(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171189
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】多層膜SOIウェーハの製造方法及び多層膜SOIウェーハ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241204BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241204BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/304 601B
H01L21/304 621A
H01L21/304 621B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088136
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】坂上 浩一
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA02
5F057AA21
5F057BA12
5F057BA20
5F057BB03
5F057CA09
5F057CA11
5F057CA18
5F057CA36
5F057CA40
5F057DA01
5F057DA11
5F057GA13
5F057GB13
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA32
5F131BA43
5F131BA53
5F131CA06
5F131CA12
5F131EC42
5F131EC64
(57)【要約】
【課題】多層膜SOIウェーハにおいて、周縁部に段差のないテラスフリーの構造とすることにより、活性層の有効面積を広く確保するとともに、面内厚みのばらつきを小さく抑える。
【解決手段】複数のシリコンウェーハをそれぞれ両面研磨し、前記複数の活性層基板4、6を形成するステップと、前記複数の活性層基板のうち、互いに接合する少なくとも一方の前記活性層基板の表面に酸化膜層を形成するステップと、前記複数の活性層基板を、前記酸化膜層を介して積層し、素子側基板10を形成するステップと、前記素子側基板を両面研磨するステップと、シリコンウェーハを研磨して支持基板2を形成し、該支持基板の表面に酸化膜層を形成するステップと、前記素子側基板の一面を前記支持基板に形成された酸化膜層を介して該支持基板と接合するステップと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に酸化膜層を介して素子側基板が積層され、前記素子側基板は複数の活性層基板が互いに酸化膜層を介して積層された多層膜SOIウェーハの製造方法であって、
複数のシリコンウェーハをそれぞれ両面研磨し、前記複数の活性層基板を形成するステップと、
前記複数の活性層基板のうち、互いに接合する少なくとも一方の前記活性層基板の表面に酸化膜層を形成するステップと、
前記複数の活性層基板を、前記酸化膜層を介して積層し、前記素子側基板を形成するステップと、
前記素子側基板を両面研磨するステップと、
シリコンウェーハを研磨して前記支持基板を形成し、該支持基板の表面に酸化膜層を形成するステップと、
前記素子側基板の一面を前記支持基板に形成された酸化膜層を介して該支持基板と接合するステップと、
を備えることを特徴とする多層膜SOIウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記素子側基板の一面を支持基板に形成された酸化膜層を介して該支持基板と接合するステップの後、
前記素子側基板においてトップ側の活性層基板の研磨を片面研磨にて行い、トップ側の活性層基板の厚さ調整をするステップを備えることを特徴とする請求項1に記載された多層膜SOIウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記素子側基板においてトップ側の活性層基板の研磨を行い、トップ側の活性層基板の厚さ調整をするステップの前において、
ウェーハ周縁部における未接着領域がなくなるまで外周研削を行った後でウェーハ周縁部の面取りをすることを特徴とする請求項2に記載された多層膜SOIウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記素子側基板においてボトム側の前記活性層基板には酸化膜が形成されることなく、2つの活性層が積層された多層膜SOIウェーハが製造されることを特徴とする請求項1に記載された多層膜SOIウェーハの製造方法。
【請求項5】
支持基板上に酸化膜層を介して素子側基板が積層された多層膜SOIウェーハであって、
前記素子側基板は、
それぞれ両面研磨された複数のシリコンウェーハにより形成された複数の活性層基板と、前記複数の活性層基板の基板間にそれぞれ形成された複数の酸化膜層と、を有し、
前記支持基板上には酸化膜層を介して、両面研磨された前記素子側基板が積層され、周縁部は段差の無いテラスフリーの形状であることを特徴とする多層膜SOIウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層膜SOIウェーハの製造方法及び多層膜SOIウェーハに関し、特に外周部に段差を有さないテラスフリーの多層膜SOIウェーハの製造方法及び多層膜SOIウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon on Insulator)ウェーハは、電気絶縁性の高い酸化膜層をウェーハ内部に形成させることで、半導体デバイスの高集積化、低消費電力化、高速化、高信頼性を実現している。SOIウェーハは、支持基板上に、酸化膜、および活性層(SOI層)が積層された構造を有する。
【0003】
特許文献1に開示されるように、従来のSOIウェーハの製造方法は、先ず、
図6(a)に示すように、支持基板51と第一の活性層基板52とを用意する。これら支持基板51と第一の活性層基板52の周縁部は面取りされている。
次に
図6(b)に示すように支持基板51の表面に熱処理により酸化膜61を形成し、
図6(c)に示すように酸化膜61を介して支持基板51上に第一の活性層基板52を重ね、熱処理により接合する。このとき
図6(d)に示すように第一の活性層基板52の表面にも酸化膜が形成される。
【0004】
ここで、支持基板51と第一の活性層基板52との、貼り合わせ面の周縁部には、基板面取りに起因する未接着領域Ar1が形成される。このような未接着領域Ar1が存在すると、後の研削/研磨工程でウェーハの欠けや割れが生じる虞がある。そのため、
図6(e)に示すように第一の活性層基板52の周縁部の面取りを行い、さらに
図6(f)に示すように、残った残渣部53をエッチングにより除去する。これにより支持基板51の周縁部上には段差(テラス54)が形成される。
最後に
図6(g)に示すように第一の活性層基板52の上面を研削及び研磨して厚さを調整し、SOIウェーハ50を製造する。
【0005】
また、より高集積デバイスに適したものとして、支持基板上に、少なくとも第一の酸化膜と、第一の活性層と、第二の酸化膜と、第二の活性層とが順に積層された構造の多層膜SOIウェーハがある。
【0006】
この多層膜SOIウェーハの製造方法は、
図7(a)に示すように
図6(g)で形成したSOIウェーハ50と、第二の活性層基板70とを用意する。
次に
図7(b)に示すようにSOIウェーハ50の表面に熱処理により酸化膜62を形成し、
図7(c)に示すように酸化膜62を介して第一の活性層基板52上に第二の活性層基板70を重ね、熱処理により接合する。このとき
図7(d)に示すように第二の活性層基板70の表面にも酸化膜が形成される。
【0007】
ここで、第一の活性層基板52と第二の活性層基板70との、貼り合わせ面の周縁部には、基板径の差に起因する不支持領域Ar2が形成される。このような不支持領域Ar2が存在すると、後の工程でウェーハの欠けや割れが生じる虞がある。そのため、
図7(e)に示すように第二の活性層基板70の周縁部の面取りを行い、さらに
図7(f)に示すように、残った残渣部71をエッチングにより除去する。これにより第一の活性層基板52の周縁部上にも段差(テラス55)が形成される。
最後に
図7(g)に示すように第二の活性層基板70の上面を研削及び研磨して厚さを調整し、多層膜SOIウェーハ80を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図7(g)に示す多層膜SOIウェーハ80は、基板同士を接合した際の周縁部に発生する未接着領域Ar1や不支持領域Ar2を除去するために、その都度、周縁部を面取りし、テラス部(段差)を形成して製造されている。
しかしながら、その場合、多層膜SOIウェーハ周縁部が階段状となるため、上層部(トップ側)の活性層ほど有効面積が小さくなるという課題があった。
【0010】
また、支持基板51上に順に活性層基板を積み上げる従来の多層膜SOI構造にあっては、活性層基板を積層(接合)する度に、その積層した活性層を片面バッチ方式により片面研磨して厚さ調整をする。
しかしながら、周縁部にテラス部54、55があると、活性層周縁部の研磨の際に、その周縁部において研磨パッドの沈み込みが生じ、集中的に大きな荷重がかかる。その場合、基板中心よりも周縁部において研磨が促進され、基板中央部と周縁部とで厚さのばらつきが大きく生じるという課題があった。
【0011】
また、先に片面研磨した1層目(下層)の活性層(第一の活性層基板52)の厚み精度にばらつきがあると、その上の酸化膜層は水平面とならず凹凸が生じる。その場合、その上に接合した2層目の活性層(第二の活性層基板70)の表面を片面研磨すると、下層の酸化膜層の凹凸によって研磨パッドの荷重が変化し、2層目の活性層の厚み精度ばらつきに影響する。このように下層の厚みばらつきが、上層の厚み精度に大きく影響するため、必要とされる厚み精度を満たすのが困難となるという課題があった。
【0012】
また、テラス部54、55があると、そこからの発塵やパーティクルが発生する虞があり、その場合、発生した発塵やパーティクルがウェーハ表面に付着するという課題があった。
【0013】
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、多層膜SOIウェーハにおいて、周縁部に段差のないテラスフリーの構造とすることにより、活性層の有効面積を広く確保するとともに、面内厚みのばらつきを小さく抑えることのできる多層膜SOIウェーハの製造方法及び多層膜SOIウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するためになされた、本発明に係る多層膜SOIウェーハの製造方法は、支持基板上に酸化膜層を介して素子側基板が積層され、前記素子側基板は複数の活性層基板が互いに酸化膜層を介して積層された多層膜SOIウェーハの製造方法であって、複数のシリコンウェーハをそれぞれ両面研磨し、前記複数の活性層基板を形成するステップと、前記複数の活性層基板のうち、互いに接合する少なくとも一方の前記活性層基板の表面に酸化膜層を形成するステップと、前記複数の活性層基板を、前記酸化膜層を介して積層し、前記素子側基板を形成するステップと、前記素子側基板を両面研磨するステップと、シリコンウェーハを研磨して前記支持基板を形成し、該支持基板の表面に酸化膜層を形成するステップと、前記素子側基板の一面を前記支持基板に形成された酸化膜層を介して該支持基板と接合するステップと、を備えることに特徴を有する。
【0015】
尚、前記素子側基板の一面を支持基板に形成された酸化膜層を介して該支持基板と接合するステップの後、前記素子側基板においてトップ側の活性層基板の研磨を片面研磨にて行い、トップ側の活性層基板の厚さ調整をするステップを備えることが望ましい。
また、前記素子側基板においてトップ側の活性層基板の研磨を行い、トップ側の活性層基板の厚さ調整をするステップの前において、ウェーハ周縁部における未接着領域がなくなるまで外周研削を行った後でウェーハ周縁部の面取りをすることが望ましい。
また、前記素子側基板においてボトム側の前記活性層基板には酸化膜が形成されることなく、2つの活性層が積層された多層膜SOIウェーハが製造されることが望ましい。
【0016】
このように構成することにより、トップ層である活性層基板を除く、中間層となる活性層基板は、その接合前に両面研磨(DSP)により最終的な厚さ調整がなされるため、接合後のウェーハの厚さばらつきを従来よりも格段に抑制することができる。
また、従来では、例えば支持基板と中間層となる活性層基板とを接合すると、接合面の周縁部に未接着領域が生じ、その後の厚さ調整のための活性層基板の研削/研磨を行うと未接着領域の割れ等が発生する虞があった。そのため、従来は未接着領域を面取りし、テラス部(段差部)を形成した後に活性層基板の研削/研磨を行っていた。
その場合、上層の活性層基板の有効領域が小さくなっていたが、本実施の形態においては、基板接合前に両面研磨により中間層の活性層基板の厚さ調整を行うため、未接着領域の面取りはその都度必要ない。そのため、全ての活性層の有効面積を広く確保することができ、周縁部に段差を形成することなくテラスフリーの多層膜SOIウェーハを形成することができる。
【0017】
また、前記した課題を解決するためになされた、本発明に係る多層膜SOIウェーハは、支持基板上に酸化膜層を介して素子側基板が積層された多層膜SOIウェーハであって、前記素子側基板は、それぞれ両面研磨された複数のシリコンウェーハにより形成された複数の活性層基板と、前記複数の活性層基板の基板間にそれぞれ形成された複数の酸化膜層と、を有し、前記支持基板上には酸化膜層を介して、両面研磨された前記素子側基板が積層され、周縁部は段差の無いテラスフリーの形状であることに特徴を有する。
【0018】
このように構成された多層膜SOIウェーハによれば、素子側基板が両面研磨されているため、接合後のウェーハの厚さばらつきを従来よりも格段に抑制することができ、また、周縁部に段差の無いテラスフリーの形状により、活性層の有効面積を広く確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多層膜SOIウェーハにおいて、従来よりも活性層の有効面積を広く確保するとともに厚みばらつきを小さく抑え、周縁部に段差のないテラスフリーの多層膜SOIウェーハの製造方法及び多層膜SOIウェーハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に係る製造方法により製造された多層膜SOI(Silicon on Insulator)ウェーハの一部を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る多層膜SOIウェーハの製造方法の流れを示すフローである。
【
図3】
図3は、
図2のフローに対応した遷移図(断面図)である。
【
図4】
図4は、3つの活性層を有するSOIウェーハを製造する場合の遷移図(断面図)である。
【
図6】
図6は、従来のSOIウェーハの製造方法を示す状態遷移図である。
【
図7】
図7は、従来の多層膜SOIウェーハの製造方法を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る製造方法により製造される多層膜SOIウェーハは、複数の活性層が酸化膜を介して積層されたものであるが、本実施の形態においては、2つの活性層が積層された多層膜SOIウェーハを例にして説明する。
図1は、本発明に係る製造方法により製造された多層膜SOI(Silicon onInsulator)ウェーハの一部を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1に示すように多層膜SOIウェーハ1は、支持基板2と、支持基板2上に形成された第一の酸化膜層3と、第一の酸化膜層3上に形成された第一の活性層4と、第一の活性層4上に形成された第二の酸化膜層5と、第二の酸化膜層5上に形成された第二の活性層6と、を有する。本実施の形態では、
図1に示すように第二の活性層6が最上部のトップ層であり、第一の活性層4がその下のセカンド層(中間層)である。
支持基板2と第一の活性層4と第二の活性層6とは、シリコンウェーハにより形成することができる。さらに、このシリコンウェーハに対して、任意の不純物を添加してn型またはp型としてもよい。
【0023】
また、多層膜SOIウェーハ1の周縁部は角が面取りされてベベル面1aが形成され、基板間の未接着領域や段差のないテラスフリーの形状となっている。このようにテラスフリーの構造であることにより活性層の有効領域を広く確保できる上に、周縁部からの発塵やパーティクルの発生、付着が抑制される。
【0024】
ここで、支持基板2の厚さは、例えば250μm以上600μm以下に形成され、第一の酸化膜層3の厚さは、0.2μm以上2.0μm以下に形成され、第一の活性層4の厚さは、3.0μm以上300μm以下に形成され、第二の酸化膜層5の厚さは、0.2μm以上2.0μm以下に形成され、第二の活性層6の厚さは、3.0μm以上300μm以下に形成されている。
【0025】
続いて、
図2、
図3に沿って、このような多層膜SOIウェーハ1を製造する工程について説明する。
図2は、多層膜SOIウェーハ1の製造方法の流れを示すフローであり、
図3は、
図2のフローに対応した遷移図(断面図)である。
【0026】
(第二の活性層基板(トップ層)の形成)
先ず、
図2、
図3のステップS1に示すように、シリコンウェーハ60を用意し、ステップS2に示すように、グラインダー(GD)を用いて厚さ方向に研削した後、さらにウェーハ両面を両面研磨(DSP:Double Side Polish)して所望の厚さ(例えば550μm)の第二の活性層基板61(最終的に第二の活性層6となる)を形成する。このように両面研磨することにより、厚さばらつきの小さい第二の活性層基板61が得られる。
また、ステップS3に示すように熱処理により第二の活性層基板61の上下面に厚さ0.2μm以上2.0μm以下の第二の酸化膜層5を形成する。
【0027】
(第一の活性層基板(セカンド層)の形成)
一方、ステップS4に示すように、シリコンウェーハ40を用意し、ステップS5に示すように、グラインダー(GD)を用いて上面側または下面側を厚さ方向に研削した後、さらにウェーハ両面を両面研磨(DSP)し、所望の厚さ(例えば400μm)の第一の活性層基板41(最終的に第一の活性層4となる)を形成する。このように両面研磨することにより、厚さばらつきの小さい第一の活性層基板41が得られる。ここで、
図1に示した第一の活性層4の厚みのばらつきを高精度に抑制するには、酸化膜剥離処理を実施しないことが好ましいため、第一の活性層基板41の上下面には酸化膜を形成しない。
なお、ステップS1~S3とステップS4、S5を実施する順番は、どちらを先でもよい。
【0028】
(素子側基板の形成)
次に
図2、
図3のステップS6に示すように、ステップS3で形成した第二の活性層基板61の上に第二の酸化膜5を介して、ステップS5で形成した第一の活性層基板41を接合する。この接合は、アニール処理による数十nmのシリコン酸化膜を介して接着する。
【0029】
これをステップS7に示すようにグラインダー(GD)を用いて厚さ方向に研削した後、さらにウェーハ両面を厚さ調整しながら両面研磨(DSP)する。これにより
図3のステップS7に示すように第二の活性層基板61の下面側の第二の酸化膜層5は除去され、厚さばらつきの抑制された素子側基板10が得られる。この素子側基板10は、第二の酸化膜5を介して第二の活性層基板61と第一の活性層基板41とが互いに接合されたものである。
ここで、本実施の形態においては、
図1に示すように第二の活性層6を最上部のトップ層、第一の活性層4をその下のセカンド層とするため、中間層である第一の活性層4(第一の活性層基板41)の厚さ制御は、このステップS7の両面研磨により行う。また、上記のように本実施の形態では、素子側基板10は、ボトム側の活性層基板(第一の活性層基板41)には酸化膜が形成されることなく、2層の活性層基板(第一の活性層基板41、第二の活性層基板61)を有することになる。
【0030】
(支持基板の形成)
一方、
図2、
図3のステップS8に示すように、シリコンウェーハ20を用意し、ステップS9に示すようにグラインダー(GD)を用いて厚さ方向に研削した後、ウェーハ表面を極微細な砥粒で鏡面研磨(ML)し、ステップS9に示すように所望の厚さの支持基板21(最終的に支持基板2となる)を形成する。また、ステップS10に示すように支持基板21の上下面に厚さ0.2μm以上2.0μm以下の第一の酸化膜層3を形成する。
なお、ステップS6、S7とステップS8~S10を実施する順番は、どちらを先でもよい。
【0031】
(多層膜SOIウェーハの形成)
次に、
図2、
図3のステップS11に示すように、ステップS10で形成した支持基板21上に、素子側基板10を接合する。ここで、支持基板21上に第一の酸化膜層3を介して第一の活性層基板41(第一の活性層4)を接合する。この接合は、アニール処理による数十nmのシリコン酸化膜を介して接着する。
【0032】
これをステップS12に示すようにグラインダー(GD)を用いて、支持基板21と素子側基板10とが接合された多層膜SOIウェーハ1の外周側を研削する(以下、「外周研削」とも呼ぶ。)。この外周研削は、少なくとも支持基板21と素子側基板10、及び、第一の活性層基板10と第二の活性層基板61との接合面の周縁部に生じる未接着領域がなくなるまで研削を行う。これにより、未接着領域のない多層膜SOIウェーハ1が形成される。次いで、フッ酸処理により、下面側の第一の酸化膜層3を除去し、要求がある場合には、微細な粒状の研削材をウェーハの裏面に吹き付けるサンドブラストを行って、下面が梨地面の支持基板2を形成する。
【0033】
最後に、ステップ13に示すようにウェーハ周縁部に面取り加工を施すことにより、未接着領域が外周研削により除去された多層膜SOIウェーハ1にベベル面1aを形成する。次いで、第二の活性層基板61の表面を極微細な砥粒で鏡面研磨(ML)し、トップ層である第二の活性層6を形成することにより、テラスフリー構造の多層膜SOIウェーハ1が得られる。
【0034】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、トップ層である活性層基板(本実施形態では第二の活性層基板61)を除く、中間層となる活性層基板(本実施形態では第一の活性層基板41)は、その接合前に両面研磨(DSP)により最終的な厚さ調整がなされるため、接合後のウェーハの厚さばらつきを従来よりも格段に抑制することができる。
また、従来では、例えば支持基板と中間層となる活性層基板とを接合すると、接合面の周縁部に未接着領域が生じ、その後の厚さ調整のための活性層基板の研削/研磨を行うと未接着領域の割れ等が発生する虞があった。そのため、従来は未接着領域を面取りし、テラス部(段差部)を形成した後に活性層基板の研削/研磨を行っていた。
その場合、上層の活性層基板の有効領域が小さくなっていたが、本実施の形態においては、基板接合前に両面研磨により中間層の活性層基板の厚さ調整を行うため、未接着領域の面取りはその都度必要ない。そのため、全ての活性層の有効面積を広く確保することができ、周縁部に段差を形成することなくテラスフリーの多層膜SOIウェーハを形成することができる。
【0035】
尚、前記実施の形態においては、2層の活性層を有する多層膜SOIウェーハを例に説明したが、本発明にあっては、それに限定されず、3層以上の活性層を有する多層膜SOIウェーハにも適用することができる。
例えば、3層の活性層を積層する場合、
図4に示す状態遷移図に沿って多層膜SOIウェーハを製造することができる。
【0036】
この場合、
図3のステップS7(第一、第二の活性層基板の作成)までは、2層の活性層を有する多層膜SOIウェーハの製造方法と同様であるため、ステップS7までの工程については、説明を省略する。
図3、
図4のステップS7のように第二の酸化膜5を介して第二の活性層基板61と第一の活性層基板41とが互いに接合された基板を製造後、
図4のステップSt1のようにシリコンウェーハ90を用意する。そして、ステップSt2に示すように、グラインダー(GD)を用いて厚さ方向に研削した後、さらにウェーハ両面を両面研磨(DSP:Double Side Polish)して所望の厚さ(例えば550μm)の第三の活性層基板91(最終的に第三の活性層9となる)を形成する。このように両面研磨することにより、厚さばらつきの小さい第三の活性層基板91が得られる。
また、ステップSt3に示すように熱処理により第三の活性層基板91の上下面に厚さ0.2μm以上2.0μm以下の第三の酸化膜層7を形成する。
【0037】
(素子側基板の形成)
次に
図4のステップSt4に示すように、(
図3、
図4の)ステップS7で形成した基板の第一の活性層基板41の上に第三の酸化膜7を介して、ステップSt3で形成した第三の活性層基板91を接合する。この接合は、アニール処理による数十nmのシリコン酸化膜を介して接着する。
【0038】
これを、グラインダー(GD)を用いて厚さ方向に研削した後、さらにウェーハ両面を厚さ調整しながら両面研磨(DSP)する。これにより
図4のステップSt5に示すように第二の活性層基板61の上面側の第三の酸化膜層7は除去され、厚さばらつきの抑制された素子側基板11が得られる。この素子側基板11は、第二の酸化膜5を介して第二の活性層基板61と第一の活性層基板41とが互いに接合され、第三の酸化膜7を介して第二の活性層基板61と第三の活性層基板91とが接合されたものである。
【0039】
(支持基板の形成)
一方、
図4のステップSt6に示すように、シリコンウェーハ20を用意し、ステップSt7に示すようにグラインダー(GD)を用いて厚さ方向に研削した後、ウェーハ表面を極微細な砥粒で鏡面研磨(ML)し、ステップSt7に示すように所望の厚さの支持基板21(最終的に支持基板2となる)を形成する。また、ステップSt8に示すように支持基板21の上下面に厚さ0.2μm以上2.0μm以下の第一の酸化膜層3を形成する。
【0040】
(多層膜SOIウェーハの形成)
次に、
図4のステップSt9に示すように、ステップSt8で形成した支持基板21上に、素子側基板11を接合する。ここで、支持基板21上に第一の酸化膜層3を介して第一の活性層基板41(第一の活性層4)を接合する。この接合は、アニール処理による数十nmのシリコン酸化膜を介して接着する。
【0041】
これをステップSt10に示すようにグラインダー(GD)を用いて、支持基板21と素子側基板11とが接合された多層膜SOIウェーハ1の外周側を研削する。この外周研削は、少なくとも支持基板21と素子側基板11、及び、第一、第二、第三の活性層基板の各基板の接合面の周縁部に生じる未接着領域がなくなるまで研削を行う。これにより、未接着領域のない多層膜SOIウェーハ1が形成される。次いで、フッ酸処理により、下面側の第一の酸化膜層3を除去し、要求がある場合には、微細な粒状の研削材をウェーハの裏面に吹き付けるサンドブラストを行って、下面が梨地面の支持基板2を形成する。
【0042】
最後に、ステップSt11に示すようにウェーハ周縁部に面取り加工を施すことにより、ベベル面1aを形成し、次いで、第二の活性層基板61の表面を極微細な砥粒で鏡面研磨(ML)し、トップ層である第三の活性層9を形成する。これにより、3つの活性層を有するテラスフリー構造の多層膜SOIウェーハ1が得られる。
【実施例0043】
本発明に係る多層膜SOIウェーハの製造方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に基づき以下の実験を行った。
【0044】
(実施例1)
実施例1では、第一の活性層基板(セカンド活性層)と第二の活性層基板(トップ活性層基板)とをそれぞれ両面研磨した後に、第二の活性層基板の表面に厚み1.0μmの酸化膜を形成し、その酸化膜を介して第一の活性層基板と第二の活性層基板とを接合して素子側基板を作成した。さらに素子側基板を両面研磨し、第一の活性層基板を所望の厚み(例えば、75μm)となるまで両面研磨を行うとともに、第一の活性層基板の厚み測定を行った。そして、この素子側基板と酸化膜形成した支持基板とを接合し、上述した外周研削、グラインダー、面取りを行って、テラスフリー構造の多層膜SOIウェーハを製造した。その後、第二の活性層基板の表面を片面研磨して、所望の厚み(例えば、50μm)となるまで第二の活性層基板の厚さ調整をした。
この多層膜SOIウェーハのセカンド活性層である第一の活性層基板の厚さばらつきを測定した。測定には、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた。
図5のグラフに実施例1の厚さばらつきの結果を箱ひげ図で示す。
図5において縦軸は、厚さばらつき(μm)を示す。
【0045】
(比較例1)
比較例1では、支持基板上に酸化膜を介して第一の活性層基板(セカンド活性層)を接合し、周縁部を面取りしてテラス部を形成した後に、片面研磨により厚さを調整した。
さらに酸化膜を介して第二の活性層基板(トップ活性層)を接合し、面取りしてテラス部を形成した後に、片面研磨により厚さを調整し多層膜SOIウェーハを製造した。
この多層膜SOIウェーハのセカンド活性層である第一の活性層基板の厚さばらつきを測定した。測定には、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた。
図5のグラフに実施例1とともに比較例1の厚さばらつきの結果を示す。
図5において縦軸は、厚さばらつき(μm)を示す。
【0046】
図5に示すように、実施例1では第一の活性層(セカンド活性層)の厚さばらつきを小さく抑えることができたが、比較例1では第一の活性層(セカンド活性層)の厚さばらつきがより大きくなった。この結果より、本発明の効果を確認することができた。