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  • 特開-排ガスの監視方法 図1
  • 特開-排ガスの監視方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171170
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】排ガスの監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01N1/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088096
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上村 憲一
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA02
2G052AC24
2G052AC25
2G052AD04
2G052AD24
2G052AD44
2G052BA14
2G052BA17
2G052CA02
2G052CA03
2G052CA11
2G052FD01
2G052GA18
(57)【要約】
【課題】排ガスの分析を連続的に行うための新たな方法を提供すること。
【解決手段】排ガスの監視方法であって、前記方法は、
排ガスを発生する装置に接続した排煙ダクトから排ガスを吸引する工程と、
前記吸引する工程によって吸引された排ガスを連続的に希釈する工程と、
前記希釈する工程によって希釈された排ガスを連続的に分析する工程と、
前記分析する工程によって分析された分析結果を監視する工程と
を含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの監視方法であって、前記方法は、
排ガスを発生する装置に接続した排煙ダクトから排ガスを吸引する工程と、
前記吸引する工程によって吸引された排ガスを連続的に希釈する工程と、
前記希釈する工程によって希釈された排ガスを連続的に分析する工程と、
前記分析する工程によって分析された分析結果を監視する工程と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記分析する工程が、粉塵濃度を測定することを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、希釈される前の排ガスにおける粉塵濃度が、TSPで1.5mg/m3以上である、方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法であって、前記希釈する工程が、希釈後の排ガスにおける粉塵濃度がTSPで1.0mg/m3以下になるように排ガスを希釈することを含む、方法。
【請求項5】
請求項1~3いずれか1項に記載の方法であって、
前記監視する工程は、前記排ガスを発生する装置の操業パラメータを記憶することを含み、
前記監視する工程は、記憶した前記操業パラメータと前記分析結果から、前記操業パラメータと前記分析結果との関係性を予測することを含む、方法。
【請求項6】
請求項1~3いずれか1項に記載の方法であって、前記排ガスを発生する装置が、金属製錬又は/及びリサイクル処理に用いられる溶融炉、加熱炉、焙焼炉の一種以上である、方法。
【請求項7】
請求項1~3いずれか1項に記載の方法であって、前記排煙ダクトから排ガスを吸引する吸引口に耐熱ホースが設けられている、方法。
【請求項8】
請求項1~3いずれか1項に記載の方法であって、前記吸引する工程は、排ガスに加えて大気を吸引し、
前記希釈する工程は、前記吸引する工程によって吸引された排ガスと大気とを混合することで、排ガスを希釈することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガスの監視方法に関する。より具体的には、排煙ダクトから放出される排ガスの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場のプラントでは、様々な燃焼反応、加熱処理などに伴い、排ガスが生じる。この排ガスを大気に放出する際には、環境汚染などに配慮する必要がある。
【0003】
特許文献1では、燃焼プラントにおいて、流通ガスに含まれる測定対象の物質を測定する濃度計測手段を開示している。この濃度計測手段は、粉塵濃度の算出及び/又は計測が可能である。また、この濃度計測手段は、連続的に測定対象の物質の濃度、粉塵濃度を、算出及び/または計測することができることが開示されている。
【0004】
特許文献2では、流体汚染判定システムを開示しており、フィルタを使って流体をろ過した後、フィルタ表面の残渣の状態を画像分析して、判定対象流体の汚染状態を判定することが開示されている。そして、この構成により、流体汚染状態の判定を繰り返して実施したり、連続的に実施したりする使用目的にも充分に対応することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-002463号公報
【特許文献2】特開2020-085530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、大気汚染などの環境問題への関心が高まっており、プラントから出される排ガスについても、悪影響を及ぼさないよう適切に監視することが求められる。こうした目的から、監視する時間的な密度を上げる(例えば、1日に一回の測定といったものではなく、これよりも高い頻度で測定を行う)ことが求められる。
【0007】
また、排ガスの状態は一定とは限らず、排ガスを発生する装置の種類によっては、時間が経過するにつれて、排ガスの状態が変化していく。また、仮に排ガスの状態変化を検出した場合に、操業パラメータ(燃焼空気の流入量の調整、燃焼温度の調整等)を変更して排ガスの状態を適切な状態に戻すことが行われる。しかし、パラメータを変更しても、その結果が、排ガスの状態変化に反映されるまでに時間がかかる。従って、排ガスの状態変化はできる限り早く検出することが望ましい。こうした観点からも、監視する時間的な密度を上げることが求められる。
【0008】
特許文献1~2では、連続的に測定できる装置又はシステムが開示されているものの、装置の種類、稼働状況などによっては、測定がうまくいかず、その利点を十分に生かし切ることができなかった。
【0009】
以上の点に鑑み、本開示は、排ガスの分析を連続的に行うための新たな方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が鋭意検討したところ、排ガスを分析するための装置は、測定対象の物質の濃度について適切な測定範囲があった。一方で、排ガスを発生する装置の種類、及び稼働状況等が原因となって、排ガス内の物質濃度が極端に高くなることがある。そこで、測定する前に排ガスを希釈することで、連続的な分析を行うことができるようになった。
【0011】
上記知見に基づき、本開示は、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
排ガスの監視方法であって、前記方法は、
排ガスを発生する装置に接続した排煙ダクトから排ガスを吸引する工程と、
前記吸引する工程によって吸引された排ガスを連続的に希釈する工程と、
前記希釈する工程によって希釈された排ガスを連続的に分析する工程と、
前記分析する工程によって分析された分析結果を監視する工程と
を含む方法。
(発明2)
発明1に記載の方法であって、前記分析する工程が、粉塵濃度を測定することを含む、方法。
(発明3)
発明2に記載の方法であって、希釈される前の排ガスにおける粉塵濃度が、TSPで1.5mg/m3以上である、方法。
(発明4)
発明2又は3に記載の方法であって、前記希釈する工程が、希釈後の排ガスにおける粉塵濃度がTSPで1.0mg/m3以下になるように排ガスを希釈することを含む、方法。
(発明5)
発明1~4いずれか1つに記載の方法であって、
前記監視する工程は、前記排ガスを発生する装置の操業パラメータを記憶することを含み、
前記監視する工程は、記憶した前記操業パラメータと前記分析結果から、前記操業パラメータと前記分析結果との関係性を予測することを含む、方法。
(発明6)
発明1~5いずれか1つに記載の方法であって、前記排ガスを発生する装置が、金属製錬又は/及びリサイクル処理に用いられる溶融炉、加熱炉、焙焼炉の一種以上である、方法。
(発明7)
発明1~6いずれか1つに記載の方法であって、前記排煙ダクトから排ガスを吸引する吸引口に耐熱ホースが設けられている、方法。
(発明8)
発明1~7いずれか1つに記載の方法であって、前記吸引する工程は、排ガスに加えて大気を吸引し、
前記希釈する工程は、前記吸引する工程によって吸引された排ガスと大気とを混合することで、排ガスを希釈することを含む、方法。
【発明の効果】
【0012】
一側面において、本開示の方法は、排ガスを連続的に希釈することを含む。これにより、排ガスを連続的に測定する際に、適切な測定範囲で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態において、排ガスの分析を行うための設備を示す。
図2】一実施形態において、排ガスの分析を行うためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0015】
1.概要
一実施形態において、本開示は、排ガスの監視システムに関する。前記システムは、少なくとも以下を備える。
・排ガスを発生する装置に接続した排煙ダクトから排ガスを吸引する吸引装置
・吸引装置から吸引された排ガスを連続的に希釈する希釈器
・希釈器によって希釈された排ガスを連続的に分析する分析装置
・分析装置によって分析された分析結果を監視する監視装置
【0016】
別の一実施形態において、本開示は、排ガスの監視方法に関する。前記方法は、少なくとも以下の工程を含む。
・排ガスを発生する装置に接続した排煙ダクトから排ガスを、吸引装置により吸引する工程
・吸引された排ガスを、希釈器により連続的に希釈する工程
・希釈された排ガスを、分析装置により連続的に分析する工程
・分析結果を、監視装置により監視する工程
以下では、図1及び図2を参照しながら、各工程について詳述する。
【0017】
2.吸引する工程及び吸引装置1100
排ガスを分析する際には、分析対象となる排ガスを取得する必要がある。排ガスの取得元は、排ガスを発生する装置である。排ガスを発生する装置は、特定の装置に限定されないが、例えば、金属の製錬、リサイクル処理などに用いられる装置であってもよい。より具体的な例として、装置は、溶融炉、加熱炉、焙焼炉などであってもよい。なお、リサイクル処理とは、産業廃棄物、リサイクル原料(例えば、家電・電子機器部品屑等)等を焼却処理することである。
これらの炉では、原料に含まれる物質の一部が排ガス中に含まれることがある。また、排ガス中に含まれるいくつかの物質は、ある環境基準が適用される可能性もある。排ガスは、排煙ダクト1500を通して、大気中に排出されるが、大気中に排出される前に、これらの物質をできるかぎり低減させるための処理(例、触媒反応による物質の分解、フィルタ等による物質の除去)を行ってもよい。
【0018】
本明細書における「吸引」とは、ポンプなどの装置により流体を移動させる操作に限定されず、単に流体連通させる場合も包含する。排ガスの温度は高い場合があるので、好ましくは、図2に示すように耐熱ホース1600を排煙ダクト1500に挿入してもよい。
【0019】
排煙ダクト1500内において、吸引する位置は特に限定されないが、好ましくは、排ガスに対する物理的処理及び/又は化学的処理(例えば、上述した物質を低減させるための処理)が完了する位置から、大気に排出される位置までの間の任意の位置において行うことができる。
【0020】
吸引する際の流量については適宜設定可能であるが、後述する分析装置1300に流入する排ガスの流量が一定となるよう制御することが好ましい。例えば、希釈された排ガスが後述の希釈器1200により排出される位置から、大気に排出される位置までの間の任意の位置に図示しない流量センサを設けて排ガスの流量を測定し、図示しない流量コントローラで、排ガスの流量が一定となるようポンプの吸引流量を調整することができる。また、流量コントローラは、流量センサと接続されており、流量センサからの流量に関する情報に基づいて、制御を行ってもよい。
【0021】
3.排ガスを連続的に希釈する工程及び希釈器1200
吸引された排ガスは、希釈用の気体を用いて希釈される。希釈用の気体は、特に限定されず、窒素ガスなどの不活性ガスであってもよく、大気などであってもよい。好ましくは、大気である。ただし、後述する分析に影響しないように、ダストフィルタ1700などで、予め粉塵などを除去しておくことが更に好ましい。
【0022】
どのような排ガスを希釈の対象とするかについては、特に限定されないが、好ましくは、希釈前の粉塵濃度が1.5mg/m3以上であり、更に好ましくは、5.0mg/m3以上であり、最も好ましくは、10.0mg/m3以上である。なお、いくら濃度が高くてもそれに応じて希釈すればよいという理由から、上限値は特に限定されない。一方で、対象となる排ガスをどの程度希釈するかについても、特に限定されないが、好ましくは、希釈後の粉塵濃度が1.0mg/m3以下であり、更に好ましくは、0.5mg/m3以下である。下限値は、装置の検出限界を上回る濃度であればよく、装置の仕様に応じて特に限定されない。なお、ここで述べる粉塵濃度は、TSP(Total Suspended Particles、全浮遊粒子状物質)の濃度であって、自動成分分析装置(PX-375、株式会社堀場製作所製)で測定した濃度である。当該装置においては、測定対象(例えば、PM2.5、PM1、PM10等)に応じて、装置の吸引口に分粒装置を設けてもよい。分粒装置の種類は特に限定されないが例えば以下の物が含まれる:重力沈降を利用した多段型、遠心力を利用したサイクロン式、及び、慣性力を利用した慣性衝突式等。分粒装置の影響により、特定のサイズの粒子を、自動成分分析装置に誘導することができる。自動成分分析装置を用いて濃度を測定する場合、例えば、以下の測定条件に従って実行してもよい。
・排ガス流量 16.7L/min
・試料採取測定時間 1時間
測定中、粉塵は、フィルターテープ上に捕集され、そして、捕集された粉塵の質量をベータ線吸収法で測定することができる。測定した質量を、流入した排ガスの積算流量(体積)で除すると、粉塵の濃度を算出することができる。
【0023】
排ガスを希釈するための希釈器1200は特に限定されず、希釈用のガスと、排ガスとを混合し、分析装置1300に送り込む一連の動作を連続的に行うことができればよい。
【0024】
図2を用いて、大気を用いて排ガスを希釈する構成の一例を説明する。排煙ダクト1500には耐熱ホース1600が挿入されており、図2には示さないが例えばポンプによって耐熱ホース1600を通じて排煙ダクト1500から排ガスを吸引する。希釈器1200には排ガス流入口1900が設けられており、吸引された排ガスは、排ガス流入口1900を通じて希釈器1200の中へと案内される。更に、排ガス流入口1900と隣接する箇所には大気流入口2000も設けられており、吸気ファン1800によって大気が希釈器1200の中へと案内される。前述のポンプによって大気を吸引してもよいが、その場合は排ガスを吸引する吸引力が低下するおそれがある。吸気ファン1800を設けることで、排ガスの吸引力の低下を抑制しつつ大気を案内することが可能となる。大気流入口2000にはダストフィルタ1700が設けられているため、希釈器1200の中へと案内される大気からは粉塵などが除去される。そして、希釈器1200の中で排ガスと大気を混合し、排ガスを希釈する。このように大気を希釈用の気体として用いることで、窒素ガスなどの不活性ガスを別途供給する場合のようにボンベを設置・交換する必要がなくなり、後述のように排ガスを連続的に分析することが容易となる。また、排ガス流入口1900と大気流入口2000とが隣接することで、離間した場合と比べてより均一に排ガスと大気とを混合することが可能となる。換言すれば、排ガス流入口1900と大気流入口2000とが希釈器1200の同一面に形成されているともいえる。
【0025】
希釈の割合は不変としてもよいし、可変としてもよい。例えば、後述の分析工程で測定した粉塵等の濃度に応じて変更してもよいし、或いは、操業パラメータに応じて変更してもよい。可変とする場合は、例えば別途大気の流入量を調節可能な流量コントローラ及びポンプを設け、大気の流入量を制御することができる。
【0026】
希釈前における排ガスの粉塵濃度は、希釈の割合と、希釈後の排ガスの粉塵濃度から算出することができる。
【0027】
ダストフィルタ1700は交換できるよう、希釈器1200から着脱可能な構成となっている。また、ダストフィルタ1700の内側(希釈器1200側)には圧力センサを設けてもよい。吸気ファン1800を駆動したときに圧力センサで測定される圧力が所定値を下回ったとき、ダストフィルタ1700が目詰まりを起こしていると判定することが可能となる。或いは、ダストフィルタ1700の外側にも圧力センサを設けてもよい。この場合は、外側の圧力と内側の圧力との差が所定値よりも大きくなったとき、ダストフィルタ1700が目詰まりを起こしていると判定することが可能となる。
【0028】
図2に示す以外に、希釈器1200は更に別の構成要素を備えてもよい。例えば、大気と排気の混合を促進するために、内部に攪拌用のファンを備えてもよい。あるいは、図2に示す構成とは別に、大気を希釈器1200内部に誘導する配管の出口と、排気を希釈器1200内部に誘導する配管の出口とが向かい合うように構成されてもよい。当該構成により、大気と排気が互いに希釈器1200内部で衝突し、均一な混合を促進することができる。また、当該構成であれば、排ガス流入口1900と、大気流入口2000とが隣接する必要もなく、また、排ガス流入口1900と、大気流入口2000とが希釈器1200の同一面に設けられる必要もない。
【0029】
4.排ガスを連続的に分析する工程及び分析装置1300
排ガスを希釈した後は、適切な分析装置1300に送り込み、排ガスを分析する。ここで述べる分析は、例えば、特定の元素の濃度を測定してもよく、及び/又は、粉塵の濃度を測定してもよい。測定対象は特に限定されず、TSPであってもよく、測定対象の粉塵サイズが10μm以下(PM10)であってもよく、2.5μm以下(PM2.5)であってもよく、1μm以下(PM1.0)であってもよい。分析装置1300としては、例えば自動成分分析装置(PX-375、株式会社堀場製作所製、測定条件等については上述の通り)を用いることができる。
【0030】
分析装置1300は、連続的に分析可能な装置である。本明細書で述べる「連続的」とは、間が最大でも2時間未満であることを指し、好ましくは1時間以下であり、更に好ましくは、30分以下であり、更に好ましくは、15分以下である。上述した希釈及び分析の工程は、ともに連続的に行われるが、両者の連続性においては、完全に同期をとる必要はなく、多少の時間のずれはあってもよい。
【0031】
分析結果として含まれる情報は、特に限定されないが、例えば、物質の種類、濃度、測定時間等を含むことができる。こうした情報は、ネットワーク(有線、無線などを含む)の手段により、分析装置1300から監視装置1400に送信されてもよい。
【0032】
5.分析結果を監視する工程及び監視装置1400
分析装置1300よる測定結果を監視装置1400により監視する。これにより、現在の操業のパラメータを調節したり、今後の操業の参考データとして活用したりすることができる。本明細書における監視とは、例えば、分析結果を、データとして記憶したり、モニター、紙媒体などに出力したりすることを含む。監視装置1400の一例を、図2に示す。監視装置1400は、ネットワーク(有線、無線などを含む)を通じて分析装置1300と接続する。監視装置1400は、情報処理装置(コンピュータ、シングルボードコンピュータ、タブレット、スマートフォン等)であってもよい。また、監視装置1400は、分析結果の情報を記憶したり、出力したりするための分析結果監視モジュールを含む。こうしたモジュールは、情報処理装置のハードウェアリソース(例えば、プロセッサ、メモリ、記憶媒体、通信モジュール等)と、プログラムの組み合わせにより実現することができる。
【0033】
なお、図2に示した、耐熱ホース1600、希釈器1200、分析装置1300、及び、監視装置1400は、排煙ダクト1500の存在する位置に固定されてもよいが、別の実施形態においては、排煙ダクト1500から着脱可能且つ移動可能であってもよい。例えば、車両に、耐熱ホース1600、希釈器1200、分析装置1300、及び、監視装置1400を搭載し、分析及び監視が必要な排煙ダクト1500へ、車両が移動してもよい。更に別の実施形態では、車両には、耐熱ホース1600、希釈器1200、及び、分析装置1300が備えられ、監視装置1400は更に別の場所(例えば、設備内の中央監視室等)に存在してもよい。その場合、分析装置1300と監視装置1400との間は、有線又は無線のネットワークを経由して接続されてもよい。
【0034】
6.排ガス装置の操業と分析結果から排ガスの挙動を予測
上記監視装置1400は、分析結果のみならず、操業パラメータの情報も記憶することができる。操業パラメータは、例えば、排煙ダクトに接続する炉の種類、その炉に投入される原料(例えば、鉱石、スクラップ等)の種類と量、炉内雰囲気(例えば、酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気等)、燃焼状況(例えば、燃料の投入量、空気の投入量等)、加熱温度、操業状況(例えば、連続操業、バッチ操業等)等が挙げられる。分析結果と操業パラメータとを組み合わせて記憶することで、両者の相関関係を分析することができる。そして、どの操業パラメータを、どのように調節することで、分析結果がどのように変化するかを予測することができる。
【0035】
こうした予測は、上述した監視装置1400により行われてもよい。例えば、監視装置1400は、過去から現在までの分析結果をモニターに出力するとともに、分析結果の傾向(例えば、上昇傾向、下降傾向等)から、将来の予想値をモニターに出力してもよい。
【0036】
こうした目的から、監視装置1400は、予測モジュールを備えてもよい。予測モジュールの構成は、特に限定されず、例えば、これまでの操業パラメータと分析結果に基づいて、最適な関数などを導出するように構成されてもよい。あるいは、既存の大量のデータを機械学習(例えば、深層学習、RNN、LSTM等)により学習させた学習済みモデルを、予測モジュールが備えてもよい。
【0037】
以上、具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0038】
1100 吸引装置
1200 希釈器
1300 分析装置
1400 監視装置
1500 排煙ダクト
1600 耐熱ホース
1700 ダストフィルタ
1800 吸気ファン
1900 排ガス流入口
2000 大気流入口
図1
図2