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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170946
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】研削装置及び研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20241204BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241204BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20241204BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B7/04 A
B24B55/02 B
H01L21/304 622E
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087735
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真也
【テーマコード(参考)】
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA11
3C043BA15
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD06
3C043EE04
3C047FF04
3C047FF17
3C047FF19
3C047GG01
3C047HH11
5F057AA05
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA11
5F057CA25
5F057DA11
5F057DA38
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA28
5F057FA36
5F057FA42
5F057FA45
5F057GA01
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】ホイール基台の貫通孔に堆積した研削屑の落下による被加工物の割れなどの発生を防ぐことができる研削装置及び研削方法を提供すること。
【解決手段】チャックテーブル10と、研削ユニット20と、内部ノズル2を備える研削装置1は、ホイール基台25aの貫通孔25a1または内部ノズル2に研削水を供給する研削水供給源41と、貫通孔25a1または内部ノズル2にエアを供給するエア供給源51と、研削水供給源41と貫通孔25a1及び内部ノズル2との接続と、エア供給源51と貫通孔25a1及び内部ノズル2との接続を切り替える開閉バルブV1~V4を備える。また、ウェーハWの研削方法は、ウェーハWをチャックテーブル10で保持する保持ステップと、研削砥石25bでウェーハWを研削する研削ステップを備え、研削ステップにおいては、貫通孔25a1に、エア供給源51からエアまたは研削水供給源41から研削水を供給する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
前記チャックテーブルに向かって開口する複数の貫通孔が形成されたホイール基台と、該ホイール基台の一面に環状に取り付けられた研削砥石とで構成される研削ホイールを有する研削ユニットと、
前記チャックテーブルの外側から前記研削砥石と被加工物との接触部に向かって開口する内部ノズルと、
を備え、前記チャックテーブルに保持された被加工物を前記研削ユニットによって研削する研削装置であって、
前記貫通孔または前記内部ノズルに研削水を供給する研削水供給源と、
前記貫通孔または前記内部ノズルにエアを供給するエア供給源と、
前記研削水供給源と前記貫通孔及び前記内部ノズルとの接続と、前記エア供給源と前記貫通孔及び前記内部ノズルとの接続を切り替える切替え手段と、
を設けたことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記切替え手段は、開閉バルブによって構成されることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の研削装置によって被加工物を研削する研削方法であって、
被加工物を前記チャックテーブルで保持する保持ステップと、
前記研削砥石で該被加工物を研削する研削ステップと、
を備え、
前記研削ステップにおいては、前記貫通孔に、前記エア供給源からエアまたは前記研削水供給源から研削水を供給することを特徴とする研削方法。
【請求項4】
前記研削ステップにおいて、
前記貫通孔に前記エア供給源からエアを供給する場合には、前記内部ノズルに前記研削水供給源から研削水を供給し、
前記貫通孔に前記研削水供給源から研削水を供給する場合には、前記内部ノズルに前記エア供給源からエアを供給することを特徴とする請求項3記載の研削方法。
【請求項5】
前記研削ステップにおいては、前記貫通孔に研削水を供給し、前記内部ノズルに研削水もエアも供給しないことを特徴とする請求項3記載の研削方法。
【請求項6】
前記保持ステップにおいては、前記貫通孔と前記内部ノズルに研削水もエアも供給しないことを特徴とする請求項3記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの被加工物を研削する研削装置と該研削装置による被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられるICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面を研削して該ウェーハを所定の厚さまで薄化し、この薄化されたウェーハを切削装置によって切削することによって個々の半導体デバイスを製造している。そして、近年、ウェーハに対する薄化の要求が増し、薄化されたウェーハの研削中における該ウェーハの外周部のバタつきを抑えるため、研削砥石の内側に配置された内部ノズルから研削水を研削砥石の内周に向かって供給しながら研削を行う研削装置が例えば特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-200526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において提案された研削装置においては、内部ノズルから研削水を加工部のみに供給しながらの研削になるため、研削水に含まれる研削屑がホイール基台の内部に滞留する。このため、ホイール基台の内側に堆積した研削屑が研削加工中や研削ホイールの交換作業中などにウェーハ上やチャックテーブル上に落下する。
【0005】
ウェーハ上に研削屑が落下した場合には、落下した研削屑が研削ホイールに巻き込まれてウェーハの表面にスクラッチなどの傷が発生する。また、チャックテーブル上に研削屑が落下した場合には、落下した研削屑を挟んだ状態でチャックテーブルがウェーハを保持することになり、ウェーハに割れやディンプルが発生する。
【0006】
そこで、ホイール基台に複数の貫通孔を円環状に配置して形成し、これらの貫通孔から研削水(洗浄水)をホイール基台の内側に噴射し、ホイール基台の内側に堆積した研削屑を研削水の噴射によって除去することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述のように研削水をホイール基台の貫通孔から噴射することは研削加工中には行われていないため、研削加工中に被加工物の研削によって発生した研削屑がホイール基台の貫通孔に進入し、貫通孔に研削屑が付着して堆積する。そして、貫通孔に堆積した研削屑が研削中のウェーハや研削が終了してウェーハが取り外されたチャックテーブル上に落下し、ウェーハに割れやスクラッチなどの傷を発生させる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ホイール基台の貫通孔に堆積した研削屑の落下による被加工物の割れなどの発生を防ぐことができる研削装置及び研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに向かって開口する複数の貫通孔が形成されたホイール基台と、該ホイール基台の一面に環状に取り付けられた研削砥石とで構成される研削ホイールを有する研削ユニットと、前記チャックテーブルの外側から前記研削砥石と被加工物との接触部に向かって開口する内部ノズルと、を備え、前記チャックテーブルに保持された被加工物を前記研削ユニットによって研削する研削装置であって、前記貫通孔または前記内部ノズルに研削水を供給する研削水供給源と、前記貫通孔または前記内部ノズルにエアを供給するエア供給源と、前記研削水供給源と前記貫通孔及び前記内部ノズルとの接続と、前記エア供給源と前記貫通孔及び前記内部ノズルとの接続を切り替える切替え手段と、を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記研削装置によって被加工物を研削する研削方法であって、被加工物を前記チャックテーブルで保持する保持ステップと、前記研削砥石で該被加工物を研削する研削ステップと、を備え、前記研削ステップにおいては、前記貫通孔に、前記エア供給源からエアまたは前記研削水供給源から研削水を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る研削装置を用いた研削方法によれば、研削ステップにおいては、ホイール基台の貫通孔には、エア供給源からエアまたは研削水供給源から研削水の何れかが供給され、貫通孔からエアまたは研削水が噴射されるため、被加工物の研削加工によって発生する研削屑の貫通孔への進入が防がれる。このため、ホイール基台の内周面や貫通孔に研削屑が付着して堆積することがなく、堆積した研削屑がウェーハやチャックテーブルの保持面に落下することによるウェーハの割れやスクラッチなどの傷付きが防がれる。
する
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る研削装置の保持ステップ時の状態を示す側断面図である。
図2図1のA部拡大詳細図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4】本発明方法の第1実施形態における研削ステップ時の研削装置の状態を示す側断面図である。
図5】本発明方法の第2実施形態における研削ステップ時の研削装置の状態を示す側断面図である。
図6】本発明方法の第3実施形態における研削ステップ時の研削装置の状態を示す側断面図である。
図7】本発明方法における各ステップ(保持ステップと研削ステップ)での研削水とエアの供給状態を表にまとめて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、本発明に係る研削装置の構成を図1に基づいて以下に説明する。
【0015】
[研削装置の構成]
図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハWを研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。すなわち、研削装置1は、ウェーハWを保持して軸中心回りに回転するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に吸引保持されたウェーハWを研削加工する研削ユニット20と、該研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに対して垂直方向に昇降させる昇降機構30と、研削ユニット20の後述の研削ホイール25または後述の内部ノズル2の何れか一方に研削水を供給する研削水供給ユニット40と、研削ホイール25または内部ノズル2にエアを供給するエア供給ユニット50と、チャックテーブル10の傾きを調整する傾き調整機構60を主要な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、被加工物であるウェーハW(図1及び図4図6参照)は、単結晶のシリコン母材で構成されており、その表面(下面)には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された不図示の保護テープによって保護されている。
【0017】
次に、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、研削ユニット20、昇降機構30、研削水供給ユニット40、エア供給ユニット50及び傾き調整機構60の構成についてそれぞれ説明する。
【0018】
(チャックテーブル)
チャックテーブル10は、円板状の部材であって、その上部中央部にはポーラス部材10Aが組み込まれている。ここで、ポーラス部材10Aは、多孔質のセラミックなどで構成されており、その上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面10aを構成している。
【0019】
そして、チャックテーブル10は、その中心から垂直下方に延びる回転軸11に連結された回転駆動源であるサーボモータ12によって回転軸11の軸心回りに所定の速度で回転駆動される。なお、チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0020】
また、本実施形態に係る研削装置1は、前後方向(図1の左右方向)に長い矩形ボックス状のベース100を備えており、このベース100内には、チャックテーブル10を保持面10aに対して水平方向(図1の左右方向)に移動させる不図示の水平移動機構が設けられている。なお、水平移動機構は、公知のボールネジ機構などによって構成されているため、これについての詳細な説明は省略する。
【0021】
(研削ユニット)
研削ユニット20は、ホルダ21内に収容された回転駆動源であるスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状のホイール基台25aと、該ホイール基台25aの下面に円環状に取り付けられた加工具である複数の研削砥石25bによって構成されている。なお、研削砥石25bは、ウェーハWを研削するための矩形ブロック状の加工具であって、その下面は、ウェーハWの上面(被研削面)に接触する研削面を構成している。
【0022】
ところで、図2及び図3に示すように、研削ホイール25のマウント24の中心には、1つの円孔24aが縦方向に形成されており、この円孔24aからは複数(本実施形態では、8本(図3参照))の水平な供給路24bが径方向外方に向かって放射状に延びている。そして、各供給路24bの径方向外端部は、垂直下方に屈曲してホイール基台25aの外周部に垂直に形成された複数(本実施形態では、8つ(図3参照))の円孔状の貫通孔25a1にそれぞれ接続されている。ここで、マウント24に放射状に形成された複数(8本)の供給路24bとホイール基台25aに形成された複数(8つ)の貫通孔25a1は、図3に示すように、周方向に等角度ピッチ(45°ピッチ)で形成されており、貫通孔25a1は、同一円周上に円環状に配置されて研削砥石25bの内周側においてチャックテーブル10に向かってそれぞれ開口している。なお、本実施の形態では、供給路24bと貫通孔25a1をそれぞれ8つずつ形成したが、これらの供給路24bと貫通孔25a1の数は、複数であれば任意である。
【0023】
そして、図1に示すように、研削ユニット20のスピンドルモータ22とスピンドル23の軸中心には、円孔状の供給路3が上下方向に貫設されており、該供給路3の下端は、マウント24の中心部に垂直に形成された円孔24aに連通している(図2参照)。
【0024】
(昇降機構)
昇降機構30は、研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに対して垂直な方向(上下方向)に沿って昇降させるものであって、ベース100の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム101に配置されている。この昇降機構30は、研削ユニット20のホルダ21を、該ホルダ21に保持された研削ユニット20のスピンドルモータ22とスピンドル23及び研削ホイール25と共に左右一対のガイドレール31(図1には、一方のみ図示)に沿って上下方向に昇降させるものである。ここで、「左右」とは、図1の紙面垂直方向であって、一対のガイドレール31は、コラム101の端面(前面)に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0025】
また、ホルダ21の背面には、ブロック状のスライダ32が水平に突設されており、このスライダ32には、垂直なボールネジ33が螺合挿通している。そして、このボールネジ33の上端には、コラム101の上面にブラケット34を介して縦置き状態で取り付けられた回転駆動源であるサーボモータ35の出力軸が連結されており、同ボールネジ33の下端は、軸受36によってコラム101に回転可能に支持されている。なお、コラム101の側端面には、リニアスケール37がボールネジ33に沿って垂直に取り付けられており、スライダ32の背面には、リニアスケール37の目盛りを読み取る読み取り部38が取り付けられている。
【0026】
したがって、サーボモータ35を起動してボールネジ33を正逆転させれば、このボールネジ33に螺合するスライダ32が一対のガイドレール31に沿って研削ユニット20と共に上下動するため、研削ユニット20が昇降して研削砥石25bのウェーハWに対する研削量(研削代)が設定される。
【0027】
(研削水供給ユニット)
研削水供給ユニット40は、研削加工中の研削砥石25bとウェーハWとが接触する加工部に研削水供給源41から研削水を供給するものであって、研削水は、研削ホイール25のホイール基台25aに形成された複数(8つ)の貫通孔25a1(図1図3参照)またはチャックテーブル10の外周側に配置された横L字状の内部ノズル2(図1参照)の何れか一方から供給される。ここで、横L字状に屈曲する内部ノズル2は、研削加工中に研削砥石25bの内側から該研削砥石25bの内周部に向かって研削水またはエアを噴射するものであって、その端部は、チャックテーブル10(チャックテーブル10に保持されたウェーハW)の中心に向かって水平方向に開口している。なお、研削水には、純水が好適に用いられる。
【0028】
ここで、図1に示すように、研削水供給源41から延びる2つの分岐管a,bは、各合流管c,dにそれぞれ接続されており、一方の合流管cは、研削ユニット20のスピンドルモータ22とスピンドル23の軸中心に形成された供給路3の上端に接続されている。また、他方の合流管dは、内部ノズル2に接続されている。そして、各分岐管a,bには、切替え手段である開閉バルブV1,V2がそれぞれ設けられている。したがって、研削水供給ユニット40は、研削水供給源41と、開閉バルブV1,V2及び分岐管a,bと合流管c,dを含んで構成されている。なお、本実施の形態においては、開閉バルブV1,V2は、常閉弁であるソレノイド式の電磁開閉バルブによって構成されており、その開閉動作は、不図示の制御手段によって制御される。すなわち、ソレノイドへの非通電時(ソレノイドOFF時)には、これらの開閉バルブV1,V2は、不図示の付勢手段によって付勢されて閉じており、ソレノイドに通電されると(ソレノイドON)開くが、ソレノイドへの通電のON/OFFは不図示の制御手段によって制御される。
【0029】
(エア供給ユニット)
エア供給ユニット50は、研削加工中において、エア供給源51からエアをホイール基台25aに形成された複数の貫通孔25a1または内部ノズル2に供給するものであって、図1に示すように、エア供給源51から延びる2つの分岐管e,fは、各合流管c,dにそれぞれ接続されている。そして、各分岐管e,fには、切替え手段である開閉バルブV3,V4がそれぞれ設けられている。なお、開閉バルブV3,V4も前記開閉バルブV1,V2と同様に常閉弁であるソレノイド式の電磁開閉バルブによって構成されており、その開閉動作は、不図示の制御手段によってなされる。
【0030】
したがって、エア供給ユニット50は、エア供給源51と、開閉バルブV3,V4及び分岐管e,fと合流管c,dを含んで構成されている。なお、エア供給ユニット50は、必ずしもホイール基台25aの貫通孔25a1または内部ノズル2の何れか一方にエアを供給する訳ではなく、後述のように(本発明方法における第3実施形態参照)、貫通孔25a1と内部ノズル2の何れにもエアを供給しない場合がある。また、本実施の形態では、開閉バルブV1~V4として、常閉弁を使用したが、常開弁を使用してもよい。
【0031】
(傾き調整機構)
傾き調整機構60は、チャックテーブル10の傾きを調整する機構であって、図1に示すように、チャックテーブル10とベース100との間に設けられている。具体的には、この傾き調整機構60は、2つのアクチュエータ61(図1には、1つのみ図示)と1つのピボット62によって構成されており、これらのアクチュエータ61とピボット62は、周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。
【0032】
ここで、各アクチュエータ61は、ネジ軸63を電動モータ64によって正逆転させて上下動させることによって、チャックテーブル10を、ピボット62を中心として傾動させて該チャックテーブル10の保持面10aの水平面に対する傾きを調整するものである。
【0033】
ところで、本実施の形態に係る研削装置1においては、図1に示すように、チャックテーブル10と、研削ユニット20のスピンドル23の一部とマウント24及び研削ホイール25、内部ノズル2、傾き調整機構60などは、ベース100上に配置された矩形ボックス状のカバー4によって覆われた加工室Sに収容されている。
【0034】
[ウェーハの研削方法]
次に、以上のように構成された研削装置1による本発明に係るウェーハWの研削方法を図4図7に基づいて以下に説明する。
【0035】
本発明に係る研削方法は、図7に示すように、
1)保持ステップと、
2)研削ステップと、
を経てウェーハWを研削する方法である。以下、これらの各ステップについてそれぞれ説明する。
【0036】
1)保持ステップ:
保持ステップは、研削加工すべきウェーハWをチャックテーブル10の保持面10aに保持させる工程であって、この保持工程においては、図1に示すように、ウェーハWが不図示の保護テープを下にしてチャックテーブル10の保持面10a上に載置される。そして、チャックテーブル10のポーラス部材10Aが真空ポンプなどの不図示の吸引源に接続され、該ポーラス部材10Aが真空引きされる。すると、ポーラス部材10Aに負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持される。
【0037】
この保持ステップにおいては、図1及び図7に示すように、研削水供給ユニット40からの研削水の供給もエア供給ユニット50からのエアの供給もなされない。すなわち、この保持ステップにおいては、図1及び図7に示すように、全ての開閉バルブV1~V4が閉じられ(OFFされ)るため、研削ホイール25のホイール基台25aに形成された貫通孔25a1及び内部ノズル2からの研削水の噴射もエアの噴射もなされない。なお、図7において、「ON」は、ソレノイドへの通電がなされて開閉バルブV1~V4が開いている状態を示し、「OFF」は、ソレノイドへの通電が遮断されて開閉バルブV1~V4が閉じている状態を示す。
【0038】
2)研削ステップ:
研削ステップは、前記保持ステップにおいてチャックテーブル10の保持面10a上に保持されたウェーハWの裏面(上面)を研削ユニット20によって研削する工程である。具体的には、この研削ステップにおいては、ウェーハWを保持したチャックテーブル10がサーボモータ12によって軸中心回りに所定の速度で回転駆動されるとともに、研削ユニット20の研削ホイール25がスピンドルモータ22によってチャックテーブル10の回転方向と同方向に所定の速度で回転駆動される。そして、この状態から、研削ユニット20が昇降機構30によって下降すると、研削ホイール25の研削砥石25bがウェーハWに接近し、図4図6に示すように、該研削ホイール25の研削砥石25bがチャックテーブル10と共に回転するウェーハWの裏面(図4図6においては、上面)に接触する。
【0039】
上述のように、研削ホイール25の研削砥石25bがウェーハWの裏面に接触すると、該研削砥石25bによるウェーハWの裏面(上面)の研削が開始され、該ウェーハWの厚みが所定の仕上げ厚みになるまで研削される。このとき、研削砥石25bの下面(加工面)がウェーハWの中心を通るように両者の水平位置関係が調整される。また、この研削ステップにおいては、傾き調整機構60によって、チャックテーブル10の回転軸11の軸心がスピンドル23の垂直な軸心に対して所定角度だけ傾けられる。
【0040】
この研削ステップにおけるウェーハWの研削においては、研削ホイール25のホイール基台25aに形成された複数の貫通孔25a1に、研削水供給ユニット40から研削水、或いはエア供給ユニット50からエアが供給され、内部ノズル2に、研削水供給ユニット40から研削水、或いはエア供給ユニット50からエアが供給され、または供給されないパターンがあり、以下、これらのパターンを第1~第3実施形態として説明する。
【0041】
<第1実施形態>
第1実施形態においては、研削ステップにおける研削砥石25bによるウェーハWの研削加工時には、図4に示すように、研削水供給ユニット40から内部ノズル2に研削水が供給されるとともに、研削ホイール25のホイール基台25aに形成された複数の貫通孔25a1にエア供給ユニット50からエアが供給される。すなわち、図4及び図7に示すように、研削水供給ユニット40に設けられた開閉バルブV1が閉じられ(ソレノイドへの通電OFF)、開閉バルブV2が開けられる(ソレノイドへの通電ON)。すると、図4に矢印にて示すように、研削水供給源41から研削水が分岐管bから合流管dを通って内部ノズル2へと供給され、該内部ノズル2から研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に向かって研削水が噴射される。このように、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に向かって研削水が噴射されると、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に発生する摩擦熱が研削水によって除去されて接触部が冷却されるとともに、ウェーハWの研削によって発生した研削屑が研削水によって洗浄されて除去される。
【0042】
また、図4及び図7に示すように、エア供給ユニット50に設けられた開閉バルブV4が閉じられ(ソレノイドへの通電OFF)、開閉バルブV3が開けられる(ソレノイドへの通電ON)。すると、図4に矢印にて示すように、エア供給源51からエアが分岐管eから合流管cを流れ、研削ユニット20のスピンドルモータ22とスピンドル23の軸中心に形成された供給路3、マウント24に形成された円孔24a、供給路24bを順次経てホイール基台25aに形成された複数の貫通孔25a1へとエアが供給され、該貫通孔25a1からエアがホイール基台25aの内側において下方に向かって噴射される。このように、ホイール基台25aの貫通孔25a1からエアが該ホイール基台25aにおいて下方に向かって噴射されると、ウェーハWの研削によって発生した研削屑の貫通孔25a1への進入が防がれるとともに、ホイール基台25aの内周面への研削屑の付着が防がれる。このため、ホイール基台25aの内周面や貫通孔25a1に研削屑が付着して堆積することがなく、堆積した研削屑がウェーハWや研削後のチャックテーブル10の保持面10aに落下することによるウェーハWの割れやスクラッチなどの傷付きが防がれる。
【0043】
<第2実施形態>
第2実施形態においては、研削ステップにおける研削砥石25bによるウェーハWの研削加工時には、図5に示すように、ホイール基台25aの複数の貫通孔25a1に研削水供給ユニット40から研削水が供給されるとともに、エア供給ユニット50から内部ノズル2にエアが供給される。すなわち、図5及び図7に示すように、研削水供給ユニット40に設けられた開閉バルブV2が閉じられ(ソレノイドへの通電OFF)、開閉バルブV1が開けられる(ソレノイドへの通電ON)。
【0044】
すると、図5に矢印にて示すように、研削水供給源41から研削水が分岐管aから合流管cを通ってホイール基台25aの貫通孔25a1へと供給され、該貫通孔25a1から研削水がホイール基台25aの内側において下方に向かって噴射される。このため、ウェーハWの研削によって発生した研削屑の貫通孔25a1への進入が防がれるとともに、ホイール基台25aの内周面への研削屑の付着が防がれる。したがって、ホイール基台25aの内周面や貫通孔25a1に研削屑が付着して堆積することがなく、堆積した研削屑がウェーハWや研削後のチャックテーブル10の保持面10aに落下することによるウェーハWの割れやスクラッチなどの傷付きが防がれる。なお、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)の冷却と洗浄は、ホイール基台25aの貫通孔25a1からウェーハWに向かって噴射される研削水によってなされる。
【0045】
また、図5及び図7に示すように、エア供給ユニット50に設けられた開閉バルブV3が閉じられ(ソレノイドへの通電OFF)、開閉バルブV4が開けられる(ソレノイドへの通電ON)。すると、図5に矢印にて示すように、エア供給源51からエアが噴射される。このように、内部ノズル2からエアが噴射されると、ウェーハWの研削によって発生した研削屑の内部ノズル2への進入が防がれるとともに、内部ノズル2の研削屑による目詰まりが防がれる。したがって、内部ノズル2内に研削屑が付着して堆積することがなく、堆積した研削屑がウェーハWや研削後のチャックテーブル10の保持面10aに落下することによるウェーハWの割れやスクラッチなどの傷付きが防がれる。
【0046】
<第3実施形態>
第3実施形態においては、研削ステップにおける研削砥石25bによるウェーハWの研削加工時には、図6に示すように、ホイール基台25aの複数の貫通孔25a1に研削水供給ユニット40から研削水が供給され、エア供給ユニット50から内部ノズル2にエアが供給されない。
【0047】
すなわち、図6及び図7に示すように、研削水供給ユニット40に設けられた開閉バルブV2が閉じられ(ソレノイドへの通電OFF)、開閉バルブV1が開けられる(ソレノイドへの通電ON)。すると、前記第2実施形態と同様に、図6に矢印にて示すように、研削水供給源41から研削水が分岐管aから合流管cを通ってホイール基台25aの貫通孔25a1へと供給され、該貫通孔25a1から研削水がホイール基台25aの内側において下方に向かって噴射される。このため、前記第2実施形態と同様に、ウェーハWの研削によって発生した研削屑の貫通孔25a1への進入が防がれるとともに、ホイール基台25aの内周面への研削屑の付着が防がれる。したがって、ホイール基台25aの内周面や貫通孔25a1に研削屑が付着して堆積することがなく、堆積した研削屑がウェーハWや研削後のチャックテーブル10の保持面10aに落下することによるウェーハWの割れやスクラッチなどの傷付きが防がれる。なお、この場合においても、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)の冷却と洗浄は、ホイール基台25aの貫通孔25a1からウェーハWに向かって噴射される研削水によってなされる。
【0048】
また、図6及び図7に示すように、エア供給ユニット50に設けられた開閉バルブV3,V4が共に閉じられ(ソレノイドへの通電OFF)、エア供給源51から内部ノズル2へのエアの供給がなされない。この場合、内部ノズル2は、チャックテーブル10の径方向外側に配置されているため、当該内部ノズル2の研削屑による目詰まりは発生しないものと考えられる。
【0049】
而して、以上の保持ステップと研削ステップを経てウェーハWの研削が終了すると、昇降機構30によって研削ホイール25が図1に示すように上昇し、該研削ホイール25の研削砥石25bがウェーハWから離間し、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び研削ホイール25の回転が停止し、チャックテーブル10のポーラス部材10Aの不図示の吸引源との接続が遮断される。すると、ポーラス部材10Aによる吸引力が消滅し、ウェーハWをチャックテーブル10の保持面10aから容易に取り外すことができ、ウェーハWに対する一連の研削加工が終了する。
【0050】
なお、以上は1枚のウェーハWに対する研削加工について説明したが、以上説明した各ステップを繰り返すことによって、複数枚のウェーハWを連続的に研削加工することができる。
【0051】
また、以上は被加工物としてウェーハを研削する研削装置とこの研削装置を用いるウェーハの研削方法について説明したが、本発明は、ウェーハ以外の任意の被加工物の研削装置及び研削方法に対しても同様に適用可能である。
【0052】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1:研削装置、2:内部ノズル、3:供給路、4:カバー、10:チャックテーブル、
10A:ポーラス部材、10a:保持面、11:回転軸、12:サーボモータ、
20:切削ユニット、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、23:スピンドル、
24:マウント、24a:円孔、24b:供給路、25:研削ホイール、
25a:ホイール基台、25a1:貫通孔、25b:研削砥石、30:昇降機構、
31:ガイドレール、32:スライダ、33:ボールネジ、34:ブラケット、
35:サーボモータ、36:軸受:37:リニアスケール、38:読み取り部、
40:研削水供給ユニット、41:研削水供給源、50:エア供給ユニット、
51:エア供給源、60:傾き調整機構、61:アクチュエータ、62:ピボット、
63:ネジ軸、64:電動モータ、100:ベース、101:コラム、
a,b,e,f:分岐管、c,d:合流管、S:加工室、
V1~V4:開閉バルブ(切替え手段)、W:ウェーハ(被加工物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7