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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170891
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】高分子材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087645
(22)【出願日】2023-05-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産学共同(本格型)「有機エナジーハーベスティングデバイスの機能革新と実用化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新居 遼太
(72)【発明者】
【氏名】安田 琢麿
(72)【発明者】
【氏名】槌井 雄一
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032BA02
4J032BB01
4J032BC02
4J032BC12
4J032CG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低照度の光に対する優れた光電変換効率を有する高分子材料の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有する高分子材料である。

(ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、炭素数2以上6以下のアルキル基を示し、R及びRは、炭素数6以上12以下のアルキル基を示し、RとRとが互いに異なる又はRとRとが互いに異なり、nは50以上1,000以下の整数を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする高分子材料。
【化1】
(ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、炭素数2以上6以下のアルキル基を示し、R及びRは、炭素数6以上12以下のアルキル基を示し、RとRとが互いに異なる又はRとRとが互いに異なり、nは50以上1,000以下の整数を示す)
【請求項2】
前記一般式(1)のRがエチル基であり、Rがノルマルブチル基である、請求項1に記載の高分子材料。
【請求項3】
前記一般式(1)のRがノルマルヘキシル基であり、Rがノルマルオクチル基である、請求項1から2のいずれかに記載の高分子材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路における駆動電力が非常に少なくなり、来たるIoT(Internet of Things)社会に向けて、微弱な電力(μWオーダー)でもセンサ等の様々な電子部品を駆動することができるようになった。さらに、センサの活用に際し、その場で発電し消費できる自立電源として、環境発電素子への応用が期待されており、その中でも光電変換素子は光があればどこでも発電できる素子として注目を集めている。
前記環境発電素子においては、蛍光灯やLEDランプなどの室内光で効率よく発電する素子がより求められている。一方で、低照度の光で高い光電変換効率を示す太陽電池は少なく、この中でも有機薄膜太陽電池は照度依存性が少ないことが知られている。
【0003】
しかしながら、従来の有機薄膜太陽電池は、光源として主に太陽光を対象として開発が進められており、低照度の光に対して高い光電変換効率を有する材料の報告は極めて少ない。
【0004】
これまでにP型有機半導体材料として、多種の共役高分子系P型有機半導体材料の開発が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低照度の光に対する優れた光電変換効率を有する高分子材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の高分子材料は、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
【化1】
(ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、炭素数2以上6以下のアルキル基を示し、R及びRは、炭素数6以上12以下のアルキル基を示し、RとRとが互いに異なる又はRとRとが互いに異なり、nは50以上1,000以下の整数を示す)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低照度の光に対する優れた光電変換効率を有する高分子材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(高分子材料)
前記高分子材料としては、下記一般式(1)で表される構造を有する。
下記一般式(1)で表される構造の構成単位としては、高分子材料中に少なくとも1つ含まれていればよく、高分子鎖一本あたりに平均2個以上含まれることが好ましく、高分子鎖一本あたりに平均3個以上含まれることがより好ましい。
なお、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物における末端としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基、1価の複素環基などが挙げられる。
【化2】
(ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、炭素数2以上6以下のアルキル基を示し、R及びRは、炭素数6以上12以下のアルキル基を示し、RとRとが互いに異なる又はRとRとが互いに異なり、nは50以上1,000以下の整数を示す)
なお、本開示において、低照度とは、例えば、照明等で照らされた室内環境における照度が挙げられ、具体的には、20ルクス以上1,000ルクス以下の照度であり、太陽の直射光(およそ100,000ルクス)と比較し、非常に微弱である。
【0009】
前記一般式(1)における、R及びRとしては、炭素数2以上6以下のアルキル基である。
前記炭素数2以上6以下のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチル基、プロピル基、ノルマルプロピル基(n-プロピル基)、ブチル基、ノルマルブチル基(n-ブチル基)、ペンチル基、ノルマルペンチル基(n-ペンチル基)、ヘキシル基、ノルマルヘキシル基(n-ヘキシル基)などが挙げられる。これらの中でも、Rはエチル基が好ましく、Rはノルマルブチル基が好ましい。
【0010】
前記一般式(1)における、R及びRとしては、炭素数6以上12以下のアルキル基である。
前記炭素数6以上12以下のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキシル基、ノルマルヘキシル基(n-ヘキシル基)、ヘプチル基、ノルマルヘプチル基(n-ヘプチル基)、オクチニル基、ノルマルオクチル基(n-オクチニル基)、ノニル基、ノルマルノニル基(n-ノニル基)、デシル基、ノルマルデシル基(n-デシル基)などが挙げられる。これらの中でも、Rはノルマルヘキシル基が好ましく、Rはノルマルオクチル基が好ましい。
【0011】
前記一般式(1)では、RとRとが互いに異なる又はRとRとが互いに異なる。
【0012】
前記一般式(1)における、nとしては、50以上1,000以下の整数である。
【0013】
前記高分子材料の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上が好ましく、5,000以上5,000,000以下がより好ましく、100,000以上2,000,000以下が特に好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が5,000以上であると、形成される光電変換層に膜欠陥が生じるのを防ぐことができる。前記重量平均分子量(Mw)が5,000,000以下であると、後述する光電変換層形成用溶液中の有機溶媒への溶解性を高くすることができる。
【0014】
前記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって測定することができる分子量であり、ポリスチレンの標準試料を用いて算出したポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。
前記重量平均分子量(Mw)の具体的な測定方法としては、例えば、以下の測定条件及び測定手順で測定できる。
[測定条件]
・装置:GPC-8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:クロロホルム
・流速:1.0mL/分
[測定手順]
0.5質量%濃度の試料を1mL注入し、上記の測定条件で測定したポリマーの分子量分布から、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出する。前記分子量分布はMwをMnで除した値である。なお、前記多孔体をクロロホルムに0.2質量%濃度で溶解後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
【0015】
前記化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光電変換層に対して15質量%以上85質量%以下が好ましく、25質量%以上75質量%以下がより好ましい。前記含有量が15質量%以上であると、光を十分に吸収することができるため、発電力(光電変換効率)が高くなる。前記含有量が85質量%以下であると、溶媒への溶解性が良好となり、成膜が容易となる。
【0016】
前記化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合反応に適した官能基を有するモノマーを合成した後に、必要に応じて該モノマーを有機溶媒に溶解し、塩基、触媒、配位子等を用いた公知のアリールカップリング反応を用いて重合することにより製造することができる。
【0017】
前記アリールカップリング反応による重合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Suzukiカップリング反応による重合、Stilleカップリング反応による重合、C-H activation direct重合などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、Suzukiカップリング反応により重合する方法、及びStilleカップリング反応により重合する方法が好ましい。
【0018】
前記Suzukiカップリング反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の方法(Chem. Rev. 1995, 95, 7, 2457-2483参照)などを用いることができる。
前記Suzukiカップリング反応としては、任意の溶媒中において、触媒としてパラジウム触媒を用い、塩基の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0019】
前記パラジウム触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒が挙げられる。具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム及びビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムなどが挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点から、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
前記パラジウム触媒の添加量としては、触媒としての有効量であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、モノマー1モルに対して、通常、0.0001モル以上0.5モル以下が好ましく、0.0003モル以上0.1モル以下が好ましい。
【0020】
前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機塩基、有機塩基、無機塩などが挙げられる。
前記無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、リン酸カリウムなどが挙げられる。
前記有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
前記無機塩としては、例えば、フッ化セシウムなどが挙げられる。
【0021】
前記Suzukiカップリング反応としては、通常、溶媒中で行われる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなどが挙げられる。これらの中でも、前記高分子材料の溶解性の観点から、トルエン及びテトラヒドロフランが好ましい。
また、前記溶媒としては、塩基の添加として、塩基を含む水溶液を反応液に加え、水相と有機相の2相系で反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、無機塩の溶解性の観点から、通常、塩基を含む水溶液を反応液に加えて反応させる。なお、2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えてもよい。
【0022】
前記Suzukiカップリング反応を行う温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記溶媒にも依るが、40℃以上160℃以下が好ましく、前記高分子材料の高分子量化の観点から、60℃以上120℃以下がより好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
【0023】
前記Suzukiカップリング反応を行う反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、0.1時間以上200時間以下が好ましく、反応効率の観点から0.5時間以上30時間以下がより好ましい。
【0024】
前記Suzukiカップリング反応としては、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、パラジウム触媒が失活しない反応系で行うことが好ましく、例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。
【0025】
前記Stilleカップリング反応を用いる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、Angew.Chem.Int.Ed.2004,43, 4704-4734に記載の方法等の公知の方法などが挙げられる。
【0026】
前記アリールカップリング反応の反応温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応性の観点から、-100℃が好ましく、-20℃がより好ましく、0℃が特に好ましい。前記反応温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、モノマー及び高分子材料の安定性の観点から、200℃が好ましく、150℃がより好ましく、120℃が特に好ましい。
【0027】
前記アリールカップリング反応による重合において、反応終了後の反応溶液からの本発明の高分子材料を取り出す方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の方法などが挙げられる。
前記公知の方法としては、例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加え、析出した沈殿をろ過し、ろ物を乾燥する方法などが挙げられる。得られた高分子材料の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器等による連続抽出、カラムクロマトグラフィーなどにより精製することができる。
本発明の高分子材料を有機光電変換素子の製造に用いる場合、高分子材料の末端に重合活性基が残っていると、有機光電変換素子の耐久性等の特性が低下することがあるため、末端を保護する安定な基で保護することが好ましい。
【0028】
前記末端を保護する安定な基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基、1価の複素環基などが挙げられる。
前記アリールアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。ホール輸送性を高める観点からは、末端を保護する安定な基がアリールアミノ基などの電子供与性を付与する基であることが好ましい。
前記1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが挙げられる。
また、高分子材料の末端に残っている重合活性基を、安定な基に代えて、水素原子で置換してもよい。高分子材料が高分子材料である場合、高分子材料の主鎖の共役構造と末端を保護する安定な基の共役構造とが連続するような共役結合を有している基も末端を保護する安定な基として好ましく用いることができる。前記共役結合を有している基としては、例えば、アリール基、芳香族性を有する1価の複素環基が挙げられる。
【0029】
前記合成方法によって合成された前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を同定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、NMR解析、GPC解析、MS解析などによって同定することができる。
前記NMR解析に用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ECX-500(日本電子株式会社製)などが挙げられる。
前記GPC解析に用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、GPC-8020(東ソー株式会社製)などが挙げられる。
前記MS解析に用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Autoflex3(Bruker Daltonics製)などが挙げられる。
【0030】
前記高分子材料としては、HOMO準位が深く、空気安定性に優れると共に、材料起因である開放電圧の向上が見込まれる。加えて、このような剛直な分子骨格に対して、アルキル基に代表されるような溶解性基を導入することで、一般的な有機溶媒に対する溶解性を確保しつつ、結晶性、液晶性、及び配向性といった規則的な集合状態を有する有機半導体膜をより有利に形成できる。特に前記一般式(1)中において、窒素原子に置換されるアルキル基は分岐であることが望まれる。アルキル鎖が分岐であることにより、溶解性が大幅に増大する。これにより有機薄膜を厚膜化することができる。厚膜化によって多くの光を吸収することができ発電力の向上につながる。
【0031】
(光電変換素子)
前記光電変換素子としては、基板と、第一の電極と、電子輸送層と、光電変換層と、ホール輸送層と、第二の電極とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
本発明において「光電変換素子」とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子又は電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子を表し、具体的には、太陽電池、フォトダイオードなどが挙げられる。
【0032】
<基板>
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明プラスチック板、透明プラスチック膜等のプラスチック基板、ガラス、無機物透明結晶体などが挙げられる。
前記基板がプラスチック基板である場合は、酸素及び水分の侵入を妨げるためにガスバリア性の高いフィルムを用いることが好ましい。
【0033】
<第一の電極>
前記第一の電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光に対して透明な電極、可視光に対して不透明な電極などが挙げられる。
【0034】
前記可視光に対して透明な電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スズドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と称することがある)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称することがある)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称することがある)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(以下、「AZO」と称することがある)、ガリウムドープ酸化亜鉛(以下、「GZO」と称することがある)等の導電性金属酸化物などが挙げられる。
【0035】
前記第一の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものや、カーボンナノチューブ、グラフェン等を、透明性を有する程度に積層したものなどが挙げられる。
【0036】
前記第一の電極としては、基板抵抗を下げることができる点から、金属リード線等を用いることが好ましい。
前記金属リード線の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。
前記金属リード線の形成方法としては、例えば、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法などが挙げられる。
【0037】
前記第一の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.005μm以上10μm以下が好ましく、0.05μm以上1μm以下がより好ましい。
【0038】
前記第一の電極の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光電変換層の平均厚みと同様の方法で測定することができる。
【0039】
<電子輸送層>
前記電子輸送層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機材料、電子受容性共役高分子材料を含有することが好ましい。
【0040】
前記無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、フッ化リチウム、カルシウムなどが挙げられる。
【0041】
前記電子受容性共役高分子材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、フラーレン化合物、CNT、CN-PPVなどが挙げられる。
前記電子輸送層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、できるだけ全面を薄く覆うことが好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。
【0042】
前記電子輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以上100nm以下が好ましい。
【0043】
前記電子輸送層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光電変換層の平均厚みと同様の方法で測定することができる。
【0044】
前記電子輸送層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表面に塩基性カルボン酸を製膜することもできる。
前記塩基性カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)-安息香酸、4-(N,N-ジエチルアミノ)-安息香酸、4-(N,N-ジベンジルアミノ)-安息香酸などが挙げられる。
【0045】
-電子輸送層の形成方法-
前記電子輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送層形成用溶液を塗布対象物上に塗布した後に乾燥させることで形成することができる。
【0046】
前記電子輸送層形成用溶液としては、無機材料、電子受容性共役高分子材料、及び有機溶媒を含有することが好ましい。
【0047】
前記無機材料としては、前記電子輸送層に含まれるものと同様のものを用いることができる。
【0048】
前記電子受容性共役高分子材料としては、前記電子輸送層に含まれるものと同様のものを用いることができる。
【0049】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、メトキシエタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、o-クロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン(モノクロロベンゼン)、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、エタノールアミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンが好ましい。
【0050】
<光電変換層>
前記光電変換層としては、本発明の高分子材料と、N型半導体材料とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0051】
-N型半導体材料-
前記N型半導体材料としては、N型半導体材料とは、一般式(1)で表される高分子材料に対してN型半導体材料として機能すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体等のフラーレン系N型半導体材料、非フラーレン系N型半導体材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より優れた光電変換効率を得られる点から、非フラーレン系N型半導体材料が好ましい。
【0052】
前記フラーレン系N型半導体材料としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PC71BM(フェニルC71酪酸メチルエステル、フロンティアカーボン株式会社製)、PC61BM(フロンティアカーボン株式会社製)、フラーレンインデン2付加体(フロンティアカーボン株式会社製)などが挙げられる。
【0053】
前記非フラーレン系N型半導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、既に公知のものなどが挙げられる。
前記既に公知のものとしては、例えば、[J. Mater. Chem. A, 2022,10, 3255-3295、Adv. Sci.2022,9, 220187]に記載の非フラーレン系N型半導体などが挙げられる。
【0054】
前記の非フラーレン系N型半導体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、IT-4F(物質名:3,9-ビス(2-メチレン-((3-(1,1-ジシアノメチレン)-6,7-ジフルオロ)-インダノン))-5,5,11,11-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-ジチエノ[2,3-D:2’,3’-D’]-S-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、ossila社製、下記構造式(1)で表される化合物)、ITIC(物質名:3,9-ビス(2-メチレン-(3-(1,1-ジシアノメチレン)-インダノン))-5,5,11,11-テトラキス(4-ヘキシルフェニル)-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、ossila社製、下記構造式(2)で表される化合物)、Y6(物質名:2,2’-((2Z,2’Z)-((12,13-ビス(2-エチルヘキシル)-3,9-ジウンデシル-12,13-ジヒドロ-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-e]チエノ[2’’,3’’:4’,5’]チエノ[2’,3’:4,5]ピロロ[3,2-g]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[3,2-b]インドール-2,10-ジイル)ビス(メタニルリリデン))ビス(5,6-ジフルオロ-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2,1-ジイリデン))ジマロノニトリル、ossila社製、下記構造式(3)で表される化合物)、IO-4Cl(ossila社製、下記構造式(4)で表される化合物)などが好ましい。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0055】
前記N型半導体材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光電変換層に対して25質量%以上75質量%以下が好ましい。
【0056】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機化合物、1,8-ジヨードオクタン、1,8-オクタンジチオール、1-クロロナフタレン等の各種添加剤などが挙げられる。
【0057】
前記光電変換層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上1,500nm以下が好ましく、100nm以上1,000nm以下がより好ましい。前記平均厚みが50nm以上であると、光電変換層による光吸収が多くなりキャリア発生が十分となる。前記平均厚みが1,500nm以下であると、光吸収により発生したキャリアの輸送効率を維持することができる。
【0058】
前記光電変換層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Bruker社製触針式プロファイリングシステムを用いて測定することができる。
【0059】
-光電変換層の形成方法-
前記光電変換層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光電変換層形成用溶液を塗布対象物上に塗布した後に乾燥させることで形成することができる。
【0060】
前記光電変換層形成用溶液としては、前記一般式(1)で表される構造を有する高分子材料と、前記N型半導体材料とを含有し、有機溶媒を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0061】
前記高分子材料としては、前記光電変換層に含まれるものと同様のものを用いることができる。
【0062】
前記N型半導体材料としては、前記光電変換層に含まれるものと同様のものを用いることができる。
【0063】
前記高分子材料及び前記N型半導体材料の合計の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記光電変換層形成用溶液中において、10mg/mL~100mg/mLであることが好ましい。これにより、均質な厚みを有する光電変換層を容易に作製することができる。
【0064】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、トルエン、キシレン、o-クロロフェノール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン(モノクロロベンゼン)、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロロホルム、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンが好ましい。
【0065】
前記その他の成分としては、前記光電変換層に含まれるものと同様のものを用いることができる。
【0066】
前記塗布としては、特に制限はなく、平均厚みの制御や配向性の制御、共役高分子化合物の特性などの目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法などが挙げられる。これらの中でも、スピンコート塗布が好ましい。
【0067】
前記乾燥としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、減圧下又は不活性雰囲気下(窒素、アルゴン等の雰囲気下)におけるアニーリング処理などが挙げられる。前記アニーリング処理を行うことで、積層した層が界面で互いに浸透して接触する実行面積が増加するので短絡電流を増大させることができる。
なお、前記アニーリング処理としては、電極の形成後に行ってもよい。
【0068】
前記乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上300℃以下が好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましい。
【0069】
前記乾燥の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間以上30分間以下が好ましく、5分間以上10分間以下がより好ましい。
【0070】
前記光電変換層の形成方法としては、前記高分子材料と、前記N型半導体材料とを、順次、形成して平面的な接合界面を形成させてもよいが、接合界面の面積を大きくするために、これらを三次元的に混合させたバルクへテロ接合を形成させることが好ましい。
前記バルクヘテロ接合の形成としては、例えば、溶解性の高い材料の場合には有機溶媒に溶かてP型共役高分子化合物及びN型共役高分子化合物が分子状で混合された溶液を作製し、塗布後に乾燥させて溶剤を除去して形成する方法などが挙げられる。また、更に加熱処理をすることで、各々の半導体の凝集状態を最適化することもできる。
【0071】
<ホール輸送層>
前記ホール輸送層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性高分子、芳香族アミン誘導体、無機化合物を含有することが好ましい。
前記ホール輸送層を設けることで、正孔の収集効率を向上させることができる。
【0072】
前記導電性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸)などが挙げられる。
【0073】
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
【0074】
前記ホール輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上50nm以下が好ましい。
【0075】
前記ホール輸送層の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光電変換層の平均厚みと同様の方法で測定することができる。
【0076】
-ホール輸送層の形成方法-
前記ホール輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性高分子、芳香族アミン誘導体、無機化合物等を塗布対象物上に真空蒸着させることで形成することができる。
【0077】
<第二の電極>
前記第二の電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光に対して透明な電極、可視光に対して不透明な電極などが挙げられる。
【0078】
前記可視光に対して透明な電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、スズドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と称することがある)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称することがある)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称することがある)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(以下、「AZO」と称することがある)、ガリウムドープ酸化亜鉛(以下、「GZO」と称することがある)等の導電性金属酸化物などが挙げられる。
【0079】
前記第二の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものや、カーボンナノチューブ、グラフェン等を、透明性を有する程度に積層したものなどが挙げられる。
【0080】
前記第二の電極としては、基板抵抗を下げることができる点から、金属リード線等を用いることが好ましい。
前記金属リード線の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。
前記金属リード線の形成方法としては、例えば、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法などが挙げられる。
【0081】
前記第二の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.005μm以上10μm以下が好ましく、0.05μm以上1μm以下がより好ましい。
【0082】
前記第二の電極の平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光電変換層の平均厚みと同様の方法で測定することができる。
【0083】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガスバリア層、保護層、バッファ層などが挙げられる。
前記ガスバリア層の材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
【0084】
(電子機器)
前記電子機器としては、本発明の高分子材料を有する光電変換素子と、前記光電変換素子と電気的に接続された装置と、を有する。
【0085】
(電源モジュール)
前記電源モジュールとしては、本発明の高分子材料を有する光電変換素子と、前記光電変換素子と電気的に接続された電源ICと、を有する。
【0086】
<用途>
近年、特に環境発電素子としては、微弱な光でも効率よく発電する光電変換素子が必要とされている。微弱光の代表として、LEDライトや蛍光灯などが挙げられる。それらは主に室内で用いられ、特に室内光と呼ぶ。それらの光の照度は20Luxから1,000Lux程度であり、太陽の直射光(およそ100,000Lux)と比較し、非常に微弱な光である。 本発明の光電変換素子は、上記室内光のような微弱光の場合であっても高い変換効率を示し、かつ10,000Luxのような中照度環境においても高い光電変換効率を示し、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置に応用できる。このような電源装置を利用している機器類として、例えば、電子卓上計算機や腕時計が挙げられる。この他、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等に本発明の光電変換素子を有する電源装置を適用することができる。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として本発明の光電変換素子を有する電源装置を用いることもできる。さらには、イメージセンサーとして応用も可能である。
【実施例0087】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0088】
[高分子材料の合成例1:P1(前記例示化合物1)の合成]
2,6-ジブロモ-4,8-ビス(5-(2-エチルヘキシル)チオフェン-2-イル)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン (0.74g,1.0mmol、sunatech社製)と、(4,8-ビス(5-(2-ヘキシルデシル)チオフェン-2-イル)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル)ビス(トリメチルスタンナン) (1.13g,1.0mmol、sunatech社製)とをクロロベンゼン(100mL)中に添加した。
窒素(N)で15分間バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(以下、「Pd(dba)」と称することがある) (0.021g,0.020mmol)とトリ(o-トリル)ホスフィン (0.024g,0.080mmol)を加え、100℃で24時間かき混ぜて反応混合物を得た。室温まで冷却した後、反応混合物をメタノールに注ぎ沈殿物を得た。
得られた沈殿物を粗生成物として濾過し、メタノール、アセトン、ヘキサン、及びクロロホルムでソックスレー抽出を繰り返して精製し、最終的にクロロホルム可溶画分を減圧下で濃縮してメタノールに再沈殿させた。真空下で乾燥後、下記構造式(5)で表される化合物P1を暗赤色固体として得た(収量=1.28g、93%)。
【0089】
【化7】
得られた化合物P1についてのPGC解析結果を以下に示す。
GPC (THF): Mn = 526 kDa、Mw = 2130 kDa、PDI = 4.0. Anal. Calcd (%) for (C84112)n: C 73.20, H 8.19; found: C 73.11, H 8.24.
【0090】
(実施例1)
<電子輸送層形成用溶液の調製>
酢酸亜鉛(アルドリッチ社製)1gと、エタノールアミン(アルドリッチ社製)0.28gと、メトキシエタノール(和光株式会社製)10mlとを終夜室温で撹拌し、電子輸送層形成用溶液を調製した。
【0091】
<光電変換層形成用溶液の調製>
高分子材料としての前記P1(前記例示化合物1) 10mgと、N型半導体材料としてのIT-4F(ossila社製)10mgと、クロロベンゼン1mlとを攪拌して混合し、光電変換層形成用溶液を調製した。
【0092】
<光電変換素子の作製>
基板及び第一の電極としてのITO基板(ジオマテック株式会社製)上に、前記電子輸送層形成用溶液をスピンコートで塗布した後に、200℃で10分間乾燥させて、平均厚みが20nmの電子輸送層を形成した。
次に、前記電子輸送層上に前記光電変換層形成用溶液をスピンコートで塗布した後に、平均厚みが200nmの光電変換層を形成した。
次に、前記電子輸送層上に酸化モリブデン(株式会社高純度化学研究所製)を、真空蒸着によって蒸着させて、平均厚みが10nmのホール輸送層を形成した。
次に、前記ホール輸送層上に銀を真空蒸着によって蒸着させて平均厚みが100nmの第二の電極を形成して光電変換素子1(以下、「太陽電池素子1」と称することがある)を得た。
なお、前記電子輸送層、前記光電変換層、前記ホール輸送層、及び前記第二の電極の平均厚みとしては、下記方法によって測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0093】
<平均厚みの測定方法>
前記光電変換素子1における前記電子輸送層、前記光電変換層、前記ホール輸送層、及び前記第二の電極の平均厚みは、Bruker社製触針式プロファイリングシステムを用いて測定した。
【0094】
(比較例1)
実施例1の光電変換層形成用溶液の調製において、高分子材料としての前記化合物P1 10mgを、下記構造式(6)で表される比較化合物1 10mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換素子2を得た。なお、実施例1と同様にして、電子輸送層、光電変換層、ホール輸送層、及び第二の電極の平均厚みを測定した。測定結果を下記表1に示す。
【化8】
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1及び比較例1で得られた各光電変換素子について、下記評価方法に基づき「光電変換効率」を評価した。
【0097】
<光電変換効率>
実施例1及び比較例1で得られた各光電変換素子に対して、白色LED光源(LDA11N-G、東芝株式会社製)を用いて、「17μW/cm」の光を照射して、システムハウスサンライズ社製IV測定システムを用いて各光電変換効率を測定した。
なお、前記白色LED光源の出力の測定は、セコニック社製分光色彩照度計C-7000を用いた。評価結果を下記表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示すように、実施例1の光電変換素子は、比較例1の光電変換素子と比較して、低照度(17μW/cm)の光に対して優れた光電変換効率を有することが明らかである。
【0100】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする高分子材料である。
【化9】
(ただし、上記一般式(1)中、R及びRは、炭素数2以上6以下のアルキル基を示し、R及びRは、炭素数6以上12以下のアルキル基を示し、RとRとが互いに異なる又はRとRとが互いに異なり、nは50以上1,000以下の整数を示す)
<2> 前記一般式(1)のRがエチル基であり、Rがノルマルブチル基である、前記<1>に記載の高分子材料である。
<3> 前記一般式(1)のRがノルマルヘキシル基であり、Rがノルマルオクチル基である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の高分子材料である。
【0101】
前記<1>から<3>のいずれかに記載の高分子材料は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】韓国登録10-1687018号公報