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  • 特開-筋肉水分量改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017078
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】筋肉水分量改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/284 20060101AFI20240201BHJP
   A61K 36/481 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 36/59 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 36/725 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K36/284
A61K36/481
A61K36/484
A61K36/59
A61K36/725
A61K36/9068
A61P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119477
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松村 晴香
(72)【発明者】
【氏名】橋本 統星
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AB26
4C088AB59
4C088AB60
4C088AB81
4C088AC20
4C088MA07
4C088NA14
4C088ZA94
(57)【要約】
【課題】本発明は、筋肉水分量を改善できる薬剤を提供することを目的とする。
【解決手段】防已黄耆湯エキスは筋肉水分量を増大させることができるため、筋肉水分量改善剤として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防已黄耆湯エキスを含む、筋肉水分量改善剤。
【請求項2】
更年期以降の女性に対して適用される、請求項1に記載の筋肉水分量改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉水分量改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
体全体の水分は、その43.4%が筋肉に存在しており、筋肉組織には76%もの水分が含まれている(非特許文献1)。
【0003】
筋肉量の減少又は筋肉の水分量の減少により体内の水分量が変動すると、生体反応に様々な悪影響を及ぼす。そのような例として、熱中症(非特許文献2)、運動時の持久力パフォーマンス及びスプリントパフォーマンスの低下(非特許文献3)、脳梗塞・心筋梗塞・低血圧症状・免疫不良など(非特許文献4)が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】空気調和・衛生工学 1979 53 (7) p.617-622
【非特許文献2】熱中症環境保健マニュアル2008、環境省
【非特許文献3】競技者のための暑熱対策ガイドブック、平成29年、独立行政法人日本スポーツ振興センター、国立スポーツ科学センター
【非特許文献4】“人間の体は60~70%が水分と言われていますが、最も多く水分を含んでいるのは身体のどこ?”,[online],2017年10月31日,保険診療所 横浜ベイ・ライフサービス株式会社,[令和4年7月22日検索],インターネット<URL:https://www.hoken119.co.jp/info/qa/%E4%BA%BA%E9%96%93%E3%81%AE%E4%BD%93%E3%81%AF60%EF%BD%9E70%EF%BC%85%E3%81%8C%E6%B0%B4%E5%88%86%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8C%E3%80%81%E6%9C%80/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
体内の水分量を上げるためには、水分の貯蔵庫である筋肉の量を増やすことが早道といえる。しかしながら、筋肉の量を増やすことは容易ではなく、特に、女性や高齢者は筋肉量が低下する傾向にあるため、その難易度は一層高くなる。もし、筋肉中の水分量を増やすことができれば、筋肉量が少ない人であっても、筋肉量を増やすことに相当する体内水分量の改善が期待できる。
【0006】
そこで本発明は、筋肉水分量を改善できる薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、防已黄耆湯エキスに筋肉水分量を改善できる作用があることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 防已黄耆湯エキスを含む、筋肉水分量改善剤。
項2. 更年期以降の女性に対して適用される、項1に記載の筋肉水分量改善剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筋肉水分量を改善できる薬剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】防已黄耆湯エキスによる筋肉水分量改善効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、防已黄耆湯エキスを含み、筋肉水分量改善剤として用いられることを特徴とする。以下、本発明の筋肉水分量改善剤について詳述する。
【0012】
有効成分
防已黄耆湯としては、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、ボウイ、オウギ、ジュツ(ビャクジュツ及びソウジュツが挙げられ、好ましくはビャクジュツが挙げられる。)、ショウキョウ、タイソウ、カンゾウからなる混合生薬が挙げられる。また、防已黄耆湯には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0013】
本発明における防已黄耆湯エキスは、上記の混合生薬を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することでエキス液として得てもよいし、エキス液を乾燥処理することでエキス末として得てもよい。
【0014】
防已黄耆湯エキスの製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されないものの、一例として水又は含水エタノールが挙げられる。また、乾燥処理としても、特に限定されず、公知の方法、例えば、スプレードライ法や、エキス液の濃度を高めた軟エキスに対して適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0015】
本発明において用いられる防已黄耆湯エキスとしては、前述の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。例えば、防已黄耆湯のエキス末としては、防已黄耆湯乾燥エキスAおよび防已黄耆湯乾燥エキスAZ(いずれも日本粉末株式会社製)、並びに防已黄耆湯エキス末および防已黄耆湯乾燥エキス-F(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。
【0016】
本発明の筋肉水分量改善剤において、防已黄耆湯エキスの含有量としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、乾燥エキス量換算で、例えば1~100重量%が挙げられる。乾燥エキス量換算とは、乾燥エキス(エキス末)を使用する場合にはそれ自体の量でありエキス液や軟エキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0017】
他の含有成分
本発明の筋肉水分量改善剤は、防已黄耆湯エキス単独からなるものであってもよく、製剤形態に応じた添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、筋肉水分量改善剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0018】
本発明の筋肉水分量改善剤は、防已黄耆湯エキスの他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に限定されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0019】
製剤形態
本発明の筋肉水分量改善剤の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、含有成分の安定性や携帯性等の観点から、好ましくは固形状製剤が挙げられる。
【0020】
本発明の筋肉水分量改善剤を前記製剤形態に調製するには、防已黄耆湯エキス、並びに必要に応じて添加される添加剤、基剤、及び薬理成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0021】
用途
本発明の筋肉水分量改善剤は、筋肉水分量の改善の目的で用いられることを限度として、任意の用途に用いることができる。筋肉水分量の改善とは、低下した筋肉水分量を、正常量又は正常量を超える量に増大させることをいう。より具体的には、本発明の筋肉水分量改善剤は、筋肉水分量の改善作用を利用して、筋肉量の低下に伴う水分量の低下又は筋肉水分量の低下に基づく症状の、抑制又は改善の目的で用いることができる。さらに具体的には、本発明の筋肉水分量改善剤は、熱中症の予防又は改善、運動時の持久力パフォーマンス又はスプリントパフォーマンスの低下の予防又は改善、脳梗塞、心筋梗塞、低血圧症状、免疫不良等の健康障害の予防又は改善等が挙げられる。
【0022】
本発明の筋肉水分量改善剤は、筋肉水分量を増大させる作用があることから、水分貯蔵庫である筋肉量が少ない対象に適用されることが好ましい。このような対象としては、運動不足を自覚している人、女性、高齢者等が挙げられ、中でも好ましくは、更年期以降の女性が挙げられる。
【0023】
用量・用法
本発明の筋肉水分量改善剤は、経口投与によって投与される。本発明の筋肉水分量改善剤の投与量については、対象となる症状及び年齢等に応じて適宜設定される。例えば、1日当たりの摂取量として、防已黄耆湯エキスの乾燥エキス量換算量で、1300~6000mg、好ましくは2000~4800mg、より好ましくは3000~4000mgが挙げられる。
【0024】
本発明の筋肉水分量改善剤の服用タイミングについては特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、好ましくは食前又は食間が挙げられる。
【実施例0025】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
防已黄耆湯(BOT)エキス末の調製
原料生薬として、ショウキョウ1(重量部、以下同じ)、タイソウ3、ボウイ5、ビャクジュツ3、オウギ5、カンゾウ1.5の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、防已黄耆湯エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0027】
実験方法
雌性C57BL/6Jマウスを用い、6週齢時に、2つの卵巣摘出群(OVX)と1つの偽手術群(Sham)とを作製し、普通食を給餌して2週間の回復期間を経た後、さらに2週間、高脂肪食を給餌した。なお、2つのOVX群のうち一方(これをOVX-BOT群とする。)に給餌する高脂肪食には、2重量%の防已黄耆湯(BOT)エキス末を配合した。
【0028】
その後、ふくらはぎの筋肉を摘出し、その重量(湿重量)を測定した。さらに、摘出したふくらはぎの筋肉を凍結乾燥させ、恒量になるまで乾燥させた。乾燥後、再度重量(乾燥重量)を測定し、湿重量から乾燥重を差し引いて得られる水分量の、乾燥重量に対する比率(%)を、筋肉水分量として導出した。結果を図1に示す。
【0029】
結果
図1に示す通り、OVX-BOT群では、筋肉水分量が顕著に増大したことが認められた。つまり、防已黄耆湯エキスに、優れた筋肉水分量の改善効果があることが認められた。
図1