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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171252
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】貼付形態を有する保湿剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20241204BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241204BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20241204BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/135
A61K31/167
A61K8/41
A61K8/42
A61K8/34
A61K9/70 405
A61P17/16
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088224
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 遼馬
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD49
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE23
4C076EE36
4C076EE42
4C076FF57
4C083AB242
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC582
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD302
4C083AD432
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE12
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA17
4C206FA05
4C206GA18
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
(57)【要約】
【課題】皮膚への保湿力が向上された貼付剤を提供する。
【解決手段】(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、
(B)リドカイン及び/又はその塩、及び
(C)イソプロピルメチルフェノール
からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、貼付形態を有する保湿剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、
(B)リドカイン及び/又はその塩、及び
(C)イソプロピルメチルフェノール
からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、貼付形態を有する保湿剤。
【請求項2】
前記(A)、(B)及び(C)からなる群より選択される少なくとも2種を含有する、請求項1に記載する保湿剤。
【請求項3】
前記貼付形態を有する保湿剤が、支持体層、膏体層、及び剥離ライナー層からなるパップ剤であって、
前記膏体層が、前記(A)、(B)及び(C)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物(膏体組成物)からなるものである、
請求項1又は2に記載する保湿剤。
【請求項4】
膏体組成物100質量%中の水分含量が20質量%以上80質量%以下である、請求項3に記載する保湿剤。
【請求項5】
支持体層、膏体層、及び剥離ライナー層からなるパップ剤において、皮膚に対する保湿力を向上する方法であって、
前記膏体層を調製する成分として、
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)リドカイン及び/又はその塩、及び
(C)イソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付形態を有する保湿剤、言い換えれば保湿用途に用いられる貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は、大きく分けて、膏体に水を含有する水性型のパップ剤と、膏体に水を含有しない油性型のプラスター剤(「テープ剤」とも称される)とに分類される。
一般に湿疹皮膚炎が生じた肌は、痒みと掻破の悪循環により皮膚のバリア機能が損なわれ、肌の水分蒸散量が亢進し、肌の水分保持量が低下することが知られている。パップ剤は、プラスター剤と比較し、水分を多く含む特徴を持つことから、皮膚の角質層に水分を補給して、肌の水分含有量を向上させることが期待できる。
【0003】
パップ剤による保湿効果を向上させる方法として、スフィンゴイド類又はN-アセチルスフィンゴシン類を配合する方法(特許文献1)、茶葉抽出物由来のテアデノールを配合すること(特許文献2)、オランダカラシを配合する方法(特許文献3)、烈香杜鵑と蜂蜜を配合する方法(特許文献4)等がある。
しかし、パップ剤において保湿効果をさらに高めるための技術は十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-180970号公報
【特許文献2】特開2014-88360号公報
【特許文献3】特開平11-035475号公報
【特許文献4】特開2008-169196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は貼付形態を有する保湿剤、言い換えれば保湿用途に用いられる貼付剤を提供することを課題とする。より好ましくは膏体層の保湿力が増強されたパップ剤を提供することを課題とする。また本発明は、パップ剤について、その膏体層の保湿力を向上するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、皮膚に貼着させる膏体層に、(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)リドカイン及び/又はその塩、及び(C)イソプロピルメチルフェノールのいずれか少なくとも1種を配合することで、膏体層の皮膚への保湿力を向上させることができることを見出した。
【0007】
本発明はこれらの知見に基づいて、さらに研究を重ねることで完成したものであり、下記の実施形態を包含する。
項1.(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、
(B)リドカイン及び/又はその塩、及び
(C)イソプロピルメチルフェノール
からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、貼付形態を有する保湿剤。
項2.前記(A)、(B)及び(C)からなる群より選択される少なくとも2種を含有する、項1に記載する保湿剤。
項3.前記貼付形態を有する保湿剤が、支持体層、膏体層、及び剥離ライナー層からなるパップ剤であって、前記膏体層が、前記(A)、(B)及び(C)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物(膏体組成物)からなるものである、項1又は2に記載する保湿剤。
項4.膏体組成物100質量%中の水分含量が20質量%以上80質量以下である、項3に記載する保湿剤。
項5.支持体層、膏体層、及び剥離ライナー層からなるパップ剤において、皮膚に対する保湿力を向上する方法であって、
前記膏体層を調製する成分として、
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)リドカイン及び/又はその塩、及び
(C)イソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、前記方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被貼着物である皮膚への保湿力が向上された貼付剤を提供することができる。具体的には、本発明によれば、膏体層を有する貼付剤(パップ剤)について、皮膚に対する保湿力を向上するための方法、及び保湿性が向上された保湿用貼付剤(貼付形態を有する保湿剤)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(I)貼付形態を有する保湿剤、及びその調製方法
本発明が対象とする保湿剤は、貼付形態を有しており、皮膚に貼付して使用されるものである。
貼付形態としては、制限されないものの、好ましくは支持体層と当該支持体層の一方面の上に積層された膏体層、並びに当該膏体層の表面(貼着面上)に剥離可能な状態で積層された剥離ライナー層とを備えるパップ剤を挙げることができる。
当該パップ剤は、前記膏体層が下記(A)、(B)及び(C)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物(以下、これを「膏体組成物」と称する)から形成されていることを特徴とする:
(A)ジフェンヒドラミン及びその塩から選択される少なくとも1種、
(B)リドカイン及びその塩から選択される少なくとも1種、
(C)イソプロピルメチルフェノール。
【0010】
以下、当該パップ剤について説明する。
(1)膏体層
(A)成分
ジフェンヒドラミン及びその塩は、その抗ヒスタミン作用に基づいて、皮膚の痒みや赤み、膨疹(皮膚のふくらみ)などの症状を抑える作用を有することが知られている成分である。ジフェンヒドラミンの塩は、無機塩及び有機塩の別を問わず、薬学的に許容される塩であればよく、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びメタンスルホン酸塩等の単塩基酸塩;並びにフマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、及び酒石酸塩等の多塩基酸塩が挙げられる。塩として好ましくはジフェンヒドラミン塩酸塩である。
【0011】
膏体層を構成する膏体組成物100質量%中のジフェンヒドラミン及びその塩の合計量は、膏体組成物に配合することで皮膚への保湿力を向上する効果を発揮する範囲であればよく、その範囲で適宜設定することができる。例えば、0.05質量%以上3質量%以下の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以上2質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0012】
(B)成分
リドカインは、2-(ジエチルアミノ)-N-(2,6-ジメチルフェニル)アセタミドとも称され、局所麻酔作用を有することが知られている成分である。リドカインの塩は、無機塩及び有機塩の別を問わず、薬学的に許容される塩であればよく、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びメタンスルホン酸塩等の単塩基酸塩;並びにフマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、及び酒石酸塩等の多塩基酸塩が挙げられる。塩として好ましくはリドカイン塩酸塩である。
【0013】
膏体層を構成する膏体組成物100質量%中のリドカイン及びその塩の合計量は、膏体組成物に配合することで皮膚への保湿力を向上する効果を発揮する範囲であればよく、その範囲で適宜設定することができる。例えば、0.1質量%以上3質量%以下の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.2質量%以上3質量%以下、より好ましくは1質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上2質量%以下である。
【0014】
(C)成分
イソプロピルメチルフェノール(以下、「IPMP」とも称する)は、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、又はシメン-5-オールとも称され、殺菌作用を有することが知られている成分である。
【0015】
膏体層を構成する膏体組成物100質量%中のIPMPの含有量は、膏体組成物に配合することで皮膚への保湿力を向上する効果を発揮する範囲であればよく、その範囲で適宜設定することができる。例えば、0.01質量%以上3質量%以下の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上1.2質量%以下である。
【0016】
前記(A)~(C)成分は、それぞれ単独で膏体組成物に配合されてもよいし、また2種以上を任意に組みあわせて配合することもできる。皮膚への保湿力向上という点から、好ましくは2種以上の組み合わせであり、より好ましくは3種の組み合わせである。
【0017】
(A)~(C)成分の2種以上を組み合わせる場合の各成分の配合割合は、本発明の効果を発揮する範囲であればよく、その範囲で適宜設定することができる。制限されないものの、(A)成分の総量100質量部に対する(B)成分の割合として3質量部以上6000質量部以下、好ましくは8質量部以上3000質量部以下、より好ましくは50質量部以上600質量部以下、さらに好ましくは75質量部以上250質量部以下、さらにより好ましくは150質量部以上230質量部以下を例示することができる。また、(A)成分の総量100質量部に対する(C)成分の割合として0.3質量部以上6000質量部以下、好ましくは2質量部以上2000質量部以下、より好ましくは10質量部以上300質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上150質量部以下、さらにより好ましくは50質量部以上150質量部以下を例示することができる。また、(B)成分の総量100質量部に対する(C)成分の割合として0.3質量部以上30000質量部以下、好ましくは1.5質量部以上1000質量部以下、より好ましくは6.5質量部以上150質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上80質量部以下、さらにより好ましくは40質量部以上60質量部以下を例示することができる。
【0018】
(A)~(C)成分を全て組み合わせる場合の各成分の配合割合は、本発明の効果を発揮する範囲であればよく、その範囲で適宜設定することができる。制限されないものの、(A)成分の総量100質量部に対する(B)成分の割合として、3質量部以上6000質量部以下、好ましくは8質量部以上3000質量部以下、より好ましくは50質量部以上600質量部以下、さらに好ましくは75質量部以上250質量部以下、さらにより好ましくは180質量部以上220質量部以下を例示することができる。また、(A)成分の総量100質量部に対する(C)成分の割合として、0.3質量部以上6000質量部以下、好ましくは2質量部以上2000質量部以下、より好ましくは10質量部以上300質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上150質量部以下、さらにより好ましくは40質量部以上60質量部以下を例示することができる。
【0019】
(D)基剤成分
パップ剤の前記膏体層を構成する膏体組成物は、前記成分の他、基剤成分として水溶性高分子、多価アルコール及び水を含有する。
【0020】
水溶性高分子としては、パップ剤の膏体の基剤成分として使用されるものであればよく、特に制限されないものの、例えばポリアクリル酸又はその塩(ポリアクリル酸部分中和物を含む)、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、プルラン、寒天、デキストラン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、可溶性デンプン、カルボキル化デンプン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、及びポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの水溶性高分子の中でも、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸又はその塩(ポリアクリル酸部分中和物を含む)、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、及びポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
膏体組成物中の水溶性高分子の配合量は、その配合により、好適なゲル物性(強度、弾性、耐久性、粘着性、保水性等)が得られる量であればよく、例えば、膏体組成物100質量%中の水溶性高分子の総量が5質量%以上20質量%以下、好ましくは8質量%以上13質量%以下となるように設定することが好ましい。なお、制限されないものの、上記の範囲になるように、例えばメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体については2.4質量%以下、ポリアクリル酸又はその塩(ポリアクリル酸部分中和物を含む)については32.6質量%以下、アルギン酸ナトリウムについては5.0質量%以下、及び/又はポリビニルアルコールについては3.5質量%以下の割合で、各々配合することができる。
【0021】
多価アルコールとしては、パップ剤の膏体の基剤成分として使用されるものであればよく、特に制限されないものの、例えばグリセリン(濃グリセリンを含む)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。好ましくはグリセリン、及びソルビトールを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
膏体組成物中の多価アルコールの配合量は、その配合により、好適な保湿性、好適な薬物溶解性及び好適な粘着性を膏体層においてバランスよく保つことができるという観点から、例えば、膏体組成物100質量%中の多価アルコールの総量が10質量%以上30質量%以下、好ましくは20質量%以上25質量%以下となるように設定することが好ましい。
【0022】
水としては、特に制限されないが、イオン交換、蒸留、濾過等の精製を施された水であることが好ましく、例えば、日本薬局方(第十八改正日本薬局方)に記載の「精製水」を好適に用いることができる。
膏体組成物中の水の配合量は、皮膚への保湿力、及び調製する膏体層の硬さや膏体中の有効成分を安定して溶解する観点から、膏体組成物100質量%中、20質量%以上80質量%以下、好ましくは30質量%以上70質量%以下、より好ましくは45質量%以上65質量%以下、さらにより好ましくは53質量%以上57質量%以下となるように設定することが好ましい。
【0023】
(E)他成分
パップ剤の前記膏体層を構成する膏体組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記成分の他、さらに、架橋剤、pH調整剤、乳化剤(界面活性剤)、充填剤、保存剤、酸化防止剤、キレート剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0024】
架橋剤は、前記水溶性高分子を架橋することにより前記膏体組成物をゲル化して保型する作用を有する。このような架橋剤としては、特に制限されず、硫酸アルミニウム・カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の多価金属塩が挙げられる。前記架橋剤を前記膏体組成物に配合する場合、その含有量は、好適なゲル物性が得られるという観点から適宜設定することができ、制限されないものの、前記膏体組成物100質量%中、0.1質量%以上3質量%以下の範囲から選択することができる。
【0025】
pH調整剤としては、酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、エデト酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;前記有機酸又は無機酸の薬学的に許容される塩等が挙げられる。本発明の保湿剤は、ヒトの皮膚に対して安全である必要から、その膏体層のpHは、pH調整剤の使用の有無に関わらず、4.0以上7.0以下の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の好適な貼付形態を有する保湿剤は、前記成分を含有する膏体組成物が、後述する支持体層の一方面に膏体層として積層されてなるものである。皮膚への保湿力(保水性)、又は粘着性という観点から、膏体層の厚みは250μm以上1500μm以下に調整することが好ましい。
【0027】
(2)支持体層
本発明に係る支持体層の材質としては、特に制限されず、通常パップ剤の支持体層の材質として使用できるものを適宜用いることができる。このような材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;レーヨン、パルプ、綿等のセルロース又はその誘導体;ポリアクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に係る支持体層としては、前記材質の繊維からなる布帛を用いることが好ましく、前記布帛としては、前記繊維を絡合、熱融着、圧着あるいはバインダー接着等の方法により加工した不織布を用いることがより好ましい。
【0028】
(3)剥離ライナー層
パップ剤は、パップ剤を使用する時まで前記膏体層の表面を被覆して保護するために、剥離ライナー層を備える。前記剥離ライナー層の材質としては、特に制限されず、通常パップ剤の剥離ライナー層の材質として使用できるものを適宜用いることができる。このような材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリアクリロニトリル;セルロース又はその誘導体;アルミニウム等の金属箔等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記剥離ライナー層としては、前記材質からなるフィルム及びシートが挙げられ、このようなフィルム及びシートとしては、その剥離性を増すために、前記膏体層に接する面にあらかじめシリコーン処理やテフロン(登録商標)処理等の剥離性付与処理が施されたものであってもよい。また、このような剥離ライナー層の厚みとしては、20μm以上150μm以下の範囲であることが好ましい。
【0029】
(4)パップ剤の調製方法
パップ剤は、例えば、以下の方法により製造することができる。
先ず、前述する(A)~(C)成分のいずれか少なくとも1種、及び前記水、前記多価アルコール、前記水溶性高分子、並びに必要に応じて前記添加剤を常法に従って練合して均一な膏体組成物を得る。次いで、この膏体組成物を前記支持体層の一方の面の上に所定の厚みで塗布して膏体層を形成する。次いで、前記膏体層の前記支持体層と反対の貼着面上に前記剥離ライナー層を貼り合わせ、所定の形状に裁断することにより本発明のパップ剤を得ることができる。あるいは、前記膏体組成物を先ず剥離ライナー層の一方の面上に所定の厚みで塗布して膏体層を形成した後に、前記膏体層の前記剥離ライナー層と反対の貼着面上に前記支持体層を貼り合わせ、所定の形状に裁断することにより本発明のパップ剤を得てもよい。
【0030】
(II)パップ剤の保湿力向上方法
本発明は、膏体層、支持体層、及び剥離ライナー層からなるパップ剤について、皮膚に対する膏体層の保湿力を向上する方法である。かかる方法は、前記膏体層を形成する膏体組成物の調製にあたり、その成分として、下記(A)~(C)成分の少なくとも1種を配合することで実施することができる。
(A)ジフェンヒドラミン及びその塩から選択される少なくとも1種、
(B)リドカイン及びその塩から選択される少なくとも1種、
(C)IPMP。
かかる方法によれば、前述する(A)~(C)成分を含有しない膏体組成物から形成される膏体層の皮膚への保湿力と比較して、高い保湿力を有する膏体層を有するパップ剤を得ることができる。なお、膏体層の保湿力の評価は、後述する実験例1に記載する肌水分量測定方法を用いて行うことができる。
【0031】
この方法において使用される(A)~(C)成分の種類及びその配合割合、(D)基剤成分の種類及びその配合割合、膏体層の調製方法、支持体層、並びに剥離ライナー層の説明は、前記(I)の欄に記載した通りであり、その記載はここに援用することができる。
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例0032】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件下で実施した。なお、特に言及しない限り、以下に記載する「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0033】
実施例1~7、及び比較例1
後述する表1に記載する各成分を、各々の割合で混合して、膏体組成物を調製した。次いで、得られた膏体組成物を714g/mとなるようにポリエステル不織布(目付:100g/m)(支持体層)の一方の面上に展延して、膏体層を形成した後、前記膏体層の塗布面(貼着面)をポリプロピレン製の剥離ライナー層で覆い、所定の大きさ(7cm×10cm)に裁断して、各種のパップ剤(実施例1~7、比較例1)を調製した。
【0034】
実験例1 パップ剤の保湿力の評価
前記パップ剤(実施例1~7、比較例1)の保湿力を、下記の方法で評価した。
具体的には、被験者の前腕内側部分の皮膚にパップ剤を貼付し、貼付から6時間後の肌水分量を測定した。なお、肌水分量は、コルネオメータ(Corneometer[登録商標] CM825:Courage and Khazaka Electronic Co.,)を用いて測定した。被験者として、20才~50才の男女6名を採用し、室温25℃、湿度30%の恒温恒湿とした部屋で20分間馴化を行った後、各被験者に前記パップ剤(実施例1~7、比較例1)を貼付してもらい、貼付から6時間後に肌水分量を測定し、各被験者に各パップ剤の保湿力を評価した。なお、貼付から6時間後の肌水分量の測定前にも、室温25℃、湿度30%の恒温恒湿とした部屋で20分馴化を行い、肌水分量の測定を行った。実施例のパップ剤の保湿力は、比較例1のパップ剤により得られる肌水分量を1とし、それに対する実施例の肌水分量の相対比を「肌水分量改善度」とすることで、評価した。
【0035】
結果を表1に示す。
表1に示す肌水分量改善度は、被験者6名の平均値である。
【表1】
【0036】
この結果からわかるように、パップ剤の膏体層に、(A)ジフェンヒドラミン及びその塩から選択される少なくとも1種、(B)リドカイン及びその塩から選択される少なくとも1種、又は(C)IPMPのいずれか1種以上を配合することで、これらをいずれも配合しないパップ剤(比較例1)と比較して、肌水分改善度が向上すること、つまり肌への保湿力が向上することが確認された(実施例1~3)。さらにその効果は、(A)~(C)成分のうち任意に2種を組み合わせることでより向上することが確認された(実施例4~6)。さらに、(A)~(C)成分を全て配合することで、肌水分改善度がより一層向上することが確認された(実施例7)。これらの結果から、本発明のパップ剤は、肌の水分含量、又は肌の潤いを向上させることが確認された。