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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171183
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】崩壊性スクラブ剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20241204BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241204BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/73
A61Q19/10
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088125
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390005728
【氏名又は名称】AGCエスアイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 肇
(72)【発明者】
【氏名】福本 浩大
(72)【発明者】
【氏名】有光 慎之介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AD201
4C083AD261
4C083AD321
4C083BB21
4C083BB23
4C083BB26
4C083BB31
4C083CC23
4C083DD22
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE09
(57)【要約】
【課題】崩壊性スクラブ剤であって、崩壊後も肌に優しくかつ感触も良好で環境にもやさしいスクラブ剤、並びに崩壊性スクラブ剤を含む化粧料及び洗顔料を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が1μm以上の無機球状粒子と、水に溶解又は分散するバインダーとを含み、平均粒子径が50μm以上である崩壊性スクラブ剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1μm以上の無機球状粒子と、水に溶解又は分散するバインダーとを含み、平均粒子径が50μm以上である崩壊性スクラブ剤。
【請求項2】
前記無機球状粒子が、シリカ粒子である、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項3】
前記シリカ粒子が、多孔質シリカ粒子及び無孔質シリカ粒子のうちの少なくとも一方である、請求項2に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項4】
前記バインダーが、天然有機高分子化合物、合成有機高分子化合物、半合成高分子化合物及び水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項5】
前記バインダーが、セルロースファイバー、キトサンファイバー及び寒天からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項6】
前記無機球状粒子の平均粒子径が1~300μmである、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項7】
前記崩壊性スクラブ剤が崩壊した後の前記無機球状粒子の平均円形度が0.85以上である、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項8】
前記無機球状粒子を70~99.9質量%含有する、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項9】
前記バインダーを0.1~30質量%含有する、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項10】
さらに着色顔料を含む、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項11】
前記崩壊性スクラブ剤を水に12時間浸漬した後の圧縮強度が3MPa以下である、請求項1に記載の崩壊性スクラブ剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の崩壊性スクラブ剤を含む化粧料又は洗顔料。
【請求項13】
クリーム状又はジェル状である請求項12に記載の化粧料又は洗顔料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、崩壊性スクラブ剤、並びに該崩壊性スクラブ剤を含む化粧料及び洗顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚用洗浄剤やマッサージクリーム等のボディケア用品には、洗浄効果やマッサージ効果を高める目的で顆粒状物質であるスクラブ剤が配合されることがある。スクラブ剤には、使用初期にはスクラブ感があるものの、使用中に徐々にスクラブ剤が崩壊して小さくなりスクラブ感が無くなるもの(崩壊性スクラブ剤とも称する。)と、使用中に粒子形状を維持し、スクラブ感を維持するもの(非崩壊性スクラブ剤とも称する。)とに大きく分けられる。
【0003】
例えば、崩壊性スクラブ剤として、特許文献1には、平均粒子径5~50nmのシリカ微粒子が複数結合した平均粒子径50~500nmの非球状粒子を含む、(i)平均粒子径[μm]が0.5~50、(ii)細孔容積[cm/g]が0.5~5.0、(iii)細孔径の最頻値[nm]が2~50、(iv)平均形状係数が0.8~1.0、(v)平均圧縮強度[kgf/mm]が0.1~1.0未満、及び(vi)ナトリウム含有量が10ppm以下を満たす網目構造の多孔質シリカ粒子が提案されている。
【0004】
また、従来のスクラブ剤としては、上記したようなシリカ粒子を用いるものの他に、例えば、合成樹脂の粒子、クルミやアンズ等の植物種子を粉砕した粒子、キャンデリラワックスやカルナウバロウ等の天然ワックスの粒子等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6631987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂からなる崩壊性のスクラブ剤は合成樹脂を微粒子化したマイクロプラスチックビーズから形成されており、マイクロプラスチックビーズは比重が軽く難分解性でありかつ疎水的であるため、下水処理設備等において十分に除去されることなく環境中に放出されて海洋汚染を引き起こしやすい。マイクロプラスチックビーズが自然界に排出されると長期にわたり残り続け、生態系にとどまり、更に蓄積することで様々な影響を及ぼす可能性がある。また、植物種子を粉砕した粒子は、不定形で鋭い割面を有するものが多いため、肌に傷をつけたり、感触が悪く、また色味が制御しにくい。そして、天然ワックスの粒子は、天然ワックス自体が天然物であるために高価である。
上記した特許文献1に記載の多孔質シリカ粒子は、環境に配慮されるとともに安定供給可能な材料であるが、崩壊後の感触の点では満足できるものではなかった。
【0007】
そこで本発明は、崩壊性スクラブ剤であって、崩壊後も肌に優しくかつ感触も良好で環境にも優しいスクラブ剤、並びに崩壊性スクラブ剤を含む化粧料及び洗顔料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の無機粒子とバインダーを含むスクラブ剤により上記問題点を解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記に関するものである。
(1)平均粒子径が1μm以上の無機球状粒子と、水に溶解又は分散するバインダーとを含み、平均粒子径が50μm以上である崩壊性スクラブ剤。
(2)前記無機球状粒子が、シリカ粒子である、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(3)前記シリカ粒子が、多孔質シリカ粒子及び無孔質シリカ粒子のうちの少なくとも一方である、前記(2)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(4)前記バインダーが、天然有機高分子化合物、合成有機高分子化合物、半合成高分子化合物及び水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(5)前記バインダーが、セルロースファイバー、キトサンファイバー及び寒天からなる群から選択される少なくとも1つである、前記(4)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(6)前記無機球状粒子の平均粒子径が1~300μmである、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(7)前記崩壊性スクラブ剤が崩壊した後の前記無機球状粒子の平均円形度が0.85以上である、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(8)前記無機球状粒子を70~99.9質量%含有する、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(9)前記バインダーを0.1~30質量%含有する、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(10)さらに着色顔料を含む、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(11)前記崩壊性スクラブ剤を水に12時間浸漬した後の圧縮強度が3MPa以下である、前記(1)に記載の崩壊性スクラブ剤。
(12)前記(1)~(11)のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤を含む化粧料又は洗顔料。
(13)クリーム状又はジェル状である前記(12)に記載の化粧料又は洗顔料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の崩壊性スクラブ剤は、崩壊後の粒子が球状であるため皮膚刺激が少なく、また無機粒子により構成されるため環境に対する悪影響がない。本発明の崩壊性スクラブ剤を用いて、肌に優しく適度な洗浄感やマッサージ効果を感じることができ、さらに環境にもやさしい化粧料及び洗顔料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<崩壊性スクラブ剤>
本発明の崩壊性スクラブ剤は、平均粒子径が1μm以上の無機球状粒子と、水に溶解又は分散するバインダーとを含み、平均粒子径が50μm以上であるものである。当該崩壊性スクラブ剤は、構成単位として含まれる無機球状粒子のそれぞれがバインダーによって結着し造粒された無機球状粒子の凝集体である。球状粒子を構成単位とすることで、崩壊後に鋭利な角が発生せず肌を傷つけることがないため皮膚刺激を少なくできる。
【0012】
(無機球状粒子)
崩壊性スクラブ剤を構成する無機球状粒子は無機化合物により形成される。崩壊性スクラブ剤が無機化合物からなる粒子を構成単位として含むことで、海洋汚染等の環境に対する悪影響がない。
【0013】
無機化合物としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。中でもシリカが好ましく、シリカは、多孔質、無孔質、中空のいずれであってもよい。また、無機化合物は、表面処理されていても、混合組成であってもよい。たとえば軽量感を付与する球状多孔質シリカとオレイン酸吸着能をもつ球状ハイドロキシアパタイトや球状活性炭を配合してもよいし、球状多孔質シリカにハイドロキシアパタイトを担持させてオレイン酸吸着能をもたせた表面処理球状シリカを一部配合してもよい。
【0014】
無機球状粒子は、多孔質粒子又は無孔質粒子であるのが好ましい。粒子が多孔質であると軽い感触を与えることができる。また多孔質粒子の内部に他の機能性成分を担持しておくこともできる。粒子が無孔質であると、同じ感触のスクラブ剤を得るのに多孔質に比べてバインダー添加量を抑えることができ、また、スクラブ剤自体が有効成分等の他の物質を吸着してしまうことがない。
【0015】
中でも、環境負荷が低い、細孔構造や表面特性が多様であり様々な機能を付与しやすいという観点から、無機球状粒子はシリカ粒子であるのが好ましく、多孔質シリカ粒子又は無孔質シリカ粒子がより好ましい。
【0016】
無機球状粒子の平均粒子径は1μm以上であり、崩壊性スクラブ剤がこの粒子径を持つ粒子の凝集体であると崩壊後も滑らかな感触を維持できる。無機球状粒子の平均粒子径は、2μm以上であるのが好ましく、3μm以上がより好ましく、また、崩壊後も滑らかな感触を維持するという観点から、300μm以下であるのが好ましく、100μm以下がより好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。具体的に、無機球状粒子の平均粒子径は、1~300μmの範囲であるのが好ましく、2~100μmがより好ましく、3~20μmがさらに好ましく、3~10μmが特に好ましい。
【0017】
崩壊性スクラブ剤中の無機球状粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いたり、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により測定できる。粒度分布測定装置は、例えば、マイクロトラック・ベル社の「マイクロトラックMT3300EX II」(商品名)等が挙げられる。SEM観察を行う場合は、SEM観察で任意の100個を測定して求める。崩壊性スクラブ剤中の無機球状粒子の個数が100個に満たない場合は、SEM画像で視認できる全ての無機球状粒子の粒子径を測定して求める。粒子径は、粒子の外接円の直径を用いる。
なお、無機球状粒子の形状や陰影によって粒子径を正確に把握しにくい場合は、画像処理ソフトウェアImageJを用いて画像処理し、評価するのが好ましい。
【0018】
本実施形態の無機球状粒子は、平均円形度が0.85以上であるのが好ましい。平均円形度が0.85以上であると、粒子の形状が球状に近くなるので、肌に塗布する際の伸び広がりが良好となり肌を傷つけにくい。平均円形度は、0.90以上であることが好ましく、0.95以上が特に好ましい。平均円形度の上限は特に限定されず、1であることが最も好ましい。
【0019】
崩壊性スクラブ剤中の無機球状粒子の平均円形度は、例えば超音波洗浄機を用いて崩壊性スクラブ剤を崩壊させた後に、粒子の形状を測定することで確認できる。具体的な平均円形度の測定方法は以下のとおりである。
崩壊性スクラブ剤に蒸留水を加え、超音波洗浄機を用いて分散処理を行い、乾燥により水分を除去した後に得られた無機球状粒子を走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製、JCM-7000)により撮影し、画像解析ソフト(例えば、マルバーン社製粒子画像解析装置「Morphologi4」に付属の画像解析ソフト)を用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出する。20個の無機球状粒子について円形度を算出し、その平均値を平均円形度とする。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
【0020】
また、無機球状粒子の平均円形度は、走査型電子顕微鏡(SEM)により崩壊性スクラブ剤を写真撮影して得られる写真投影図における任意の無機球状粒子20個を測定して求めることもできる。任意の20個の無機球状粒子について、それぞれその外接円の径(DL)と、内接円の径(DS)とを測定し、外接円の径(DL)に対する内接円の径(DS)の比(円形度、DS/DL)を算出した平均値を平均円形度とする。
【0021】
本発明において、無機球状粒子は白色粒子であるのが好ましい。粒子の色が白色であると崩壊性スクラブ剤に着色顔料を含有したときには着色顔料の発色性が高く、色味が鮮やかとなり、崩壊性スクラブ剤に意匠性を付与できる。なお、無機球状粒子における白色とは、分光色差計(例えば、日本電色工業株式会社製、SE7700)を用いて測定した際に、白色度を示すWB値が90以上となるものである。
【0022】
(バインダー)
バインダーは、無機球状粒子を結合させて無機球状粒子の凝集体を形成するための成分である。無機球状粒子がバインダーにより結合されることで無機球状粒子が凝集し、凝集体がその形状と一定の強度を保ち、一方で、崩壊性スクラブ剤に外から力が加わった際にはバインダーによる結合力が消失し、スクラブ剤が崩壊して個々の無機球状粒子に分かれ、スクラブ感を感じなくなる。
【0023】
バインダーとしては水に溶解又は分散するバインダーを用いる。バインダーが水に溶解又は分散するものであることで、崩壊性スクラブ剤が湿潤状態において適度な力で崩壊する。また、バインダーは、海洋汚染等の環境に対する悪影響を引き起こさず、かつ、力をかけたときに崩壊性スクラブ剤が崩壊する程度のバインダー力を保有していることが必要である。本明細書において、バインダーが水に溶解又は分散するとは、崩壊性スクラブ剤を水と混合して撹拌したときに崩壊性スクラブ剤が崩壊して構成単位の球状粒子にまで解砕されることを意味する。
【0024】
水に溶解又は分散するバインダーとしては、例えば、天然有機高分子化合物、合成有機高分子化合物、半合成高分子化合物、水溶性塩等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。バインダーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
天然有機高分子化合物としては、例えば、多糖類(例えば、セルロース、でんぷん、アルギネート、デキストラン、プルラン(pullulane)、ポリヒアルロン酸、及びそれらの誘導体等)、キチン、キトサン、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(例えば、ポリ(β-ヒドロキブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエート))、ポリ(3-ヒドロキシ脂肪酸)、フィブリン、寒天、アガロース等が挙げられる。
【0026】
合成有機高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。
【0027】
半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアガム等が挙げられる。
【0028】
水溶性塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
【0029】
バインダーは、上記化合物が繊維化された繊維状物質であってもよい。繊維状物質をバインダーとして用いることで、崩壊性スクラブ剤が崩壊した後になめらかな感触を付与できるとともに、少量のバインダーで無機球状粒子間に結合力を付与できる。
【0030】
バインダーは、上記した中でも環境に悪影響が無いという点で天然有機高分子化合物が好ましく、多糖類、キチン、キトサン及び寒天がより好ましく、セルロース、キトサン及び寒天がさらに好ましく、セルロースを繊維化したセルロースファイバー、キトサンを繊維化したキトサンファイバー及び寒天が特に好ましい。セルロースファイバー及びキトサンファイバーはそれぞれ、繊維幅が100nm以下でアスペクト比が100以上のナノファイバーであるセルロースナノファイバー(CNF)、キトサンナノファイバーが、粒子強度付与の点およびほぐれた後のしっとり感を付与するうえで特に好ましい。
【0031】
(着色顔料)
本発明の崩壊性スクラブ剤には着色用の顔料を含有してもよい。着色顔料を含有することで崩壊性スクラブ剤に任意の色味を付与でき、意匠性を高められる。
【0032】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(III)、黄色酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられる。
【0033】
(その他の成分)
崩壊性スクラブ剤には、その他の機能性成分を含有することができる。他の機能性成分としては、例えば、水、油剤成分、水混和性有機溶剤、UV吸収剤、酸化防止剤、防腐・抗菌剤、香料、界面活性剤、増粘剤、無機粉体、酸、アルカリ、糖、保湿剤、植物抽出エキス、美白用薬剤、ビタミン類、ホルモン類、止痒剤、抗炎症剤、収れん剤、角質軟化剥離剤、制菌剤等が挙げられる。これらの機能性成分の含有割合は、使用目的により適宜調整され得る。
【0034】
着色顔料及びその他の成分は、無機球状粒子の表面に担持させる、多孔質の無機球状粒子の細孔内に担持させる等により崩壊性スクラブ剤に含有できる。
【0035】
(組成)
本発明の崩壊性スクラブ剤は、無機球状粒子を70~99.9質量%の範囲で含有するのが好ましい。無機球状粒子の含有量が70質量%以上であると、バインダーが適度に粒子表面に存在することで崩壊後も滑らかで肌に優しいスクラブ剤を得ることができ、99.9質量%以下であると、バインダーにより粒子同士が十分に結合されて粒子の凝集体を形成できる。無機球状粒子の含有量は、80質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、また、99質量%以下であるのがより好ましく、97質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
また、本発明の崩壊性スクラブ剤は、バインダーを0.1~30質量%の範囲で含有するのが好ましい。バインダーの含有量が0.1質量%以上であると無機球状粒子を結合させて凝集体を形成でき、30質量%以下であると粒子の結合強度が強くなり過ぎることなく適度な崩壊性を付与できる。バインダーの含有量は、1質量%以上であるのがより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また、20質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
崩壊性スクラブ剤が着色顔料を含有する場合、着色顔料の含有量は、0.01~10質量%の範囲であるのが好ましく、0.03~5質量%がより好ましく、0.05~1質量%がさらに好ましい。
【0038】
(崩壊性スクラブ剤の物性)
本発明の崩壊性スクラブ剤は、体積換算による平均粒子径(D50)が50μm以上である。崩壊性スクラブ剤の平均粒子径が50μm以上であると使用初期にスクラブ感を感じられる。崩壊性スクラブ剤の平均粒子径は、60μm以上であるのが好ましく、70μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、150μm以上が特に好ましく、また、適度なスクラブ感を感じられるという観点から、3mm以下であるのが好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましく、1mm以下が特に好ましく、500μm以下が最も好ましい。具体的に、崩壊性スクラブ剤の平均粒子径は、50μm~3mmの範囲であるのが好ましく、以下好ましい順に、60μm~2mm、70μm~1.5mm、100μm~1mm、150~500μmである。
【0039】
崩壊性スクラブ剤の平均粒子径は、粒度分布測定装置や走査型電子顕微鏡(SEM)により測定できる。
【0040】
本発明の崩壊性スクラブ剤は、水につけておく、あるいは、緩く撹拌する程度では粒子の大きさ形状を保つが、強いシェアや超音波を当てることで構成単位の球状粒子まで解砕される。
【0041】
崩壊性スクラブ剤は、水に12時間浸漬した後(以下、単に「水浸漬後」ともいう。)の圧縮強度が3MPa以下であるのが好ましい。崩壊性スクラブ剤の水浸漬後の圧縮強度が3MPa以下であると、硬すぎず、使用中に肌の上で徐々に崩壊することで適度なスクラブ感を付与でき、本発明の効果が得られる。水浸漬後の圧縮強度は、2MPa以下であるのがより好ましく、1MPa以下がさらに好ましい。
【0042】
圧縮強度は、圧縮試験機(例えば、島津製作所社製、MCT-510)を用い、粒子径500~1000μmの粒子10個の圧縮強度を測定し、その平均値として求める。
【0043】
本発明の崩壊性スクラブ剤は、崩壊した後の無機球状粒子の平均円形度が0.85以上であるのが好ましい。崩壊後の無機球状粒子の平均円形度が0.85以上であると、粒子の形状が球状に近くなるので、肌に塗布する際の伸び広がりが良好となり肌を傷つけ難い。平均円形度は、0.90以上であることが好ましく、0.95以上がより好ましい。平均円形度の上限は特に限定されず、1であることが最も好ましい。
【0044】
崩壊後の無機球状粒子の平均円形度は、例えば超音波洗浄機を用いて崩壊性スクラブ剤を崩壊させた後に、粒子の形状を測定することで確認できる。具体的な平均円形度の測定方法は以下のとおりである。
崩壊性スクラブ剤に蒸留水を加え、超音波洗浄機を用いて分散処理を行い、乾燥により水分を除去した後に得られた無機球状粒子を走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製、JCM-7000)により撮影し、画像解析ソフト(例えば、マルバーン社製粒子画像解析装置「Morphologi4」に付属の画像解析ソフト)を用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出する。20個の無機球状粒子について円形度を算出し、その平均値を平均円形度とする。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
【0045】
<崩壊性スクラブ剤の製造方法>
本実施形態の崩壊性スクラブ剤の製造方法は、無機球状粒子をバインダーを用いて造粒することを含む。
【0046】
造粒方法としては、例えば、破砕造粒法、撹拌造粒、転動造粒、圧縮造粒、噴霧造粒、押出造粒、流動層造粒等が挙げられる。なお、造粒条件は、造粒方法により適宜選択できる。以下、破砕造粒法を例に、崩壊性スクラブ剤の製造方法を説明する。
【0047】
破砕造粒法ではまず、無機球状粒子とバインダーと溶媒を混合し、スラリーを作製する。混合の順番は特に限定されず、溶媒に無機球状粒子を分散させた分散液にバインダーを添加しても、バインダーを溶媒に溶解又は分散させた溶解液又は分散液に無機球状粒子を添加しても、無機球状粒子とバインダーを混合した混合物と溶媒を混合してもよい。
溶媒としては、水、アルコール、水とアルコールの混合物等が使用できる。
【0048】
スラリー中の全固形分濃度は1~40質量%の範囲であるのが好ましい。全固形分濃度が1質量%以上であると生産量低下を抑制でき、40質量%以下であるとスラリー粘度が増大し過ぎることなく無機球状粒子とバインダーを均一に分散混合できる。全固形分濃度は、5質量%以上であるのがより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また、30質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0049】
各成分を混合した後は、分散装置で均一に分散させる。分散装置としては、例えば、スリーワンモーター、超音波分散装置等が使用できる。
【0050】
処理時間は、スラリーの均一性に応じて適宜調整すればよいが、例えば、10~120分の範囲であるのが好ましく、20~90分がより好ましく、30~60分がさらに好ましい。
【0051】
処理の強度は、使用する装置に応じて適宜調整でき、また強度に応じて崩壊性スクラブ剤の粒子径の調整が可能である。
【0052】
次に、得られたスラリーを固液分離してケーキを得る。分離は公知の方法で行うことができ、例えば、加圧ろ過、吸引ろ過、自然ろ過、遠心分離等の方法が使用できる。
【0053】
ケーキは選定したろ過器のサイズを反映したcmオーダーの大きな成形体であるので、粉砕機により解砕するのが好ましい。解砕条件は特に限定されず、用途に応じた適切なサイズとなるまで解砕するのが好ましい。
【0054】
ケーキは乾燥して水分を除去する。乾燥は、60~160℃、好ましくは80~140℃、より好ましくは100~120℃で、2~12時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは2~4時間行う。
【0055】
乾燥後のケーキは、解砕、分級してもよい。解砕、分級は公知の方法で行うことができ、ミルやミキサー、ヘラを用いて解砕したり、分級篩を用いて分級することが挙げられる。分級残は再度スラリー中に添加することで原料として使用することも可能である。
【0056】
破砕造粒法では以上のようにして崩壊性スクラブ剤を作製できる。
【0057】
<崩壊性スクラブ剤の用途>
本発明の崩壊性スクラブ剤は、身体用組成物への添加剤として好適に使用できる。本発明の崩壊性スクラブ剤は、皮膚刺激が少なく、皮膚の汚れや老化角質細胞の除去効果と共に、使用感及びマッサージ効果を与える。
【0058】
<身体用組成物>
本発明の身体用組成物は、本発明の崩壊性スクラブ剤を含有する。身体用組成物の剤型は特に限定されず、ペースト状、固形、液状、クリーム状、ジェル状等の形態が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がよく発現する剤型としては、クリーム状、ジェル状である。
【0059】
身体用組成物としては、例えば、化粧料、洗顔料等が挙げられ、化粧料としては、具体的には、顔用洗浄化粧料、ボディ用洗浄化粧料、足用洗浄化粧料等が挙げられる。
【0060】
身体用組成物中の崩壊性スクラブ剤の含有量は、使用感、マッサージ効果、皮膚刺激の緩和等の用途・目的や、剤型に応じて適宜調整できる。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のスクラブ剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0061】
身体用組成物における崩壊性スクラブ剤以外の成分は特に限定されず、公知の成分を使用できる。例えば、油脂、ロウ、炭化水素、シリコーン、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸等の油性成分;無機粉体、有機粉体等の粉体;無機塩類;香料;色素;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤の各種界面活性剤;低級アルコール、多価アルコール、糖、ステロール等のアルコール;溶剤;増粘剤;ゲル化剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;還元剤;酸化剤;保湿剤;防腐剤;抗菌剤;pH調整剤;酸・アルカリ;美白剤;ビタミン及びその誘導体;消炎剤;抗炎症剤;血行促進剤等が挙げられる。
【0062】
身体用組成物は、常法に従って、崩壊性スクラブ剤と崩壊性スクラブ剤以外の成分を任意の順序で混合することによって製造できる。
【0063】
以上のとおり、本明細書には次の構成が開示されている。
<1>平均粒子径が1μm以上の無機球状粒子と、水に溶解又は分散するバインダーとを含み、平均粒子径が50μm以上である崩壊性スクラブ剤。
<2>前記無機球状粒子が、シリカ粒子である、前記<1>に記載の崩壊性スクラブ剤。
<3>前記シリカ粒子が、多孔質シリカ粒子及び無孔質シリカ粒子のうちの少なくとも一方である、前記<2>に記載の崩壊性スクラブ剤。
<4>前記バインダーが、天然有機高分子化合物、合成有機高分子化合物、半合成高分子化合物及び水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<5>前記バインダーが、セルロースファイバー、キトサンファイバー及び寒天からなる群から選択される少なくとも1つである、前記<4>に記載の崩壊性スクラブ剤。
<6>前記無機球状粒子の平均粒子径が1~300μmである、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<7>前記崩壊性スクラブ剤が崩壊した後の前記無機球状粒子の平均円形度が0.85以上である、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<8>前記無機球状粒子を70~99.9質量%含有する、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<9>前記バインダーを0.1~30質量%含有する、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<10>さらに着色顔料を含む、前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<11>前記崩壊性スクラブ剤を水に12時間浸漬した後の圧縮強度が3MPa以下である、前記<1>~<10>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤。
<12>前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の崩壊性スクラブ剤を含む化粧料又は洗顔料。
<13>クリーム状又はジェル状である前記<12>に記載の化粧料又は洗顔料。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。例1~例17は実施例、例18~例19は比較例である。
【0065】
(例1)
AGCエスアイテック社製の真球状多孔質シリカ「サンスフェアH-121」(固形分濃度95.0質量%、D50=12μm、平均円形度0.95)を5.0g量り取り、蒸留水100.0gを加えてスリーワンモーターで5分間撹拌した。そこにバインダーとしてのセルロースナノファイバー(CNF)を含むバインダー含有水スラリー(スギノマシン社製「BiNFi-sIMa-10002」(固形分濃度=2.1質量%))を40.0g加え、スリーワンモーターで1時間撹拌した。
得られたスラリーを加圧ろ過器で固液分離し、得られたケーキをミキサー(大阪ケミカル社製、ラボ用ミキサーOML-1)で解砕(3秒間×3回)した。解砕後のケーキは110℃で2時間静置乾燥して水分を除去した。
乾燥後の粒子は緩く凝集しており、ゴムヘラとステンレス篩を用いて粗解砕した。具体的には、目開き710μmと目開き425μmのステンレス篩を用い、目開き710μmの篩にゴムヘラを押しつけることで解砕され篩目を通過し、目開き425μmの篩上に残ったものを回収することで、例1のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0066】
(例2)
バインダー含有水スラリーの添加量を7.3gとしたこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例2のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0067】
(例3)
バインダー含有水スラリーの添加量を3.9gとしたこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例3のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0068】
(例4)
バインダー含有水スラリーの添加量を2.2gとしたことと、使用した篩の目開きが425μmと150μmであったこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例4のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0069】
(例5)
真球状多孔質シリカ(AGCエスアイテック社製、サンスフェアH-121)と蒸留水に加え、着色顔料として、関東化学社製の酸化鉄(III)鹿1級を0.05g加えて超音波分散処理を5分間施したこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例5のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で赤色)を得た。
【0070】
(例6)
着色顔料として、フェロー社製のウルトラマリンブルー(EC-62、無機顔料)を0.05g加えたこと以外は、例5と同様の操作を行ない、例6のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で青色)を得た。
【0071】
(例7)
着色顔料として、ランクセス社製の黄色酸化鉄(BAYFERROX 915)を0.05g加えたこと以外は、例5と同様の操作を行ない、例7のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で黄色)を得た。
【0072】
(例8)
バインダー含有水スラリーとして、日本製紙社製「セレンピアTC-01A」(固形分濃度=1.1質量%)を73.0g加えたことと、使用した篩の目開きが1.18mmと710μmであったこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例8のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0073】
(例9)
バインダー含有水スラリーとして、日本製紙社製「セレンピアTC-01A」(固形分濃度=1.1質量%)を14.3g加えたこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例9のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0074】
(例10)
バインダー含有水スラリーを3.9g加えたこと以外は、例9と同様の操作を行ない、例10のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0075】
(例11)
バインダー含有水スラリーを2.2g加えたこと以外は、例9と同様の操作を行ない、例11のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0076】
(例12)
バインダー含有水スラリーとして、北海道曹達社製のキトサンESナノファイバー(エレクトロスピニング(ES)法でナノファイバー化した固形分濃度=0.6質量%の水スラリー)を87.5g加えたこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例12のキトサンナノファイバー入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0077】
(例13)
バインダー含有水スラリーとして、スギノマシン社製のキトサンナノファイバー「EFo-08002」(固形分濃度=2.0質量%)を43.8g加えたことと、使用した篩の目開きが425μmと150μmであったこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例13のキトサンナノファイバー入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0078】
(例14)
バインダー含有水スラリーを7.3g加えたこと以外は、例13と同様の操作を行ない、例14のキトサンナノファイバー入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0079】
(例15)
原料シリカとして、AGCエスアイテック社製の真球状無孔質シリカ「サンスフェアNP-100」(固形分濃度=99.5質量%、D50=9μm、平均円形度0.94)を5.0g加えたこと以外は、例1と同様の操作を行ない、例15のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0080】
(例16)
バインダー含有水スラリーとして、日本製紙社製「セレンピアTC-01A」(固形分濃度=1.1質量%)を14.6g加えたこと以外は、例15と同様の操作を行ない、例16のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0081】
(例17)
原料シリカとして、AGCエスアイテック社製の真球状無孔質シリカ「サンスフェアNP-30」(固形分濃度=99.5質量%、D50=4μm、平均円形度0.95)を5.0g加えたことと、バインダー含有水スラリーを3.5g加えたこと以外は、例16と同様の操作を行ない、例17のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0082】
(例18)
原料シリカとして、水澤化学工業社製「ミズカシルP-78D」(D50=14μm、平均円形度0.80)を5.0g加えたこと以外は、例2と同様の操作を行ない、例18のCNF入りシリカ粒子凝集体(目視で白色)を得た。
【0083】
(例19)
AGCエスアイテック社製のM.S.GEL(多孔質シリカ、D50=78μm、平均円形度0.96、目視で白色)を用いた。
【0084】
例1~19のシリカ粒子について、以下の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0085】
<凝集体の粒子径>
凝集体の粒子径は、レーザー回折法の粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、MT3300EX II)を用い、凝集体を直接チャンバーに投入して超音波分散処理等の強いシェアを施すことなく測定することで、50%体積換算粒子径を算出した。
【0086】
<凝集体の粒感>
凝集体を手の甲に乗せ指で圧し潰しながら下記基準により粒感を確認した。5名のパネラーにより下記の評価基準に基づいて評価を行い、最も多い評価値を採用した。評価が1~4であると崩壊性スクラブ剤として実用可能であると判断した。
〔評価基準〕
5:粒感を強く感じるが指で解せない
4:粒感を強く感じる
3:粒感を感じる
2:粒感を感じるが弱い
1:粒感を感じない
【0087】
なお、例19のシリカ粒子について行った粒感の評価は、指でこすった際に粒感を強く感じるが、いくらこすっても崩壊しなかった。
【0088】
<粒子強度>
凝集体10mgを蒸留水5gに浸漬し12時間静置した後、微小圧縮試験機(島津製作所社製、MCT-510)を用い、粒径500~1000μmの粒子10個の圧縮強度を測定し、その平均値を求めた。なお本装置MCT-500の最小試験力は9.8mNであることから圧縮強度の測定下限値は0.01~0.05MPaであり、測定下限値以下の場合の圧縮強度は0MPaとして計算した。
【0089】
例1、2及び例9の凝集体について圧縮強度を測定したところ、例1は1.3MPa、例2は測定下限値以下、例9は測定下限値以下であった。
【0090】
<崩壊後の平均円形度>
凝集体に蒸留水を加え、超音波洗浄機により周波数45kHzで10分間処理した。その後、110℃で2時間静置乾燥して水分を除去した後に得られたシリカ粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JCM-7000)により撮影し、画像解析ソフト(マルバーン社製粒子画像解析装置「Morphologi4」に付属の画像解析ソフト)を用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出した。20個のシリカ粒子の円形度の平均値を求めたものを平均円形度とした。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
球状かどうかの判断については、平均円形度が0.90以上のものを球状であると評価した。
【0091】
崩壊後の平均円形度については、シリカ粒子に蒸留水を加え1%水スラリーとし、超音波処理(10分)した後に粒度分布を測定したところ、例1~17の構成粒子である原料シリカ:サンスフェアH-121(D50=12μm)、サンスフェアNP-100(D50=9μm)、サンスフェアNP-30(D50=4μm)と同等の平均円形度となった。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果より、例1~17は凝集体の大きさが平均粒子径50μm以上であり粒感を感じるものであり、また崩壊後には球状粒子となっており肌触りもよいものであった。例18は崩壊後の粒子が球状ではなく、感触が悪かった。例19は指で潰れず、強い力で粒を砕いた場合は破砕状になり、肌を傷つけるおそれがある。