(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171118
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】高圧流体用ホースの取付け構造、及び、アトマイズ装置
(51)【国際特許分類】
F16L 23/12 20060101AFI20241204BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20241204BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20241204BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20241204BHJP
【FI】
F16L23/12
F16L55/00 Z
B22F9/08 A
B09B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088015
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 幸基
(72)【発明者】
【氏名】石川 進太郎
【テーマコード(参考)】
4D004
4K017
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004AA50
4D004AC04
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA50
4D004CC03
4K017AA03
4K017AA04
4K017BA03
4K017BA05
4K017EB01
4K017EB09
4K017FA03
4K017FA17
(57)【要約】
【課題】高圧流体用ホースの取付け構造部分における高い気密性を維持しつつ、高圧流体用ホースの位置合わせ作業の難度を低減させて作業者の作業負担を小さくすること。
【解決手段】一方の末端の開口の周囲にフランジ112が設けられている導入部材11と、円盤状の被連結フランジ12と、導入部材11と、被連結フランジ12とに挟持されていて、円錐台状の外形を有するホースホルダー13と、を含んで構成されていて、被連結フランジ12は、ホースホルダー13の外形と略同一の内法形状を有するホースホルダー収容凹部121を有し、ホースホルダー13は、1対の半円錐台状部品13A、13Bが組合されてなり、各々の半円錐台状部品13A、13Bが被連結フランジ12とフランジ112によってホース嵌通孔132の中心に向けて押圧されている状態で、ホースホルダー収容凹部121の内部に嵌設されている、高圧流体用ホースの取付け構造1とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性構造物の内部に高圧流体用ホースを導入するための高圧流体用ホースの取付け構造であって、
高圧流体用ホースと、
円筒状のホース導入管の一方の末端の開口の周囲にフランジが設けられている管状部材であって、前記気密性構造物の外壁に接合されていてる導入部材と、
中央に前記高圧流体用ホースを挿通させるホース挿通孔が設けられている円盤状の部材であって、前記高圧流体用ホースの側面に環装されていて、尚且つ、前記フランジに固定ボルトによって接合されている、被連結フランジと、
円錐台状の外形を有する部材の中央にホース嵌通孔が形成されていて、前記フランジと、前記被連結フランジとに挟持されているホースホルダーと、
を含んで構成されていて、
前記被連結フランジは、前記フランジに対面する側の表面に、前記ホースホルダーの外形と略同一の内法形状を有するホースホルダー収容凹部を有し、
前記ホースホルダーは、夫々が円錐台状の形状を中心軸を含む面で均等に2分割してなる形状を有する1対の半円錐台状部品が組合されてなり、各々の前記半円錐台状部品が前記フランジと前記被連結フランジとによって前記ホース嵌通孔の中心に向けて押圧されている状態で、前記ホースホルダー収容凹部の内部に嵌設されている、
高圧流体用ホースの取付け構造。
【請求項2】
前記ホース嵌通孔の内側面、及び/又は、前記フランジの開口部の周囲の表面に、リング状溝部を有し、
前記リング状溝部には、弾性材料からなるリング状シール部材が嵌設されている、
請求項1に記載の高圧流体用ホースの取付け構造。
【請求項3】
前記ホースホルダー収容凹部の傾斜内側面、及び/又は、前記ホースホルダーの傾斜外側面に、低摩擦コーティング層が形成れている、
請求項1又は2に記載の高圧流体用ホースの取付け構造。
【請求項4】
気密性を有するケーシングの内部にマニホールド型噴射器が設置されているアトマイズ装置であって、
前記高圧流体用ホースが前記ケーシングに請求項1又は2に記載の高圧流体用ホースの取付け構造によって取り付けられている、
アトマイズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体用ホースの取付け構造、及び、アトマイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、「廃リチウムイオン電池」から、銅、ニッケル、コバルト等の有価物を回収するプロセス等において、金属熔湯に高圧水を噴射して熔滴状に粉砕させ、粉砕されて飛散した熔滴を凝固させる、アトマイズ装置(アトマイズ装置10(
図11参照))が広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
上述のアトマイズ装置10においては、金属熔湯Mに、高圧流体(例えば、高圧水)を噴射するマニホールド型噴射器5が、ケーシング3の内部に設置されている。そして、マニホールド型噴射器5に高圧流体を供給するための高圧流体用ホース2が、ケーシング3の外壁31に設けられるホース導入管111を通じて外壁31を貫通する態様で、ケーシング3に取り付けられている(
図10参照)。
【0004】
上記の構成からなるアトマイズ装置10においては、稼働時に装置内部で発生する水素ガスの外部への漏洩を防ぐために、ケーシング3に高い気密性が求められる。従って、高圧流体用ホース2のホース導入管111への取付け構造部分においても当然に高い気密性を維持することが求められる。
【0005】
一方で、ケーシング3の内部に設置されているマニホールド型噴射器5に圧流体を供給するための高圧流体用ホース2は、通常、ホースの肉厚の中間部に鋼性又は硬質樹脂製ワイヤーを螺旋状に封入した構造等、耐圧性を高めるための何らかの補強構造が付加されている。このため、高圧流体用ホース2は、重量が大きくて柔軟性に乏しく、尚且つ、一旦、一つの方向に曲げてしまうと曲げ癖がつきやすいという性質を有する。
【0006】
気密性構造物であるケーシング3に、高圧流体用ホース2の取付ける作業を行う際には、確実に気密性を維持するために、高圧流体用ホース2とホース導入管111との夫々の中心位置を正確に合わせる必要があるが、上記のような高圧流体用ホース2の性質に起因して、両者の位置を正確に合わせる位置合わせの作業は、非常に難度が高く、取付け作業者の負担が大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、例えば、アトマイズ装置においてマニホールド型噴射器が内部に設置されているケーシング等、高い気密性が要求される気密性構造物の内部に導入する高圧流体用ホースの当該構造物への取付け作業において、高圧流体用ホースの取付け構造部分における高い気密性を維持しつつ、高圧流体用ホースの位置合わせ作業の難度を低減させて作業者の作業負担を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下に詳細を説明する高圧流体用ホースの取付け構造によって、上記課題を解決することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 気密性構造物の内部に高圧流体用ホースを導入するための高圧流体用ホースの取付け構造であって、高圧流体用ホースと、円筒状のホース導入管の一方の末端の開口の周囲にフランジが設けられている管状部材であって、前記気密性構造物の外壁に接合されていてる導入部材と、中央に前記高圧流体用ホースを挿通させるホース挿通孔が設けられている円盤状の部材であって、前記高圧流体用ホースの側面に環装されていて、尚且つ、前記フランジに固定ボルトによって接合されている、被連結フランジと、円錐台状の外形を有する部材の中央にホース嵌通孔が形成されていて、前記フランジと、前記被連結フランジとに挟持されているホースホルダーと、を含んで構成されていて、前記被連結フランジは、前記フランジに対面する側の表面に、前記ホースホルダーの外形と略同一の内法形状を有するホースホルダー収容凹部を有し、前記ホースホルダーは、夫々が円錐台状の形状を中心軸を含む面で均等に2分割してなる形状を有する1対の半円錐台状部品が組合されてなり、各々の前記半円錐台状部品が前記フランジと前記被連結フランジとによって前記ホース挿通孔の中心に向けて押圧されている状態で、前記ホースホルダー収容凹部の内部に嵌設されている、高圧流体用ホースの取付け構造。
【0011】
(1)の高圧流体用ホースの取付け構造によれば、高い気密性が要求される気密性構造物の内部に導入する高圧流体用ホースの当該構造物への取付け作業において、高圧流体用ホースの取付け構造部分における高い気密性を維持しつつ、高圧流体用ホースの位置合わせ作業の難度を低減させることができる。
【0012】
(2) 前記ホース挿通孔の内側面、及び/又は、前記フランジの開口部の周囲の表面に、リング状溝部を有し、前記リング状溝部には、弾性材料からなるリング状シール部材が嵌設されている、(1)に記載の高圧流体用ホースの取付け構造。
【0013】
(2)の高圧流体用ホースの取付け構造によれば、(1)に記載の高圧流体用ホースの取付け構造の高い気密性をより確実に維持することができる。
【0014】
(3) 前記ホースホルダー収容凹部の傾斜内側面、及び/又は、前記ホースホルダーの傾斜外側面に、低摩擦コーティング層が形成れている、(1)又は(2)に記載の高圧流体用ホースの取付け構造。
【0015】
(3)の高圧流体用ホースの取付け構造によれば、高い気密性が要求される気密性構造物の内部に導入する高圧流体用ホースの当該構造物への取付け作業の作業容易性が更に向上する。
【0016】
(4) 気密性を有するケーシングの内部にマニホールド型噴射器が設置されているアトマイズ装置であって、前記高圧流体用ホースが前記ケーシングに(1)又は(2)に記載の高圧流体用ホースの取付け構造によって取り付けられている、アトマイズ装置。
【0017】
(4)のアトマイズ装置によれば、高い気密性が要求されるケーシングの内部に導入する高圧流体用ホースの当該構造物への取付け作業において、高圧流体用ホースの取付け構造部分における高い気密性を維持しつつ、高圧流体用ホースの位置合わせ作業の難度を低減させてアトマイズ装置の設置作業や保守作業を行う作業者の作業負担を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば、アトマイズ装置においてマニホールド型噴射器が設置されているケーシング等、高い気密性が要求される気密性構造物の内部に導入する高圧流体用ホースの当該構造物への取付け作業において、高圧流体用ホースの取付け構造部分における高い気密性を維持しつつ、高圧流体用ホースの位置合わせ作業の難度を低減させて作業者の作業負担を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の側面図(断面図)である。
【
図2】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造を構成する導入部材の側面図(断面図)である。
【
図3】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造を構成する被連結フランジの平面図である。
【
図4】
図3に示す被連結フランジの側面図(断面図)である。
【
図5】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造を構成するホースホルダーの斜視図である。
【
図7】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の分解斜視図である。
【
図8】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の機能の説明に供する図面である。
【
図10】本発明の高圧流体用ホースの取付け構造によって高圧流体用ホースが取付けられているマニホールド型噴射器が設置されているアトマイズ装置の一例について、その要部の構成を示す図面である。
【
図11】アトマイズ装置の全体構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の好ましい実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
<高圧流体用ホースの取付け構造>
本発明の高圧流体用ホースの取付け構造は、高い気密性が要求される気密性構造物の内部に高圧流体用ホースを導入する場合において、当該気密性構造物の気密性を維持したまま、当該気密性構造物の外壁に高圧流体用ホースを取り付けるための技術的手段である。
【0022】
本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の設置対象となる気密性構造物の具体例として、
図11に概要を示すアトマイズ装置10において、マニホールド型噴射器5をその内部に格納しているケーシング3を挙げることができる。以下、このようなケーシング3に高圧流体用ホース2を取り付けることが想定されている取付け構造である、高圧流体用ホースの取付け構造1を、本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の好ましい実施形態として、その詳細を説明する。
【0023】
但し、本発明の高圧流体用ホースの取付け構造の設置対象となる気密性構造物は、上記のケーシングのみには限定されない。本発明の高圧流体用ホースの取付け構造は、上記のケーシングと同様に高い気密性を求められる様々な気密性構造物への高圧流体用ホースの取付け手段として用いることができる。又、気密性構造物に取り付ける高圧流体用ホースについても、耐圧性を高めるための補強構造が付加されていることにより、取付け作業時の位置合わせの作業の難度が高くなっている既存の各種高圧流体用ホースを、特段の限定なく用いることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態の一例である高圧流体用ホースの取付け構造1は、
図1に示す通り、高圧流体用ホース2、ケーシング(気密性構造物)3の外壁31に接合されている導入部材11、高圧流体用ホース2の側面に環装されていて、尚且つ、導入部材11に接合されている被連結フランジ12、及び、導入部材11と被連結フランジ12とに挟持されている円錐台状のホースホルダー13を少なくとも含んで構成されている。高圧流体用ホースの取付け構造1を構成する上記の3つの部材(導入部材11、被連結フランジ12、ホースホルダー13)として、何れもステンレス鋼(例えばS304)からなる金属部材を用いることができる。
【0025】
高圧流体用ホースの取付け構造1は、上記の3つの部材(導入部材11、被連結フランジ12、ホースホルダー13)が、
図7に示すように同心円状に配置され、更に、
図1及び
図8(B)に示すように、ホースホルダー13を挟持する導入部材11と被連結フランジ12とが、固定ボルト14によって強固に接合されることによって、これらの3つの部材が一体化された状態となる。この状態において、高圧流体用ホースの取付け構造1は、ケーシング(気密性構造物)3の外壁31への高圧流体用ホース2の取付け構造部分の高い気密性を維持することができる。
【0026】
そして、高圧流体用ホースの取付け構造1において、高圧流体用ホース2が、高圧流体用ホースの取付け構造1を構成する上記の3つの部材(導入部材11、被連結フランジ12、ホースホルダー13)の中央に形成されている高圧流体用ホース2を通すための孔が同心円上において連通してなる貫通路を通って、ケーシング(気密性構造物)3の外壁31を通り抜けてケーシング(気密性構造物)3の内部に導入される。
【0027】
[導入部材]
高圧流体用ホースの取付け構造1を構成する導入部材11は、
図2に示すように、円筒状のホース導入管111の一方の末端の開口113の周囲にフランジ112が設けられている管状部材である。高圧流体用ホースの取付け構造1においては、ホース導入管111の他方の末端(フランジ112を有していない側の末端)の開口が、ケーシング3の外壁31に接合されている。ホース導入管111の内径は、高圧流体用ホース2を挿通した状態で必要に応じて管内を摺動させることができるように、高圧流体用ホース2の外形よりも若干大きい適切な大きさに設計されたものであればよい。一例として、ホース導入管111の内径は、取り付けられる高圧流体用ホース2の外径に対して片側1mm程度のクリアランスが形成される大きさとすることが好ましい。これにより、上述した通りの曲げ癖のつきやすい性質等に起因して高圧流体用ホース2に変形が生じていたとしても、上記クリアランスに設定されたホース導入管111を通過させることで、ケーシング3等に内部に設けられる高圧流体用ホース2の接続先としてのマニホールド型噴射器5に対して、高圧流体用ホース2を接続することが行いやすくなる。尚、高圧流体用ホース2の末端(具体的には、導入部材11の末端の開口113に装入される側の末端)に、ケーシング3等に内部に設けられるマニホールド型噴射器5に接続するための口金を設けている場合は、上記クリアランスは、少なくとも、上記口金をホース導入管111の内部を通過させることができるように設定する必要がある。高圧流体用ホースの取付け構造1が、上記構成を有していることにより、高圧流体用ホース2の脱着作業をより効率的に行うことができる。
【0028】
フランジ112は円盤状の部材であり、ホース導入管111に高圧流体用ホース2を挿通させるために中央に開口113が形成されている。又、外縁近傍の任意の円周上に沿って固定ボルト14をねじ込むための複数のボルト孔115が設けられている。
【0029】
又、フランジ112の表面には、開口113の周囲の任意の円周上に沿って、弾性材料からなるリング状シール部材15を、
図1及び
図8(A)(B)に示すような態様で嵌め込むためのリング状溝部114が設けられていることが好ましい。そして、高圧流体用ホースの取付け構造1においては、フランジ112のリング状溝部114に、弾性材料からなるリング状シール部材15が嵌設されている状態となっていることが好ましい。尚、上記のリング状シール部材15としては、各種の合成ゴム等の弾性材料からなる「Oリング」を好ましく用いることができる。「Oリング」とは、弾性を有する材量からなり、断面が略円形の環状体形状の無端リングである汎用的なシーリング部材である。
【0030】
[被連結フランジ]
高圧流体用ホースの取付け構造1を構成する高圧流体用ホース2の側面に環装された状態で高圧流体用ホースの取付け構造1を構成する部材である。被連結フランジ12は、
図3及び
図4に示すように、導入部材11のフランジ112と略同形の外形を有する円盤状の部材であり、フランジ112と同様に、中央に高圧流体用ホース2を挿通させるための開口部であるホース挿通孔123が形成されている。ホース挿通孔123の内径については、高圧流体用ホース2への着脱作業を容易にするために、高圧流体用ホース2の外径に対して適切なクリアランスを確保できるような大きさとすることが好ましい。又、被連結フランジ12には、その外縁近傍の任意の円周上に沿って、フランジ112のボルト孔115と連通させることが可能な位置に、複数のボルト孔124が設けられている。
【0031】
そして、被連結フランジ12には、
図4に示すように、一方の表面(高圧流体用ホースの取付け構造1として一体化された状態において導入部材11のフランジ112に対面する側の面)に、ホースホルダー収容凹部121を有する。ホースホルダー収容凹部121は、底部に向けて開口径が漸減するテーパ状の傾斜内側面122を有する円錐台状の内法形状を有する凹部である。又、このホースホルダー収容凹部121の内法形状は、ホースホルダー13をその内部に隙間なく係合させて収容できるように、ホースホルダー13の外形形状と略同一の形状とされている。
【0032】
そして、ホースホルダー収容凹部121の底面の直径は、上述のホース挿通孔123の開口径以上であり、ホース挿通孔123は、ホースホルダー収容凹部121の底面に形成されている。
【0033】
又、被連結フランジ12を導入部材11のフランジ112に圧接して連結したときに、ホースホルダー13の傾斜外側面131と、被連結フランジ12のホースホルダー収容凹部121の傾斜内側面122とが当接した状態を維持しながら(即ち、両者が擦れ合う状態を維持しながら)、ホースホルダー13を形成する両部品(半円錐台状部品13A、13B)が適切に摺動するように構成する必要があるため、ホースホルダー収容凹部121の傾斜内側面122には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなる低摩擦コーティング層が形成れていることが、より好ましい。尚、ホースホルダー収容凹部121の内部へのホースホルダー13の収容態様の詳細については後述する。
【0034】
[ホースホルダー]
高圧流体用ホースの取付け構造1を構成するホースホルダー13は、
図5及び
図6に示すように、側面がテーパ状の傾斜外側面131とされている円錐台状の外形を有し、中心軸方向を貫通するホース嵌通孔132が形成されている、全体としては略円盤形状の部材である。又、このホースホルダー13は、夫々が上記の円錐台状の形状を中心軸を含む面で均等に2分割してなる形状を有する1対の半円錐台状部品13A、13Bが組合されて形成される。ホースホルダー13を高圧流体用ホース2に取付ける際には、半円錐台状部品13A、13Bによって、高圧流体用ホース2を、上下方向から挟み込めばよい。
【0035】
ホースホルダー13において、半円錐台状部品13A、13Bが組合されて形成されるホース嵌通孔132の内径は、高圧流体用ホース2の外径に対し、リング状シール部材16の「つぶし代」を両側加算した直径と略同一に設定することが好ましい。ここで、「つぶし代」とは、以下の[式1]で定義される距離のことであり、本例のケースでは、リング状シール部材16がホース嵌通孔132の内面に形成されているリング状溝部133に嵌設された状態であるとき、上記リング状溝部133からホース嵌通孔132の内面側に僅かに突出するリング状シール部材16の突出高さのことを示す。
[式1]つぶし代=Oリング(本例ではリング状シール部材16)の線径-溝深さ(本例では、リング状溝部133の深さ)
【0036】
被連結フランジ12を、導入部材11のフランジ112に圧接して連結してリング状シール部材16を高圧流体用ホース2に圧着状態としたときに、リング状シール部材16のリング状溝部133からホース嵌通孔132の内面側に僅かに突出する部分が潰れることでシール応力が発生するが、上記の「つぶし代」はこのようなシール応力を判断するための指標として広く用いられている(JISB2401-2:2012「Oリング-第2部:ハウジングの形状・寸法」参照)。高圧流体用ホースの取付け構造1においても、ホース嵌通孔132の内径をリング状シール部材16の「つぶし代」に対してこの指標を用いて適切な大きさに設計することによって、適切なシール応力を生じさせることができる。
【0037】
そして、高圧流体用ホースの取付け構造1においては、ホースホルダー13は、
図8(B)に示すように、上記の各々の半円錐台状部品13A、13Bが、導入部材11のフランジ112と被連結フランジ12とによって挟持されていて、尚且つ、ホース嵌通孔132の中心に向けて押圧されている状態で、ホースホルダー収容凹部121の内部に嵌設されている。
【0038】
そして、ホースホルダー13の傾斜外側面131にも、ホースホルダー収容凹部121の傾斜内側面122と同様に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなる低摩擦コーティング層が形成れていることが、より好ましい。
【0039】
又、ホースホルダー13におけるホース嵌通孔132の内側面には、リング状シール部材16を、
図1及び
図8に示すような態様で嵌め込むためのリング状溝部133が設けられていることが好ましい。そして、高圧流体用ホースの取付け構造1においては、ホース嵌通孔132の内側面のリング状溝部133に、フランジ112のリング状溝部114と同様に、「Oリング」等のリング状シール部材16が嵌設されている状態となっていることが好ましい。
【0040】
[高圧流体用ホースの取付け方法]
以下においては、本発明の高圧流体用ホースの取付け構造を用いた高圧流体用ホースの取付け方法の好ましい実施態様の一例について説明する。高圧流体用ホースの取付け構造1を用いて、マニホールド型噴射器5を、その内部に格納しているケーシング3等の気密性構造物に高圧流体用ホース2を取り付ける場合には、予め、フランジ112のリング状溝部114に、「Oリング」等のリング状シール部材15を嵌設しておく。又、ホース嵌通孔132の内側面のリング状溝部133に嵌設されることとなるリング状シール部材16については、予め高圧流体用ホース2の側面の適切な位置に環装しておく。その後、高圧流体用ホース2を被連結フランジ12のホース挿通孔123に挿通することによって、被連結フランジ12が、高圧流体用ホース2の側面に環装された状態としておく。
【0041】
次に、上記状態とした高圧流体用ホース2を、導入部材11の末端の開口113からホース導入管111内に装入していき、リング状シール部材16がフランジ112に対して十分に接近する位置まで移動したところで、高圧流体用ホース2の導入部材11に対する水平位置を調整し、ホースホルダー13を高圧流体用ホース2に着設する。この際には、半円錐台状部品13A、13Bを、予め高圧流体用ホース2に環装されているリング状シール部材16がホース嵌通孔132の内面に形成されているリング状溝部133に嵌設されることとなる水平位置において、両部品を高圧流体用ホース2の上下から挟みこむようにする。
【0042】
次に、
図8(A)に示すように、被連結フランジ12を、導入部材11のフランジ112に接近させることによって、ホースホルダー13(半円錐台状部品13A、13B)を、ホースホルダー収容凹部121の内部に収容していく。
【0043】
そして、
図8(A)に示す状態において、固定ボルト14を締め上げて、被連結フランジ12を、導入部材11のフランジ112に圧接して連結する。この圧接時に、ホースホルダー13の傾斜外側面131と、被連結フランジ12のホースホルダー収容凹部121の傾斜内側面122とが当接した状態を維持しながら(即ち、両者が擦れ合う状態を維持しながら)、ホースホルダー13を形成する両部品(半円錐台状部品13A、13B)が適切に摺動して、
図8(B)に示すように、高圧流体用ホース2を、導入部材11のフランジ112の開口113、及び、被連結フランジ12のホース挿通孔123とが同心円上に重なる位置に正確に固定することができる。又、この時に、同じく
図8(B)に示すように、高圧流体用ホースの取付け構造1の内部では、リング状シール部材15がホースホルダー13に強固に圧着され、同様に、リング状シール部材16が高圧流体用ホース2に強固に圧着されることとなり、これにより、高圧流体用ホースの取付け構造1の高い気密性が維持される。
【0044】
<アトマイズ装置の概要>
以下においては、本発明の「高圧流体用ホースの取付け構造」を好適に用いることができる工業装置の代表例であるアトマイズ装置について、その概要を説明する。
【0045】
図11は、マニホールド型噴射器5を用いて構成されているアトマイズ装置10の全体構成の一例を示す図である。このアトマイズ装置10は、熔解炉9から注湯された金属熔湯Mを出湯するタンディッシュ4と、タンディッシュ4から落下する金属熔湯Mに流体を噴射するマニホールド型噴射器5と、流体噴射により熔滴を形成して金属粉体を生成させる場となるチャンバー6と、を備える。
【0046】
図9に示す通り、マニホールド型噴射器5は、略円柱形状の耐圧部51と耐圧部51の底面側から斜め下方に向けて突出する複数の流体噴射ノズル52を有する。耐圧部51の中心には、軸方向に貫通する中心孔(図示せず)が開設されており、出湯ノズル41Nから供給される金属熔湯Mは、この中心孔の内側を流下する。マニホールド型噴射器5の耐圧部51の内部には、流体噴射ノズル52における高圧水の取り込み口を終端とし、外部から供給される高圧水を各流体噴射ノズル52の取り込み口に分配する高圧水の供給通路(図示せず)が、中心孔の周囲に設けられている。外部から供給される高圧水は、この供給通路を介して各流体噴射ノズル52に供給される。
【0047】
ここで、マニホールド型噴射器5においては、上記の供給通路の終端とは反対側の始端は、耐圧部51の側面に開設される供給口53が設けられている。又、その供給口53の内面には雌螺子部531が設けられていることが一般的である。このような供給口53を備えるマニホールド型噴射器5においては、高圧水の供給管である高圧流体用ホース2の先端に雄螺子部を設けて、この雌螺子部531に螺設することで、外部からの高圧水をマニホールド型噴射器5の内部に供給することが可能となる。
【0048】
又、
図10に示す通り、アトマイズ装置10においては、マニホールド型噴射器5は、気密性構造物であるケーシング3の内部に設置されている。
図10に示す通り、高圧流体用ホースの取付け構造1によってケーシング(気密性構造物)3の外壁31に高圧流体用ホース2を挿通させつつ安定的に取り付け、当該高圧流体用ホース2の末端を耐圧部51の側面に開設される供給口53に接続することで、高圧流体(例えば、高圧水)をマニホールド型噴射器5の耐圧部51を経由させて流体噴射ノズル52に供給することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 高圧流体用ホースの取付け構造
11 導入部材
112 フランジ
111 ホース導入管
113 開口
114 リング状溝部
115 ボルト孔
12 被連結フランジ
121 ホースホルダー収容凹部
122 傾斜内側面
123 ホース挿通孔
124 ボルト孔
13 ホースホルダー
13A、13B 半円錐台状部品
131、131A、131B 傾斜外側面
132 ホース嵌通孔
133 リング状溝部
14 固定ボルト
15、16 リング状シール部材
2 高圧流体用ホース
3 ケーシング(気密性構造物)
31 外壁
311 ホース導入口
4 タンディッシュ
41a 開口部
41b 底部
41N 出湯ノズル
5 マニホールド型噴射器
51 耐圧部
52 流体噴射ノズル
53 支持具挿入孔
421 雌螺子部
6 チャンバー
61 排出口
7 回収配管
8 ガス排出構造
9 熔解炉(誘導炉)
10 アトマイズ装置