性フェリチンポリペプチドはさらに、免疫刺激性部分を含み得る。抗原性は、より大きい構築物の一部としての非フェリチン配列の特色であり得る。すなわち、構築物は、フェリチンを有しない非フェリチンポリペプチド(および該当する場合、免疫刺激性部分)がそうすることができるか否かによらず、非フェリチンポリペプチドに対する抗原としての役目を果たすことができれば十分である。一部の実施形態では、非フェリチンポリペプチドは、RSVポリペプチドであり、この場合抗原性フェリチンポリペプチドはまた、「抗原性RSVポリペプチド」である。しかしながら、明白にするために、抗原性RSVポリペプチドは、フェリチンを含む必要はない。「抗原性ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、抗原性フェリチンポリペプチド、および抗原性RSVポリペプチドのいずれかまたは両方であるポリペプチドを指す。
【0090】
「自己アジュバント性」は、本明細書で使用される場合、フェリチンおよび免疫刺激性部分が同じ分子実体中にあるように、フェリチンおよびフェリチンに直接コンジュゲートされた免疫刺激性部分を含む組成物またはポリペプチドを指す。非フェリチンポリペプチドを含む抗原性フェリチンポリペプチドを、免疫刺激性部分にコンジュゲートして、自己アジュバント性ポリペプチドを生成してもよい。
【0091】
「表面に露出した」アミノ酸は、本明細書で使用される場合、該当する場合に、多量体形成後、タンパク質がその本来の三次元コンフォメーションにある場合に溶媒分子が接触することができる側鎖を有するタンパク質(例えば、フェリチン)中のアミノ酸残基を指す。このように、例えば24量体を形成するフェリチンの場合、表面に露出したアミノ酸残基は、フェリチンが24量体として、例えばフェリチン多量体またはフェリチン粒子として集合する場合に、その側鎖に溶媒が接触することができる残基である。
【0092】
本明細書で使用される場合、「対象」は、動物界の任意のメンバーを指す。一部の実施形態では、「対象」はヒトを指す。一部の実施形態では、「対象」は非ヒト動物を指す。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫、および/または虫を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであり得る。本発明のある特定の実施形態では、対象は成体、青年期、または幼体である。一部の実施形態では、用語「個体」または「患者」は、「対象」と互換的に使用され、互換的であると意図される。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチン接種する」は、例えば病原体に対して免疫応答を生成することが意図される組成物の投与を指す。ワクチン接種は、病原体に対する曝露および/または1つもしくはそれ以上の症状の発生の前、間、および/または後に投与することができ、一部の実施形態では、病原体に対する曝露の前、間、および/または直後に投与することができる。一部の実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切な間隔を空けた複数回の投与を含む。
【0094】
本開示は、所定の核酸配列またはアミノ酸配列(参照配列)に対してそれぞれ、ある特定の程度の同一性を有する核酸配列およびアミノ酸配列を記載する。
【0095】
2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同定されたヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0096】
用語「同一%」、「同一性%」、または類似の用語は、特に比較される配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指すと意図される。前記パーセンテージは、純粋に統計学的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたって分布していてもよいが、必ずしもランダムに分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアライメント後に前記配列を、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して比較することによって実行される。比較のための最適なアライメントは、手動で、またはSmith
and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482頁によるローカルホモロジーアルゴリズムの助けを借りて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443頁のローカルホモロジーアルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444頁の類似性検索アルゴリズムの助けを借りて、または前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラムの助けを借りて(GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、およびTFASTA、 in Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.)実行してもよい。
【0097】
パーセンテージ同一性は、比較される配列が対応する同一の位置の数を決定する工程、
この数を比較される位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除算する工程、およびこの結果に100を乗算する工程によって得られる。
【0098】
一部の実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%である領域に関して与えられる。例えば、参照核酸配列が200ヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200ヌクレオチド、一部の実施形態では、連続ヌクレオチドに関して与えられる。一部の実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長にわたって与えられる。
【0099】
所定の核酸配列またはアミノ酸配列に対してそれぞれ、特定の同一性の程度を有する核酸配列またはアミノ酸配列は、前記所定の配列の少なくとも1つの機能的特性を有することができ、例えば、一部の例では前記所定の配列と機能的に等価である。1つの重要な特性は、特に、対象に投与した場合にサイトカインとして作用する能力を含む。一部の実施形態では、所定の核酸配列またはアミノ酸配列に対して特定の同一性の程度を有する核酸配列またはアミノ酸配列は、前記所定の配列と機能的に等価である。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「キット」は、1つまたはそれ以上の化合物または組成物のような関連する構成要素、および溶媒、溶液、緩衝液、説明書、または乾燥剤のような1つまたはそれ以上の関連する材料の包装された組を指す。
【0101】
B.特定の位置に1つまたはそれ以上のアスパラギンを含むRSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチド
本明細書において、RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドを提供する。RSV Fポリペプチドは、RSV Fの全配列またはRSV Fの一部を含み得る。一部の実施形態では、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープはブロックされている。エピトープをブロックすることは、抗原性RSVポリペプチドが対象に投与される場合に、エピトープに対する抗体の生成を減少または排除する。これは、融合前コンフォメーションなどの、Fの特定のコンフォメーションに特異的なエピトープを標的とする抗体の割合を増加させることができる。Fは、まだ細胞に侵入していないウイルスにおいて融合前コンフォメーションを有するため、融合前Fを標的とする抗体の割合が増加すると、より高い程度の中和(例えば、本明細書に記載されているように、中和対結合比として発現される)を提供することができる。ブロッキングは、共有エピトープの近傍にN-グリカンなどの嵩高い部分を操作することによって達成することができる。例えば、野生型Fには存在しないN-グリコシル化部位は、例えば、適切な残基をアスパラギンに変異させることによって付加させることができる。一部の実施形態では、ブロックされたエピトープは、RSV Fの抗原部位1のエピトープである。一部の実施形態では、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有される2つまたはそれを超えるエピトープがブロックされている。一部の実施形態では、RSV Fの抗原部位1の2つまたはそれを超えるエピトープがブロックされている。一部の実施形態では、ブロックされたエピトープとトポロジー的に重複する1つもしくはそれ以上の、または全てのエピトープもブロックされ、場合により、ブロックされたエピトープは、RSV Fの抗原部位1のエピトープである。
【0102】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号26の328、348、または507位に対応するアスパラギンを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号26の328、348、または507位の少なくとも2つに対応するアスパラギンを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号26の328、348、または507位に対応するアスパラギンを含む。実施例に記載されるように、このようなアスパ
ラギンは、グリコシル化部位として機能し得ることが見出されている。さらに、いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、これらの部位におけるグリカンは、ポリペプチドが対象に投与される場合、融合前および融合後のRSV Fタンパク質に共通のエピトープを含む、近傍のエピトープに対する抗体の発生を阻害し得る。一部の実施形態では、配列番号26の328、348、または507位に対応するアスパラギンのグリコシル化は、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有される少なくとも1つのエピトープ、例えば、抗原部位1エピトープをブロックする。融合前および融合後のRSV Fタンパク質に共通のエピトープに対する抗体の発生を阻害することは、融合前のRSV Fタンパク質に特異的なエピトープ、例えば、部位0エピトープに対する抗体の発生を導くことができるため有益であり得、これは、他のRSV Fエピトープに対する抗体よりも効果的な中和活性を有する可能性がある。部位0エピトープは、配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209を含む。したがって、一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209を含む。
【0103】
本明細書に記載される構築物は、野生型RSV Fに対して異なる長さの欠失または置換を有し得ることに留意されたい。例えば、配列番号23およびその他の構築物において、野生型配列(配列番号26)の98~144位は、GSGNVGL(配列番号23の98~104位;また配列番号31)で置換され、配列番号26の328、348、または507位が、配列番号23の288、308、および467位に対応するように、40個のアミノ酸の正味除去がもたらされる。一般的に、本明細書に記載される構築物中の位置は、例えば、標準パラメータ(EBLOSUM62マトリックス、ギャップペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5)を有するNEEDLEMAN-WUNSCHアルゴリズムを用いて、ペアワイズアライメントにより、配列番号26の野生型配列上にマッピングすることができる対応する位置を同定するための代替のアプローチとして本明細書に提供される構造アライメントの検討もまた参照されたい。
【0104】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、融合後RSV Fの表面上のエピトープと構造的に類似する、融合前抗原上のエピトープをブロックするためにグリカンを付加する変異を含む。一部の実施形態では、グリカンは、RSV Fの融合後コンフォメーション中に存在し得るエピトープを特異的にブロックするために付加される。一部の実施形態では、RSV Fの融合後コンフォメーション中に存在し得るが、RSV Fの融合前コンフォメーション中に存在する1つまたはそれ以上のエピトープ、例えば、部位0エピトープには影響しないエピトープをブロックするグリカンが添加される。
【0105】
一部の実施形態では、上記で検討された1つまたはそれ以上のグリコシル化部位で付加されたグリカンは、他の構築物と比較して、哺乳動物細胞などの発現系における分泌を増加させる。
【0106】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸1~478と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号17の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸1~478を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号17の配列を含む。
【0107】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸1~478と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号2
3の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸1~478を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号23の配列を含む。
【0108】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、DS-CAV1配列(例えば、Mclellan,J.S.ら、Science 342(6158):592~598頁(2013)に記載される)(配列番号25)を含み、上記されるアスパラギンの少なくとも1つ、2つ、または3つを含むさらなる修飾がなされる。
【0109】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、フェリチンタンパク質をさらに含む。フェリチンタンパク質は、フェリチンに関するセクションにおいて後述される特色のいずれか、またはそれらの組合せをさらに含むことができる。
【0110】
RSV Fポリペプチドは、以下の検討において記載される付加的特色のいずれか、またはこのような特色の任意の実施可能な組合せをさらに含むことができる。
【0111】
一本鎖構築物
一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、一本鎖構築物、例えば、フリン切断部位を欠損するRSVポリペプチドである。一部の実施形態では、RSV Fは、1つまたはそれ以上のフリン切断部位を欠損する。フリン切断部位を欠損する構築物は、天然Fタンパク質の生物学的F1/F2断片に切断されない単一のポリペプチドとして発現される。
【0112】
アミノ酸置換
一部の実施形態では、RSV Fは、野生型配列に対して単一のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、RSV Fは、野生型配列に対して、1を超えるアミノ酸置換、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の置換を含む。例示的な野生型配列は、配列番号26である。
【0113】
一部の実施形態では、アミノ酸置換またはアミノ酸置換対は、プロトマー間安定化置換(複数可)である。プロトマー間安定化であり得る例示的な置換は、配列番号26の位置番号を用いると、V207L;N228F;I217VおよびE218F;I221LおよびE222M;またはQ224AおよびQ225Lである。
【0114】
一部の実施形態では、アミノ酸置換またはアミノ酸置換対は、プロトマー内安定化である。プロトマー内安定化であり得る例示的な置換は、配列番号26の位置番号を用いると、V220I;およびA74LおよびQ81Lである。
【0115】
一部の実施形態では、アミノ酸置換は、ヘリックス安定化であり、すなわち、RSV Fのヘリックスドメインを安定化するが予測される。ヘリックドメインの安定化は、部位0エピトープの安定化およびRSV Fの融合前コンフォメーションの安定化に一般的に寄与し得る。ヘリックス安定化であり得る例示的な置換は、配列番号26の位置番号を用いるとN216PまたはI217Pである。
【0116】
一部の実施形態では、アミノ酸置換は、ヘリックスキャッピングである。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、ヘリックスPROキャッピングである。ヘリックスキャッピングは、生物物理学的観察に基づいており、アルファヘリックス中のプロリン残基変異がヘリックス形成を破壊し得る一方で、ヘリックス領域のN末端のプロリンが、PHI/PSI結合角を安定化することによってヘリックス形成を誘導するのを助けることがある。ヘリックスキャッピングであり得る例示的な置換は、配列番号26の位置番号を用いるとN
216PまたはI217Pである。
【0117】
一部の実施形では、アミノ酸置換は、DS-CAV1のジスルフィド変異に置き換える。一部の実施形態では、DS-CAV1の操作されたジスルフィドは、配列番号26の位置番号を用いると、野生型(DS-CAV1のC69Sおよび/またはC212S変異)に復帰する。一部の実施形態では、DS-CAV1の1つまたはそれ以上のC残基をS残基で置換して、ジスルフィド結合を除去する。一部の実施形態では、配列番号26の位置番号を用いたC69SまたはC212S置換は、ジスルフィド結合を除去する。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号26の位置番号を用いたC69SとC212Sの両方を含む。一部の実施形態では、このようなシステインを置換し、それによってジスルフィド結合を除去することは、RSV Fポリペプチドの還元(すなわち、還元剤からの電子の受容)をブロックする。一部の実施形態では、配列番号26の位置番号を用いたI217P置換は、C69および/またはC212での置換の代わりに抗原に含まれる。配列番号26の位置217は、配列番号23の位置177に対応する。
【0118】
一部の実施形態では、アミノ酸置換は、トリプシンまたはトリプシン様プロテアーゼによるタンパク質分解を妨げる。一部の実施形態では、このようなタンパク質分解を妨げるアミノ酸置換は、RSV Fの7残基反復領域B(HRB)領域にある。野生型HRB領域を含むRSV F-フェリチン構築物のタンパク質分解と一致する断片の出現は、この領域におけるリシンまたはアルギニンがタンパク質分解の標的であることを示唆する。KまたはR残基を除くアミノ酸置換は、ノックアウト(KO)と呼ばれる。一部の実施形態では、KまたはRは、LまたはQに置換される。一部の実施形態では、Kは、LまたはQに置換される。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、配列番号26の位置番号を用いると、K498Lおよび/またはK508Qを含む。配列番号23の対応する位置は、それぞれ458および468である。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、K498LとK508Qの両方を含む。
【0119】
一部の実施形態では、アミノ酸置換は、グリカンを付加する。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、RSV Fポリペプチドにグリカンを付加することによって、グリコシル化を増加させる。グリカンを付加するための置換はまた、天然のグリコシル化(追加のグリカンなし)と比較して、操作されたグリコシル化と呼ばれる。
【0120】
一部の実施形態では、グリカンを付加するためのアミノ酸置換は、Nによる置換であった。一部の実施形態では、Nによるアミノ酸置換は、N結合型グリコシル化を可能にする。一部の実施形態では、Nによる置換は、Nに対する第2のアミノ酸位置C末端でのTまたはSによる置換を伴い、N×T/Sグリコシル化モチーフを形成する。一部の実施形態では、Nは、表面露出される。以下の実施例に示されるように、グリコシル化を増加させる変異は、RSV Fポリペプチドを含むポリペプチドの発現増加提供することができる。
【0121】
修飾に基づくRSV Fポリペプチドの特性の変化
RSV Fのアミノ酸配列の修飾は、RSV Fポリペプチドの特性を変化させることができる。RSV Fポリペプチドの特性には、RSV Fポリペプチドの構造的または機能的な特徴を含めることができる。
【0122】
一部の実施形態では、アミノ酸配列に対する単一の修飾は、RSV Fポリペプチドの複数の特性を変化させる。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、RSV Fポリペプチドの異なる特性を変化させる複数の修飾を含むことができる。一部の実施形態では、複数の修飾は、RSV Fポリペプチドの特性のより大きな変化をもたらす。
【0123】
一部の実施形態では、複数の修飾は、特定の特性に対して相加効果を有することができる。例えば、グリカンを付加するための2つのアミノ酸置換は、いずれかの単一アミノ酸置換と比較して、RSV Fポリペプチドのグリコシル化のより大きな増加をもたらすことができる。
【0124】
一部の実施形態では、複数の修飾は、RSV Fポリペプチドの異なる特性に影響を及ぼす。例えば、グリコシル化を増加させるための1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を1つまたはそれ以上のアミノ酸置換とともに作製して、還元をブロックすることができる。
【0125】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドへの修飾は、融合前コンフォメーション(一部の実施形態では、複数の修飾は、特定の特性に対して相加効果を有することができる。)を安定化する。
【0126】
一部の実施形態では、修飾は、例えば、Mclellanら、Science 340(6136):1113~1117頁(2013)に記載されるように、融合前RSV Fの部位0エピトープ(抗原部位0としても知られる)を安定化する。一部の実施形態では、部位0エピトープを安定化する修飾は、プロトマー間安定化である。一部の実施形態では、部位0エピトープを安定化する修飾は、それぞれ、抗体D25またはAM14への結合によって測定した場合、部位0および部位Vの結合によって測定されるように融合前Fを安定化する。
【0127】
一部の実施形態では、修飾は、発現系におけるRSV Fの発現を増加させる。一部の実施形態では、修飾は、発現系におけるRSV Fの分泌を増加させる。一部の実施形態では、修飾は、発現後の組換えRSV Fの安定性を増大させる。この変化は、細菌、真菌、昆虫、または哺乳動物などの任意のタイプの発現系であり得る。
【0128】
一部の実施形態では、プロリンを導入するアミノ酸置換は、他の構築物と比較して発現を増加させる。一部の実施形態では、グリカンを付加するアミノ酸置換は、他の構築物と比較して発現を増加させる。一部の実施形態では、KまたはRを他のアミノ酸で置換するアミノ酸置換は、他の構築物と比較して発現を増加させる。発現の観察可能な増加は、プロテアーゼ切断もしくは分解の相対的阻害、および/または宿主細胞もしくは細胞外環境における安定性の増加を含む、発酵稼働または他の生産プロセスの収量を増加させる任意のメカニズムに起因し得る。一部の実施形態では、RSV FのHRB領域の1つまたはそれ以上のK残基を他のアミノ酸で置換するアミノ酸置換は、他の構築物と比較して発現を増加させる。
【0129】
一部の実施形態では、Kを他のアミノ酸で置換するアミノ酸置換は、RSV Fポリペプチドの安定性を増加させる。一部の実施形態では、RSV FのHRB領域の1つまたはそれ以上のK残基を他のアミノ酸で置換するアミノ酸置換は、RSV Fポリペプチドの安定性を増大させる。一部の実施形態では、この増加した安定性は、プロテアーゼ切断の減少に起因する。
【0130】
一部の実施形態では、RSV Fは、ジスルフィドを除く変異、例えば、還元後のコンジュゲーションを防止する変異を含む。一部の実施形態では、I217P置換は、RSV
Fポリペプチドの還元をブロックする。一部の実施形態では、Kを他のアミノ酸で置換するアミノ酸置換は、還元剤の存在下でのRSV Fポリペプチドの還元をブロックする。
【0131】
一部の実施形態では、一本鎖構築物は、他の構築物と比較して発現を増加させる。
【0132】
一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、DS-CAV1配列(配列番号25)(Mclellan,J.S.ら、Science 342(6158):592~598頁(2013)に記載される)を含む。一部の実施形態では、RSV Fポリペプチドは、さらなる修飾がなされるDS-CAV1の配列を含み、例えば、上記されるアスパラギンの少なくとも1つ、2つ、または3つを含む。
【0133】
C.RSV Gポリペプチド
本明細書で使用される場合、RSV Gポリペプチドは、RSV Gの全配列またはRSV Gの一部を含み得る。RSV Gポリペプチドは、野生型配列と比較して修飾を含み得る。一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドは、野生型RSV G(配列番号27)と比較して修飾されたRSV Gである。
【0134】
一部の実施形態では、これらの修飾は、野生型RSV Gと比較して、RSV Gポリペプチドのアミノ酸に対する変化である。
【0135】
一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドは、RSV Gのエクトドメインの全部または一部(配列番号28またはそれに対応する位置)を含む。一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドは、Gcc領域の全部または一部(RSV Gのアミノ酸151~193(配列番号27))を含む。一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドは、CX3Cモチーフを含む。一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドは、CX3CR1受容体に結合する。Gcc領域は保存されており、免疫原性を有している。したがって、RSV株に対して広範な活性を有する抗体を誘発するために使用することができる。一部の実施形態では、RSV Gcc株Aは、配列番号32に示されるように提供される。一部の実施形態では、RSV Gcc株Bは、配列番号33に示されるように提供される。
【0136】
一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドはグリコシル化されていない。例えば、RSV Gポリペプチドは、NまたはS/T残基(例えば、それぞれQまたはA)の切断もしくは変異、またはそれらの組合せのいずれかによる、NXS/TXグリコシル化部位を欠損させることができる。
【0137】
一部の実施形態では、RSV Gポリペプチドは、抗原性フェリチンポリペプチドの一部である。例えば、RSV Gポリペプチドは、フェリチン上の表面に露出したシステインを介して、本明細書に記載されるようにフェリチンにコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、このフェリチンナノ粒子はまた、RSV Fポリペプチドおよび上記されるフェリチンタンパク質を含むポリペプチドのいずれかなどのRSV Fポリペプチドを含む融合タンパク質である。
【0138】
D.フェリチンを含む抗原性RSVポリペプチド
また、本明細書には、フェリチンおよびRSVポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドを提供する。RSVポリペプチドは、本明細書に記載されるRSV FポリペプチドのいずれかのなどのRSV Fポリペプチドであり得る。RSV Fポリペプチドは、RSV Fの全配列またはRSV Fの一部を含み得る。RSV Fポリペプチドは、野生型配列と比較して、1つまたはそれ以上の修飾(例えば、アミノ酸置換)を含み得る。RSVポリペプチドは、本明細書に記載されるRSV GポリペプチドのいずれかなどのRSV Gポリペプチドであり得る。
【0139】
一部の実施形態では、ポリペプチド中のフェリチンは、野生型フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンは、細菌、昆虫、真菌、鳥、または哺乳動物である。一部の実施形態では、フェリチンはヒトである。一部の実施形態では、フェリチンは細菌である。
【0140】
一部の実施形態では、フェリチンは、軽鎖および/または重鎖フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンは、昆虫フェリチン、例えば、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)重鎖フェリチン(配列番号211)またはイラクサギンウワバ軽鎖フェリチ
ン(配列番号212)である。一部の実施形態では、フェリチンは、ヒトフェリチン、例えば、ヒト重鎖フェリチン(配列番号214またはFTH1、遺伝子番号2495)またはヒト軽鎖フェリチン(配列番号215またはFTL、遺伝子番号2512)である。一部の実施形態では、フェリチンナノ粒子は、ヒトまたはイラクサギンウワバフェリチンナノ粒子などの重鎖フェリチンおよび軽鎖フェリチンの24個の総サブユニットを含む。イラクサギンウワバフェリチンナノ粒子は、重鎖フェリチンの12個のサブユニットおよび軽鎖フェリチンの12個のサブユニットを含むことができる。
【0141】
一部の実施形態では、抗原性RSVポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよびRSVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗原性RSVポリペプチドは、重鎖フェリチンおよびRSVポリペプチドを含む。一部の実施形態では、軽鎖フェリチンおよびRSVポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドは、RSVポリペプチドに連結していない重鎖フェリチンと集合することができる。一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびRSVポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドは、RSVポリペプチドに連結していない軽鎖フェリチンと集合することができる。RSVポリペプチド(またはより一般的には、非フェリチンポリペプチド)と連結していないフェリチンは、「裸のフェリチン」と呼ばれる。
【0142】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよびRSVポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドと集合して、単一のフェリチンナノ粒子上の同一または異なる非フェリチンポリペプチドの2つの提示を可能にする。一部の実施形態では、2つの異なる非フェリチンポリペプチドは、RSVポリペプチドである。一部の実施形態では、2つの異なる非フェリチンポリペプチドは、RSVおよび異なる感染性因子によってコードされる。一部の実施形態では、異なる感染因子由来の異なる非フェリチンポリペプチドは、ウイルスまたは細菌由来である。
【0143】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよび非フェリチンポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよび非フェリチンポリペプチドを含むポリペプチドと集合して二価組成物を生成することができ、非フェリチンポリペプチドの一方または両方は、RSV FまたはGポリペプチド、例えば、本明細書に記載されるRSV FまたはGポリペプチドであるなどのRSVポリペプチドである。
【0144】
一部の実施形態では、フェリチンは、場合により、本明細書に記載されるものなどの1つまたはそれ以上の変異を有する、H.ピロリフェリチン(例示的なH.ピロリフェリチン配列については配列番号208または209を参照されたい)である。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチン(または他の細菌フェリチン)とヒトフェリチンとの間の配列相同性がより低いことにより、ワクチンプラットフォームとして使用した場合に自己免疫の可能性を減少させ得る(Kanekiyoら、Cell 162,1090~1100頁(2015)を参照されたい)。
【0145】
一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の変異を有するピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)フェリチン(NCBI seq WP_011011871.1)である。
【0146】
一部の実施形態では、フェリチンは、野生型フェリチンと70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、95%より高い、97%より
高い、98%より高い、または99%より高い同一性を有する配列を含む。
【0147】
一部の実施形態では、RSVポリペプチドおよびフェリチンを含む、本明細書に開示される抗原性RSVポリペプチドを含むナノ粒子が提供される。
【0148】
一部の実施形態では、ナノ粒子を形成することが可能な異なるタンパク質を、フェリチンの代わりに使用する。一部の実施形態では、このタンパク質は、ルマジンシンターゼ(Raら、Clin Exp Vaccine Res 3:227~234頁(2014)を参照されたい)である。一部の実施形態では、このタンパク質は、ルマジンシンターゼ血清型1、2、3、4、5、6、または7である。例示的なルマジンシンターゼ配列を、配列番号216および219に提供する。一部の実施形態では、ルマジンシンターゼは、配列番号216または219と、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0149】
1.コンジュゲーションのためのシステイン
一部の実施形態では、フェリチンを、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチドのコンジュゲーションのための化学ハンドルを提供するように変異させる。これは、表面に露出した非システインアミノ酸をシステインに置き換える変異によって達成することができる。誤解を避けるため、「表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える」のような表現は、野生型または変異前配列における表面に露出したアミノ酸がシステインではないことを必然的に暗示している。免疫刺激性部分またはRSVポリペプチドのコンジュゲーションのための化学ハンドルを提供する別のアプローチは、リンカーのようなアミノ酸のセグメントをフェリチンのNまたはC末端に含めることであり、アミノ酸のセグメントはシステインを含む。一部の実施形態では、このシステイン(表面に露出したアミノ酸を置き換えるか、またはNもしくはC末端リンカーにある)は不対であり、このことは、これがジスルフィド結合を形成するために適切なパートナーシステインを有していないことを意味する。一部の実施形態では、このシステインは、フェリチンの二次構造を変化させない。一部の実施形態では、このシステインは、フェリチンの三次構造を変化させない。
【0150】
一部の実施形態では、このシステインを使用して、免疫刺激性部分のような作用物質をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、このシステインは、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン上のこのシステインにコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン粒子の表面上で露出する。一部の実施形態では、このシステインは、投与後にフェリチン粒子が集合する間、対象の分子および細胞と相互作用することができる。
【0151】
一部の実施形態では、このシステインの存在により、1つまたはそれ以上の免疫刺激性部分、例えばアジュバントのコンジュゲーションが可能となる。一部の実施形態では、免疫刺激性部分のコンジュゲーションは、このシステインの非存在下では起こらない。
【0152】
一部の実施形態では、システインに置き換えられる非システインアミノ酸は、H.ピロリフェリチンのE12、S72、A75、K79、S100、およびS111から選択される。このように、一部の実施形態では、システインのために置き換えられる表面に露出したアミノ酸は、H.ピロリフェリチンのE12、S26、S72、A75、K79、S100、またはS111に対応するアミノ酸残基である。類似のアミノ酸を、ペアワイズまたは構造アライメントによって、非H.ピロリフェリチンにおいて見出すことができる。一部の実施形態では、システインに置き換えられる非システインアミノ酸は、ヒト軽鎖フェリチンのS3、S19、S33、I82、A86、A102、およびA120に対応するアミノ酸から選択することができる。一部の実施形態では、システインに置き換えら
れる表面に露出したアミノ酸は、本来のアミノ酸がシステインに置き換えられた場合、これは集合したフェリチン多量体もしくは粒子において反応性である、および/またはこのシステインはフェリチン多量体もしくは粒子の安定性を妨害しない、および/またはこのシステインがフェリチンの発現レベルの低減をもたらさないという理解に基づいて選択される。
【0153】
一部の実施形態では、フェリチンはE12C変異を含む。一部の実施形態では、E12C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、E12C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のE12C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のE12C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0154】
一部の実施形態では、フェリチンは、S26C変異を含む。一部の実施形態では、S26C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S26C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS26C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS26C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0155】
一部の実施形態では、フェリチンは、S72C変異を含む。一部の実施形態では、S72C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S72C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS72C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS72C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0156】
一部の実施形態では、フェリチンは、A75C変異を含む。一部の実施形態では、A75C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、A75C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のA75C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のA75C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0157】
一部の実施形態では、フェリチンは、K79C変異を含む。一部の実施形態では、K79C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、K79C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のK79C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のK79C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0158】
一部の実施形態では、フェリチンは、S100C変異を含む。一部の実施形態では、S100C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S100C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリ
チン単量体上のS100C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS100C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0159】
一部の実施形態では、フェリチンは、S111C変異を含む。一部の実施形態では、S111C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/またはRSVポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S111C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS111C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS111C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0160】
2.内部システインの除去
一部の実施形態では、フェリチンは、内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含む。本来の内部システイン残基を除去することによって、フェリチン単量体あたり1つのみの不対システインが存在することを確実にし、ジスルフィド形成のような望ましくない反応を回避することができ、より安定かつ効率的な結果(例えば、アジュバントの提示)をもたらし得る。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチンのC31が非システインアミノ酸に置き換えられる。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチンのC31がセリンに置き換えられる(C31S)が、任意の非システイン残基、例えばアラニン、グリシン、トレオニン、またはアスパラギンを使用してもよい。類似のアミノ酸を、ペアワイズまたは構造アライメントによって、非H.ピロリフェリチンにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、非システインのために置き換えられる内部システインは、H.ピロリフェリチンのC31と整列するアミノ酸残基である。C31S変異を示す例示的なフェリチン配列を、配列番号201~207に示す。一部の実施形態では、1つより多くの内部システインがフェリチンに存在する場合、2つまたはそれより多く(例えば、各々の)内部システインは、セリン、またはセリン、アラニン、グリシン、トレオニン、もしくはアスパラギンから選択されるアミノ酸のような非システインアミノ酸に置き換えられる。
【0161】
3.グリコシル化
ヒト適合性のグリコシル化は、組換え薬物製品における安全性および効能に関与し得る。規制当局の承認は、極めて重要な品質属性として適切なグリコシル化を証明することを条件とし得る(Zhangら、Drug Discovery Today 21(5):740~765頁(2016)を参照されたい)。N-グリカンは、アスパラギン側鎖のグリコシル化に起因することができ、ヒトと、細菌および酵母のような他の生物との間で構造が異なり得る。このように、本開示に従うフェリチンにおいて、非ヒトグリコシル化および/またはNグリカン形成を低減または除去することが望ましいであろう。一部の実施形態では、フェリチンのグリコシル化を制御することにより、特にヒトワクチン接種に使用する場合、組成物の効能および/または安全性が改善される。
【0162】
一部の実施形態では、フェリチンを、N-グリカンの形成を阻害するように変異させる。一部の実施形態では、変異したフェリチンは、その対応する野生型フェリチンと比較して低減されたグリコシル化を有する。
【0163】
一部の実施形態では、フェリチンは、表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含む。一部の実施形態では、表面に露出したアスパラギンは、H.ピロリフェリチンのN19、またはペアワイズまたは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置である。一部の実施形態では、そのようなアスパラギン、例えばH.ピロリフェリチンのN19を変異させることは、フェ
リチンのグリコシル化を減少させる。一部の実施形態では、変異は、アスパラギンをグルタミンに置き換える。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異を含むH.ピロリフェリチンである。配列番号201~207は、N19Q変異を含む例示的なフェリチン配列である。
【0164】
細菌または酵母において産生されたグリコシル化タンパク質に曝露された哺乳動物は、細菌または酵母における所定のタンパク質のグリコシル化パターンが、哺乳動物における同じタンパク質のグリコシル化パターンとは異なり得ることから、グリコシル化タンパク質に対する免疫応答を生じ得る。このように、いくつかのグリコシル化治療タンパク質は、細菌または酵母における産生にとって適切ではないことがあり得る。
【0165】
一部の実施形態では、アミノ酸変異によるフェリチンのグリコシル化の減少は、細菌または酵母におけるタンパク質の産生を促進する。一部の実施形態では、フェリチンのグリコシル化の減少は、細菌または酵母において発現された変異フェリチンの投与時の哺乳動物における副作用の可能性を低減させる。一部の実施形態では、細菌または酵母において産生された変異フェリチンのヒト対象における反応原性は、グリコシル化が減少していることから低い。一部の実施形態では、ヒト対象における過敏応答の発生率は、野生型フェリチンと比較して低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンによる処置後では低い。
【0166】
一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物の対象における分解は、野生型フェリチンを含む組成物、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較して遅い。一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物は、野生型フェリチン、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較して、対象において低減されたクリアランスを有する。一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物は、野生型フェリチン、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較してより長い血清中半減期を有する。
【0167】
4.変異の組合せ
一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に記載される変異の1つより多くのタイプを含む。一部の実施形態では、フェリチンは、グリコシル化を減少させる変異、内部システインを除去する変異、および表面に露出したシステインを生成する変異から独立して選択される1つまたはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、グリコシル化を減少させる変異、内部システインを除去する変異、および表面に露出したシステインを生成する変異を含む。
【0168】
一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、および表面に露出したシステインを生成する変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびE12C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS72C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびA75C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびK79C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS100C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS111C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、前述の変異の組のいずれかに対応する変異を含み、対応する変異は、フェリチンアミノ酸配列とH.ピロリフェリチンアミノ酸配列(配列番号208または209)とのペアワイズアライメントによって決定した位置で、NをQに、CをSに、および非システインの表面に露出したアミノ酸をシステインに変化させる。
【0169】
1つより多くのタイプの変異を含む例示的なフェリチンを、配列番号201~207に提供する。
【0170】
5.構造アライメント
本明細書で考察したように、所与のポリペプチド(例えば、H.ピロリフェリチン)に関して記載した変異に対応する変異の位置は、ペアワイズまたは構造アライメントによって同定することができる。構造アライメントは、タンパク質がかなりの配列変動にも関わらず類似の構造を共有し、ファミリーの多くのメンバーが構造的に特徴付けされている、フェリチンのような大きいタンパク質ファミリーにとって適切であり、これもまた、RSVポリペプチド(例えば、RSV FまたはG)のような、本明細書に記載される他のポリペプチドの異なる形態における対応する位置を同定するために使用することができる。タンパク質データバンク(PDB)は、その受託番号と共に以下に列挙するフェリチンを含む、多くのフェリチンに関する3D構造を含む。
【0171】
2jd6,2jd7-PfFR-ピュロコックス・フリオスス。2jd8-PfFR+Zn。3a68-遺伝子SferH4由来のsoFR-ダイズ。3a9q-遺伝子SferH4(変異体)由来のsoFR。3egm,3bvf,3bvi,3bvk,3bvl-HpFR-ヘリコバクター・ピロリ。5c6f-HpFR(変異体)+Fe。1z4a,1vlg-FR-テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritime)。1s3q,1sq3,3kx9-FR-アルカエオグロブス・フルギダス(Archaeoglubus fulgidus),1krq-FR-カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)。1eum-EcFR-大腸菌(Escherichia coli)。4reu-EcFR+Fe。4xgs-EcFR(変異体)+Fe2O2。4ztt-EcFR(変異体)+Fe2O+Fe2+Fe+O2。1qgh-LiFR-リステリア・イノキュア(Listeria innocua)。3qz3-VcFR-ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)。3vnx-FR-アナアオサ(Ulva pertusa)。4ism,4isp,4itt,4itw,4iwj,4iwk,4ixk,3e6s-PnmFR-プセウドニッチア(Pseudo-nitschia multiseries)。4zkh,4zkw,4zkx,4zl5,4zl6,4zlw,4zmc-PnmFR(変異体)+Fe。1z6o-FR-イラクサギンウワバ。4cmy-FR+Fe-緑色硫黄細菌(Chlorobaculum tepidum)。フェリチン軽鎖(FTL)。1lb3,1h96-mFTL-マウス。1rcc,1rcd,1rci-bFTL+タルトレート+Mg。1rce,1rcg-bFTL+タルトレート+Mn。3noz,3np0,3np2,3o7r-hoFTL(変異体)-ウマ。3o7s,3u90-hoFTL。4v1w-hoFTL-cryo EM。3rav,3rd0-hoFTL+バルビツレート。フェリチン軽鎖+重鎖:5gn8-hFTH+Ca。
【0172】
構造アライメントは、(i)第2の配列の公知の構造を使用して第1の配列の構造をモデリングする工程、または(ii)両方が公知である第1および第2の配列の構造を比較する工程、ならびに第2の配列における目的の残基に最も類似に位置する第1の配列中の残基を同定する工程によって、2つ(またはそれより多く)のポリペプチド配列を超えて対応する残基を同定する工程を伴う。対応する残基は、重ねた構造におけるアルファ炭素の距離の最小化(例えば、どの組のアルファ炭素対がアライメントに関する最小平均二乗偏差を提供するか)に基づいて一部のアルゴリズムにおいて同定される。H.ピロリフェリチンに関して記載された位置に対応する非H.ピロリフェリチンにおける位置を同定する場合、H.ピロリフェリチンは、「第2の」配列であり得る。目的の非H.ピロリフェリチンが利用可能な公知の構造を有しないが、公知の構造を有する別の非H.ピロリフェリチンに、H.ピロリフェリチンより密接に関連する場合、密接に関連する非H.ピロリ
フェリチンの公知の構造を使用して目的の非H.ピロリフェリチンをモデリングし、次にそのモデルをH.ピロリフェリチン構造と比較して、目的のフェリチンにおける所望の対応する残基を同定することが最も有効であり得る。構造モデリングおよびアライメントに関して広範囲の文献が存在し、代表的な開示には、米国特許第6859736号;米国特許第8738343号;およびAslamら、Electronic Journal of Biotechnology 20(2016)9~13頁において引用される開示が挙げられる。公知の関連する構造または複数の構造に基づく構造のモデリングの考察に関して、例えば、Bordoliら、Nature Protocols 4(2009)1~13頁、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0173】
6.免疫刺激性部分;アジュバント;コンジュゲートされたRSVポリペプチド
一部の実施形態では、RSVポリペプチドおよび/またはアジュバントのような免疫刺激性部分は、表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、表面に露出したアミノ酸は、例えば上記で考察した変異に起因するシステインである。一部の実施形態では、表面に露出したアミノ酸は、リシン、アスパルテート、またはグルタメートである。グルタルアルデヒド(リシンをアミノ担持リンカーまたは部分にコンジュゲートするため)またはカルボジイミド(例えば、アスパルテートもしくはグルタメートをアミノ担持リンカーもしくは部分にコンジュゲートするための、またはリシンをカルボキシル担持リンカーもしくは部分にコンジュゲートするための、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリン-4-イル-エチル)カルボジイミド、または1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド(EDC;EDAC))を使用するコンジュゲーション手順は、例えばwww.springer.com.から入手可能な、Chapter 4 of Holtzhauer,M.,Basic Methods for the
Biochemical Lab,Springer 2006,ISBN 978-3-540-32785-1に記載されている。
【0174】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分は、フェリチンの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、アジュバントのような1つより多くの免疫刺激性部分が、フェリチンの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、24個の免疫刺激性部分が、フェリチン多量体または粒子(例えば、H.ピロリフェリチン粒子における各々の単量体の1つの部分)に結合する。複数の免疫刺激性部分がフェリチンナノ粒子に結合した一部の実施形態では、免疫刺激性部分は全て同一である。複数の免疫刺激性部分がフェリチンナノ粒子に結合した一部の実施形態では、免疫刺激性部分は全て同一ではない。
【0175】
a)免疫刺激性部分のタイプ;アジュバント
表面に露出したアミノ酸(例えば、システイン)に結合することができる免疫刺激性部分を、本開示に従ってフェリチンにおいて使用することができる。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、B細胞アゴニストである。
【0176】
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、疎水性ではない。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は親水性である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、極性である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、水素結合またはイオン結合することが可能であり、例えば水素結合ドナー、水素結合アクセプター、カチオン性部分またはアニオン性部分を含む。部分が、pH 6、7、7.4、または8のような生理的に関連するpHで、水溶液中でイオン化される場合、部分はカチオン性またはアニオン性であると考えられる。
【0177】
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、アジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む。一部の実施形態では、アジュバントは、toll-like受容体(TLR)アゴニストまたはインターフェロン
遺伝子(STING)アゴニストの刺激剤である。一部の実施形態では、アジュバントはBおよび/またはT細胞におけるTLRシグナル伝達を活性化する。一部の実施形態では、アジュバントは、適応免疫応答を調節する。
【0178】
(1)TLR2アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0179】
一部の実施形態では、TLR2アゴニストは、PAM2CSK4、FSL-1、またはPAM3CSK4である。
【0180】
(2)TLR7/8アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8アゴニスト(すなわち、TLR7およびTLR8の少なくとも1つのアゴニスト)である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0181】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、一本鎖(ssRNA)である。一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、イミダゾキノリンである。一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、ヌクレオシドアナログである。
【0182】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、3M-012(3M Pharmaceuticals)のようなイミダゾキノリンアミンToll-like受容体(TLR)アゴニストである。遊離の3M-012の構造は:
【化1】
である。3M-012または本明細書で考察する任意の部分のような免疫刺激性部分は、この部分の適切な末端原子(例えば、水素)を、例えば表面に露出したシステインの硫黄での本明細書に記載されるフェリチンとの結合に置換することによって、またはそのような硫黄に結合するリンカーによってフェリチンにコンジュゲートすることができると理解される。このように、フェリチンにコンジュゲートする場合、免疫刺激性部分の構造は、遊離の分子の構造とはわずかに異なる。
【0183】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、SM7/8aである。遊離のSM7/8aの構造は:
【化2】
である。
【0184】
例えば、Nat Biotechnol.2015 Nov;33(11):1201~10頁.doi:10.1038/nbt.3371を参照されたい。
【0185】
(3)TLR9アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0186】
一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、非メチル化CpG ODNである。一部の実施形態では、CpG ODNは、通常のDNAにおいて見出される天然のホスホジエステル(PO)骨格の代わりに、部分的または完全なホスホロチオエート(PS)骨格を含む。
【0187】
一部の実施形態では、CpG ODNは、クラスB ODNであり、これは5’プリン(Pu)-ピリミジン(Py)-C-G-Py-Pu3’を含む1つまたはそれ以上の6量体CpGモチーフを含み;十分にホスホロチオエート化された(すなわち、PS改変された)骨格を有し;18~28ヌクレオチド長を有する。一部の実施形態では、CpG ODNは、配列番号210の配列を含み、場合により、骨格にホスホロチオエート結合を含む。
【0188】
一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、免疫刺激性配列(ISS)を含む。一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、ISS-1018(Dynavax)(配列番号210)である。
【0189】
(4)STINGアゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STING(インターフェロン遺伝子タンパク質刺激因子、小胞体IFN刺激因子とも呼ばれる)アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGシグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGの合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGシグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0190】
一部の実施形態では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)である。例えば、Danilchankaら、Cell 154:962~970頁(2013)を参照されたい。例示的なCDNは、cdA、cdG、cAMP-cGMP、および2’-5’,3’-5’cGAMPを含む(構造に関しては、Danilchankaら、
を参照されたい)。STINGアゴニストはまた、DMXAAのような合成アゴニストも含む。
【化3】
【0191】
b)コンジュゲートされたRSVポリペプチド
一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、フェリチンの表面に露出したアミノ酸にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、フェリチンタンパク質を抗原性にする。一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、単独で抗原性であるが、一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、フェリチンとのその会合のために抗原性である。一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、本明細書に記載されるRSV FまたはGポリペプチドのいずれか1つである。
【0192】
c)コンジュゲーション
一部の実施形態では、表面に露出したシステイン(例えば、本明細書に記載される変異に起因する)、またはフェリチン(例えば、フェリチンのN末端)に結合したペプチドリンカー中のシステインを使用して、アジュバントのような免疫刺激性部分またはRSVポリペプチドを、フェリチンにコンジュゲートする。一部の実施形態では、リンカーは、そのようなシステインにコンジュゲートされ、リンカーを次に、アジュバントのような免疫刺激性部分、またはRSVポリペプチドにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、そのようなシステインは、アジュバント、リンカー、またはRSVポリペプチドを結合させるコンジュゲーション反応のための化学ハンドルを作製する。一部の実施形態では、バイオコンジュゲートが産生され、アジュバントのような免疫刺激性部分またはRSVポリペプチドは、そのようなシステインの還元後にフェリチンに連結される。一部の実施形態では、システインは、表面に露出した不対システイン、すなわちジスルフィド結合を形成するための適切な位置にパートナーシステインを欠如するシステインである。一部の実施形態では、システインは、遊離のチオール側鎖を含む不対システインである。
【0193】
(1)コンジュゲーションケミストリーのタイプ
任意のタイプのケミストリーを使用して、例えばシステインまたはLys、Glu、もしくはAspのような別のアミノ酸のような表面に露出したアミノ酸の反応を介して、アジュバントのような免疫刺激性部分またはRSVポリペプチドをフェリチンにコンジュゲートすることができる。
【0194】
一部の実施形態では、コンジュゲーションは、クリックケミストリーを使用して実施される。本明細書で使用される場合、「クリックケミストリー」は、互いに急速かつ選択的に反応する(すなわち、「クリックする」)1対の官能基間での反応を指す。一部の実施形態では、クリックケミストリーは、緩和な水性条件下で実施することができる。一部の実施形態では、クリックケミストリー反応は、表面に露出したアミノ酸の変異に起因するシステインのようなフェリチンの表面上のシステインを利用し、システインと反応するこ
とができる官能基を使用してクリックケミストリーを実施する。
【0195】
クリックケミストリーの基準を満たす多様な反応が、当技術分野で公知であり、当業者は、複数の公表された方法論のいずれかを使用することができる(例えば、Heinら、Pharm Res 25(10):2216~2230頁(2008)を参照されたい)。クリックケミストリーに関してSigma Aldrich、Jena Bioscience、またはLumiprobeの試薬のような広範囲の市販の試薬を使用することができる。一部の実施形態では、コンジュゲーションは、以下の実施例に記載されるようにクリックケミストリーを使用して実施される。
【0196】
一部の実施形態では、クリックケミストリーは、フェリチンの還元後に起こる。
【0197】
一部の実施形態では、クリックケミストリーは、1ステップクリック反応であり得る。一部の実施形態では、クリックケミストリーは、2ステップクリック反応であり得る。
【0198】
一部の実施形態では、反応は、金属フリーのクリックケミストリーを含む。一部の実施形態では、反応は、チオール-マレイミドおよび/またはジスルフィド交換を含む。
【0199】
金属フリークリックケミストリー
金属フリークリックケミストリーは、タンパク質の起こり得る酸化を回避するためにコンジュゲーション反応に関して使用することができる。金属フリークリックケミストリーは、抗体コンジュゲートを形成するために使用されている(van Geelら、Bioconjugate Chem.2015,26,2233~2242頁を参照されたい)。
【0200】
一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、アジュバントをフェリチンに結合させる反応において使用される。一部の実施形態では、アジュバントをフェリチンに結合させる反応において銅フリーコンジュゲーションを使用する。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)を使用する。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、ジベンゾアザシクロオクチン(DBCO)を使用する。一部の実施形態では、BCNまたはDBCOは、アジド基と反応する。
【0201】
DBCOは、触媒の非存在下での歪み促進型クリック反応を介してアジド基に対して高い特異性を有し、高収率の安定なトリアゾールをもたらす。一部の実施形態では、DBCOは、銅触媒の非存在下でアジドと反応する。
【0202】
一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、1ステップクリック反応において使用される。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、2ステップクリック反応において使用される。
【0203】
チオール-マレイミドおよびジスルフィド交換
本明細書で使用されるフェリチンは、スルフヒドリルとしても知られるチオールを含むシステインを含むことができ、これはスルフヒドリル反応性化学基との反応に関して利用可能である(または還元を通して利用可能となり得る)。このように、システインは、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンに付加するための化学選択的改変を可能にする。塩基性条件下では、システインは、脱プロトン化されて、チオレート求核試薬を生成し、これはマレイミドおよびヨードアセトアミドのような弱い求電子試薬と反応することができる。システインとマレイミドまたはヨードアセトアミドとの反応は、炭素-硫黄結合をもたらす。
【0204】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、表面に露出したシステインまたはフェリチンのリンカー中のシステインと反応する。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ハロアセチル、マレイミド、アジリジン、アクリロイル、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、またはTNB-チオールである。
【0205】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、アルキル化によってシステインのスルフヒドリルにコンジュゲートする(すなわち、チオエーテル結合の形成)。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ジスルフィド交換によってシステインのスルフヒドリルにコンジュゲートする(すなわち、ジスルフィド結合の形成)。
【0206】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンにコンジュゲートする反応は、チオール-マレイミド反応である。
【0207】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、マレイミドである。一部の実施形態では、マレイミドとシステインとの反応は、例えば可逆的ではない安定なチオエステル結合の形成をもたらす。一部の実施形態では、マレイミドは、フェリチン中のチロシン、ヒスチジン、またはメチオニンとは反応しない。一部の実施形態では、非反応マレイミドは、遊離のチオールを例えば過剰に添加することによって、反応終了時にクエンチされる。
【0208】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンにコンジュゲートする反応は、ジスルフィド相互交換としても知られるチオール-ジスルフィド交換である。一部の実施形態では、反応は、当初のジスルフィドの一部を含む混合ジスルフィドの形成を伴う。一部の実施形態では、当初のジスルフィドは、表面に露出したアミノ酸の変異またはN末端リンカーの付加によってフェリチンに導入されたシステインである。
【0209】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ピリジルジチオールである。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、TNB-チオール基である。
【0210】
(2)コンジュゲートされたリンカー
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分、またはRSVポリペプチドは、システインのような表面に露出したアミノ酸に共有結合したリンカーを介してフェリチンに結合する。一部の実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール、例えば、PEGリンカーを含む。一部の実施形態では、ポリエチレングリコール(例えば、PEG)リンカーは、アジュバントのような免疫刺激性部分に連結したフェリチンの水溶性およびライゲーション効率を増加させる。PEGリンカーは、2~18PEG長の間、例えば、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、およびPEG18である。
【0211】
一部の実施形態では、リンカーは、マレイミドを含む。一部の実施形態では、リンカーは、免疫刺激性部分(ISM)-リンカー-マレイミドの構成要素を含む。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドは、マレイミドとフェリチンのシステインとの反応によって1ステップクリックケミストリーにおいてフェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバント-リンカー-マレイミドのISMは、SM7/8aである。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドのリンカーはPEG4である。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドは、SM7/8a-PEG4-マレイミドである。
【0212】
一部の実施形態では、2ステップクリックケミストリープロトコルを、1つの末端でスルフヒドリル反応性化学基および他方の末端でアミン反応基を含むリンカーと共に使用する。そのような2ステップクリックケミストリープロトコルでは、スルフヒドリル反応性化学基は、フェリチンのシステインと反応するが、アミン反応基はISMに結合した試薬と反応する。このようにして、ISMは、1組の2クリックケミストリー試薬の組を介してフェリチンにコンジュゲートされる。
【0213】
2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基はマレイミドである。2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、マレイミドは、表面に露出したアミノ酸の変異またはN末端リンカーの付加によってフェリチンに導入されたシステインと反応する。
【0214】
2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、アミン反応基はDBCOである。2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、DBCOは、ISMに結合したアジド基と反応する。
【0215】
一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-DBCOを使用する。一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-DBCOは、フェリチンの還元後、フェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-試薬は、第1のステップでマレイミドとフェリチンのシステインとの反応によってフェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、DBCOを使用してアジドに結合したISMに連結する。一部の実施形態では、アジドに連結したISMは、ISS-1018である。一部の実施形態では、アジドにカップリングしたアジュバントは、3M-012またはCpGである。
【0216】
一部の実施形態では、反応基を有するリンカーをISMに付加する。一部の実施形態では、リンカーは、PEG4-アジドリンカー、またはPEG4-マレイミドリンカーである。
【0217】
一部の実施形態では、PEG4-アジドリンカーは、3M-012にコンジュゲートされる。PEG4-アジドリンカーにコンジュゲートされた3M-012の例示的な構造は:
【化4】
である。
【0218】
一部の実施形態では、PEG4-アジドリンカーは、SM7/8aにコンジュゲートされる。PEG4-アジドリンカーにコンジュゲートされたSM7/8aの例示的な構造は:
【化5】
である。
【0219】
一部の実施形態では、PEG4-マレイミドリンカーは、SM7/8aにコンジュゲートされる。PEG4-マレイミドリンカーにコンジュゲートされたSM7/8aの例示的な構造は:
【化6】
である。
【0220】
一部の実施形態では、アジド基は、ISS-1018にコンジュゲートされる。NHSエステル-アジドリンカーにコンジュゲートされたISS-1018の例示的な構造は:
【化7】
である。
【0221】
E.リンカー
一部の実施形態では、リンカーは、RSVポリペプチドのアミノ酸配列をフェリチンのアミノ酸配列から分離する。任意のリンカーを使用してもよい。一部の実施形態では、リンカーは、融合タンパク質としての抗原性フェリチンポリペプチドの発現を容易にすることができるペプチドリンカーである(例えば、単一のオープンリーディングフレーム由来)。一部の実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンリンカーである。一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、GS、GGGS(配列番号226)、2XGGGS(配列番号227)(すなわち、GGGSGGGS(配列番号227))、または5XGGGS(配列番号228)である。リンカーは、フェリチンに対してNまたはC末端である。
【0222】
一部の実施形態では、リンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、約2~4、2~6、2~8、2~10、2~12、または2~14アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも15アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも25アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも30アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも35アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも40アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、60アミノ酸長未満またはそれに等しい。一部の実施形態では、リンカーは、50アミノ酸長未満またはそれに等しい。一部の実施形態では、リンカーは、約16、28、40、46、または47アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、フレキシブルである。一部の実施形態では、リンカーは、例えば免疫刺激性部分(例えば、アジュバント)のコンジュゲーション部位として使用するためのシステインを含む;システインを含む例示的なリンカーを、配列番号225として提供する。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号225と少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する配列を含み、配列番号225中のシステインに対応するシステインをさらに含む。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも25アミノ酸(例えば、25~60アミノ酸)を含み、システインは、N末端から8番目のアミノ酸からC末端から8番目のアミノ酸までの範囲の位置、または中央残基の10アミノ酸以内の位置、またはリンカーの結合位置に位置する。
【0223】
一部の実施形態では、リンカーは、グリシン(G)および/またはセリン(S)アミノ酸を含む。一部の実施形態では、リンカーは、グリシン(G)、セリン(S)、アスパラギン(N)、および/またはアラニン(A)アミノ酸、ならびに場合により上記で考察されているようなシステインを含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号222と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは、GGGSGGGGSGGGGSG(配列番号220)、GGSGSGSNSSASSGASSGGASGGSGGSG(配列番号221)、GGSGSASSGASASGSSNGSGSGSGSNSSASSGASSGGASGGSGGSG(配列番号222)、またはGSを含む。一部の実施形態では、リンカーは、FR1(配列番号223)またはFR2(配列番号224)を含む。
【0224】
一部の実施形態では、フェリチンは、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部を有するH.ピロリフェリチン(ハイブリッドフェリチンと呼ばれる)を含む。一部の実施形態では、このハイブリッドフェリチンは、表面上に均一に分布したRSVポリペプチド結合部位を有する多量体を形成する(Kanekiyo 2015を参照されたい)。一部の実施形態では、ハイブリッドフェリチンとのN末端融合タンパク質は、フェリチンナノ粒子表面上のRSVポリペプチドの提示を可能にする。一部の実施形態では、フェリチンは
、配列番号208(このグルタメートを含むハイブリッドフェリチン)の13位、または配列番号209(6位がイソロイシンである野生型H.ピロリフェリチン)の6位に対応する位置でグルタメートを含む。ウシガエルリンカーと組み合わせると、このグルタメートは、ヒトおよびウシガエルフェリチンにおいて見出される保存された塩架橋を維持すると考えられる(ヒト軽鎖およびウシガエル下部サブユニットフェリチンの両方における6Rおよび14E)。Kanekiyoら、Cell 162,1090~1100頁(2015)を参照されたい。
【0225】
一部の実施形態では、RSVポリペプチドは、システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを介してフェリチンに連結される。一部の実施形態では、このリンカーを使用して、クリックケミストリーを介してある部分(例えば、免疫刺激性部分またはRSVポリペプチド)をフェリチンに直接コンジュゲートする。システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを含む例示的な配列は、配列番号218である。システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを伴うコンジュゲーション反応にとって適したクリックケミストリーは上記で考察されている。
【0226】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分のためのコンジュゲーション部位としてシステインを含むリンカーは、表面に露出した不対システインを欠如するフェリチン分子を含む構築物において、または表面に露出した不対システインを含むフェリチン分子を含む構築物において使用される。
【0227】
一部の実施形態では、構築物はリンカーを含まない。一部の実施形態では、構築物は、1つのリンカーを含む。一部の実施形態では、構築物は、2つまたは2つより多くのリンカーを含む。
【0228】
F.組成物;ワクチン接種のための使用および方法
一部の実施形態では、本発明は、RSVによる感染に対して対象を免疫する方法を提供する。本発明は、対象におけるRSVに対する免疫応答を誘発する方法をさらに提供する。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載される有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に記載される有効量の抗原性RSVポリペプチド、抗原性フェリチンポリペプチド、またはナノ粒子を対象に投与することを含む。
【0229】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド、ナノ粒子、または融合タンパク質のうちのいずれか1つまたはそれ以上と、薬学的に許容されるビヒクル、アジュバント、または賦形剤とを含む組成物が提供される。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド、ナノ粒子、または組成物は、RSVによって引き起こされる感染に対して免疫化するために、ヒトなどの対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは融合タンパク質は、ヒトなどの対象に投与され、RSVによる将来の感染に対する防御免疫応答を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド、ナノ粒子、または組成物のうちのいずれか1つまたはそれ以上は、RSVによって引き起こされる感染に対する免疫化に使用するために提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド、ナノ粒子、または組成物のうちのいずれか1つまたはそれ以上は、RSVによる将来の感染に対する防御的免疫応答の生成に使用するために提供される。一部の実施形態では、防御免疫応答は、RSVによる感染、肺炎、細気管支炎、または喘息の発症を減少させる。
【0231】
一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドを含む
。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるRSV Gポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるRSV FポリペプチドおよびRSV Gポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるRSV GポリペプチドおよびRSV Fポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドおよび本明細書に記載されるRSV Gポリペプチドを含む。
【0232】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドを含む組成物は、融合後RSV Fポリペプチドによる免疫化と比較して、RSVに対して優れた中和反応を誘発する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるRSVポリペプチドを含むポリペプチドまたはナノ粒子)による免疫化は、融合後RSV Fによる免疫化と比較して、融合前RSV Fポリペプチドに対する高い力価を誘発する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドによる免疫化は、融合後RSV Fによる免疫化と比較して、融合後RSV Fに対する低い力価の抗体を誘発する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドによる免疫化は、融合後RSV Fによる免疫化と比較して、融合前RSV Fに対する高い比率の全抗体を誘発する。本明細書に記載されるRSV抗原による免疫化は、融合後RSV Fによる免疫化と比較して、RSVに対するより良好な防御を提供し得る。融合後RSV Fに存在し、融合前Fと共有されるエピトープは、非中和性であり、場合によっては、RSV感染を増加させる抗体を誘発することが示唆されている。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドを含む組成物は、RSVに対するより高い中和反応を誘発し、一方、融合後RSV Fに対しする抗体を低下させる。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Fポリペプチドを含む組成物は、融合後F結合反応に対してより高いRSV中和力価を誘発する。
【0233】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV抗原による免疫化は、融合後RSV
Fによる免疫化と比較して、改善された安全性プロファイルをもたらす。この改善された安全性プロファイルは、非中和エピトープのブロック、または融合後コンフォメーションに存在する不十分な中和エピトープに関連し得る。融合後コンフォメーションに結合する抗体は、抗体媒介性ウイルス感染を介してRSV感染を増加させ得ることが報告されている。したがって、例えば融合前と融合後のコンフォメーションの両方を認識する抗体など、RSVウイルスを有意に中和しない融合後抗体は、RSV感染を増加させる可能性がある。
【0234】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV Gポリペプチドを含む組成物は、RSVに対する中和反応を誘発する。
【0235】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV FおよびRSV Gポリペプチドを含む組成物は、RSVに対する中和反応を誘発する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRSV FおよびRSV Gポリペプチドを含む組成物は、RSVに対する改善された防御、例えば、両方の抗原を含まない組成物よりも高い中和力価を提供する。
【0236】
1.対象
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0237】
一部の実施形態では、対象は成人(年齢18歳より上または18歳に等しい)である。一部の実施形態では、対象は小児または青年(年齢18歳未満)である。一部の実施形態では、対象は高齢者(年齢60歳より上)である。一部の実施形態では、対象は、非高齢成人(年齢18歳より上またはそれに等しく、年齢60歳未満またはそれに等しい)であ
る。
【0238】
一部の実施形態では、組成物の1回より多くの投与を対象に投与する。一部の実施形態では、ブースター投与は免疫応答を改善する。
【0239】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の1つまたはそれ以上は、霊長類(例えば、サル(例えば、アカゲザルまたはカニクイザルのようなマカク)または類人猿のような非ヒト霊長類)、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、または家畜哺乳動物(例えば、イヌ、ウサギ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ラクダ、またはロバ)のような哺乳動物において使用するためである。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の1つまたはそれ以上は、家禽(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ホロホロ鳥、または白鳥)のような鳥類において使用するためである。
【0240】
2.アジュバント
本明細書で使用される場合、アジュバントは、表面に露出したアミノ酸,例えば、システインを介してフェリチンにコンジュゲートしてもよい。非コンジュゲートアジュバントもまた、本明細書に記載される抗原性フェリチンポリペプチドと共に対象に投与してもよい。一部の実施形態では、抗原性フェリチンポリペプチドと共にアジュバントを投与すると、アジュバントを投与しないRSVポリペプチド単独、または抗原性フェリチンポリペプチド単独の投与と比較して、対象においてRSVポリペプチドに対するより高力価の抗体を生じる。アジュバントは、抗原性ポリペプチドに対するより早期の、より強力な、またはより持続性の免疫応答を促進し得る。
【0241】
一部の実施形態では、組成物は、1つのアジュバントを含む。一部の実施形態では、組成物は1つより多くのアジュバントを含む。一部の実施形態では、組成物は、アジュバントを含まない。
【0242】
一部の実施形態では、アジュバントはアルミニウムを含む。一部の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。一部の実施形態では、アジュバントはミョウバン(Alyhydrogel’85 2%;Brenntag-カタログ番号21645-51-2)である。
【0243】
一部の実施形態では、アジュバントは有機アジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは油基剤のアジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは水中油型ナノ乳剤を含む。
【0244】
一部の実施形態では、アジュバントはスクアレンを含む。一部の実施形態では、スクアレンを含むアジュバントは、Ribi(Sigma adjuvant systemカタログ番号S6322-1vl)、Addavax(商標)MF59、AS03、またはAF03(米国特許第9703095号を参照されたい)である。一部の実施形態では、スクアレンを含むアジュバントは、ナノ乳剤である。
【0245】
一部の実施形態では、アジュバントは、ポリアクリル酸ポリマー(PAA)を含む。一部の実施形態では、PAAを含むアジュバントはSPA09である(WO2017218819を参照されたい)。
【0246】
一部の実施形態では、アジュバントは非代謝性油を含む。一部の実施形態では、アジュバントは、フロイント不完全アジュバント(IFA)を含む。
【0247】
一部の実施形態では、アジュバントは、非代謝性油および結核死菌(Mycobacterium tuberculosis)を含む。一部の実施形態では、アジュバントはフロイント完全アジュバント(CFA)である。
【0248】
一部の実施形態では、アジュバントは、リポ多糖類である。一部の実施形態では、アジュバントは、モノホスホリルA(MPLまたはMPLA)である。
【0249】
3.医薬組成物
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗原性フェリチンポリペプチドおよび/または関連する実体を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、病原体に対して保護的免疫応答のような免疫応答を誘発することが可能な免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。
【0250】
例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、以下のうちの1つまたはそれ以上を含み得る:(1)(I)表面に露出したアミノ酸をシステインで置き換える変異と、(II)RSVポリペプチドとを含む抗原性フェリチンタンパク質;(2)(I)表面に露出したアミノ酸をシステインおよびシステインに連結した免疫刺激性部分で置き換える変異と、(II)RSVポリペプチドとを含む抗原性フェリチンタンパク質;(3)(I)表面に露出したシステインと、(II)フェリチンタンパク質のN末端にあるペプチドリンカーと、(III)ペプチドリンカーのN末端にあるRSVポリペプチドとを含む抗原性フェリチンタンパク質;(4)(I)表面に露出したアミノ酸をシステインおよびシステインに連結した免疫刺激性部分で置き換える変異と、(II)H.ピロリフェリチンの31位の内部システインを非システインで置き換える変異、もしくはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの31位に類似した位置の内部システインを非システインで置き換える変異と、(III)表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異と、および(IV)RSVポリペプチドとを含む抗原性フェリチンタンパク質;または(5)前述のフェリチンタンパク質のいずれかを含むフェリチン粒子。一部の実施形態では、医薬組成物は、融合前RSVポリペプチドと融合後RSVポリペプチドの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている、RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチド、および/またはRSVポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドであって、RSVポリペプチドが配列番号26のアミノ酸残基62~69および196~209、ならびに配列番号26の328、348または507位に対応するアスパラギンを含み、場合により、抗原性RSVポリペプチドがフェリチンをさらに含む抗原性RSVポリペプチドを含む。
【0251】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに関連する抗体または他の作用物質を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに結合するおよび/またはそれと競合する抗体を含む。あるいは、抗体は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドのRSVポリペプチド構成要素を含むウイルス粒子を認識し得る。
【0252】
一部の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、単独で、または免疫応答を増強するための1つもしくはそれ以上の作用物質、例えば本明細書に記載されるアジュバントと組み合わせて投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、上記のアジュバントをさらに含む。
【0253】
一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「担体」は、それと共に医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。例示的な実施形態では、担体は、滅菌液体、例えば水、および石油、動物、植物、または合成起源の油を含む油、例えば落
花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等を含み得る。一部の実施形態では、担体は、1つまたはそれ以上の固体構成要素であるか、またはそれらを含む。薬学的に許容される担体はまた、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびその組合せを含み得るがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、賦形剤は、例えば所望のコンシステンシーまたは安定化効果を提供するまたはそれに関与するように医薬組成物に含めることができる任意の非治療剤である。適した薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等を含むがこれらに限定されない。様々な実施形態では、医薬組成物は無菌的である。
【0254】
一部の実施形態では、医薬組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、安定化剤、緩衝剤、または保存剤のような任意の多様な添加剤を含み得る。加えて、補助剤、安定化剤、濃化剤、潤滑剤、および着色剤を含めることができる。
【0255】
様々な実施形態では、医薬組成物は、任意の所望の投与様式に適合するように製剤化することができる。例えば、医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、滴剤、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体を含有するカプセル、ゼラチンカプセル、散剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、噴霧剤、懸濁剤、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、乾燥粉末の形態、または使用するために適した他の任意の形態をとることができる。薬剤の製剤化および製造における一般的検討は、例えば参照によって本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に見出すことができる。
【0256】
医薬組成物は、任意の投与経路を介して投与することができる。投与経路は、例えば経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、粘膜、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸内、気管内点滴、気管支点滴、吸入、または局所投与経路を含む。投与は局所または全身であり得る。一部の実施形態では、投与は経口で実施される。別の実施形態では、投与は非経口注射による。一部の例では、投与は、本明細書に記載される抗原性フェリチンポリペプチドの血流への放出をもたらす。投与様式は、医師の裁量に委ねることができる。
【0257】
一部の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下)にとって適している。そのような組成物は、例えば、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤等として製剤化することができる。それらは、使用直前に滅菌注射可能媒体に溶解または懸濁することができる滅菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造してもよい。例えば、非経口投与は注射によって達成することができる。そのような実施形態では、注射剤は、通常の形態、すなわち液体溶液または懸濁液、注射前に液体中の溶液または懸濁液にとって適した固体形態、または乳剤として調製される。一部の実施形態では、注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、凍結乾燥粉末、または顆粒から調製される。
【0258】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、吸入(例えば、肺および呼吸器への直接送達)による送達のために製剤化される。例えば、組成物は、点鼻用噴霧剤または他の任意の公知のエアロゾル製剤の形態をとり得る。一部の実施形態では、吸入用またはエアロゾル送達のための調製物は、複数の粒子を含む。一部の実施形態では、そのような調製物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、または約13ミクロンの平均粒子サイズを有し得る。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、吸入ま
たはエアロゾル送達のための調製物は、例えば湿潤剤を含めることを通して湿潤粉末として製剤化される。一部の実施形態では、湿潤剤は、水、食塩水、または生理的pHの他の液体からなる群から選択される。
【0259】
一部の実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、鼻または口腔への滴剤として投与される。一部の実施形態では、用量は、複数の液滴(例えば、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5滴等)を含み得る。
【0260】
本発明の医薬組成物は、所望の転帰を達成するために適切な任意の用量で投与することができる。一部の実施形態では、所望の転帰は、組成物に存在する抗原性フェリチンポリペプチドに存在するRSVポリペプチドの起源に対する長期間持続する適応免疫応答の誘導である。一部の実施形態では、所望の転帰は、感染症の1つまたはそれ以上の症状の強度、重症度、頻度の低減、および/または発生の遅延である。一部の実施形態では、所望の転帰は、感染症の阻害または予防である。必要な用量は、対象の種、年齢、体重、および全身状態、予防または処置される感染の重症度、使用される特定の組成物、およびその投与様式に応じて対象毎に変化する。
【0261】
一部の実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、単回または複数回用量で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、異なる日に投与される複数回用量で投与される(例えば、プライム-ブーストワクチン接種戦略)一部の実施形態では、医薬組成物は、ブースターレジメンの一部として投与される。
【0262】
様々な実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の追加の治療剤と同時投与される。同時投与は、それらの投与時期が、追加の治療剤および医薬組成物中の活性成分の薬理活性が時間的に重複し、それによって組み合わせた治療効果を発揮する場合には、治療剤を同時に投与する必要はない。一般的に、各々の作用物質は、その作用物質に関して決定された用量および時間スケジュールで投与される。
【0263】
4.核酸/mRNA
同様に、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドをコードする核酸も提供される。一部の実施形態では、核酸はmRNAである。ポリペプチドをもたらす翻訳を受けることが可能な任意の核酸は、本開示の目的に関してmRNAであると考えられる。
【0264】
5.キット
同様に本明細書において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の抗原性ポリペプチド、核酸、抗原性フェリチン粒子、抗原性ルマジンシンターゼ粒子、組成物、または医薬組成物を含むキットも提供される。一部の実施形態では、キットは、溶媒、溶液、緩衝剤、説明書、または乾燥剤の1つまたはそれ以上をさらに含む。
【0265】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0266】
この説明および例示的な実施形態は、限定的と解釈されるべきではない。本明細書およ
び添付の特許請求の範囲の目的で、特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージまたは比率を表す全ての数字、および他の数値は、全ての場合において、まだそのように修飾されていない程度で、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。「約」は、記載された主題の特性に実質的に影響しない、例えば、10%、5%、2%または1%以内の変動の程度を示す。したがって、別段の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得られるべき所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数に照らし、および通常の丸め技法を適用して、少なくとも解釈されるべきである。
【0267】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形は、明示的および明確に1つの指示対象に限定されない限り、「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」、および任意の単数形の使用は、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用される場合、用語「含む」およびその文法的変形は、リスト中の項目の記載が、リスト中の項目に置換または追加することができる他の同様の項目の除外にならないように、非限定的であることを意図している。
【実施例0268】
以下の実施例は開示した特定の実施形態を説明するために提供され、本開示の範囲を限定するものとは決して解釈すべきでない。
【0269】
1.RSV Fポリペプチドに対する改変の設計および特徴解析
他のパラミキソウイルスFタンパク質と同じく、RSV FはN末端シグナルペプチドおよびタンパク質をウイルス表面に固定するC末端膜貫通領域を有する前駆体タンパク質として発現される。RSV Fはプロテアーゼフリンによって細胞内切断を受けて疎水性の融合ペプチド(
図1Aの「FP」)を放出する。融合ペプチドの役割は、感染の際に標的細胞に結合することである。融合ペプチドに隣接してヘプタッドリピート領域A(HRA)があり、一方ヘプタッドリピート領域B(HRB)は膜貫通ドメインに隣接している。
【0270】
融合前および融合後のコンフォメーションにおけるRSV Fエクトドメイン三量体の結晶構造によって、HRAおよびHRB領域がどのように顕著な再配置を受けて細胞融合事象を促進するかが実証される(
図1B)(Swanson,K.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA 108(23):9619~24頁(2011);McLellan,J.S.ら、Science 342(6158):592~598頁(2013);McLellan,J.S.ら、J Virol 85(15):7788~96頁(2011);およびMcLellan,J.S.ら、Science 342(6158):592~8頁(2013)参照)。融合前のコンフォメーションにおいて、ヘプタッドリピートA(HRA)領域は球状のヘッドに関連しており、融合ペプチドの先端は大部分、タンパク質の中央に埋め込まれている。融合前のコンフォメーションはいくつかのヘリックスを含み、プロトマーの間のある種の接触が関与して融合前三量体を形成している。
【0271】
プロトマー間の安定化であるように一連のアミノ酸置換を設計した。例示的な置換にはV207L;N228F;I217VおよびE218F;I221LおよびE222M;またはQ224AおよびQ225Lが含まれる。実施例におけるRSV Fアミノ酸配列の全ての番号付けは、配列番号26の番号付けを用いる。
【0272】
ヘリックスの安定化であるようにアミノ酸置換を設計した。したがって、これらの置換
はRSV Fのヘリカルドメインを安定化することが予測される。例示的な置換にはN216PまたはI217Pが含まれる。
【0273】
プロトマー内の安定化であるようにアミノ酸置換を設計した。例示的な置換にはV220I;またはA74LおよびQ81Lが含まれる。
【0274】
ヘリックスのキャッピングであるようにアミノ酸置換を設計した。例示的な置換にはN216PまたはI217Pが含まれる。
【0275】
凝集を減少させるようにアミノ酸置換を設計した。例示的な置換にはV192EおよびL61Qが含まれる。
【0276】
N228F等の疎水性アミノ酸を導入することによって空洞を満たすように他のアミノ酸置換を設計した。
【0277】
非アスパラギン残基をアスパラギンに置き換えることによってグリコシル化部位を追加するために、アミノ酸置換E328N、S348N、およびR507Nを設計した。融合前のFタンパク質の表面上の融合後のRSV Fに露出したエピトープをブロックするために非天然グリカンの付加を用いることができると仮定された(
図1B)。
【0278】
目的のRSV F構築物は、N末端ウシガエルフェリチンリンカーとH.ピロリフェリチン(pFerr)を含むハイブリッドフェリチンとの一本鎖(scF)融合タンパク質として産生した(
図1A)。フェリチンはK79CまたはS111Cの変異に起因する表面露出システインを含んでいた(フェリチン配列の番号付けは配列番号208に対応する)。
【0279】
当分野で公知の標準的なクローニング慣習を用いて種々のRSV Pre-F-NPおよびフェリチンコーディング配列の産生を実施した。一般的に言えば、記載した置換を有するRSV F構築物のためのDNAを合成して、Genscriptによって哺乳動物の発現ベクターにクローニングした。以前に刊行されたプロトコルと同様にRSV F DS-CAV1および融合後F三量体を産生した(McLellan,J.S.ら、Science 342(6158):592~598頁(2013)参照)。DS-CAV1構築物はRSV FのC末端三量体化ドメインを保持しており、これを空洞充填疎水性置換と組み合わせた。RSV F DS-CAV1はS155C~S290Cジスルフィドマルチネイション(DS)およびS190F~V207L(CAV1)を含んでいる。
【0280】
RSV F-フェリチンナノ粒子をコードするベクター、裸のフェリチン(RSV Fに結合していない)、およびRSV F三量体を293EXPI細胞にトランスフェクトし、4日後に馴化培地から発現生成物を回収した。RSV Fナノ粒子は従来のクロマトグラフィー法を用い、pH7.0および8.5の一連のアニオン性Qカラム精製(GE Healthcare社、Cat#17-1154-01)およびそれに続くPBS中Superose6 SEC精製(GE Healthcare社、Cat#90-1000-42)によって精製した。DS-CAV1融合前三量体および融合後三量体は-80℃で保存し、RSV Fナノ粒子は4℃で保存した。
【0281】
RSV Fナノ粒子のコンフォメーションを決定するため、電子顕微鏡を実施した。RSV Fナノ粒子調製物(25mM Tris、50mM NaCl中、30μg/mL)を400メッシュの炭素コートグリッド(Electron Microscopy Sciences社)に吸収させ、0.75%のギ酸ウラニルで染色した。80kVで操作するJEOL社の1200EX顕微鏡を用いてサンプルを解析した。顕微鏡写真は65
,000倍の拡大で取得し、EM会社Nanoimaging Services,Inc.社(San Diego,CA)による当分野の従来法を用いて2Dクラス平均を調製した(
図1D)。
【0282】
過渡的にトランスフェクトした293EXPI細胞(Invitrogen社)によるこれらのRSV Fポリペプチドおよびフェリチンを含むポリペプチド(配列番号1~8および11~15)の発現および分泌を、抗RSV Fウエスタンブロットによって評価した。全ての抗RSV Fウエスタンブロットは、McLellanら、Science
340(6136):1113~1117頁(2013)および米国特許第8,562,996号に記載された部位0特異的D25抗体を用いた。
図2に示すように、多くの構築物の発現および分泌に成功した。
【0283】
RF8085ポリペプチド(配列番号1)は、N末端でフェリチンナノ粒子に融合した発表済みのDS-CAV1 RSV Fの一本鎖変異体を表す(McLellan,J.S.ら、Science 342(6158):592~598頁(2013)参照)。この構築物は抗原部位0を保持したRSV FのS155C~S290C二重変異体(DS)を含んでいる。
【0284】
RF8106ポリペプチド(配列番号9)は、DS-CAV1に置換される2つのシステインの代わりにI217P置換を有している。
図3に示すように、RF8106構築物は4日後に抗RSV Fウエスタンブロットによる馴化培地からの評価で、過渡的にトランスフェクトした293EXPI細胞において顕著に良好な発現を有していた。
【0285】
RF8106のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、融合タンパク質ナノ粒子と符合するRSV抗原に融合した集合したフェリチン粒子と符合する保持時間において主ピークの溶出を示した(Pre-F-NP、
図4)。RF8106の動的光散乱(DLS)解析を、還元状態(
図5B)および非還元状態(
図5A)で行った。還元は2mM TCEPによる処理で行った。RF8106はほぼ15nmの半径を有しており、これは還元状態および非還元状態のナノ粒子(24量体)への組み込みと符合している。以下に述べるように、融合タンパク質の還元剤への安定性は、アジュバントが融合タンパク質にコンジュゲートして自己アジュバント性ナノ粒子を形成することを容易にしている。
【0286】
次に、RSV Fポリペプチドとフェリチンとの融合タンパク質へのアジュバントのコンジュゲーション(Pre-F-NP)を評価した。フェリチンの上の遊離の表面システインを用いてscF-pFerr融合タンパク質に追加の部分を結合させることができることが見出された。
図6に、配列T*G*A*C*T*G*T*G*A*A*C*G*T*T*C*G*A*G*A*T*G*A(配列番号30、*はホスホロチオエートリンケージを示す)を有するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)のRF8106へのコンジュゲーションの成功を示す。これは、クーマシー染色SDS-PAGEゲルで評価した分子量の増大によって証明された。
【0287】
E328N、S348N、およびR507Nの置換(RF8117、配列番号17)を用いてグリコシル化部位を追加することの効果を、フェリチンとの融合タンパク質としてのこの構築物(すなわちPre-F-NP構築物として)を過渡的にトランスフェクトした293EXPI細胞で評価した。RF8117はまた、RF8113と同様にI217P置換を含んでいる。
図7に示すように、RF8085対照構築物およびRF8113構築物(配列番号16、これはI217Pのプロリン置換を含むが、E328N、S348N、およびR507Nの置換を含まない)と比較して、RF8117の発現の増大が見られた。RF8113は、操作されたフェリチンのシステインがフェリチン残基のS111CでなくK79Cの上にあることを除いて、既に述べたRF8106と同様である。RF
8117構築物はまた、RF8113およびRF8117の分子量の増大を示し、グリカンの付加に成功したことを示した。
【0288】
図8に、Pre-F-NPのタンパク質分解安定性を増大したRSV Fナノ粒子の改変をまとめる。出発構築物はRF8117(上記)であった。その前の構築物RF8085をRF8090としてCHOベクターにクローニングしてCHO細胞にトランスフェクトした際、いくらかの物質がFとフェリチン部分との間で切り取られたことが観察された。HRB領域またはFとフェリチン部分との間のリンカーにおけるアルギニンまたはリシンの残基がトリプシン様のプロテアーゼで切断されていたことが疑われた。この領域内のリシンおよびアルギニン残基の変異を、293細胞中での発現に関して試験した。
図8より、K498LおよびR508Qの変異(RF8122、配列番号18における)が、RF8117と比較して発現に影響しまたは発現を増大させないことが確認された。これらの変異をR523Qとともに本明細書で述べたRF8117の変異と組み合わせて、構築物RF8140(配列番号23)を形成した。
【0289】
293細胞での発現において、一本鎖とプロリン(I217P)改変の組合せにより、発現のより大きな改善(ほぼ5倍)(これらの置換を有する例示的な構築物にはRF8106(配列番号9)およびRF8113(配列番号16)が含まれる)、およびRSV Fのグリコシル化部位改変の追加に起因する発現および溶解性のさらなる改善(例示的な構築物RF8117(配列番号17)およびRF8140(配列番号23))が見られた。これらの構築物は全て、配列GSGNVGL(配列番号31)に置き換えられた融合ペプチドおよびp27ペプチド領域(配列番号26のアミノ酸98~144)を有していた。しかし、RF8090を製造用CHO細胞株で発現した場合には、ウエスタンブロットでさらなるRSV Fバンドが観察され、この構築物はおそらくアルギニンまたはリシン残基におけるトリプシン様切断によるタンパク質分解を受けやすいことを示唆している。
【0290】
プロテアーゼに対する感受性の潜在的役割も検討した。HRB領域およびF部分とフェリチン部分との間のリンカーにおけるK残基の置換(ノックアウトまたはKO)を行った。それは、これらの部分が製造用CHO細胞株において初期に観察されたK介在切断の可能性のある部位であると予想されたからである。
図9Aおよび
図9Bに示すように、D25ウエスタンブロットまたはD25およびAM14 Octet解析で測定して、RF8117およびRF8140はいずれも、製造用CHO細胞株においてRF8090と比較して高いレベルを発現した。
【0291】
これらのデータより、一本鎖の構築物およびヘリックスキャッピングのためのアミノ酸の改変、グリコシル化の増大、ならびにプロテアーゼによる切断を受けやすいリシンまたはアルギニンの除去によって、RSV Pre-F-NP抗原を含むRSV Fポリペプチドの発現を改善できることが示される。
【0292】
2.RSV Fおよびフェリチンナノ粒子の融合タンパク質の特徴解析
動物研究に先立って、DS-CAV1およびRSV Fナノ粒子の濃度を、Octetを用いる結合によって解析した。融合前抗原の融合前特異的抗体D25およびAM14への結合も、ForteBio Octet装置を用いて測定した。全てのアッセイはPBS中、30℃で実施した。抗体をプロテインA(ProA)センサーチップ(forteBio#18-5013)に400秒、負荷して、ほぼ飽和に達するまで捕捉させた。次いでバイオセンサーチップをPBS中で90秒、平衡にし、次いで公知の濃度の抗原とPBS中で300秒会合させ、次いでPBS中で抗原を解離させた。1:1の相互作用を仮定したデータ解析および曲線フィッティングを、公知の濃度の精製したPre-F-NPの結合の外部標準曲線を用いるOctet Data Analysis HT10.0ソフトウェアで行った。CHO馴化培地中のPre-F-NP濃度を決定する例示的なア
ッセイ結果を
図9Bに示す。
【0293】
3.RSV Fポリペプチドへの免疫応答のin vivo特徴解析
マウスにおけるRSV抗原に対するin vivo応答を評価するため、雌BALBcマウスを0週、3週、および6週で指定した用量のRSV抗原で筋肉内免疫した。他に注記しなければ、RSV抗原を(例えばとりわけ
図10A~
図10B、および
図12A~
図12Bの実験において)ベッドサイド混合戦略によりAF03でアジュバント化した。すなわち、それぞれの後ろ足に50μlを注射する直前に、関連するタンパク質の溶液50μlをSanofi社のアジュバントAF03(スクアレン系エマルジョン、Kluckerら、J Pharm Sci.2012 Dec;101(12):4490~500頁参照)50μlと混合した。非アジュバント化群については、抗原を上記のように混合したが、AF03を等体積のPBSに置き換えた。SPA09またはアラムと混合した抗原については、AF03をそれぞれ等体積のSPA09またはアラムに置き換えて上記の手順を実施した。いずれの処方についても免疫による有害な影響は観察されなかった。最初の免疫の1日前、およびそれぞれの注射の少なくとも2週後(すなわち、2週、5週、および8週)に血液を採取した。他に特定しなければ、示したデータは3回目の注射の2週後(8週、2wp3とも注記する)のものであった。典型的には、血清は免疫前の動物(ナイーブと注記)、2回目の注射の2週後(ポスト2または2wp2)、または3回目の注射の2週後(ポスト3
rdまたは2wp3)から分析した。
【0294】
Vero細胞中和アッセイのため、血清を56℃で30分、熱不活化した。不活化血清の4倍連続希釈系列を、2%のウシ胎児血清(FBS)、1%のGlutaMAX、および1%の抗生-抗有糸分裂剤を補ったDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)中で作成した。RSVウイルスストックを希釈血清と1:1で合わせ、37℃で1.5時間インキュベートした。次いでウイルス-血清混合物を、コンフルエントなVero細胞単層を含む24ウェルのプレートに1ウェルあたり100μL添加し、37℃、5%CO2で1.5時間インキュベートした。次いで接種材料を1ウェルあたり1mLの、2%のFBS、2%のGlutaMAX、および2%の抗生-抗有糸分裂剤を補ったDMEM中、0.75%のメチルセルロースで覆った。5%CO2中、37℃で5日インキュベートした後、上層を除去し、単層を氷冷メタノールで20分固定した。
【0295】
次いでプレートを水で1回洗浄し、室温で30分、穏やかに振盪しながらリン酸緩衝食塩液(PBS)中5%の脂肪を含まないドライミルクでブロックした。次いでブロッキング溶液を、1ウェルあたり200μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗RSV抗体(Abcam社AB20686)の2000倍希釈物を含むPBS中、2%ドライミルクに置き換えた。室温で3時間インキュベートした後、プレートを水で2回洗浄し、TrueBlue HRP基質で発色させ、水でさらに2回洗浄して風乾した。
【0296】
染色したプラークを解剖用顕微鏡を用いて計数した。中和抗体力価は、式:60%プラーク低減力価=(C/V×0.4-Low)/(High-Low)×(HSD-LSD)+LSDを用いてモック中和ウイルス対照の60%低減エンドポイントで決定した。ここでC/V=モック中和ウイルス対照ウェルにおけるRSVプラークの平均、LowおよびHighは血清サンプルのC/V×0.4値を挟む2つの希釈におけるRSVプラークの平均数、HSDおよびLSDは高い方および低い方の血清希釈倍率である。
【0297】
HAE中和アッセイのため、血清を56℃で30分、熱不活化した。不活化血清の4倍連続希釈系列を、PneumaCult(商標)-ALI 10X Supplement(Stem Cell Technologies社、05003)および1%の抗生
-抗有糸分裂剤を補ったPneumaCult(商標)-ALI Basal Medium(Stem Cell Technologies社、05002)(以下、培地)中で作成した。RSVウイルスストックを希釈血清と1:1で合わせ、37℃で1.5時間インキュベートした。次いでウイルス-血清混合物を、完全に分化したHAE細胞を含む24ウェルのプレートに1ウェルあたり50μL加え、37℃、5%CO2で1.5時間インキュベートした。インキュベーションの後、接種材料を除去し、ウェルを培地で2回洗浄して未結合のウイルスを除去し、37℃、5%CO2でさらに20時間インキュベートした。mKate(TagFP635)レポーターを発現するRSVに感染した培養における感染事象を、蛍光顕微鏡で計数した。
【0298】
mKateレポーターを発現しないRSVによる感染を検出するため、偽重層上皮を培地で十分に洗浄して粘液を除去し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温、30分固定し、0.25%のTriton X-100で30分透過性にし、2%のFBSを補ったDMEMで37℃で、1時間ブロックした。ブロッキング液を1ウェルあたり100μLの2%のFBSを補ったDMEMで200倍に希釈したマウス抗RSVモノクローナル抗体混合物(Millipore社、MAB 858-4)に置き換え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。次いでプレートを0.05%のTween 20を補ったPBSで3回洗浄した。2%のFBSを補ったDMEM中、200倍に希釈したヤギ抗マウスIgG(H+L)(Invitrogen社、A11001)100μLを1ウェルあたりに加え、プレートを4℃で終夜インキュベートした。翌朝、プレートを0.05%のTween 20を補ったPBSで3回洗浄し、蛍光シグナルをProLong Gold AntiFadeおよびDAPI(Thermo Fisher Scientific社、P36935)で安定化させ、蛍光顕微鏡で計数した。中和抗体力価は上記のように60%低減エンドポイントで決定した。
【0299】
抗F結合のため、融合前F(DS-CAV1)または融合後FのいずれかをOctet上の抗HIS抗体チップに結合した。特定しない限り、全ての抗F結合は抗融合前F三量体(DS-CAV1)結合を意味する。His6-タグ付け(配列番号230)RSV F三量体(DS-CAV1)または融合後Fを抗ペンタ-HIS(HIS1K)センサーチップ(ForteBio社#18-5122)に400秒、前負荷して、ほぼ飽和に達するまで捕捉させた。次いでバイオセンサーチップをOctet Wash Buffer中で90秒、平衡にし、希釈した血清と300秒会合させた。会合曲線の最終応答は、Octet Data Analysis HT10.0ソフトウェアを用いて測定し、応答に希釈係数(100または300)を乗じて最終報告応答を得た。
【0300】
抗Gcc結合のため、C末端HISタグを有するGccペプチドの三量体化二量体を上と同様にOctetチップ上で用いた。His6-タグ付け(配列番号230)Gcc(A2株)六量体を抗ペンタ-HIS(HIS1K)センサーチップ(ForteBio社#18-5122)に400秒、前負荷して、ほぼ飽和に達するまで捕捉させた。次いでバイオセンサーチップをOctet Wash Buffer中で90秒、平衡にし、希釈した血清と300秒会合させた。会合曲線の最終応答は、Octet Data Analysis HT10.0ソフトウェアを用いて測定し、応答に希釈係数(100または300)を乗じて最終報告応答を得た。
【0301】
非ヒト霊長類(NHP)の研究のため、NHPをRSV応答について事前スクリーニングした(ベースラインは全てのアッセイについて検出限界未満であることが見出された)。NHPは上記のマウスプロトコルと同様に表示されたアジュバントとともにRF8140 50μgで免疫したが、アジュバントの体積は多かった(
図11C~
図11Dおよび
図18)。
【0302】
非ヒト霊長類の研究のため、VERO中和アッセイを上記のように実施した。Pre-F結合は下記のELISAアッセイによって評価した。
【0303】
NHP血清サンプルを2倍段階希釈し(初期希釈100倍)、ブロックされたRSV可溶性F(Sinobiological社#11049-V08B)でコートしたプレート(1μg/mL、100μL/ウェル)上、37℃で1時間インキュベートした。セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗サルIgG(BioRad社 AAI42P、10,000倍希釈)を用いて37℃、90分でRSV F特異的IgGを検出した。3,3’、5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB Tebu-Bio社)を用いてプレートを発色させ、1N塩酸(Prolabo社#30024290)で停止した。マイクロプレートリーダー(SpectraMax社)を用いて450nm~650nmの光学密度(OD)を測定した。RSV sF特異的IgG力価はSoftmax Proソフトウェアを用いて滴定曲線からOD値範囲0.2~3.0について計算した(各プレートに標準のマウス超免疫血清を加えた)。
【0304】
随意のELISA単位(EU)で表したこの参照のIgG力価はOD1.0を与える希釈倍数の逆数のlog10に対応した。抗体検出の閾値は20(1.3log10)EUであった。グラフ化のため、全ての最終力価をlog10で表した。1.3log10未満のそれぞれの力価に、随意の力価1.0log10を割り付けた。
【0305】
NHP研究における細胞介在免疫を評価するため、IFNγ/IL-2 FluoroSpotキット(FS-2122-10、Mabtech社)をメーカーの説明書に従って用いた。簡単には、IPFLプレートの膜を35%エタノールで前湿潤化し、捕捉抗体(抗IFNγおよび抗IL-2)を4℃で終夜コートした。
【0306】
次いでプレートを、10%ウシ胎児血清(FCS)を含む200μL/ウェルの細胞インキュベーション培地で、37℃で2時間ブロックした。培地を除去し、刺激剤:完全長のF抗原(抗原特異的刺激)、抗CD3(陽性対照)、または細胞培養培地(非刺激対照)をウェルに加えた。マカク末梢血単核球(PBMC)を解凍して計数した。1ウェルあたり400,000個の細胞を加え、5%CO2を含む加湿したインキュベーター中、37℃で24時間インキュベートした。
【0307】
検出のため細胞を取り出し、検出抗体(コンジュゲートした抗IFNγおよび抗IL-2)を加え、室温で2時間インキュベートした。次いでフルオロフォアをコンジュゲートした試薬を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを空にし、乾燥させ、分析まで暗所に室温で保存した。陽性対照として抗CD3mAbを用い、PBMC百万個あたり500超のスポット形成カウント(SFC)の応答が全サンプルで見られ、サンプルの品質が許容できることを確認した。非刺激ウェル(細胞培養培地)で検出されたスポットをF抗原刺激細胞から差し引いた。
【0308】
ヒト細胞(またはB細胞)の解析のため、Daunerら、Vaccine 2017
Oct 4;35(41):5487~5494頁の参照した実験と同様の実験を実施した(
図20)。細胞は未処理(PBSで処理)、または100ng用量と注記したようにRSV FまたはRSV Gポリペプチドで処理した。F結合およびG結合の応答は、それぞれプレF三量体(DS-CAV1)またはGエクトドメインでコートしたビーズを用いて文献に記載されたルミネックスアッセイを用いて実施した。
【0309】
RF8117(配列番号17)はE328N、S348N、およびR507Nで操作されたグリコシル化部位を含み、これらは上述のようにD25またはAM14の結合を阻止しない。これらの融合前ナノ粒子が他の融合前抗原(DS-CA1)と同様の免疫応答を
誘発することを実証するため、5匹の群のマウスを1μgまたは0.1μgの用量で、全てAF03アジュバントとともに、pre-F三量体(DS-CA1)、融合後F、またはRF8117で、注射の間3週あけて3回免疫した。3回目の免疫の2週後に血清の中和力価をVERO細胞アッセイによって試験した。高用量のRF8117は融合前対照と同様で融合後対照よりも優れた中和力価を誘発した。低用量ではRF8117は融合前対照および融合後対照のいずれよりも高い中和力価を誘発した(
図10A)。
【0310】
RSV Pre-F-NPは、融合前および融合後のコンフォメーションの間で共有されたエピトープをブロックするように操作されたグリコシル化部位を有している。これらのグリカンが中和性応答を阻害していたかどうかを評価した。操作されたグリカンを有するRF8117(配列番号17)を、RF8113(RF8117と同様であるが操作されたグリカンを欠如する。配列番号16)および融合前三量体対照(DS-CAV1)と比較した。5匹の群のマウスを1μgまたは0.1μgの用量で、全てAF03アジュバントとともに、注射の間3週あけて3回免疫した。3回目の免疫の2週後に血清の中和力価をVERO細胞アッセイを用いて試験した。中和力価によって判断して、RF8113およびRF8117の構築物の間でいずれの用量でも有意な相違はなかった(
図10B)。
【0311】
本明細書で述べたRF8140(配列番号23)のリシンおよびアルギニンのノックアウトが抗原の中和性応答を誘発する能力に影響しないことを実証するため、RF8140(配列番号25)の免疫原性を、融合後F三量体(配列番号24)の免疫原性とマウスで比較した(
図11Aおよび
図11B)。低用量(0.1μg)ではRF8140(配列番号25)は融合後三量体(配列番号24)より優れた中和力価を誘発する。RF8140(配列番号23)がNHPで免疫応答を誘発することを実証するため、アジュバント(AF03)の存在下または非存在下で、NHPをRF8140(配列番号25)で免疫した。
図11CにRSV F結合応答(ELISA力価)を示す一方、
図11DでPre-F-NP(RF8140、配列番号23)による免疫で誘発されたRSV中和力価を比較する。アジュバントの非存在下および存在下のRF8140(配列番号25)はいずれもNHPで免疫応答を誘発する。
【0312】
RF8117(配列番号17)およびRF8140(配列番号23)の操作されたグリコシル化部位はこれらの抗原が中和性応答を誘発することを阻止しないことが示されたので、これらが融合前および融合後のコンフォメーションの間で共有された非中和性または低中和性のエピトープをブロックすることを実証することが望まれた(
図12)。Octetで測定して、高用量(1μg)および低用量(0.1μg)で、操作されたグリコシル化なしのPre-F-NP(RF8113、配列番号16)または操作されたグリコシル化ありのPre-F-NP(操作されたGly粒子、RF8117、配列番号17)による免疫で誘発された融合前F(DS-CAV1、配列番号25)に対する抗体応答(
図12A)。いずれかのPre-F-NPによって誘発された応答は同様であった。Octetで測定して、高用量(1μg)および低用量(0.1μg)で、操作されたグリコシル化なしのPre-F-NP(RF8113、配列番号16)または操作されたグリコシル化ありのPre-F-NP(RF8117、配列番号17)による免疫で誘発された融合後三量体に対する抗体応答(
図12B)。RF8117(配列番号17)によって誘発された融合後F結合応答は、RF8113(配列番号16)によって誘発された応答より有意に低かった。したがって、RF8113とRF8117はいずれも融合前Fに強力な抗体応答を誘発する一方、RF8117によって誘発される融合後F抗体応答は大きく抑制される。これは、共有された融合前および融合後のエピトープに対する操作されたグリカンのマッピングによる(
図2B)。
【0313】
操作されたグリコシル化部位は非中和性エピトープをブロックするが、中和性抗体力価
を非中和性抗体力価に迂回することをさらに実証するため、上記のデータを異なる方法で解析した(
図13)。マウス研究における野生型グリコシル化部位を有するPre-F NP(Wt グリカン粒子、RF8113、配列番号16)による免疫で誘発され、VERO細胞アッセイによって測定したRSV中和力価と、操作されたグリコシル化部位を追加したPre-F NP(+グリカン粒子、RF8117、配列番号17)の比較を測定し、有意な相違がなかった(
図13A)。マウス研究におけるWtグリカン粒子(RF8113、配列番号16)による免疫と、+グリカン粒子(RF8117、配列番号17)による免疫で誘発されたRSV融合後F三量体結合抗体応答の比較は、操作されたグリカンを有するPre-F-NPについて抑制された融合後F結合応答を示した(
図13B)。操作されたグリカンが機能的な中和性抗体応答を低減しないが、共有された融合前/融合後エピトープに対して誘発される非中和性抗体を減少させ、それにより操作されたグリカン構築物によって誘発される中和性抗体の全抗体に対する比を改善することを実証するため、F結合応答に対する中和力価の比をプロットした(
図13C)。したがって、操作されたグリカンを有するPre-F-NPはマウスの研究において結合抗体プロファイルに優れた中和性を誘発する。
【0314】
フェリチンナノ粒子がRSV Gの中央ドメイン抗原の免疫原性を改善するために用いることができることを実証するため、Gccペプチド(配列番号29)をフェリチンナノ粒子に化学的にコンジュゲートする方法を開発した。本明細書に記載したS111C変異を有するフェリチンは、NHS基を介してN末端に結合したPEG4リンカーの上のマレイミド基を用いて合成されたGccペプチド(配列番号29)でコンジュゲートすることができる。N末端マレイミドを有するGccペプチドを合成し、Peptide International社(Louisville,KY,USA)がHPLCで精製した。マレイミド-Gcc抗原をフェリチンS111C粒子に添加すれば、マレイミドが遊離のシステインにコンジュゲートしてGcc-NPを形成し、これはクーマシー染色SDS-PAGEゲルで観察することができる(
図14A)。コンジュゲーションの効率は典型的には50%~90%であるが、Gccペプチドフェリチンナノ粒子(100%コンジュゲーション)のモデルを
図14Bに示す。
【0315】
Gcc-NPがGccペプチド(配列番号29)より優れた免疫応答を誘発するかどうかを決定するため、1群あたり5匹のマウスをGccペプチドまたはGcc-NPで免疫した(それぞれの免疫のため1.3μgの用量をRIBIと1:1で混合)。2回目の免疫の2週後、および3回目の免疫の2週後のGcc結合応答(Octet)を、ナイーブなマウス血清の代表的な群と比較した(
図14C)。マウスの研究における3回目の注射後のGccペプチド(配列番号29)とGcc-NPによる免疫で誘発された中和性応答も、HAE中和アッセイで比較した(
図14D)。Gcc結合応答と中和性応答の両方で判断して、Gcc-NPはGccペプチド単独より優れた免疫応答を誘発する。
【0316】
RSV Pre-F-NP(RF8140)とGcc-NPの共投与がいずれの抗原の免疫応答を誘発する能力に干渉しないことを実証するため、マウスをPre-F-NP単独(RF8140、配列番号23)、Gcc-NP(Gccペプチド配列番号29とコンジュゲートしたフェリチン)、またはPre-F-NP(RF8140、配列番号23)とGcc-NPとの組合せで免疫した(
図15A~
図15C)。全ての免疫はAF03でアジュバント化した。RF8140単独(Pre-F-NP)またはRF8140とGcc-NP(Pre-F-NP+Gcc-NP)で免疫したマウスは融合前F三量体(DS-CAV1、配列番号25)に結合する抗体を生じたが、Gcc-NPで免疫したマウスはこれを生じなかった。Gcc-NP単独(Gcc-NP)またはRF8140とGcc-NPで免疫したマウスはGccペプチドに結合する抗体を生じたが、RF8140だけで免疫したマウスはこれを生じなかった。Pre-F-NP単独、Gcc-NP単独、またはPre-F-NPとGcc-NPの共投与で免疫した動物は全て、HAE中和アッセ
イで測定して2回目の免疫および3回目の免疫の後で中和性応答を生じた。
【0317】
RSV Pre-F-NPとGcc-NPの共投与がいずれの抗原の中和性抗体を誘発する能力に干渉するかどうかを決定するため、FおよびGに対する中和性抗体を枯渇アッセイで検討した(
図16A~
図16B)。Gcc-NPの添加がPre-F-NPの中和性応答を誘発する能力に干渉しないことを実証するため、上記の群についてF感受性VERO細胞アッセイによって中和力価を測定した(
図16A)。抗原枯渇の品質を判断するため、ナイーブな動物からの血清も試験した。VEROアッセイにおいて、RF8140(配列番号23)単独またはGcc-NPと混合したRF8140で免疫したマウスの血清は同様の中和性応答を誘発した一方、Gcc-NPはF抗体感受性VEROアッセイにおいて中和性応答を誘発しないようであった。融合前三量体(DS-CAV1、配列番号25)に結合する抗体がRF8140(配列番号23)単独で免疫された動物またはRF8140(配列番号23)とGcc-NPで免疫された動物からのプール血清から枯渇している場合には、VEROアッセイにおいて測定可能な中和力価の低減が観察された。上記の群をHAE細胞アッセイにおける中和力価について測定すると、全ての免疫群はFおよびG感受性アッセイにおいて中和性応答を生じることが観察された(
図16B)。RF8140(配列番号23)単独で免疫された動物からのプール血清はHAEアッセイにおいて融合前F三量体(DS-CAV1、配列番号25)で枯渇された可能性がある中和性応答を誘発した。Gcc-NP単独で免疫された動物からのプール血清はHAEアッセイにおいてGエクトドメイン(配列番号28)で枯渇された可能性がある中和性応答を誘発した。Pre-F-NP(RF8140、配列番号23)とGcc-NPの両方で免疫された動物からのプール血清はHAEアッセイにおいて、DS-CAV1(配列番号25)によって完全には枯渇しないが、DS-CAV1、次いでGエクトドメイン(配列番号28)による引き続く枯渇によって完全に枯渇する中和性応答を誘発した。併せて、これらのデータは、Pre-F-NPおよびGcc-NPの共投与が、いずれの抗原のそれぞれ融合前のFまたはGに対する中和性抗体を誘発する能力にも干渉しないことを示唆している。
【0318】
RF8117(配列番号17)またはRF8140(配列番号23)のアジュバント化の効果を実証するため、AF03、SPA09、またはアラムと混合したこれらの構築物をマウスに投与した。
図17Aではアジュバントと混合した抗原10μgでマウスを免疫し、
図17Bではアジュバントと混合した抗原1μgでマウスを免疫した。
図17Aでは3回目の免疫時点の2週後にVERO細胞アッセイによって中和力価を測定した。非アジュバント化(No Adj)、アラムでアジュバント化、またはAF03でアジュバント化したRF8117(配列番号17)で免疫したマウスからの血清を示す。
図17Bでは、AF03でアジュバント化したRF8117(配列番号17)、SPA09でアジュバント化したRF8117(配列番号17)、またはAF03でアジュバント化したRF8140によって免疫したマウスからの血清についてのVERO細胞アッセイによって中和力価を測定した。RF8117(配列番号17)またはRF8140(配列番号23)のいずれについても全ての場合に、ナイーブマウスのアジュバント群は非アジュバント群より高い中和力価を誘発した。AF03と混合したRF8117(配列番号17)またはRF8140(配列番号23)で免疫したマウスは同様の中和性応答を誘発し、RF8140(配列番号23)に付加されたリシンおよびアルギニンの変異はPre-F-NPの中和性応答を誘発する能力に干渉しないことが示唆された。
【0319】
AF03およびSPA09のアジュバント効果をさらに検討するため、非アジュバント化、AF03でアジュバント化、または2種の用量のSPA09でアジュバント化したRF8140で非ヒト霊長類(NHP)を免疫した(
図18A)。NHPは0日および29日に指示されたアジュバントと混合した抗原50μgで免疫し、指示された時点でELISAまたはVERO中和性応答によって免疫応答を測定した。融合前F三量体ELISA
応答は、非アジュバント化(No Adj)、AF03でアジュバント化、またはSPA09でアジュバント化したRF8140で免疫した後のNHP血清で測定した(SPA09の500μgおよび2000μgの用量を用いた)。全ての時点で、AF03またはSPA09によるアジュバント化により、優れた中和性応答が誘発された。上記のNHP群の血清の中和力価も、VERO細胞アッセイによって測定した(
図18B)。全ての例では、アジュバントを伴うRF8140による免疫は、全ての時点において非アジュバント化群より高い中和力価を誘発した。
【0320】
RF8140(配列番号23)のTLR7/8アゴニストSM7/8またはTLR9アゴニストCpGへの直接コンジュゲーションの効果を試験した。抗原を小分子のSM7/8またはCpGでコンジュゲートし、マウスに10μg用量を投与した。RF8140はそのフェリチン配列中に、表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異(K79C)を含んでおり、これをクリックケミストリーによってコンジュゲーションに用いることができる。比較のため、
図19に示すように、高用量または低用量(コンジュゲートしない)で小分子と混合することによって、非アジュバント化(No-adj)またはアジュバント化したRF8140をマウスに投与した。2回目および3回目の免疫の後の動物からの血清を融合前F三量体結合について試験した。
【0321】
図19Aでは、融合前F三量体結合応答を、ナイーブなマウス、非アジュバント化RF8140(配列番号23)で免疫したマウス、SM7/8アジュバントとコンジュゲートしたRF8140(配列番号23)、130ngのSM7/8でアジュバント化したRF8140(配列番号23)、または20μgのSM7/8でアジュバント化したRF8140(配列番号23)で免疫したマウスのいずれかの血清中で測定した。SM7/8にコンジュゲートしたRF8140(配列番号23)は、非アジュバント群またはSM7/8アジュバント群より高い融合前F三量体結合力価を誘発した。
【0322】
図19Bでは、融合前F三量体結合応答を、ナイーブなマウス、非アジュバント化RF8140(配列番号23)で免疫したマウス、CpGアジュバントとコンジュゲートしたRF8140(配列番号23)、680ngのCpGでアジュバント化したRF8140(配列番号23)、または20μgのCpGでアジュバント化したRF8140(配列番号23)で免疫したマウスのいずれかの血清中で測定した。SM7/8にコンジュゲートしたRF8140(配列番号23)は、非アジュバント群またはSM7/8アジュバント群より高い融合前F三量体結合力価を誘発した。
【0323】
Pre-F-NP抗原およびGcc-NP抗原のヒト細胞における応答を誘発する能力を実証するため、MIMICプラットフォームでの実験を実施した(
図20A~
図20D)。MIMICプラットフォームはチャレンジに際して先天的なまたは後天的な抗原特異的応答を迅速かつ再現性よく産生することができる自己ヒト免疫細胞のみからなっている。以前の研究により、HBV、破傷風トキソイド、モノクローナル抗体、YF-VAX、およびインフルエンザB細胞応答等の多様な標的に対してin vivoの免疫プロファイルを反復するMIMICシステムの能力が実証されている。Pre-F-NP RF8140(配列番号23)、対、融合後F三量体(配列番号24)による処置によって誘発されるRSV融合前F三量体結合抗体応答をヒトB細胞で比較した。代表的なベースライン応答を比較のために示す(処置なし)(
図20A)。ヒトB細胞において、Pre-F-NP(RF8140、配列番号23)、対、融合後F(配列番号24)による処置によって誘発された融合前F三量体(DS-CAV1、配列番号25)、対、融合後F三量体(配列番号24)に対する測定された結合応答の比を
図20Cに示す。異なるF抗原による処置によって誘発されたMIMICからの抗体をVERO細胞アッセイを用いて測定した(
図20B)。ヒトB細胞において、Pre-F-NP(RF8140、配列番号23)、対、融合後F三量体(配列番号24)による処理によって誘発された中和力価を非処
理群と比較し、RF8140(配列番号23)がヒト細胞において優れた中和性応答を誘発することを示した。
【0324】
RSV感染またはFサブユニットワクチンの候補に対する抗体応答の大きさを、MIMIC研究で検討したヒト対象の血清状態に基づいて決定した。これは線形回帰解析によって評価した。以前から存在する抗pre-F IgGの高い循環力価を有するドナーは、RSV処置の後(
図20E、p=0.0041)およびpost-Fプライミングの後(
図20F、p=0.0019)に、有意により高い抗pre-F IgGを生成した。相関は統計的有意性に達しなかったが、pre-Fはまた、誘起された抗体のレベルと以前から存在する抗体のレベルとの間に関連性を示した。他の処置と異なり、pre-F-NPは以前から存在する抗pre-F IgGが高いドナーからと同様に、以前から存在する抗体が低いドナーから比較的高いレベルの抗pre-F IgGを誘起したことは注目に値する(
図20F)。これは、pre-F-NPが以前から存在するIgGのレベルが低いドナーからでも効果的に抗体応答を取り戻す(または強化する)ことができることを示している。
【0325】
Gcc-NPがGccペプチド(配列番号29)単独より優れたG抗体応答を誘発することを実証するため、ヒト細胞をGccペプチド単独(配列番号29)またはヒトB細胞中でナノ粒子にコンジュゲートしたGccペプチド(Gcc-NP)で処理した。Gcc-NPは優れたG結合抗体応答を誘発した(
図20G)。組み合わせて、これらのデータは、Pre-F-NPおよびGcc-NPがヒトの免疫において免疫応答を誘発することを示唆している。
【0326】
4.RSV Gcc-フェリチンナノ粒子に対する免疫応答のin vivo特徴解析
RSV Gcc-NPを上述のように調製した。マウスにおけるRSV Gcc-NPに対するin vivo応答を評価するため、雌BALBcマウスを0週、3週、および6週で、高用量(5μg)または低用量(0.5μg)の抗原を用い、指定された用量のRSV抗原で筋肉内免疫した。他に注記しなければ、RSV Gcc-NPをベッドサイド混合戦略によりAF03でアジュバント化した。すなわち、それぞれの後ろ足に50μlを注射する直前に、タンパク質溶液50μlをSanofi社のアジュバントAF03(スクアレン系エマルジョン、Kluckerら、J Pharm Sci.2012 Dec;101(12):4490~500頁参照)50μlと混合した。免疫による有害な影響は観察されなかった。最初の免疫の1日前、およびそれぞれの注射の少なくとも2週後(すなわち、2週、5週、および8週)に血液を採取した。他に特定しなければ、示したデータは3回目の注射の2週後(8週、2wp3とも注記する)のものである。典型的には、血清は免疫前の動物(ナイーブと注記)、2回目の注射の2週後(ポスト2または2wp2)、または3回目の注射の2週後(ポスト3rdまたは2wp3)から分析した。
【0327】
HAE中和アッセイのため、血清を56℃で30分、熱不活化した。不活化血清の4倍連続希釈系列を、PneumaCult(商標)-ALI 10X Supplement(Stem Cell Technologies社、05003)および1%の抗生-抗有糸分裂剤を補ったPneumaCult(商標)-ALI Basal Medium(Stem Cell Technologies社、05002)(以下、培地)中で作成した。RSVウイルスストックを希釈血清と1:1で合わせ、37℃で1.5時間インキュベートした。次いでウイルス-血清混合物を、完全に分化したHAE細胞を含む24ウェルのプレートに1ウェルあたり50μL加え、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。インキュベーションの後、接種材料を除去し、ウェルを培地で2回洗浄して未結合のウイルスを除去し、37℃、5%CO2でさらに20時間インキュベートした。mKate(TagFP635)レポーターを発現するRSVに感染した培養にお
ける感染事象を、蛍光顕微鏡で計数した。
【0328】
mKateレポーターを発現しないRSVによる感染を検出するため(RSV B株中和)、偽重層上皮を培地で十分に洗浄して粘液を除去し、次いで4%パラホルムアルデヒドで室温、30分固定し、0.25%のTriton X-100で30分透過性にし、2%のFBSを補ったDMEMで37℃、1時間ブロックした。ブロッキング液を1ウェルあたり100μLの2%のFBSを補ったDMEMで200倍に希釈したマウス抗RSVモノクローナル抗体混合物(Millipore社、MAB 858-4)に置き換え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。次いでプレートを0.05%のTween 20を補ったPBSで3回洗浄した。2%のFBSを補ったDMEM中、200倍に希釈したヤギ抗マウスIgG(H+L)(Invitrogen社、A11001)100μLを1ウェルあたりに加え、プレートを4℃で終夜インキュベートした。翌朝、プレートを0.05%のTween 20を補ったPBSで3回洗浄し、蛍光シグナルをProLong Gold AntiFadeおよびDAPI(Thermo Fisher Scientific社、P36935)で安定化させ、蛍光顕微鏡で計数した。中和抗体力価は60%低減エンドポイントで決定した。
【0329】
RSV G抗原による中和性応答の誘発が高い多価性によって改善されることを実証するため、RSV F抗原によってマウスを免疫した。全ての免疫はAF03によってアジュバント化した。AF03とともに処方したRSV Gcc-NPでマウスを免疫し、2回目の注射の2週後および3回目の注射の2週後に中和力価を測定した(
図21A~
図21C)。RSV Gcc-NPは、ナイーブなマウス血清に関連する中和性応答を誘発した。2回目の免疫の2週後(
図21A)および3回目の免疫の2週後(
図21B)に、A2株からのGccを含むGcc-NPで免疫したマウスはRSV A株に対する中和性応答を示した。3回目の注射の2週後に、Gcc-NPはRSV B1株に対する中和性応答をも誘発した(
図21C)。
【0330】
抗Gcc結合のため、C末端HISタグを有するGccペプチドの三量体化された二量体をOctetチップ上で用いた。His6タグ付けしたGcc(A2株)六量体またはHis6タグ付けしたGcc(B1株)六量体を抗ペンタ-HIS(HIS1K)センサーチップ(ForteBio社#18-5122)に400秒、前負荷して、ほぼ飽和に達するまで捕捉させた。次いでバイオセンサーチップをOctet Wash Buffer中で90秒、平衡にし、希釈した血清と300秒会合させた。会合曲線の最終応答は、Octet Data Analysis HT10.0ソフトウェアを用いて測定し、応答に希釈係数(100または300)を乗じて最終報告応答を得た。
【0331】
RSV Gcc-NPがGcc結合免疫応答を誘発するかどうかを決定するため、上記の免疫による血清のGcc A2六量体またはGcc B1六量体に結合する能力について試験した。高用量(
図22Aおよび
図23A)および低用量(
図22Bおよび
図23B)におけるGcc結合応答を2回目の免疫の2週後および3回目の免疫の2週後に試験した。A2株(
図22A~
図22B)およびB1株(
図23A~
図23B)のいずれについても、RSV Gcc-NPはナイーブなマウス血清に関連する結合応答を誘発した。
【0332】
5.ヒト細胞におけるPre-F-NPおよびGcc-NPへの応答
Pre-F-NPおよびGcc-NPのヒト細胞における応答を誘発する能力を実証するため、MIMICプラットフォームでの実験を実施した。MIMICプラットフォームはチャレンジに際して先天的なおよび後天的な抗原特異的応答を迅速かつ再現性よく産生することができる自己ヒト免疫細胞のみからなっている。以前の研究により、HBV、破傷風トキソイド、モノクローナル抗体、YF-VAX、およびインフルエンザB細胞応答等の多様な標的に対してin vivoの免疫プロファイルを反復するMIMICシステ
ムの能力が実証されている。Pre-F-NP RF8140(配列番号23)、対、融合後F三量体(配列番号24)による処置によって誘発されるRSV融合前F三量体結合抗体応答をヒトB細胞で比較し、代表的なベースライン応答と比較した。ヒトB細胞において、Pre-F-NP(RF8140、配列番号23)、対、融合後F(配列番号24)による処置によって誘発された融合前F三量体(DS-CAV1、配列番号25)、対、融合後F三量体(配列番号24)に対する測定された結合応答の比を決定した。異なるF抗原による処置によって誘発されたMIMICからの抗体をVERO細胞アッセイを用いて測定した。ヒトB細胞において、Pre-F-NP(RF8140、配列番号23)、対、融合後F三量体(配列番号24)による処理によって誘発された中和力価を非処理群と比較し、RF8140(配列番号23)がヒト細胞において優れた中和性応答を誘発することを示す。Gcc-NPがGccペプチド(配列番号29)単独より優れたG抗体応答を誘発することを実証するため、ヒト細胞をGccペプチド単独(配列番号29)またはヒトB細胞中でナノ粒子にコンジュゲートしたGccペプチド(Gcc-NP)で処置した。Gcc-NPは優れたG結合抗体応答を誘発した。したがって、Pre-F-NPおよびGcc-NPはヒトの免疫において免疫応答を誘発した。
RSV Fポリペプチドを含む抗原性RSVポリペプチドであって、融合前RSV Fと融合後RSV Fの間で共有されるRSVポリペプチドのエピトープがブロックされている、前記抗原性RSVポリペプチド。