(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171173
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】環境モニタリングシステム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G08C 17/02 20060101AFI20241204BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20241204BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241204BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20241204BHJP
G08B 21/12 20060101ALI20241204BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G08C17/02
G08C15/00 D
F27D21/00 A
F27D17/00 104Z
F27D17/00 105Z
G08B21/12
G08B21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088099
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上村 憲一
【テーマコード(参考)】
2F073
4K056
5C086
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA11
2F073AA12
2F073AA19
2F073AA32
2F073AA40
2F073AB04
2F073AB05
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC09
2F073CC12
2F073CD11
2F073DE02
2F073DE07
2F073DE13
2F073EE01
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG09
4K056AA02
4K056CA01
4K056DB07
4K056FA11
4K056FA27
5C086AA38
5C086CA01
5C086CB11
5C086FA06
5C086FA17
(57)【要約】
【課題】効率的な環境モニタリングのシステムを提供すること。
【解決手段】金属製錬設備敷地内の環境モニタリングシステムであって、
前記システムは、移動体と、サーバと、ネットワークとを備え、
前記移動体は、風向風速センサと、大気成分センサと、これらのセンサに接続された情報処理端末とを搭載し、
前記情報処理端末は、前記風向風速センサ及び前記大気成分センサとで計測した計測データを受信し、前記計測データを、前記ネットワークを通じて前記サーバに送信するように構成される、システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製錬設備敷地内の環境モニタリングシステムであって、
前記システムは、移動体と、サーバと、ネットワークとを備え、
前記移動体は、風向風速センサと、大気成分センサと、これらのセンサに接続された情報処理端末とを搭載し、
前記情報処理端末は、前記風向風速センサ及び前記大気成分センサとで計測した計測データを受信し、前記計測データを、前記ネットワークを通じて前記サーバに送信するように構成される、システム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、前記大気成分センサが、粉塵濃度測定センサと、硫黄酸化物濃度測定センサとを含む、システム。
【請求項3】
請求項2のシステムであって、前記システムが画面表示手段を備え、
前記サーバは、前記粉塵濃度測定センサで計測した粉塵濃度と、前記硫黄酸化物濃度測定センサで計測した硫黄酸化物濃度とを、前記画面表示手段を通して1画面で表示するように構成される、
システム。
【請求項4】
請求項3のシステムであって、
前記サーバは、前記粉塵濃度及び前記硫黄酸化物濃度に加え、前記風向風速センサで測定した風向及び風速を、前記画面表示手段を通して1画面で表示するように構成される、
システム。
【請求項5】
請求項1のシステムであって、
前記情報処理端末又は前記サーバは、前記計測データのうち少なくとも1つのデータが予め定めた条件を満たすときに異常を検出するように構成され、
前記情報処理端末又は前記サーバは、前記異常を検出した場合には、前記ネットワークを通じて警告メッセージをクライアント端末に送信するように構成される、
システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記システムが画面表示手段を備え、
前記サーバは、前記計測データを計測した計測地点を前記画面表示手段を通して表示するように構成され、前記異常を検出したときの計測地点を、前記異常を検出しなかったときの計測地点とは異なる見た目で表示するように構成される、
システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステムであって、前記サーバは、前記計測データと、前記計測データを計測した計測地点とを分析して、前記大気成分センサで計測した大気成分の発生源を特定するように構成される、
システム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステムであって、前記サーバは、所定期間の間に複数回計測した前記計測データのうち、少なくとも最大値と、最小値と、平均値とを含むデータを出力するように構成される、
システム。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステムであって、前記移動体が車両である、システム。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステムの使用方法であって、
前記移動体を、前記金属製錬設備敷地内の所定の箇所に移動させる工程と、
前記移動体が搭載する前記センサにて計測を行う工程と、
前記サーバが、複数の箇所の計測データを収集する工程と、
前記収集した計測データに基づいて、発生源を特定する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステムであって、前記システムは、排煙ダクトに取り付けられる装置を更に備え、
前記装置は、排ガスセンサと通信モジュールとを備え、
前記排ガスセンサは、排ガスの成分を計測データとして連続的に測定するように構成され、
前記通信モジュールは、前記排ガスの計測データを、前記ネットワークを通じて前記サーバに送信するように構成される、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境モニタリングシステム及びその使用方法に関する。より具体的には、金属製錬設備敷地内の環境モニタリングシステム及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製錬設備では、金属製錬する工程に伴い様々な工業廃棄物が生じる。その中には、大気中等に放出される排ガスなども含まれる。こうした排ガスは、適切な処理を行い環境の負荷を極力低減させた状態で行う。また、金属製錬設備内では、こうした排ガスの放出等が行われる箇所は数か所存在する場合もある。
【0003】
特許文献1では、焼却場で焼却されたゴミ等の燃焼により生成された排出ガスに含まれる気体などの環境監視システムを開示している。また、当該システムでは、マイクロリアクタ計測通信装置が設けられており、当該装置はセンサとしての役割を果たすことが開示されている。更には、当該装置は、車両に積載して移動基地としてもよい旨が開示されている。
【0004】
特許文献2では、観測局から送信される汚染物質に関する情報を監視局が受信し、前記監視局が汚染状態を遠隔監視する環境監視支援システムを開示している。また、特許文献2は、通信コスト等の観点から、取得した観測データと所定の基準条件とを比較し、観測データが所定の基準条件を満足するデータであるか否かを判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-322323号公報
【特許文献2】特開2006-127100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の様に、金属製錬設備が存在する敷地内では、排ガスの放出が行われるが、環境のモニタリングを行うにあたっては、敷地内には発生源となりうる装置が複数あり、敷地内の各所にて環境測定を行う必要がある。そして、測定結果は、中央管理サーバ等に送信されて集積され、金属製錬設備の操業状態との関係を分析するなどの利用が行われている。
【0007】
しかし、金属製錬設備の敷地は広く、各所に移動して作業員が測定データを送信するのでは、時間と労力がかかってしまい、効率的な環境モニタリングが難しい。また、各所にセンサを予め固定設置して逐次自動的にリアルタイム送信する方法も考えられるが、金属製錬設備の敷地は広いので大量の装置の設置が必要となる。しかも送信されるデータ量も膨大なものとなり、逆に分析の妨げとなる可能性があり、結果として、環境モニタリングの効率が悪くなる可能性もある。
【0008】
以上の点に鑑み、本開示は、効率的な環境モニタリングのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が検討した結果、移動体(例えば、車両)にセンサと情報処理端末を搭載して、当該情報処理端末がセンサの測定データを送信する構成にすることを思いついた。これにより、作業員がデータを送信する必要がなく、効率的な環境モニタリングが可能となる。
【0010】
上記知見に基づいて、本開示は、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
金属製錬設備敷地内の環境モニタリングシステムであって、
前記システムは、移動体と、サーバと、ネットワークとを備え、
前記移動体は、風向風速センサと、大気成分センサと、これらのセンサに接続された情報処理端末とを搭載し、
前記情報処理端末は、前記風向風速センサ及び前記大気成分センサとで計測した計測データを受信し、前記計測データを、前記ネットワークを通じて前記サーバに送信するように構成される、システム。
(発明2)
発明1のシステムであって、前記大気成分センサが、粉塵濃度測定センサと、硫黄酸化物濃度測定センサとを含む、システム。
(発明3)
発明2のシステムであって、前記システムが画面表示手段を備え、
前記サーバは、前記粉塵濃度測定センサで計測した粉塵濃度と、前記硫黄酸化物濃度測定センサで計測した硫黄酸化物濃度とを、前記画面表示手段を通して1画面で表示するように構成される、
システム。
(発明4)
発明3のシステムであって、
前記サーバは、前記粉塵濃度及び前記硫黄酸化物濃度に加え、前記風向風速センサで測定した風向及び風速を、前記画面表示手段を通して1画面で表示するように構成される、
システム。
(発明5)
発明1~4いずれか1つに記載のシステムであって、
前記情報処理端末又は前記サーバは、前記計測データのうち少なくとも1つのデータが予め定めた条件を満たすときに異常を検出するように構成され、
前記情報処理端末又は前記サーバは、前記異常を検出した場合には、前記ネットワークを通じて警告メッセージをクライアント端末に送信するように構成される、
システム。
(発明6)
発明5に記載のシステムであって、前記システムが画面表示手段を備え、
前記サーバは、前記計測データを計測した計測地点を前記画面表示手段を通して表示するように構成され、前記異常を検出したときの計測地点を、前記異常を検出しなかったときの計測地点とは異なる見た目で表示するように構成される、
システム。
(発明7)
発明1~6のいずれか1つに記載のシステムであって、前記サーバは、前記計測データと、前記計測データを計測した計測地点とを分析して、前記大気成分センサで計測した大気成分の発生源を特定するように構成される、
システム。
(発明8)
発明1~7のいずれか1つに記載のシステムであって、前記サーバは、所定期間の間に複数回計測した前記計測データのうち、少なくとも最大値と、最小値と、平均値とを含むデータを出力するように構成される、
システム。
(発明9)
発明1~8のいずれか1つに記載のシステムであって、前記移動体が車両である、システム。
(発明10)
発明1~9のいずれか1つに記載のシステムの使用方法であって、
前記移動体を、前記金属製錬設備敷地内の所定の箇所に移動させる工程と、
前記移動体が搭載する前記センサにて計測を行う工程と、
前記サーバが、複数の箇所の計測データを収集する工程と、
前記収集した計測データに基づいて、発生源を特定する工程と、
を含む、方法。
(発明11)
発明1~9のいずれか1つに記載のシステムであって、前記システムは、排煙ダクトに取り付けられる装置を更に備え、
前記装置は、排ガスセンサと通信モジュールとを備え、
前記排ガスセンサは、排ガスの成分を計測データとして連続的に測定するように構成され、
前記通信モジュールは、前記排ガスの計測データを、前記ネットワークを通じて前記サーバに送信するように構成される、
システム。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面において、移動体は、風向風速センサと、大気成分センサと、これらのセンサに接続された情報処理端末とを搭載し、情報処理端末は、風向風速センサと大気成分センサとによる計測データを、ネットワークを通じてサーバに送信するように構成される。
【0012】
これにより、大量にセンサを設置して大量のデータを処理する必要がない。また、データの送信も自動的に行うことが可能であり、作業員がわざわざ操作して、データの送信を行う必要がない。更には、センサを固定設置した場合と比べて、好きな場所に移動して環境モニタリングを行うことができる。従って、効率的な環境モニタリングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態における本開示のシステムの構成を示す。
【
図2】一実施形態における本開示のシステムが備える移動体の構成を示す。
【
図3】一実施形態における本開示の移動体が備える情報処理端末の構成を示す。
【
図4】一実施形態における本開示のサーバの構成を示す。
【
図5】一実施形態における本開示のシステムが提供するインターフェースの構成を示す。
【
図6】一実施形態における本開示のシステムからの出力データの構成を示す。
【
図7】別の一実施形態における本開示のシステムの構成を示す。
【
図8】別の一実施形態における本開示のシステムの一部分の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0015】
1.システム構成(図1)
一実施形態において、本開示は、金属製錬設備敷地内の環境モニタリングシステムに関する。製錬対象の金属は特に限定されず、銅、鉛、ニッケルなど当分野で公知の金属であってもよい。
【0016】
金属製錬設備敷地内の環境モニタリングシステムに関する構成の例を
図1に示す。システムは、移動体1100と、サーバ1200と、ネットワークとを備える。移動体1100は、詳細は後述するが、環境モニタリングの際に、所望の場所に移動して、環境データの測定を行い、当該データをサーバ1200に送信するためのものである。サーバ1200は、データを収集し、分析等の所望の処理を行うことができる。
【0017】
サーバ1200の形態は特に限定されず、クラウドであってもよく、オンプレミスであってもよい。オンプレミスの場合には、当分野で公知の情報処理装置を使用することができる。情報処理装置は、典型的には、プロセッサ、メモリ、記憶媒体、通信モジュール等を備え、プログラムに記載の指示をプロセッサが実行することで所望の機能を実現することができる。
【0018】
移動体1100とサーバ1200間の情報の送受信の媒体として、本開示のシステムは、ネットワークを備える。ネットワークは、有線であってもよく、無線であってもよく、両者の組み合わせであってもよい。しかし、移動体1100が自由に移動できるようにする観点から、ネットワークは、無線、又は、無線と有線との組み合わせが好ましい。また、ネットワークは、インターネット、LAN、WANなど所望の技術に基づいてもよい。典型的には、機密性の観点から、VPNに基づいたネットワークであってもよい。
【0019】
また、複数のネットワークを組み合わせる場合には、通信経路の途中でゲートウェイ1500を配置してもよい。例えば、
図1の例で示すように、移動体1100がどの位置に移動したとしても、無線ネットワーク1400に接続できるように、複数のゲートウェイ1500を配置してもよい。そして、各ゲートウェイ1500は、移動体1100と無線ネットワーク1400に接続され、データの送受信を行うことができる。一方で、各ゲートウェイ1500は、有線ネットワーク1300にも接続されており、サーバ1200とのデータの送受信を行うことができる。結果として、移動体1100とサーバ1200との間のデータの送受信を仲介する機能を担うことができる。
【0020】
また、システムは、任意で、クライアント端末1600を備えてもよい。あるいは、システムは、クライアント端末1600を備えず、システム外部に存在するクライアント端末1600と接続されてもよい。クライアント端末1600は、サーバ1200が送信したデータを受信することができる。例えば、後述するような警告メッセージを、クライアント端末1600が受信することができる。
【0021】
特記しない限り、各構成要素の個数は特に限定されない。例えば、移動体1100、クライアント端末1600、及びサーバ1200は、それぞれ1ずつだけ
図1に示してある。しかし、これらの構成要素は複数存在してもよい。
【0022】
2.移動体1100(図2)
移動体1100の構成の一例を
図2に示す。移動体1100は、センサと情報処理端末2300とを備える。センサは、環境モニタリングの目的で、環境に関する様々なデータを測定する機能を有する。移動体1100は、所望の場所に移動可能な物であり、ヒトが乗車可能な物であってもよく、或いはそれ以外であってもよい。前者の例としては、車両が挙げられ、例えば、自動車(例えば、乗用車、トラック)、二輪車などが挙げられる。後者の例では、自律走行型ロボット等が挙げられる。
【0023】
2-1.センサ
センサは、少なくとも、風向風速センサ2100と、大気成分センサ2200とを備える。また、センサは、風向風速センサ2100及び大気成分センサ2200以外に、他のセンサを更に含んでもよい。例えば、気圧センサ、温度センサ、湿度センサ、GPSセンサから選択されるいずれか1種以上を更に備えてもよい。
【0024】
風向風速センサ2100は、風の方角と風の速度を測定することが可能なセンサである。風の方角と風の速度の測定原理については特に限定されず、当分野で公知の原理に基づいたものであってよい。
【0025】
大気成分センサ2200は、大気に含まれる物質の種類、及び/又は量を特定するセンサである。大気成分センサ2200は、複数種類のセンサの組み合わせであってもよく、好ましくは、少なくとも、粉塵濃度測定センサと、硫黄酸化物濃度測定センサの両者を含んでもよい。粉塵及び硫黄酸化物は、金属製錬設備においては、排煙ダクト等から放出されることがあり、金属製錬設備内において、これらのモニタリングは重要となる。また、大気成分センサ2200は、粉塵濃度測定センサと、硫黄酸化物濃度測定センサ以外に、他のセンサを更に含んでもよい。例えば、窒素酸化物濃度測定センサ、CO2濃度測定センサから選択されるいずれか1種以上を更に備えてもよい。
【0026】
粉塵濃度測定センサは、所望のサイズの微粒子の大気中における濃度を特定するためのセンサである。測定原理については特に限定されず、当分野で公知の原理に基づいたものであってよい。測定対象は、特に限定されず、例えば、TSP(Total Suspended Particles、全浮遊粒子状物質)であってもよく、測定対象の粉塵サイズが10μm以下(PM10)であってもよく、2.5μm以下(PM2.5)であってもよく、1μm以下(PM1.0)であってもよい。粉塵濃度測定センサは、各種元素濃度を分析する機能を備えていてもよい。分析方法は当分野で公知の原理に基づいたものであってよく、例えば蛍光X線分析法が挙げられる。粉塵濃度測定センサとしては、例えば自動成分分析装置(PX-375、株式会社堀場製作所製)を用いることができる。当該装置においては、測定対象(例えば、PM2.5、PM1.0、PM10等)に応じて、装置の吸引口に分粒装置を設けてもよい。分粒装置の種類は特に限定されないが例えば以下の物が含まれる:重力沈降を利用した多段型、遠心力を利用したサイクロン式、及び、慣性力を利用した慣性衝突式等。分粒装置の影響により、特定のサイズの粒子を、自動成分分析装置に誘導することができる。自動成分分析装置を用いて濃度を測定する場合、例えば、以下の測定条件に従って実行してもよい。
・排ガス流量 16.7L/min
・試料採取測定時間 1時間
測定中、粉塵は、フィルターテープ上に捕集され、そして、捕集された粉塵の質量をベータ線吸収法で測定することができる。測定した質量を、流入した排ガスの積算流量(体積)で除すると、粉塵の濃度を算出することができる。
【0027】
硫黄酸化物濃度測定センサは、硫黄酸化物の大気中における濃度を特定するためのセンサである。測定原理については特に限定されず、当分野で公知の原理に基づいたものであってよい。硫黄酸化物の例として、一酸化硫黄(SO)、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)(SO2)、三酸化硫黄(SO3)などが挙げられる。金属製錬設備(例えば、硫化鉱からの製錬)において放出される排ガスは、粉塵濃度のみならず硫黄酸化物の濃度も高いことが多い。したがって、粉塵濃度と硫黄酸化物濃度とを同時に測定することによって、より正確に排ガスの発生源を特定することが可能となる。換言すれば、粉塵濃度と硫黄酸化物濃度いずれも高い値が測定された場合は、発生源から発生するものが金属製錬設備から生じた排ガスであると推定することが可能となる。硫黄酸化物濃度測定センサとしては、例えばSO2濃度測定装置(APSA-370、株式会社堀場製作所製)を用いることができる。
【0028】
センサの測定方式については、特に限定されず、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。好ましくは、連続式で測定可能なセンサである。
【0029】
2-2.情報処理端末2300
情報処理端末2300は、上述したセンサが測定したデータを、一定の形式でサーバ1200に送信する役割を担う。
図3に、情報処理端末2300の構成の一例を示す。情報処理端末2300は、典型的な構成要素を備え、例えば、1又は複数のプロセッサ3100、1又は複数のメモリ3200、1又は複数の記憶媒体3300(メモリ3200と異なり、非一時的に記憶する媒体)、1又は複数の通信モジュール3400を備える。情報処理端末2300は、典型的には、PC、タブレット、シングルボードコンピュータ(例えば、ラズベリーパイ)、スマートフォンなどが挙げられるが、これらに限定されず、上述の構成要素を備えるものであればよい。
【0030】
好ましくは、情報処理端末2300は、センサからのデータの送受信を行うためのインターフェースを更に備える。インターフェースは、特に限定されず、例えば、USB等当分野で公知の規格に基づくものであってよい。
【0031】
情報処理端末2300に設けられたプロセッサ3100は、データを所定の形式に変換する機能を有していてもよい。プロセッサ3100は、メモリ3200及び/又は記憶媒体3300に記憶されたプログラムの指示に従って、センサからのデータを所定の形式に変換したうえで、通信モジュール3400を通して、サーバ1200にデータを送信することができる。例えば、プロセッサ3100は、タイムスタンプを取得して、センサからのデータ(例えば、測定値)とタイムスタンプをペアにした送受信用データを作成することができる。更には、GPSセンサからのデータを受信することによって、位置情報を取得し、送受信用データに追加することができる。また、送受信用データには、複数の種類のセンサのデータ(例えば、風向風速センサ2100と、大気成分センサ2200)が含まれるため、データの数値がどの種類のセンサの数値なのかを特定するためのセンサ識別情報を、送受信用データに追加することができる。
【0032】
3.サーバ1200
サーバ1200は、移動体1100(より具体的には移動体1100が備える情報処理端末2300)からのデータを受信することができ、データの分析等を行うことができる。
図4に、サーバ1200の構成の一例を示す。サーバ1200は、典型的な構成要素を備え、例えば、1又は複数のプロセッサ3100、1又は複数のメモリ3200、1又は複数の記憶媒体3300(メモリ3200と異なり、非一時的に記憶する媒体)、1又は複数の通信モジュール3400を備える。サーバ1200は、任意で画面表示手段を備えてもよい。画面表示手段は、例えば、ディスプレイ3500(例えば、LEDタイプ、有機ELタイプ等)、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラス、プロジェクター等により実装されてもよい。サーバ1200は、典型的には、PC、タブレット、シングルボードコンピュータ、スマートフォンなどが挙げられるが、これらに限定されず、上述の構成要素を備えるものであればよい。サーバ1200は、通信モジュール3400を通して、情報処理端末2300からのデータを受信することができる。プロセッサ3100は、メモリ3200及び/又は記憶媒体3300に記憶されたプログラムの指示に従って、受信した計測データを分析して異常を検出するように構成されてもよい。より具体的には、大気成分に関する異常を検出するように構成されてもよい。
【0033】
異常の検出方法は特に限定されず、例えば、大気成分毎に上限値及び/又は下限値となる閾値を予め設定しておき、計測データと比較する方式であってもよい。或いは、計測データを時系列で取得し、時間の変化率を算出し、当該算出した変化率を、予め設定した閾値と比較してもよい。これにより、急激な変化などを検出することができる。異常を検出する対象の成分としては、粉塵濃度測定センサから分析した各種元素のうち、一部のものに限定してもよい。また、硫黄酸化物も対象としてもよい。或いは、元素同士の比率としてもよい。
【0034】
サーバ1200に設けられたプロセッサ3100は、異常を検出した場合(例えば、計測データのうち少なくとも1つのデータが予め定めた条件を満たすことを判断して異常を検出した場合)には、メモリ3200及び/又は記憶媒体3300に記憶されたプログラムの指示に従って、警告メッセージを作成することができる。警告メッセージは、センサの種類を示す情報、センサで測定を行った位置を示す情報、センサの値の情報などを含むことができる。これにより、どの場所で、どのセンサの値が異常を示したのかを、警告メッセージを読んだ人が理解することができる。
【0035】
警告メッセージは、特定の形式に限定されず、例えば、電子メールの形式であってもよく、或いは、ビジネスチャットなどでの投稿メッセージの形式であってもよく、或いは、音声メッセージの形式であってもよい。
【0036】
警告メッセージを作成した後、プロセッサ3100は、メモリ3200及び/又は記憶媒体3300に記憶されたプログラムの指示に従って、ネットワークを通して、クライアント端末1600に送信することができる。クライアント端末1600のユーザは、警告メッセージを閲覧して、現状の分析や対応指示を行うことができる。或いは、金属製錬設備が、中央制御管理室に別途設備内の監視及び制御を行うための装置を備えている場合には、プロセッサ3100は、当該装置に警告メッセージを送信することができる。
【0037】
また、プロセッサ3100は、メモリ3200及び/又は記憶媒体3300に記憶されたプログラムの指示に従って、計測データと、計測データを計測した計測地点とを分析して、発生源を特定するように構成されてもよい。好ましくは、上述したように異常を検出した場合に、発生源を特定する処理を実行してもよい。
【0038】
以下、発生源の特定方法の一例を説明する。サーバ1200が受信するデータ(即ち、センサが測定した値のデータ)には、計測した位置を示す情報と、風向風速のデータと、大気成分のデータが含まれている。従って、風向の情報から、異常に関連する大気中の成分が、どの方角から移動してきたのかを推定することができる。また、風速、及び/又は大気成分の濃度から、測定箇所と発生源との間の距離を推定することができる。例えば、風速が早い場合には、発生源との距離が遠い可能性がある。また、大気成分の濃度が高い場合には、発生源との距離が近い可能性がある。測定箇所から発生源への方角と、測定箇所と発生源との間の推定距離から、大気成分の発生源を特定することが可能となる。
【0039】
こうした風向、風速、大気成分の濃度などとの相関関係を利用することで、発生源の特定を行うことができる。また、分析に使用するデータは、特定の一か所で測定したデータに限定されず、複数の場所で測定したデータを利用してもよい。これにより、発生源の特定の精度が向上する。特定した発生源の位置情報については、クライアント端末1600に送信してもよいし、画面表示手段(例えば、サーバ1200に設けられたディスプレイ3500、クライアント端末1600に設けられたディスプレイ等)に表示してもよい。例えば、クライアント端末1600に設けられたディスプレイに表示する場合には、サーバ1200は、表示する内容のデータを作成して、クライアント端末1600に送信してもよい。例えば、サーバ1200は、Webサーバとして機能し、表示する内容のデータをHTMLファイル等の形式で作成し、クライアント端末1600に送信してもよい。この場合、クライアント端末1600は、ブラウザ等のアプリケーションソフトを通して、前記データを表示することができる。
【0040】
画面表示手段は、移動体1100から取得したデータを表示することができる。例えば、
図5のように所定の測定地点における粉塵濃度、硫黄酸化物濃度、風向及び風速を表示することができる。ここで、粉塵濃度と、硫黄酸化物濃度とを同時に1画面上に表示させることで、より正確に排ガスの発生源を特定することが可能となる。1画面上に表示させる方法としては、例えば横軸に日時、縦軸に測定濃度としたグラフ上に粉塵濃度、硫黄酸化物濃度をプロットすることができる。これにより、排ガスを示す情報となる粉塵濃度及び硫黄酸化物濃度を同時に把握することが可能となる。なお、粉塵濃度、硫黄酸化物濃度と同時に1画面上に表示する際には、
図5に示すように1つのプロット領域に重ねて表示してもよく、或いは、
図5には示さないが、各々のプロット領域を画面内に設けて表示させてもよい。このとき、合わせて所定の測定地点の所定の期間における風向及び風速の頻度をレーザーチャートとして表示してもよい。または、大気成分濃度と風の方角とを組み合わせて、方角毎の大気成分濃度をレーザーチャートとして表示してもよい。これらの表示により、粉塵をはじめとする大気中の成分がどの方角から移動してきたのかを推定することが容易となる。更に、各測定地点を地図上に表示させてもよい。このとき、異常を検出した測定地点を、異常を検出しなかった測定地点とは異なる見た目となるよう表示してもよい。例えば、異なる色の表示としたり、異なる大きさの表示としたりしてもよい。あるいは、測定地点を示す記号(
図5では、●及び○)の上に重ねて、及び/又は、当該記号の周辺に、強調マーク(例えば、矢印、指差しマーク、警告マーク等)を表示させてもよい。これにより、異常を検出した測定地点を容易に把握することが可能となる。
【0041】
プロセッサ3100は、移動体1100からのデータを予め定めた形式のフォーマットで出力するよう構成されていてもよい。例えば、
図6のように、所定の期間内に測定した大気成分濃度(例えば、粉塵濃度、硫黄酸化物濃度、その他特定の元素の濃度等)及び風速の最小値及び最大値を出力してもよいし、これらの平均値及びデータ数を出力してもよい。このように出力することで、所定期間内の大気成分濃度や風の条件に関する傾向を把握することが容易となる。また、各種データを日時毎に出力してもよい。出力の形態としては、前述の画面表示手段に表示してもよいし、別途プリンタと接続して印刷してもよい。
【0042】
なお、計測データの分析処理は、前述の情報処理端末2300で行ってもよい。この場合は、予め情報処理端末2300のプロセッサ3100でデータの分析を行い、分析結果をサーバ1200に送信する。また、警告メッセージの作成及び送信も前述の情報処理端末2300で行ってもよい。
【0043】
4.固定式の監視装置
一実施形態において、本開示のシステムは、上述したように、移動可能な移動体1100にセンサを搭載して所望の場所に移動して環境に関するデータを測定及び収集する。これに加えて、一実施形態おける本開示のシステムは、更に、場所を固定してセンサ5200を設置してもよい。具体的には、
図7に示すように金属製錬設備の排煙ダクト1700に、センサ5200を含む装置1800を設けてもよい。なお、装置1800は、一時的に排煙ダクト1700に固定されてもよく、或いは、非一時的に排煙ダクト1700に固定されてもよい。非一時的とは、例えば、監視を行っていない間も設置状態を維持することを意味してもよい。そして、装置1800は、通信モジュールを更に含むか、又は、接続されており、センサ5200による測定データを、有線ネットワーク1300を通じてサーバ1200に送信することができる。排煙ダクト1700及び装置1800は、
図7では1台ずつ示しているが、複数台存在してもよい。
【0044】
図8に排煙ダクト1700周辺の構成の具体例を示す。排煙ダクト1700周辺において、以下の工程が実施されてもよい。
・排ガスを発生する装置に接続した排煙ダクト1700から吸引する工程
・吸引された排ガスを連続的に希釈する工程
・希釈された排ガスを連続的に分析する工程
・分析結果を監視する工程
【0045】
4-1.吸引する工程
排ガスを分析する際には、分析対象となる排ガスを取得する必要がある。排ガスの取得元は、排ガスを発生する装置である。排ガスを発生する装置は、金属の製錬に用いられる装置あってもよい。より具体的な例として、排ガスを発生する装置は、溶融炉、加熱炉、焙焼炉などであってもよい。これらの炉5400では、原料に含まれる物質の一部が排ガス中に含まれることがある。また、これらの物質については環境基準が定められている物もある。排ガスは、排煙ダクト1700を通して、大気中に排出されるが、大気中に排出される前に、これらの物質をできるかぎり低減させるための処理(例、触媒反応による物質の分解、フィルタ等による物質の除去)を行ってもよい。
【0046】
本明細書における「吸引」とは、ポンプなどの装置により流体を移動させる操作に限定されず、単に流体連通させる場合も包含する。排ガスの温度は高い場合があるので、好ましくは、耐熱ホースを排煙ダクト1700に挿入してもよい。
【0047】
排煙ダクト1700内において、吸引する位置は特に限定されないが、好ましくは、排ガスに対する物理的処理及び/又は化学的処理(例えば、上述した有害物質を低減させるための処理)が完了する位置から、大気に排出される位置までの間の任意の位置において行うことができる。
【0048】
4-2.排ガスを連続的に希釈する工程
吸引された排ガスは、希釈用の気体を用いて希釈される。希釈用の気体は、特に限定されず、窒素ガスなどの不活性ガスであってもよく、大気などであってもよい。好ましくは、大気である。ただし、後述する分析に影響しないように、エアフィルタなどで、予め粉塵などを除去しておくことが更に好ましい。
【0049】
どのような排ガスを希釈の対象とするかについては、特に限定されないが、好ましくは、希釈前の粉塵濃度が1.5mg/m3以上であり、更に好ましくは、5.0mg/m3以上であり、最も好ましくは、10.0mg/m3以上である。なお、いくら濃度が高くてもそれに応じて希釈すればよいという理由から、上限値は特に限定されない。一方で、対象となる排ガスをどの程度希釈するかについても、特に限定されないが、好ましくは、希釈後の粉塵濃度が1.0mg/m3以下であり、更に好ましくは、0.5mg/m3以下である。下限値は、装置の検出限界を上回る濃度であればよく、装置の仕様に応じて特に限定されない。なお、ここで述べる粉塵濃度は、TSPの濃度であって、自動成分分析装置(PX-375、株式会社堀場製作所製)で測定した濃度である。当該装置においては、上述した移動体1100に備える場合と同様、測定対象(例えば、PM2.5、PM1、PM10等)に応じて、装置の吸引口に分粒装置を設けてもよい。また、測定条件、測定原理等についても、上述した移動体1100に備える場合と同様であってもよい。
【0050】
排ガスを希釈するための希釈器5100は特に限定されず、希釈用のガスと、排ガスとを混合し、センサ5200に送り込む一連の動作を連続的に行うことができればよい。
【0051】
希釈の割合は不変としてもよいし、可変としてもよい。例えば、後述の分析工程で測定した粉塵等の濃度に応じて変更してもよいし、操業パラメータに応じて変更してもよい。
【0052】
4-3.排ガスを連続的に分析する工程
排ガスを希釈した後は、適切なセンサ5200に送り込み、排ガスを分析する。ここで述べる分析は、例えば、特定の元素の濃度を測定してもよく、及び/又は、粉塵の濃度を測定してもよい。測定対象は特に限定されず、TSPであってもよく、測定対象の粉塵サイズが10μm以下(PM10)であってもよく、2.5μm以下(PM2.5)であってもよく、1μm以下(PM1.0)であってもよい。
【0053】
センサ5200は、連続的に測定可能な装置である。本明細書で述べる「連続的」とは、間が最大でも2時間未満であることを指し、好ましくは1時間以下であり、更に好ましくは、30分以下であり、更に好ましくは、15分以下である。センサ5200としては、例えば粉塵濃度測定センサを用いることができ、例えば自動成分分析装置(PX-375、株式会社堀場製作所製、測定条件等については上述の通り)を用いることができる。
【0054】
測定結果として含まれる情報は、特に限定されないが、例えば、物質の種類、濃度、測定時間等を含むことができる。こうした情報は、通信モジュール5300を通してのネットワーク(有線、無線などを含む)の手段により、装置1800からサーバ1200に送信されてもよい。
【0055】
4-4.分析結果を監視する工程
分析装置よる測定結果をサーバ1200により監視する。これにより、現在の操業のパラメータを調節したり、今後の操業の参考データとして活用したりすることができる。本明細書における監視とは、例えば、分析結果を、データとして記憶したり、画面表示手段で出力したり、紙媒体などに出力したりすることを含む。監視装置は、情報処理装置(例えば、コンピュータ、シングルボードコンピュータ、タブレット、スマートフォン等)であってもよい。また、監視装置は、分析結果の情報を記憶したり、出力したりするための分析結果監視モジュールを含む。こうしたモジュールは、情報処理装置のハードウェアリソース(例えば、プロセッサ、メモリ、記憶媒体、通信モジュール等)と、プログラムの組み合わせにより実現することができる。
【0056】
4-5.排ガス装置の操業と分析結果から排ガスの挙動を予測
上記監視装置は、分析結果のみならず、操業パラメータの情報も記憶することができる。操業パラメータは、例えば、排煙ダクトに接続する炉の種類、投入される原料(例えば、鉱石、スクラップ等)の種類と量、炉内雰囲気(例えば、酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気等)、燃焼状況(例えば、燃料の投入量、空気の投入量等)、加熱温度、操業状況(例えば、連続操業、バッチ操業)等が挙げられる。分析結果と操業パラメータとを組み合わせて記憶することで、両者の相関関係を分析することができる。そして、どの操業パラメータを、どのように調節することで、分析結果がどのように変化するかを予測することができる。
【0057】
こうした予測は、上述した監視装置により行われてもよい。例えば、監視装置は、過去から現在までの分析結果をモニターに出力するとともに、分析結果の傾向(例えば、上昇傾向、下降傾向等)から、将来の予想値をモニターに出力してもよい。
【0058】
こうした目的から、監視装置は、予測モジュールを備えてもよい。予測モジュールの構成は、特に限定されず、例えば、これまでの操業パラメータと分析結果に基づいて、最適な関数などを導出するように構成されてもよい。あるいは、既存の大量のデータを機械学習(例えば、深層学習、RNN、LSTM等)により学習させた学習済みモデルを、予測モジュールが備えてもよい。
【0059】
5.固定式の監視装置と、センサを備える移動体1100との組み合わせ
図7に示すように、一実施形態において、本開示のシステムでは、移動体1100が任意の場所に移動してセンサ2100、2200による測定データを収集する一方で、装置1800によって一定の場所にて継続的にセンサ5200による測定データを収集することができる。
【0060】
両者を組み合わせて分析することで、より高い精度での予測を行うことが可能となる。例えば、敷地内の特定の箇所での大気環境が悪化した場合、移動体1100側からのデータでもある程度の予測は可能である。例えば、風向、風速、濃度などから、発生源の方角や距離の予測を立てることができる。しかしながら、同一の方角に発生源の候補が複数存在したり、予想された方角に発生源の候補が存在しなかったりする可能性もある。こうした場合、移動体1100側からのデータだけでは限界がある。
【0061】
一方で、排煙ダクト1700などに設けた装置1800のデータのみだと、排煙ダクト1700自体が放出する物質の監視は可能となるが、大気放出後に、どの方角へ物質が流れて移動するかを把握することができない。
【0062】
しかし、両者を組み合わせることで、移動体1100側からのデータだけでは特定できなかった発生源を特定できる可能性がある。例えば、移動体1100側からのデータで複数の発生源の候補が挙がった場合には、装置1800側のデータを分析して、放出される物質について異常が生じていないかを調べることで、更に候補を絞り込むことができる可能性がある。
【0063】
以上、具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0064】
1100 移動体
1200 サーバ
1300 有線ネットワーク
1400 無線ネットワーク
1500 ゲートウェイ
1600 クライアント端末
1700 排煙ダクト
1800 装置
2100 風向風速センサ
2200 大気成分センサ
2300 情報処理端末
3100 プロセッサ
3200 メモリ
3300 記憶媒体
3400 通信モジュール
3500 ディスプレイ
5100 希釈器
5200 センサ
5300 通信モジュール
5400 炉