(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170962
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087757
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大歳 正和
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601LL32
(57)【要約】
【課題】プローブケーブルをより適切に保持できる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置10は、前記超音波診断装置10の外表面である取付面26と、前記取付面26に取り付けられるケーブルフック30と、を備え、前記ケーブルフック30は、閉鎖姿勢と、開放姿勢と、に切り替え可能に構成された可動アーム70を有し、前記可動アーム70は、前記閉鎖姿勢において、前記取付面26との間に、前記プローブケーブル19が挿通可能であるとともに実質的に閉じた輪郭を持つ通過通路32を形成し、前記開放姿勢において、前記輪郭の一部が途切れて、前記通過通路32が開放される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置であって、
前記超音波診断装置の外表面である取付面と、
前記取付面に取り付けられるケーブルフックと、
を備え、前記ケーブルフックは、閉鎖姿勢と、開放姿勢と、に切り替え可能に構成された可動アームを有し、
前記可動アームは、前記閉鎖姿勢において、前記取付面との間に、プローブケーブルが挿通可能であるとともに実質的に閉じた輪郭を持つ通過通路を形成し、前記開放姿勢において、前記輪郭の一部が途切れて、前記通過通路が開放される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記ケーブルフックは、さらに、前記可動アームを、閉鎖方向に付勢するバネを備える、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記ケーブルフックは、さらに、前記取付面に固定され、前記可動アームが揺動可能に連結される固定体を備え、
前記可動アームと前記固定体との連結力は、前記可動アームの限界耐力よりも小さく、
前記可動アームに所定以上の開放方向の力が付加された場合、前記可動アームが、破壊されることなく、前記固定体から分離される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置であって、
前記固定体または前記固定体と前記可動アームとの間に介在する中間部材が、前記可動アームに嵌合されており、
前記可動アームに所定以上の開放方向の力が付加された場合、前記可動アームの一部が、弾性変形して、前記嵌合が解除されることで、前記可動アームが前記固定体から分離される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記可動アームは、前記取付面と略平行な方向に延びる主部と、前記主部の末端から前記取付面に向かう末端部と、を含む、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項2に記載の超音波診断装置であって、
前記可動アームの末端は、弾性材料からなる、または、弾性材料で覆われている、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記開放姿勢における前記可動アームの最大揺動角度をθo、前記可動アームの長尺方向寸法をLa、前記通過通路に挿通される前記プローブケーブルの最大直径をΦとした場合、前記ケーブルフックは、La×sinθo≧Φの条件を満たす、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記接続端子が、前記超音波診断装置の本体部の前面に設けられており、
前記取付面は、前記本体部の側面である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波診断装置であって、
前記可動アームは、前後方向に延び、回転軸が前記可動アームの前端近傍に位置するように、配置されている、ことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ケーブルフックを有する超音波診断装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体(例えば生体)に対して超音波の送受波を行い、これにより得られた受信信号に基づいて断層画像などの超音波画像を形成する超音波診断装置が広く知られている。かかる超音波診断装置には、超音波プローブが、プローブケーブルを介して接続される。通常、プローブケーブルは、超音波診断装置から離れた場所でも超音波プローブを使用できるように、ある程度の長さを有する。そのため、特段の対策を講じない場合、プローブケーブルの一部が、床面に垂れ落ちることが多い。
【0003】
そこで、従来から、超音波診断装置に、プローブケーブルを引っ掛けて保持するケーブルフックを設けることが提案されている。例えば、特許文献1-3には、こうしたケーブルフックを有する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-139722号公報
【特許文献2】特開2012-143330号公報
【特許文献3】特開2017-192532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のケーブルフックは、いずれも、フック部が上方に開放されている。従来、プローブケーブルは、このフック部に上側から載せられ、引っ掛けられる。かかる構成の場合、引っ掛けられていたプローブケーブルが、使用者の意に反して、フック部から離脱することがあった。また、従来の構成の場合、意図しないプローブケーブルがフック部に紛れ込んでしまい、プローブケーブルが絡まることもあった。
【0006】
そこで、本明細書では、プローブケーブルをより適切に保持できる超音波診断装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する超音波診断装置は、前記超音波診断装置の外表面である取付面と、前記取付面に取り付けられるケーブルフックと、を備え、前記ケーブルフックは、閉鎖姿勢と、開放姿勢と、に切り替え可能に構成された可動アームを有し、前記可動アームは、前記閉鎖姿勢において、前記取付面との間に、プローブケーブルが挿通可能であるとともに実質的に閉じた輪郭を持つ通過通路を形成し、前記開放姿勢において、前記輪郭の一部が途切れて、前記通過通路が開放される、ことを特徴とする。
【0008】
かかる構成とすることで、プローブケーブルがケーブルフックから使用者の意に反して離脱、または、プローブケーブルが使用者の意に反してケーブルフックに侵入することを効果的に防止できる。結果として、プローブケーブルをより適切に保持できる。
【0009】
この場合、前記ケーブルフックは、さらに、前記可動アームを、閉鎖方向に付勢するバネを備えてもよい。
【0010】
バネを設けることで、殆どの場合、可動アームは、閉鎖している。そして、これにより、意に反して、プローブケーブルが通過通路から抜けたり、無関係のプローブケーブルが通過通路に入り込んだりすることが防止できる。
【0011】
また、前記ケーブルフックは、さらに、前記取付面に固定され、前記可動アームが揺動可能に連結される固定体を備え、前記可動アームと前記固定体との連結力は、前記可動アームの限界耐力よりも小さく、前記可動アームに所定以上の開放方向の力が付加された場合、前記可動アームが、破壊されることなく、前記固定体から分離されてもよい。
【0012】
可動アームを、固定体から分離可能な構成とすることで、可動アームの開き角度を小さくしても、不都合が生じにくい。結果として、可動アームのヒンジ機構を小型化できる。
【0013】
この場合、前記固定体または前記固定体と前記可動アームとの間に介在する中間部材が、前記可動アームに嵌合されており、前記可動アームに所定以上の開放方向の力が付加された場合、前記可動アームの一部が、弾性変形して、前記嵌合が解除されることで、前記可動アームが前記固定体から分離されてもよい。
【0014】
上記構造とすることで、簡易な構造で、可動アームと固定体とを、分離可能に連結できる。
【0015】
また、前記可動アームは、前記取付面と略平行な方向に延びる主部と、前記主部の末端から前記取付面に向かう末端部と、を含んでもよい。
【0016】
可動アームを上記形状とすることで、一つの可動アームで、閉鎖した通過通路を構成できる。結果として、ケーブルフックに要する部品の点数を低減できる。
【0017】
また、前記可動アームの末端は、弾性材料からなる、または、弾性材料で覆われてもよい。
【0018】
上記構成とすることで、可動アームが勢いよく閉じた場合に、可動アームの末端と取付面との衝突の勢いを抑制できる。結果として、上記構成によれば、騒音の発生を抑制でき、さらに、可動アームの破損を防止できる。
【0019】
また、前記開放姿勢における前記可動アームの最大揺動角度をθo、前記可動アームの長尺方向寸法をLa、前記通過通路に挿通される前記プローブケーブルの最大直径をΦとした場合、前記ケーブルフックは、Φ≦La×sinθoの条件を満たしてもよい。
【0020】
上記構成とすることで、プローブケーブルを通過通路に確実に抜き差しできる。
【0021】
また、前記接続端子が、前記超音波診断装置の本体部の前面に設けられており、前記取付面は、前記本体部の側面でもよい。
【0022】
本体部の前面に接続端子がある場合において、ケーブルフックを本体部の側面に設けることで、プローブケーブルの取り回しが容易になる。
【0023】
また、前記可動アームは、前後方向に延び、回転軸が前記可動アームの前端近傍に位置するように、配置されていてもよい。
【0024】
プローブケーブルは、本体部の前方側に引っ張られやすい。このとき、可動アームの末端が前方側にあると、可動アームが容易に開き、プローブケーブルが、通過通路から容易に離脱する。上記のように、可動アームの回転軸を、可動アームの前端にすれば、こうしたプローブケーブルの離脱を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本明細書で開示する超音波診断装置によれば、プローブケーブルをより適切に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】ケーブルフック周辺の概略的な平面図である。
【
図4】閉鎖姿勢のケーブルフックを水平面と平行な面で切断した断面図である。
【
図5】開放姿勢のケーブルフックを水平面と平行な面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、超音波診断装置10の構成について図面を参照して説明する。
図1は、超音波診断装置10の概略的な斜視図である。なお、以下の各図において、「Fr」、「Up」、「Rh」は、それぞれ、超音波診断装置10の前方、上方、右側方を示している。超音波診断装置10は、被検体(例えば生体)に対して超音波の送受波を行い、これにより得られた受信信号に基づいて断層画像などの超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置10は、本体部12と、操作パネル14と、ディスプレイ16と、を有する。本体部12は、超音波診断装置10の主要部であり、操作パネル14およびディスプレイ16を支持する土台となる。本体部12は、キャスタ22により支持されており、これにより、超音波診断装置10を、床面上で容易に移動させることができる。
【0028】
超音波プローブ18は、プローブケーブル19を介して、本体部12に接続される。本体部12の前面24には、プローブケーブル19のコネクタ(図示せず)が接続される接続端子28が複数設けられている。
【0029】
操作パネル14は、使用者からの操作入力を受け付ける。操作パネル14は、各種の操作ボタンやトラックボールなどを含む。ディスプレイ16は、超音波画像や各種の情報を表示する。操作パネル14およびディスプレイ16は、いずれも、多関節アーム(図示せず)に取り付けられている。そして、使用者は、当該多関節アームの姿勢を変更することで、操作パネル14およびディスプレイ16の位置おび姿勢を自由に変更できる。
【0030】
超音波診断装置10には、さらに、複数のプローブホルダ20が設けられている。プローブホルダ20は、超音波プローブ18を、そのケーブル引き出し部が下方に向くような起立姿勢で保持する。かかるプローブホルダ20は、超音波診断装置10の周囲に取り付けられる。
図1の例の場合、プローブホルダ20は、操作パネル14の左右両端それぞれに、複数(図示例では3つずつ)、取り付けられている。
【0031】
超音波診断を行う際、使用者は、複数のプローブホルダ20それぞれに保持されている超音波プローブ18の中から、診断に適した超音波プローブ18を選択し、選択した超音波プローブ18をプローブホルダ20から抜き取る。そして、使用者は、抜き取った超音波プローブ18を、診断箇所に接触させるなどして、超音波画像を取得する。
【0032】
ここで、超音波プローブ18を超音波診断装置10から離れた箇所まで持ち運べるように、プローブケーブル19は、十分な長さを有している。そのため、特段の対策を講じない場合、プローブケーブル19の一部は、床面に垂れ落ちることが多い。このようにプローブケーブル19が床面に垂れ落ちた状態のまま、超音波診断に関する作業を行うと、プローブケーブル19が、人によって踏みつけられたり、他のプローブケーブル19と絡まったり、超音波診断装置10のキャスタ22に巻き込まれたりする。結果として、プローブケーブル19を床面に垂れ落ちた状態のまま放置すると、プローブケーブル19の劣化または破損を招くおそれがある。
【0033】
そこで、本例の超音波診断装置10には、プローブケーブル19を引っ掛けるためのケーブルフック30が、設けられている。ケーブルフック30は、
図1に示すように、本体部12の側面に取り付けられている。以下では、ケーブルフック30が取り付けられている面を「取付面26」と呼ぶ。なお、
図1では見えないが、ケーブルフック30は、本体部12の右側面および左側面それぞれに一つずつ取り付けられている。これは、超音波プローブ18が、右側のプローブホルダ20および左側のプローブホルダ20のいずれに保持された場合でも、ケーブルフック30でプローブケーブル19を適切に保持するためである。
【0034】
図2は、ケーブルフック30周辺の概略的な平面図である。
図2に示す通り、ケーブルフック30は、所定の回転軸Raを中心に揺動可能な可動アーム70を有する。本例において、回転軸Raは、可動アーム70の前端近傍に位置しており、鉛直方向に平行な軸である。また、可動アーム70は、前後方向に長尺となるように配置されており、水平面内で揺動する。可動アーム70は、後に詳説するように、揺動することで、閉鎖姿勢と開放姿勢とに切り替え可能である。
図2において、閉鎖姿勢の可動アーム70は、実線で図示されており、開放姿勢の可動アーム70は、二点鎖線で図示されている。
【0035】
可動アーム70は、閉鎖姿勢において、取付面26との間に、プローブケーブル19が挿通可能な通過通路32を形成する。この通過通路32は、実質的に閉じた輪郭を持つ。ここで、「実質的に閉じた輪郭」とは、最小直径のプローブケーブル19が、輪郭の内から外、または、輪郭の外から内に移動できないような輪郭である。したがって、「実質的に閉じた輪郭」とは、切れ目なく完全に繋がった輪郭に加え、切れ目はあるものの当該切れ目が最小直径未満である輪郭を含む。
【0036】
可動アーム70は、開放姿勢において、輪郭の一部が途切れて、通過通路32が開放される。ここで、「通過通路32が開放」とは、輪郭の切れ目が、プローブケーブル19の直径よりも大きくなることを意味する。
【0037】
可動アーム70は、当該可動アーム70に取付面26から離れる方向(以下、「開放方向」と呼ぶ)の力が付加されることで、閉鎖姿勢から開放姿勢に変化する。また、可動アーム70は、後述するねじりバネ86により、閉鎖方向に付勢されている。そのため、開放方向の力が解除されると、可動アーム70は、開放姿勢から閉鎖姿勢に自動的に切り替わる。
【0038】
プローブケーブル19をケーブルフック30で保持させる場合、使用者は、可動アーム70を一時的に開放姿勢に切り替え、輪郭の切れ目からプローブケーブル19を通過通路32内に挿しこむ。その後、可動アーム70から手を離すと、可動アーム70が閉鎖姿勢に戻る。これにより、プローブケーブル19の通過通路32からの離脱が防止される。
【0039】
通過通路32に挿通されたプローブケーブル19は、超音波プローブ18から接続端子28に向かう過程で、必ず、ケーブルフック30を通るように迂回する。これにより、プローブケーブル19の床面への垂れ落ちが効果的に防止される。
【0040】
次に、こうしたケーブルフック30の具体的な構成について説明する。
図3は、ケーブルフック30の分解斜視図である。また、
図4および
図5は、ケーブルフック30を水平面と平行な面で切断した断面図である。
【0041】
図3に示す通り、ケーブルフック30は、固定体34と、回転体50と、可動アーム70と、ヒンジシャフト88と、を有する。固定体34は、取付面26に固着される部材である。この固定体34は、上下方向に対向する一対のベース36と、当該一対のベース36を連結する連結壁38と、を含む。一対のベース36には、ヒンジシャフト88が通過するシャフト孔40が形成されている。また、連結壁38の一部は、回転体50の一部と当接することで当該回転体50の回転範囲を規制するストッパ面42として機能する(
図4、
図5参照)。
【0042】
回転体50は、固定体34の一対のベース36の間に配置され、固定体34に対して回転可能な部材である。回転体50は、上下方向に対向する一対のベース52と、当接壁54と、係止壁56と、を含む。一対のベース52には、ヒンジシャフト88が通過するシャフト孔58が形成されている。
【0043】
当接壁54は、一対のベース52の前端同士を連結する壁である。
図4に示すように当接壁54は、後述する可動アーム70の当接凹部82内に位置する。この当接壁54および当接凹部82の壁面が、互いに当接し合うことで、回転体50および可動アーム70が、一体的に回転する。また、
図5に示す通り、回転体50が、一定以上、開放方向に回転すると、回転体50の一部が、固定体34のストッパ面42に当接する。これにより、回転体50および可動アーム70の最大回転角度が規制される。以下では、可動アーム70の最大回転角度を、「最大揺動角度θo」と呼ぶ。
【0044】
また、係止壁56は、一対のベース52の後端同士を連結する壁である。
図4に示すように、係止壁56は、平面視で略V字状に屈曲している。この係止壁56には、ねじりバネ86の一端が係止される。ねじりバネ86は、回転体50および可動アーム70を閉鎖方向に付勢する付勢部材である。ねじりバネ86の他端は、固定体34の一部に係止されている。
図5に示すように、回転体50および可動アーム70が開放方向に回転した場合、ねじりバネ86は、回転体50に対して閉鎖方向の付勢力を付与する。この付勢力により、回転体50および可動アーム70は、自動的に、閉鎖姿勢に戻る。
【0045】
可動アーム70は、ヒンジ部72とアーム部74とに大別される。アーム部74は、さらに、取付面26と平行な方向に延びる主部76と、主部76の末端から取付面26に近づく方向に延びる末端部78と、を含む。換言すれば、アーム部74は、平面視で略L字形状である。アーム部74を略L字形状とすることで、一つの可動アーム70で、実質的に閉じた輪郭を持つ通過通路32を構成できる。言い換えれば、アーム部74を略L字形状とすることで、閉じた輪郭を得るために複数の部品を組み合わせる必要がないため、部品点数を低減できる。
【0046】
アーム部74の末端部78は、弾性材料(例えば、シリコンゴムや天然ゴム等)で被覆されている。かかる構成とすることで、可動アーム70が勢いよく閉じた場合に、末端部78と取付面26との衝突の勢いを抑制できる。結果として、可動アーム70を閉鎖する際の衝突音を抑制でき、さらに、可動アーム70の破損も防止できる。なお、当然ながら末端部78は、弾性材料で被覆されるのではなく、その全体が弾性材料で構成されてもよい。さらに、末端部78は、弾性材料を含まない構成でもよい。
【0047】
可動アーム70の前端にはヒンジ部72が設けられている。ヒンジ部72は、ヒンジシャフト88を介して固定体34および回転体50に組み付けられる。このヒンジ部72について、
図4~
図7を参照して説明する。
図6は、可動アーム70を一部破断した斜視図である。また、
図7は、
図4のA-A断面図である。なお、
図7では、可動アーム70およびヒンジシャフト88のみを図示しており、その他の部品の図示を省略している。
【0048】
図7に示す通り、ヒンジ部72は、上下方向に対向する一対のベース80を有する。この一対のベース80は、アーム部74により、連結されている。一対のベース80の間に、固定体34および回転体50が、配置される。また、
図6および
図7に示すように、ベース36には、ヒンジシャフト88の端部が嵌まり込むシャフト用凹部84が、形成されている。そして、回転体50、固定体34、および、可動アーム70のヒンジ部72は、ヒンジシャフト88を介して連結される。したがって、ヒンジシャフト88は、固定体34と可動アーム70との間に介在する中間部材として機能する。
【0049】
ここで、可動アーム70は、ヒンジシャフト88を介して固定体34と連結されている。この可動アーム70と固定体34との連結力は、可動アーム70の限界耐力よりも小さい。そのため、可動アーム70に所定以上の開放方向の力が付加された場合、可動アーム70が破壊されることなく、固定体34から分離する。
【0050】
具体的に説明すると、
図7に示す通り、ヒンジシャフト88は、一対のベース80により、挟持されている。換言すれば、中間部材であるヒンジシャフト88は、可動アーム70に嵌合されている。また、ベース80は、その一端のみがアーム部74に接続されている片持ち梁状の部位である。かかる可動アーム70が開放方向に強く引っ張られると、一対のベース80が、両者の間隔が広がる方向に撓む。これにより、ヒンジシャフト88が、シャフト用凹部84から抜け出て、可動アーム70が固定体34から分離する。
【0051】
なお、
図6に示す通り、ベース36には、シャフト用凹部84の周縁から取付面26に近づく方向に延びる補助溝85が形成されている。かかる補助溝85を形成することで、シャフト用凹部84のうち、取付面26寄りの部分の深さが、反対側の部分の深さより、浅くなる。そして、これにより、ヒンジシャフト88が、シャフト用凹部84からより容易に抜け出せる。
【0052】
このように可動アーム70を、固定体34から分離可能とするのは次の理由による。可動アーム70の最大揺動角度θoを過度に大きくした場合、ヒンジ機構が大型化しやすい。そのため、最大揺動角度θoは、小さく抑えられる。しかし、最大揺動角度θoが小さい場合、使用者が可動アーム70を強く引っ張った際に、可動アーム70に大きな力が加わり、可動アーム70が容易に破損するおそれがある。ここで、本例のように可動アーム70を固定体34から分離可能とした場合、使用者が可動アーム70を強く引っ張った場合でも、可動アーム70は破壊されることなく、固定体34から分離する。その結果、最大揺動角度θoを小さくしても、可動アーム70の破壊が効果的に防止される。そのため、本例では可動アーム70を固定体34から分離可能としている。
【0053】
次に、可動アーム70の寸法の条件ついて
図8を参照して説明する。
図8は、可動アーム70の模式図である。通過通路32にプローブケーブル19を挿通させるためには、可動アーム70を最大揺動角度θoまで開いたときの開き幅Loは、プローブケーブル19の最大直径Φ以上でなければならない。ここで、可動アーム70の長軸方向寸法をLaとした場合、開き幅Loは、Lo=La×sin(θo)である。したがって、可動アーム70の長軸方向寸法Laおよび最大揺動角度θoは、La×sin(θo)≧Φを満たす値に設定される。
【0054】
ところで、これまでの説明で明らかな通り、本例のケーブルフック30は、開放方向の力を受けない限り、実質的に閉じた輪郭を維持する。その結果、通過通路32に挿通されたプローブケーブル19が、使用者の意に反して、通過通路32の外部に離脱することが効果的に防止される。結果として、本例のケーブルフック30によれば、プローブケーブル19をより適切に保持できる。
【0055】
また、これまでの説明で明らかな通り、本例では、ケーブルフック30を、本体部12の側面に取り付けている。かかる構成とすることで、プローブケーブル19の取り回しが容易となる。すなわち、本例では、操作パネル14の左右端部にプローブホルダ20を設け、本体部12の前面24に接続端子28を設けている。この場合、プローブケーブル19は、プローブホルダ20から接続端子28に向かう過程で、本体部12の側面の近くを通ることになる。かかる側面にケーブルフック30を取り付けることで、プローブケーブル19をケーブルフック30まで容易に取り回すことができる。
【0056】
さらに、本例では、可動アーム70を前後方向に平行な姿勢で配置し、ヒンジ部72(ひいては回転軸Ra)を可動アーム70の前端近傍に配置している。かかる配置とすることで、使用者の意に反して、プローブケーブル19が、ケーブルフック30から離脱することを効果的に防止できる。すなわち、使用者が超音波プローブ18を使用する際、超音波プローブ18、ひいてはプローブケーブル19は、前方に引っ張られることが多い。この場合、通過通路32内のプローブケーブル19は、可動アーム70の前端を、前方、すなわち、
図2の矢印B方向に押圧する。ヒンジ部72を、可動アーム70の後端に設けた場合、かかる押圧力を受けて、可動アーム70が、揺動し、開放される場合がある。この場合、プローブケーブル19が、使用者の意に反して、ケーブルフック30から離脱する。一方、本例のように、ヒンジ部72を可動アーム70の前端に設けた場合、前向きの押圧力を受けても、可動アーム70は揺動しないため、プローブケーブル19は、ケーブルフック30から離脱しない。結果として、本例によれば、ケーブルフック30でプローブケーブル19を安定して保持できる。
【0057】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、超音波診断装置10が、請求項1に記載の構成を具備するのであれば、その他の構成は適宜変更されもよい。例えば、上述の説明では、一つの可動アーム70で、通過通路32を形成しているが、複数のアームを組み合わせて、通過通路32を形成してもよい。例えば、
図9に示すように、二つの可動アーム70*を線対称に配置し、この二つの可動アーム70*で通過通路32を形成してもよい。
【0058】
また、ケーブルフック30の配置や姿勢も適宜変更されてもよい。例えば、ケーブルフック30は、ヒンジ部72が、可動アーム70の後端に位置するような姿勢で配置されてもよい。かかる構成とした場合、プローブケーブル19が前方に強く引っ張られた場合、可動アーム70が容易に開放される。そして、これにより、プローブケーブル19に過大な力がかかるのが防止され、プローブケーブル19の損傷を防止できる。また、別の形態として、可動アーム70の前端が後端よりも重力方向下側になるように、当該可動アーム70を水平方向に対して傾けて配置してもよい。かかる構成とすれば、可動アーム70に引っ掛けられたプローブケーブル19が、重力により当該可動アーム70に沿って滑り、前側、ひいては、回転軸Ra側に集まりやすくなる。これにより、可動アーム70が意に反して開放されること、ひいては、プローブケーブル19が意に反して離脱することがより効果的に防止される。
【0059】
さらに、ケーブルフック30は、超音波診断装置10の外表面であれば、本体部12の側面以外の場所に取り付けられてもよい。例えば、ケーブルフック30は、本体部12の前面24や、操作パネル14の周縁等に取り付けられてもよい。また、ケーブルフック30が取り付けられる取付面26として、接続端子28に対して静止する面(例えば本体部12の側面や上面)を選択した場合、プローブケーブル19の絡まりをより効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0060】
10 超音波診断装置、12 本体部、14 操作パネル、16 ディスプレイ、18 超音波プローブ、19 プローブケーブル、20 プローブホルダ、22 キャスタ、24 前面、26 取付面、28 接続端子、30 ケーブルフック、32 通過通路、34 固定体、36 ベース、38 連結壁、40 シャフト孔、42 ストッパ面、50 回転体、52 ベース、54 当接壁、56 係止壁、58 シャフト孔、70,70* 可動アーム、72 ヒンジ部、74 アーム部、76 主部、78 末端部、80 ベース、82 当接凹部、84 シャフト用凹部、85 補助溝、86 ねじりバネ、88 ヒンジシャフト。