(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171119
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】抵抗スポット接合方法及び抵抗スポット接合装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/11 20060101AFI20241204BHJP
B23K 11/30 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B23K11/11 540
B23K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088016
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英俊
(72)【発明者】
【氏名】森貞 好昭
(72)【発明者】
【氏名】相原 巧
(72)【発明者】
【氏名】宮内 貴章
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AA01
4E165AA12
4E165AB02
4E165BB02
4E165BB12
4E165BB13
4E165BB21
4E165CA05
4E165CA13
(57)【要約】
【課題】接合品質の向上が可能な抵抗スポット接合方法及び抵抗スポット接合装置を提供すること。
【解決手段】抵抗スポット接合方法であって、第1ワークW10及び第2ワークW20を加圧軸11及び加圧部材12によって第1荷重で加圧することにより、第1ワーク及び第2ワークの少なくとも一方に突起W11を形成する突起形成工程と、第1ワーク及び第2ワークに対して第2荷重F2が作用するように加圧軸及び加圧部材による加圧力を除荷することにより、第1ワーク及び第2ワーク同士の接触面積を小さくする除荷工程と、第1ワーク及び第2ワークに第2荷重が作用しており、かつ、第1ワーク及び第2ワークの各々に電極21,22が接触した状態で、第1ワーク及び第2ワークに通電する通電工程と、第1ワーク及び第2ワークを第3荷重で加圧することにより、ワークW10,W20の接触部界面を互いに接合する接合工程と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1ワークと金属からなる第2ワークとの接合方法であって、
前記第1ワーク及び前記第2ワークをその厚み方向における一方側に配置された加圧軸と他方側に配置された加圧部材とによって前記厚み方向における両側から第1荷重で加圧することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワークの少なくとも一方に突起を形成する突起形成工程と、
前記加圧軸及び前記加圧部材から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第1荷重よりも小さな第2荷重が作用するように前記加圧軸及び前記加圧部材による加圧力を除荷することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワーク同士の接触面積を小さくする除荷工程と、
前記加圧軸及び前記加圧部材から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第2荷重が作用しており、かつ、前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に電極が接触した状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークに通電する通電工程と、
前記第1ワーク及び前記第2ワークを前記厚み方向における両側から前記加圧軸及び前記加圧部材によって前記第2荷重よりも大きな第3荷重で加圧することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワークの接触部界面を互いに接合する接合工程と、を備える、抵抗スポット接合方法。
【請求項2】
前記突起形成工程では、前記加圧部材として、前記加圧軸と対をなす加圧軸を用い、前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に前記突起を形成し、
前記接合工程では、前記第1ワークに形成された前記突起及び前記第2ワークに形成された前記突起を互いに接合する、請求項1に記載の抵抗スポット接合方法。
【請求項3】
前記接合工程では、前記第1ワーク及び前記第2ワークの接触部が軟化した後、前記第1ワーク及び前記第2ワークの前記接触部界面を互いに接合する、請求項1又は2に記載の抵抗スポット接合方法。
【請求項4】
第1ワークと第2ワークとをその厚み方向における両側から加圧する一対の加圧軸と、
前記一対の加圧軸の周囲にそれぞれ配置された一対の電極と、
前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に互いに接触する突起が形成されるように前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに第1荷重を作用させる突起形成手段と、
前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第1荷重よりも小さな第2荷重が作用するように前記一対の加圧軸による加圧力を除荷することにより、前記突起同士の接触面積を小さくする除荷手段と、
前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第2荷重を作用させ、かつ、前記第1ワークのうち前記一対の加圧軸の一方により加圧される部位の周囲の部位及び前記第2ワークのうち前記一対の加圧軸の他方により加圧される部位の周囲の部位に前記一対の電極を接触させた状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークに通電する通電手段と、
前記突起が軟化したことを示す軟化条件が成立したときに前記一対の加圧軸から各前記突起に対して前記第2荷重よりも大きな第3荷重を作用させる接合手段と、を備えた、抵抗スポット接合装置。
【請求項5】
前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに作用する荷重を検知可能なセンサと、前記センサの検出値が閾値以下となったときに前記軟化条件が成立したと判定する判定手段とを備えた、請求項4に記載の抵抗スポット接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抵抗スポット接合方法及び抵抗スポット接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2021/182444号には、押圧部と、一対の溶接電極と、を備える固相点接合装置が開示されている。押圧部は、2枚の金属板材を当該金属板材と直交する方向に押圧可能である。一対の溶接電極は、2枚の金属板材をその厚み方向における両側から挟持した状態で両金属板材に通電することにより、各金属板材を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2021/182444号に記載される固相点接合装置では、接合品質を向上させることが望ましい。
【0005】
本開示の目的は、接合品質の向上が可能な抵抗スポット接合方法及び抵抗スポット接合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った抵抗スポット接合方法は、金属からなる第1ワークと金属からなる第2ワークとの接合方法であって、前記第1ワーク及び前記第2ワークをその厚み方向における一方側に配置された加圧軸と他方側に配置された加圧部材とによって前記厚み方向における両側から第1荷重で加圧することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワークの少なくとも一方に突起を形成する突起形成工程と、前記加圧軸及び前記加圧部材から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第1荷重よりも小さな第2荷重が作用するように前記加圧軸及び前記加圧部材による加圧力を除荷することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワーク同士の接触面積を小さくする除荷工程と、前記加圧軸及び前記加圧部材から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第2荷重が作用しており、かつ、前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に電極が接触した状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークに通電する通電工程と、前記第1ワーク及び前記第2ワークを前記厚み方向における両側から前記加圧軸及び前記加圧部材によって前記第2荷重よりも大きな第3荷重で加圧することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワークの接触部界面を互いに接合する接合工程と、を備える。
【0007】
本開示の一局面に従った抵抗スポット接合装置は、第1ワークと第2ワークとをその厚み方向における両側から加圧する一対の加圧軸と、前記一対の加圧軸の周囲にそれぞれ配置された一対の電極と、前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に互いに接触する突起が形成されるように前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに第1荷重を作用させる突起形成手段と、前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第1荷重よりも小さな第2荷重が作用するように前記一対の加圧軸による加圧力を除荷することにより、前記突起同士の接触面積を小さくする除荷手段と、前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第2荷重を作用させ、かつ、前記第1ワークのうち前記一対の加圧軸の一方により加圧される部位の周囲の部位及び前記第2ワークのうち前記一対の加圧軸の他方により加圧される部位の周囲の部位に前記一対の電極を接触させた状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークに通電する通電手段と、前記突起が軟化したことを示す軟化条件が成立したときに前記一対の加圧軸から各前記突起に対して前記第2荷重よりも大きな第3荷重を作用させる接合手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、接合品質の向上が可能な抵抗スポット接合方法及び抵抗スポット接合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態における抵抗スポット接合装置を概略的に示す図である。
【
図2】除荷工程後の通電工程を概略的に示す図である。
【
図3】
図2において実線IIIで示される範囲の拡大図である。
【
図4】制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態における抵抗スポット接合装置を概略的に示す図である。抵抗スポット接合装置1は、互いに重ね合わされた複数のワークW10,W20に通電することによって複数のワークW10,W20に軟化領域を形成しつつ、当該軟化領域を塑性変形させることによって複数のワークW10,W20同士を固相状態のまま接合する装置である。
【0012】
複数のワークW10,W20は、第1ワークW10と、第2ワークW20と、を有している。各ワークW10,W20は、鉄やアルミニウム等の金属からなる。各ワークW10,W20は、例えば平板状に形成されている。
【0013】
図1に示されるように、抵抗スポット接合装置1は、加圧軸11と、加圧部材12と、一対の電極21,22と、制御部30と、センサ40と、を備えている。本実施形態では、加圧部材12として、加圧軸11と対をなす加圧軸が用いられている。このため、以下では、加圧軸11及び加圧部材12を「一対の加圧軸11,12」として説明する。
【0014】
一対の加圧軸11,12は、第1ワークW10と第2ワークW20とをその厚み方向における両側から加圧することが可能である。一対の加圧軸11,12は、図示略の駆動源(サーボプレス機等)によって駆動される。一対の加圧軸11,12は、第1加圧軸11と、第2加圧軸12と、を有している。
【0015】
第1加圧軸11は、一方向(
図1における上下方向)に長く延びる形状を有している。第1加圧軸11は、第1ワークW1が塑性変形するように第1ワークW10を押圧可能である。具体的に、第1加圧軸11は、第1ワークW10に突起W11が形成されるように第1ワークW10を押圧可能である。第1加圧軸11は、例えばダングステンカーバイドからなる。本実施形態では、第1加圧軸11は、円柱状に形成されている。第1加圧軸11は、第1ワークW10を押圧する押圧面11aを有している。押圧面11aは、第1加圧軸11の端面で構成されている。押圧面11aは、円形に形成されている。
【0016】
センサ40は、例えば第1加圧軸11に設けられている。本実施形態では、センサ40として、ロードセルが用いられている。なお、センサ40の設置場所は、第1加圧軸11に限られない。
【0017】
第2加圧軸12は、第1加圧軸11の構成と同じ構成を有している。第2加圧軸12は、当該第2加圧軸12の中心軸が第1加圧軸11の中心軸の延長線上に位置し、かつ、第2加圧軸12の押圧面12aが第1加圧軸11の押圧面11aと対向する姿勢で配置されている。
【0018】
一対の電極21,22は、第1ワークW1及び第2ワークW20に接触した状態で第1ワークW10及び第2ワークW20に通電させることが可能である。一対の電極21,22には、図示略の電源部から電圧が印加される。一対の電極21,22は、第1電極21と、第2電極22と、を有している。
【0019】
第1電極21は、第1ワークW10のうち第1加圧軸11により加圧される部位の周囲の部位に接触することが可能である。本実施形態では、第1電極21は、第1加圧軸11を包囲する円筒状に形成されている。第1電極21の内周面と第1加圧軸11の外周面との間には、隙間が設けられている。第1電極21は、例えば銅からなる。第1電極21は、第1ワークW10に接触する接触面21aを有している。接触面21aは、円環状に形成されている。なお、接触面21aの形状は、円環状に限られない。
【0020】
第2電極22は、第1電極21の構成と同じ構成を有している。第2電極22は、第2ワークW20のうち第2加圧軸12により加圧される部位の周囲の部位に接触することが可能である。第2電極22は、当該第2電極22の中心軸が第1電極21の中心軸の延長線上に位置し、かつ、第2電極22の接触面22aが第1電極21の接触面21aと対向する姿勢で配置されている。
【0021】
制御部30は、一対の加圧軸11,12及び一対の電極21,22を制御する。具体的に、制御部30は、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に作用する荷重と、一対の電極21,22から第1ワークW10及び第2ワークW20に作用する荷重と、一対の電極21,22へ印可する電圧と、一対の加圧軸11,12及び一対の電極21,22の押し込み量と、を制御する。制御部30は、荷重制御部31と、通電制御部32と、取得部33と、判定部34と、を有している。
【0022】
荷重制御部31は、第1ワークW10及び第2ワークW20の各々に互いに接触する突起W11,W21が形成されるように一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に第1荷重F1(
図1を参照)を作用させる操作を行う。つまり、荷重制御部31は、突起形成手段を構成している。このとき、荷重制御部31は、一対の電極21,22から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第1荷重F1よりも小さな調整荷重(例えば、1kN以下の荷重)を作用させる操作も行う。
【0023】
その後、荷重制御部31は、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第1荷重F1よりも小さな第2荷重F2(
図2を参照)が作用するように一対の加圧軸11,12による加圧力を除荷することにより、突起W11,W21同士の接触面積を小さくする操作を行う。つまり、荷重制御部31は、除荷手段を構成している。第2荷重F2は、ゼロであってもよい。すなわち、「除荷」とは、各ワークW10,W20に作用させる荷重の少なくとも一部を除去することを意味する。このとき、荷重制御部31は、一対の電極21,22から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して調整荷重を作用させ続けていてもかまわない。
【0024】
次に、通電制御部32は、第1ワークW10及び第2ワークW20に通電する操作を行う。具体的には、荷重制御部31が、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第2荷重F2を作用させ、かつ、第1ワークW10のうち第1加圧軸11により加圧される部位の周囲の部位に第1電極21の接触面21aを接触させ、第2ワークW20のうち第2加圧軸12により加圧される部位の周囲の部位に第2電極22の接触面22aを接触させた状態で、通電制御部32は、第1ワークW10及び第2ワークW20に通電する操作を行う。つまり、通電制御部32は、通電手段を構成している。なお、
図2及び
図3では、この操作中における電流の流れが破線で示されている。
【0025】
続いて、荷重制御部31は、各突起W11,W21が軟化したことを示す軟化条件が成立したときに、一対の加圧軸11,12から各突起W11,W21に対して第2荷重F2よりも大きな第3荷重を作用させる操作を行う。つまり、荷重制御部31は、接合手段を構成している。
【0026】
判定部34は、軟化条件が成立したか否かを判定し、その判定結果を荷重制御部31に送る。例えば、判定部34は、センサ40の検出値を取得する取得部33からセンサ40の検出値を受信し、その検出値が閾値以下となったときに軟化条件が成立したと判定する。
【0027】
続いて、具体的な制御部30の制御内容について、
図4を参照しながら説明する。
【0028】
まず、制御部30は、一対の加圧軸11,12を第1ワークW10及び第2ワークW20に向けて移動させる(ステップS11)。
【0029】
その後、制御部30は、センサ40の検出値が基準値以上か否かを判断する(ステップS12)。なお、基準値は、一対の加圧軸11,12が第1ワークW10及び第2ワークW20に接触したときの値に設定される。
【0030】
センサ40の検出値が基準値未満の場合、制御部30は、ステップS11に戻り、センサ40の検出値が基準値以上の場合、制御部30は、そのときの一対の加圧軸11,12の位置を記録する(ステップS13)。
【0031】
次に、制御部30は、一対の加圧軸11,12の終了位置を設定する(ステップS14)。なお、終了位置は、一対の加圧軸11,12が第1ワークW10及び第2ワークW20に接触した位置から互いに所定距離近づいた位置、換言すれば、第1ワークW10及び第2ワークW20に突起W11,W21が形成される位置に設定される。
【0032】
そして、制御部30は、一対の加圧軸11,12による第1ワークW10及び第2ワークW20の加圧を開始する(ステップS15)。
【0033】
その後、制御部30は、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達したか否かを判断する(ステップS16)。なお、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達したときに、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に第1荷重F1が作用している。
【0034】
その結果、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達していない場合、制御部30は、ステップS15に戻り、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達した場合(一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に第1荷重F1が作用した場合)、制御部30は、第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第2荷重F2が作用するように一対の加圧軸11,12による加圧力を除荷する(ステップS17)。
【0035】
この結果、各ワークW10,W20の弾性変形量が小さくなることにより、
図3に示されるように、突起W11,W21同士の接触部が突起W11,W21の先端部分(中央部分)のみとなるため、突起W11,W21同士の接触面積が小さくなる。なお、
図3では、除荷後における各突起W11,W21の外形が実線で示されており、除荷前における各突起W11,W21の外形が二点鎖線で示されている。
【0036】
続いて、制御部30は、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第2荷重F2を作用させ、かつ、第1ワークW10のうち第1加圧軸11により加圧される部位の周囲の部位に第1電極21の接触面21aを接触させ、第2ワークW20のうち第2加圧軸12により加圧される部位の周囲の部位に第2電極22の接触面22aを接触させた状態で、第1ワークW10及び第2ワークW20に通電する(ステップS18)。
【0037】
これにより、
図3において斜線で示されるように、各突起W11,W21の中央部分が有効に発熱する。なお、ステップS18において、制御部30は、センサ40の検出値に基づいて除荷の程度を検知してもよい。
【0038】
次に、制御部30は、センサ40の検出値に基づいて第1ワークW10及び第2ワークW20における各突起W11,W21が軟化したか否かを判断する(ステップS19)。なお、制御部30は、センサ40の検出値が前記閾値以下であるか否かによって各突起W11,W21が軟化したか否を判断する。
【0039】
センサ40の検出値が閾値より大きい場合(各突起W11,W21が軟化していない場合)、制御部30は、ステップS18に戻る、あるいは、ステップS19を継続する。センサ40の検出値が閾値以下の場合(各突起W11,W21が軟化した場合)、制御部30は、一対の加圧軸11,12から各突起W11,W21に対して第2荷重F2よりも大きな第3荷重が作用するように、一対の加圧軸11,12により各突起W11,W21を押し込む(ステップS20)。
【0040】
これにより、各突起W11,W21のうち軟化した領域(第1ワークW10及び第2ワークW20の接触部界面を含む領域)が塑性変形しつつその領域が固相状態のまま接合される。
【0041】
最後に、制御部30は、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達したか否かを判断する(ステップS21)。この結果、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達していない場合、制御部30は、ステップS20に戻り、一対の加圧軸11,12が終了位置に到達した場合、制御部30は、制御を終了する。
【0042】
以上に説明した抵抗スポット接合装置1は、以下の抵抗スポット接合方法を実行することが可能である。この抵抗スポット接合方法は、突起形成工程と、除荷工程と、通電工程と、接合工程と、を含んでいる。
【0043】
突起形成工程は、第1ワークW10及び第2ワークW20をその厚み方向における両側から一対の加圧軸11,12によって第1荷重F1で加圧することにより、第1ワークW10及び第2ワークW20の各々に互いに接触する突起W11,W21を形成する工程である。この工程は、上記ステップS15及びステップS16に相当する。
【0044】
除荷工程は、突起形成工程後、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第1荷重F1よりも小さな第2荷重F2が作用するように一対の加圧軸11,12による加圧力を除荷することにより、突起W11,W21同士の接触面積を小さくする工程である。この工程は、上記ステップS17に相当する。
【0045】
通電工程は、除荷工程後、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10及び第2ワークW20に対して第2荷重F2が作用しており、かつ、第1ワークW10のうち第1加圧軸11により加圧される部位の周囲の部位に第1電極21の接触面21aが接触し、第2ワークW20のうち第2加圧軸12により加圧される部位の周囲の部位に第2電極22の接触面22aが接触した状態で、第1ワークW10及び第2ワークW20に通電する工程である。この工程は、上記ステップS18及びステップS19に相当する。
【0046】
接合工程は、通電工程後、第1ワークW10に形成された突起W11及び第2ワークW20に形成された突起W21を厚み方向における両側から一対の加圧軸11,12によって第2荷重F2よりも大きな第3荷重で加圧することにより、突起W11,W21同士を互いに接合する工程である。この工程は、上記ステップS20及びステップS21に相当する。
【0047】
以上のように、本実施形態における抵抗スポット接合方法では、突起形成後に除荷工程が行われることにより、除荷工程前における突起W11,W21同士の接触面積よりも、除荷工程後における突起W11,W21同士の接触面積の方が小さくなる。これにより、各突起W11,W21の中央部分のみが接触部分、つまり、通電域となるとともに、接触部分の接触抵抗も増大するため、通電工程においてその中央部分が効果的に発熱する。さらに、第1ワークW10及び第2ワークW20の表面にメッキ層が形成されている場合、通電工程においてそのメッキ層が有効に除去される。そして、接合工程において、各突起W11,W21は、その中央部分から周縁部にわたって塑性変形しながら接合される。よって、接合品質が向上する。
【0048】
なお、上記実施形態では、第1ワークW10と第2ワークW20とを互いに接合する例が示されたが、上記抵抗スポット接合方法は、3以上のワークを互いに接合する場合に適用することも可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、ステップS13及びステップS18の双方においてロードセル(センサ40)の検出値を用いた例が示されたが、ステップS18においては、ロードセルとは異なるセンサにより各ワークW10,W20の軟化が検知されてもよい。このようなセンサとして、突起W11,W12同士の接触部を撮影可能なカメラが用いられてもよい。この場合、判定部34は、取得部33が取得した接触部の輝度に基づいて軟化条件が成立したか否かを判定する。あるいは、そのようなセンサとして、接触式又は非接触式の温度計が用いられ、判定部34は、取得部33が取得した接触部の温度に基づいて軟化条件が成立したか否かを判定してもよい。あるいは、判定部34は、予め取得された各ワークW10,W20の熱量計算の結果と、電源のタイマと、に基づいて軟化条件が成立したか否を判定してもよい。
【0050】
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0051】
[態様1]
金属からなる第1ワークと金属からなる第2ワークとの接合方法であって、
前記第1ワーク及び前記第2ワークをその厚み方向における一方側に配置された加圧軸と他方側に配置された加圧部材とによって前記厚み方向における両側から第1荷重で加圧することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワークの少なくとも一方に突起を形成する突起形成工程と、
前記加圧軸及び前記加圧部材から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第1荷重よりも小さな第2荷重が作用するように前記加圧軸及び前記加圧部材による加圧力を除荷することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワーク同士の接触面積を小さくする除荷工程と、
前記加圧軸及び前記加圧部材から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第2荷重が作用しており、かつ、前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に電極が接触した状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークに通電する通電工程と、
前記第1ワーク及び前記第2ワークを前記厚み方向における両側から前記加圧軸及び前記加圧部材によって前記第2荷重よりも大きな第3荷重で加圧することにより、前記第1ワーク及び前記第2ワークの接触部界面を互いに接合する接合工程と、を備える、抵抗スポット接合方法。
【0052】
この接合方法では、突起形成後に除荷工程が行われることにより、除荷工程前におけるワーク同士の接触面積よりも、除荷工程後におけるワーク同士の接触面積の方が小さくなる。これにより、突起の中央部分のみが接触部分、つまり、通電域となるため、通電工程においてその中央部分が効果的に発熱する。そして、接合工程において、突起は、その中央部分から周縁部にわたって塑性変形しながら接合される。よって、接合品質が向上する。
【0053】
[態様2]
前記突起形成工程では、前記加圧部材として、前記加圧軸と対をなす加圧軸を用い、前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に前記突起を形成し、
前記接合工程では、前記第1ワークに形成された前記突起及び前記第2ワークに形成された前記突起を互いに接合する、態様1に記載の抵抗スポット接合方法。
【0054】
[態様3]
前記接合工程では、前記第1ワーク及び前記第2ワークの接触部が軟化した後、前記第1ワーク及び前記第2ワークの前記接触部界面を互いに接合する、態様1又は2に記載の抵抗スポット接合方法。
【0055】
この態様では、接合品質がより向上する。
【0056】
[態様4]
第1ワークと第2ワークとをその厚み方向における両側から加圧する一対の加圧軸と、
前記一対の加圧軸の周囲にそれぞれ配置された一対の電極と、
前記第1ワーク及び前記第2ワークの各々に互いに接触する突起が形成されるように前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに第1荷重を作用させる突起形成手段と、
前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第1荷重よりも小さな第2荷重が作用するように前記一対の加圧軸による加圧力を除荷することにより、前記突起同士の接触面積を小さくする除荷手段と、
前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに対して前記第2荷重を作用させ、かつ、前記第1ワークのうち前記一対の加圧軸の一方により加圧される部位の周囲の部位及び前記第2ワークのうち前記一対の加圧軸の他方により加圧される部位の周囲の部位に前記一対の電極を接触させた状態で、前記第1ワーク及び前記第2ワークに通電する通電手段と、
前記突起が軟化したことを示す軟化条件が成立したときに前記一対の加圧軸から各前記突起に対して前記第2荷重よりも大きな第3荷重を作用させる接合手段と、を備えた、抵抗スポット接合装置。
【0057】
[態様5]
前記一対の加圧軸から前記第1ワーク及び前記第2ワークに作用する荷重を検知可能なセンサと、前記センサの検出値が閾値以下となったときに前記軟化条件が成立したと判定する判定手段とを備えた、態様4に記載の抵抗スポット接合装置。
【0058】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 抵抗スポット接合装置、11 第1加圧軸、11a 押圧面、12 加圧部材(第2加圧軸)、12a 押圧面、21 第1電極、21a 接触面、22 第2電極、22a 接触面、30 制御部、31 荷重制御部、32 通電制御部、33 取得部、34 判定部、40 センサ、F1 第1荷重、F2 第2荷重、W10 第1ワーク、W11 突起、W20 第2ワーク、W21 突起。