(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170967
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】銅の製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22B 15/00 20060101AFI20241204BHJP
C22B 15/06 20060101ALI20241204BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C22B15/00
C22B15/06
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087767
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】小出 克将
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】本村 優貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 純一
(72)【発明者】
【氏名】森 勝弘
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA09
4K001AA10
4K001BA06
4K001BA10
4K001BA12
4K001CA02
4K001CA03
4K001DA05
4K001GA06
4K001JA01
(57)【要約】
【課題】 製錬炉の炉況を安定化させることで、銅滓・金銀滓を最大限に処理することのできる銅の製錬方法を提供する。
【解決手段】 ホッパー3から搬送手段4に排出した銅品位10%以上50%以下で且つFeを含有する銅原料を搬送手段4の後段に位置するシュート5を介して製錬炉としての例えば転炉10に投入して熱処理することで高濃度の銅を生成する製錬方法であって、シュート5の排出口又はサンプリング孔においてサンプリングすることで得た銅原料試料に対して、蛍光X線分析することでそのFe品位を求め、得られたFe品位に基づいて製錬炉に投入するSiO
2分の投入量を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーから搬送手段に排出した銅品位10%以上50%以下で且つFeを含有する銅原料を前記搬送手段の後段に位置するシュートを介して製錬炉に投入して処理することで高濃度の銅を生成する製錬方法であって、前記シュートの排出口又はサンプリング孔においてサンプリングすることで得た銅原料試料に対して、蛍光X線分析することでそのFe品位を求め、得られたFe品位に基づいて前記製錬炉に投入するSiO2分の投入量を求めることを特徴とする銅の製錬方法。
【請求項2】
複数種類の銅原料に対して予め蛍光X線分析及び化学分析を行なうことで、これら分析により得られる分析結果からデータベースを作成しておき、前記銅原料試料に対して蛍光X線分析することで得られる分析結果を該データベースに照合することで前記Fe品位を求めることを特徴とする、請求項1に記載の銅の製錬方法。
【請求項3】
前記製錬炉が転炉であることを特徴とする、請求項2に記載の銅の製錬方法。
【請求項4】
前記銅原料が目開き53mmの篩の篩下であって且つ目開き5.6mmの篩の篩上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の銅の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅の製錬方法に関し、特に銅品位が10%以上50%以下で且つFeを含有する銅原料を処理する銅の製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属製錬においては、目的金属を含んだ原料に対して、先ず乾式製錬工程において製錬炉で熔錬処理することで該目的金属を濃縮した後、湿式製錬工程において電解処理することで高純度の目的金属を製造している。例えば銅製錬では、先ず乾式銅製錬工程において、主原料である銅品位20~30%程度の銅精鉱に対して熔錬炉、転炉、及び精製炉で順次処理することで銅品位99%程度の精製粗銅を生成した後、湿式製錬工程において、上記の精製粗銅を鋳造して得たアノードと別途用意したカソードとを電解槽に装入して電解精製を行なうことで、最終製品として銅品位99.99%の電気銅を製造している。
【0003】
上記の乾式銅製錬工程についてより具体的に説明すると、熔錬炉としての例えば自熔炉に銅精鉱とフラックス(硅石)とを装入して熔融及び酸化処理することで、主としてFeからなる不純物がスラグ(カラミとも称する)として分離除去され、銅品位60~70%程度のマット(カワとも称する)が生成される。このマットを略円筒形の容器を横置きにして回動可能に支持した構造の転炉にレードルを介して装入して更に酸化処理することで、銅品位98%程度の粗銅が生成される。この粗銅を精製炉に装入して酸素等の不純物を除去することで、銅品位99%程度の精製粗銅が生成される。なお、上記の自熔炉で分離除去されたスラグは微量のマットを含んでいるので、樋を介して好適には電気炉からなる錬カン炉に移送し、ここで比重分離することで銅の回収が行なわれる。
【0004】
上記の一連の処理のうち、転炉の処理は、マットに含まれる硫化鉄を酸化することで生成した転炉スラグ(転炉カラミとも称する)を抜き出して硫化銅からなる白カワを炉内に残留させる造カン期(造カン工程とも称する)と、該白カワを酸化して金属銅を生成させる造銅期(造銅工程とも称する)との2段階でのバッチ操業となる。すなわち、先ず造カン期では、自熔炉から受け入れた銅品位60~70%程度のマットに空気又は酸素富化空気を吹き込んで該マットに含まれる硫化鉄を酸化することで、別途添加したSiO2を主成分とするフラックスと共にFeO-SiO2系の転炉スラグが生成される。この転炉スラグは比重差により転炉内において上層側に分離するので、転炉を傾転させて炉口から該転炉スラグを抜き出すことで、鉄分をほとんど含まない銅品位70~80%程度の白カワが転炉内に残留する。上記の造カン期に続く造銅期では、転炉スラグの抜き出し後に残留する白カワに対して、再び空気又は酸素富化空気を吹き込んで白カワに含まれる硫化銅を酸化することで粗銅が生成される。
【0005】
ところで、上記の造カン工程では、熔体の形態で自熔炉から受け入れる熔ヒとも称する上記カワの他、固体の形態を有するカワである固ヒ、銅品位95%程度の二次原料としての故銅、銅品位10~50%程度で貴金属を多く含む銅滓・金銀滓等が転炉に投入されて上記熔ヒと同時に処理される。これら固ヒ、故銅、銅滓・金銀滓のうち、特に銅滓・金銀滓は転炉内で吸熱するので、転炉の炉内状況が変動して転炉スラグの粘度が高くなった場合は、銅滓・金銀滓の投入を控えなければならず、その間は銅滓・金銀滓の処理の機会が失われる。
【0006】
すなわち、転炉の造カン期で生成される転炉スラグの性状の粘度が高くなりすぎると、転炉を傾転したときに炉内の転炉スラグを炉口からレードルに向けて排出するのが困難になり、一部の転炉スラグが炉内に残留するので、その分だけ転炉内の熔体の液位が高くなって次工程の造銅期、又は次回のバッチ操業に悪影響を及ぼすおそれがある。例えば、熔体レベルの上昇の結果、羽口から供給する空気の送風による炉口からの熔体の飛散量が増加するため、羽口からの送風量を抑えざるを得なくなって転炉の操業効率が低下する問題や、炉内残留物の増加により炉内の有効容積が減少する問題が生じる。従って、転炉スラグの粘度が高くなると、転炉内の熔体の温度を上昇させて通常の粘度に回復させる必要があり、上記のように銅滓・金銀滓の処理が中断するので、転炉の炉内状況が大きく変動して転炉スラグの粘度が高くなりすぎないように調整する技術が求められている。
【0007】
従来、乾式銅製錬工程においてスラグの粘度を調整する場合は、スラグのFe/SiO2値を指標として管理する方法が採られることがあった。この方法は、スラグに含まれるSiO2の含有量に対するFeの含有量のモル比であるFe/SiO2値が所定の範囲内に収まるように、サンプリングした原料に含まれるFe量から適切なフラックス量を算出して炉内に投入するものである。
【0008】
例えば特許文献1には、自熔炉又は反射炉のスラグをサンプリングしてその構成成分を定量分析すると共に、その1250℃における粘度を測定し、得られたスラグ構成成分の定量値及びこれを用いて求めたモルベースのT.Fe/SiO2値(すなわち、SiO2のモル量に対する全Feのモル量)、並びに粘度の値を用いて回帰式を算定し、この回帰式を用いて所望の粘度となるような原料銅鉱石と溶剤の構成成分の重量比を求め、得られた重量比に応じて該自熔炉又は反射炉に溶剤を投入する技術が開示されている。これにより、スラグの流動性を高めることができるので、スラグ中に機械的に懸垂されるCuの含有率を下げることができると記載されており、具体的にはスラグのモルベースのT.Fe/SiO2値が1.0~1.4で且つAl2O3含有率が4~8wt%であれば、スラグの粘度を500mPa・s以下に抑え得ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
自熔炉のように、ほぼ一定の組成を有する銅精鉱を原料に用いて連続的に処理を行なう場合は、上記のようにスラグのFe/SiO2値に基づいてフラックスの投入量を求めることで、粘度に代表されるスラグの性状を安定化できると考えられるが、転炉の場合は前述したように複数回の造カン期と造銅期からなるバッチ操業で原料の処理を行なううえ、この原料には自熔炉から移送される熔ヒのほか、固ヒ、故銅、銅滓・金銀滓等が用いられるので原料全体の組成を正確に把握するのが困難であった。
【0011】
特に、熔ヒの場合はFe含有量をある程度把握することができるものの、銅滓・金銀滓は種類が多いため、それらに含まれるFe含有量はそれぞれ異なっている。従って、従来は例えば転炉に投入するフラックス量を求めるために銅滓・金銀滓のFe品位を把握することが必要な場合は、過去に取り扱った複数種類の銅滓・金銀滓のFe品位の平均値を採用していた。このため、フラックスの投入量に過不足が生じ、スラグの性状が不安定になることがあった。本発明は銅の製錬方法が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、製錬炉の炉況を安定化させることで、銅滓・金銀滓を最大限に処理することのできる銅の製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る銅の製錬方法は、ホッパーから搬送手段に排出した銅品位10%以上50%以下で且つFeを含有する銅原料を前記搬送手段の後段に位置するシュートを介して製錬炉に投入して熱処理することで高濃度の銅を生成する製錬方法であって、前記シュートの排出口又はサンプリング孔においてサンプリングすることで得た銅原料試料に対して、蛍光X線分析することでそのFe品位を求め、得られたFe品位に基づいて前記製錬炉に投入するSiO2分の投入量を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製錬炉の炉況を安定化させることができるので、銅滓・金銀滓を最大限に処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の銅の製錬方法を好適に実施できる製錬設備の斜視図である。
【
図2】
図1に示されているシュートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る銅の製錬方法の実施形態について説明する。本発明の実施形態の銅の製錬方法は、ホッパーから搬送手段に排出した銅原料を該搬送手段の後段に位置するシュートを介して製錬炉に投入して処理することで高濃度の銅を生成するものであり、該シュートの排出口又はサンプリング孔においてサンプリングすることで得た銅原料試料を蛍光X線分析してそのFe品位を求め、得られたFe品位に基づいて該製錬炉に投入するSiO2分の投入量を求めることを特徴としている。
【0016】
具体的には、
図1に示すように、分級手段1で所定の粒度に揃えた上記銅原料をベルトコンベアなどの銅原料投入手段2を介して銅原料ホッパー3に一時的に貯留する。この銅原料は、銅品位が10%以上50%以下で且つFeを含有しており、かかる組成を有する銅原料としては、例えば供給元やロット等が異なる複数種類の銅滓・金銀滓を挙げることができる。該銅原料は、銅原料ホッパー3の底部からベルトコンベアなどの銅原料搬送手段4に切り出される。これにより、銅原料ホッパー3への投入前は銅原料の組成にばらつきがあっても、ある程度均一に混合することができる。この銅原料搬送手段4がベルトコンベアであれば搬送中の銅原料をサンプリングするのは容易であるが、一般的にベルトコンベアによる搬送では振動が生じるので、比重差のある粉粒体をベルトコンベアで搬送する場合は、比重の大きなものが下方へ移動すると共に、比重の小さなものが上方に移動する傾向にある。
【0017】
そこで、本発明の実施形態の銅の製造方法においては、銅原料搬送手段4の後段にシュート5を設けており、このシュート5内を製錬炉に向かって落下している状態の銅原料をサンプリングしており、これにより、ばらつきの少ない均一な銅原料を採取することができる。すなわち、
図2に示すように、両端部が開口した好適には円筒管からなるシュート5を傾斜させ、その入口側端部を銅原料搬送手段4の下流側端部の下方に配置すると共に、その排出口となる出口側端部を製錬炉としての例えば転炉10の炉口11に連通するダクト20に接続する。そして、このダクト20に設けたシュート5の出口側端部近傍の出口点検口5aか、あるいはシュート5の長手方向の中間地点からシュート5の出口側端部までに設けたシュート点検口5bをサンプリング孔としてそこからサンプリングを行なう。
【0018】
上記方法で均一に混合された状態の銅原料をサンプリングすることができる理由は、前段の銅原料搬送手段4からシュート5に導入された直後の銅滓・金銀滓等の銅原料は、前述したように銅原料搬送手段4での振動等により当初は比重差により重いものと軽いものとが分離しているが、シュート5内でその側壁に衝突しながら落下しているうちに混合され、シュート5の長手方向の中間地点よりも下流側でほぼ均一になるからである。なお、上記の比重差で分離した重いものと軽いものとをより均一に混合するため、シュート5の全長をその内径の6倍以上にすることが好ましい。また、シュートの形状は円筒形が好ましいが、これに限定されるものではなく、
図3に示すシュート15のように四角筒状でもよい。この場合は、シュート15の全長をその断面の相当直径の6倍以上にすることが好ましい。シュート5の傾斜角度は特に限定はなく、水平から30~85度程度傾斜させるのが好ましく、40~80度程度傾斜させるのがより好ましい。
【0019】
上記の方法でサンプリングした銅原料試料を蛍光X線分析装置を用いて分析し、その分析結果によりFe品位を求める。そして、求めたFe品位に基づいて製錬炉に投入するSiO2分の投入量を求める。この蛍光X線分析の結果からFe品位を求めるため、予め複数回サンプリングして得た複数の銅原料試料に対して化学分析によりFe品位を求めると共に、蛍光X線分析によりFeの強度を求め、これらFe品位及びFeの強度から例えば検量線を作成することによりデータベース化しておくことが好ましい。これにより、以降はサンプリングした試料に対して単に蛍光X線分析してその分析結果のFeの強度を検量線に照合するだけで簡易にFe品位を求めることができる。なお、この場合の蛍光X線分析装置には、サンプリングしたその場で直ぐに分析結果が得られる携帯型の蛍光X線分析装置を使用することが好ましい。
【0020】
上記した本発明の実施形態の銅製錬方法は、上記の製錬炉が乾式銅製錬で用いる転炉である場合に特に顕著な効果が得られる。その理由は、乾式銅製錬で用いる転炉は、Fe含有量がそれぞれ異なる複数種類の銅滓・金銀滓を熔ヒと共に処理するので、本発明の実施形態の銅の製錬方法を採用することにより、この転炉で処理する銅滓・金銀滓に含まれるFe含有量を正確且つ迅速に求めることができ、その結果に基づいてほぼ過不足なくフラックスを投入できるからである。これにより、所望のFe/SiO
2値を有する転炉スラグを生成させて、操業中の転炉内の熔体の状態(炉況とも称する)を良好な状態で安定化させることができ、その結果、転炉スラグの粘度を低く抑えてその流動性を高く維持できるので、該転炉において熔ヒと共に処理する銅滓・金銀滓等の銅原料の処理量を最大限まで増やすことができる。なお、上記のフラックスの転炉10の炉口11への投入は、
図1に示すように、銅原料の場合と同様のベルトコンベアなどのフラックス投入手段6、フラックス用ホッパー7、ベルトコンベアなどのフラックス搬送手段8、及びフラックス用シュート9を用いるのが好ましい。
【0021】
本発明の実施形態の銅の製錬方法においては、上記の銅原料が、
図1に示すように、目開き53mmの篩1aの篩下であって且つ目開き5.6mmの篩1bの篩上の粒度を有していることが好ましい。その理由は、製錬炉においては、銅原料のほとんどを、操業中の製錬炉の開口部から投入するからである。例えば、転炉10の場合は、操業中はその炉口11から排出した大量の排ガスが、該炉口11に連通するように設けられているダクト20を介して排ガス処理設備に向かって流れている。このため、目開き5.6mmの篩上よりも小さな粒径の銅原料を装入すると、炉口11に入らずに排ガスと共にキャリーオーバーして排ガス処理設備に流れてロスする割合が高くなる。
【0022】
一方、目開き53mmの篩下よりも大きな粒径の銅原料を装入すると、シュート5の出口点検口5aやシュート点検口5bからサンプリングした試料に大きな塊が混入することがある。銅原料においてこのような大きな塊は、粒径の小さな粉粒体に比べてFe品位が低く且つCu品位が高いことが多い。このため、この大きな塊が含まれるか否かにより、銅原料試料のFe品位は大きくばらついてしまい、銅原料を代表する試料を得ることが難しくなる。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施形態の銅の製錬方法を採用することにより、転炉に代表される製錬炉で生成されるスラグの性状を常に安定化させることができるので、炉況の変動によるスラグの流動性低下の問題を抑えることができ、結果的に銅滓・金銀滓等の銅原料を最大限に処理することが可能になる。
【実施例0024】
図1に示すような、製錬炉として転炉10を含む製錬設備を使用して本発明の実施例の銅製錬を行った。この転炉10には、レードルにより搬送される自熔炉で生成した熔ヒに加えて、銅品位10%以上50%以下で且つFeを含有する銅原料として銅滓・金銀滓を炉口11から投入した。このため、上記製錬設備を、銅原料を一時的に貯留する容量200tの銅原料ホッパー3と、この銅原料ホッパー3の底部から排出される銅原料を搬送する銅原料搬送手段4としてのベルトコンベアと、このベルトコンベアの後段に位置し、該ベルトコンベアの下流側端部から落下する粉粒状の銅原料を受け入れて転炉10の炉口11にガイドする直径260mm、全長3000mmのシュート5とから構成した。シュート5の出口側端部は、水管壁から構成され、転炉10の炉口11に連通するダクト20に接続した。このダクト20には該出口側端部の近傍に出口点検口5aが設けられており、この出口点検口5aから容量500gの杓を水平に入れた後、引き出すことで銅原料のサンプリングを1回/日の頻度で行った。
【0025】
上記サンプリングで得た銅原料試料に対して、携帯型蛍光X線分析装置を用いて分析した。そして、その分析結果を、組成がそれぞれ異なる複数種類の銅滓・金銀滓に対して予め蛍光X線分析及び化学分析を行なうことで作成しておいた横軸が蛍光X線分析のFe強度、縦軸がFe品位の検量線に照合することでFe品位を求めた。このようにして求めたFe品位及び過去の運転実績から定めた所望のFe/SiO
2値に基づいて必要なSiO
2量を求め、その量のSiO
2分を含む硅石を転炉10に投入した。このようにして、転炉10を用いて1操業バッチ当たり200tから240tのマットを合計431バッチ分処理した。なお、
図1に示すように、ホッパー3の前段に目開き53mmの篩1aと、目開き5.6mmの篩1bを設けることで、この目開き53mmの篩1aの篩下で且つ目開き5.6mmの篩1bの篩上の銅原料が銅原料投入手段2としてのベルトコンベアを介して銅原料ホッパー3に投入されるようにした。
【0026】
比較例として、サンプリングした銅原料試料に対して蛍光X線分析を行なってFe品位を求める代わりに、銅原料として受け入れた過去の複数種類の銅滓・金銀滓のFe品位の実績データから求めたFe品位の平均値を、上記の所望のFe/SiO2値に代入した以外は実施例と同様にして必要量のSiO2分を含む硅石を転炉10に投入した。そして、1操業バッチ当たり200tから240tのマットを合計892バッチ分処理した。
【0027】
その結果、実施例では1バッチ操業当たり平均で13.2tの銅原料を処理することができた。一方、比較例では1バッチ操業当たり平均で12.3tしか銅原料を処理できなかった。すなわち、本発明の要件を満たす方法で銅の製錬を行なうことで、銅原料としての銅滓・金銀滓の処理量を7%増やすことができた。