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特開2024-171068カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171068
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20241204BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C01B32/174
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087942
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
(72)【発明者】
【氏名】保坂 龍
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC03A
4G146AC03B
4G146AC15A
4G146AC15B
4G146AC20B
4G146BA04
4G146CB10
4G146DA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050GA10
5H050GA29
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】導電性に優れる成形体を形成可能なカーボンナノチューブ分散液およびその製造方法の提供。
【解決手段】複数本のカーボンナノチューブと、溶媒と、分散剤とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、前記複数本のカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを含み、前記複数本のカーボンナノチューブの少なくとも一部がカーボンナノチューブバンドルを形成しており、前記カーボンナノチューブバンドルの平均長さが1.5μm超であり、前記カーボンナノチューブバンドルの平均直径が15.0nm未満であり、前記カーボンナノチューブバンドル100本中、直径が30.0nm超の本数が10本以下である、カーボンナノチューブ分散液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のカーボンナノチューブと、溶媒と、分散剤とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、
前記複数本のカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを含み、
前記複数本のカーボンナノチューブの少なくとも一部がカーボンナノチューブバンドルを形成しており、
前記カーボンナノチューブバンドルの平均長さが1.5μm超であり、
前記カーボンナノチューブバンドルの平均直径が15.0nm未満であり、
前記カーボンナノチューブバンドル100本中、直径が30.0nm超の本数が10本以下である、カーボンナノチューブ分散液。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブバンドルの平均アスペクト比が120超である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブのG/D比が0.5以上20以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの調和平均径が500nm超である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法であって、
前記複数本のカーボンナノチューブと、前記溶媒と、前記分散剤とを含む混合液に、湿式ジェットミルによる分散処理を施す工程を含む、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【請求項6】
前記分散処理において前記混合液に印加する圧力が50MPa以下であり、
前記分散処理におけるパス回数が10回以上である、請求項5に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性、熱伝導性、および強度などの特性に優れる材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略記する場合がある。)が注目されている。
【0003】
ここで、CNTは、一本一本の特性は優れているものの、外径が小さいためファンデルワールス力によってバンドル化し易い(束になり易い)。そのため、CNTを一旦溶媒に分散させてカーボンナノチューブ分散液(CNT分散液)を調製することが従来行われている。そして得られたCNT分散液は、例えば、複数本のCNTが集合してなる炭素膜に例示される成形体の製造に用いられる。
【0004】
そこで、近年では、CNT分散液を改良することにより成形体の諸特性を向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献1では、CNTと、溶媒と、分散剤とを含み、CNTの平均外径、回折角2θ=25°±2°のピークの半値幅およびG/D比がそれぞれ所定の範囲内であるCNT分散液が開示されている。そして、特許文献1によれば、当該CNT分散液を用いれば、導電性に優れた樹脂組成物、電極膜などを得ることができる。
また、特許文献2では、CNTと、分散剤と、溶媒とを含み、CNTの平均外径、BET比表面積および平均繊維長がそれぞれ所定の範囲内であるCNT分散液が開示されている。そして、特許文献2によれば、当該CNT分散液を用いれば、導電性および密着性に優れた樹脂組成物、電極膜などを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/004095号
【特許文献2】特開2021-72279号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、近年ではCNT分散液から形成される成形体の諸特性の更なる向上が求められているところ、上記従来のCNT分散液は、成形体の導電性を一層高めるという点において改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、導電性に優れる成形体を形成可能なカーボンナノチューブ分散液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。ここで本発明者は、CNT分散液中においてCNTが複数本集合して形成されるバンドル(以下、「CNTバンドル」と称する場合がある。)に着目した。そして、本発明者は、単層CNTを含有する複数本のCNTと、溶媒と、分散剤とを含むCNT分散液において、CNTバンドルの平均長さを所定値超とし、CNTバンドルの平均直径を所定値未満とし、直径30.0nm超のCNTバンドルの割合を所定値以下とすれば、成形体の導電性を高めうることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明によれば、下記〔1〕~〔4〕のCNT分散液、および下記〔5〕~〔6〕のCNT分散液の製造方法が提供される。
【0010】
〔1〕複数本のカーボンナノチューブと、溶媒と、分散剤とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、前記複数本のカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを含み、前記複数本のカーボンナノチューブの少なくとも一部がカーボンナノチューブバンドルを形成しており、前記カーボンナノチューブバンドルの平均長さが1.5μm超であり、前記カーボンナノチューブバンドルの平均直径が15.0nm未満であり、前記カーボンナノチューブバンドル100本中、直径が30.0nm超の本数が10本以下である、カーボンナノチューブ分散液。
単層CNTを含有する複数本のCNTと、溶媒と、分散剤とを含み、CNTバンドルの平均長さが所定値超であり、CNTバンドルの平均直径が所定値未満であり、CNTバンドル100本のうち直径が30.0nm超の本数が所定値以下であるCNT分散液によれば、導電膜に、優れた導電性を発揮させることができる。
なお、本発明において、「カーボンナノチューブバンドルの平均長さ」、「カーボンナノチューブバンドルの平均直径」、および「カーボンナノチューブバンドル100本中、直径が30.0nm超の本数」は、それぞれ、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0011】
〔2〕前記カーボンナノチューブバンドルの平均アスペクト比が120超である、上記〔1〕に記載のカーボンナノチューブ分散液。
CNTバンドルの平均アスペクト比が120超であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
なお、本発明において、CNTバンドルの「平均アスペクト比」は、CNTバンドルの平均長さと平均直径の比(平均長さ/平均直径)を算出することにより求めることができる。
【0012】
〔3〕前記カーボンナノチューブのG/D比が0.5以上20以下である、上記〔1〕または〔2〕に記載のカーボンナノチューブ分散液。
CNTのG/D比が上述の範囲内であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
なお、本発明において、「G/D比」とは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比を指し、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0013】
〔4〕前記カーボンナノチューブの調和平均径が500nm超である、上記〔1〕~〔3〕の何れかに記載のカーボンナノチューブ分散液。
CNTの調和平均径が500nm超であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
なお、本発明において、「調和平均径」とは、動的光散乱法(DLS)により測定されるz平均径(z-Average)を指し、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0014】
〔5〕上記〔1〕~〔4〕の何れかに記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法であって、前記複数本のカーボンナノチューブと、前記溶媒と、前記分散剤とを含む混合液に、湿式ジェットミルによる分散処理を施す工程を含む、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。
上述した工程を含むCNT分散液の製造方法によれば、導電性に優れる成形体を形成可能なCNT分散液を製造することができる。
【0015】
〔6〕前記分散処理において前記混合液に印加する圧力が50MPa以下であり、前記分散処理におけるパス回数が10回以上である、上記〔5〕に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
湿式ジェットミルによる分散処理を、圧力50MPa以下、パス回数10回以上の条件で行えば、得られる成形体の導電性を一層高めることができる。
なお、本発明において、「パス回数」とは、混合液の全量が湿式ジェットミルを通過する回数を意味する。
【0016】
本発明によれば、導電性に優れる成形体を形成可能なカーボンナノチューブ分散液およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のCNT分散液は、特に限定されることなく、例えば、炭素膜やエラストマー成形体に例示される成形体を作製する際の材料として用いることができる。そして、本発明のCNT分散液は、本発明のCNT分散液の製造方法を用いて製造することができる。
【0018】
(カーボンナノチューブ分散液)
本発明のCNT分散液は、CNTと、溶媒と、分散剤とを少なくとも含み、任意に、CNT、溶媒および分散剤以外の成分(その他の成分)を含有する。なお、複数本のCNTの少なくとも一部は、単層CNTであり、CNT分散液中でCNTバンドルを形成している。
ここで、本発明のCNT分散液は、CNTバンドルの平均長さが1.5μm超であり、CNTバンドルの平均直径が15.0nm未満であり、そしてCNTバンドル100本のうち直径が30.0nm超の本数が10本以下であることを特徴とする。
なお、CNTバンドルとは、複数本のCNTがCNTの長軸方向に沿ってバンドル状(束状)に集合して形成されたものである。
【0019】
そして、本発明のCNT分散液は、CNTバンドルの平均長さが所定値超であり、CNTバンドルの平均直径が所定値未満であり、CNTバンドル100本のうち直径が30.0nm超の本数が所定値以下であるため、当該CNT分散液を用いれば、成形体に優れた導電性を発揮させることができる。かかる本発明のCNT分散液を用いることで、上記の効果が得られる理由は定かではないが、以下の通りであると推察される。
【0020】
本発明者は、CNT分散液の分散性を向上すべく、CNT分散液中で複数本のCNTにより構成されるCNTバンドルに着目した。CNTバンドルの平均直径が小さくなるほど、各バンドルを構成するCNTの数は少なくなる。また、CNTバンドル100本のうち直径が30.0nm超の本数が少なくなるほど、CNT分散液中に存在するCNTバンドルの本数は多くなる。そして、本発明のCNT分散液では、CNTバンドルの平均直径を15.0nm未満とし、CNTバンドル100本のうち直径が30.0nm超の本数を10本以下とすることにより、CNT分散液中に存在するCNTバンドルの数が十分に確保される。加えて、本発明の分散液は、CNTバンドルの平均長さが1.5μm超であることで、CNT分散液中に存在するCNTバンドルの長さが十分に確保される。そして、このようなCNT分散液を用いれば、成形体中に十分な長さを有するCNTバンドルを分布させることで、良好な導電パスを形成しうる。
上記の理由により、本発明のCNT分散液を用いれば、導電膜に、優れた導電性を発揮させることができると考えられる。
【0021】
<CNT>
CNTは、単層CNTを含んでいれば、特に限定されない。CNTとして、単層CNTのみを使用してもよいし、単層CNTと多層CNTを組み合わせて使用してもよい。
【0022】
<<性状>>
[CNTバンドルの平均長さ]
CNTバンドルの平均長さは、1.5μm超である必要があり、1.6μm以上であることが好ましく、1.7μm以上であることがより好ましく、1.8μm以上であることが更に好ましく、1.9μm以上であることがより一層好ましく、2.0μm以上であることが特に好ましい。CNTバンドルの平均長さが1.5μm以下であると、成形体の導電性が低下する。また、CNTバンドルの平均長さの上限は、特に限定されず、例えば、3.5μm以下とするこができ、3.0μm以下とすることができる。
なお、CNT分散液中のCNTバンドルの平均長さは、例えば、原料CNT(CNT分散液の調製時に原料として用いられるCNT)の長さ、分散剤の種類や量、および分散処理の条件を変更する等して調整することができる。具体的には、後述する本発明のCNT分散液の製造方法の分散工程において、混合液に印加する圧力を高くすることでCNTバンドルの平均長さは小さくなり、低くすることで同平均長さは大きくなる。また、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を増やすことでCNT分散液中のCNTバンドルの平均長さは小さくなり、減らすことで同平均長さは大きくなる。
【0023】
[CNTバンドルの平均直径]
CNTバンドルの平均直径は、15.0nm未満である必要があり、14.5nm以下であることが好ましく、14.0nm以下であることがより好ましい。CNTバンドルの平均直径が15.0nm以上であると、得られる成形体の導電性が低下する。また、CNTバンドルの平均直径の下限は、特に限定されず、例えば、12.0nm以上とするこができ、12.5nm以上とすることができる。
なお、CNT分散液中のCNTバンドルの平均直径は、例えば、原料CNTの直径、分散剤の種類や量、および分散処理の条件を変更する等して調整することができる。具体的には、後述する本発明のCNT分散液の製造方法において、湿式ジェットミルによる分散処理の圧力(混合液に負荷する圧力)を高くすることでCNTバンドルの平均直径は小さくなり、低くすることで同平均直径は大きくなる。また、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を増やすことでCNT分散液中のCNTバンドルの平均直径は小さくなり、減らすことで同平均直径は大きくなる。
【0024】
[直径30.0nm超のバンドルの本数]
直径30.0nm超のバンドルの本数は、10本以下である必要があり、9本以下であることが好ましく、8本以下であることがより好ましく、7本以下であることが更に好ましく、6本以下であることがより一層好ましく、5本以下であることが特に好ましい。直径30.0nm超のバンドルの本数が10本より多いと、成形体の導電性が低下する。また、直径30.0nm超のバンドルの本数の下限は、特に限定されず、例えば、1本以上とするこができ、2本以上とすることができる。
なお、直径30.0nm超のバンドルの本数は、例えば、原料CNTの直径、分散剤の種類や量、および分散処理の条件を変更する等して調整することができる。具体的には、後述する本発明のCNT分散液の製造方法の分散工程において、混合液に印加する圧力を高くすることで直径30.0nm超のバンドルの本数は少なくなり、低くすることで同本数は多くなる。また、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を増やすことで直径30.0nm超のバンドルの本数は少なくなり、減らすことで同本数は多くなる。
【0025】
[CNTバンドルの平均アスペクト比]
CNTバンドルの平均アスペクト比は、120超であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、140以上であることが更に好ましく、150以上であることが特に好ましい。CNTバンドルの平均アスペクト比が120超であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。また、CNTバンドルの平均アスペクト比の上限は、特に限定されず、例えば、250以下とするこができ、225以下とすることができ、200以下とすることができる。
【0026】
[G/D比]
CNTのG/D比は、0.5以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。CNTのG/D比が上述の範囲内であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
【0027】
[調和平均径]
CNTの調和平均径は、500nm超であることが好ましく、550nm以上であることがより好ましく、600nm以上であることが更に好ましい。CNTの調和平均径が500nm超であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。また、CNTの調和平均径の上限は、特に限定されず、例えば、1500nm以下とすることができ、1250nm以下とすることができ、1000nm以下とすることができる。
なお、CNTの調和平均径は、例えば、原料CNTの長さや直径、分散剤の種類や量、および分散処理の条件を変更する等して調整することができる。具体的には、後述する本発明のCNT分散液の製造方法の分散工程において、混合液に印加する圧力を高くすることでCNTの調和平均径は小さくなり、低くすることで同調和平均径は大きくなる。また、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を増やすことでCNTの調和平均径は小さくなり、減らすことで同調和平均径は大きくなる。
【0028】
<<含有割合>>
CNT分散液中のCNTの含有割合は、CNT分散液の全量を100質量%として、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。CNT分散液中に占めるCNTの割合が上述した範囲内であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
【0029】
<溶媒>
本発明のCNT分散液は、溶媒として水のみを含んでいてもよいし、溶媒として有機溶媒(例えば、エステル類、ケトン類、アルコール類)のみを含んでいてもよいし、溶媒は水と有機溶媒の混合物であってもよい。CNT分散液の分散性を向上させ、成形体の導電性を一層高める観点からは、本発明のCNT分散液は、溶媒として水を含むことが好ましい。なお、本発明のCNT分散液は、1種の有機溶媒を含んでいてもよく、2種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0030】
ここで、本発明のCNT分散液は、溶媒に占める水の割合が、溶媒の全量を100質量%として、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、100質量%である(即ち、本発明のCNT分散液は溶媒として水のみを含む)ことが特に好ましい。CNT分散液中の溶媒に占める水の割合が上記下限以上であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
【0031】
<分散剤>
分散剤としては、特に限定されることなく、CNTの分散を補助し得る既知の分散剤を用いることができる。そして、分散剤としては、例えば、界面活性剤、カルボン酸基を有する重合体などが挙げられる。なお、分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ここで、界面活性剤としては、イオン性(カチオン性、アニオン性)界面活性剤、非イオン性(ノニオン性)界面活性剤が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラペンチルホスホニウム、塩化トリオクチルメチルホスホニウム、塩化ペンチルトリフェニルホスホニウム等の第四級ホスホニウム塩;等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル型非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;グリセリンエステル;等が挙げられる。
上述した界面活性剤の中でも、成形体の導電性を一層高める観点から、アニオン性界面活性剤が好ましく、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0033】
カルボン酸基を有する重合体としては、例えば、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、カルボン酸基含有単量体単位を含む共重合体等が挙げられる。
なお、本発明において、重合体が「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
【0034】
カルボン酸基含有単量体単位を含む共重合体は、カルボン酸基含有単量体単位およびその他の繰り返し単位を含む共重合体である。
なお、カルボン酸基含有単量体単位が有するカルボン酸基は、アルカリ金属やアンモニア等と塩を形成していてもよい。
【0035】
ここで、カルボン酸基含有単量体単位を形成し得るカルボン酸基含有単量体としては、モノカルボン酸およびその誘導体や、ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸誘導体としては、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸や、マレイン酸ブチル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸モノエステルが挙げられる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
また、カルボン酸基含有単量体としては、加水分解によりカルボン酸基を生成する酸無水物も使用できる。
更に、カルボン酸基含有単量体としては、ブテントリカルボン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸や、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノ2-ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステルなども用いることができる。
上述したカルボン酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、共重合体が含むその他の繰り返し単位は、特に限定されず、1,3―ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)等の共役ジエン単量体単位;アクリロニトリル単位およびメタクリロニトリル単位等のニトリル基含有単量体単位;アクリル酸アルキルエステル単位およびメタクリル酸アルキルエステル単位等の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位;などが挙げられる。なお、共重合体は、その他の繰り返し単位を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0037】
<<含有割合>>
CNT分散液中に含まれる分散剤の割合は、CNT分散液の全量を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。CNT分散液中に占める分散剤の割合が上述した範囲内であれば、成形体の導電性を一層高めることができる。
【0038】
<その他の成分>
CNT分散液が任意に含み得るその他の成分としては、CNT以外の導電材、上述した分散剤以外の重合体成分、酸化防止剤、樹脂などが挙げられる。なお、CNT分散液は、その他の成分を1種類のみ含んでいてもよりし、2種類以上含んでいてもよい。
【0039】
CNT分散液中に含まれるその他の成分の割合は、CNT分散液の全量を100質量%として、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることがより一層好ましく、0質量%である(即ち、本発明のCNT分散液はその他の成分を含まない)ことが特に好ましい。
【0040】
(CNT分散液の製造方法)
上述した本発明のCNT分散液は、例えば、本発明のCNT分散液の製造方法を用いて調製することができる。本発明のCNT分散液の製造方法は、複数本のCNTと、溶媒と、分散剤とを含む混合液に、湿式ジェットミルによる分散処理を施す工程(分散工程)を含む。なお、本発明のCNT分散液の製造方法は、上述した分散工程以外の工程(その他の工程)を含んでいてもよい。
【0041】
そして、本発明のCNT分散液の製造方法によれば、導電性に優れる成形体を形成可能な本発明のCNT分散液を得ることができる。
【0042】
<分散工程>
分散工程では、複数本のCNTと、溶媒と、分散剤とを含む混合液に、湿式ジェットミルによる分散処理を施す。なお、CNT、溶媒、および分散剤としては、本発明の「CNT分散液」の項で上述したものを用いることができる。
【0043】
<<湿式ジェットミル>>
分散工程における分散処理に使用可能な湿式ジェットミルとしては、例えば、「ナノヴェイタ(登録商標)」(吉田機械興業株式会社製)、「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)、超高圧湿式微粒化装置(吉田工業株式会社製)、「ナノマイザー(登録商標)」(ナノマイザー株式会社製)、および「スターバースト(登録商標)」(株式会社スギノマシン製)等が挙げられる。
【0044】
ここで、湿式ジェットミルが備えるノズルとしては、例えば、ストレートノズル、クロスノズルなどが挙げられる。ストレートノズルは、ノズル断面がI型であり、処理エネルギーが比較的小さい。一方、クロスノズルは、ノズル断面がX型であり、処理エネルギーがストレートノズルより大きい。そして、成形体の導電性を一層高める観点から、湿式ジェットミルが備えるノズルとして、ストレートノズルを用いることが好ましい。
【0045】
[圧力]
ここで、湿式ジェットミルによる混合液の分散処理にあたり印加する圧力は、10MPa以上とすることが好ましく、15MPa以上とすることがより好ましく、20MPa以上とすることが更に好ましく、50MPa以下とすることが好ましく、40MPa以下とすることがより好ましく、30MPa以下とすることが更に好ましい。混合液に印加する圧力が10MPa以上であれば、CNT分散液の分散性を向上させ、得られる成形体の導電性を一層高めることができる。また、混合液に印加する圧力が50MPa以下であれば、分散処理によるCNTの切断を抑制することで、得られる成形体の導電性を一層高めることができる。
【0046】
[パス回数]
また、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数は、10回以上とすることが好ましく、15回以上とすることがより好ましく、20回以上とすることが更に好ましく、25回以上とすることがより一層好ましく、30回以上とすることが特に好ましく、50回以下とすることが好ましく、45回以下とすることがより好ましい。湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数が10回以上であれば、CNT分散液の分散性を向上させ、得られる成形体の導電性を一層高めることができる。また、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数が50回以下であれば、分散処理によるCNTの切断を抑制することで、得られる成形体の導電性を一層高めるとともに、CNT分散液の製造効率を十分に確保することができる。
【0047】
<その他の工程>
その他の工程としては、上述した分散工程の前に、複数本のCNTと、溶媒と、分散剤とを混合して、混合液を得る工程(混合工程)などが挙げられる。
【実施例0048】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、CNTバンドルの平均長さ、平均直径、平均アスペクト比および直径30.0nm超の本数の割合、CNTのG/D比および調和平均径、ならびに、炭素膜(成形体)の体積導電率は、以下の方法で評価した。
【0049】
<平均長さ、平均直径、平均アスペクト比>
実施例および比較例で調製したCNT分散液を、単層CNTの濃度が25質量ppmになるように1%コール酸ナトリウム水溶液で希釈した。得られた希釈溶液をウエハー上にスポイトで一滴滴下した後、ウエハーを90℃に加熱したホットプレートに置き、1分間ベークを行った。得られたCNT塗布ウエハーを、走査電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク社製、製品名「SU8200」)を用いて、ワーキングディスタンス3mm、加速電圧、1.0kV、倍率10000倍の条件で観察し、視野内に10本以上のCNTが含まれる複数枚のSEM画像を取得した。取得したSEM画像から任意に抽出した100本のCNTバンドルについて、バンドルの直径(外径)および長さを測定した。そして、測定した100本のCNTバンドルの直径の算術平均値を、CNT分散液中におけるCNTバンドルの平均直径(nm)とした。また、測定した100本のCNTバンドルの長さの算術平均値を、CNT分散液中におけるCNTバンドルの平均長さ(μm)とした。なお、平均アスペクト比は、平均長さ(nm)を平均直径(nm)で除して算出した。
<直径30.0nm超のバンドルの本数>
上記のようにして100本のCNTバンドルの直径(外径)を測定し、下記の基準で評価した。
A:直径30.0nm超の本数が5本以下
B:直径30.0nm超の本数が6本以上10本以下
C:直径30.0nm超の本数が11本以上
<G/D比>
顕微レーザラマン分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「Nicolet Almega XR」)を使用し、実施例および比較例で使用したCNTのラマンスペクトルを計測した。そして、得られたラマンスペクトルについて、1590cm-1近傍で観察されたGバンドピークの強度と、1340cm-1近傍で観察されたDバンドピークの強度とを求め、G/D比を算出した。
<調和平均径>
実施例および比較例で調製したCNT分散液を、単層CNTの濃度が10質量ppmになるように1%コール酸ナトリウム水溶液で希釈した。得られた希釈溶液を、Zetasizer Nano(Malvern社製、製品名「Nano ZS」)を用いて、温度25℃、走査回数3回、走査時間60秒の条件で測定し、調和平均径(z平均径)を求めた。
<体積導電率>
実施例および比較例で作製した炭素膜(成形体)の体積導電率(S/cm)を、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ―GX」)を用いて、JIS K 7194に準拠して測定した。この体積導電率の値が高いほど、炭素膜(成形体)は導電性に優れる。
【0050】
(実施例1)
<CNT分散液の調製>
溶媒としての水中に分散剤としてのコール酸ナトリウムを含有するコール酸ナトリウム水溶液(コール酸ナトリウムの濃度:1%)300mLに、単層CNT(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO(登録商標) SG101」、G/D比:5.0、以下「CNT-a」と称する)を0.3g加え、混合液(単層CNTの濃度:0.1%)を得た。この混合液に対して、湿式ジェットミル(吉田機械興業社製、型番「NVL-ES008A-D10」、製品名「ナノヴェイタ(登録商標)」)を用いて、圧力が25MPa、パス回数が5回の条件で分散処理を行った。具体的には、背圧を負荷しつつ、混合液にせん断力を与えて単層CNTを分散させ、CNT分散液を得た。得られたCNT分散液中のCNTバンドルの平均長さ、平均直径および平均アスペクト比、直径30.0nm超のバンドルの本数、ならびに、調和平均径を測定した。結果を表1に示す。
<炭素膜(成形体)の作製>
上述で調製されたCNT分散液を、メンブレンフィルターを備えた減圧濾過装置を用いて、0.09MPaの条件下で濾過した。濾過終了後、イソプロピルアルコールおよび水のそれぞれを減圧濾過装置に通過させることで、メンブレンフィルター上に形成された炭素膜を洗浄し、その後15分間空気を通過させた。次いで、炭素膜/メンブレンフィルターをエタノールに浸漬後、メンブレンフィルターから炭素膜を剥離することにより、成形体としての炭素膜を得た。得られた炭素膜は、メンブレンフィルターと同等の大きさであり優れた成膜性を有し、かつフィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性も有していた。この炭素膜の導電率を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2~9)
CNT分散液の調製時に、湿式ジェットミルによる分散処理の圧力およびパス回数を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例10)
CNT分散液の調製時に、単層CNTとしてのCNT-aに代えてCNT-b(単層CNT、G/D比:1.2)を使用するとともに、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を5回から10回に変更したこと以外は実施例1と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例11~21)
CNT分散液の調製時に、湿式ジェットミルによる分散処理の圧力およびパス回数を表1~2のように変更したこと以外は実施例10と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1~2に示す。
【0054】
(実施例22)
CNT分散液の調製時に、分散剤としてのコール酸ナトリウムに代えてドデシルベンゼン硫酸ナトリウムを使用するとともに、湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を10回から40回に変更したこと以外は実施例10と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(比較例1~8)
CNT分散液の調製時に、湿式ジェットミルによる分散処理の圧力およびパス回数を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2~3に示す。
【0056】
(比較例9~15)
CNT分散液の調製時に、湿式ジェットミルによる分散処理の圧力およびパス回数を表1のように変更したこと以外は実施例10と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3~4に示す。
【0057】
(比較例16)
以下のようにして調製したCNT分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、炭素膜を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
<CNT分散液の調製>
溶媒としての水中に分散剤としてのコール酸ナトリウムを含有するコール酸ナトリウム水溶液(コール酸ナトリウムの濃度:1%)25mLに、単層CNTとしてのCNT-aを0.025g加え、混合液(単層CNTの濃度:0.1%)を得た。この混合液に対して、超音波装置(シンキー社製、製品名「超音波ナノ太郎」)を用いて、出力140W、処理時間40分間の条件で分散処理を行い、CNT分散液を得た。
【0058】
(比較例17~19)
CNT分散液の調製時に、超音波処理の処理時間を表4のように変更したこと以外は比較例16と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
【0059】
(比較例20)
CNT分散液の調製時に、単層CNTとしてのCNT-aに代えてCNT-bを使用したこと以外は比較例16と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
【0060】
(比較例21~23)
CNT分散液の調製時に、超音波処理の処理時間を表4のように変更したこと以外は比較例20と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
【0061】
(比較例24)
CNT分散液の調製時に、分散剤としてのコール酸ナトリウムを使用せず、また湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を5回から40回に変更したこと以外は実施例1と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。なお、CNTの調和平均径は測定することができなかった。
【0062】
(比較例25)
CNT分散液の調製時に、分散剤としてのコール酸ナトリウムを使用せず、また湿式ジェットミルによる分散処理のパス回数を10回から40回に変更したこと以外は実施例10と同様にして、CNT分散液の調製および炭素膜の作製を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。なお、CNTの調和平均径は測定することができなかった。
【0063】
なお、以下に示す表1~4中、
「単層」は、単層CNTを示し、
「SC」は、コール酸ナトリウムを示し、
「SDBS」は、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムを示し、
「直径30nm超のCNTバンドルの本数」は、CNTバンドル100本のうち直径が30.0nm超のCNTバンドルの本数を示し、
「ジェットミル」は、湿式ジェットミルを示し、
「超音波」は、超音波処理を示し、
「A」は、5本以下を示し、
「B」は、6本以上10本以下を示し、
「C」は、11本以上を示す。
また、「CNTバンドルの平均アスペクト比」は、小数点第一位を四捨五入した値で表記した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
表1~4より、単層CNTと、溶媒と、分散剤とを含み、CNTバンドルの平均長さが所定値超であり、CNTバンドルの平均直径が所定値未満であり、CNTバンドル100本のうち直径30.0nm超のCNTバンドルの本数が所定値以下であるCNT分散液を用いた実施例1~22では、導電性に優れる炭素膜を作製できていることが分かる。
一方、CNTバンドルの平均長さ、CNTバンドルの平均直径、およびCNTバンドル100本のうち直径30.0nm超のCNTバンドルの本数の少なくとも1つが所定範囲外であるCNT分散液を用いた比較例1~23では、実施例1~22に比べて、炭素膜の導電性が低下していることが分かる。
また、分散剤を含まないCNT分散液を用いた比較例24~25でも、実施例1~22に比べて、炭素膜の導電性が低下していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、導電性に優れる成形体を形成可能なカーボンナノチューブ分散液およびその製造方法を提供することができる。