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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170958
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087750
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時田 佑太
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601LL25
(57)【要約】
【課題】駆動キャスタがロック状態および解除状態のいずれであるかを、利用者がより簡易に把握できる医療機器を提供する。
【解決手段】超音波診断装置10は、複数の駆動キャスタ24と、前記複数の駆動キャスタ24それぞれに一つずつ設けられ、対応する前記駆動キャスタ24の動きをロックする複数のロック機構30と、前記ロック機構30が、前記駆動キャスタ24の動きをロックしたロック状態、および、前記駆動キャスタ30の動きを許容した解除状態のいずれであるかを提示するインジケータ70と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動キャスタと、
前記複数の駆動キャスタそれぞれに一つずつ設けられ、対応する前記駆動キャスタの動きをロックする複数のロック機構と、
前記ロック機構が、前記駆動キャスタの動きをロックしたロック状態、および、前記駆動キャスタの動きを許容した解除状態のいずれであるかを提示するインジケータと、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
請求項1に記載の医療機器であって、
前記インジケータは、前記ロック機構の状態が表示される表示エリアを有し、
前記表示エリアは、前記医療機器の下部かつ前部において、上方、または、手前かつ上方に向かう斜め上前方向に向く姿勢で配置されている,
ことを特徴とする医療機器。
【請求項3】
請求項2に記載の医療機器であって、さらに、
自転することで、前記ロック機構の状態を切り替える回転軸を有し、
前記表示エリアは、前記回転軸の幅内に配置されている、
ことを特徴とする医療機器。
【請求項4】
請求項1に記載の医療機器であって、さらに、
前記ロック機構と機械的に連結され、自転することで前記ロック機構の状態を切り替える回転軸を備え、
前記インジケータは、
表示窓が形成されたベースと、
前記ロック状態を示すロック画像と前記解除状態を示す解除画像とが付された表示プレートであって、前記表示窓を介して前記ロック画像が外部に露出するロック位置と、前記表示窓を介して前記解除画像が外部に露出する解除位置と、の間で移動可能に構成された表示プレートと、
前記回転軸の回転運動を前記表示プレートに伝達することで、前記表示プレートを前記ロック位置と前記解除位置との間で移動させる伝達機構と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項5】
請求項4に記載の医療機器であって、
前記伝達機構は、
前記表示プレートを、前記ロック位置および前記解除位置の一方に向かって付勢する付勢部材と、
前記回転軸に機械的に連結され、前記回転軸とともに回転する押圧体であって、前記回転軸が正転または逆転した場合に、前記表示プレートを、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ロック位置および前記解除位置の他方に向かって押圧する押圧体と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項6】
請求項1に記載の医療機器であって、
前記インジケータは、さらに、
前記ロック機構の状態を検知し、検知結果に応じた電気信号を出力するロックセンサと、
前記ロックセンサからの前記電気信号に応じて、表示内容を切り替える表示器と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項7】
請求項1に記載の医療機器であって、
さらに、所定の色を持つベースを備え、
前記インジケータは、前記ベース内に規定された表示エリアにおいて、前記ロック状態を示すロック画像と、前記解除状態を示す解除画像と、を切り替えて表示し、
前記解除画像の背景の色は、前記ベースの色の反対色であり、
前記ロック画像の背景の色は、前記ベースの色の類似色である。
ことを特徴とする医療機器。
【請求項8】
請求項7に記載の医療機器であって、
前記ロック画像は、第一の色の背景と、第二の色で描かれた文字または図形である主要図と、を含み、
前記解除画像は、前記第二の色の背景と、前記第一の色で描かれた文字または図形である主要図と、を含み、
前記第一の色は、前記第二の色の反対色である、
ことを特徴とする医療機器。
【請求項9】
請求項1に記載の医療機器であって、
前記医療機器は、超音波診断装置であって、
前記超音波診断装置は、さらに、
超音波診断装置の本体部と、
前記本体部の前面に設けられ、超音波プローブのコネクタが接続される1以上の接続端子と、
前記本体部の下端から手前側に延びるベースと、
前記本体部の上端近傍に設けられ、前記1以上の接続端子および前記ベースを照らす補助光源と、
を備え、
前記インジケータは、前記ロック機構の状態が表示される表示エリアを有し、
前記表示エリアは、前記ベースに配置されている、
ことを特徴とする医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数の駆動キャスタを有する可動式の医療機器を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の駆動キャスタを有する可動式の医療機器が知られている。例えば、特許文献1には、複数の駆動キャスタを有した可動式の超音波診断装置が開示されている。この特許文献1の超音波診断装置は、駆動キャスタをロックする状態と、当該ロックを解除する状態とに切り替わるロック機構を備えている。かかるロック機構を設けることで、超音波診断装置の、意に反した動きを効果的に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5385721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等の従来の医療機器では、ロック機構の状態を、ユーザに提示する機能が無かった。結果として、従来の医療機器では、ロック機構の状態を誤認することがあった。例えば、従来の医療機器では、ロックが解除されているにもかかわらず、ユーザが、ロック解除されていると誤認することがあった。
【0005】
もちろん、従来の医療機器でも、ユーザは、ロック機構に関連する部材(例えばペダル等)の状態を確認することで、ロック機構の状態を把握できる。例えば、特許文献1の超音波診断装置の場合、ロック機構を切り替えるために踏み込まれるペダルの傾斜角度を確認すれば、ロック機構の状態を一応、把握できる。しかし、通常、ユーザは、ペダルの傾斜角度から、ロック機構の状態を直感的に把握することは難しかった。したがって、従来の医療機器では、ロック機構の状態を容易に確認することが難しかった。
【0006】
そこで、本明細書では、駆動キャスタがロック状態および解除状態のいずれであるかを、利用者がより簡易に把握できる医療機器を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する医療機器は、複数の駆動キャスタと、前記複数の駆動キャスタそれぞれに一つずつ設けられ、対応する前記駆動キャスタの動きをロックする複数のロック機構と、前記ロック機構が、前記駆動キャスタの動きをロックしたロック状態、および、前記駆動キャスタの動きを許容した解除状態のいずれであるかを提示するインジケータと、を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成とすることで、利用者は、ロック機構の状態を容易に把握できる。
【0009】
この場合、前記インジケータは、前記ロック機構の状態が表示される表示エリアを有し、前記表示エリアは、前記医療機器の下部かつ前部において、上方、または、手前かつ上方に向かう斜め上前方向に向く姿勢で配置されていてもよい。
【0010】
かかる構成とすることで、利用者が、駆動キャスタまたは切替ペダルに注目したとき、自然と、インジケータも視認できる。
【0011】
また、さらに、自転することで、前記ロック機構の状態を切り替える回転軸を有し、前記表示エリアは、前記回転軸の幅内に配置されてもよい。
【0012】
かかる配置とすることで、回転軸の動きを、インジケータの構成要素に、機械的に伝達する機械要素の構成を簡易化できる。
【0013】
また、さらに、前記ロック機構と機械的に連結され、自転することで前記ロック機構の状態を切り替える回転軸を備え、前記インジケータは、表示窓が形成されたベースと、前記ロック状態を示すロック画像と前記解除状態を示す解除画像とが付された表示プレートであって、前記表示窓を介して前記ロック画像が外部に露出するロック位置と、前記表示窓を介して前記解除画像が外部に露出する解除位置と、の間で移動可能に構成された表示プレートと、前記回転軸の回転運動を前記表示プレートに伝達することで、前記表示プレートを前記ロック位置と前記解除位置との間で移動させる伝達機構と、を備えてもよい。
【0014】
かかる構成とすることで、ロック機構の状態と、インジケータの表示と、を簡易な構成で、連携させることができる。
【0015】
この場合、前記伝達機構は、前記表示プレートを、前記ロック位置および前記解除位置の一方に向かって付勢する付勢部材と、前記回転軸に機械的に連結され、前記回転軸とともに回転する押圧体であって、前記回転軸が正転または逆転した場合に、前記表示プレートを、前記付勢部材の付勢力に抗して前記ロック位置および前記解除位置の他方に向かって押圧する押圧体と、を備えてもよい。
【0016】
かかる構成とすることで、回転軸の回転を、確実に表示プレートに伝達できる。
【0017】
また、前記インジケータは、さらに、前記ロック機構の状態を検知し、検知結果に応じた電気信号を出力するロックセンサと、前記ロックセンサからの前記電気信号に応じて、表示内容を切り替える表示器と、を備えてもよい。
【0018】
電気的なインジケータとすることで、インジケータの配置の自由度が向上する。
【0019】
また、さらに、所定の色を持つベースを備え、前記インジケータは、前記ベース内に規定された表示エリアにおいて、前記ロック状態を示すロック画像と、前記解除状態を示す解除画像と、を切り替えて表示し、前記解除画像の背景の色は、前記ベースの色の反対色であり、前記ロック画像の背景の色は、前記ベースの色の類似色でもよい。
【0020】
上記構成によれば、解除されていることを示す解除画像を、暗所でも容易に視認できるため、「解除されているのにロックしていると誤認」することが効果的に防止できる。
【0021】
この場合、前記ロック画像は、第一の色の背景と、第二の色で描かれた文字または図形である主要図と、を含み、前記解除画像は、前記第二の色の背景と、前記第一の色で描かれた文字または図形である主要図と、を含み、前記第一の色は、前記第二の色の反対色でもよい。
【0022】
解除画像およびロック画像を、互いに反対色となる2色で構成することで、利用者は、解除画像とロック画像のいずれが表示されているかを、直感的に、明確に認識できる。
【0023】
また、前記医療機器は、超音波診断装置であって、前記超音波診断装置は、さらに、超音波診断装置の本体部と、前記本体部の前面に設けられ、超音波プローブのコネクタが接続される1以上の接続端子と、前記本体部の下端から手前側に延びるベースと、前記本体部の上端近傍に設けられ、前記1以上の接続端子および前記ベースを照らす補助光源と、を備え、前記インジケータは、前記ロック機構の状態が表示される表示エリアを有し、前記表示エリアは、前記ベースに配置されてもよい。
【0024】
かかる構成とすることで、暗所でも、インジケータを視認しやすい。また、補助光源、接続端子、および、インジケータを、上記配置とすることで、一つの補助光源で、接続端子およびインジケータの双方を照らすことができる。
【発明の効果】
【0025】
本明細書で開示する医療機器によれば、利用者は、駆動キャスタがロック状態および解除状態のいずれであるかをより簡易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】超音波診断装置の斜視図である。
図2】ロック機構の動作を説明する模式図である。
図3】表示エリア周辺の概略的な分解斜視図である。
図4A】伝達機構の動きを示す模式図である。
図4B】伝達機構の動きを示す模式図である。
図4C】伝達機構の動きを示す模式図である。
図4D】伝達機構の動きを示す模式図である。
図5】解除画像およびロック画像の一例を示す図である。
図6】電気的要素を有するインジケータの模式的な断面図である。
図7】ロックセンサおよび表示器を有するインジケータの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、超音波診断装置10の構成について図面を参照して説明する。図1は、超音波診断装置10の概略的な斜視図である。超音波診断装置10は、被検体(例えば生体)に対して超音波の送受波を行い、これにより得られた受信信号に基づいて断層画像などの超音波画像を形成する装置であり、医療機器の一種である。
【0028】
超音波診断装置10は、本体部12と、操作パネル14と、ディスプレイ16と、を有する。本体部12は、超音波診断装置10の主要部であり、操作パネル14およびディスプレイ16を支持する土台となる。具体的には、本体部12は、超音波診断装置10の動作を制御するコントローラ(図示せず)と、当該コントローラを収容する筐体と、筐体を覆う樹脂製の外装カバーと、を含む。本体部12の前面には、超音波プローブ17のコネクタが電気的に接続される接続端子20が形成されている。
【0029】
操作パネル14は、利用者からの操作入力を受け付ける。操作パネル14は、例えば、各種の操作ボタンやトラックボールなどを含む。ディスプレイ16は、超音波画像や各種の情報を表示するものである。図1の例において、ディスプレイ16は、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイである。操作パネル14およびディスプレイ16は、いずれも、多関節アーム(図示せず)に取り付けられている。そして、利用者は、当該多関節アームの姿勢を変更することで、操作パネル14およびディスプレイ16の位置および姿勢を自由に変更できる。
【0030】
本体部12には、複数の駆動キャスタ24が取り付けられている。図1の例では、超音波診断装置10の前部に、二つの駆動キャスタ24が取り付けられ、超音波診断装置10の後部に、二つの駆動キャスタ25が取り付けられている。各駆動キャスタ24,25は、いずれも、回転および旋回が可能となっている。そして、かかる駆動キャスタ24,25を設けることで、超音波診断装置10の位置が自由に変更される。
【0031】
超音波診断装置10には、さらに、前側の駆動キャスタ24の動きをロックするロック機構30が設けられている。ロック機構30は、駆動キャスタ24一つにつき、一つ設けられている。ロック機構30は、駆動キャスタ24の動きをロックしたロック状態と、駆動キャスタ24の動きを許容した解除状態と、に切り替え可能である。こうしたロック機構30の状態は、超音波診断装置10の下部に設けられたロックペダル26を操作することにより切り替わる。
【0032】
このロック機構30について、図1図2を参照して簡単に説明する。図2は、ロック機構30の動作を説明する模式図である。図1に示す通り、本体部12の下部には、前方に張り出すベース22が接続されている。このベース22は、樹脂からなる化粧パネルである。ベース22の下側には、車幅方向に延びる回転軸34が配置されている。回転軸34は、幅方向に平行な軸回りに回転可能な状態で、ベース22に取り付けられている。なお、回転軸34は、単一の軸部材で構成されてもよいし、複数の軸部材を連結されて構成されてもよい。いずれにしても、回転軸34は、その全体が、一体的に回転する。
【0033】
ロックペダル26は、ブラケット32を介して回転軸34に機械的に固着されている。そのため、ロックペダル26の揺動に連動して、回転軸34も回転する。このロックペダル26の揺動は、回転軸34を介してロック機構30に伝達される。
【0034】
図2は、ロック機構30の構成を示す模式図である。ロック機構30は、ロックカム46と、昇降軸56と、旋回ロックプレート58と、固定プレート64と、回転ロックプレート60と、ロック歯車62と、を有する。ロックカム46は、回転軸34の端部に固着され、回転軸34とともに回転するカムである。このロックカム46の周面には、カム溝48とストッパ溝50と、が形成されている。回転軸34およびロックカム46が、図2の左図に示す角度位置にある場合、駆動キャスタ24の回転および旋回が許容された解除状態となる。以下では、図2の左図における回転軸34の角度を、「初期角度」と呼ぶ。初期角度において、カム溝48は、回転軸34の中心からみて真下に位置する。
【0035】
昇降軸56は、回転軸34、ひいては、ロックカム46に回転に伴い昇降する。具体的に説明すると、昇降軸56は、スプリング57により、上方に付勢されている。また、昇降軸56の上部の周面からは、当接ピン54が突出している。この当接ピン54は、スプリング57の付勢力により、ロックカム46の周面に当接する。
【0036】
図2の左図に示すように、回転軸34が初期角度にある場合、当接ピン54は、カム溝48に進入する。一方、図2の右図に示すように、回転軸34が、初期角度から回転すると、ロックカム46は、当接ピン54を乗り越えるように、回転する。これにより、当接ピン54、ひいては、昇降軸56が、下方に押圧される。結果として、昇降軸56が、スプリング57の付勢力に抗して、下降する。昇降軸56が十分に下降した場合、駆動キャスタ24の回転および旋回が禁止されたロック状態となる。以下では、図2の左図における回転軸34の角度を「ロック角度」と呼ぶ。また、以下では、初期角度からロック角度に近づく方向の回転を「正転」と呼び、ロック角度から初期角度に近づく方向の回転を「逆転」と呼ぶ。
【0037】
ストッパピン52は、ロックカム46のうちストッパ溝50の内部に位置し、位置不変のピンである。回転軸34の回転に伴い、ストッパピン52がストッパ溝50の周方向端部に当接することで、回転軸34の更なる回転が規制される。
【0038】
固定プレート64は、駆動キャスタ24とともに旋回するプレートである。この固定プレート64には、旋回ロックプレート58が進入可能なロック孔66が形成されている。旋回ロックプレート58は、昇降軸56の周面に固着され、昇降軸56とともに昇降可能なプレートである。回転軸34が初期角度にある場合、旋回ロックプレート58は、ロック孔66より上方に位置する。一方、回転軸34がロック角度にある場合、旋回ロックプレート58は、図2の右図に示すように、ロック孔66内に位置する。旋回ロックプレート58がロック孔66に進入している場合、両者が干渉しあうため、駆動キャスタ24の旋回が規制される。
【0039】
ロック歯車62は、駆動キャスタ24に固定され、駆動キャスタ24とともに回転する歯車である。回転ロックプレート60は、昇降軸56の下側に配置され、位置不変の軸を中心に揺動するプレートである。この回転ロックプレート60の一端は、昇降軸56が接触する力点Paとなり、他端は、ロック歯車62に係合する作用点Pbとして機能する。
【0040】
図2の左図に示すように、回転軸34が初期角度にある場合、回転ロックプレート60の作用点Pbは、ロック歯車62から完全に離れており、ロック歯車62および駆動キャスタ24は、自由に回転できる。一方、図2の右図に示すように、回転軸34がロック角度にある場合、回転ロックプレート60の作用点Pbは、ロック歯車62に係合する。この場合、ロック歯車62および駆動キャスタ24の回転が禁止される。
【0041】
以上の説明で明らかな通り、回転軸34は、ロック機構30と機械的に連結されており、回転軸34の回転に伴い、駆動キャスタ24の回転および旋回が、ロックまたはロック解除される。なお、こうしたロック機構30の構成は一例であり、回転軸34の回転に伴い、ロック状態および解除状態に切り替わるのであれば、ロック機構30の構成は、適宜、変更されてもよい。
【0042】
ところで、これまでの説明で明らかな通り、ロック機構30は、ロックペダル26を踏み込み、または、踏み戻し操作することで、状態が切り替わる。そのため、ロックペダル26の角度を視認すれば、ロック機構30の状態を、一応、把握できる。しかし、ロックペダル26の角度だけで、ロック機構30の状態を把握するためには、利用者が、予め、ロックペダル26の角度とロック機構30の状態との対応関係を正確に理解しておく必要がある。しかし、利用者が、そうした対応関係を理解するためには、ある程度の慣れが必要であった。また、ある程度慣れたとしても、ロックペダル26の角度を見ても、ロック機構30の状態を直感的に把握することは難しい。結果として、従来、利用者が、ロック機構30の状態を把握するために時間が掛かったり、ロック機構30の状態を誤認したりすることがあった。
【0043】
そこで、本明細書で開示する超音波診断装置10は、ロック機構30の状態を利用者に提示するインジケータ70を有している。インジケータ70は、ロック機構30の状態を表示する表示エリア72を有する。図1の例において、表示エリア72は、ベース22の幅方向中心付近に配置されている。換言すれば、表示エリア72は、ロックペダル26と前後方向に隣接する位置において、上向きに配置されている。かかる配置とすることで、利用者がロックペダル26を操作するためにロックペダル26を見た場合、表示エリア72も同時に視界に入りやすくなる。その結果、利用者は、ロックペダル26の操作の前に、ロック機構30の現在の状態を容易に把握できる。
【0044】
図3は、表示エリア72周辺の概略的な分解斜視図である。図3に示す通り、ベース22には、略矩形の貫通孔である表示窓74が、形成されている。この表示窓74が、インジケータ70の表示エリア72として機能する。
【0045】
ベース22の下側には、表示プレート76が、配置されている。この表示プレート76は、前後方向にスライド可能な状態で、超音波診断装置10に取り付けられている。より具体的に説明すると、表示プレート76の底面からは、複数のリブ77が立脚している。このリブ77の幅方向外側端部からは、ガイドピン84が突出している。
【0046】
表示プレート76の幅方向両側には、一対のサポートプレート88が、配置されている。サポートプレート88は、ベース22に対して固定されている。また、サポートプレート88には、前後方向に長尺なガイド孔90が形成されている。このガイド孔90にガイドピン84が挿通される。これにより、表示プレート76の前後方向への移動が、ガイドされる。
【0047】
表示プレート76の上面には、ロック機構30の状態を示す二つの画像、すなわちロック画像78と解除画像80とが前後方向に並んで描かれている。ロック画像78は、ロック機構30がロック状態であることを示す画像である。図3の例の場合、ロック画像78は、施錠された鍵のピクトグラムを含む。解除画像80は、ロック機構30が解除状態であることを示す画像である。図3の例の場合、解除画像80は、解錠された鍵のピクトグラムを含む。
【0048】
インジケータ70は、こうした表示プレート76を、回転軸34の回転に連動してスライド移動させる伝達機構82を含む。図4A図4Dは、伝達機構82の動きを示す模式図である。なお、図4A図4Dは、インジケータ70近傍を幅方向に直交する面で切断した断面図である。
【0049】
上述した通り、ロックペダル26は、ブラケット32を介して回転軸34に連結されており、ロックペダル26、ブラケット32、および回転軸34は、一体的に回転する。伝達機構82は、この回転軸34の回転運動を、直線運動に変換して、表示プレート76に伝達する。かかる伝達機構82は、ブラケット32に固着された押圧体33と、スライド用スプリング92と、を有する。押圧体33は、表示プレート76のリブ77と前後方向に並ぶ位置にあり、リブ77、ひいては、表示プレート76を後方(すなわち図4における紙面右方向)に押圧する。
【0050】
スライド用スプリング92は、表示プレート76を、前方(すなわち図4における紙面左方向)に付勢する。このスライド用スプリング92の一端は、ベース22に取り付けられ、他端は、表示プレート76に取り付けられている。
【0051】
図4Aは、回転軸34が初期角度にある場合、すなわち、ロック機構30が解除状態にある場合の様子を示している。この場合、表示プレート76は、スライド用スプリング92の付勢力により、前側(すなわち紙面左側)に位置している。このとき、表示プレート76の解除画像80が、表示窓74の真下に位置している。したがって、この場合、利用者は、表示窓74を介して解除画像80を視認できる。なお、以下では、回転軸34が初期角度にあるときの表示プレート76の位置を「解除位置」と呼ぶ。
【0052】
その後、ロックペダル26が操作され、回転軸34が、初期角度から徐々に正転したとする。この場合、図4Bに示すように、ブラケット32の上部に設けられた押圧体33は、徐々に、後方に移動する。この押圧体33に押されて、表示プレート76も後方に移動する。そして、回転軸34がロック角度まで回転すると、図4Cに示すように、ロック画像78が表示窓74の真下に位置する。これにより、利用者は、表示窓74を介してロック画像78を視認できる。なお、以下では、回転軸34がロック角度にあるときの表示プレート76の位置を「ロック位置」と呼ぶ。
【0053】
なお、回転軸34は、初期角度およびロック角度でラッチされる。このラッチを可能にするために、回転軸34には、さらに、当該回転軸34とともに回転するラッチプレート38が固着されている。ラッチプレート38には、ラッチピン36が設けられている。また、サポートプレート88には、所定の支持軸40を中心に揺動するラッチカム41が、取り付けられている。ラッチカム41、図示しないスプリングにより、矢印A方向に付勢されている。また、ラッチカム41の外形は、大きく波打っており、この波形状により、ラッチピン36が嵌り込む第一ラッチ溝42および第二ラッチ溝44が形成されている。回転軸34の回転に伴い、ラッチピン36が、第一ラッチ溝42または第二ラッチ溝44に嵌まり込むことで、解除状態またはロック状態が維持される。なお、ロック状態において(すなわち図4Cの状態において)、ロックペダル26を踏むとラッチが解除され、図4Dに示すように、回転軸34は、一時的に、ロック角度から、さらに正転する。そして、ラッチが完全に解除されれば、初期角度まで逆転する。
【0054】
以上の説明で明らかな通り、本例によれば、回転軸34の回転に連動して表示プレート76がスライド移動する。そして、これにより、表示窓74に表示される画像が切り替わる。その結果、利用者は表示窓74に表示される画像を視認することで、ロック機構30の状態を直感的に把握できる。
【0055】
また、本例の場合、回転軸34の回転は、伝達機構82を介して、表示プレート76に機械的に伝達される。そのため、表示プレート76の位置を、回転軸34の状態、ひいては、ロック機構30の状態と確実かつ正確に同期させることができる。換言すれば、インジケータ70の表示が、ロック機構30の状態と一致しない問題を確実に防止できる。
【0056】
また、これまでの説明で明らかな通り、本例では、機械的な機構をのみで、インジケータ70の表示を切り替えている。換言すれば、上述したインジケータ70は、電気的な構成が不要である。その結果、インジケータ70全体の構成を簡易化できる。また、この場合、超音波診断装置10の電源がOFFされているような状態でも、インジケータ70を適切に切り替えることができる。
【0057】
次に、表示プレート76に描かれている解除画像80およびロック画像78について説明する。図5は、解除画像80およびロック画像78の一例を示す図である。解除画像80は、主要図80aと、背景80bと、を含む。背景80bは、線や図形を含まない無地の領域である。主要図80aは、背景80b以外の部分で、文字または図形で構成される。図5の例では、解錠された鍵のピクトグラムが、主要図80aに該当する。同様に、ロック画像78も、主要図78aと、背景78bと、を含む。図5の例では、施錠された鍵のピクトグラムが、主要図78aに該当する。
【0058】
ここで、解除画像80の主要図80aの色を「第一の色」、背景80bの色を「第二の色」とした場合、ロック画像78の主要図78aは、第二の色であり、背景78bは、第一の色である。すなわち、解除画像80およびロック画像78は、主要図の色および背景の色が、互いに反転している。また、第二の色を第一の色の反対色としている。かかる構成とすることで、利用者は、解除画像80とロック画像78と明確に区別することができ、ロック機構30の状態を、より直感的に把握できる。なお、反対色とは、対立する性質を持つ色のことである。例えば、反対色とは、色相、明度、および、彩度の少なくとも一つが対立する色である。
【0059】
また、本例では、第二の色(すなわち解除画像80の背景80bの色)を、第一の色(すなわちロック画像78の背景78bの色)よりも高明度としている。例えば、第一の色が、黒色であり、第二の色が白色である。かかる構成とする理由について説明する。
【0060】
まず、ロック機構30が、現実には、ロック状態であるのに、利用者が解除状態であると誤認した場合を考える。この場合、利用者が、超音波診断装置10を動かそうとしても、動かないことになるが、これ自体は、大きな問題とならない。一方、ロック機構30が、現実には解除状態であるのに、利用者がロック状態であると誤認した場合を考える。この場合、利用者が、超音波診断装置10が動かないと想定して、超音波診断装置10に力を加えてしまい、超音波診断装置10が予想外に動くおそれがある。こうした超音波診断装置10の意に反した動きは、様々な問題を招く。そこで、ロック機構30が解除状態の場合には、そのことが利用者により確実に伝わるように、本例では、解除画像80の背景80bの色を、ロック画像78の背景78bの色より高明度とし、暗い環境下でも目立つようにしている。
【0061】
また、本例では、第二の色(すなわち解除画像80の背景80bの色)を、ベース22の色の反対色としている。例えば、図5の例の場合、ベース22は、グレー、すなわち、第一の色の類似色であり、第二の色は、白色である。かかる構成とすることで、解除画像80の視認性がより向上する。結果として、解除状態であるのにロック状態であると誤認することを効果的に防止できる。
【0062】
なお、当然ながら、これまで説明した解除画像80およびロック画像78の形態は、適宜変更されてもよい。例えば、上述の説明では、主要図80a,78aを、鍵のピクトグラムとしているが、主要図80a,78aは、他の図形や、文字でもよい。また、主要図80a,78aおよび背景80b,78bの色の組み合わせも適宜変更されてもよい。
【0063】
また、解除画像80およびロック画像78の形態に限らず、その他の構成も適宜、変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、インジケータ70の表示エリア72を、ロックペダル26の近傍に設けている。しかし、表示エリア72は、他の場所に設けられてもよい。この場合、表示エリア72を、回転軸34の幅内に配置してもよい。かかる構成とすることで、回転軸34の回転を、簡易な構成で、表示エリア72に伝達できる。また、表示エリア72は、真上に限らず、他の方向に向けてもよい。例えば、表示エリア72は、手前かつ上方報に向かう斜め上前方向に向く姿勢で配置されてもよい。かかる姿勢であっても、利用者は、表示エリア72を容易に視認できる。
【0064】
また、超音波診断装置10に、さらに、接続端子20を照らす補助光源28(図1参照)を設けてもよい。かかる補助光源28は、例えば、本体部12の前面かつ上端近傍に配置されてもよい。超音波診断装置10は、暗所で使用されることが多いが、かかる補助光源28を設けることで、利用者は、暗所であっても、接続端子20を、明確に視認できる。また、本例では、表示エリア72を、本体部12の下端から手前側に延びるベース22に設けている。これにより、補助光源28で、接続端子20だけでなく、表示エリア72も照らすことができる。結果として、接続端子20を照らす補助光源28を設けることで、表示エリア72の視認性も向上できる。
【0065】
また、これまでの説明では、インジケータ70は、機械的な要素のみで構成されている。しかし、必要に応じて、インジケータ70は、電気的な要素を有してもよい。例えば、表示プレート76の下側に、光源94を配置し、表示プレート76を下方から照らし出すようにしてもよい。図6は、この場合における表示プレート76の模式的な断面図である。図6に示すように、この場合、表示プレート76には、部分的に、または、全体的に、光が通過する導光路76aが形成されている。導光路76aは、例えば、貫通孔でもよいし、貫通孔に埋め込まれた透光性素材(例えば透明樹脂等)でもよい。また、表示プレート76を、光が透けて見える程度まで、局所的に薄肉にして導光路76aを形成してもよい。さらに、表示プレート76全体を、透光性素材で構成し、これにより、表示プレート76全体を導光路76aとして機能させてもよい。
【0066】
表示プレート76の背後には、光源94が配置されている。光源94は、特に限定されないが、例えば、光源94は、基板に1以上のLED素子が実装されたLED基板でもよい。この光源94が点灯することで、表示プレート76のロック画像78および解除画像80が照らし出される。そして、これにより、暗所におけるインジケータ70の視認性をより向上できる。
【0067】
なお、光源94への電力供給は、超音波診断装置10の電源装置によって行ってもよいし、光源94のために、超音波診断装置10とは独立したバッテリ(例えば乾電池等)を設けてもよい。独立したバッテリを設けることで、超音波診断装置10の電源がOFFされた場合でも、インジケータ70を適切に照らすことができる。
【0068】
また、別の形態として、インジケータ70は、ロック機構30の状態を検知し、検知結果に応じた電気信号を出力するロックセンサ95と、ロックセンサ95からの電気信号に応じて、表示内容を切り替える表示器98と、を有してもよい。ロックセンサ95は、例えば、回転軸34の回転角度を検知するエンコーダでもよい。また、別の形態として、ロックセンサ95は、回転軸34が所定の回転角度に達した場合にONされるスイッチでもよい。例えば、ロックセンサ95は、図7に示すように、第一スイッチ96aと第二スイッチ96bとを含んでもよい。この場合、第一スイッチ96aは、解除状態において、回転軸34の回転に連動して動く機械要素(図示例ではラッチプレート38)に接触して、ONされる位置に配置されている。また、第二スイッチ96bは、ロック状態において、回転軸34の回転に連動して動く機械要素(図示例ではロックペダル26)に接触して、ONされる位置に配置されている。
【0069】
表示器98は、電気的な信号に応じて、表示内容を切り替えられるものであれば特に限定されない。例えば、表示器98は、ロックセンサ95からの出力信号に応じて表示内容を切り替えるディスプレイを含んでもよい。また、別の形態として、表示器98は、ロックセンサ95からの出力信号に応じて、点灯状態を切り替える複数の光源94a,94bを含んでもよい。例えば、表示器98は、図7に示すように、表示プレート76と、解除画像80を照らす第一光源94aと、ロック画像78を照らす第二光源94bと、を含んでもよい。この場合、第一光源94aは、解除画像80の裏側に配置され、第二光源94bは、ロック画像78の裏側に配置される。また、第一光源94aと第二光源94bとの間には、遮光板99が配置される。
【0070】
そして、第一光源94aは、第一スイッチ96aがONされた場合にのみ点灯し、第二光源94bは、第二スイッチ96bがONされた場合にのみ点灯する。これにより、ロック機構30の状態に応じて、適切な画像78,80が照らし出されるため、利用者は、ロック機構30の状態をより容易に把握できる。
【0071】
なお、この場合、表示プレート76は、スライド移動せず、表示窓74に対して位置不変とする。その場合、表示窓74は、ロック画像78および解除画像80の双方を外部に露出させる大きさとなる。かかる構成とすることで、表示プレート76を移動させる機構が不要となるため、回転軸34周辺の機械的構成を簡易化できる。
【0072】
ところで、この場合、表示プレート76を含む表示器98に、回転軸34の回転運動を、機械的に伝達する必要はなく、表示器98を回転軸34の近傍に配置する必要はない。したがって、この場合、表示器98は、回転軸34から離れた場所、例えば、操作パネル14に配置されてもよい。
【0073】
また、これまでの説明では、超音波診断装置10に組み込まれるインジケータ70を例に挙げて説明した。しかし、本明細書で開示するインジケータ70は、超音波診断装置10に限らず、キャスタ移動式の他の医療機器に組み込まれてもよい。例えば、インジケータ70は、キャスタ移動式のX線診断装置等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 超音波診断装置、12 本体部、14 操作パネル、16 ディスプレイ、17 超音波プローブ、20 接続端子、22 ベース、24,25 駆動キャスタ、26 ロックペダル、28 補助光源、30 ロック機構、32 ブラケット、33 押圧体、34 回転軸、36 ラッチピン、38 ラッチプレート、40 支持軸、41 ラッチカム、42 第一ラッチ溝、44 第二ラッチ溝、46 ロックカム、48 カム溝、50 ストッパ溝、52 ストッパピン、54 当接ピン、56 昇降軸、57 スプリング、58 旋回ロックプレート、60 回転ロックプレート、62 ロック歯車、64 固定プレート、66 ロック孔、70 インジケータ、72 表示エリア、74 表示窓、76 表示プレート、76a 導光路、77 リブ、78 ロック画像、78a,80a 主要図、78b,80b 背景、80 解除画像、82 伝達機構、84 ガイドピン、88 サポートプレート、90 ガイド孔、92 スライド用スプリング、94 光源、95 ロックセンサ、96a 第一スイッチ、96b 第二スイッチ、98 表示器、99 遮光板。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7