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特開2024-170755ポリヒドロキシアミド化合物、樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170755
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアミド化合物、樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/22 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
C08G73/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087450
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
(72)【発明者】
【氏名】行森 大貴
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 香帆
(72)【発明者】
【氏名】奥田 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA04
4J043PA19
4J043PB13
4J043PB14
4J043QB15
4J043QB23
4J043QB34
4J043RA24
4J043RA52
4J043SA06
4J043SA46
4J043SA47
4J043SA54
4J043SA71
4J043SB03
4J043TA26
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA622
4J043UA651
4J043UB061
4J043UB122
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA042
4J043VA061
4J043XA16
4J043XB05
4J043ZA52
4J043ZB03
4J043ZB22
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】感光性樹脂組成物等の樹脂組成物に使用可能な新規のポリヒドロキシアミド化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で示される構造単位と、イソソルバイド由来やイソマンニド由来の構造を含む構造単位と、を有することを特徴とするポリヒドロキシアミド化合物を提供する。

(式中Rは2価の有機基であり、Rは4価の有機基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される構造単位と、式(2)で示される構造を含む構造単位とを有することを特徴とするポリヒドロキシアミド化合物。
【化1】
(式中Rは2価の有機基であり、Rは4価の有機基である。)
【化2】
(式中*は、結合していることを示す。)
【請求項2】
前記式(2)で示される構造が、式(3)で示される構造を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキシアミド化合物。
【化3】
(式中*は結合していることを示す。)
【請求項3】
前記式(2)で示される構造を含む構造単位が、式(4)で示される構造単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキシアミド化合物。
【化4】
(式中Rは2価の有機基である。)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアミド化合物を含むことを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項6】
請求項4に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載のドライフィルムの樹脂層の硬化物。
【請求項8】
請求項6に記載の硬化物を有することを特徴とする、電子部品。
【請求項9】
請求項7に記載の硬化物を有することを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシアミド化合物、樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミド化合物を含む感光性樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、機械強度等に優れた特性を発現することから、絶縁膜として半導体、電子部品等の様々な分野において広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、感光性を有するポリベンゾオキサゾール前駆体である特定のポリアミド誘導体、放射線照射により酸を発生する化合物、前記特定のポリアミド誘導体を架橋し得る化合物を含有する感光性樹脂組成物を用いることが開示されている。特許文献1の開示によれば、感度、解像度及び耐熱性に優れ、良好な形状のパターン、及び、信頼性の高い電子部品が提供される。
【0004】
特許文献2には、ポリベンゾオキサゾール前駆体、感光剤、およびオキタセン基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物を用いることが開示されている。特許文献2の開示によれば、優れたリソグラフィー性能と安定性を有し、低温キュアで機械特性、耐熱性、基板密着性に優れた感光性樹脂組成物が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-125267号公報
【特許文献2】特開2008-224970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子部品や電気機器の高性能化、小型化の要求にともなって半導体素子のさらなる高集積化が求められている。これらの要求に答えるため、ウエハレベルパッケージ(WLP)等の半導体素子パッケージ分野における高性能化、小型化技術が開発され、再配線層に用いられる絶縁膜においてもパターン形成のさらなる微細化に加えて、これらの高性能化、小型化技術に適合するような種々の特性が要求されるようになってきている。
【0007】
そこで本開示の目的は、感光性樹脂組成物等の樹脂組成物に使用可能な新規のポリヒドロキシアミド化合物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の構造を骨格として有するポリヒドロキシアミド化合物が前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本開示技術の一態様によれば、
式(1)で示される構造単位と、式(2)で示される構造を含む構造単位とを有することを特徴とするポリヒドロキシアミド化合物を提供することができる。
【化1】
(式中Rは2価の有機基であり、Rは4価の有機基である。)
【化2】
(式中*は、結合していることを示す。)
前記式(2)で示される構造が、下式(3)で示される構造を含むことが好ましい。
【化3】
(式中*は結合していることを示す。)
前記式(2)で示される構造を含む構造単位が、式(4)で示される構造単位を含むことが好ましい。
【化4】
(式中Rは2価の有機基である。)
本開示技術の別の態様によれば、前記ポリヒドロキシアミド化合物を含むことを特徴とする、樹脂組成物を提供することができる。
本開示技術の別の態様によれば、前記樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルムを提供することができる。
本開示技術の別の態様によれば、前記樹脂組成物の硬化物又は前記ドライフィルムの樹脂層の硬化物を提供することができる。
本開示技術の別の態様によれば、前記硬化物を有することを特徴とする、電子部品を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示技術によれば、感光性樹脂組成物等の樹脂組成物に使用可能な新規のポリヒドロキシアミド化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図2】実施例2のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図3】実施例3のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図4】実施例4のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図5】実施例5のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図6】実施例6のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図7】実施例7のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図8】実施例8のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図9】実施例9のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRスペクトルである。
図10】実施例1~3及び比較例1のポリヒドロキシアミド化合物の200~500nmの光の透過スペクトルである。
図11】実施例4~6及び比較例1のポリヒドロキシアミド化合物の200~500nmの光の透過スペクトルである。
図12】実施例7~9及び比較例1のポリヒドロキシアミド化合物の200~500nmの光の透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示技術の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「p~q」との表記は、特に断らない限り、p以上q以下であることを表す。
【0012】
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本開示技術において使用可能である。
【0013】
1.ポリヒドロキシアミド化合物
本開示のポリヒドロキシアミド化合物は、式(1)で示される構造単位を有するものを特に限定されることなく使用することができる。
【化5】
(式中Rは2価の有機基であり、Rは4価の有機基である。)

また、ポリヒドロキシアミド化合物は、さらに式(2)で示される構造を含む構造単位を有している。式(2)で示される構造としては、イソソルバイド由来の骨格やイソマンニド由来の骨格が挙げられる。
【化6】
(式中*は結合していることを示す。)
【0014】
ポリヒドロキシアミド化合物は、式(2)で示される構造の中でも、反応性に優れ高分子量のポリヒドロキシアミド化合物を得ることができる観点から式(3)で示されるイソソルバイド由来の骨格を有することが好ましく、式(4)で示される構造単位を有することが特に好ましい。
イソソルバイドとして、再生可能資源であるデンプンや糖などの天然由来(植物原料)の成分を用いた場合には、より優れたサステナビリティを有するポリヒドロキシアミド化合物を得ることができる。
【化7】
(式中*は結合していることを示す。)
【化8】
(式中Rは2価の有機基である。)
【0015】
ポリヒドロキシアミド化合物は、式(2)で示される構造を含む構造単位を有する場合において、ポリヒドロキシアミド化合物を硬化性樹脂組成物に用いた際に、その硬化物は、従来のポリヒドロキシアミド化合物を含む硬化性樹脂組成物の硬化物と比べ、ガラス転移温度が低いものとなる。これは、従来のポリヒドロキシアミド化合物が、多くの水酸基等の反応性基を有する構造単位を含むのに対して、本開示のポリヒドロキシアミド化合物は、多くの水酸基等の反応性基を有する構造単位の一部が、水酸基等の反応性基を含まない式(2)で示される構造を含む構造単位に置き換わっていることに由来していると考えられる。これによりポリヒドロキシアミド化合物の架橋点(水酸基等の反応性基)が減少し、硬化物の架橋密度が減少することによってガラス転移温度を低いものとすることができると推察される。また、式(2)で示される構造を含む構造単位自体が柔軟性の高い構造であると考えられるため、これによっても硬化物のガラス転移温度を低くできると推察される。このような、ガラス転移温度の低い硬化物を得ることができるポリヒドロキシアミド化合物を感光性樹脂組成物として用いた場合には、後述するPEB(Post Exposure Bake)工程において光酸発生剤より発生した酸がより拡散しやすくなることから、解像性により優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
ここで、Rは、2価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキルエーテル基、ケトン基、エステル基等を挙げることができる。これらのうちベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の骨格を有する2価の芳香族炭化水素基、又は、ブタン、シクロブタン等の骨格を有する2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、ポリヒドロキシアミド化合物を感光性樹脂組成物に用いた場合の解像性の観点、及び、硬化性樹脂組成物として用いた場合に絶縁信頼性に優れる硬化物を得る観点から、Rの炭素数は4~30が好ましく、フェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパンが好ましい。なお、ポリヒドロキシアミド化合物の分子中に、Rとして上記にて例示した基の2種類以上を含有させることもできる。
【0017】
は、4価の有機基であれば特に限定されないが、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ベンゼン等の骨格を有する4価の芳香族炭化水素基が好ましく、式(5)に示す構造を有する有機基がより好ましい。
【化9】
(式中aは0~3の整数であり、*は結合していることを示す)
【0018】
ここで、Rは、2価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキルエーテル基、ケトン基、エステル基等を挙げることができる。これらのうちベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の骨格を有する2価の芳香族炭化水素基、又は、ブタン、シクロブタン等の骨格を有する2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、ポリヒドロキシアミド化合物を感光性樹脂組成物に用いた場合の解像性の観点及び、硬化性樹脂組成物として用いた場合に絶縁信頼性に優れる硬化物が得られる観点から、Rの炭素数は4~30が好ましく、フェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパンが好ましい。なお、ポリヒドロキシアミド化合物の分子中に、Rとして上記にて例示した基の2種類以上を含有させることもできる。なお、Rは、Rと同一の有機基又は異なる有機基のいずれでもよい。
【0019】
ポリヒドロキシアミド化合物は、分子鎖末端が末端封止剤により封止された末端構造を有していてもよい。ポリヒドロキシアミド化合物の解像性により優れる観点から、末端構造はカルボキシル基を有していないことが好ましい。また、現像液への溶解性に優れる観点から、末端構造は水酸基を有することが好ましくフェノール性水酸基を有することが特に好ましい。
また、樹脂組成物(又は後述する樹脂組成物の乾燥塗膜)のi線(365nm光)透過性を優れたものとする観点では、末端構造はカルボキシル基を有していることが好ましい。
【0020】
ポリヒドロキシアミド化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物に用いる場合には、例えば、2,000~100,000とすることができ、2,000~60,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~15,000がさらに好ましく、4,000~10,000が特に好ましい。
ポリヒドロキシアミド化合物の数平均分子量(Mn)は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物に用いる場合には、例えば、1,000~30,000とすることができ、1,000~20,000が好ましく、1,500~7,000がより好ましい。
ポリヒドロキシアミド化合物の分子量分散度(PDI)は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物に用いる場合には、例えば、1.5~4.0とすることができ、1.5~3.5が好ましい。
ポリヒドロキシアミド化合物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分散度(PDI)がかかる範囲にある場合には、解像性により優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
また、本明細書において、分子量分散度(PDI)は下式(X)により算出される。
PDI=Mw/Mn・・・(X)
【0021】
ポリヒドロキシアミド化合物の水酸基当量は、特に限定されないが、例えば、100~800g/eqとすることができ、硬化物のガラス転移温度をより低くできる観点で150~700g/eqが好ましく、200~700g/eqがより好ましい。また、ポリヒドロキシアミド化合物を感光性樹脂組成物として用いる場合には、現像性に優れた感光性樹脂組成を得る観点で、100~600g/eqが好ましく、100~500g/eqがより好ましい。
【0022】
2.ポリヒドロキシアミド化合物の合成方法
ポリヒドロキシアミド化合物の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、式(6)で示されるヒドロキシアミノ化合物と、式(7)で示されるジカルボニルジクロリド化合物と、式(8)で示される化合物を共重合させる方法を用いることができる。なお、これらの化合物と共重合可能なその他の化合物をさらに共重合させることもできる。
【化10】
(式中Rは4価の有機基である。)
【化11】
(式中Rは2価の有機基である。)
【化12】
【0023】
上述のように共重合させて得られたポリヒドロキシアミド化合物は、式(1)で示される構造単位と、式(2)で示される構造を含む構造単位とを有する式(9)で示される共重合体となる。また、式(6)~(8)で示される化合物と共重合可能なその他の化合物をさらに加えて共重合させた場合には、式(1)で示される構造単位と式(2)で示される構造を含む構造単位とは、異なるその他の構造単位をさらに含む共重合体とすることができる。その他の化合物は、単独でも、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。なお、本開示における共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれの場合も含むものとする。
【化13】
(式中m、nは自然数、Rは2価の有機基であり、Rは4価の有機基である。)
【0024】
また、式(8)の化合物として式(10)の化合物を用いた場合は、式(9)の共重合体は、式(11)で示したものとなる。ここで、RとRを同一であると考えると、式(11)は、式(1)で示される構造単位及び式(4)で示される構造単位を含む構造である。
【化14】
【化15】
(式中m、nは自然数、Rは2価の有機基であり、Rは4価の有機基である。)
【0025】
式(9)及び式(11)において、ポリヒドロキシアミド化合物の分子中のmとnの比は、特に限定されるものではないが、m:n=1:99~99:1とすることができ、m:n=5:95~80:20が好ましい。i線(365nm光)透過性にも優れた樹脂組成物(又は後述する樹脂組成物の乾燥塗膜)を得ることができる観点からm:n=20:80~75:25が特に好ましい。m、nの比率は共重合時の各原料の配合比により調整することができる。
【0026】
また、上述したように、式(6)~(8)で示される化合物と共重合可能なその他の化合物を共重合させた場合には、式(1)で示される構造単位と式(2)で示される構造を含む構造単位とは異なる、その他の構造単位を有する共重合体となる。ポリヒドロキシアミド化合物の分子中に含まれるその他の構造単位数をl(lは自然数であり、その他の構造単位が複数存在する場合にはそれらの単位数の合計)とした場合に、lと(m+n)の比率は、特に限定されないが、ポリヒドロキシアミド化合物を感光樹脂組成物に用いる場合には、l:(m+n)=0.1:99.9~30:70とすることができる。
【0027】
l、m、nの比率は共重合時の各原料の配合比により調整することができる。
【0028】
3.ポリヒドロキシアミド化合物の用途
本開示のポリヒドロキシアミド化合物は、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物など)などの樹脂組成物、樹脂組成物により形成された樹脂層を備えるドライフィルムに用いることができる。ポリヒドロキシアミド化合物は、硬化性樹脂組成物やドライフィルムとして用いることで、ガラス転移温度の低い硬化物を得ることができ、さらにi線透過性に優れた硬化性樹脂組成物(又は後述する樹脂組成物の乾燥塗膜)等とすることも可能である。このため、半導体素子や電子部品等の形成材料として、微細な配線パターンを形成することができる。半導体素子の形成材料としては、例えば、レジスト材料、バッファーコート膜、ウエハレベルパッケージの再配線層用絶縁膜(例えば、ダマシン法を用いた再配線層形成工程用の絶縁膜)を挙げることができる。また、電子部品の形成材料として、例えば、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等を挙げることができる。
【0029】
また、上述したように本開示のポリヒドロキシアミド化合物を用いた硬化性樹脂組成物は、従来のポリヒドロキシアミド化合物を用いた硬化性樹脂組成物に比べ、より低いガラス転移温度を有する硬化物を提供することができる。
【0030】
ポリヒドロキシアミド化合物を含む樹脂組成物としては、混合する成分は特に限定されない。例えば、ポリヒドロキシアミド化合物に架橋剤、その他の添加剤等を配合することで熱硬化性樹脂組成物とすることができ、加熱することによって硬化物を形成することができる。また、例えば、ポリヒドロキシアミド化合物に光酸発生剤、光塩基発生剤、光重合開始剤等の感光剤、さらに必要に応じて架橋剤その他の添加剤等を配合することで感光性樹脂組成物とすることができ、所定の波長の光を照射し、水酸化テトラメチルアンモニウム等の薬液にて現像することでフォトリソグラフィによるパターン形成ができる。
【0031】
3-1.熱硬化性樹脂組成物
ポリヒドロキシアミド化合物の配合量(固形分)は、熱硬化性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、50~90質量%とすることができる。
【0032】
架橋剤は、ポリヒドロキシアミド化合物に含まれる水酸基と反応可能な官能基を1分子中に2つ以上有するものであれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、エポキシ基等の環状エーテル基又はエピスルフィド基等の環状チオエーテル基を有する架橋剤、メチロール基等の炭素原子数1~12のアルキレン基にヒドロキシル基が結合したアルコール性水酸基を有する架橋剤、アルコキシメチル基等のエーテル結合を有する化合物、トリアジン環構造を有する架橋剤、尿素系架橋剤等を挙げることができる。なかでもエポキシ基を有する架橋剤、メチロール基を有する架橋剤、メトキシメチル基を有する架橋剤が好ましい。また、低熱膨張性(熱寸法安定性)が得られることから分子構造中に複素環を有し、さらに低誘電特性にも優れることから複素環はトリアジン環であることがより好ましい。また、靭性に優れることから水酸基と反応可能な官能基は、メチロール基又はメトキシメチル基であることがさらに好ましい。
架橋剤は、単独で又は複数を任意の比率の組み合わせで用いることができる。
【0033】
架橋剤の配合量は、ポリヒドロキシアミド化合物等の熱硬化性樹脂の全量(固形分基準)100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上50質量部以下、好ましくは0.05質量部以上45質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上40質量部以下である。
【0034】
その他の添加剤として、用途に応じて、上述した成分以外のその他の成分、例えば、慣用の添加剤を用いることができる。慣用の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、樹脂及びエラストマー、無機フィラー、硬化触媒、着色剤、分散剤、消泡剤・レベリング剤、揺変剤、カップリング剤、難燃剤、有機溶媒等を挙げることができる。
【0035】
3-2.感光性樹脂組成物
ポリヒドロキシアミド化合物の配合量(固形分)は、感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、50~90質量%とすることができる。
【0036】
感光性樹脂組成物は、ポリヒドロキシアミド化合物に光酸発生剤、光塩基発生剤、光重合開始剤等の感光剤、さらに必要に応じて架橋剤その他の添加剤を含む。例えば、光酸発生剤を用いた感光性樹脂組成物では、光酸発生剤として紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されず、具体的には、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、オキシムスルホネート、ナフタルイミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。これらは単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。ポジ型の感光性樹脂組成物として用いる場合には、光酸発生剤は溶解阻害剤であることが好ましく、ナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。ネガ型の感光性樹脂組成物として用いる場合には、光酸発生剤は前述した架橋剤と併せて用いることが好ましく、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることがより好ましい。
【0037】
ナフトキノンジアジド化合物としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-520、TKF-528、TKF-420、TKF-428)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550、BS570、BS599)等を使用することができる。ここで、ナフトキノンジアジドの付加は、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリド類を、ヒドロキシ化合物やアミノ化合物と反応させればよい。これらは単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0038】
オキシムスルホネート化合物としては、BASF社製のIrgacure PAG103、Irgacure PAG108、Irgacure PAG121、Irgacure PAG203等を挙げることができる。これらは単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0039】
光酸発生剤の配合量(固形分)は、感光性樹脂組成物における固形分の全質量を100質量%とした場合に、3~20質量%とすることができる。
【0040】
感光性樹脂組成物は、上述した熱硬化性樹脂組成物としての架橋剤及びその他添加剤を配合することで感光性熱硬化性樹脂組成物としてもよい。
【0041】
以下、本開示のドライフィルム、硬化物について、本開示のポリヒドロキシアミド化合物を含む感光性樹脂組成物を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0042】
3-3.ドライフィルム
本開示のドライフィルムは、基材と、この基材上に、感光性樹脂組成物により形成された樹脂層とを備える。また、樹脂層の保護のため、さらに樹脂層の表面に保護フィルムを積層してもよい。
【0043】
基材は、特に限定されないが、例えば、銅箔等の金属箔;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のフィルム;を挙げることができる。
【0044】
保護フィルムは、特に限定されないが、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等を用いることができる。保護フィルムは、保護フィルムと樹脂層の密着力が、基材と樹脂層の密着力よりも低くなるものを選択することが好ましい。保護フィルムと樹脂層の密着力を、基材と樹脂層の密着力よりも低くするため、保護フィルムの表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0045】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて、1~150μmとすることができる。樹脂層は、例えば、基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター又はスプレーコーター等を用い、樹脂層の厚さを調整し、乾燥させることで得ることができる。
【0046】
3-4.硬化物
本開示の硬化物は、樹脂組成物又はドライフィルムの樹脂層を硬化させたものである。なお、本開示において硬化物とは、ポリヒドロキシアミド化合物が環化してポリベンゾオキサゾールとなったもの、及び、後述のようにポリヒドロキシアミド化合物と架橋剤とが反応して架橋したもの、のいずれも含むものとする。すなわち、本開示のポリヒドロキシアミド化合物は、単体であっても環化により硬化する硬化性樹脂として用いることができる。硬化物としては、パターニングされた硬化物であってもよい。パターニングされた硬化物の製造方法の例として、以下の方法を挙げることができる。
【0047】
3-4-1.乾燥塗膜形成工程
乾燥塗膜形成工程は、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し塗膜を形成し、その後乾燥させる工程である。乾燥塗膜形成工程は、ドライフィルムの樹脂層を基板上に転写することで基板上に乾燥塗膜を形成することも可能である。
【0048】
感光性樹脂組成物の基板上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等を用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0049】
塗膜の乾燥方法は、特に限定されず、例えば、送風乾燥、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥を行う場合の条件は、例えば、加熱温度70~140℃、乾燥時間1~30分である。
【0050】
ドライフィルムの樹脂層を基材上へ転写する方法は、真空ラミネーター等を用いて、加圧及び加熱下で真空ラミネートを行うことが好ましい。加熱温度としては、例えば、60~100℃とすることができる。
【0051】
基板は、特に限定されず、例えば、回路形成されたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、半導体素子が形成されたウエハとすることができる。
【0052】
3-4-2.露光工程
露光工程は、乾燥塗膜形成工程において形成された乾燥塗膜に対し、所望するパターン形成が可能なフォトマスクを介して放射線を照射することにより、露光部の感光剤を感光させ、活性種を発生させる工程である。パターニングが不要の場合にはフォトマスクを介す必要はない。また、直接描画装置を用いて、レーザーでパターンを直接描画してもよい。
【0053】
放射線の波長としては、感光剤が活性化できる波長のものが用いられ、微細化されたパターニングを行うためには、最大波長が410nm以下のものが好ましい。照射エネルギーは、形成した乾燥塗膜の厚さ等により調整することができ、例えば、10~1000mJ/cmとすることができる。露光光源としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ、KRFレーザー等を用いることができる。
【0054】
3-4-3.PEB工程
PEB工程は、露光工程で露光された乾燥塗膜を加熱処理し、感光剤より発生した酸や塩基などを活性化させる工程である。本開示の感光性樹脂組成物をネガ型の感光性樹脂組成物として用いる場合には、乾燥塗膜の露光部(以降、露光部と略す場合がある)に耐現像性を付与する工程であり、露光部にて感光剤より発生した酸や塩基などを活性種として、ポリヒドロキシアミド化合物と架橋剤などとの反応が進行し、露光部が現像液に対して不溶化する。PEB工程における加熱温度は、90~150℃とすることができ、加熱時間は、0.5~10分とすることができる。加熱は、ホットプレートや加熱炉等の公知の方法で行うことができる。
【0055】
3-4-4.現像工程
現像工程は、PEB工程で加熱した乾燥塗膜を現像液により処理し、乾燥塗膜の未露光部(ポジ型の感光性樹脂組成物の場合には乾燥塗膜の露光部)を現像液に溶解、除去することによって、パターン塗膜を得る工程である。現像方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理をともなう浸せき法等を挙げることができる。
【0056】
現像液は、公知のものを用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。必要に応じてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を添加することができる。
【0057】
現像液による処理の後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン塗膜を得ることができる。リンス液は、特に限定されず、純水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0058】
3-4-5.現像後加熱工程
現像後加熱工程は、現像工程で形成されたパターン塗膜を加熱して、パターン塗膜の硬化を完了し、硬化パターン塗膜(硬化物)を得る工程である。加熱温度は、150~200℃、加熱時間は、1~120分とすることができる。加熱は、ホットプレートやイナートオーブン等の公知の方法で行うことができ、窒素雰囲気下にて加熱することが望ましい。
【実施例0059】
本開示技術を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本開示技術は実施例に限定されるものではない。
【0060】
<ポリヒドロキシアミド化合物の合成>
(合成例1:実施例1のポリヒドロキシアミド化合物の合成例)
攪拌機、温度計を備えた125mLのバイアル瓶中で、イソソルバイド(ISB)0.28g(1.95mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)30g中で、超音波処理を行い、完全に溶解させた。ここに4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)12.10g(41.01mmol)を加え、80℃で18時間撹拌した。その後、N-メチルピロリドン(NMP)35g中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)13.56g(37.03mmol)と、3-アミノフェノール(3-AP)1.55g(14.20mmol)を完全に溶解させた溶液に対して滴下し、25℃で18時間攪拌した。撹拌した溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル64gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂(オルガノ社製アンバーリストB-20)14gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濾過して陰イオン交換樹脂を取り除き、さらに濾液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥してフェノール性水酸基末端のポリヒドロキシアミド化合物を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物は、重量平均分子量(Mw)が9,100、数平均分子量(Mn)が3,300、分子量分散度(PDI)が2.8、フェノール性水酸基当量が261g/eqであった。
【0061】
(合成例2~6:実施例2~6のポリヒドロキシアミド化合物の合成例)
イソソルバイド(ISB)、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、3-アミノフェノール(3-AP)の使用量(モル比)を表1に記載の通りとしたことを除いて、合成例1と同様の方法により各実施例のフェノール性水酸基末端のポリヒドロキシアミド化合物を得た。
【0062】
(合成例7:実施例7のポリヒドロキシアミド化合物の合成例)
攪拌機、温度計を備えた125mLのバイアル瓶中で、イソソルバイド(ISB)1.43g(3.79mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)30g中で、超音波処理を行い、完全に溶解させた。ここに4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)12.08g(40.95mmol)を加え、80℃で18時間撹拌した。その後、N-メチルピロリドン(NMP)35g中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)10.73g(29.29mmol)を完全に溶解させた溶液に対して滴下し、25℃で18時間攪拌した。撹拌した溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル64gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂(オルガノ社製アンバーリストB-20)14gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濾過して陰イオン交換樹脂を取り除き、さらに濾液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリヒドロキシアミド化合物を得た。
【0063】
(合成例8、9:実施例8、9のポリヒドロキシアミド化合物の合成例)
イソソルバイド(ISB)、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)の使用量(モル比)を表1に記載の通りとしたことを除いて、合成例7と同様の方法により各実施例のカルボキシル基末端のポリヒドロキシアミド化合物を得た。
【0064】
(合成例10:比較例1のポリヒドロキシアミド化合物の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.93g(44.39mmol)及び3-アミノフェノール2.45g(22.42mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)79g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)16.41g(55.61mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。室温で18時間撹拌後、溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル79gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂(オルガノ社製アンバーリストB-20)17gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濾過して陰イオン交換樹脂を取り除き、さらに濾液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して水酸基末端のポリヒドロキシアミド化合物を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物は、重量平均分子量(Mw)が9,200、数平均分子量(Mn)が3,500、分子量分散度(PDI)が2.6、フェノール性水酸基当量が252g/eqであった。
【0065】
H-NMR測定)
得られた実施例1~9のポリヒドロキシアミド化合物のH-NMRの測定結果をそれぞれ図1~9に示した。その結果から実施例1~9のポリヒドロキシアミド化合物は、下記式(12)及び(13)で表される構造単位を有するイソソルバイド骨格を有するポリヒドロキシアミド化合物(各図に構造単位を記載)であることを確認した。また、各実施例のm:nを表1に示す。m:nは、図1~3のH-NMRスペクトルにおけるaのピークの積分値(nに相当)とbのピークの積分値(mに相当)の比として算出した。なお、H-NMRスペクトルに示したa及びbのピークは、図1~9の構造式に示したa部及びb部の構造に由来するものである。
【化16】
【化17】
【0066】
<ガラス転移温度(Tg)評価>
実施例1~9のポリヒドロキシアミド化合物及び比較例のポリヒドロキシアミドを乾燥後、粉末試料を得た。
得られた粉末試料約5mgを用いて、示唆走査熱量測定(DSC、TAインスツルメント社製、製品名Q100)を行った。具体的には、40℃から350℃まで昇温(昇温速度10℃/分)し、1時間保持してポリヒドロキシアミド化合物を硬化(環化)した後、40℃まで降温(降温速度10℃/分)した後のセカンド昇温(昇温速度10℃/分)における各試料のガラス転移温度を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0067】
<i線透過性評価>
実施例1~9のポリヒドロキシアミド化合物及び比較例のポリヒドロキシアミドを乾燥後膜厚が3μmとなるように、石英ガラス基板上にスピンコートした。その後、90℃で180秒間乾燥し、光透過率測定用試料を作製した。それぞれの光透過率測定用試料について、分光光度計(日本分光株式会社製、製品名紫外可視近赤外分光光度計V-570)を用いて、200~500nmの波長における吸収スペクトル分析を行った。結果を図10~12に示した。また、各実施例及び比較例における波長365nmの光(i線)に対する透過率の測定結果を表1に示した。
【0068】
【表1】


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12