(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170984
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241204BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 648F
H01L21/304 648K
H01L21/304 647A
H01L21/304 647Z
H01L21/30 572B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087793
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸本 洋
【テーマコード(参考)】
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
5F146MA06
5F146MA10
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB48
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BE12
5F157BE23
5F157BE43
5F157BE46
5F157BF22
5F157CD32
5F157CE32
5F157CE83
5F157CF14
5F157CF16
5F157CF34
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF60
5F157CF70
5F157CF74
5F157CF99
5F157DB37
5F157DC86
(57)【要約】
【課題】基板への処理液の供給を開始する際の流量変動を抑制すること。
【解決手段】基板処理装置は、貯留タンクと、循環ラインと、供給ラインと、戻しラインと、流量計および定圧弁と、制御部とを備える。循環ラインは、貯留タンクから送られる処理液を貯留タンクに戻す。供給ラインは、循環ラインと、基板に処理液を供給する供給部とを接続する。戻しラインは、供給ラインに接続され、供給ラインから貯留タンクに処理液を戻す。流量計および定圧弁は、戻しラインと供給ラインとの接続箇所よりも上流側の供給ラインに設けられる。制御部は、処理液を戻しラインに流入させて供給部から基板への処理液の供給を行わない待機期間に、流量計の計測値と定圧弁の開度とに基づき、基板への処理液の供給を行う際の定圧弁の開度を算出する。制御部は、処理液を供給部に流入させて基板への処理液の供給を行う供給期間に、定圧弁の初期開度を算出された開度に設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから送られる前記処理液を前記貯留タンクに戻す循環ラインと、
前記循環ラインと、基板に前記処理液を供給する供給部とを接続する供給ラインと、
前記供給ラインに接続され、前記供給ラインから前記貯留タンクに前記処理液を戻す戻しラインと、
前記戻しラインと前記供給ラインとの接続箇所よりも上流側の前記供給ラインに設けられる流量計および定圧弁と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記処理液を前記戻しラインに流入させて前記供給部から前記基板への前記処理液の供給を行わない待機期間に、前記流量計の計測値と前記定圧弁の開度とに基づき、前記基板への前記処理液の供給を行う際の前記定圧弁の開度を算出し、
前記処理液を前記供給部に流入させて前記基板への前記処理液の供給を行う供給期間に、前記定圧弁の初期開度を算出された前記開度に設定する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記供給期間を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、前記定圧弁の開度を設定された前記初期開度に維持し、前記所定の時間が経過してから前記供給期間を終了するまでの間に、前記流量計の計測値が所定の値に維持されるように前記定圧弁の開度を制御する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記供給期間の全てにおいて、前記定圧弁の開度を設定された前記初期開度に維持する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液は、IPA、HF水溶液または有機薬液である
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記接続箇所よりも前記供給部側の前記供給ラインに設けられ、前記供給ラインを流れる前記処理液と、第2処理液との混合液を生成する混合部をさらに備え、
前記供給部は、前記混合部により生成される前記混合液を前記基板に供給する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理液は、硫酸であり、
前記第2処理液は、過酸化水素水である
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
処理液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから送られる前記処理液を前記貯留タンクに戻す循環ラインと、
前記循環ラインと、基板に前記処理液を供給する供給部とを接続する供給ラインと、
前記供給ラインに接続され、前記供給ラインから前記貯留タンクに前記処理液を戻す戻しラインと、
前記戻しラインと前記供給ラインとの接続箇所よりも上流側の前記供給ラインに設けられる流量計および定圧弁と
を備える基板処理装置における基板処理方法であって、
前記処理液を前記戻しラインに流入させて前記供給部から前記基板への前記処理液の供給を行わない待機期間に、前記流量計の計測値と前記定圧弁の開度とに基づき、前記基板への前記処理液の供給を行う際の前記定圧弁の開度を算出する工程と、
前記処理液を前記供給部に流入させて前記基板への前記処理液の供給を行う供給期間に、前記定圧弁の初期開度を算出された前記開度に設定する工程と
を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理液が循環する循環ラインから供給ラインを介して基板に処理液を供給する基板処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板への処理液の供給を開始する際の流量変動を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、貯留タンクと、循環ラインと、供給ラインと、戻しラインと、流量計および定圧弁と、制御部とを備える。貯留タンクは、処理液を貯留する。循環ラインは、貯留タンクから送られる処理液を貯留タンクに戻す。供給ラインは、循環ラインと、基板に処理液を供給する供給部とを接続する。戻しラインは、供給ラインに接続され、供給ラインから貯留タンクに処理液を戻す。流量計および定圧弁は、戻しラインと供給ラインとの接続箇所よりも上流側の供給ラインに設けられる。制御部は、処理液を戻しラインに流入させて供給部から基板への処理液の供給を行わない待機期間に、流量計の計測値と定圧弁の開度とに基づき、基板への処理液の供給を行う際の定圧弁の開度を算出する。制御部は、処理液を供給部に流入させて基板への処理液の供給を行う供給期間に、定圧弁の初期開度を算出された開度に設定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板への処理液の供給を開始する際の流量変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る処理ユニットの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る処理液供給源の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る供給期間におけるIPAの流れを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る待機期間におけるIPAの流れを示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る待機期間から供給期間への切り替え時における処理を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例に係る処理液供給源の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示による基板処理装置および基板処理方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0009】
従来、処理液が循環する循環ラインから供給ラインを介して基板に処理液を供給する基板処理装置が知られている。かかる基板処理装置には、供給ラインに接続される戻しラインによって基板に処理液を供給せずに、処理液を循環ラインに戻す構成を適用することもできる。
【0010】
しかしながら、供給ラインに接続される戻しラインによって処理液を循環ラインに戻す構成では、処理液の流入先を戻しラインから供給ラインに切り替えて基板への処理液の供給を開始すると、外乱による粘性の変化によって処理液の流量変動が発生するおそれがある。外乱としては、たとえば、基板への処理液の供給を行わない期間の各ラインに残存する処理液の滞留時間や、環境温度等が想定される。
【0011】
そこで、基板への処理液の供給を開始する際の流量変動を抑制することができる技術が期待されている。
【0012】
<基板処理システムの概要>
実施形態に係る基板処理システム1(基板処理装置の一例)の概略構成について
図1を参照し説明する。
図1は、実施形態に係る基板処理システム1の概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0014】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウェハW(以下、ウェハWと呼称する。)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0015】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0016】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0017】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0018】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して基板処理を行う。処理ユニット16は、搬送されたウェハを保持し、保持したウェハに基板処理を行う。処理ユニット16は、保持されたウェハに処理液を供給し、基板処理を行う。
【0019】
処理液は、たとえばエッチング液である。エッチング液は、特に限定されないが、たとえば、HF(フッ酸)水溶液または有機薬液等が用いられる。有機薬液としては、たとえばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等が用いられる。有機薬液としては、アミン類および/またはアルカノールアミン類を含む水溶液が用いられてもよい。また、処理液は、IPA(イソプロピルアルコール)などの置換液であってもよい。
【0020】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0021】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0022】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0023】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって基板処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0024】
<処理ユニットの概要>
次に、処理ユニット16の概要について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係る処理ユニット16の構成を示す模式図である。処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理液供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0025】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理液供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0026】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。
【0027】
基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させる。これにより、保持部31に保持されたウェハWが回転する。
【0028】
処理液供給部40(供給部の一例)は、ウェハW(基板の一例)に処理液を供給する。処理液供給部40は、処理液供給源70に接続される。処理液供給部40は、複数のノズルを備える。例えば、複数のノズルは、各処理液に対応して設けられる。各ノズルは、各処理液供給源70から供給される処理液をウェハWに吐出する。
【0029】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0030】
<処理液供給源の概要>
次に、処理液供給源70について
図3を参照し説明する。
図3は、実施形態に係る処理液供給源70の概略構成を示す図である。ここでは、IPAを供給する処理液供給源70を一例として説明する。
図3に示される処理液供給源70の構成は、IPAに限られず、他の処理液を供給する処理液供給源の構成に適用されてもよい。また、
図3においては、処理液供給源70が2つの処理液供給部40にIPAを供給する一例を示すが、これに限られることはない。処理液供給源70は、複数の処理液供給部40にIPAを供給する。また、処理液供給源70は、1つの処理液供給部40にIPAを供給してもよい。
【0031】
処理液供給源70は、タンク71と、処理液補充部72と、排液ライン73と、循環ライン74と、供給ライン75と、戻しライン76とを備える。
【0032】
タンク71(貯留タンクの一例)は、IPA(処理液の一例)を貯留する。IPAの温度は、たとえば20~80℃である。なお、タンク71に貯留される処理液は、IPAに限らず、HF水溶液または有機薬液等の他の処理液であってもよい。タンク71に貯留される処理液が有機薬液である場合、有機薬液の温度は、たとえば20~80℃である。タンク71に貯留される処理液がHF水溶液である場合、HF水溶液の温度は、20~50℃であり、HF水溶液におけるHFの濃度は、1.12~50wt%である。
【0033】
処理液補充部72は、タンク71に新たなIPAを供給する。例えば、処理液補充部72は、タンク71のIPAを入れ替える場合や、タンク71のIPAが所与の量よりも少なくなった場合に、タンク71に新たなIPAを供給する。
【0034】
排液ライン73は、タンク71のIPAを入れ替える場合に、タンク71からIPAを外部に排出し、IPAを廃液する。タンク71のIPAを入れ替える場合には、新たなIPAを供給しつつ、IPAの循環が行われ、循環ライン74、供給ライン75、および戻しライン76に残存するIPAが廃液されてもよい。すなわち、循環ライン74、供給ライン75、および戻しライン76に残存するIPAを含むIPAが入れ替えられてもよい。
【0035】
循環ライン74は、両端がタンク71に接続されており、タンク71から送られるIPAをタンク71に戻す。循環ライン74は、IPAがタンク71の外部を流れ、再びタンク71に戻るように設けられる。循環ライン74は、IPAを、複数の処理ユニット16に供給可能となるように設けられる。
【0036】
循環ライン74には、ポンプ80と、ヒータ81と、フィルタ82と、流量計83と、温度センサ84と、背圧弁85とが設けられる。具体的には、循環ライン74には、タンク71を基準としたIPAの流れ方向において、上流側からポンプ80、ヒータ81、フィルタ82、流量計83、温度センサ84、および背圧弁85の順に設けられる。
【0037】
ポンプ80は、循環ライン74においてIPAを圧送する。圧送されたIPAは、循環ライン74を循環し、タンク71に戻される。
【0038】
ヒータ81は、循環ライン74に設けられ、IPAの温度を調整する。具体的には、ヒータ81は、IPAを加熱する。ヒータ81は、制御装置4からの信号に基づいてIPAの加熱量を制御し、IPAの温度を調整する。例えば、ヒータ81によるIPAの加熱量は、温度センサ84によって検出されるIPAの温度に基づいて調整される。
【0039】
例えば、制御装置4は、ヒータ81を制御し、IPAの温度を所与の温度に調整する。所与の温度は、供給期間に処理液供給部40のノズルからウェハWに吐出されるIPAの温度が、予め設定された処理温度となる温度である。所与の温度は、供給ライン75などに設けられるフィルタ92の熱容量などに基づいて設定される温度である。
【0040】
フィルタ82は、循環ライン74を流れるIPAに含まれるパーティクルなどの汚染物質である異物を除去する。流量計83は、循環ライン74を流れるIPAの流量を計測する。温度センサ84は、循環ライン74を流れるIPAの温度を検出する。温度センサ84は、供給ライン75が接続される箇所よりも上流側の循環ライン74に設けられる。
【0041】
背圧弁85は、背圧弁85の上流側におけるIPAの圧力が所与の圧力より大きい場合には開度を大きくする。背圧弁85は、背圧弁85の上流側におけるIPAの圧力が所与の圧力より小さい場合には開度を小さくする。背圧弁85は、上流側における処理液の圧力を所与の圧力に保つ機能を有する。所与の圧力は、予め設定された圧力である。背圧弁85の開度は制御装置4(
図1参照)により制御される。
【0042】
背圧弁85は、開度が制御されることによって、循環ライン74におけるIPAの流量を調整可能である。すなわち、背圧弁85は、循環ライン74に設けられ、循環ライン74によってタンク71に戻るIPAの流量を調整する。なお、循環ライン74におけるIPAの流量は、ポンプ80の吐出圧力が制御されることによって調整されてもよい。循環ライン74におけるIPAの流量は、流量計83によって検出されるIPAの流量に基づいて制御される。
【0043】
供給ライン75は、循環ライン74に接続される。供給ライン75は、温度センサ84よりも下流側であり、かつ背圧弁85よりも上流側の循環ライン74に接続される。供給ライン75は、複数の処理液供給部40に対応して複数設けられる。供給ライン75は、循環ライン74から分岐し、処理液供給部40にIPAを供給可能となるように設けられる。供給ライン75は、循環ライン74と、ウェハWにIPAを供給する処理液供給部40とを接続する。
【0044】
供給ライン75には、流量計90と、定圧弁91と、フィルタ92と、開閉弁93とが設けられる。具体的には、供給ライン75には、循環ライン74側から、流量計90、定圧弁91、フィルタ92、および開閉弁93の順に設けられる。すなわち、供給ライン75には、循環ライン74から処理液供給部40に流れるIPAの流れ方向において、上流側から流量計90、定圧弁91、フィルタ92、および開閉弁93の順に設けられる。
【0045】
流量計90および定圧弁91は、戻しライン76と供給ライン75との接続箇所75aよりも上流側の供給ライン75に設けられる。流量計90は、供給ライン75を流れるIPAの流量を計測する。定圧弁91は、開度を変化させることにより、定圧弁91よりも下流側におけるIPAの圧力を調整する。例えば、定圧弁91は、処理液供給部40のノズルから吐出されるIPAの吐出量が、所与の吐出量となるようにIPAの圧力を調整する。すなわち、定圧弁91は、開度を変化させることにより、処理液供給部40のノズルから吐出されるIPAの流量を調整する。所与の吐出量は、予め設定された量であり、ウェハWの処理条件に応じて設定される。定圧弁91の開度は、制御装置4により制御される。
【0046】
フィルタ92は、戻しライン76と供給ライン75との接続箇所75aよりも上流側の供給ライン75に設けられる。フィルタ92は、定圧弁91よりも下流側の供給ライン75に設けられる。フィルタ92は、供給ライン75を流れるIPAに含まれるパーティクルなどの汚染物質である異物を除去する。
【0047】
開閉弁93は、処理液供給部40に対するIPAの供給の有無を切り替える。開閉弁93が開くことによって、処理液供給部40にIPAが供給される。すなわち、開閉弁93が開くことによって、処理液供給部40のノズルからIPAが吐出される。開閉弁93が閉じることによって、処理液供給部40にIPAは供給されない。すなわち、開閉弁93が閉じることによって、処理液供給部40のノズルからIPAが吐出されない。開閉弁93は、制御装置4からの信号に基づいて開閉される。すなわち、開閉弁93は、制御装置4によって制御される。
【0048】
戻しライン76は、供給ライン75に接続され、供給ライン75からタンク71にIPAを戻す。戻しライン76は、フィルタ92と開閉弁93との間に設けられた接続箇所75aにおいて供給ライン75に接続される。戻しライン76は、複数の処理液供給部40に対応して複数設けられる。戻しライン76には、開閉弁100が設けられる。
【0049】
開閉弁100は、戻しライン76におけるIPAの流れの有無を切り替える。開閉弁100が開くことによって、供給ライン75から戻しライン76にIPAが流れる。戻しライン76に流れるIPAは、タンク71に戻される。開閉弁100が閉じることによって、戻しライン76にIPAが流れない。開閉弁100は、制御装置4からの信号に基づいて開閉される。すなわち、開閉弁100は、制御装置4によって制御される。
【0050】
各開閉弁93、100(切替部の一例)は、IPAの流れを戻しライン76、または接続箇所75aよりも処理液供給部40側の供給ライン75に切り替える。
【0051】
複数の戻しライン76は、戻しライン76を流れるIPAの流れ方向において開閉弁100よりも下流側で合流し、タンク71に接続される。複数の戻しライン76が合流する箇所よりも下流側の戻しライン76には、温度センサ101が設けられる。温度センサ101は、戻しライン76からタンク71に戻るIPAの温度を検出する。なお、戻しライン76は、背圧弁85よりも下流側の循環ライン74に接続されてもよい。
【0052】
<供給期間におけるIPAの流れ>
次に、供給期間におけるIPAの流れについて
図4を参照し説明する。
図4は、実施形態に係る供給期間におけるIPAの流れを示す図である。
【0053】
制御装置4は、処理液供給部40からウェハWにIPAを供給する供給期間には、IPAが処理液供給部40に流入するように各開閉弁93、100を制御する。具体的には、制御装置4は、供給期間には、戻しライン76に設けられた開閉弁100を閉じ、供給ライン75に設けられた開閉弁93を開く。これにより、IPAが、戻しライン76には流入せず、処理液供給部40のノズルから吐出される。
【0054】
<待機期間におけるIPAの流れ>
次に、待機期間におけるIPAの流れについて
図5を参照し説明する。
図5は、実施形態に係る待機期間におけるIPAの流れを示す図である。
【0055】
制御装置4は、処理液供給部40からウェハWにIPAを供給しない待機期間には、IPAが戻しライン76に流入するように開閉弁93、100を制御する。具体的には、制御装置4は、待機期間には、供給ライン75に設けられた開閉弁93を閉じ、戻しライン76に設けられた開閉弁100を開く。これにより、IPAは、処理液供給部40のノズルから吐出されず、戻しライン76を介してタンク71に戻される。
【0056】
なお、複数の処理ユニット16において、各開閉弁93、100の開閉は、各処理ユニット16におけるウェハWの処理状況に応じてそれぞれ制御される。
【0057】
待機期間において戻しライン76に流れるIPAの流量は、供給期間において供給ライン75に流れるIPAの流量と同じ流量である。これにより、各開閉弁93、100の開閉が切り替えられることによって、ウェハWに所与の吐出量のIPAを供給することができる。
【0058】
<待機期間から供給期間への切り替え時における制御>
次に、待機期間から供給期間への切り替え時における処理について
図6を参照して説明する。
図6は、実施形態に係る待機期間から供給期間への切り替え時における処理を説明するフローチャートである。
【0059】
制御装置4は、まず、IPAが戻しライン76に流入するように開閉弁93、100を制御する(ステップS101)。これにより、制御装置4は、IPAを戻しライン76に流入させて処理液供給部40からウェハWへの処理液の供給を行わない待機期間を開始する。
【0060】
制御装置4は、待機期間に、流量計90の計測値が所定の値に維持されるように定圧弁91の開度をフィードバック制御する。
【0061】
制御装置4は、流量計90の計測値と定圧弁91の開度とを取得する(ステップS102)。定圧弁91の開度は、例えば定圧弁91に設けられた開度検出センサ(不図示)から取得される。開度検出センサとしては、たとえばロータリエンコーダを用いることができる。
【0062】
制御装置4は、流量計90の計測値と定圧弁91の開度とに基づき、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度を算出する(ステップS103)。具体的には、制御装置4は、待機期間における流量計90の計測値および定圧弁91の開度と所定の計算式とを用いて、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度を算出する。
【0063】
ここで、所定の計算式は、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度を推定するための計算式である。具体的には、所定の計算式は、待機期間における流量計90の計測値および定圧弁91の開度から、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度を推定する計算式である。ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度とは、ウェハWにIPAを供給する供給期間に定圧弁91のフィードバック制御を行うと仮定した場合における定圧弁91の開度の収束値である。本願発明者は、鋭意研究の結果、待機期間における流量計90の計測値および定圧弁91の開度と、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度とが相関関係を有することを見出した。そこで、実施形態に係る基板処理システム1では、待機期間から供給期間への切り替え前に、待機期間における流量計90の計測値および定圧弁91の開度に基づき、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度を算出することとした。
【0064】
なお、待機期間における流量計90の計測値および定圧弁91の開度と、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度との相関関係を示す計算式は、たとえば、以下の式(1)により表される。
(ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度)
=α+β・(流量計90の計測値)+γ・(定圧弁91の開度) ・・・ (1)
ただし、α、βおよびγは、解析や実験等により求められる係数である。
【0065】
制御装置4は、たとえば、待機期間において取得した流量計90の計測値および定圧弁91の開度を式(1)の計算式に代入することにより、ウェハWへのIPAの供給を行う際の定圧弁91の開度を算出することができる。
【0066】
制御装置4は、IPAが処理液供給部40に流入するように開閉弁93、100を制御する(ステップS104)。これにより、制御装置4は、IPAを処理液供給部40に流入させてウェハWへの処理液の供給を行う供給期間を開始する。すなわち、制御装置4は、待機期間から供給期間への切り替えを行う。
【0067】
制御装置4は、定圧弁91の初期開度をステップS103にて算出された開度に設定する(ステップS105)。これにより、IPAの流入先を戻しライン76から処理液供給部40に切り替えてウェハWへのIPAの供給を開始する際の外乱によるIPA粘性の変化を低減することができる。たとえば、ウェハへのIPAの供給を行わない期間の戻しライン76および供給ライン75に残存する処理液の滞留時間や、環境温度等の外乱による影響を低減することができる。したがって、ウェハWへのIPAの供給を開始する際の流量変動を抑制することができる。
【0068】
制御装置4は、供給期間を開始してから所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS106)。所定の時間は、たとえば、ウェハへのIPAの供給を行わない期間の戻しライン76および供給ライン75に残存する処理液を取り除くための時間である。所定の時間は、たとえば、1秒以上5秒未満である。
【0069】
制御装置4は、供給期間を開始してから所定の時間が経過するまでの間に(ステップS106No)、定圧弁91の開度をステップS105にて設定された初期開度に維持する。
【0070】
制御装置4は、供給期間を開始してから所定の時間が経過すると(ステップS106Yes)、流量計90の計測値が所定の値に維持されるように定圧弁91の開度をフィードバック制御する(ステップS107)。かかる定圧弁91のフィードバック制御は、供給期間が終了するまで継続される。
【0071】
<効果>
以上のように、実施形態に係る基板処理装置(一例として、基板処理システム1)は、貯留タンク(一例として、タンク71)と、循環ライン(一例として、循環ライン74)と、供給ライン(一例として、供給ライン75)と、戻しライン(一例として、戻しライン76)と、流量計(一例として、流量計90)および定圧弁(一例として、定圧弁91)と、制御部(一例として、制御装置4)とを備える。貯留タンクは、処理液(一例として、IPA)を貯留する。循環ラインは、貯留タンクから送られる処理液を貯留タンクに戻す。供給ラインは、循環ラインと、基板(一例として、ウェハW)に処理液を供給する供給部(一例として、処理液供給部40)とを接続する。戻しラインは、供給ラインに接続され、供給ラインから貯留タンクに処理液を戻す。流量計および定圧弁は、戻しラインと供給ラインとの接続箇所よりも上流側の供給ラインに設けられる。制御部は、処理液を戻しラインに流入させて供給部から基板への処理液の供給を行わない待機期間に、流量計の計測値と定圧弁の開度とに基づき、基板への処理液の供給を行う際の定圧弁の開度を算出する。制御部は、処理液を供給部に流入させて基板への処理液の供給を行う供給期間に、定圧弁の初期開度を算出された開度に設定する。これにより、基板への処理液の供給を開始する際の流量変動を抑制することができる。
【0072】
また、制御部は、供給期間を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、定圧弁の開度を設定された初期開度に維持する。制御部は、所定の時間が経過してから供給期間を終了するまでの間に、流量計の計測値が所定の値に維持されるように定圧弁の開度を制御する。これにより、基板への処理液の供給を開始する際の流量変動をより適切に抑制することができる。
【0073】
また、処理液は、IPA、HF水溶液または有機薬液である。これにより、基板へIPA、HF水溶液または有機薬液の供給を開始する際の流量変動を抑制することができる。
【0074】
<変形例>
基板処理システム1の処理液供給源70は、
図7に示すように、2種類の処理液の混合液を供給する処理液供給系として構成されてもよい。
図7は、実施形態の変形例に係る処理液供給源70の概略構成を示す図である。ここでは、硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture)液を供給する処理液供給系としての処理液供給源70の構成例について説明する。
【0075】
図7に示す処理液供給源70は、硫酸の供給系として、タンク71と、処理液補充部72と、排液ライン73と、循環ライン74と、供給ライン75と、戻しライン76とを備える。すなわち、
図7に示す処理液供給源70では、実施形態における処理液であるIPAが硫酸に置き換えられる。処理液が硫酸である場合、供給ライン75は、循環ライン74から分岐し、供給ライン75の後述する混合部94に硫酸を通流させることが可能となるように設けられる。
【0076】
また、処理液供給源70は、過酸化水素水の供給系として、過酸化水素水供給ライン110と、開閉弁111と、過酸化水素水供給源112とを備える。過酸化水素水供給ライン110の一端は、開閉弁111を介して過酸化水素水供給源112に接続され、他端は供給ライン75の混合部94に接続される。処理液供給源70は、過酸化水素水供給源112から供給される過酸化水素水を過酸化水素水供給ライン110を介して供給ライン75の混合部94へ供給する。
【0077】
処理液供給源70は、混合部94を備える。混合部94は、戻しライン76が接続される接続箇所75aよりも処理液供給部40側の供給ライン75に設けられる。混合部94は、供給ライン75から供給される硫酸(処理液の一例)と、過酸化水素水供給ライン110から供給される過酸化水素水(第2処理液の一例)とを混合して混合液であるSPM液を生成し、生成したSPM液を処理液供給部40に供給する。処理液供給部40は、混合部94から供給されるSPM液をウェハWに供給する。変形例によれば、ウェハWへのSPM液の供給を開始する際の流量変動を抑制することができる。
【0078】
また、上述の実施形態では、供給期間を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、定圧弁91の開度を設定された初期開度に維持することとしたが、開示技術はこれに限られない。たとえば、制御装置4は、供給期間の全てにおいて、定圧弁91の開度を設定された初期開度に維持してもよい。
【0079】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 基板処理システム
4 制御装置
16 処理ユニット
40 処理液供給部
70 処理液供給源
71 タンク
74 循環ライン
75 供給ライン
75a 接続箇所
76 戻しライン
90 流量計
91 定圧弁
93 開閉弁
94 混合部
100 開閉弁
W ウェハ