(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170794
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/10 20060101AFI20241204BHJP
B65H 7/08 20060101ALI20241204BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20241204BHJP
B65H 9/12 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B65H7/10
B65H7/08
B65H9/00 A
B65H9/00 J
B65H9/12
B65H9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087520
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 周太郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 勇
(72)【発明者】
【氏名】関田 大樹
【テーマコード(参考)】
3F048
3F102
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA20
3F048BA22
3F048BB09
3F048BB10
3F048CC03
3F048DA06
3F048DA07
3F048DB06
3F048DB07
3F048DB11
3F048DB15
3F048DC11
3F048EA01
3F102AA01
3F102AB01
3F102BA01
3F102BB06
3F102BB08
3F102BB10
3F102CA03
3F102CB01
3F102DA09
3F102EA03
3F102FA03
(57)【要約】
【課題】シート検知手段がシートの通過を検知できないことによる問題の発生を防止する。
【解決手段】シートPyを搬送する搬送手段11と、互いにシート幅方向の異なる位置に配置され、シートPyの通過の有無を検知する2つのシート検知手段51A,51Bとを備える搬送装置であって、2つのシート検知手段51A,51Bのいずれか一方による検知を、搬送されるシートPyの幅方向位置に応じて停止する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と、
互いにシート幅方向の異なる位置に配置され、前記シートの通過の有無を検知する2つのシート検知手段とを備える搬送装置であって、
前記2つのシート検知手段のいずれか一方による検知を、搬送される前記シートの幅方向位置に応じて停止することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記シートの幅方向位置を変更する幅方向位置変更手段を備え、
前記2つのシート検知手段のうち、前記幅方向位置変更手段によって変更された前記シートの幅方向位置の変更方向とは反対側の前記シート検知手段による検知を停止する請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記シートの位置ずれ量を検知する位置ずれ検知手段と、
前記位置ずれ検知手段によって検知された位置ずれ量に基づいて前記シートの少なくとも幅方向の位置ずれを補正する補正手段とを備え、
前記2つのシート検知手段のうち、前記位置ずれ検知手段によって検知された前記シートの位置ずれ方向とは反対側の前記シート検知手段による検知を停止する請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記2つのシート検知手段の両方によって検知を行うモードと、前記2つのシート検知手段のいずれか一方による検知を停止するモードとを選択する操作部を備える請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送する搬送装置の一例として、複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載され、用紙又は原稿などを搬送する搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2013-209181号公報)においては、シートの通過の有無を検知する2つのシート検知手段(第一用紙センサ26a、第二用紙センサ26b)を備える搬送装置の構成が開示されている。また、特許文献1の
図6においては、2つのシート検知手段がシート幅方向の異なる位置に配置される構成が挙げられている。
【0004】
2つのシート検知手段がシート幅方向の異なる位置に配置される構成においては、シートの搬送位置が幅方向へずれた場合に、シートが一方のシート検知手段を通過できず、一方のシート検知手段によってシートの通過を検知できない場合が生じ得る。特に、小サイズシートの場合は、大サイズシートに比べて幅方向サイズが小さく、シート検知手段がシートを検知可能な幅方向の検知余裕度が小さいため、搬送されるシートの幅方向位置が少しでもずれると、一方のシート検知手段による検知が行えなくなる可能性が高い。一方のシート検知手段による検知が行えなかった場合は、搬送不良と判断されて、搬送動作を停止するなどの制御が行われるため、画像形成装置のダウンタイムとなり、生産性が低下する問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、シート検知手段がシートの通過を検知できないことによる問題の発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、シートを搬送する搬送手段と、互いにシート幅方向の異なる位置に配置され、前記シートの通過の有無を検知する2つのシート検知手段とを備える搬送装置であって、前記2つのシート検知手段のいずれか一方による検知を、搬送される前記シートの幅方向位置に応じて停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート検知手段がシートの通過を検知できないことによる問題の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る搬送装置が備える搬送ベルトの平面図である。
【
図3】普通サイズの用紙が搬送される場合の用紙と用紙センサとの位置関係を示す図である。
【
図4】小サイズの用紙が搬送される場合の用紙と用紙センサとの位置関係を示す図である。
【
図5】用紙に斜行又は幅方向の位置ずれが生じている場合の用紙と用紙センサとの位置関係を示す図である。
【
図6】同じサイズの用紙が定着回転体上を続けて通過する状態を示す図である。
【
図7】用紙の通過に伴って定着回転体上に傷が発生した状態を示す図である。
【
図8】用紙の幅方向位置を変更して通紙する状態を示す図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る搬送装置において用紙が位置ずれした状態で搬送される場合の態様を示す図である。
【
図10】本発明の第一実施形態に係る搬送装置において用紙の幅方向位置が変更された場合の態様を示す図である。
【
図11】本発明の第一実施形態において用紙センサを制御する制御部のブロック図である。
【
図12】位置ずれ検知手段の検知情報に基づく用紙センサの制御フローを示す図である。
【
図13】幅方向位置変更手段の位置変更情報に基づく用紙センサの制御フローを示す図である。
【
図14】操作部によってモード選択する場合の用紙センサの制御フローを示す図である。
【
図15】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図16】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図17】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図18】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図19】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図20】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図21】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図22】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作を説明するための図である。
【
図23】本発明の第一実施形態に係る搬送動作及び補正動作のフロー図である。
【
図24】用紙の位置ずれ量を算出する方法を説明するための図である。
【
図25】本発明の第一実施形態に係る位置ずれ補正機構の各動作を制御する制御部のブロック図である。
【
図26】本発明の第二実施形態としてのインクジェット式画像形成装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、
図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0011】
<画像形成装置の全体構成>
図1に示される画像形成装置1は、画像形成部2と、転写部4と、シート供給部5と、搬送路6と、定着部7と、シート排出部8とを備えている。
【0012】
(画像形成部)
画像形成部2は、現像剤としてのトナーを用いて画像を形成する部分である。画像形成部2には、4つの作像ユニット9Y,9M,9C,9Kが着脱可能に設けられている。各作像ユニット9Y,9M,9C,9Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色のトナーを収容している以外は同じ構成となっている。
【0013】
各作像ユニット9Y,9M,9C,9Kは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体12のほか、感光体12の表面を帯電させる帯電部材、感光体12の表面にトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置、感光体12の表面を清掃するクリーニング部材などを備えている。
【0014】
また、画像形成部2には、各感光体12の表面を露光する露光装置が設けられている。露光装置は、画像データに基づいて、レーザ光を発するように構成されている。
【0015】
(転写部)
転写部4は、画像形成部2において形成された画像をシートに転写する部分である。転写部4には、中間転写ベルト16と、一次転写ローラ13と、二次転写ローラ18が設けられている。中間転写ベルト16は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ13は、中間転写ベルト16の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ13が中間転写ベルト16を介して各感光体12に接触することにより、中間転写ベルト16と各感光体12との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ18は、中間転写ベルト16の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0016】
(シート供給部)
シート供給部5は、搬送路6へシートを供給する部分である。シート供給部5には、用紙Pが収容される給紙カセット19、給紙カセット19から用紙Pを送り出す給紙ローラなどが設けられている。以下、「シート」を「用紙」として説明するが、「シート」は紙(用紙)に限定されない。「シート」には、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含まれる。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0017】
(搬送路)
搬送路6は、給紙カセット19から送り出された用紙Pを搬送するための経路である。搬送路6には、用紙Pを搬送する搬送装置10が設けられている。搬送装置10は、搬送ローラ対50、搬送ベルト11、位置ずれ補正機構30などを備えている。位置ずれ補正機構30は、給紙カセット19から送り出された用紙Pの位置ずれを補正し、用紙Pを転写部4(二次転写ニップ)へ搬送する機構である。また、本実施形態においては、搬送路6が、定着部7の用紙搬送方向下流側で分岐している。搬送路6が分岐する分岐部6aからシート排出部8へ至る一方の搬送路6dは、用紙Pを装置外へ排出するための排出用の搬送路である。これに対し、他方の搬送路6b,6cは、両面印刷を行う際に用紙Pを転写部4へ再度案内するための両面印刷用の搬送路である。両面引脱用の搬送路は、反転パス6bと反転搬送路6cにより構成される。
【0018】
(定着部7)
定着部7は、画像を用紙Pに定着させる部分である。定着部7には、加熱源によって加熱される定着回転体22、定着回転体22に加圧されて定着ニップを形成する加圧回転体23などが設けられている。定着回転体22及び加圧回転体23は、ローラ又は無端状のベルトなどにより構成される。
【0019】
(シート排出部)
シート排出部8は、用紙Pが排出される部分である。シート排出部8には、排出された用紙Pを受ける排紙トレイなどが設けられている。
【0020】
<画像形成動作>
次に、
図1を参照しつつ本発明の第一実施形態に係る画像形成装置1の画像形成動作について説明する。
【0021】
画像形成動作が開始されると、各作像ユニット9Y,9M,9C,9Kの感光体12及び転写部4の中間転写ベルト16が回転を開始する。また、シート供給部5において給紙動作が開始され、給紙カセット19から用紙Pが送り出される。
【0022】
各作像ユニット9Y,9M,9C,9Kにおいては、まず、帯電部材によって、感光体12の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置が、各感光体12の表面(帯電面)を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体12の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置がトナーを供給することにより、静電潜像がトナー画像として現像される。
【0023】
その後、各感光体12上のトナー画像は、感光体12の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ13の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト16上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト16上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成は、4つの作像ユニット9Y,9M,9C,9Kを全て用いてフルカラー画像を形成する場合に限らず、各作像ユニット9Y,9M,9C,9Kのうち、いずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つの作像ユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。また、中間転写ベルト16へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材によって感光体12上の残留トナーなどが除去される。
【0024】
中間転写ベルト16上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト16の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ18の位置)へ搬送され、用紙P上に転写される。この用紙Pは、給紙カセット19から送り出されたものである。用紙Pは、給紙カセット19から送り出されると、搬送ローラ対50によって搬送され、さらに、位置ずれ補正機構30によって位置ずれが補正されて二次転写ニップへ搬送される。
【0025】
トナー画像が転写された用紙Pは、搬送ベルト11によって定着部7へ搬送され、定着回転体22と加圧回転体23との間(定着ニップ)へ進入する。これにより、用紙P及びトナー画像が加熱及び加圧され、トナー画像が用紙Pに定着される。
【0026】
片面印刷である場合は、用紙Pが、排出用の搬送路6dを通ってシート排出部8へ排出される。これに対して、両面印刷を行う場合は、用紙Pが両面印刷用の搬送路6b,6cへ搬送される。その場合、用紙Pは、反転パス6b内でスイッチバック搬送され、さらに反転搬送路6cを通過することにより、表裏が反転した状態で転写部4(二次転写ニップ)へ搬送される。そして、二次転写ニップにおいて、用紙Pの裏面にトナー画像が転写される。このとき裏面に転写されるトナー画像は、表面用のトナー画像と同じ画像形成工程を経て形成されたものである。その後、用紙Pは、定着部7へ搬送され、トナー画像の定着処理が行われた後、排出用の搬送路6dを通ってシート排出部8へ排出される。以上のようにして一連の画像形成動作が終了する。
【0027】
<搬送装置における課題>
ここで、搬送装置における課題について説明する。
【0028】
図2は、本発明の第一実施形態に係る搬送装置10が備える搬送ベルト11の平面図である。
【0029】
図2に示されるように、搬送ベルト11は、上方から見て、用紙幅方向(シート幅方向)に3つ併設されている。各搬送ベルト11が回転することにより、用紙Pが
図2における右側から左側へ搬送される。なお、搬送ベルト11は、用紙幅方向に長い1つのベルトにより構成されていてもよい。ここでは、用紙Pを搬送する搬送手段の一例として、無端状の搬送ベルト11を挙げているが、搬送手段は、搬送ローラ対などの他の搬送手段であってもよい。また、以下の説明において、用紙Pが搬送される用紙搬送方向(シート搬送方向)、用紙搬送方向上流側(シート搬送方向上流側)、及び、用紙搬送方向下流側(シート搬送方向下流側)を、単に「搬送方向」、「上流側」、「下流側」と称する。また、搬送方向と直交する用紙幅方向(シート幅方向)を、単に「幅方向」と称する。
【0030】
互いに隣り合う搬送ベルト11同士の間には、用紙Pの通過の有無を検知するシート検知手段としての2つの用紙センサ51A,51Bが設けられている。各用紙センサ51A,51Bは、幅方向及び搬送方向の両方向において互いに異なる位置に配置されている。各用紙センサ51A,51Bは、例えば、非接触で用紙Pの通過を検知する光学センサなどにより構成される。
【0031】
図3に示されるように、A4サイズなどの普通サイズの用紙Pxが搬送される場合、用紙Pxが各用紙センサ51A,51Bの検知部の上を通過することにより、各用紙センサ51A,51Bによって用紙Pxの通過が検知される。また、
図4に示されるように、A4サイズよりも小さい幅サイズの用紙Pyが搬送された場合も、用紙Pyが各用紙センサ51A,51Bの検知部の上を通過することにより、各用紙センサ51A,51Bによって用紙Pyの通過が検知される。このように、2つの用紙センサ51A,51Bは、異なる幅サイズの用紙であっても、各種用紙の通過を検知できるように、各種用紙が通過する領域内に配置されている。
【0032】
しかしながら、小サイズの用紙Pyが搬送される場合は、各用紙センサ51A,51Bが用紙を検知可能な幅方向の検知余裕度Dが小さくなる傾向にある。なお、ここでいう「幅方向の検知余裕度」とは、各用紙センサ51A,51Bの検知部から用紙の近い方の幅方向端部までの距離を意味する。
【0033】
例えば、
図5に示されるように、小サイズの用紙Pyが、点線にて示される基準位置に対して斜行又は幅方向に位置ずれした状態で搬送されると、用紙Pyが図の上側の用紙センサ51Aを通過できない場合がある。特に、小サイズの用紙Pyの場合は、各用紙センサ51A,51Bの幅方向の検知余裕度Dが小さいことに加え、大サイズの用紙に比べて搬送方向長さが短いため、例えば、搬送方向長さが205mm以下の用紙の場合は、位置ずれ補正機構30による位置ずれ補正の時間が短く、十分な位置ずれ補正を行えない場合がある。従って、小サイズの用紙Pyが斜行又は幅方向に位置ずれした状態で搬送ベルト11へ搬送されると、用紙Pyが一方の用紙センサの検知範囲から外れ、用紙センサによる用紙通過の検知を行いない場合がある。
【0034】
また、用紙が用紙センサの検知範囲から外れ得る原因として、定着回転体の傷つき抑制対策がある。
図6に示されるように、同じサイズの用紙Pが定着回転体22上を続けて搬送されると、用紙Pの幅方向端部Paが同じ位置を通過するため、
図7に示されるように、用紙Pの幅方向端部Paが通過する位置が摩耗し、定着回転体22上に傷49が発生する場合がある。斯かる傷49の発生を抑制するため、
図8に示されるように、通紙中又は印刷ジョブごとに用紙Pの幅方向位置を変更し、用紙Pの幅方向端部Paの通過位置を変更する方法が提案されている。
【0035】
しかしながら、用紙Pの幅方向位置を変更すると、用紙Pが各用紙センサ51A,51Bのいずれか一方の検知範囲から外れる虞がある。特に、搬送方向とは直交する方向の幅が105mm未満の小サイズの用紙Pyの場合は、各用紙センサ51A,51Bの幅方向の検知余裕度Dが小さくなるため、用紙Pyが各用紙センサ51A,51Bのいずれか一方の検知範囲から外れる可能性が高くなる。
【0036】
以上のように、十分な位置ずれ補正が行えなかったり、定着回転体の傷つき抑制対策で用紙の幅方向位置を変化させたりすると、用紙が用紙センサの検知範囲から外れて搬送される虞がある。その結果、用紙センサによる用紙通過の検知がされないと、画像形成装置内で用紙の詰まりが生じていると判断され、用紙搬送動作を含む画像形成装置の動作が停止する場合がある。その場合、印刷を行うことができないダウンタイムが発生し、生産性が低下する問題が生じる。なお、このような用紙センサの検知漏れによる問題は、小サイズの用紙において生じやすい傾向にあるが、大サイズの用紙においても生じ得る。すなわち、用紙センサが大サイズ用紙の幅方向両端近傍に配置されている場合は、大サイズ用紙に対する用紙センサの幅方向の検知余裕度が小さくなるため、同じような問題が発生する。
【0037】
そのため、本発明においては、用紙センサが用紙の通過を検知できないことによる問題の発生を防止することを目的とする。以下、本発明の第一実施形態に係る搬送装置10を例に、用紙センサの検知漏れ防止対策について説明する。
【0038】
<用紙センサの検知洩れ防止対策>
図9は、本発明の第一実施形態に係る搬送装置10において用紙Pyが位置ずれした状態で搬送される場合の態様を示す図である。
【0039】
図9に示される例においては、用紙Pyが、点線にて示される基準位置に対して斜行方向及び幅方向へ位置ずれしており、その結果、用紙Pyが図の上側の用紙センサ51Aの検知範囲から外れて搬送される状態となっている。この場合、上側の用紙センサ51Aによって用紙Pyの通過を検知できない。そのため、本発明の第一実施形態においては、上側の用紙センサ51Aによる検知漏れを防止するため、用紙Pyの通過を検知できない上側の用紙センサ51Aによる検知をあらかじめ停止しておく。これにより、上側の用紙センサ51Aによる検知漏れを防止できるようになる。なお、この場合は、下側の用紙センサ51Bによって用紙Pyの通過が検知されることにより、正常な搬送であると判断されるため、用紙搬送動作などが停止されることなく、用紙の搬送が継続される。
【0040】
また、定着回転体の傷つき抑制のために用紙の幅方向位置を変更した場合においても、同じようにして、用紙センサの検知漏れを防止することが可能である。例えば、
図10に示されるように、用紙Pyが、定着回転体の傷つき抑制対策のため、用紙の幅方向位置が点線にて示される基準位置よりも図の上側へ変更された場合は、用紙Pyが図の下側の用紙センサ51Bを通過できなくなるが、この場合、用紙Pyが通過できない下側の用紙センサ51Bによる検知をあらかじめ停止しておくことにより、下側の用紙センサ51Bによる検知漏れを防止できるようになる。
【0041】
以上のように、本発明の第一実施形態によれば、搬送される用紙の幅方向位置に応じて、用紙の通過を検知できない用紙センサの検知をあらかじめ停止しておくことにより、用紙センサの検知漏れを防止できるようになる。これにより、用紙センサの検知漏れによるダウンタイムなどの問題を防止できるようになる。
【0042】
2つの用紙センサ51A,51Bのうち、いずれの用紙センサによる検知を停止させるかの判断は、例えば、
図11に示される位置ずれ検知手段52又は幅方向位置変更手段53からの情報に基づいて制御部60が行う。位置ずれ検知手段52は、位置ずれ補正機構30が備えるセンサなどであり、用紙の斜行及び幅方向の少なくとも一方の位置ずれ量を検知する。また、幅方向位置変更手段53は、定着回転体22の傷つきを抑制するために、用紙Pの幅方向位置を変更する手段である。幅方向位置変更手段53は、位置ずれ補正機構30が備える補正手段であってもよいし、補正手段とは別個に設けられる手段であってもよい。
【0043】
図12は、位置ずれ検知手段52の検知情報に基づく用紙センサの制御フローを示す図である。
【0044】
図12に示されるように、用紙の搬送が開始されると、位置ずれ検知手段52による用紙の位置ずれ量の検知が行われる。そして、用紙の位置ずれ量が検知された場合は、検知された位置ずれ量に基づいて位置ずれ補正機構30(補正手段)による用紙の位置ずれ補正が行われる。しかしながら、用紙の位置ずれ補正が十分でない場合は、用紙の位置ずれ方向とは幅方向の反対側に配置される用紙センサにおいて、用紙に対する幅方向の検知余裕度が小さくなるため、用紙が用紙センサの検知範囲から外れる虞がある。例えば、
図9に示される例においては、用紙Pyが基準位置に対して図の下側へ位置ずれしているので、用紙Pyが図の上側の用紙センサ51Aの検知範囲から外れる虞がある。
【0045】
そのため、位置ずれ検知手段52によって用紙の位置ずれ量が検知された場合は、検知された用紙の位置ずれ量(位置ずれ方向)に基づいて制御部60が用紙Pyの位置ずれ方向とは反対側の用紙センサによる検知を停止させる。これにより、用紙センサの検知漏れによるダウンタイムの発生を防止できるようになる。
【0046】
続いて、
図13のフローを参照しつつ、幅方向位置変更手段53からの情報に基づく用紙センサの制御について説明する。
【0047】
図13に示されるように、用紙搬送の開始後、幅方向位置変更手段53によって用紙の幅方向位置が変更された場合は、幅方向位置変更手段53から得られる位置変更情報に基づいて制御部60が用紙の幅方向位置の変更方向とは反対側の用紙センサによる検知を停止させる。例えば、
図10に示される例の場合、用紙Pyの幅方向位置が図の上側へ変更された結果、用紙Pyが下側の用紙センサ51Bの検知範囲から外れる虞があるので、下側の用紙センサ51Bによる検知を停止させる。これにより、用紙の幅方向位置が変更された場合の用紙センサの検知漏れによるダウンタイムの発生を防止できるようになる。
【0048】
また、
図11に示されるように、操作部59を設け、操作部59によって操作者が、両方の用紙センサによる検知モードと、片方の用紙センサによる検知モードとを選択できるようにしてもよい。この場合、
図14に示されるように、操作者は、用紙の搬送が開始される前に、操作部59を操作していずれのモードを行うか選択する。そして、両方の用紙センサによる検知モードが選択された場合は、用紙搬送の開始後、両方の用紙センサによる検知が行われる。一方、片方の用紙センサによる検知モードが選択された場合は、制御部60が位置ずれ検知手段52又は幅方向位置変更手段53からの情報に基づいて用紙の通過を検知できない虞がある一方の用紙センサによる検知を停止させる。
【0049】
このように、操作者が、両方の用紙センサによる検知モードと、片方の用紙センサによる検知モードのいずれかを選択可能にすることにより、搬送精度を確保したい場合と、センサの検知漏れによるダウンタイムの発生を防止したい場合とに応じて、柔軟な制御が可能となる。すなわち、ダウンタイム防止よりも搬送精度を優先したい場合は、両方の用紙センサによる検知モードを選択することにより、正確な用紙搬送を確保でき、搬送精度を向上させることができるようになる。一方、搬送精度よりもダウンタイム防止を優先したい場合は、片方の用紙センサによる検知モードを選択することにより、用紙センサの検知漏れによるダウンタイムの発生を防止できるようになる。
【0050】
<位置ずれ補正機構の構成>
以下、
図15~
図24に基づき、本発明の第一実施形態に係る位置ずれ補正機構30の構成及び動作について説明する。
【0051】
図15(a)及び(b)に示されるように、本発明の第一実施形態に係る位置ずれ補正機構30は、上流側上流側搬送ローラ31と、補正ローラ32と、下流側搬送ローラ33と、第一CIS34と、第二CIS35と、第三CIS36と、第一エッジセンサ37と、第二エッジセンサ38と、第三エッジセンサ39と、第四エッジセンサ40とを備えている。
【0052】
上流側搬送ローラ31、補正ローラ32、下流側搬送ローラ33は、用紙Pを搬送する搬送手段であり、一対のローラによって構成される。用紙Pは、上流側搬送ローラ31、補正ローラ32、下流側搬送ローラ33によって、
図15(a)及び(b)における左側から右側へ搬送される。
【0053】
上流側搬送ローラ31は、補正ローラ32よりも1つ上流側に配置される搬送ローラである。一方、下流側搬送ローラ33は、補正ローラ32よりも1つ下流側に配置される搬送ローラ33である。
【0054】
補正ローラ32は、搬送手段であるほか、シートの位置ずれを補正する補正手段としても機能する。具体的に、補正ローラ32は、支点32aを中心に用紙搬送面内で回転可能に構成されると共に、幅方向に移動可能に構成されている。補正ローラ32が用紙Pを保持した状態で、補正ローラ32が用紙搬送面内で回転したり幅方向へ移動したりすることにより、用紙Pの斜行及び幅方向の位置ずれが補正される。なお、本明細書中では、用紙Pの位置ずれを補正するための補正ローラ32の回転と、用紙Pを搬送するための補正ローラ32の回転とを区別するため、用紙Pの位置ずれを補正するための補正ローラ32の回転を「搬送面内での回転」と記載し、用紙Pを搬送するための補正ローラ32の回転を単に「回転」と記載する。
【0055】
第一CIS34、第二CIS35、第三CIS36は、用紙Pの位置ずれを検知する位置ずれ検知手段である。第一CIS34は、上流側搬送ローラ31よりも上流側に配置される第一位置ずれ検知手段である。第二CIS35は、上流側搬送ローラ31よりも下流側で補正ローラ32よりも上流側に配置される第二位置ずれ検知手段である。第三CIS36は、補正ローラ32よりも下流側で下流側搬送ローラ33よりも上流側に配置される第三位置ずれ検知手段である。各CIS34,35,36は、LEDなどの発光素子とフォトダイオードなどの受光素子とから成るフォトセンサが、用紙Pの幅方向に複数並設されたコンタクトイメージセンサ(Contact Image Sensor)である。なお、第一位置ずれ検知、第二位置ずれ検知、及び、第三位置ずれ検知手段は、CIS以外に、用紙の幅方向に沿って複数配置されるフォトセンサなどの他の検知手段により構成されてもよい。
【0056】
第一エッジセンサ37、第二エッジセンサ38、第三エッジセンサ39、第四エッジセンサ40は、用紙Pの先端位置あるいは後端位置を検知可能なセンサである。第一エッジセンサ37は、上流側搬送ローラ31よりも下流側で第二CIS35よりも上流側に配置される。第二エッジセンサ38は、第二CIS35よりも下流側で補正ローラ32よりも上流側に配置される。第三エッジセンサ39は、補正ローラ32よりも下流側で第三CIS36よりも上流側に配置される。第四エッジセンサ40は、下流側搬送ローラ33よりも下流側に配置される。各エッジセンサ37~40としては、例えば発光素子と受光素子を備える一対のフォトセンサなどが用いられる。
【0057】
<搬送動作及び補正動作>
続いて、本発明の第一実施形態に係る位置ずれ補正機構30の動作について説明する。
【0058】
まず、
図15(a)及び(b)に示されるように、用紙P1が上流側搬送ローラ31によって搬送され、用紙P1の先端が、第一CIS34を通過し、上流側搬送ローラ31に到達すると(
図23のステップS1)、第一エッジセンサ37によって用紙P1の先端到達が検知される。
【0059】
そして、第一エッジセンサ37によって用紙P1の先端到達が検知されてからt1秒経過すると(
図23のステップS2)、第一CIS34及び第二CIS35による用紙P1の位置ずれ量の検知が開始される(
図23のステップS3)。以下、第一CIS34及び第二CIS35による用紙の位置ずれ量の検知を「第一位置ずれ検知」と称する。
【0060】
第一位置ずれ検知の開始タイミングを規定する時間t1は、第一エッジセンサ37と第二CIS35との間の距離、及び、用紙P1の搬送速度に基づいて用紙P1の先端が第一エッジセンサ37を通過してから第二CIS35に到達するまでの時間よりも短い時間に設定される。従って、第一位置ずれ検知は、用紙P1の先端が第一エッジセンサ37に到達後、用紙P1の先端が第二CIS35に到達する前から開始される。これにより、第一位置ずれ検知が必要以上に長い時間継続されるのを回避できるため、第一CIS34及び第二CIS35の無駄なエネルギー消費及び寿命低下を抑制できるようになる。
【0061】
第一位置ずれ検知によって得られる位置ずれ量は、用紙P1の斜行の位置ずれ量及び幅方向の位置ずれ量である。そして、第一位置ずれ検知によって得られた位置ずれ量に基づいて、補正ローラ32が迎え動作を開始する(
図23のステップS4)。迎え動作は、
図16(a)に示されるように、補正ローラ32が、基準位置(図中の点線にて示される位置)から、支点32aを中心に用紙搬送面内で回転すると共に幅方向へ移動し、用紙P1に対して正対した状態となる動作である。すなわち、補正ローラ32は、検知された用紙P1の斜行の位置ずれ量及び幅方向の位置ずれ量に基づいて、それぞれの位置ずれ方向へ位置ずれ量分だけ移動する。なお、補正ローラ32が迎え動作を行う際、補正ローラ32のローラ対は互いに離間した状態となっている。
【0062】
ここで、
図24を用いて、第一位置ずれ検知による用紙P1の斜行の位置ずれ量及び幅方向の位置ずれ量の算出方法の一例を説明する。
【0063】
図24に示されるように、用紙P1が第一CIS34及び第二CIS35に到達すると、第一CIS34及び第二CIS35によって用紙P1の幅方向端部Paの位置が検知される。この場合、第一CIS34によって点Pa1の幅方向位置L1が検知され、第二CIS35によって点Pa2の幅方向位置L2が検知される。そして、用紙P1の幅方向の位置ずれ量が、幅方向位置L1と幅方向位置L2の平均により算出される。また、用紙P1の斜行の位置ずれ量は、幅方向位置L1と幅方向位置L2に加え、第一CIS34と第二CIS35との搬送方向の距離Mを用いて、下記式(1)により算出される。式(1)において、θは斜行の位置ずれ量(角度)である。
【0064】
〔数1〕
TANθ=(L1-L2)/M・・・(1)
【0065】
続いて、
図17(a)及び(b)に示されるように、用紙P1の先端が第二エッジセンサ38に到達すると(
図23のステップS5)、第二エッジセンサ38によって用紙P1の先端が検知される。そして、補正ローラ32のローラ対が離間状態から互いに圧接する圧接状態へ移行する。また、補正ローラ32の迎え動作は、第二エッジセンサ38によって用紙P1の先端が検知される前に終了する。
【0066】
そして、第二エッジセンサ38によって用紙P1の先端到達が検知されてからt2秒経過すると(
図23のステップS6)、補正ローラ32の回転駆動が開始される(
図23のステップS7)。
【0067】
補正ローラ32の回転駆動の開始タイミングを規定する時間t2は、第二エッジセンサ38と補正ローラ32との間の距離、及び、用紙P1の搬送速度に基づいて、用紙P1の先端が第二エッジセンサ38を通過してから補正ローラ32に到達するまでの時間よりも短い時間に設定される。すなわち、補正ローラ32の回転駆動は、用紙P1の先端が第二エッジセンサ38に到達後、用紙P1の先端が補正ローラ32に到達する前から開始される。このように、補正ローラ32の回転駆動が、用紙P1の先端が補正ローラ32に到達する前から開始されることにより、用紙P1の先端が補正ローラ32に到達した時点で補正ローラ32はすでに回転しているため、補正ローラ32による用紙P1の搬送を円滑に行える。
【0068】
その後、
図18(a)及び(b)に示されるように、用紙P1の先端が補正ローラ32に到達すると(
図23のステップS8)、回転駆動する補正ローラ32によって用紙P1が下流側へ搬送される。また、補正ローラ32によって用紙P1が搬送される状態になると、上流側搬送ローラ31のローラ対が互いに離間する(
図23のステップS9)。これにより、上流側搬送ローラ31による用紙P1の保持及び搬送が解除される。
【0069】
その後、
図19(a)及び(b)に示されるように、補正ローラ32による用紙P1の搬送を行いながら、補正ローラ32を、迎え動作とは反対方向へ移動させ、基準位置へ戻す戻し動作を行う(
図23のステップS10)。これにより、用紙P1の斜行の位置ずれ及び幅方向の位置ずれが補正される。以下、このときの補正を、「第一補正」と称する。
【0070】
また、戻し動作が行われる際、上流側搬送ローラ31のローラ対が離間した状態にあり、上流側搬送ローラ31による用紙P1の保持が解除されているため、上流側搬送ローラ31によって戻し動作が拘束されることがない。そして、戻し動作が終了すると、上流側搬送ローラ31は、次の用紙の搬送動作に備えるために、所定のタイミングで再び圧接状態へ移行する。戻し動作(第一補正)は、用紙P1の先端が第三CIS36に到達する前に終了する。
【0071】
その後、用紙P1の先端が第三エッジセンサ39に到達すると(
図23のステップS11)、第三エッジセンサ39によって用紙P1の先端が検知される。なお、第三エッジセンサ39による用紙P1の先端検知は、戻し動作の途中で行われてもよいし、戻し動作終了後に行われてもよい。
【0072】
そして、第三エッジセンサ39によって用紙P1の先端到達が検知されてからt3秒経過すると(
図23のステップS12)、第二CIS35及び第三CIS36による用紙P1の位置ずれ量の検知が開始される(
図23のステップS13)。以下、第二CIS35及び第三CIS36による用紙の位置ずれ量の検知を「第二位置ずれ検知」と称する。
【0073】
第二位置ずれ検知を開始する時間t3は、第三エッジセンサ39と第三CIS36との間の距離、及び、用紙P1の搬送速度に基づいて、用紙P1の先端が第三CIS36に到達する手前のタイミングに設定される。従って、第二位置ずれ検知は、用紙P1の先端が第三CIS36に到達する前のタイミングから開始される。これにより、第二位置ずれ検知が必要以上に長い時間継続されるのを回避できるため、第二CIS35及び第三CIS36の無駄なエネルギー消費及び寿命低下を抑制できるようになる。
【0074】
そして、
図20(a)及び(b)に示されるように、用紙P1の先端が第三CIS36に到達すると、第二位置ずれ検知によって検知された用紙P1の斜行の位置ずれ量及び幅方向の位置ずれ量に基づいて、補正ローラ32による再補正動作が開始される(
図23のステップS14)。すなわち、補正ローラ32が、位置ずれ量に基づいて用紙搬送面内で回転動作及び幅方向への移動の少なくとも一方を行うことにより、用紙P1の位置ずれが補正される。以下、このときの補正を、「第二補正」と称する。なお、第二位置ずれ検知による用紙P1の位置ずれ量の算出方法は、第二位置ずれ検知による用紙P1の位置ずれ量の算出方法と同じである。
【0075】
そして、第三エッジセンサ39によって用紙P1の先端到達が検知されてからt4秒間、第二位置ずれ検知と第二補正とが繰り返し行われる(
図23のステップS15、ステップS16)。すなわち、第二位置ずれ検知の検知結果が、その都度、補正ローラ32にフィードバックされ、第二補正が行われる。これにより、用紙P1の位置ずれが高精度に補正される。第二位置ずれ検知及び第二補正が継続される時間t4は、第三エッジセンサ39によって用紙P1の先端到達が検知されてから用紙P1の後端が第二CIS35を通過するまでの間の時間に設定される。
【0076】
その後、
図21(a)及び(b)に示されるように、用紙P1の先端が下流側搬送ローラ33に到達すると(
図23のステップS17)、下流側搬送ローラ33によって用紙P1が下流側へ搬送される。
【0077】
また、第三エッジセンサ39によって用紙P1の先端到達が検知されてからt5秒経過すると(
図23のステップS18)、補正ローラ32のローラ対が互いに離間すると共に、回転を停止する(
図23のステップS19)。
【0078】
補正ローラ32の離間開始タイミングと回転停止タイミングを規定する時間t5は、第三エッジセンサ39によって用紙P1の先端到達が検知されてから用紙P1の先端が下流側搬送ローラ33に到達するまでの時間よりも長い時間に設定される。すなわち、用紙P1の先端が下流側搬送ローラ33に到達し、下流側搬送ローラ33によって用紙P1を搬送可能な状態となった後で、補正ローラ32の離間動作及び回転停止が行われる。これにより、下流側搬送ローラ33による用紙P1の搬送が確実に行われる。
【0079】
ここで、用紙P1の後に、続けて用紙P2が搬送される場合、補正ローラ32によって後行用紙P2の搬送及び位置ずれ補正を行えるように、補正ローラ32を基準位置に配置しておく必要がある。すなわち、第二補正後が行われた後は、補正ローラ32が基準位置から移動しているため、後行用紙P2が補正ローラ32へ搬送されるまでに、補正ローラ32を基準位置へ復帰させる必要がある。
【0080】
しかしながら、用紙を高速で搬送する搬送装置においては、先行用紙が通過してから後行用紙が到達するまでの時間が短いため、補正ローラ32の復帰動作を早いタイミングで開始しなければ、後行用紙が搬送されてくるまでに補正ローラ32を基準位置へ戻せない虞がある。一方で、先行用紙の搬送を補正ローラ32が終える前に、基準位置への補正ローラ32の復帰動作を開始すると、補正ローラ32の移動に伴って先行用紙の位置がずれてしまうため、適切な位置ずれ補正が行えなくなる。従って、補正ローラ32の基準位置への復帰動作は、先行用紙の搬送を補正ローラ32が終えてから、後行用紙P2が補正ローラ32に搬送されてくるまでの間に行わなければならない制約がある。
【0081】
そこで、本発明の第一実施形態においては、適切な位置ずれ補正の確保しつつ、迅速な補正ローラ32の復帰動作の開始を行えるように、次のようなタイミングで補正ローラ32の復帰動作を開始するようにしている。
【0082】
具体的に、本発明の第一実施形態においては、補正ローラ32の復帰動作の開始を、第四エッジセンサ40による先行用紙P1の先端到達の検知タイミングに基づいて行うようにしている。第四エッジセンサ40は、下流側搬送ローラ33よりも下流側に配置されているため、
図21(a)及び(b)に示されるように、先行用紙P1の先端が第四エッジセンサ40に到達した時点では、先行用紙P1は既に下流側搬送ローラ33によって保持され、補正ローラ32のローラ対が互いに離間した状態になっている。従って、先行用紙P1の先端が第四エッジセンサ40に到達し(
図23のステップS20)、第四エッジセンサ40によって先行用紙P1の先端到達が検知されてから、補正ローラ32の復帰動作を開始することにより、先行用紙P1の位置ずれを生じることなく、補正ローラ32を基準位置へ移動させることができる。
【0083】
このように、補正ローラ32の復帰動作の開始を、第四エッジセンサ40による先行用紙P1の先端到達の検知タイミングに基づいて行うことにより、補正ローラ32の復帰動作の開始を迅速に行うことができる。例えば、下流側搬送ローラ33が先行用紙P1を搬送している間に、補正ローラ32の復帰動作を開始することができる。従って、本発明の第一実施形態によれば、印刷される用紙同士の間隔が短く、用紙を高速で搬送する画像形成装置においても、後行用紙が補正ローラ32に搬送されてくるまでの間に、先行用紙P1の位置ずれ補正を適切に行いながら、補正ローラ32を基準位置へ復帰させることができるようになる。
【0084】
続いて、後行用紙の搬送動作について説明する。
【0085】
画像形成装置のジョブに指定された印刷枚数がN枚であり、搬送された用紙P1がN枚目(最後)の用紙でなかった場合は(
図23のステップS22)、次の後行用紙P2を搬送するための搬送動作が行われる。一方、搬送された用紙P1がN枚目の用紙であった場合は、搬送動作を終了する。
【0086】
図22(a)及び(b)に示されるように、先行用紙P1の搬送後に、後行用紙P2が搬送されると、後行用紙P2に対する第一位置ずれ検知が開始される。このとき、後行用紙P2に対する第一位置ずれ検知は、先行用紙P1の先端が第四エッジセンサ40に到達し(
図23のステップS20)、さらに、先行用紙P1の後端が第一エッジセンサ37を通過したことが確認されたときに開始される(
図10のステップS23~S25)。
【0087】
第一エッジセンサ37による先行用紙P1の後端通過の検知は、次の手順で行われる。まず、第一エッジセンサ37の検知状態の監視を開始する(
図23のステップS23)。そして、第一エッジセンサ37が検知状態から非検知状態になった際に(
図23のステップS24)、第一エッジセンサ37の非検知状態がt6秒継続した場合に、第一エッジセンサ37によって先行用紙P1の後端が通過したと判断され、後行用紙P2に対する第一位置ずれ検知へ移行する。
【0088】
先行用紙P1の後端が通過したと判断される時間t6は、用紙上に設けられるパンチ穴が第一エッジセンサ37を通過する時間よりも長く、先行用紙P1と後行用紙P2の間の紙間(シート間距離)が第一エッジセンサ37を通過する時間よりも短い時間に設定される。具体的には、想定するパンチ穴の搬送方向の長さ(穴の直径)をd[mm]、用紙の搬送速度をv[mm/s]とすると、パンチ穴が第一エッジセンサ37を通過する時間は、d/v[s]と表すことができる。第一エッジセンサ37の非検知状態の継続時間t6がパンチ穴通過時間(d/v)を越えた場合は、パンチ穴ではなく紙間が通過したと判断することができる。従って、時間t6をd/v[s]よりも長い時間に設定することにより、パンチ穴の通過をもって先行用紙P1の後端が通過したとする誤検知を防止できるようになる。
【0089】
また、想定される紙間の長さをL[mm]とすると、時間t6の値はL/v[s]よりも小さい値に設定される必要がある。すなわち、時間t6が、紙間の通過時間L/v[s]以上に設定されると、先行用紙P1の後端が第一エッジセンサ37を通過して、さらに後行用紙P2の先端が第一エッジセンサ37に到達しても、第一エッジセンサ37の非検知状態の継続時間が時間t6以上とならないため、先行用紙P1の後端通過を検知できなくなる。従って、時間t6はL/v[s]よりも短い時間に設定される。
【0090】
これにより、搬送される用紙が、例えば黒色の画像などが印刷された用紙であっても、黒色画像の通過による第一エッジセンサ37の非検知状態はt6秒を越えて継続することがないため、黒色画像の通過をもって先行用紙P1の後端が通過したとする誤検知を防止できるようになる。
【0091】
第一エッジセンサ37によって先行用紙P1の後端通過が検知された場合は、後行用紙P2に対する搬送動作及び補正動作へ移行する(
図23のステップS1)。そして、以上の動作を繰り返すことにより、位置ずれ補正機構30が、N枚の用紙を搬送し位置ずれを補正することができる。
【0092】
図25は、本発明の第一実施形態に係る位置ずれ補正機構30の各動作を制御する制御部のブロック図である。
【0093】
図25に示されるように、制御部60は、用紙位置認識部61と、第一モータ制御部62と、第二モータ制御部63と、搬送モータ制御部64とを有する。
【0094】
用紙位置認識部61は、各CIS34,35,36から受け取った検知情報から、用紙Pの斜行量及び幅方向の位置ずれ量を算出する。そして、用紙位置認識部61は、この位置ずれ量の情報を第一モータ制御部62及び第二モータ制御部63に送る。
【0095】
第一モータ制御部62及び第二モータ制御部63は、用紙位置認識部61から送られた用紙Pの位置ずれ量の情報に基づいて、補正ローラ32の各移動動作を制御する部分である。
【0096】
第一モータ制御部62は、補正ローラ32の搬送面内での回転動作を制御する部分である。第一モータ制御部62からの信号により、第一モータドライバ621が第一モータ622を駆動させて補正ローラ32を搬送面内で回転させる。そして、第一モータエンコーダ623により、補正ローラ32の搬送面内での回転量を検出する。
【0097】
第二モータ制御部63は、補正ローラ32の幅方向の移動動作を制御する部分である。第二モータ制御部63からの信号により、第二モータドライバ631が第二モータ632を駆動させて補正ローラ32を幅方向に移動させる。そして、第二モータエンコーダ633により、補正ローラ32の幅方向の移動量を検出する。
【0098】
第一モータ622及び第二モータ632は、補正ローラ32の迎え動作(
図23のステップS4)、戻し動作(
図23のステップS10)、第二補正動作(
図23のステップS14)、及び、復帰動作(
図23のステップS21)の際に駆動されることになる。
【0099】
補正ローラ32の戻し動作(
図23のステップS10)を行う際は、用紙Pが補正ローラ32に保持され、上流側搬送ローラ31が離間していることが必要である(
図23のステップS9)。このため、搬送ローラ離間検知センサ70により、上流側搬送ローラ31の離間が検知され、このときの検知信号が第一モータ制御部62及び第二モータ制御部63に伝達される。これにより、第一モータ制御部62及び第二モータ制御部63が各モータドライバ621,633に信号を送って戻し動作を開始させることができるようになる。
【0100】
搬送モータ制御部64は、補正ローラ32の回転動作(用紙Pの搬送動作)を制御する部分である。用紙Pの先端が第二エッジセンサ38に到達すると(
図23のステップS5)、第二エッジセンサ38による用紙先端検知の情報が搬送モータ制御部64に送られる。そして、搬送モータ制御部64からの信号により、搬送モータドライバ641が第一搬送モータ642を駆動させ、補正ローラ32が用紙Pを搬送するための回転駆動が開始される(
図23のステップS7)。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0102】
本発明に係る画像形成装置は、
図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機などであってもよい。
【0103】
また、上述の実施形態では、電子写真方式の画像形成装置に搭載される搬送装置に対して本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明はインクジェット方式の画像形成装置に搭載される搬送装置にも適用可能である。以下、
図26を用いて、本発明の第二実施形態であるインクジェット方式の画像形成装置について説明する。
【0104】
<インクジェット方式の画像形成装置の構成>
図26に示されるインクジェット方式の画像形成装置100は、給紙部110と、搬送装置120と、画像形成部130と、乾燥部140と、排紙部150とを備えている。
【0105】
給紙部110から送り出された用紙Pは、搬送装置120によって搬送され、画像形成部130へ送り出される。
【0106】
画像形成部130においては、用紙Pが円筒形状のドラム131に保持され、ドラム131の回転によって図中矢印方向へ搬送される。そして、用紙Pが液体吐出部としての吐出ヘッド132に対向する位置に搬送されると、吐出ヘッド132から各色のインクが用紙Pに吐出され、用紙P上に画像が形成される。
【0107】
画像が形成された用紙Pは乾燥部140へ搬送され、乾燥部140においてインク中の水分を蒸発させる乾燥処理が行われる。その後、用紙Pは、排紙部150によって作業者が取り出し可能な位置に排出される。
【0108】
両面印刷が行われる場合には、乾燥処理の後、用紙Pが反転搬送路160へ送られて、用紙Pの表裏が反転した状態で、再び搬送装置120へ送り出される。
【0109】
このようなインクジェット方式の画像形成装置100に搭載される搬送装置120においても、本発明の構成を適用することにより、上述の本実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、用紙センサの検知漏れによるダウンタイムの発生を防止できるようになる。
【0110】
また、本発明は、小サイズ用紙が搬送される場合に限らず、大サイズ用紙が搬送される場合においても適用可能である。大サイズの用紙であっても、用紙の斜行又は幅方向の位置ずれが生じた結果、あるいは、定着回転体の傷つき防止対策のために用紙の幅方向位置を変更した結果、用紙がいずれか一方の用紙センサを通過できなくなる虞がある場合は、本発明を適用することにより、用紙センサの検知漏れよる問題の発生を防止できるようになる。
【0111】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の態様が含まれる。
【0112】
[第1の態様]
第1の態様は、シートを搬送する搬送手段と、互いにシート幅方向の異なる位置に配置され、前記シートの通過の有無を検知する2つのシート検知手段とを備える搬送装置であって、前記2つのシート検知手段のいずれか一方による検知を、搬送される前記シートの幅方向位置に応じて停止する搬送装置である。
【0113】
[第2の態様]
第2の態様は、第1の態様において、前記シートの幅方向位置を変更する幅方向位置変更手段を備え、前記2つのシート検知手段のうち、前記幅方向位置変更手段によって変更された前記シートの幅方向位置の変更方向とは反対側の前記シート検知手段による検知を停止する搬送装置である。
【0114】
[第3の態様]
第3の態様は、第1の態様において、前記シートの位置ずれ量を検知する位置ずれ検知手段と、前記位置ずれ検知手段によって検知された位置ずれ量に基づいて前記シートの少なくとも幅方向の位置ずれを補正する補正手段とを備え、前記2つのシート検知手段のうち、前記位置ずれ検知手段によって検知された前記シートの位置ずれ方向とは反対側の前記シート検知手段による検知を停止する搬送装置である。
【0115】
[第4の態様]
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記2つのシート検知手段の両方によって検知を行うモードと、前記2つのシート検知手段のいずれか一方による検知を停止するモードとを選択する操作部を備える搬送装置である。
【0116】
[第5の態様]
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様の搬送装置を備える画像形成装置である。
【符号の説明】
【0117】
1 画像形成装置
10 搬送装置
11 搬送ベルト(搬送手段)
31 上流側搬送ローラ(搬送手段)
32 補正ローラ(補正手段)
33 下流側搬送ローラ(搬送手段)
34 第一CIS(第一位置ずれ検知手段)
35 第二CIS(第二位置ずれ検知手段)
36 第三CIS(第三位置ずれ検知手段)
50 搬送ローラ対(搬送手段)
51A 用紙センサ(シート検知手段)
51B 用紙センサ(シート検知手段)
52 位置ずれ検知手段
53 幅方向位置変更手段
59 操作部
60 制御部
100 画像形成装置
120 搬送装置
D 検知余裕度
P 用紙(シート)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】