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特開2024-170944フィンチューブの洗浄治具及び洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170944
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】フィンチューブの洗浄治具及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F28G 1/16 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
F28G1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087730
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】財津 昭則
(57)【要約】
【課題】洗浄治具の強度を向上させることができ、もって洗浄治具の交換回数を低減して、フィンチューブの付着物を効率よく洗浄除去することができるフィンチューブの洗浄治具、及び該洗浄治具を用いたフィンチューブの洗浄方法を提供する。
【解決手段】フィンチューブ束のフィンチューブ間に差し込んで、フィンチューブを洗浄するフィンチューブの洗浄治具であって、水噴射口が設けられた中空の水噴射管と、前記水噴射管に取り付けられた中実棒とを備え、前記水噴射管の軸心線及び前記中実棒の軸心線が、平行であり且つ同一平面P上に存在する、フィンチューブの洗浄治具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンチューブ束のフィンチューブ間に差し込んで、フィンチューブを洗浄するフィンチューブの洗浄治具であって、
水噴射口が設けられた中空の水噴射管と、前記水噴射管に取り付けられた中実棒とを備え、
前記水噴射管の軸心線及び前記中実棒の軸心線が、平行であり且つ同一平面P上に存在する、フィンチューブの洗浄治具。
【請求項2】
前記水噴射管及び前記中実棒が配列された配列群において、前記中実棒の少なくとも1本は、前記水噴射管よりも前記同一平面P上の前記軸心線方向に対する垂直方向外側に配置されている、請求項1に記載のフィンチューブの洗浄治具。
【請求項3】
前記同一平面Pに対する垂直方向Hに高圧水を噴射するように、前記水噴射口が前記水噴射管の側面に軸心線方向に間隔をあけて複数個設けられている、請求項1又は2に記載のフィンチューブの洗浄治具。
【請求項4】
前記中実棒は前記水噴射管に溶接により取り付けられ、前記水噴射管と前記中実棒との溶接部は、前記水噴射管及び前記中実棒が配列された配列群から突出しないように設けられている、請求項1又は2に記載のフィンチューブの洗浄治具。
【請求項5】
前記水噴射管及び前記中実棒の基端側が、前記水噴射管に高圧水を供給するホースに接続されるホース接続部に収容され、
前記ホース接続部を通じて高圧水が前記水噴射管に供給される、請求項1又は2に記載のフィンチューブの洗浄治具。
【請求項6】
前記水噴射管及び前記中実棒が配列された配列群を複数有し、
前記複数の配列群が、前記ホース接続部に収容されるように配置されている、請求項5に記載のフィンチューブの洗浄治具。
【請求項7】
前記ホース接続部が、前記水噴射管及び前記中実棒が貫通されるキャップ部と、前記キャップ部に接続されるニップルとを有する、請求項5に記載のフィンチューブの洗浄治具。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の洗浄治具をフィンチューブ間に差し込んでフィンチューブに対面させ、前記水噴射口から高圧水を噴射させてフィンチューブを洗浄する、フィンチューブの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブの洗浄治具、及び該洗浄治具を用いたフィンチューブの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用の廃熱ボイラやガス-ガスヒーター(GGH)のフィンチューブ(蒸発管や伝熱管等)には、ボイラ運転中に、硫酸アンモニウム等の水溶性成分と、酸化鉄、カルシウム、シリカ等の不溶解成分とが付着し堆積する。これにより、廃熱ボイラやガス-ガスヒーター(GGH)の排ガスの差圧が大きくなったり、熱効率が悪化してボイラ効率が悪化したりする。よって、定期的にボイラを停止して、フィンチューブの高圧水洗浄を行う必要がある。
【0003】
ボイラの型式やメーカーによって、フィンチューブの配列や構造は様々である。フィンチューブの間隔が狭く、千鳥配列になったボイラでは、高圧水洗浄の噴射水がフィンチューブ束の奥にあるフィンチューブまで届かず、高圧水洗浄の効果が得られなかった。
【0004】
例えば、フィンチューブの表面に向って高圧水を噴射した場合、噴射水が直接当たったフィンチューブの付着物のみが除去され、フィンチューブ束の奥にあるフィンチューブまで高圧水が届かないため、フィンチューブの付着物の除去効果が悪い。また、フィンチューブの上部から水を掛け流す方法や、水をスプレーする方法も行われたとしても、水溶性成分はある程度除去できるが、不溶解成分は除去できない。
【0005】
特許文献1には、フィンチューブの付着物を効率よく洗浄除去することができるフィンチューブの洗浄治具及び洗浄方法として、高圧水噴射口が軸心線(管軸)方向(管長手方向)に間隔をあけて複数個設けられた水噴射管(洗浄管)を有する洗浄治具であって、水噴射管の軸心線を含む面と垂直な2方向に高圧水を噴射するように高圧水噴射口が設けられている洗浄治具と、この洗浄治具を用いた洗浄方法が記載されている。
【0006】
特許文献1の洗浄治具では、フィンチューブ束の奥部やフィンチューブの裏側で高圧水を噴射し、付着物を剥離しようとしても、剥離した付着物を洗い流すには水量が不足し、下部のフィンチューブのフィンに挟まることがある。
【0007】
そのため、多量の水で洗い流すことが必要となるが、最上段には隙間がないため、フィンチューブ束の中央部に上部から水を掛けることができない構造であり、さらにフィンチューブ束の間の仕切板(即ち、水平方向に設置された一定間隔の金属板)により水が下方へ流れずに仕切板に沿って横方向にフィンチューブ束の外側へ流れ出てしまうという問題があった。また、側面から洗い流すことが千鳥配列のフィンチューブで阻害され、フィンチューブ束の奥部まで水が掛からないという問題があった。
【0008】
斯かる問題を解決するために、フィンチューブ外面の付着物を効率よく洗浄除去することができるフィンチューブの洗浄治具及び洗浄方法として、フィンチューブ束のフィンチューブ間に差し込まれ、先端又は側面から水を噴出する水噴射管を有する洗浄治具において、長さの異なる水噴射管を備えた洗浄治具と、この洗浄治具を用いた洗浄方法とが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-133734号公報
【特許文献2】特開2023-710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の洗浄治具における水噴射管は、洗浄治具のフィンチューブ間への抜き差しや、洗浄治具に接続する耐圧ホースの重みで曲がってしまうことがあった。ここで、曲がった水噴射管を有する洗浄治具はそのまま使用することができなくなり、別の洗浄治具に交換する必要があるため、予め多数の洗浄治具を準備する必要が生じてコストが増大してしまうという問題がある。また、準備した洗浄治具が全て使用不可になると、洗浄治具を用いた洗浄を実施することができず、洗浄が不十分となってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、洗浄治具の強度を向上させることができ、もって洗浄治具の交換回数を低減して、フィンチューブの付着物を効率よく洗浄除去することができるフィンチューブの洗浄治具、及び該洗浄治具を用いたフィンチューブの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]フィンチューブ束のフィンチューブ間に差し込んで、フィンチューブを洗浄するフィンチューブの洗浄治具であって、水噴射口が設けられた中空の水噴射管と、前記水噴射管に取り付けられた中実棒とを備え、前記水噴射管の軸心線及び前記中実棒の軸心線が、平行であり且つ同一平面P上に存在する、フィンチューブの洗浄治具。
上記[1]の構成によれば、洗浄治具の強度を向上させることができ、もって洗浄治具の交換回数を低減して、フィンチューブの付着物を効率よく洗浄除去することができる。
[2]前記水噴射管及び前記中実棒が配列された配列群において、前記中実棒の少なくとも1本は、前記水噴射管よりも前記同一平面P上の前記軸心線方向に対する垂直方向外側に配置されている、前記[1]に記載のフィンチューブの洗浄治具。
上記[2]の構成によれば、洗浄治具の強度をより向上させることができる。
[3]前記同一平面Pに対する垂直方向Hに高圧水を噴射するように、前記水噴射口が前記水噴射管の側面に軸心線方向に間隔をあけて複数個設けられている、前記[1]又は[2]に記載のフィンチューブの洗浄治具。
上記[3]の構成によれば、フィンチューブの付着物をより効率的に洗浄除去することができる。
[4]前記中実棒は前記水噴射管に溶接により取り付けられ、前記水噴射管と前記中実棒との溶接部は、前記水噴射管及び前記中実棒が配列された配列群から突出しないように設けられている、前記[1]~[3]のいずれかに記載のフィンチューブの洗浄治具。
上記[4]の構成によれば、洗浄治具をフィンチューブ間に差し込む際に、溶接部がフィンチューブを傷付けるのを防止することができる。
[5]前記水噴射管及び前記中実棒の基端側が、前記水噴射管に高圧水を供給するホースに接続されるホース接続部に収容され、前記ホース接続部を通じて高圧水が前記水噴射管に供給される、前記[1]~[4]のいずれかに記載のフィンチューブの洗浄治具。
上記[5]の構成によれば、洗浄治具に効率よく高圧水を供給することができ、もってフィンチューブの付着物をより効率的に洗浄除去することができる。
[6]前記水噴射管及び前記中実棒が配列された配列群を複数有し、前記複数の配列群が、前記ホース接続部に収容されるように配置されている、前記[5]に記載のフィンチューブの洗浄治具。
上記[6]の構成によれば、ホース接続部を小型化することができ、もってフィンチューブの洗浄治具を小型化することができる。
[7]前記ホース接続部が、前記水噴射管及び前記中実棒が貫通されるキャップ部と、前記キャップ部に接続されるニップルとを有する、前記[5]又は[6]に記載のフィンチューブの洗浄治具。
上記[7]の構成によれば、洗浄治具の重量を低減し、且つ、洗浄治具の製造工程を簡素化できる。
[8]前記[1]~[7]のいずれかに記載の洗浄治具をフィンチューブ間に差し込んでフィンチューブに対面させ、前記水噴射口から高圧水を噴射させてフィンチューブを洗浄する、フィンチューブの洗浄方法。
上記[8]の構成によれば、フィンチューブの付着物を効率よく洗浄除去することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィンチューブの洗浄治具及び洗浄方法によれば、洗浄治具の強度を向上させることができ、もって洗浄治具の交換回数を低減して、フィンチューブの付着物を効率よく洗浄除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る洗浄治具の一例を説明する平面図である。
図2図1のII-II線拡大断面図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4図1のIV-IV線矢視図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る洗浄治具の一例を説明する図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る洗浄治具の一例を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る洗浄方法の一例を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における用語及び表記の定義及び意義を以下に示す。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後の数値が下限値及び上限値であることを意味する。
「洗浄効果」とは、フィンチューブの付着物の残留が減少することによって、下記(i)~(iii)が得られることを意味する。
(i)排ガス差圧の減少(安定運転、送風ファンの負荷低減)
(ii)フィンチューブ内の熱媒水の熱効率改善による注入蒸気量の低減
(iii)排ガス温度をコントロールできることによる煙突やフィンチューブの腐食抑制
【0016】
[フィンチューブの洗浄治具]
以下、本発明のフィンチューブの洗浄治具について図1~6を参照して説明する。
本発明のフィンチューブの洗浄治具は、後述するフィンチューブ束のフィンチューブ間に差し込んで、フィンチューブを洗浄する治具である。
【0017】
図1~4は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄治具10の一例を示すものである。
図1~4において、第1の実施形態に係る洗浄治具10は、キャップ部1及びキャップ部1に接続されたニップル2を有するホース接続部10aと、キャップ部1に貫通される中実棒3及び水噴射管4を有する配列群10bとを有する。ホース接続部10aがキャップ部1及びキャップ部1に接続されたニップル2を有することにより、洗浄治具10の重量が低減し、且つ、洗浄治具10の製造工程を簡素化できる。
なお、キャップ部1に貫通した中実棒3及び水噴射管4は、キャップ部1の上面(非開口面)からニップル2側に突出していてもよく、上面(非開口面)からニップル2側に突出していてなくてもよい。
【0018】
キャップ部1としては、特に制限はなく、例えば、ネジソケットが溶接により取り付けられたキャップ、ネジソケットが溶接により取り付けられた金属板等が挙げられる。
キャップ部1の材質としては、特に制限はなく、例えば、ステンレス(SUS)、鉄、銅等の金属;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂(プラスチック);等が挙げられる。
キャップ部1の形状としては、特に制限はなく、例えば、開口面が1つの円柱形状、開口面が1つの角柱形状等が挙げられる。これらの中でも、開口面が1つの円柱形状が好ましい。
【0019】
例えば、ニップル2に設けられたネジが、キャップ部1のネジソケットのネジと締結する。
ニップル2の材質としては、特に制限はなく、例えば、ステンレス(SUS)、鉄、銅等の金属;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂(プラスチック);等が挙げられる。
ニップル2の形状としては、特に制限はなく、例えば、開口面が2つの円柱形状、開口面が2つの角柱形状等が挙げられる。これらの中でも、開口面が2つの円柱形状が好ましい。
【0020】
図1~4に示すように、水噴射管4の軸心線及び中実棒3の軸心線が、平行であり、且つ、同一平面P上に存在する。
各水噴射管4は、特に制限はないが、例えば、直管状であり、先端は封鎖されている。各水噴射管4同士は、軸心線が、平行であり、且つ、同一平面P上に存在するように配列されていることが好ましい。
本発明の第1の実施形態に係る洗浄治具10は、図3に示すように、平たいため、後述するフィンチューブ8同士の間の狭いスペースにも容易に差し込むことができ、奥のフィンチューブ8に対しても高圧水を直接噴射することができる。従って、本発明によると、フィンチューブ8を、効率的に高圧水洗浄することができる。
【0021】
図1及び2に示すように、中実棒3は、水噴射管4に溶接により取り付けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、バンドにより取り付けられていてもよく、接着剤により取り付けられていてもよい。
また、中実棒3同士及び水噴射管4同士についても、例えば、溶接により取り付けられていてもよく、バンドにより取り付けられていてもよく、接着剤により取り付けられていてもよい。
図1~4に示すように、同一長さの中実棒3が2本設置されているが、これに限定されるものではなく、中実棒3の本数は上記以外であってもよい。中実棒3の本数を増やすことにより、洗浄治具10の強度を向上させることができる。
【0022】
中実棒3の材質としては、特に制限はなく、例えば、ステンレス(SUS)、鉄、銅等の金属;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂(プラスチック);等が挙げられる。これらの中でも、洗浄治具10の強度の観点で、ステンレス(SUS)が好ましい。
中実棒3の形状としては、特に制限はなく、例えば、円柱形状(丸棒)、四角柱形状(四角棒)等が挙げられる。これらの中でも、洗浄治具10の強度の観点で、円柱形状(丸棒)が好ましい。
中実棒3の長さ(図1~4では、600mm)としては、特に制限はないが、好ましくは100~2000mm、より好ましくは300~1000mm、特に好ましくは500~700mmである。
中実棒3の外径(図1~4では、3.0mm)としては、特に制限はないが、好ましくは0.5~5.5mm、より好ましくは1.5~4.5mm、特に好ましくは2.5~3.5mmである。
【0023】
図1~4に示すように、同一長さの水噴射管4が2本設置されているが、これに限定されるものではなく、水噴射管4の本数は上記以外であってもよい。水噴射管4の本数を増やすことで、強度を保ち、洗浄効果を向上させる(水噴射口5の個数を増加させる)ことができる。
水噴射管4の材質としては、特に制限はなく、例えば、ステンレス(SUS)、鉄、銅等の金属;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂(プラスチック);等が挙げられる。これらの中でも、洗浄治具10の強度の観点で、ステンレス(SUS)が好ましい。
水噴射管4の形状としては、特に制限はないが、耐圧の観点で、好ましくは円柱形状である。
水噴射管4の長さ(図1~4では、600mm)としては、特に制限はないが、好ましくは100~2000mm、より好ましくは300~1000mm、特に好ましくは500~700mmである。
水噴射管4の外径(図1~4では、3.5mm)としては、特に制限はないが、好ましくは0.5~7.0mm、より好ましくは2.0~5.5mm、特に好ましくは3.5~4.0mmである。
水噴射管4の肉厚(図1~4では、0.5mm)としては、特に制限はないが、水量確保及び強度の両立の観点で、好ましくは0.1~1.4mm、より好ましくは0.3~1.2mm、特に好ましくは0.5~1.0mmである。
【0024】
水噴射管4の外径と中実棒3の外径との差(図1~4では、0.5mm)としては、洗浄治具10が後述するフィンチューブ8を傷付けるのを防止する観点で、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。
【0025】
図2に示されるように、水噴射管4と中実棒3との溶接部6及び水噴射管4同士の溶接部6は、水噴射管4及び中実棒3が配列された配列群10bから突出(図2における点線の外側に突出)しないように設けられていることが好ましい。これにより、洗浄治具10を後述するフィンチューブ8間に差し込む際に、溶接部6がフィンチューブ8を傷付けるのを防止することができる。
また、図1に示されるように、水噴射管4と中実棒3との溶接部6及び水噴射管4同士の溶接部6は、軸心線方向Lに間隔をあけて複数個設けられていることが好ましい。
【0026】
溶接部6同士の軸心線方向Lにおける間隔(図1~4では、70mm)としては、特に制限はないが、洗浄治具10の強度の観点で、好ましくは20~120mm、より好ましくは40~100mm、特に好ましくは60~80mmである。
溶接部6の水噴射管4の先端からの距離(図1~4では、20mm)としては、特に制限はないが、好ましくは1~50mm、より好ましくは5~40mm、特に好ましくは10~30mmである。
溶接部6の個数(図1の紙面奥側も含めて54個)としては、特に制限はないが、洗浄治具10の強度の観点で、好ましくは20個以上、より好ましくは30個以上、特に好ましくは40個以上である。
【0027】
図1に示すように、各水噴射管4の側面には、水噴射口5が軸心線方向Lに間隔をあけて複数個設けられていることが好ましい。これにより、各水噴射管4の軸心線を含む平面Pと垂直な2方向H(図1の紙面手前方向と紙面奥方向との2方向)に高圧水を噴射することができ、もって、後述するフィンチューブ8の付着物をより効率的に洗浄除去することができる。
図1では、各水噴射管4の先端側の所定位置の4カ所(図1の紙面奥側も含めると8カ所)に水噴射口5が設けられているが、これに限定されることなく、各水噴射管4の基端側の所定位置に水噴射口5がさらに設けられていてもよい。図1に示すように、水噴射口5は、各水噴射管4の先端側の所定位置に設けられていれば、後述するフィンチューブ8の付着物の洗浄除去を行うことができる。
【0028】
水噴射口5の口径(図1~4では、0.5mm)としては、噴射圧力とポンプ能力に応じて設定され、特に制限はないが、好ましくは0.1~2.0mm、より好ましくは0.3~1.5mm、特に好ましくは0.5~1.0mmである。
水噴射口5の水噴射管4の先端からの距離(図1~4では、20mm)としては、特に制限はないが、好ましくは1~50mm、より好ましくは5~40mm、特に好ましくは10~30mmである。
水噴射口5同士の軸心線方向Lにおける間隔(図1~4では、115mm)としては、特に制限はないが、好ましくは50~170mm、より好ましくは70~150mm、特に好ましくは90~130mmである。
水噴射口5の個数(図1の紙面奥側も含めて8個)としては、噴射圧力とポンプ能力に応じて設定され、特に制限はないが、反力を打ち消すように(即ち、水噴射管4の軸心線に対して対称となるように)設けられていることが好ましい。
水噴射口5の個数を増やすことで、洗浄効果を向上(洗浄面積及び水量を増加)させることができる。
【0029】
図1~4に示すように、水噴射管4及び中実棒3が配列された配列群10bにおいて、中実棒3は、水噴射管4よりも平面P上の軸心線方向Lに対する垂直方向外側に配置されることが好ましい。なお、図1~4では、2本の中実棒3は、いずれも、水噴射管4よりも平面P上の軸心線方向Lに対する垂直方向外側に配置されているが、これに限定されるものではない。中実棒3のうち少なくとも1本が平面P上の軸心線方向Lに対する垂直方向外側に配置されていることにより、洗浄治具10の強度をより向上させることができる。
【0030】
配列群10bにおける水噴射管4及び中実棒3の配列としては、中実棒3が少なくとも1本含まれている限り、特に制限はないが、例えば、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の4本配列(図2及び図4における配列群10b参照)、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の5本配列(図5及び6における配列群10b参照)、「中実棒3-水噴射管4-中実棒3-水噴射管4-中実棒3」の5本配列(図5及び6における配列群10b参照)、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の6本配列、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の7本配列、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の7本配列、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の8本配列、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の9本配列、「中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3-水噴射管4-水噴射管4-水噴射管4-中実棒3」の9本配列等が洗浄治具10の強度の観点で好適に挙げられる。
【0031】
図1及び3に示すように、水噴射管4及び中実棒3の基端側が、水噴射管4に高圧水を供給する耐圧ホース(不図示)に接続されるホース接続部10aに収容され、ホース接続部10aを通じて高圧水が水噴射管4に供給されることが好ましい。これにより、洗浄治具10に効率よく高圧水を供給することができ、もって後述するフィンチューブ8の付着物をより効率的に洗浄除去することができる。
【0032】
図1及び3に示すように、配列群10bにおける中実棒3及び水噴射管4の長さは略同一であるが、これに限定されるものではなく、長さが異なっていてもよく、例えば、中実棒3や水噴射管4が長さの短いものから順次に配列されている態様であってもよく、隣接する長さの異なる中実棒3や水噴射管4同士の長さの差が後述するフィンチューブ8の配列間隔とほぼ同程度(例えば0.8~1.2倍程度)である態様であってもよい。このように、中実棒3及び水噴射管4の長さが異なっていることで、フィンチューブ8間の狭い隙間(例えば、4mm~5mm)に挿入しやすくなることがある。
【0033】
図5(第2の実施形態)及び図6(第3の実施形態)に示すように、洗浄治具10が水噴射管4及び中実棒3が配列された配列群10bを複数有し、複数の配列群10bが、ホース接続部10aに収容されるように配置されていてもよい。これにより、ホース接続部10aを小型化することができ、もって後述するフィンチューブ8の洗浄治具10を小型化することができる。
複数の配列群10b同士は、溶接、バンド、接着剤等により取り付けられていてもよい。
なお、洗浄治具10が配列群10bを複数有する場合、後述するフィンチューブ8間の隙間に挿入することができるように、水噴射管4や中実棒3の外径を小さくすることが好ましい。
【0034】
上述したように、水噴射管4の本数を増やすことにより洗浄効果を向上させることができるが、配列群10bの幅が大きくなってキャップ部1の径を大きくしなければならないというデメリットが生じる。しかしながら、図5(第2の実施形態)に示すように、配列群10bを2列に配列してホース接続部10aに接続する(貫通させる)ことで、上記デメリットは解消できる。
【0035】
図6(第3の実施形態)に示すように、水噴射管4及び中実棒3が配列された配列群10bを複数有し、複数の配列群10bが、分割(所定間隔をもって配置)されて、ホース接続部10aに収容されるように配置されていてもよい。
【0036】
なお、従来の洗浄治具を用いて洗浄したフィンチューブについて、本発明の洗浄治具を用いてさらに洗浄したところ、新たに付着物が除去されて、排水と共に流出してくることが確認された。これにより、本発明の洗浄治具の洗浄効果が高いことが認められた。また、本発明の洗浄治具は、水量、耐圧、歪み、除去効果が従来品と比べて同等以上であることに加えて、製作コストは半減したことを確認した。
【0037】
[フィンチューブの洗浄方法]
本発明の洗浄治具10を用いたフィンチューブ8の外面の洗浄方法の一例について図7を参照して説明する。
【0038】
図7の通り、多数のフィンチューブ8が平行に、且つ、チューブ軸心線方向を水平方向にして設置されている。所定本数のフィンチューブ8が水平に配列されたフィンチューブ束7が上下に複数段配置されており、フィンチューブ束7同士の間に、水平な仕切板9が配置されており、仕切板9の上面に沿って水を噴射し、その噴出水によって、仕切板9上に落下した剥離物を押し流して仕切板9上から除去する。
【0039】
ポンプ(不図示)から延びる耐圧ホース(不図示)をホース接続部10aに接続する。洗浄治具10を作業者が手で持ち、該洗浄治具10をフィンチューブ8間に差し込み、平面Pがフィンチューブ8の配列と平行となり、且つ、軸心線方向Lがフィンチューブ8の長手方向と略直交方向となるように配置する。そして、水圧が5~50MPa程度の高圧水を洗浄治具10に供給し、各水噴射管4の側面から方向Hに高圧水を噴出させると共に、洗浄治具10を差し込み方向及びフィンチューブ8の長手方向に移動させて各フィンチューブ8を全体に万遍なく高圧水を噴射させて付着物を除去する。また、ポンプ能力に応じ、噴射圧や噴射水量を設定することができる。
【0040】
各水噴射管4から噴射された水が当ったフィンチューブ8の付着物は、フィンチューブ8から剥離及び粉砕され、仕切板9上へ落下する。この仕切板9上から剥離物を除去するために、仕切板9の上面に沿って水を噴出するように洗浄治具10を配置し、この洗浄治具10から噴射される水によって仕切板9上の剥離物を押し流す。
さらに、仕切板9の上面に対して平行となるように差し込まれた洗浄治具10(図7の下側の洗浄治具10)を90°回転させて、図7の紙面手前方向と紙面奥方向に水が噴射するように配置することも可能である。
なお、仕切板9上に流れ落ちた剥離物を押し流すために、他の洗浄治具(例えば、フィンチューブ8と仕切板9との間隔が狭い場合には、特許文献2に記載された治具1(水噴射管の長さが異なっているもの)が好適である)を併用してもよい。
【0041】
洗浄治具10からは大量の洗浄水が噴出するので、フィンチューブ束7及び仕切板9上から落下した洗浄排水を回収し、薬品処理(例えば、凝集剤添加による凝集処理)及び固液分離処理(例えば、沈殿処理)し、上澄水と沈殿物とに分離し、上澄水をポンプ(不図示)に戻して洗浄に再使用する。これにより、系外に排出される排水量を少なくすることができる。
【0042】
以上ように、本発明のフィンチューブの洗浄方法の一例では、本発明の洗浄治具10をフィンチューブ8間に差し込んでフィンチューブ8に対面させ、水噴射口5から高圧水を噴射させてフィンチューブ8を洗浄する。これにより、フィンチューブ8の付着物を効率よく洗浄除去することができる。
【0043】
上記説明は、本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のフィンチューブの洗浄治具、及びこれを用いたフィンチューブの洗浄方法は、例えば、火力発電所に設置された千鳥配列のフィンチューブで構成されたガスーガスヒーター(GGH)のチューブ群や石油精製会社での熱交換器チューブ等に好適に用いられる。
【0045】
本発明のフィンチューブの洗浄治具を用いることにより、洗浄治具の強度を上げ、破損の要因を排除し、洗浄時間を確保でき、また、洗浄治具の製作コストを抑制できる。
【0046】
本発明のフィンチューブの洗浄治具によれば、ヘッダー、U字管、管同士の接続部品等を使用しないで構造を簡素化することもできる。
【0047】
本発明のフィンチューブの洗浄治具によれば、千鳥配列のフィンチューブ間の隙間に挿入することができる。
【0048】
本発明のフィンチューブの洗浄治具は、強度が高く、構造が簡素であるため、製作コストを抑制することができ、もって破損を考慮して十分な予備の洗浄治具を準備した上で洗浄を行って、洗浄時間を十分に確保して洗浄効果を高めることができる。
【0049】
本発明は、発電用の廃熱回収ボイラの蒸発管等に使用されているフィンチューブの高効率洗浄に寄与し得る。
【符号の説明】
【0050】
1 キャップ部
2 ニップル
3 中実棒
4 水噴射管
5 水噴射口
6 溶接部
7 フィンチューブ束
8 フィンチューブ
9 仕切板
10 洗浄治具
10a ホース接続部
10b 配列群
L 軸心線方向
P 平面
H 平面Pと垂直な2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7