(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170691
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】触媒の製造方法、触媒およびメタノール製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/04 20060101AFI20241204BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241204BHJP
B01J 23/80 20060101ALI20241204BHJP
B01J 23/83 20060101ALI20241204BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20241204BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20241204BHJP
C07C 29/154 20060101ALI20241204BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
B01J37/04 102
B01J37/08 ZAB
B01J23/80 Z
B01J23/83 Z
B01J23/89 Z
C07C31/04
C07C29/154
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178816
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小俣 光司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA21C
4G169BA22C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC08A
4G169BC10B
4G169BC15A
4G169BC20A
4G169BC24A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC34A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC38A
4G169BC39B
4G169BC40B
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC50B
4G169BC53A
4G169BC57A
4G169BC61A
4G169BC65A
4G169BC69A
4G169BC72B
4G169BE01C
4G169BE06C
4G169BE08C
4G169BE14C
4G169BE15C
4G169CC21
4G169CC27
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EC30
4G169ED05
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA08
4G169FB05
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC04
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA05
4H006BA06
4H006BA07
4H006BA08
4H006BA10
4H006BA25
4H006BB61
4H006BE20
4H006BE41
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】触媒活性の経時劣化を抑制する。
【解決手段】本開示の触媒の製造方法は、銅および亜鉛を含む固体、少なくとも1種の金属元素、およびキレート剤を接触させる接触工程(S1)と、前記接触工程によって得られた固体を焼成する焼成工程(S2)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の製造方法であって、
銅および亜鉛を含む固体、少なくとも1種の金属元素、およびキレート剤を接触させる接触工程と、
前記接触工程によって得られた固体を焼成する焼成工程と、を含む、触媒の製造方法。
【請求項2】
前記触媒は、メタノール製造用触媒である、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記金属元素は、元素周期表において、第2族~第16族に属する元素からなる群より選択される、少なくとも1種の金属元素である、請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記金属元素は、元素周期表において、第2族~第12族に属する元素からなる群より選択される、少なくとも1種の金属元素である、請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
前記金属元素は、元素周期表において、第2族~第4族に属する元素からなる群より選択される、少なくとも1種の金属元素である、請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記金属元素は、
銅と前記キレート剤とのキレート安定度定数に対する、前記金属元素と前記キレート剤との安定度定数が、0.85以上1.30以内の範囲を満たす金属元素である、請求項1から5のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記キレート剤は、アミノカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸である、請求項1から6のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
前記キレート剤は、1つ以上4つ以下のカルボキシル基を有する化合物である、請求項1から7のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項9】
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸およびシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1から8のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項10】
酸化炭素および水素を含む原料ガスを、請求項1から9のいずれか1項に記載の触媒の製造方法によって製造された触媒に接触させる工程を含む、メタノール製造方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の触媒の製造方法によって製造される触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法、触媒およびメタノール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタノール合成に用いられる触媒として、金属銅、酸化亜鉛および少なくとも1種の他の酸化物を含む触媒が知られている。例えば、特許文献1には、(i)酸化銅、酸化亜鉛、三価金属の少なくとも1種の酸化物、およびマグネシアを含む触媒前駆体ならびに(ii)触媒前駆体に含まれる酸化銅を金属銅に還元した触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工業触媒において、触媒活性の経時劣化を抑制することは重要な課題である。本発明の一態様は、触媒活性の経時劣化を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、触媒の製造方法であって、銅および亜鉛を含む固体、少なくとも1種の金属元素、およびキレート剤を接触させる接触工程と、前記接触工程によって得られた固体を焼成する焼成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、触媒活性の経時劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1に係る触媒の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態である触媒の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
本実施形態の触媒の製造方法は、銅および亜鉛を含む固体を、少なくとも一種の金属元素、およびキレート剤に接触させることにより、経時劣化が抑制された触媒を製造する方法である。本実施形態に係る触媒の製造方法によって製造される触媒は、メタノール製造用触媒として好適に用いられ得る。
【0010】
<触媒の製造方法>
本実施形態に係る触媒の製造方法について以下に詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る触媒の製造方法は、接触工程S1と、焼成工程S2と、を含む。なお、
図1に示すフローチャートは一例であり、これに限定されない。各工程について、以下に詳述する。
【0011】
(接触工程S1)
接触工程S1は、(i)銅および亜鉛を含む固体、(ii)少なくとも1種の金属元素および(iii)キレート剤を接触させる工程である。
【0012】
銅および亜鉛を含む固体は、銅および亜鉛を含み、触媒として用いるために好適な形状を有していれば特に限定されない。当該固体の形状は、例えば、ペレット状、顆粒状、粉状であってよい。銅および亜鉛を含む固体は、例えば、化学反応において触媒として作用し得る固体であってよい。より具体的には、銅および亜鉛を含む固体は、銅および亜鉛を含むメタノール製造用触媒(メタノール合成用触媒)であってもよい。銅および亜鉛を含む固体として、触媒として作用し得る固体を用いる場合、本開示に係る触媒の製造方法によって得られる触媒に対し、当該触媒として作用し得る固体を元触媒と称する。すなわち、本実施形態に係る触媒の製造方法は、元触媒をキレート剤の存在下で少なくとも1種の金属元素によって修飾する、触媒の製造方法であると言及することもできる。
【0013】
金属元素は、本開示に係る触媒を得るために、銅および亜鉛に付加される元素である。金属元素は、例えば、元素周期表において、第2族~第16族に属する金属元素であってもよい。金属元素が、第2族~第16族に属する元素であることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。金属元素は、元素周期表において、第2族~第12族に属する金属元素であってもよい。金属元素が、第2族~第12族に属する元素であることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。金属元素は、元素周期表において、第2族~第4族に属する元素であってもよい。金属元素が、第2族~第4族に属する元素であることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。
【0014】
より具体的には、金属元素は、例えば、Mg(第2族)、Sc(第3族)、Y(第3族)、Ce(第3族)、Pr(第3族)、Lu(第3族)Ti(第4族)、またはPd(第10族)であってよい。
【0015】
さらに、本実施形態に係る触媒の製造方法において用いられる金属元素は、用いられるキレート剤と銅とのキレート安定度定数に対する、当該キレート剤と金属元素との安定度定数が、0.85以上1.30以内の範囲を満たす金属元素であってもよい。簡単のために、本明細書において、用いられるキレート剤と銅とのキレート安定度定数に対する、当該キレート剤と金属元素との安定度定数の値を、安定度定数の比と称する。
【0016】
金属イオンと配位子(キレート剤)とが錯体を逐次生成する場合の、各段階における平衡定数(逐次安定度定数)をk1、k2・・・knとする。安定度定数Kは、これらの全ての逐次安定度定数の積である。通常、安定度定数の値は、安定度定数Kの常用対数をとった値(logK)によって表される。
【0017】
一例として、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いる場合について説明する。銅(Cu2+)と、EDTAとのキレート安定度定数(logK)は、18.80である。本実施形態に係る触媒の製造方法においてキレート剤としてEDTAを用いる場合、金属元素は、当該金属元素と、EDTAとのキレート安定度定数(logK)が、15.98(18.8×0.85)以上24.44(18.8×1.30)以下であることが好ましい。
【0018】
安定度定数の比が0.85以上1.30以内の範囲を満たす金属元素を用いることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。
【0019】
キレート剤とは、溶液中で、金属イオンに対して配位結合することにより、金属錯体または金属キレートを形成し得る物質である。本実施形態に係る触媒の製造方法において用いるキレート剤は、配位子として作用し、金属と金属錯体または金属キレートを形成し得るものであれば特に限定されない。例えば、キレート剤として、アミノカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸を用いてもよい。キレート剤としてアミノカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸を用いることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。キレート剤は、1つ以上4つ以下のカルボキシル基を有する化合物であってもよい。キレート剤として1つ以上4つ以下のカルボキシル基を有する化合物を用いることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。より具体的には、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸およびシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよい。キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸、クエン酸およびシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を用いることにより、本開示に係る触媒の製造方法によって、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を得ることができる。接触工程S1において添加されるキレート剤は少なくとも1種類であってよい。接触工程S1において、複数のキレート剤を添加してもよい。
【0020】
接触工程S1において、例えば、金属元素とキレート剤とを含む溶媒を、元触媒に接触させてもよい。あるいは、元触媒に対して、金属元素とキレート剤とを含む溶媒をスプレー等で吹きかけてもよい。溶媒としては、例えば水を用いることができる。
【0021】
なお、接触工程S1の後に触媒を乾燥させる乾燥工程を含んでも良い。当該乾燥工程では、接触工程S1で使用された溶媒と元触媒との混合液を加熱し、溶媒を蒸発させてもよい、あるいは、溶媒が付着した、金属元素およびキレート剤で処理された元触媒を乾燥器などで乾燥させてもよい。
【0022】
(焼成工程S2)
焼成工程S2は、接触工程S1において得られる、金属元素およびキレート剤で処理された元触媒を焼成する工程である。焼成工程S2において、キレート剤として添加された物質は燃焼物として除去され、銅、亜鉛および添加された金属元素を含む触媒を得ることができる。
【0023】
<触媒の使用方法>
本発明の一実施形態に係る製造方法において得られる上述の触媒は、そのまま反応場における触媒として使用してもよいし、還元性ガス(水素、水素と窒素の混合ガス、一酸化炭素を含むガスなど)で還元してから用いてもよい。例えば、触媒が酸化銅-酸化亜鉛触媒である場合には、水素を含むガスに酸化銅-酸化亜鉛触媒を接触させ、還元状態の金属銅-酸化亜鉛触媒に変化させてから、反応に用いる原料ガスと接触させてもよい。
【0024】
本実施形態に係る触媒は、焼成工程S2後、使用に適切な形状に成形してもよい。また、触媒を反応器などに充填する際に、原料ガスおよび反応生成物に対して不活性な種々の希釈剤と混合しても良い。希釈剤としては銅顆粒、アルミナボール、ジルコニアボール、石英ビーズ、ガラスビーズ、シリコンカーバイドなどが挙げられる。
【0025】
(まとめ)
本実施形態に係る触媒の製造方法は、銅および亜鉛を含む固体、少なくとも1種の金属元素、およびキレート剤を接触させる接触工程(S1)と、前記接触工程によって得られた固体を焼成する焼成工程(S2)と、を含む。
【0026】
当該構成により、上記製造方法によって得られる触媒の、触媒活性の経時劣化を抑制することができる。また、銅および亜鉛を含む固体を元触媒とした場合、上記製造方法により、元触媒と比較して、触媒活性の経時劣化が低減された触媒を製造することができる。これにより、触媒の使用量を削減することが可能となり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0027】
上記製造方法によって製造される触媒は、メタノール製造用触媒であり得る。より具体的には、上記製造方法によって製造される触媒は、酸化炭素と水素とを含む原料ガスからメタノールを製造するメタノール製造方法において用いられ得る。
【0028】
上記製造方法によって製造された、触媒活性の経時劣化が抑制された触媒を用いることにより、メタノールの製造効率を向上させることができる。
【0029】
本開示に係るメタノール製造方法は、酸化炭素および水素を含む原料ガスを、本実施形態に記載の触媒の製造方法によって製造された触媒に接触させる工程を含む。
【0030】
当該構成により、メタノールの製造効率を向上させることができる。
【0031】
本開示に係る触媒は、本実施形態に記載の製造方法によって製造される。当該構成により、触媒活性の経時劣化を抑制することができる。
【0032】
なお、本開示に係る触媒の製造方法によって製造される触媒は、接触工程S1と、焼成工程S2とを含む製造方法により製造されるということにより特定される。当該発明特定事項を備えることにより、得られる触媒の、触媒活性の経時劣化が抑制される。しかしながら、本開示に係る触媒の製造方法に従って得られた触媒の構造または特性を評価する指標を見出すには、著しく多くの試行錯誤を重ねることが必要であり、実際的ではない。
【0033】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0034】
以下では、実施例として、本開示に係る例示的な触媒の製造方法、および当該製造方法によって得られた触媒の、触媒活性の経時劣化についての評価について記載する。また、比較例として、本発明の範囲外の製造方法、および当該製造方法によって得られた触媒の、触媒活性の経時劣化についての評価について記載する。
【0035】
下記の実験では、触媒の製造のための銅および亜鉛を含む固体(元触媒)として、Alfa Aestar社製の触媒(Cat No.45776)を用いた。当該元触媒は、主としてメタノール製造用触媒として用いられる触媒である。当該元触媒は、酸化銅(2+)を63.5質量%、酸化亜鉛を25質量%、酸化アルミニウムを10質量%、および酸化マグネシウムを1.5質量%含む。
【0036】
<触媒の製造>
まず、実施例の一例として、添加する金属としてMgを用いた場合の触媒の製造方法について説明する(下記表1における実施例7)。
【0037】
Mg0.01gに相当する硝酸マグネシウム六水和物と、Mgのmol量の5倍に相当するEDTA(キレート剤)と、蒸留水(溶媒)50mlとを混合した。この混合溶液に粉砕した元触媒1gを入れ、攪拌した。攪拌後、3時間放置した。その後、攪拌しながら70~80℃の温度で加温し、水を蒸発させた。得られた乾燥状態の黒色の粉末をるつぼに入れ、マッフル炉内で300℃、4時間焼成し、本発明の範囲内の触媒を得た。
【0038】
実施例1~6については、添加する金属を変更し、実施例7と同様の方法によって本発明の範囲内の触媒を製造した。添加した金属は、下記表1における金属元素の欄に記載している。
【0039】
実施例9では、金属元素としてCeを用い、キレート剤としてシュウ酸を用いた点以外は、実施例7と同様に製造した。実施例10では、金属元素としてCeを用い、キレート剤としてクエン酸を用いた点以外は、実施例7と同様に製造した。
【0040】
比較例1は、元触媒を、未処理のまま評価対象の触媒として用いた。比較例2は、攪拌工程においてキレート剤を用いていないため、本発明の範囲外である。
【0041】
<活性評価試験>
触媒活性の経時劣化を評価する指標として、活性低下率を測定した。本試験において、活性低下率とは、触媒を用いたメタノール合成反応を実施した場合における、反応開始後3時間目と、8時間目の収率とを比較したときの収率の低下率であり、(Y(3h)-Y(8h))/Y(3h)*100で示される。Y(3h)およびY(8h)は、それぞれ3時間目および8時間目におけるメタノール収率である。活性低下率が低いほど、触媒活性の経時劣化が小さいことを意味する。
【0042】
石英ガラス製の内筒管を有するステンレス製の固定床反応器に、実施例または比較例のいずれかの触媒0.1gと、銅顆粒0.25gとを混合したものを充填した。固定床反応器にAr/CO2/H2=41.2/23.9/71.9(体積%)に調整した混合ガスを30NmL/minで供給した。固定床反応器内を室温から280℃まで60分かけて昇温した後、280℃で120min保持し、240℃まで降温することにより、触媒を還元した。
【0043】
固定床反応器内の温度が240℃において安定した後、固定床反応器内の圧力を、4MPa-Gまで昇圧した。Ar/CO2/H2=41.2/23.9/71.9(体積%)に調整した混合ガスを30NmL/minで供給、温度240℃(一定)の条件で、メタノール合成反応を開始した。反応開始から3時間時点のメタノール収率、および反応開始から8時間時点のメタノール収率は、固定床反応器出口のガスをGC(ガスクロマトグラフィ)を用いて分析した結果を用いて算出した。表1は、各実施例および比較例の内容と、実験結果とをまとめたものである。
【0044】
【表1】
比較例1の活性低下率は4.7であった。すなわち、元触媒の活性低下率は4.7であった。また、本発明の範囲外の製造方法により金属元素を添加した比較例2は3.6であった。
【0045】
実施例1~10と、比較例1とを比較することにより、本発明の範囲内の製造方法によって得られる触媒は、元触媒と比較して、活性低下率が低いことが実証された。
【0046】
実施例10と、比較例2とを比較することにより、同じ金属元素を添加した場合であっても本発明の範囲内の製造方法によって得られる触媒は、本発明の範囲外の製造方法によって得られる触媒と比較して、活性低下率が低いことが実証された。
【0047】
実施例1~6および8~10において用いた金属元素は、安定度定数の比が0.85以上1.30以内である。表1の結果より、安定度定数比が0.85以上1.30以内である金属元素を用いた場合、活性低下率が有意に低減することが実証された。