(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171381
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/78 20060101AFI20241205BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/46 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20241205BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D53/78
B01D53/68 120
B01D53/68 220
B01D53/46
B01D53/70 200
F23G7/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088345
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】富井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 一知
(72)【発明者】
【氏名】細谷 和正
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】松島 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彩香
【テーマコード(参考)】
3K078
4D002
【Fターム(参考)】
3K078BA21
3K078CA02
3K078CA24
4D002AA18
4D002AA21
4D002AA22
4D002AA26
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA14
4D002CA01
4D002CA03
4D002CA04
4D002DA35
4D002EA01
4D002EA03
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB03
4D002GB06
4D002GB20
4D002HA03
4D002HA06
(57)【要約】
【課題】安価な樹脂材料で冷却部を形成しても、直ちに装置外に排ガスを漏洩させることなく、安全に排ガスを処理することが可能な排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置は、排ガスを加熱分解処理する筒体18を有する処理部11と、筒体18の内壁面に水膜を形成する水膜形成機構20と、加熱分解処理された排ガスを冷却する冷却部21と、水膜形成機構20に供給される水を貯留する水槽25と、排ガスの加熱分解処理によって発生する反応副生成物を捕集除去する水洗部31と、を備える。冷却部21は、筒体18に連結され、水槽25内部まで延びる連結配管22と、水槽25内で連結配管22に連結され、排ガスを冷却しつつ、該水槽25内に排ガスを排出する冷却器23と、冷却器23に水を供給する水供給機構と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害ガスを含む排ガスを加熱分解処理する筒体を有する処理部と、
前記筒体の内壁面に水膜を形成する水膜形成機構と、
前記筒体に連結され、前記処理部で加熱分解処理された排ガスを冷却する冷却部と、
前記水膜形成機構に供給される水を貯留する水槽と、
前記水槽と連通し、前記排ガスの加熱分解処理によって発生する反応副生成物を捕集除去する水洗部と、を備え、
前記冷却部は、
前記筒体に連結され、前記水槽内部まで延びる連結配管と、
前記水槽内で前記連結配管に連結され、前記排ガスを冷却しつつ、前記水槽内に前記排ガスを排出する冷却器と、
前記冷却器に水を供給する水供給機構と、を備える、排ガス処理装置。
【請求項2】
前記冷却器は、前記水槽から供給される水を駆動水として前記筒体内の気体を吸引するエゼクタである、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記冷却器は、前記連結配管に連結される冷却配管と、該冷却配管に水を散布するスプレーと、を含む、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記冷却配管は、その途中に形成された縮径部を有する、請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記水供給機構は、前記水槽から延びて、前記冷却器に連結される水供給ラインと、前記水循環ラインに配置された循環ポンプと、を備える、請求項1または3に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記水膜形成機構は、前記水供給機構としても機能する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記冷却器は、前記水槽に貯留された水の液面の上方に前記排ガスを排出する排ガス出口を有する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害ガスを含む排ガスを加熱分解処理し、無害化するための排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有害ガス(例えば、シランガス(SiH4)、ジクロールシラン(SiH2Cl2)などの水素化物のガス、並びにNF3,ClF3,SF6,CHF3,C2F6,およびCF4などのハロゲン系のガス)は、様々な産業で利用されている。例えば、半導体製造装置では、有害ガスを含む複数のガスが使用され、該半導体製造装置からは、有害ガスを含む排ガスが排出される。このような排ガスは、そのままでは大気に放出することはできない。そこで、これらの排ガスを排ガス処理装置に導入して、有害ガスを加熱分解処理することが行われている。例えば、特許文献1には、排ガスを燃焼式排ガス処理装置に導入して、燃焼による酸化無害化処理を行うことが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の排ガス処理装置は、有害可燃性ガスを含む排ガスの燃焼処理部と、排ガスの燃焼処理によって発生する反応副生成物を水洗にて捕集除去する水洗部と、燃焼処理部を水洗部に連通するとともに、燃焼処理部で燃焼処理された排ガスを冷却する冷却部と、を備えている。燃焼処理部は、燃焼器を有しており、燃焼器に供給される排ガスを、燃料と空気との混合ガス、または燃料、空気、および助燃ガスとの混合ガスを燃焼させることで形成される火炎で分解処理する。燃焼処理された排ガスは、該排ガスの燃焼処理によって発生した粉体および/または酸性ガスなどの反応副生成物とともに、冷却部を通って水洗部に導入される。
【0004】
冷却部では、スプレーなどの散水装置を用いて、燃焼処理によって高温となった排ガスの冷却が行われる。水洗部では、スプレーなどの散水装置およびフィルタなどを用いて、排ガスに含まれる反応副生成物が捕集除去される。排ガス処理装置は、燃焼処理部および水洗部の下方に設けられた循環槽をさらに有しており、循環槽と、冷却部および水洗部との間に水の循環が形成される。冷却部は、循環層の上方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃焼処理部を通過した排ガスは、火炎により1000℃以上の非常に高温(例えば、1700℃)となる。さらに、燃焼処理後の排ガスには、反応副生物として酸性ガスが含まれることもある。燃焼処理部を水洗部に連通する冷却部は、酸性ガスが通過するため、耐熱性はあるが、耐食性のない安価な金属材料(例えば、ステンレス鋼)で形成することができない。さらに、酸性ガスが溶けた水が冷却部および水洗部から循環槽に戻されるため、循環槽も安価な金属材料で形成することができない。耐食性コーティングを施した内面を有する金属材料、または耐食性を有する金属材料を用いて冷却部および循環槽を形成すると、これら金属材料は非常に高価であるため、排ガス処理装置の製造コストが大幅に増大してしまう。
【0007】
一方で、排ガス処理装置の製造コスト増大の問題を解決するために、耐食性のある安価な樹脂材料(例えば、PVC)で冷却部および循環槽を形成すると、冷却部および/または循環槽から燃焼処理後の排ガスおよび/または循環水が漏洩するおそれがある。例えば、散水装置の故障、または目詰まりなどに起因して、冷却部で確実に排ガスを冷却できなければ、冷却部が損傷して、酸性ガスを含む排ガスが冷却部から漏洩してしまう。冷却部は、循環槽の外部に設けられているため、冷却部からの排ガスの漏洩は、排ガス処理装置の付近の作業者を危険にさらしてしまう。
【0008】
なお、非常に高温で、反応副生物としての酸性ガスが含まれる排ガスが冷却部および水洗部に流れることで発生する上記問題は、燃焼式排ガス処理装置だけでなく、排ガスを加熱分解処理する他の排ガス処理装置でも発生する。例えば、上記問題は、有害ガスを含む排ガスをヒータによって加熱分解処理する排ガス処理装置、および有害ガスを含む排ガスをプラズマによって加熱分解処理する排ガス処理装置でも発生する。
【0009】
そこで、本発明は、安価な樹脂材料で冷却部を形成しても、直ちに装置外に排ガスを漏洩させることなく、安全に排ガスを処理することが可能な排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、有害ガスを含む排ガスを加熱分解処理する筒体を有する処理部と、前記筒体の内壁面に水膜を形成する水膜形成機構と、前記筒体に連結され、前記処理部で加熱分解処理された排ガスを冷却する冷却部と、前記水膜形成機構に供給される水を貯留する水槽と、前記水槽と連通し、前記排ガスの加熱分解処理によって発生する反応副生成物を捕集除去する水洗部と、を備え、前記冷却部は、前記筒体に連結され、前記水槽内部まで延びる連結配管と、前記水槽内で前記連結配管に連結され、前記排ガスを冷却しつつ、前記水槽内に前記排ガスを排出する冷却器と、前記冷却器に水を供給する水供給機構と、を備える、排ガス処理装置が提供される。
【0011】
一態様では、前記冷却器は、前記水槽から供給される水を駆動水として前記筒体内の気体を吸引するエゼクタである。
一態様では、前記冷却器は、前記連結配管に連結される冷却配管と、該冷却配管に水を散布するスプレーと、を含む。
一態様では、前記冷却配管は、その途中に形成された縮径部を有する。
【0012】
一態様では、前記水供給機構は、前記水槽から延びて、前記冷却器に連結される水供給ラインと、前記水循環ラインに配置された循環ポンプと、を備える。
一態様では、前記水膜形成機構は、前記水供給機構としても機能する。
一態様では、前記冷却器は、前記水槽に貯留された水の液面の上方に前記排ガスを排出する排ガス出口を有する。
【発明の効果】
【0013】
排ガス処理装置は、水槽の内部に配置された冷却部の冷却器を有する。そのため、冷却器が損傷しても、排ガスは水槽内に漏洩するので、安価な樹脂材料で冷却部を形成しても、直ちに排ガス処理装置の外部に排ガスが漏洩することがない。その結果、安全に排ガスを処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る排ガス処理装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、水流フランジの構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、冷却器の変形例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係る排ガス処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、同一の作用または機能を有する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
図1は、一実施形態に係る排ガス処理装置を示す模式図である。
図1に示す排ガス処理装置は、排ガスに含まれる有害ガスを加熱分解処理する排ガス処理装置の一例である燃焼式排ガス処理装置である。以下では、排ガス処理装置が燃焼式排ガス処理装置である例が説明されるが、排ガス処理装置は、有害ガスを含む排ガスを加熱分解できる排ガス処理である限り、この例に限定されない。例えば、排ガス処理装置は、発生させたプラズマによって排ガスに含まれる有害ガスを加熱分解する排ガス処理装置であってもよいし、ヒータで排ガスを加熱することで、排ガスに含まれる有害ガスを加熱分解する排ガス処理装置であってもよい。
【0016】
図1に示す排ガス処理装置は、有害ガス(特に、有害可燃性ガス)を含む排ガスを燃焼によって加熱分解するための処理部(燃焼処理部)11を有する。この処理部11は、排ガス処理用の燃焼器12と、燃焼器12に連結された筒体18と、を有している。筒体18は、例えば、円筒形状を有する。燃焼器12には、燃料(例えば、燃料ガス)と支燃性ガス(例えば、酸素含有ガス)と処理ガス(すなわち、有害ガスを含む排ガス)とが吹き込まれる。一実施形態では、支燃性ガスに加えて、助燃ガス(例えば、酸素)を燃焼器12に吹き込んでもよい。さらに、燃焼器12には、点火用のパイロットバーナ(図示せず)が設置されており、パイロットバーナには燃料と空気が供給されるようになっている。燃焼器12では、燃料と支燃性ガスとの混合ガス(または、燃料、支燃性ガス、および助燃ガスの混合ガス)を燃焼させることで、火炎17が形成され、筒体18は、火炎17によって排ガスに含まれる有害ガスを燃焼分解(加熱分解)する燃焼室として機能する。
【0017】
図示はしないが、排ガス処理装置がプラズマ式排ガス処理装置の場合は、排ガス処理装置は、プラズマによって排ガスに含まれる有害ガスを加熱分解するプラズマ室として機能する筒体を有する。同様に、排ガス処理装置がヒータ式排ガス処理装置の場合は、排ガス処理装置は、排ガスを加熱するためのヒータが配置された加熱室として機能する筒体を有する。
【0018】
燃焼器12と筒体18との間には、水流フランジ20が設けられている。水流フランジ20によって、水が筒体18の内壁面に沿って流下し、筒体18の内壁面に水膜Aが形成される。本実施形態では、水流フランジ20が筒体18の内壁面全体に水膜Aを形成する水膜形成機構として機能する。しかしながら、水膜形成機構は、筒体18の内壁面全体に水膜Aを形成できる限り、水流フランジ20に限定されない。排ガス処理装置は、既知の水膜形成手段を有することができる。
【0019】
排ガスに含まれる有害ガスの加熱分解には1000℃以上の高温が好ましく、特に、1700℃以上の高温が好ましく、燃焼室として機能する筒体18内の温度はこの程度の温度に維持される。水膜Aの厚さは少なくとも0.5mm以上となるように、水流フランジ20からの水の供給量が調整される。厚さ0.5mm以上の水膜Aを形成することで、水膜Aにより断熱が施され、筒体18の温度は略常温(50℃以下)に保たれる。このような構成により、安価な材料(例えば、ステンレス鋼などの金属材料)を筒体18に用いることができる。なお、水流フランジ20における水温を30℃とすると、筒体18の出口における水温を数十℃以下に抑えることができる。
【0020】
筒体18の内壁面に水膜Aが形成されるので、火炎17によって燃焼処理(加熱分解処理)された有害ガスの反応副生成物である粉体が筒体18の内壁面に付着しない。具体的には、筒体18の内壁面に付着しようとする粉体は、水膜Aの水流により洗い流される。同様に、有害ガスの反応副生成物である酸性ガス(腐食性ガス)分子が筒体18の内壁面に付着しようとすると、水膜Aの水流により洗い流され、筒体18の内壁面を損傷しない。そのため、ステンレス鋼などの安価な金属材料を筒体18に用いても、内壁面に粉体が付着せず、酸性ガスによる腐食が生じないので、メンテナンスの手間とコストを大幅に低減出来る。
【0021】
筒体18の内壁面は、
図1の例では上流側から下流側に向かって内径が同一な直胴型であるが、上流側から下流側に向かって内径が縮小するコニカル型を用いてもよい。直胴型のメリットは、i)筒体18に溶接部を無くせるので水切れの可能性が少なくなる、ii)筒体18の製造加工が容易で製造コストを低減出来ることが挙げられる。また、コニカル型のメリットは、下細りになっているので水膜が形成し易い点にある。しかしながら、溶接部で水切れを起こさないようにするために溶接の技術力を要し、筒体18の製造コストが高くなる。
【0022】
図2は、水流フランジの構成の一例を示す模式図である。
図2に示す水流フランジ20は、環状の水溜め部24と、堰18aとを備えている。堰18aは水溜め部24の一部を構成している。堰18aの頂部を均一な高さとすることにより円筒状の筒体18の内壁面に沿って均質な膜厚の水膜Aを形成することができる。
【0023】
図1に戻り、排ガス処理装置は、さらに、処理部11の筒体18の下流側に配置され、該筒体18に連結される冷却部21と、水流フランジ20に供給される水を貯留する水槽25と、水槽25と連通し、排ガスの加熱分解処理によって発生する反応副生成物を捕集除去する水洗部31と、を備える。
【0024】
冷却部21は、処理部11で加熱分解処理されることで高温となった排ガスを冷却するために設けられる。冷却部21は、筒体18の開放端部(図示した例では、下端部)に連結され、水槽25の内部まで延びる連結配管22と、水槽25の内部で、且つ水槽25に貯留された水の上方を横方向に連結配管22から延びる冷却器23と、備える。連結配管22は、冷却器23を水槽25内の配置させるための構成要素である。冷却器23は、処理部11で加熱分解処理されて高温となった排ガスを冷却するための装置である。
【0025】
図1に示す冷却部21の連結配管22は、円筒形状を有し、その内径は、筒体18の下端部の内径と同一である。本実施形態では、連結配管22は、水槽25の上壁を貫通して鉛直方向に延びている。連結配管22と水槽25に形成された貫通部との間の隙間は、シール手段(例えば、溶接)によって封止されている。処理部11で加熱分解処理されて高温となった排ガスは、水膜Aを形成する水とともに連結配管22を通って冷却器23に導入される。
【0026】
上述した水流フランジ20によって筒体18の内壁面に形成された水膜Aは、連結配管22の内壁面にも形成され、冷却器23に流れ込む。連結配管22の内壁面にも形成された水膜Aによって、反応副生成物である粉体が冷却器23の内壁面に付着することが防止され、さらに、反応副生成物である酸性ガスが冷却器23の内壁面を損傷することが防止される。筒体18の内壁面を流れる水膜Aによって、筒体18は保護されているので、連結配管22を安価な樹脂材料によって形成することができる。このような樹脂材料の例としては、U-PVC(Unplasticized Polyvinyl Chloride),C-PVC(Chlorinated Polyvinyl Chloride)などのPVC材料が挙げられる。
【0027】
図1に示す冷却部21の冷却器23は、水槽25の内部で、連結配管22末端に連結された冷却配管27と、該冷却配管27に取り付けられたスプレー28と、を含む。連結配管22の末端は、水槽25に貯留された水の液面より上方に位置しており、冷却器23の冷却配管27は、水槽25の内部で、該水槽25に貯留された水に接触しないように連結配管22の末端に連結される。本実施形態では、冷却配管27は、水平方向に延びている。より具体的には、冷却配管27は、連結配管22の末端から、水槽25に連結された水洗部31に向かって水平方向に直線状に延びている。冷却配管27は、水槽25内に開口する排ガス出口30を有しており、冷却器23によって冷却された排ガスは水槽25内で、かつ水槽25に貯留された水の液面の上方に排出される。
【0028】
冷却配管27の延びる向きおよび方向は、冷却器23が水槽25内に配置され、且つ水槽25内の水と接触しない限り任意である。言い換えれば、冷却配管27は、水槽25内に配置され、且つ水槽25内の水の液面の上方を横方向に延びていればよい。例えば、冷却配管27は、その始端から後端まで下方または上方に若干傾斜して延びていてもよい。本明細書では、冷却配管27が水槽25内の水と接触しない範囲で、水槽25内を鉛直方向に対して斜めに延びることを「略水平方向に延びる」と称することがある。さらに、冷却配管27は、その始端から終端までの間に屈曲部を有していてもよい。ただし、冷却配管27は、連結配管22から直線状に、且つ水平方向に水槽25内を水洗部31に向かって延びているのが好ましい。この場合、冷却器23から排出された排ガスがスムーズに水洗部31に向かって導かれる。
【0029】
一実施形態では、反応副生成物である酸性ガスが溶けた酸性ミストが水洗部31に直接流れないように、冷却配管27の先端を、水洗部31から水平方向にずらしてもよい。さらに、冷却配管27を流れる水がスムーズに排出されるように、冷却配管27全体、または冷却配管27の先端部を斜め下方に向けてもよい。さらに、反応副生成物である酸性ガスが溶けた酸性ミスト、および反応副生成物である粉体を、水槽25内の水面に叩きつけて除去できるように、冷却配管27の先端に下方向に向くエルボを接続してもよい。
【0030】
図1に示すように、冷却器23のスプレー28は、冷却配管27内に水を噴霧するように構成されている。排ガス処理装置は、冷却器23のスプレー28に水を供給する水供給手段を備えるが、この水供給手段については後述する。
【0031】
スプレー28は、連結配管22と冷却配管27との連結部に配置され、冷却配管27を通る排ガスの流れ方向に沿って、水を冷却配管27内に散布する。スプレー28から噴霧された水により、冷却器23を通る排ガスの温度を低減させることができる。その結果、冷却器23および水槽25の両方を、安価な樹脂材料(例えば、上記したPVC材料)で形成することができる。
【0032】
なお、冷却配管27の内面の表面粗さを大きくして、濡れ性の向上を図ることで、処理部11から高温の排ガスが流れてきても、樹脂製の冷却配管27が焼損しないよう保護することもできる。
【0033】
上述したように、水洗部31は、排ガスの加熱分解処理によって発生する粉体および酸性ガスなどの反応副生成物を水洗にて捕集除去する装置である。
図1に示す水洗部31は、本体31cと、本体31c内に形成されたフィルタ31aおよび散水装置(スプレー)31bと、を備えている。本実施形態では、本体31cは、円筒形状を有する筒体として構成されており、フィルタ31aおよび散水装置31bは、本体31cの内部に形成された排ガスのガス流路に配置されている。
【0034】
一実施形態では、フィルタ31aを省略してもよい。さらに、図示はしないが、フィルタ31aの代わりに、またはこれに加えて、本体31cに粉体を捕集する充填剤を充填してもよい。
【0035】
水洗部31は、水槽25に連結されていて、水槽25に連通する。具体的には、水洗部31の本体31cに形成されたガス流路は、水槽25の上壁に形成された連結口を介して、水槽25の内部空間に連通する。冷却部21の冷却器23から排出された排ガスは、水槽25の内部空間を通って、水洗部31の本体31cに形成されたガス流路に導入される。
【0036】
水洗部31の本体31cに導入された排ガスに含まれる粉体は、フィルタ31aにより除去され、フィルタ31aによって除去された粉体などは散水装置31bの散水により下方に落下して水槽25に流入し、貯留される。加熱分解処理により無害化され、冷却部21で冷却され、水洗部31で水洗処理された処理済排ガスは配管32を介して大気中などに排気される。
【0037】
排ガス処理装置は、水槽25の内部空間に存在する空気の温度を検知可能な温度センサ26をさらに有している。このような温度センサ26の例としては、熱電対式温度センサが挙げられる。
【0038】
排ガス処理装置は、水槽25内に貯留された水を少なくとも水流フランジ20と水槽25との間で循環させる循環システム40をさらに備えている。本実施形態では、循環システム40は、水槽25内に貯留された水を、水流フランジ20だけでなく、冷却部21の冷却器23、および水洗部31の散水装置31bに供給し、これら水流フランジ20、冷却器23、および散水装置31bと、水槽25との間で循環させるように構成されている。
【0039】
図1に示す循環システム40は、水槽25から水流フランジ20、冷却器23、および散水装置31bのそれぞれまで延びる水供給ライン41と、水供給ライン41に配置されたポンプ42と、を備える。ポンプ42を駆動することにより、水槽25に貯留された水は、水流フランジ20、冷却器23、および散水装置31bに供給される。水槽25から水流フランジ20に供給された水は、処理部11の筒体18および冷却部21の連結配管22を介して冷却器23に流れ込み、冷却器23のスプレー28から噴霧された水と合流する。冷却器23の排ガス出口30からは、冷却された排ガスとともに、水流フランジ20および冷却器23のスプレー28に供給された水が水槽25内に排出される。本実施形態では、水槽25から冷却器23まで延びる水供給ライン41の一部と、ポンプ42とで、冷却器23に水を供給する水供給機構が構成される。
【0040】
一実施形態では、冷却器23のスプレー28を省略してもよい。上述したように、水流フランジ20から供給され、筒体18および連結配管22の内壁面に水膜Aを形成した水は、冷却器23に流れ込む。この水により、連結配管22および冷却配管27の内壁面も水で濡らされるため、水流フランジ20から供給される水によって、冷却器23を通る排ガスの温度を十分に低減できる場合は、スプレー28は必要がない。この場合、水膜形成機構として機能する水流フランジ20は、冷却器23に水を供給する水供給機構を兼ねる。この場合、冷却器2に水を供給する水供給機構は、水流フランジ20、水槽25から水流フランジ20に水を供給する水供給ライン41の一部、およびポンプ42によって構成される。
【0041】
水槽25から水洗部31の散水装置31bに供給された水は、水洗部31の本体31c内を落下して水槽25に戻される。このようにして、循環システム40によって、水槽25内に貯留された水が水流フランジ20、冷却器23、および散水装置31bと、水槽25との間で循環される。
【0042】
図示はしないが、水供給ライン41には、水流フランジ20、冷却器23、および散水装置31bのそれぞれに所定の流量の水を供給するための流量調整器(例えば、流量調整バルブ)が配置されている。水供給ライン41に、熱交換器(図示せず)を配置して、水流フランジ20、冷却器23、および散水装置31bのそれぞれに温度調整された水を供給してもよい。
【0043】
本実施形態では、循環システム40は、水供給ライン41から分岐する排水ライン44と、排水ライン44に配置された排水流量調整器として機能する排水バルブ45と、をさらに有する。排水バルブ45の開閉動作を制御することにより、循環システム40を循環する水の一部を排ガス処理装置から排出できる。さらに、排水バルブ45の開時間および/または開度を調整することで、排ガス処理装置から排出される水量を調整することができる。水洗部31の本体31c内には、市水などの清浄な水が供給される清浄水散水装置(清浄水スプレー)50が配置されており、排水ライン44から排出された水に応じた流量の水が、水洗部31の清浄水散水装置50を介して、水槽25に供給される。
【0044】
本実施形態に係る排ガス処理装置によれば、冷却部21の冷却器23が水槽25の内部に配置されているため、冷却器23が損傷しても、排ガスは冷却器23から水槽25内に漏洩する。したがって、安価な樹脂材料で冷却部21を形成しても、直ちに排ガス処理装置の外部に排ガスが漏洩することがない。その結果、安全に排ガスを処理することができる。
【0045】
さらに、冷却器23から排ガスが水槽25内に漏洩すると、水槽25内の空気の温度が上がる。そのため、温度センサ26の測定値を制御装置(図示せず)が監視することで、冷却器23からの排ガスの漏洩を早期に検知することができる。制御装置が、水槽25内の排ガスの漏洩を検知した際に警報を発することで、作業者は安全に排ガス処理装置を操作することができる。
【0046】
さらに、冷却器23を水槽25内に配置することで、冷却部が水槽の外部に配置されている従来の排ガス処理装置と比較して、装置の鉛直方向の大きさを低減することができる。その結果、装置の小型化が常に求められる近年の産業界の要請に応えることができる。
【0047】
図3は、冷却器の変形例を示す模式図である。
図3に示す冷却器23の冷却配管27は、その途中で内径が縮小する縮径部27aを有する。
図3に示す縮径部27aは、排ガスの流れ方向に沿った断面で見たときに、その内径が徐々に縮小し、その後、徐々に拡大する断面形状を有する。このような縮径部27aによって、冷却配管27内を流れる水と、排ガスとの接触効率が増大する。さらに、縮径部27aおよびその周辺で、冷却配管27内を流れる水と、排ガスとからなる混合流体の渦が発生することも期待できる。したがって、冷却配管27を通る排ガスに含まれる粉体および酸性ガスなどの反応副生成物の除去効率が向上し、水洗部31の負担を軽減することができる。その結果、水洗部31の散水装置31bから散布される水の量を軽減することができるので、排ガス処理装置のランニングコストを低減させることができる。
【0048】
図4は、他の実施形態に係る排ガス処理装置を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1を参照して説明した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
図4に示す排ガス処理装置は、処理部11で加熱分解処理されて高温となった排ガスを冷却するための冷却器23がエゼクタ29である点で、
図1を参照して説明された排ガス処理装置と異なる。
【0049】
図4に示すエゼクタ29は、水槽25に貯留される水を駆動流体として、処理部11の筒体18内部の気体(すなわち、空気および排ガス)を吸引するように構成されている。エゼクタ29に吸引された加熱分解処理後の排ガスは、エゼクタ29内で駆動流体である水と混合されて冷却される。同時に、排ガスに含まれる反応副生成物も、エゼクタ29内で駆動流体である水と撹拌混合されて効率よく除去される。その結果、水洗部31の負担が大幅に軽減され、排ガス処理装置31のランニングコストが低減される。本実施形態では、エゼクタ29が排ガスを冷却する冷却器23であり、エゼクタ29に水を供給する水供給機構は、水槽25からエゼクタ29に延びる水供給ライン41の一部と、ポンプ42とによって構成される。
【0050】
エゼクタ29に供給される水の流量を調整することで、筒体18内の圧力(負圧)を制御することができる。したがって、冷却器23がエゼクタ29であることで、筒体18内の負圧を一定に保つことができ、その結果、火炎17の状態が安定し、効率よく排ガスに含まれる有害ガスを加熱分解処理することができる。
【0051】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0052】
11 処理部
12 燃焼器
17 火炎
18 筒体
20 水流フランジ(水膜形成機構)
21 冷却部
22 連結配管
23 冷却器
25 水槽
26 温度センサ
27 冷却配管
28 スプレー(水供給機構)
29 エゼクタ
30 排ガス出口
31 水洗部
31a フィルタ
31b 散水装置
31c 本体
40 循環システム
41 水供給ライン
42 ポンプ
44 排水ライン
45 排水バルブ