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  • 特開-ケーキドーナツの食感改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170960
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ケーキドーナツの食感改善剤
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/14 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A21D2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087752
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】角 直亮
(72)【発明者】
【氏名】山内 優輝
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK05
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK47
4B032DL03
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP47
(57)【要約】
【課題】表面と内部の食感が改善されたケーキドーナツを提供する。
【解決手段】ケーキドーナツの食感改善剤として五環性トリテルペンを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
五環性トリテルペンを有効成分として含有する、ケーキドーナツの食感改善剤。
【請求項2】
五環性トリテルペンが、オレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン及びホパン型トリテルペンからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の食感改善剤。
【請求項3】
五環性トリテルペンが、マスリン酸及び/又はオレアノール酸である、請求項1に記載の食感改善剤。
【請求項4】
穀粉と、請求項1に記載の食感改善剤とを含有する、ケーキドーナツ用プレミックス。
【請求項5】
100質量部の穀粉に対して0.05質量部以上の五環性トリテルペンを含有する、請求項4に記載のケーキドーナツ用プレミックス。
【請求項6】
請求項1に記載の食感改善剤又は請求項4に記載のプレミックスを含有する、ケーキドーナツ用生地。
【請求項7】
請求項6に記載のケーキドーナツ用生地を加熱する工程を含む、ケーキドーナツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキドーナツの食感改善剤として五環性トリテルペンを用いることを特徴とする発明に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツは、イーストドーナツとケーキドーナツとに分類される。
ケーキドーナツは、イースト(パン酵母)の代わりに膨張剤を用いて調製した生地を加熱して製造される。
ケーキドーナツへサクサクとした食感を付与するために、特定の熱処理を施したデュラム小麦粉を使用することが知られている(特許文献1)。
サクサクとした食感を得るために生地の配合を調節すると、生地のつながりが悪化することがある。例えば、生地におけるコーンフラワー又はデュラムセモリナの含有量が多くなると、フライ時にケーキドーナツに割れが生じることが知られている(特許文献2)。
グルテンフリーのドーナツにもっちり感を付与するために、こんにゃく粉と海藻粉末を用いることが知られている(特許文献3)。
【0003】
五環性トリテルペンは様々な生理活性を有する。例えば、五環性トリテルペンの1種であるマスリン酸には、抗肥満作用(非特許文献1)や脂質代謝改善作用(非特許文献2)があることが知られている。
五環性トリテルペンの食品への応用が試みられている。例えば、食品原料のグリセミック指数を低減するためにマスリン酸等のトリテルペンを用いること(特許文献4)や、皮膚の美白用飲食物の有効成分としてマスリン酸等の五環性トリテルペンを用いること(特許文献5)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-220049号公報
【特許文献2】特開2022-135350号公報
【特許文献3】特開2019-71812号公報
【特許文献4】特開2006-121949号公報
【特許文献5】国際公開第02/43736号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FASEB J. 2019 Nov; 33(11): 11791-11803
【非特許文献2】Phytomedicine. 2016 Nov 15;23(12):1301-1311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面と内部の食感が改善されたケーキドーナツを提供することである。
【0007】
この課題を鋭意検討した結果、本発明者は、五環性トリテルペンを配合すると、ケーキドーナツの表面の食感(サクサク感)と内部の食感(もっちり感)の双方が向上することを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。本発明は、以下の態様を提供する。

〔1〕五環性トリテルペンを有効成分として含有する、ケーキドーナツの食感改善剤。
〔2〕五環性トリテルペンが、オレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン及びホパン型トリテルペンからなる群より選択される1種以上である、前記〔1〕に記載の食感改善剤。
〔3〕五環性トリテルペンが、マスリン酸及び/又はオレアノール酸である、前記〔1〕に記載の食感改善剤。
〔4〕穀粉と、前記〔1〕に記載の食感改善剤とを含有する、ケーキドーナツ用プレミックス。
〔5〕100質量部の穀粉に対して0.05質量部以上の五環性トリテルペンを含有する、前記〔4〕に記載のケーキドーナツ用プレミックス。
〔6〕前記〔1〕に記載の食感改善剤又は前記〔4〕に記載のプレミックスを含有する、ケーキドーナツ用生地。
〔7〕前記〔6〕に記載のケーキドーナツ用生地を加熱する工程を含む、ケーキドーナツの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面からはサクサクとした食感を、かつ、内部からはもっちりとした食感を楽しむことができるケーキドーナツを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、製造例1の食感改善剤1のHPLCチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔ケーキドーナツ〕
ドーナツは、食感や製法の違いに基づいてイーストドーナツとケーキドーナツとに分類される。
パン様の食感を有するイーストドーナツは、パン酵母で発酵させて調製した生地を加熱して製造される。
ケーキ様の食感を有するケーキドーナツは、パン酵母の代わりに膨張剤(ベーキングパウダー等)を用いて調製した生地を加熱して製造される。
本発明は、ケーキドーナツを対象とする。
【0011】
〔ケーキドーナツの食感改善〕
ケーキドーナツの食感改善とは、ケーキドーナツの表面と内部の双方の食感を改善することをいう。具体的には、ケーキドーナツの表面にサクサクとした食感(サクみ)を付与し、かつ、ケーキドーナツの内部にもっちりとした食感を付与することをいう。
【0012】
〔ケーキドーナツの食感改善剤〕
本発明のケーキドーナツの食感改善剤(以下、「食感改善剤」ともいう)は、有効成分として五環性トリテルペンを含有する。
【0013】
〔五環性トリテルペン〕
五環性トリテルペンとは、6個のイソプレン単位から成るトリテルペンのうち、五環性の化合物をいう。
五環性トリテルペンの炭素数は30を基本とするが、その生合成過程で転位、酸化、脱離又はアルキル化されることで30前後の炭素数を有していてもよい。
五環性トリテルペンは、その骨格に基づいて、オレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン、ホパン型トリテルペン、セラタン型トリテルペン、フリーデラン型トリテルペン、タラキセラン型トリテルペン、タラキサスタン型トリテルペン、マルチフロラン型トリテルペンや、ジャーマニカン型トリテルペン等に分類できる。
本発明では、食品へ配合可能な五環性トリテルペンを特に制限なく使用できる。
食感改善剤に用いる五環性トリテルペンは、好ましくは、オレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン及びホパン型トリテルペンであり、より好ましくはオレアナン型トリテルペンである。
オレアナン型トリテルペンの例としては、マスリン酸やオレアノール酸等が挙げられる。
ウルサン型トリテルペンの例としては、コロソリン酸やウルソール酸等が挙げられる。
ルパン型トリテルペンの例としては、ベツリン酸やアルフィトール酸等が挙げられる。
ホパン型トリテルペンの例としては、ロイコチル酸等が挙げられる。
【0014】
五環性トリテルペンは単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
好ましい態様では、2種類以上のオレアナン型トリテルペンを併用する。
より好ましい態様では、マスリン酸とオレアノール酸とを併用する。
【0015】
五環性トリテルペンは公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか又は調製可能である。例えば、マスリン酸及びオレアノール酸はオリーブ果実から抽出できる。
【0016】
本発明のケーキドーナツの食感改善剤は、上記五環性トリテルペンを含有する。ケーキドーナツ食感改善剤は、五環性トリテルペンのみから成っていてもよく、他の成分を含んでいてもよい。
食感改善剤の性状は、固体状及び液体状のいずれでもよいが、固体状が好ましい。固体状の食感改善剤は、後述するケーキドーナツ用のプレミックス(調製粉)や生地を調製する際の作業性を向上させる観点で粉末状であることが好ましい。そのような態様として、五環性トリテルペンと包接化合物、担体、油脂、乳化剤、賦形剤等との混合物であることが好ましい。例えば、サイクロデキストリンや高度分岐環状デキストリン等の包接化合物に五環性トリテルペンを包接させた包接組成物;穀粉や澱粉等の可食性担体に五環性トリテルペンを担持させた担持体組成物;食用油脂に五環性トリテルペンを溶解又は分散させた油脂溶体組成物;五環性トリテルペンを溶解又は分散させた油脂と水分と乳化剤とのW/O型又はO/W型乳化組成物;精製水、アルコール、グリセリン、デキストリン、乳糖、マンニトール、澱粉、水飴、蜂蜜等の賦形剤と五環性トリテルペンとの賦形組成物として用いることができる。
ケーキドーナツの食感改善剤における五環性トリテルペンの含有量は特に制限されるものではなく、ケーキドーナツを製造した際に本発明の効果が得られるように適宜調節することができ、所望する食感改善の程度に応じて適宜設定できる。
【0017】
〔ケーキドーナツ用プレミックス〕
本発明のケーキドーナツ用プレミックス(以下、「プレミックス」ともいう)は、前述の食感改善剤を含有する。
プレミックスに含まれる食感改善剤以外の原材料としては、一般的なケーキドーナツ用プレミックスに用いられている原材料を特に制限なく使用できる。
プレミックスの原材料の例としては、穀粉(主原料)と副原料が挙げられる。
穀粉の例としては、普通小麦、デュラム小麦、ライ麦、大麦、米、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物に由来する穀粉が挙げられる。
副原料の例としては、塊茎粉又は塊根粉(例えば、穀物に準ずる主食となる農作物(馬鈴薯、里芋、キャッサバ、甘藷、山芋等)に由来するもの);澱粉(穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製されたもの。例えば、小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉);変性澱粉(α化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等及びこれらの組合せによる変性処理を施した澱粉);糖類(ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトース、グラニュー糖等);卵成分(卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものや、その他の卵由来成分);乳成分(粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等);油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、パーム油、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油、アマニ油等);乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等);膨張剤(ベーキングパウダー、重曹等);増粘多糖類(キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、グアガム、タマリンドガム、アラビアガム等);セルロース誘導体(メチルセルロース等);無機塩類(食塩等);保存料;香料;香辛料;ビタミン;強化剤(カルシウム等);調味料;酸性剤;色素等が挙げられる。
プレミックスは、公知の方法に従い製造できる。例えば、食感改善剤と、穀粉と、副原料とを、ミキサーで混合することで製造できる。
【0018】
プレミックスにおける五環性トリテルペンの含有量は特に制限されず、所望する食感改善の程度に応じて適宜設定できる。
例えば、プレミックスに含まれる穀粉の質量を基準とした場合、五環性トリテルペンの含有量は、穀粉100質量部に対して0.05質量部以上、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.35質量部以上、より更に好ましくは0.45質量部以上である。
五環性トリテルペンの含有量の上限は、食感改善の観点では特に制限されないが、原料使用量の費用対効果の観点から、穀粉100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.70質量部以下である。
【0019】
〔ケーキドーナツ用生地〕
本発明のケーキドーナツ用生地(以下、「生地」ともいう)は、前述の食感改善剤又はプレミックスを含有する。
生地に含まれる食感改善剤以外の原材料としては、一般的なケーキドーナツ用生地に用いられている原材料を特に制限なく使用できる。
生地の原材料の例としては、前述したプレミックスに含まれる粉末原料(穀粉(主原料)及び副原料)の他、液体原料(飲料水や卵液、牛乳等)が挙げられる。
生地は、柔らかく流動性のある「バッター生地」と、比較的硬く可塑性のある「ペースト生地」のいずれでもよい。
生地は、公知の方法に従い製造できる。例えば、食感改善剤と、プレミックス用の粉末原料と、液体原料とを、ミキサーで混合することで製造できる。
【0020】
〔ケーキドーナツの製造方法〕
食感改善剤を含むケーキドーナツは、公知のケーキドーナツ製法に従い製造できる。例えば、前述のケーキドーナツ用生地を加熱工程に供することで製造できる。
加熱方法は特に制限されず、公知の加熱方法の何れも適用できる。
加熱条件は、求めるケーキドーナツの仕様に応じて適宜設定できる。
例えば、リング状に成形した生地を、160~220℃に予熱したフライヤーに投入し、2~15分間フライすることによりケーキドーナツを製造できる。
【実施例0021】
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0022】
〔製造例1:食感改善剤1〕
(1)オリーブ果実をコールドプレス法で搾油して、オリーブ果実搾油粕を得た。
(2)100質量部の搾油粕に、250質量部の90%(v/v)含水エタノールを加え、攪拌しながら70℃で2時間加熱した後、固液分離した。得られた液体部分を、エバポレーターで減圧留去して濃縮液を得た。
(3)水に分散させた濃縮液を、合成吸着樹脂アンバーライトXAD4(オルガノ株式会社)を担体とするカラムクロマトグラフィーに供した。カラム溶出には、ステップワイズ溶出(50%(v/v)含水エタノールから100%エタノールに至る10%刻みの段階溶出)によりトリテルペン高含有画分を分取した。
(4)トリテルペン高含有画分を減圧留去して、液体油状のオリーブ果実抽出物を得た。
(5)100質量部のオリーブ果実抽出物へ、100質量部の20%(v/v)含水エタノールを加えて十分に混合して溶解させ、4℃で一晩静置して析出させた。析出物を濾過により回収し、洗浄し、減圧乾燥後、ピンミルを用いて粉末化して食感改善剤1を得た。
(6)1gの食感改善剤1をメタノールに溶解してHPLC分析に供した。
食感改善剤1には、五環性トリテルペンとして、オレアナン型トリテルペンであるマスリン酸(図1のピークA)とオレアノール酸(図1のピークB)とが含まれていた。
食感改善剤1には、その総質量に対して、50質量%のマスリン酸と30質量%のオレアノール酸(換言すれば、80質量%のオレアナン型トリテルペン)が含まれていた。
なお、HPLCピークの同定は標準品とのリテンションタイムの比較及びLC/MS解析により行い、定量値は標準品のピーク面積を基準にして算出した。
【0023】
〔製造例2:食感改善剤2〕
ステップワイズ溶出に替えてグラディエント溶出(50%(v/v)含水エタノールから100%エタノールに至る勾配溶出)によりマスリン酸高含有画分を得た以外は製造例1と同じ工程を実施して、粉末状の食感改善剤2を製造した。
HPLC分析に供したところ、食感改善剤2には、五環性トリテルペンとしてマスリン酸が含まれていたが、オレアノール酸は含まれていなかった。
食感改善剤2には、その総質量に対して、95質量%のマスリン酸(換言すれば、95質量%のオレアナン型トリテルペン)が含まれていた。
【0024】
〔製造例3:食感改善剤3〕
ステップワイズ溶出に替えてグラディエント溶出(50%(v/v)含水エタノールから100%エタノールに至る勾配溶出)によりオレアノール酸高含有画分を得た以外は製造例1と同じ工程を実施して、粉末状の食感改善剤3を製造した。
HPLC分析に供したところ、食感改善剤3には、五環性トリテルペンとしてオレアノール酸が含まれていたが、マスリン酸は含まれていなかった。
食感改善剤3には、その総質量に対して、80質量%のオレアノール酸(換言すれば、80質量%のオレアナン型トリテルペン)が含まれていた。
【0025】
〔製造例4:ケーキドーナツ〕
(1)下記の配合表1に記載の原材料を、ミキサー(KitchenAid社製、KSM5)に投入し、1速で1分30秒間、2速で1分間混捏して、ケーキドーナツ用生地を得た。
(2)得られた生地をドーナツカッター(ベルショー社製、Fカッター及びプレーンプランジャー)で45gのリング状に分割し、190℃のフライ油で半面ずつ各60秒間(合計120秒間)フライしてケーキドーナツを得た。
食感改善剤を配合したものを実施例、食感改善剤を使用していないものを比較例とした。
【0026】
配合表1
【0027】
〔評価例1:ケーキドーナツの官能評価〕
ケーキドーナツにおける表面の食感(サクサク感)と内部の食感(もっちり感)を、下記の評価基準に従って、熟練パネラー10名により評価した。
【0028】
評価基準
【0029】
この評価基準では、食感改善剤を配合しなかった比較例1の評価点を3点に設定した。
評価平均点が3点以上である場合、食感が改善したと判定した。結果を表1に示す。
表1中、小麦粉、食感改善剤1~3、マスリン酸、オレアノール酸及びOTTの数値は質量部である。OTTは、オレアナン型トリテルペンの略称であり、マスリン酸とオレアノール酸の合計量を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
食感改善剤を配合した全ての実施例で、サクサク感及びもっちり感の双方が改善した。
OTT含量が同じ実施例2(マスリン酸+オレアノール酸)と、実施例6(マスリン酸のみ)と実施例7(オレアノール酸のみ)とを比較したとき、実施例2は、実施例6及び7よりも高い食感改善効果を示した。この結果は、マスリン酸とオレアノール酸とを併用すると、より優れた食感改善効果が得られることを示している。
【0032】
〔参考例:イーストドーナツの製造〕
(1)下記の配合表2に記載の原材料(ショートニングを除く)を、ミキサー(エスケーミキサー社製SK-20型ミキサー)に投入し、フックを使用して1速で2分間、3速で4分間混合した。
(2)ショートニングを加えて更に1速で2分間、3速で8分間混合して生地を得た。
(3)得られた生地を、18℃、相対湿度75%で20分間休ませた後、44g/個となるようにドーナツカッターでリング状に分割成形した。
(4)成形物を、-40℃のバランスフリーザー(ホシザキ社製ブラストチラー&ショックフリーザーHBC-12B3)中で15分間凍結させて、イーストドーナツ用の冷凍生地を得た。
(5)冷凍生地を下記の発酵工程に供し、10分間のラックタイム後に、190℃で片面60秒ずつ(合計120秒間)フライした後に油きりして、イーストドーナツを得た。
食感改善剤1を配合したものを参考例1、食感改善剤を使用しないものを参考例2とした。
【0033】
配合表2
【0034】
冷凍イーストドーナツ生地の発酵工程
【0035】
〔評価例2:イーストドーナツの官能評価〕
イーストドーナツにおける表面の食感(サクサク感)と内部の食感(もっちり感)とを、評価例1と同じ評価基準に従って、熟練パネラー10名により評価した。
この評価基準では、食感改善剤を配合しなかった参考例2の評価点を3点に設定した。
評価平均点が3点以上である場合、食感が改善したと判定した。結果を表2に示す。
【0036】
表2
【0037】
食感改善剤1を配合することで、イーストドーナツのサクサク感及びもっちり感の双方が改善した。但し、食感改善剤によりイーストドーナツの食感を改善するためには、ケーキドーナツへ適用する場合よりも多い配合量が必要であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明はケーキドーナツの製造等に利用可能である。
図1