(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170926
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】化学蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087697
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】島井 基行
(57)【要約】
【課題】蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性が低下するのを抑制可能であって、かつ伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制可能な化学蓄熱装置を提供することを課題とする。
【解決手段】化学蓄熱装置1は、収容部22を内部に区画する反応器2と、収容部22に配置される蓄熱体4と、収容部22に配置され、蓄熱体4と熱の授受を行う伝熱面500を有する伝熱部材5と、蓄熱体4と伝熱面500との間に配置され、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制する熱応力抑制部材94と、を備える。熱応力抑制部材94は、伝熱面500に配置され蓄熱体4よりも熱伝導率が高い潤滑剤940を有し、潤滑剤940の潤滑性を利用して伝熱部材5の熱変形を補助し、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を内部に区画する反応器と、
前記収容部に配置される蓄熱体と、
前記収容部に配置され、前記蓄熱体と熱の授受を行う伝熱面を有する伝熱部材と、
前記蓄熱体と前記伝熱面との間に配置され、前記伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制する熱応力抑制部材と、
を備え、
前記熱応力抑制部材は、前記伝熱面に配置され前記蓄熱体よりも熱伝導率が高い潤滑剤を有し、前記潤滑剤の潤滑性を利用して前記伝熱部材の熱変形を補助し、前記伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制する化学蓄熱装置。
【請求項2】
前記熱応力抑制部材は、前記潤滑剤と前記蓄熱体との間に配置され、前記蓄熱体よりも熱伝導率が高いフィルム部材を有する請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
前記収容部の容積は、化学反応による膨張後の前記蓄熱体の体積よりも、小さい請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学反応熱を利用して可逆的に蓄熱、放熱を行うことができる化学蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、器胴と、複数の邪魔板と、複数の伝熱管と、を備える熱交換器が開示されている。器胴は、水平方向に延在している。器胴の側周壁には、流入口と、流出口と、が開設されている。伝熱管は、器胴の内部に収容されている。伝熱管は、水平方向に延在している。複数の邪魔板は、器胴の内部に収容されている。複数の邪魔板は、所定間隔ずつ離間して、器胴の内面から垂直方向に立設されている。邪魔板は、伝熱管の側周壁部を支持している。第一の液体は、流入口から流出口に向かって、複数の邪魔板を迂回しながら、器胴の内部を流動する。第二の液体は、伝熱管の内部を流動する。伝熱管の側周壁部を介して、第一の液体と第二の液体との間で熱交換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮に、同文献の熱交換器を化学蓄熱装置に転用する場合を想定する。この場合、蓄熱体は、器胴の内部に配置されることになる。すなわち、蓄熱体は、器胴の内部において、伝熱管や邪魔板の隙間に充填されることになる。このため、化学反応により蓄熱体が膨張すると、蓄熱体は伝熱管に圧接する。したがって、蓄熱体と伝熱管との間の伝熱性を向上させることができる。ところが、この場合、伝熱管の熱変形が阻害されてしまう。このため、伝熱管に熱応力が発生してしまう。ここで、熱応力の発生を抑制するためには、蓄熱体が伝熱管に圧接するのを抑制すればよい。ところが、この場合、蓄熱体と伝熱管との間の伝熱性が低下してしまう。このように、蓄熱体と伝熱管との間の伝熱性の低下の抑制と、伝熱管への熱応力の発生の抑制と、はトレードオフの関係にある。
【0005】
そこで、本開示は、蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性が低下するのを抑制可能であって、かつ伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制可能な化学蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本開示の化学蓄熱装置は、収容部を内部に区画する反応器と、前記収容部に配置される蓄熱体と、前記収容部に配置され、前記蓄熱体と熱の授受を行う伝熱面を有する伝熱部材と、前記蓄熱体と前記伝熱面との間に配置され、前記伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制する熱応力抑制部材と、を備え、前記熱応力抑制部材は、前記伝熱面に配置され前記蓄熱体よりも熱伝導率が高い潤滑剤を有し、前記潤滑剤の潤滑性を利用して前記伝熱部材の熱変形を補助し、前記伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制することを特徴とする。ここで、伝熱部材の「熱変形」には、伝熱部材の変形、移動(変位)が含まれる。
【0007】
本開示の化学蓄熱装置によると、蓄熱体と伝熱面との間に、熱応力抑制部材が配置されている。熱応力抑制部材の潤滑剤は、伝熱面に配置されている。このため、当該潤滑剤の潤滑性を利用して伝熱部材の熱変形を補助することができる。言い換えると、潤滑剤の潤滑性を利用して、伝熱部材の熱変形が蓄熱体により阻害されるのを、抑制することができる。したがって、伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、潤滑剤は、蓄熱体よりも、熱伝導率が高い。このため、蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性が低下するのを抑制することができる。このように、本開示の化学蓄熱装置によると、蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性の低下を抑制すると共に、伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記熱応力抑制部材は、前記潤滑剤と前記蓄熱体との間に配置され、前記蓄熱体よりも熱伝導率が高いフィルム部材を有する構成とする方がよい。本構成によると、フィルム部材が、潤滑剤と蓄熱体との間に配置されている。このため、潤滑剤と蓄熱体とが直接接触するのを抑制することができる。また、潤滑剤が蓄熱体に混入するのを抑制することができる。また、フィルム部材は、蓄熱体よりも、熱伝導率が高い。このため、蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性が低下するのを抑制することができる。
【0009】
(2-1)上記(2)の構成において、前記潤滑剤は流動性を有する構成とする方がよい。ここで、「流動性を有する」潤滑剤には、例えば、粉体状、液体状、ペースト状の潤滑剤が含まれる。なお、粉体状の潤滑剤には、収容部に配置された時点から粉体状の潤滑剤、収容部に配置された時点では塊状であったものの、その後の摩耗等により粉化した潤滑剤が含まれる。本構成によると、潤滑剤自身が流動(変形)することにより、潤滑性を向上させることができる。
【0010】
(3)上記いずれかの構成において、前記収容部の容積は、化学反応による膨張後の前記蓄熱体の体積よりも、小さい構成とする方がよい。本構成によると、収容部にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。また、本構成によると、蓄熱体膨張時において、蓄熱体を、熱応力抑制部材付きの伝熱部材に、押し付けることができる。このため、蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性を向上させることができる。本構成のように、伝熱部材に対する蓄熱体の圧接力が高い場合であっても、蓄熱体と伝熱面との間の熱応力抑制部材により、伝熱部材の熱変形を補助することができる。このため、伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の化学蓄熱装置によると、蓄熱体と伝熱部材との間の伝熱性が低下するのを抑制することができる。並びに、伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第一実施形態の化学蓄熱装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、同化学蓄熱装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図である。
【
図4】
図4は、同化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図9】
図9は、同化学蓄熱装置の伝熱部材熱変形時の前後方向部分断面図である。
【
図10】
図10は、熱応力抑制部材を備えていない化学蓄熱装置の前後方向部分断面図である。
【
図11】
図11は、第二実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図である。
【
図12】
図12は、第三実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の化学蓄熱装置の実施の形態について説明する。以降の図において、前後方向は、内側容器、外側容器の軸方向(筒軸の延在方向)に対応している。上下方向および左右方向のうち少なくとも一方は、内側容器、外側容器の軸直方向(軸方向に対して直交する方向。横断面方向。径方向)に対応している。
【0014】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態の化学蓄熱装置の斜視図を示す。
図2に、同化学蓄熱装置の分解斜視図を示す。
図3に、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図を示す。
図4に、同化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。
図5に、
図4の枠V内の拡大図を示す。
図6に、
図4のVI-VI方向(軸直方向)断面図を示す。なお、
図4は、
図6のIV-IV方向断面に対応する。
【0015】
図1においては、外側容器3の内部の内側容器2、伝熱部材5(曲管部51)、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を点線で示す。
図2においては、内側容器2の貫通孔201を省略して示す。
図3においては、内側容器2、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を透過して、内側容器2の内部(収容部22)の部材(熱応力抑制部材94付きの伝熱部材5、直接支持部材7)を示す。また、熱応力抑制部材94を点線ハッチングで示す。また、貫通孔201、蓄熱体4を省略して示す。
図5においては、内側容器2の前後方向中間部を省略して示す。
図4~
図6においては、熱応力抑制部材94の径方向(直管部50の管軸A3を中心とする円の径方向)厚みを強調して示す。すなわち、実際は、熱応力抑制部材94は、直管部50の側周壁部よりも、径方向厚みが小さい。ただし、熱応力抑制部材94と伝熱部材5との厚みの大小関係は特に限定しない。
【0016】
[化学蓄熱装置の構成]
まず、本実施形態の化学蓄熱装置1の構成について説明する。
図1~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、内側容器2と、外側容器3と、蓄熱体4と、複数の伝熱部材5と、複数の直接支持部材7と、反応媒体給排管80と、伝熱部材取付板81と、熱媒体給排筒82と、隔壁83と、熱媒体供給管84と、熱媒体排出管85と、端板86と、複数の間接支持部材87と、二つの脚部88と、複数の熱応力抑制部材94と、を備えている。内側容器2は、本開示の「反応器」の概念に含まれる。
【0017】
(内側容器2)
図2、
図4、
図6に示すように、内側容器2は、金属製であって、前後方向(水平方向)に延在し、前側に開口する有底円筒状を呈している。内側容器2の筒軸A1は、前後方向に延在している。内側容器2は、壁部(側周壁部20、端壁部21)と、収容部22と、を備えている。側周壁部20は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部21は、側周壁部20の後端開口を封止している。端壁部21には、複数の挿通孔210が開設されている。
図1、
図4~
図6に示すように、側周壁部20には、複数の貫通孔(反応媒体流路)201が開設されている。貫通孔201は、内側容器2の外部(後述する外側流路32)と収容部22とを連通している。貫通孔201の大きさ(孔径)は、水蒸気が通過可能であって、蓄熱体4の蓄熱材粒子が通過しにくい大きさに設定されている。収容部22は、壁部の内部に配置されている。収容部22は、壁部の内面により区画されている。
【0018】
(外側容器3、脚部88)
図1、
図2、
図4、
図6に示すように、外側容器3は、金属製であって、前後方向に延在し、前側に開口する有底円筒状を呈している。外側容器3は、内側容器2を外側から覆っている。外側容器3の筒軸A2は、前後方向に延在している。筒軸A1と筒軸A2とは一致している。外側容器3は、側周壁部30と、端壁部31と、を備えている。側周壁部30は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部31は、側周壁部30の後端開口を封止している。端壁部31には、取付孔310が開設されている。外側容器3は、外側流路32を区画している。具体的には、外側流路32は、外側容器3の内面と、内側容器2の外面と、の間に区画されている。二つの脚部88は、外側容器3つまり化学蓄熱装置1を下側から支持している。
【0019】
(蓄熱体4)
図4~
図6に示すように、蓄熱体4は、収容部22に充填されている。蓄熱体4は、化学蓄熱材(脱水後は酸化カルシウム、水和後は水酸化カルシウム)製の蓄熱材粒子と、粘土鉱物と、を含んでいる。蓄熱体4は、反応媒体である水蒸気(H
2O)との化学反応(水和反応、脱水反応)により膨張、収縮可能である。
【0020】
収容部22(詳しくは、収容部22のうち、部材(複数の伝熱部材(熱応力抑制部材94付きの伝熱部材)5、複数の直接支持部材7)が配置されていない部分)の容積は、水和反応による膨張後の蓄熱体4の体積よりも、小さい。このため、膨張後(水和反応後)において、蓄熱体4は、内側容器2の内面(収容部22を区画する面)、後述する複数の熱応力抑制部材94の外面、複数の直接支持部材7の外面に圧接している。
【0021】
(伝熱部材5)
図3~
図6に示すように、伝熱部材5は、金属製であって、U字の円管状を呈している。すなわち、伝熱部材5は、二つの直管部50と、曲管部51と、を備えている。直管部50は、前後方向に延在している。二つの直管部50は、上下方向に対向して配置されている。
図5に示すように、伝熱部材の直管部50の前端部は、後述する伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている。他方、直管部50の後端部は、端壁部21の挿通孔210を貫通し、端壁部21の後側に突出している。直管部50の外周面のうち、収容部22に収容されている区間には、伝熱面500が設定されている。
【0022】
図3、
図4に示すように、曲管部51は、後側に膨らむC字状に延在している。曲管部51は、二つの直管部50の後端部同士を連結している。曲管部51は、外側流路32に配置されている。伝熱部材5は、内部に熱媒体流路52を区画している。熱媒体は、熱媒体流路52を流動可能である。熱媒体は、後述する熱応力抑制部材94、伝熱部材5の直管部50の壁部を介して、蓄熱体4と熱の授受を行う。
図6に示すように、収容部22において、複数の伝熱部材5の直管部50は、上下左右方向に並んでいる。
【0023】
(直接支持部材7)
図3、
図4に示すように、直接支持部材7は、収容部22に配置されている。複数の直接支持部材7は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。複数の直接支持部材7は、収容部22を、前後方向に並ぶ複数の部屋220に仕切っている。直接支持部材7の支持孔70には、伝熱部材5の直管部(熱応力抑制部材94付きの直管部)50が挿通されている。支持孔70つまり直接支持部材7は、伝熱部材5を、熱応力抑制部材94を介して、支持している。
【0024】
(熱応力抑制部材94)
図7に、
図5の枠VII内の拡大図を示す。
図8に、
図6の枠VIII内の拡大図を示す。
図5~
図8に示すように、熱応力抑制部材94は、直管部50の伝熱面500に対応する区間に配置されている。熱応力抑制部材94は、直管部50の熱変形(前後方向の伸縮)を補助している。熱応力抑制部材94は、直管部50つまり伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制している。
【0025】
熱応力抑制部材94は、直管部50に沿って前後方向に延在する、筒状を呈している。
図7、
図8に示すように、熱応力抑制部材94は、潤滑剤940と、フィルム部材941と、を備えている。潤滑剤940は、黒鉛(カーボン)製であって、粉体状を呈している。潤滑剤940は、伝熱面500の全面(周方向全長および前後方向全長)に配置されている。潤滑剤940は、流動性を有している。潤滑剤940は、自己潤滑性を有している。潤滑剤940は、蓄熱体4よりも熱伝導率が高い。
【0026】
フィルム部材941は、ステンレス(金属)箔製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。フィルム部材941は、蓄熱体4よりも熱伝導率が高い。フィルム部材941は、潤滑剤940と、蓄熱体4と、の間に配置されている。フィルム部材941は、潤滑剤940を、径方向(直管部50の管軸A3を中心とする円の径方向)外側から、覆っている。
【0027】
図5に示すように、フィルム部材941の前端部(潤滑剤940を封止する封止部)は、伝熱部材取付板81の取付孔810に収容されている。直管部50は、フィルム部材941の前端部を介して、取付孔810に固定されている。
図5、
図7に示すように、フィルム部材941の後端部(潤滑剤940を封止する封止部)は、端壁部21の挿通孔210に収容されている。フィルム部材941の後端部は、直管部50の外周面に固定されていない。このため、フィルム部材941つまり熱応力抑制部材94に対して、直管部50つまり伝熱部材5は、前端部(取付孔810に収容、固定されている部分)を基点に、前後方向に伸縮可能である。
【0028】
(反応媒体給排管80、伝熱部材取付板81、熱媒体給排筒82、隔壁83、熱媒体供給管84、熱媒体排出管85、端板86)
図1、
図2、
図4に示すように、反応媒体給排管80は、外側容器3の取付孔310に取り付けられている。伝熱部材取付板81は、内側容器2および外側容器3の前側開口を封止している。伝熱部材取付板81には、複数の取付孔810が開設されている。前述のとおり、取付孔810には、伝熱部材5の直管部50の前端部が、フィルム部材941の前端部を介して、取り付けられている。取付孔810つまり伝熱部材取付板81は、伝熱部材5を固定し、かつ支持している。熱媒体給排筒82は、伝熱部材取付板81の前側に配置されている。熱媒体給排筒82の側周壁部の上下両端部には、二つの取付孔820が開設されている。隔壁83は、熱媒体給排筒82の内部空間を、下側の供給室830と、上側の排出室831と、に仕切っている。供給室830は下側の取付孔820に、排出室831は上側の取付孔820に、各々連通している。熱媒体供給管84は熱媒体給排筒82の下側の取付孔820に、熱媒体排出管85は熱媒体給排筒82の上側の取付孔820に、各々取り付けられている。端板86は、熱媒体給排筒82の前端開口を封止している。
【0029】
(間接支持部材87)
図1~
図4に示すように、間接支持部材87は、内側容器2の側周壁部20の外周面と、外側容器3の側周壁部30の内周面と、の間に配置されている。複数の間接支持部材87は、前後方向に、所定間隔ずつ離間して配置されている。間接支持部材87の外周面には、径方向内側に凹む複数の開口部870が配置されている。開口部870を介して、外側流路32の各部は、前後方向に互いに連通している。間接支持部材87は、内側容器2を支持している。
【0030】
(反応媒体ルートR1、熱媒体ルートR2)
図4~
図6に示すように、化学蓄熱装置1の外部と、収容部22の蓄熱体4と、の間には、外部から蓄熱体4に向かって、反応媒体給排管80、外側流路32、貫通孔201を経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1が設定されている。
【0031】
図4~
図6に示すように、熱媒体供給管84と熱媒体排出管85との間には、熱媒体供給管84から熱媒体排出管85に向かって、供給室830、熱媒体流路52、排出室831を経由する、熱媒体用の熱媒体ルートR2が設定されている。
【0032】
[化学蓄熱装置の動き]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の動きについて説明する。前述したように、蓄熱体4は、化学蓄熱材(脱水後は酸化カルシウム、水和後は水酸化カルシウム)製の蓄熱材粒子と、粘土鉱物と、を含んでいる。ここで、複数の蓄熱材粒子を含む造粒体を「蓄熱材顆粒」とする。また、収容部22に収容された蓄熱体4が未だ一度も水和反応していない状態を「初期状態」とする。
【0033】
(放熱時、水和反応時)
初期状態における蓄熱体4の蓄熱材顆粒中の蓄熱材粒子は、酸化カルシウム製である。放熱時においては、
図4~
図6に示す反応媒体ルートR1を介して、蓄熱体4の全体に水蒸気を供給する。水蒸気の供給により、蓄熱体4の化学蓄熱材(酸化カルシウム)は、以下の水和反応により、放熱し、水酸化カルシウムとなる。なお、Q1は放熱量である。
CaO+H
2O→Ca(OH)
2+Q1
水和反応により、蓄熱体4は膨張し、内側容器2の内面(収容部22を区画する面)、直管部50に環装された熱応力抑制部材94の外面、直接支持部材7の外面に圧接する。水和反応により発生した熱Q1は、蓄熱体4、直接支持部材7、熱応力抑制部材94および直管部50の壁部を介して、熱媒体流路52の熱媒体に移動する。熱Q1により加熱された熱媒体は、熱媒体ルートR2を介して、外部に流出する。
【0034】
(蓄熱時、脱水反応時)
蓄熱時においては、
図4~
図6に示す熱媒体ルートR2に高温の熱媒体を流動させる。熱媒体の熱は、直管部50の壁部および熱応力抑制部材94、直接支持部材7を介して、蓄熱体4に移動する。当該熱により加熱された蓄熱体4の化学蓄熱材(水酸化カルシウム)は、以下の脱水反応により、蓄熱し、酸化カルシウムとなる。なお、Q2は蓄熱量である。
Ca(OH)
2+Q2→CaO+H
2O
脱水反応により発生した水蒸気(H
2O)は、反応媒体ルートR1(
図4、
図5に示す矢印方向と反対方向)を介して、化学蓄熱装置1の外部に排出される。
【0035】
[作用効果]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の作用効果について説明する。
図9に、本実施形態の化学蓄熱装置の伝熱部材熱変形時の前後方向部分断面図を示す。
図10に、熱応力抑制部材を備えていない化学蓄熱装置の前後方向部分断面図を示す。なお、
図9、
図10に示すのは、
図5、
図7の枠VIIに対応する部分である。
【0036】
上述の放熱時、蓄熱時の熱により、伝熱部材5は、
図3に示す伝熱部材取付板81を基点に、後方に伸張(熱変形)しやすい。しかしながら、
図4~
図6に示すように、収容部22には、蓄熱体4が充填されている。このため、
図10に示すように、仮に、化学蓄熱装置1が熱応力抑制部材94を備えていない場合、直管部50の伝熱面500に、蓄熱体4が食い付く(固着する)ことになる。このため、伝熱面500と蓄熱体4との間の摺動抵抗が大きくなり、直管部50の熱変形が規制されてしまう。したがって、直管部50に熱応力が発生しやすい。
【0037】
これに対して、
図9に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、蓄熱体4と伝熱面500との間に、熱応力抑制部材94が配置されている。熱応力抑制部材94の潤滑剤940は、伝熱面500に配置されている。このため、潤滑剤940の潤滑性(黒鉛の自己潤滑性、粉体を構成する粒子の流動性)を利用して、伝熱面500と蓄熱体4との間の摺動抵抗を小さくすることができる。したがって、直管部50の熱変形を補助することができる。言い換えると、直管部50の熱変形が蓄熱体4により阻害されるのを、抑制することができる。よって、直管部50に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0038】
また、潤滑剤940は、蓄熱体4よりも、熱伝導率(例えば、温度300Kにおける熱伝導率)が高い。このため、蓄熱体4と直管部50との間の伝熱性(詳しくは、蓄熱体4と、熱媒体流路52を流動する熱媒体と、の間の伝熱性)が低下するのを抑制することができる。また、潤滑剤940の配置スペースに蓄熱体4が配置されている場合と比較して(
図10参照)、蓄熱体4と直管部50との間の伝熱性を向上させることができる。このように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、蓄熱体4と伝熱部材5との間の伝熱性の低下を抑制すると共に、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0039】
図7、
図8に示すように、フィルム部材941は、潤滑剤940と蓄熱体4との間に配置されている。このため、潤滑剤940と蓄熱体4とが直接接触するのを抑制することができる。また、潤滑剤940が蓄熱体4に混入するのを抑制することができる。また、フィルム部材941は、蓄熱体4よりも、熱伝導率が高い。このため、蓄熱体4と伝熱部材5との間の伝熱性が低下するのを抑制することができる。また、フィルム部材941の配置スペースに蓄熱体4が配置されている場合と比較して(
図10参照)、蓄熱体4と直管部50との間の伝熱性を向上させることができる。
【0040】
また、潤滑剤940は、粉体状を呈しており、流動性を有している。このため、潤滑剤940を構成する多数の粒子が流動することにより、潤滑剤940は、自在に変形することができる。したがって、潤滑性を向上させることができる。
【0041】
図4、
図6に示す収容部22の容積は、水和反応による膨張後の蓄熱体4の体積よりも、小さい。このため、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。また、蓄熱体4の膨張時において、蓄熱体4を、熱応力抑制部材94付きの直管部50に、押し付けることができる。このため、蓄熱体4と伝熱部材5との間の伝熱性を向上させることができる。本実施形態の化学蓄熱装置1のように、伝熱部材5に対する蓄熱体4の圧接力が高い場合であっても、蓄熱体4と伝熱面500との間の熱応力抑制部材94により、伝熱部材5の熱変形を補助することができる。このため、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0042】
図4に示すように、直接支持部材7は、伝熱部材(熱応力抑制部材94付きの伝熱部材)5を直接支持している。このため、伝熱部材5が変形しにくい。また、間接支持部材87は、内側容器2を支持している。このため、内側容器2が変形しにくい。また、間接支持部材87と直接支持部材7とは、側周壁部20を介して、径方向に並んでいる。このため、伝熱部材5の位置決め精度が高い。
【0043】
図4~
図6に示すように、複数の貫通孔201は、側周壁部20の全体に亘って分布している。このため、水蒸気を蓄熱体4の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。
【0044】
図1、
図2、
図4~
図6に示すように、化学蓄熱装置1は外側容器3を備えている。このため、内側容器2の外面を利用して、外側流路32を区画することができる。すなわち、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)を隔てて、内側に収容部22を、外側に外側流路32を区画することができる。このため、省スペース性に優れている。
【0045】
図3~
図6に示すように、収容部22には、複数の伝熱部材5が配置されている。このため、伝熱部材5の表面積を広くすることができる。したがって、熱媒体と蓄熱体4との間の伝熱性を向上させることができる。
【0046】
図3に示すように、内側容器2の内部(収容部22)には、複数の伝熱部材5、複数の直接支持部材7が、入り組んで配置されている。このため、収容部22の形状は複雑である。この点、初期状態における蓄熱体4は、蓄熱材顆粒の集合体(粉状体)である。このため、初期状態から初回の放熱時(水和反応時)において蓄熱体4が膨張する際、蓄熱材顆粒は、適度に解砕しながら(例えば、蓄熱材顆粒は、塊状体(複数の蓄熱材粒子の結合体)や蓄熱材粒子などに、崩壊しながら)、収容部22の形状に沿って、収容部22の隅々にまで行き渡ることができる。したがって、収容部22の形状が複雑であるにもかかわらず、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0047】
また、蓄熱体4が適度に解砕しながら膨張するため、蓄熱体4が成形体(蓄熱材粒子や蓄熱材顆粒のプレス成形体を焼成したもの。本開示の「蓄熱体」の概念には、当該成形体も含まれる。)である場合と比較して、膨張圧を小さくすることができる。したがって、内側容器2や収容部22に配置されている各部材(伝熱部材5、直接支持部材7)に過度な耐圧構造(例えば、壁部の壁厚増加、補強、材料変更など)を付与する必要がない。
【0048】
<第二実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、蓄熱体が成形体であり、熱応力抑制部材の潤滑剤が成形体であり、熱応力抑制部材がフィルム部材を備えていない点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0049】
図11に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図を示す。なお、
図7と対応する部位については、同じ符号で示す。熱応力抑制部材94は、潤滑剤940を備えている。潤滑剤940は、固体状(黒鉛の成形体)であって、円筒状を呈している。潤滑剤940は、伝熱面500に環装されている。潤滑剤940の外周面は、成形体である蓄熱体4に当接している。潤滑剤940の後端部は、端壁部21に当接している。潤滑剤940の前端部は、伝熱部材取付板81(
図5参照)に当接している。
【0050】
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。潤滑剤940の内周面、外周面は、各々、自己潤滑性を有している。潤滑剤940の外周面は、蓄熱体4の内周面に当接している。このため、蓄熱体4と潤滑剤940との間の摺動抵抗を小さくすることができる。潤滑剤940の内周面は、伝熱面500に当接している。このため、伝熱面500と蓄熱体4との間の摺動抵抗を小さくすることができる。このように、本実施形態の化学蓄熱装置の熱応力抑制部材94によると、潤滑剤940の径方向両側において、各々、摺動抵抗を小さくすることができる。
【0051】
熱応力抑制部材94は、フィルム部材941(
図7参照)を備えていない。このため、熱応力抑制部材94の構造を簡単化することができる。また、潤滑剤940は、黒鉛の成形体製である。このため、加工性に優れている。したがって、潤滑剤940の内周面を、伝熱面500の全面に亘って、密着させることができる。並びに、潤滑剤940の外周面を、蓄熱体4の内周面の全面に亘って、密着させることができる。よって、蓄熱体4と直管部50との間の伝熱性が低下するのを抑制することができる。
【0052】
<第三実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第二実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、熱応力抑制部材が端壁部の後側(収容部の外側)に突出している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0053】
図12に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図を示す。なお、
図11と対応する部位については、同じ符号で示す。潤滑剤940は、挿通孔210を貫通し、収容部22から外側流路32に進入している。潤滑剤940の外周面は、挿通孔210の内周面に当接している。
【0054】
本実施形態の化学蓄熱装置と、第二実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。潤滑剤940の外周面は、挿通孔210の内周面に当接している。このため、挿通孔210の内周面つまり端壁部21と、潤滑剤940と、の間の摺動抵抗を小さくすることができる。本実施形態のように、熱応力抑制部材94が収容部22から外部に突出していてもよい。
【0055】
<その他>
以上、本開示の化学蓄熱装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0056】
[構造]
上述の実施形態の化学蓄熱装置1のうち、任意の実施形態の化学蓄熱装置1の部材は、他の実施形態の化学蓄熱装置1に、組み込むことができる。例えば、
図11、
図12に示す熱応力抑制部材94を、
図7に示す直管部50に配置してもよい。
【0057】
(内側容器2、外側容器3)
内側容器2の形状は特に限定しない。直筒状(I字筒状)、曲筒状(C字筒状、S字筒状など)、直筒部と曲筒部とを適宜組み合わせた形状(J字筒状、U字筒状など)であってもよい。円(真円形、楕円形など)筒状、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)筒状であってもよい。内側容器2に関する上述の事項は、外側容器3についても同様である。外側容器3の形状と内側容器2の形状とは、同一であっても異なっていてもよい。外側容器3に対する内側容器2の配置数は特に限定しない。化学蓄熱装置1が外側容器3を有しなくてもよい。
【0058】
(伝熱部材5、流路部材、直接支持部材7、間接支持部材87)
伝熱部材5の形状は特に限定しない。伝熱部材5が管状である場合、直管状、曲管状、直管部と曲管部とを適宜組み合わせた形状であってもよい。円形管状、多角形管状であってもよい。伝熱部材5は、内部に熱媒体流路52を区画し、外面が蓄熱体4に当接する中空板状であってもよい。蓄熱体4の内部における伝熱部材5の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。また、蓄熱体4の内部に対する伝熱部材5のパス数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。また、蓄熱体4の内部における伝熱部材5の位置は特に限定しない。伝熱部材5は、熱媒体流路52を有していなくてもよい。例えば、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)のうち少なくとも一部が伝熱部材5であってもよい。伝熱部材5に関する上述の事項は、後述の流路部材についても同様である。
【0059】
貫通孔201の代わりに、あるいは貫通孔201と共に、化学蓄熱装置1に流路部材を配置してもよい。流路部材の内部には、反応媒体が流通する反応媒体流路が区画されている。反応媒体流路の一端は、外側流路32に開口している。反応媒体流路の他端は、収容部22(蓄熱体4の内部)に開口している。流路部材を配置すると、反応媒体流路を介して、蓄熱体4の内部に反応媒体を供給することができる。また、反応媒体流路を介して、蓄熱体4から反応媒体を回収することができる。直接支持部材7、間接支持部材87の形状、配置数等は特に限定しない。
【0060】
(熱応力抑制部材94)
熱応力抑制部材94の形状(直管部50の管軸A3方向の形状、管軸A3方向に対して直交する方向の形状)、配置、配置数等は特に限定しない。形状について、熱応力抑制部材94は円筒状であっても、多角形筒状であってもよい。配置について、熱応力抑制部材94は、伝熱面500の少なくとも一部(好ましくは全面)を覆っていればよい。配置数について、単一の伝熱面500に、複数の熱応力抑制部材94を配置してもよい。潤滑剤940の伝熱面500への配置方法は特に限定しない。例えば、塗布、印刷、蒸着、接着、溶着、圧着、ボルト止め、ネジ止め、嵌合などが挙げられる。熱応力抑制部材94は、直管部50および曲管部51のうち、少なくとも一方に配置すればよい。例えば、熱応力抑制部材94を直管部50のみに配置してもよい。また、熱応力抑制部材94を曲管部51のみに配置してもよい。また、熱応力抑制部材94を伝熱部材5の全体(直管部50および曲管部51)に配置してもよい。
【0061】
フィルム部材941の前端部(潤滑剤940を封止する封止部)は、伝熱部材取付板81の取付孔810に収容されていてもよい。また、当該前端部は、伝熱部材取付板81に固定されていてもよい。また、当該前端部は、直管部50の外周面に固定されていてもよい。当該前端部の固定方法としては、例えば、接着、溶着、圧着、ボルト止め、ネジ止めなどが挙げられる。なお、当該前端部は、隣接部材(伝熱部材取付板81、直管部50など)に固定されていなくてもよい。熱応力抑制部材94がフィルム部材941を備えていない場合の、固体状の潤滑剤940の前端部の場合も同様である。
【0062】
同様に、フィルム部材941の後端部(潤滑剤940を封止する封止部)は、端壁部21の挿通孔210に収容されていてもよい。また、当該後端部は、端壁部21に固定されていてもよい。また、当該後端部は、直管部50の外周面に固定されていてもよい。当該前端部の固定方法としては、例えば、接着、溶着、圧着、ボルト止め、ネジ止めなどが挙げられる。なお、当該後端部は、隣接部材(端壁部21、直管部50など)に固定されていなくてもよい。熱応力抑制部材94がフィルム部材941を備えていない場合の、固体状の潤滑剤940の後端部の場合も同様である。
【0063】
[材料]
化学蓄熱装置1を構成する各部材(内側容器2、外側容器3、伝熱部材5、直接支持部材7、間接支持部材87、反応媒体給排管80、伝熱部材取付板81、熱媒体給排筒82、隔壁83、熱媒体供給管84、熱媒体排出管85、端板86、熱応力抑制部材94)の材質は特に限定しない。強度、比熱、作動温度などを考慮して、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄など)、セラミック、樹脂などを用いればよい。
【0064】
熱応力抑制部材94の材質は特に限定しない。フィルム部材941は、ステンレス、アルミニウムなどの金属であってもよい。あるいは、樹脂であってもよい。フィルム部材941を金属箔製とすると、簡単にフィルム部材941を変形させることができる。また、金属箔は薄肉であるため、蓄熱体4と直管部50との間の伝熱性を向上させることができる。潤滑剤940の状態は特に限定しない。固体状(塊状、粉体状)、液体状、ペースト状などであってもよい。固体状の潤滑剤940としては、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素などが挙げられる。液体状の潤滑剤940としては、熱媒オイル、オイルに黒鉛を添加した液体などが挙げられる。ペースト状の潤滑剤940としては、シリコーンオイルを基油とする放熱グリス、金属破片やホウ素などが添加されたペースト材などが挙げられる。
【0065】
蓄熱体4の蓄熱材粒子に用いられる化学蓄熱材の種類は特に限定しない。例えば、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Baなど)の化合物(酸化物、水酸化物、炭酸化物、塩化物、硫酸化物など)であってもよい。化合物は、アルカリ土類金属を一種以上含んでいればよい。具体的には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、マグネシウムとカルシウムの複合水酸化物、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、マグネシウムとカルシウムの複合酸化物などであってもよい。
【0066】
蓄熱材粒子の平均一次粒子径は特に限定しない。例えば、0.1μm以上10μm以下であればよい。平均一次粒子径は、例えば、レーザー回折法により求められる蓄熱材粒子の粒度分布(粒径分布)のメディアン径である。
【0067】
蓄熱体4に含まれる粘土鉱物の種類は特に限定しない。例えば、セピオライト、アタパルジャイト、カオリナイト、ベントナイトなどであってもよい。これらの粘土鉱物は、単体で、あるいは二種以上混合して、用いることができる。粘土鉱物の繊維径は特に限定しない。
【0068】
蓄熱体4の形態は特に限定しない。粉体状であっても、塊状であってもよい。塊状の場合、成形体(蓄熱材粒子や蓄熱材顆粒のプレス成形体を焼成したもの)であってもよい。反応媒体の種類は特に限定しない。化学蓄熱材の種類に応じて、例えば、水蒸気(水)、アンモニアなどを用いることができる。熱媒体の種類は特に限定しない。例えば、水蒸気(水)、オイル(シリコーンオイルなど)、空気、溶融塩などを用いることができる。反応媒体、熱媒体は、気体でも液体でもよい。流動性を有していればよい。
【符号の説明】
【0069】
1:化学蓄熱装置、2:内側容器(反応器)、20:側周壁部、201:貫通孔、21:端壁部、210:挿通孔、22:収容部、220:部屋、3:外側容器、30:側周壁部、31:端壁部、310:取付孔、32:外側流路、4:蓄熱体、5:伝熱部材、50:直管部、500:伝熱面、51:曲管部、52:熱媒体流路、7:直接支持部材、70:支持孔、80:反応媒体給排管、81:伝熱部材取付板、810:取付孔、82:熱媒体給排筒、820:取付孔、83:隔壁、830:供給室、831:排出室、84:熱媒体供給管、85:熱媒体排出管、86:端板、87:間接支持部材、870:開口部、88:脚部、94:熱応力抑制部材、940:潤滑剤、941:フィルム部材、A1:筒軸、A2:筒軸、A3:管軸、R1:反応媒体ルート、R2:熱媒体ルート