(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171383
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及びその製造方法、液体吐出ユニット、並びに液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20241205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/14 613
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088349
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】知場 亮太
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA05
2C056HA16
2C056HA17
2C057AF65
2C057AF68
2C057AG44
2C057AP02
2C057AP13
2C057AP14
2C057AP25
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】耐膨潤性及び剥離強度に優れる樹脂層を有する液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドであって、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドであって、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂が、多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、及びジシクロペンタジエンジメタノールのポリグリシジルエーテル化合物から選ばれる少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記(B)エピスルフィド樹脂が、芳香環及び脂環構造の少なくともいずれかを有する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記(C)ポリチオール化合物が、チオール基を4個以上有する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかが、アルキルシラン構造を有する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記樹脂層における前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量を100.0質量部としたとき、前記樹脂層における前記(D)の含有量は、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下である、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを有することを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、及び前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれかと、前記液体吐出ヘッドとが一体化した、請求項7に記載の液体吐出ユニット。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記第1の部材に、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物を付与する付与工程と、
前記第1の部材と、前記第2の部材とを、前記樹脂組成物を介して貼り合わせる貼合工程と、
前記樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する硬化工程と、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層における前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量を100.0質量部としたとき、前記樹脂層における前記(D)の含有量は、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量に対して、1.0質量部以上10.0質量部以下である、請求項10に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及びその製造方法、液体吐出ユニット、並びに液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記液体吐出ヘッド(以下、「インクジェットヘッド」とも称することがある)は、インク滴を吐出するノズルと、当該ノズルが連通する液室(「加圧室」、「吐出室」、「圧力室」、「加圧液室」とも称することがある)と、当該液室内のインクを加圧する圧力発生手段(「駆動手段」又は「エネルギー発生手段」とも称することがある)とを備えている。
前記液体吐出ヘッドは、前記圧力発生手段を駆動することで前記液室内インクを加圧し、前記ノズルからインク滴を吐出させるものである。当該液体吐出ヘッドは、当該液室等の流路を形成するための流路基板と、ノズルを有するノズル板とを接合して形成される。
【0003】
前記液体吐出ヘッドを構成する部材の接合には、湿式の接着剤やフィルム接着剤等を用いる接着剤接合、液室基板やノズル板がシリコーン基板である場合は、直接接合や金属材料を介した共晶接合、液室基板やノズル板に金属材料を用いた場合は、陽極接合などが行われている。
当該接着に用いられる接着剤としては、例えば、耐薬品性、耐インク性等が良好な接着剤を提供する目的で、特定のイミダゾール、及びエポキシ基を有する化合物を含有する接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、UVインクに対して優れた耐性を有する接着剤を提供する目的で、エポキシノボラック及びアミンを含むエポキシ樹脂混合物を含有する接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、初期接着性及び接着信頼性を備える液体吐出ヘッドに用いられる樹脂組成物として、特定のエポキシ化合物、ポリチオール化合物、及び特定のイミダゾール化合物を含有する樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、耐膨潤性及び剥離強度に優れる樹脂層を有する液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体吐出ヘッドは、以下の通りである。即ち、
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドであって、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、耐膨潤性及び剥離強度に優れる樹脂層を有する液体吐出ヘッドを提供することができる。即ち、耐膨潤性及び剥離強度に優れる樹脂層を有する液体吐出ヘッドは、当該樹脂層が膨潤しにくいため吐出安定性に優れるとともに、当該樹脂層が剥離しないため長期使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるA部の一例を示す拡大概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるA部の他の一例を示す拡大概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の液体吐出ヘッドの他の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の液体吐出ヘッドのさらに他の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明に関する画像形成装置の機構部の一例を示す概略側面図である。
【
図8】
図8は、本発明に関する画像形成装置の機構部の一例を示す概略平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の液体吐出ユニットの一例を示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般的に、2つの部材を接合する場合には、部品精度を保ちつつ、接着信頼性の高い接合を実現する必要がある。液体吐出ヘッドの場合、流路基板とノズル板との接着部は、吐出における高周波(数kHz)の圧力変動の影響を受ける部材からなり、インク吐出時の圧力によって当該接着部の劣化が進みやすいことが知られている。また、近年、紙媒体以外の様々な用途のインクが開発されており、当該インクには、溶解性の高い溶媒(例えば、N-メチルピロリドンなど)が多く含まれている場合がある。溶解性の高い溶媒が多く含まれるインクは、液体吐出ヘッドにおける接着部と基材との接合界面に対して浸食するため、当該接着部が剥離することがある。
即ち、上述の特許文献1~3に記載された発明を含む、従来技術の吐出ヘッドにおける接着剤(樹脂層)は、インクとの接触によって劣化や剥離が生じるという懸念点があった。
【0009】
上述の特許文献1~3に記載された発明を含む、従来技術の吐出ヘッドにおける接着剤は、液室内のインクと接触することによって膨潤する場合がある。即ち、当該接着剤の膨潤が生じると、ヤング率が低下し、液室内が減圧することによって吐出不良が生じるという懸念点もあった。
【0010】
本発明者らが鋭意検討したところ、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことによって、耐膨潤性及び剥離強度に優れる樹脂層を有する液体吐出ヘッドが得られることを知見した。
【0011】
以下に、本発明の詳細を記載する。
【0012】
(液体吐出ヘッド)
本発明の液体吐出ヘッドは、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、かつ前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有し、必要に応じて、その他の部材を有していてもよい。
【0013】
<樹脂層>
前記樹脂層は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかを含有する樹脂組成物の硬化物を含み、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。前記樹脂層は、前記樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を含む。
なお、本明細書において、「(A)エポキシ樹脂」は、「(A)成分」又は「(A)」と称されることがあり、「(B)エピスルフィド樹脂」は、「(B)成分」又は「(B)」と称されることがあり、「(C)ポリチオール化合物」は、「(C)成分」又は「(C)」と称されることがあり、「(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれか」は、「(D)成分」又は「(D)」と称されることがある。
【0014】
<<(A)エポキシ樹脂>>
前記(A)エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、公知のエポキシ樹脂を使用することができ、例えば、単核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物、多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物、脂肪族、芳香族、又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル化合物、グリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、環状オレフィン化合物のエポキシ化合物、エポキシ化共役ジエン重合体、複素環化合物などが挙げられる。
これらの(A)エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
―単核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物―
前記単核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物における単核多価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノールなどが挙げられる。
【0016】
―多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物―
前記多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニレン-フェノール付加型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
当該ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
当該ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、ビスフェノールAノボラックのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
―多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物―
前記多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物における多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、ネオペンチルグリコール、ジシクロペンタジエンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0018】
―脂肪族、芳香族、又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル化合物―
前記脂肪族、芳香族、又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル化合物における多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0019】
―グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物―
前記グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン、N,N,N’,N’-テトラ(2,3-エポキシプロピル)-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2-メチルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3,4,6-テトラグリシジルグリコールウリル等のグリシジルアミノ化合物などが挙げられる。
【0020】
―環状オレフィン化合物のエポキシ化合物―
前記環状オレフィン化合物のエポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物などが挙げられる。
【0021】
―エポキシ化共役ジエン重合体―
前記エポキシ化共役ジエン重合体としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物などが挙げられる。
【0022】
―複素環化合物―
前記複素環化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0023】
これらの(A)エポキシ樹脂の中でも、金属表面への接着性に優れる観点から、多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、及びジシクロペンタジエンジメタノールのポリグリシジルエーテル化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0024】
インクの浸透性を抑制して前記樹脂層の膨潤を抑制するためには、前記(A)エポキシ樹脂の親水性を低減させて三次元架橋を増やす必要がある。そのため、膨潤に対してはグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物や、ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物が好ましい。ただし、部材への濡れ性や吸着性の面を考慮する必要があり、複数の混合物としてもよい。官能基当量が小さく架橋密度が大きいほうが高弾性な樹脂構成となり得るが、インクに対する膨潤や水素結合の切断もあるため、適切に混合して使用することが可能である。
【0025】
前記(A)エポキシ樹脂は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの、又は多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものであってもよい。
【0026】
前記(A)エポキシ樹脂の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、樹脂組成物からなる樹脂層全量に対して30質量部以上90質量部以下が好ましい。
当該(A)エポキシ樹脂の含有量が、樹脂組成物からなる樹脂層全量に対して30質量部以上であると、必要な架橋密度が得られるため好適である。当該(A)エポキシ樹脂の含有量が、樹脂組成物からなる樹脂層全量に対して90質量部以下であると、硬化収縮による応力を低減することができるため好適である。
【0027】
前記(A)エポキシ樹脂におけるエポキシ当量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、付加反応型の硬化剤の活性水素当量と1:1等量で合わせ易く、またそうすることで高架橋密度によりインクに対する膨潤率が低くなるという観点から、50以上500以下が好ましい。
なお、当該エポキシ当量の測定方法は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、JIS K7236:2001に記載の方法によって測定することができる。
【0028】
上記(A)エポキシ樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該(A)エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、商品名で、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-321、デナコールEX-411、デナコールEX-421、デナコールEX-512、デナコールEX-521、デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-830、デナコールEX-832、デナコールEX-841、デナコールEX-861デナコールEX-920、デナコールEX-931、デナコールEX-201、デナコールEX-711、デナコールEX-721(以上、ナガセケムテックス社製)、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P(以上、共栄社化学株式会社製)、アデカレジンEP-3900S、アデカレジンEP-3950S、アデカレジンEP-4088S、アデカレジンEP-4088L、アデカレジンEP-4080E、アデカレジンEP-4000、アデカレジンEP-4005、アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4901(以上、ADEKA社製)、オグソールPG-100、オグソールEG-200、オグソールEG-210、オグソールEG-250(以上、大阪ガスケミカル株式会社製)、YDシリーズ、YDFシリーズ、YDPNシリーズ、TDCNシリーズ(以上、新日鉄住金化学株式会社製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081(以上、ダイセル社製)、TECHMORE VG-3101L(プリンテック社製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、XD-1000、NC-3000、NC-3500、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、NC-7000L(以上、日本化薬株式会社製)、YX8800(三菱ケミカル株式会社製)、HP4032、HP4032D、HP4700(以上、DIC株式会社製)、TETRAD-C、TETRAD-X(以上、三菱ガス化学株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
<<(B)エピスルフィド樹脂>>
前記(B)エピスルフィド樹脂としては、エピスルフィド環を有していれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)エポキシ樹脂における酸素原子の一部又は全部を硫黄原子に置き換えた樹脂などが挙げられる。
前記(B)エピスルフィド樹脂としては、例えば、鎖状脂肪族エピスルフィド樹脂、脂環式エピスルフィド樹脂、芳香族エピスルフィド樹脂などが挙げられる。
これらの(B)エピスルフィド樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、(B)エピスルフィド樹脂は、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。
【0030】
―鎖状脂肪族エピスルフィド樹脂―
前記鎖状脂肪族エピスルフィド樹脂の具体例としては、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3エピチオプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3,6-トリチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1-(2,3ーエピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,1,1-トリス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンなどが挙げられる。
【0031】
―脂環式エピスルフィド樹脂―
前記脂環式エピスルフィド樹脂の具体例としては、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、2,2-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシ)シクロヘキシル)メタン、4,8-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシメチル)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシメチル)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,8-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシメチル)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシ)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシ)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,8-ビス(4-(2,3-エピチオプロポキシ)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、1,1,1-トリス-(4-(2,3-エピチオプロポキシ)シクロヘキシル)エタン、1-(2-(2,3-エピチオプロポキシ)シクロヘキシル)-1,1-ビス-(4-(2,3-エピチオプロポキシ)シクロヘキシル)エタン、1,1,2,2-テトラキス-(4-(2,3-エピチオプロポキシ)シクロヘキシル)エタンなどが挙げられる。
【0032】
―芳香族エピスルフィド樹脂―
前記芳香族エピスルフィド樹脂の具体例としては、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2-ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ビフェニルなどが挙げられる。
【0033】
前記(B)エピスルフィド樹脂としては、耐液性及び耐膨潤性に優れた硬化物が得られる観点から、芳香環または脂環構造を有することが好ましい。即ち、前記(B)エピスルフィド樹脂としては、耐液性及び耐膨潤性に優れた硬化物が得られる観点から、脂環式エピスルフィド樹脂、及び芳香族エピスルフィド樹脂が好ましい。
【0034】
前記(B)エピスルフィド樹脂の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、前記樹脂層における前記(A)成分及び後述する(C)成分の総含有量を100質量部としたとき、前記樹脂層における前記(A)成分及び後述する(C)成分の総含有量に対して、10質量部以上300質量部以下が好ましく、20質量部以上200質量部以下がより好ましく、30質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。
当該(B)エピスルフィド樹脂の含有量が、前記樹脂層における前記(A)成分及び後述する(C)成分の総含有量に対して、10質量部以上であると耐膨潤性が良好となるため好適である。
当該(B)エピスルフィド樹脂の含有量が、前記樹脂層における前記(A)成分及び後述する(C)成分の総含有量に対して、300質量部以下であると剥離強度が良好となるため好適である。
【0035】
前記(B)エピスルフィド樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記(B)エピスルフィド樹脂の合成方法としては、特に限定されるものではないが、前記(A)エポキシ樹脂の酸素原子を、チオシアン酸カリウム等の触媒を用いて硫黄原子に置き換えることによって容易に得ることができる。
前記(B)エピスルフィド樹脂の市販品としては、例えば、商品名で、水添ビスフェノールA-ビスエピスルフィド(田岡化学工業株式会社)などが挙げられる。
【0036】
<<(C)ポリチオール化合物>>
前記(C)ポリチオール化合物は、硬化剤として作用する化合物である。
前記(C)ポリチオール化合物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、脂肪族ポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物、エーテル結合を有するポリチオール化合物、エステル結合を有するポリチオール化合物、その他特殊構造を有するポリチオール化合物などが挙げられる。これらの(C)ポリチオール化合物を、エポキシ化合物で付加変性したものも使用することができる。
【0037】
前記(C)ポリチオール化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-1,3,4,6-テトラアザオクヒドロペンタレン-2,5-ジオン、1,3,5-トリス(3-メルカプトプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、1,1,5,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3-チアペンタン、1,1,6,6-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3,4-ジチアヘキサン、2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、3-メルカプトメチルチオ-1,7-ジメルカプト-2,6-ジチアヘプタン、3,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,9-ジメルカプト-2,5,8-トリチアノナン、3-メルカプトメチルチオ-1,6-ジメルカプト-2,5-ジチアヘキサン、1,1,9,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-5-(3,3-ビス(メルカプトメチルチオ)-1-チアプロピル)3,7-ジチアノナン、トリス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、テトラキス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、3,5,9,11-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,13-ジメルカプト-2,6,8,12-テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,19-ジメルカプト-2,6,8,12,14,18-ヘキサチアノナデカン、9-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,16-ジメルカプト-2,5,7,10,12,15-ヘキサチアヘキサデカン、8-[ビス(メルカプトメチルチオ)メチル]-3,4,12,13-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,15-ジメルカプト-2,5,7,9,11,14-ヘキサチアペンタデカン、4,6-ビス[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-6-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチアン、1,1-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル]-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、1,5-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-2,4-ジチアペンタン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、9-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,4,6,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,7-ビス[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-1,9-ジメルカプト-2,4,6,8-テトラチアノナン、4,6-ビス{3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-5-メルカプト-2,4-ジチアペンチルチオ}-1,3-ジチアン、4,6-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-6-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4,5-ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-1,3-ジチオラン、4-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、2-{ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メチル}-1,3-ジチエタン、2-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、4,5-ビス{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-1,3-ジチオラン、4-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-5-[1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)-4-メルカプト-3-チアブチルチオ]-1,3-ジチオラン、2-{ビス[4-(5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラニル)チオ]メチル}-1,3-ジチエタン、4-[4-(5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラニル)チオ]-5-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-1,3-ジチオランなどが挙げられる。
【0038】
前記(C)ポリチオール化合物としては、樹脂組成物の硬化性、及び樹脂組成物を硬化してなる硬化物の架橋点が多く、耐インク性に優れる観点から、チオール基を4個以上有することが好ましい。
【0039】
前記(C)ポリチオール化合物の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、前記(A)成分のエポキシ基1当量に対して、チオール基0.2当量以上2.0当量以下が好ましく、0.8当量以上1.2当量以下がより好ましく、0.9当量以上1.1当量以下がさらに好ましい。
前記(C)ポリチオール化合物の含有量が、前記(A)成分のエポキシ基1当量に対して、チオール基0.2当量以上であると、低温硬化性が良好となるため好適である。
前記(C)ポリチオール化合物の含有量、前記(A)成分のエポキシ基1当量に対して、チオール基2.0当量以下であると、樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性及び耐液性が良好となるため好適である。
【0040】
前記(C)ポリチオール化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該(C)ポリチオール化合物の市販品としては、例えば、商品名で、TS-G(多官能チオール系エポキシ樹脂硬化剤・架橋剤)(四国化成工業株式会社製)、DPMP(ジペンタエリトリトールの3-メルカプトプロピオン酸エステル)、PEMP(2,2-ビス[[(3-メルカプトプロピオニル)オキシ]メチル]トリメチレン ビス[3-メルカプトプロピオネート])(以上、SC有機化学株式会社製)、PETG(ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート)(淀化学株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
<<(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれか>>
前記(D)成分としての疎水化処理された酸化チタン、及び/又は疎水化処理されたアルミナを得るための疎水化処理は、乾式法;溶剤系、水系、溶剤・水混合系等の溶媒を用いる湿式法;メカノケミカル法などの公知の方法で行うことができる。具体例としては、疎水性有機処理剤をトルエンやアルコール等の有機溶剤に溶解して、原料である酸化チタン及び/又はアルミナと十分に混合し、有機溶剤を蒸留等の方法で除去後、加熱処理して解砕する等の方法で行うことができる。
当該疎水性有機処理剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等のアルキルシリル処理剤が好ましい。換言すると、前記(D)成分としては、アルキルシラン構造を有する酸化チタン、及びアルキルシラン構造を有するアルミナから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
なお、前記(D)成分としては、液体吐出ヘッド使用後においても優れた耐膨潤性、及び剥離強度が得られる観点からアルキルシラン構造を有する酸化チタンが好ましい。
【0042】
前記酸化チタン及び/又はアルミナの疎水化処理量は、疎水性有機処理剤の種類に応じて適宜調整することができるが、疎水化処理後の酸化チタン及び/又は疎水化処理後のアルミナの総量100質量部としたとき、当該総量に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。
前記酸化チタン及び/又はアルミナの疎水化処理量は、疎水化処理後の酸化チタン及び/又は疎水化処理後のアルミナの総量100質量部としたとき、当該総量に対して80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0043】
前記(D)成分の平均一次粒子径は、原料となる前記酸化チタン及び/又はアルミナの平均一次粒子径と実質的に同じである。
当該(D)成分の最大粒子径としては、1μm以下の膜厚の接着も可能になるという観点から、0.1μm以上1.0μm以下が好ましい。当該(D)成分の最大粒子径の測定方法としては、特に制限されないが、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0044】
前記(D)成分の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、前記樹脂層における前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の総含有量を100質量部としたとき、当該総含有量に対して0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上7質量部以下であることがさらに好ましい。
前記(D)成分の含有量が、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の総含有量に対して、0.1質量部以上であると樹脂組成物の保存安定性、及びインク浸漬後の剥離強度が良好となるため好ましい。
前記(D)成分の含有量が、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の総含有量に対して、20質量部以下であると樹脂組成物の硬化性、並びに樹脂組成物から得られる硬化物の耐膨潤性、及びインク浸漬前後の剥離強度が良好となるため好ましい。
【0045】
前記(D)成分としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該(D)成分としての疎水化処理酸化チタンの市販品としては、例えば、商品名で、AEROXIDE T805、AEROXIDE NKT90(以上、エボニック社製)、STシリーズ(チタン工業株式会社製)、TAFシリーズ(アナターゼ型)(富士チタン工業株式会社製)、JMTシリーズ(テイカ株式会社製)、IT-Sシリーズ(石原産業株式会社製)などが挙げられる。当該(D)成分としての疎水化処理アルミナの市販品としては、例えば、AEROXIDE AluC805(エボニック社製)などが挙げられる。
【0046】
<<その他の成分>>
本発明における樹脂組成物には、前記(A)~(D)成分以外に、その他の成分が含まれていてもよい。当該その他の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、硬化触媒などが挙げられる。
【0047】
―硬化触媒―
前記硬化触媒としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、イミダゾール類、イミダゾール塩類、アミン類、4級アンモニウム塩類、ウレア類、三フッ化硼素とアミン類やエーテル化合物等との錯化合物、活性水素を1個以上有するアミン化合物のポリエポキシ化合物及び/又はイソシアネート付加物、あるいはこれらにフェノール樹脂を組み合わせて得られるアミン系潜在性硬化剤などが挙げられる。
【0048】
前記ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0049】
前記ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスフォニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0050】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-{3-〔(3-トリメトキシシリル)プロピルアミノカルボニルアミノ〕プロピル}-2-メチルイミダゾール、1-〔3-トリメトキシシリルプロピルアミノメチル〕-4-メチルイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリルプロピル)〕イミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリルプロピル)〕イミダゾールなどが挙げられる。
【0051】
前記イミダゾール塩類としては、例えば、前記イミダゾール類と、トリメリット酸、イソシアヌル酸、硼素等との塩などが挙げられる。
【0052】
前記アミン類としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。
【0053】
前記4級アンモニウム塩類としては、例えば、トリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0054】
前記ウレア類としては、例えば、3-(p-クロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア、イソホロンジイソシアネート-ジメチルウレア、トリレンジイソシアネート-ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0055】
前記アミン系潜在性硬化剤を提供し得る、活性水素を1個以上有するアミン化合物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、アルキレンジアミン類、ポリアルキルポリアミン類、脂環式ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、グアナミン類、イミダゾール類、ジヒドラジド類などが挙げられる。
【0056】
当該アルキレンジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0057】
当該ポリアルキルポリアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミンなどが挙げられる。
【0058】
当該脂環式ポリアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)スルフォン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミンなどが挙げられる。
【0059】
当該芳香族ポリアミン類としては、例えば、m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミンベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0060】
当該グアナミン類としては、例えば、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどが挙げられる。
【0061】
当該イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-アミノプロピルイミダゾールなどが挙げられる。
【0062】
当該ジヒドラジド類としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0063】
前記アミン系潜在性硬化剤を提供し得る、活性水素を1個以上有するアミン化合物としては、上記の他にも、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルアミン、N,N-ジエチルアミノエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミノエチルアミン、N,N-ジアリルアミノエチルアミン、N,N-ベンジルメチルアミノエチルアミン、N,N-ジベンジルアミノエチルアミン、N,N-シクロヘキシルメチルアミノエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルアミノエチルアミン、N-(2-アミノエチル)ピロリジン、N-(2-アミノエチル)ピペリジン、N-(2-アミノエチル)モルホリン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジエチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルアミノプロピルアミン、N,N-ジアリルアミノプロピルアミン、N,N-ベンジルメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジベンジルアミノプロピルアミン、N,N-シクロヘキシルメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジシクロヘキシルアミノプロピルアミン、N-(3-アミノプロピル)ピロリジン、N-(3-アミノプロピル)ピペリジン、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、N-(3-アミノプロピル)ピペラジン、N-(3-アミノプロピル)-N’-メチルピペリジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンジルアミン、4-(N,N-ジエチルアミノ)ベンジルアミン、4-(N,N-ジイソプロピルアミノ)ベンジルアミン、N,N,-ジメチルイソホロンジアミン、N,N-ジメチルビスアミノシクロヘキサン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N’-エチル-N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N’-エチル-N,N-ジメチルプロパンジアミン、N’-エチル-N,N-ジベンジルアミノプロピルアミン、N,N-(ビスアミノプロピル)-N-メチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルエチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルプロピルアミン、N,N-ビスアミノプロピルブチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルペンチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルヘキシルアミン、N,N-ビスアミノプロピル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ビスアミノプロピルシクロヘキシルアミン、N,N-ビスアミノプロピルベンジルアミン、N,N-ビスアミノプロピルアリルアミン、ビス〔3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3-(N,N-ジイソプロピルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3-(N,N-ジブチルアミノプロピル)〕アミンなどを使用することもできる。
【0064】
前記アミン系潜在性硬化剤を提供し得るエポキシ化合物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、単核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物、多核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、脂肪族、芳香族、又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル化合物、グリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、環状オレフィン化合物のエポキシ化合物、エポキシ化共役ジエン重合体、複素環化合物などが挙げられる。
【0065】
当該単核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノールなどが挙げられる。
【0066】
当該多核多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどが挙げられる。
【0067】
当該多価アルコールのポリグリシジルエーテルにおける多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-アルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0068】
当該脂肪族、芳香族、又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル化合物における多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0069】
当該グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジンなどが挙げられる。
【0070】
当該環状オレフィン化合物のエポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
【0071】
当該エポキシ化共役ジエン重合体としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物などが挙げられる。
【0072】
当該複素環化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0073】
前記アミン系潜在性硬化剤を提供し得るポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0074】
当該芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0075】
当該脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トランス-1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0076】
当該脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、(2,4,4)-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0077】
前記アミン系潜在性硬化剤を提供し得るポリイソシアネート化合物としては、上記の他にも、前記ジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物、前記ジイソシアネートのビューレット三量化物、前記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト化物、トリフェニルメタントリイソシアネート、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネートなどが挙げられる。
【0078】
これらのイソシアネート化合物は、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等されていてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートであってもよい。
【0079】
前記アミン系潜在性硬化剤を提供し得るフェノール樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリスフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮合ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環、及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核、及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物などが挙げられる。
【0080】
前記硬化触媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記樹脂組成物における硬化触媒の含有量は、樹脂成分(前記(A)成分~前記(C)成分)の総量に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0081】
本発明における樹脂組成物には、前記硬化触媒以外にも、その他の成分として、アミノシラン化合物、メルカプトシラン化合物、シランカップリング剤、反応性または非反応性の希釈剤(可塑剤)、充填剤または顔料、潤滑剤、増粘剤、チキソトロピック剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、消泡剤、防錆剤、添加物、粘着性樹脂類を含有されていてもよい。
【0082】
当該アミノシラン化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどが挙げられる。
【0083】
当該メルカプトシラン化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0084】
当該シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン化合物などが挙げられる。
【0085】
当該反応性又は非反応性の希釈剤(可塑剤)としては、例えば、モノグリシジルエーテル類、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタールなどが挙げられる。
【0086】
当該充填剤又は顔料としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質などが挙げられる。
【0087】
当該潤滑剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテルなどが挙げられる。
【0088】
当該添加物としては、公知のものを使用することができ、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナなどが挙げられる。
【0089】
当該粘着性樹脂類としては、例えば、キシレン樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
【0090】
前記樹脂組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分、更に必要に応じて、その他の成分を常法により混合することにより製造することができる。
【0091】
本発明における樹脂組成物の用途としては、特に制限はなく種々の用途に用いることができ、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、コーティング剤、繊維集束剤、建築材料、電子部品等の広範な用途に使用できるものであるが、とりわけ、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤や接着剤、コピー機あるいは印刷機等の電気機器用の接着剤などの電子機器用途に、特に好適に使用することができる。
【0092】
前記樹脂層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、0.5μm以上3.0μm以下が好ましく、0.8μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。当該樹脂層の平均厚みを0.5μm以上とすることで、液体吐出ヘッドの使用前後において優れた剥離強度が得られるため好適である。当該樹脂層の平均厚みが3.0μm以下であることにより、液体吐出ヘッド使用後における剥離強度が良好となるため好適である。
前記樹脂層の平均厚みは、接着した部品をエポキシ樹脂にて埋包し、研磨機にて希望の断面が観察できるように加工して測定することができる。観察には、例えば、電子顕微鏡(SEM:Scanning Electro Microscope)を使用することができる。
【0093】
前記樹脂層が、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分を含むことは、例えば、熱分解GC/MS法、GC/TOFMSにて主な骨格を把握し、更にFTIR法、NMR法を用いることで、構造と官能基の情報を加味することにより分析することができる。
以下に、熱分解GC/MS法による樹脂層分析の条件を記載する。本手法は微量の試料を高温化に直接さらすことで、瞬間的に熱分解させ、その際に発生するガス成分をGC/MS装置に導き、分析する。なお、一例として以下に分析条件を記載するが、以下の条件に限定されるものではない。分析条件は分析物の組成や状態に応じて随時変更し、最適な条件を検討しながら分析を行うことができる。
-装置構成・測定条件-
・GC/MS装置:島津製作所製QP-5000
・熱分解装置:フロンティア・ラボ社製Py-2020D
・評価条件
・加熱温度 300℃
・カラム UA5 L=30m I.D=0.25mm Film=0.25μm
・カラム昇温 50℃~350℃(20℃/min 昇温)
・イオン化法 EI法 (70eV)
・Split 1:100
【0094】
また、GC/MS測定は、ライブラリ検索による構造推定が主たる解析手段となるため、検索するデータベースに登録されていない物質に関しては解析が困難となる。そこで、GC-MSにおいて構造の推定ができなかった成分の構造解析を行うため、分子あるいはフラグメントの精密質量情報が得られるGC-TOFMS測定を行うこともできる。
また、分子イオンの観測が容易となる化学イオン化法(CI法)による精密質量測定も併せて行うことができる。
-装置構成・測定条件-
・GC/TOFMS:Waters GCT Premier
・カラム:DB5-MS(30m × 0.25mm,0.25μm)
・昇温条件:50℃(1min)→10℃/min→320℃(10min)
・キャリアガス:He、1.0mL/min(定流量)
・注入方式:スプリット50:1
・注入口:280℃
【0095】
「CIイオン化条件」
・イオン化法:PCI法(メタン、イソブタン、ガスなし)
・電子エネルギー:40eV
・イオン化電流:200μA
【0096】
これらの情報に加えて、一般的な化学分析に用いられるATR法を用いたFT-IR分析、ラマン分光分析や、13C、1H、14N、33S-NMR分析より得られた官能基情報や元素比率を合わせることで、前記樹脂層が、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分を含むことを分析することができ、このことから、前記樹脂層が、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことを証明することができる。
【0097】
<第1の部材>
前記第1の部材としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、液体を吐出するノズル孔が形成されたノズル板であることが好ましい。
当該ノズル板は、ノズル板と、前記ノズル板上に形成される撥水膜とを有していてもよい。
当該ノズル板は、その形状、大きさ、及び構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
当該ノズル板の材質としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb2O5、Ni、NiCr、NiPd、PtW、Si、SiO2、Sn、Ta2O5、Ti、W、ZAO(ZnO+Al2O3)、Znなどが挙げられる。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記吐出孔としては、その数、配列、間隔、開口形状、開口の大きさ、開口の断面形状などについては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
【0098】
<第2の部材>
前記第2の部材としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記吐出孔と連通する流路を有する流路板であることが好ましい。
前記第1の部材および前記第2の部材を、前記樹脂層を介して接合することによって個別液室が形成される。即ち、本発明においては、前記第1の部材と前記第2の部材との間に樹脂層を有する。
【0099】
前記第1の部材及び第2の部材の少なくともいずれか一方の前記樹脂層と接する表面が、処理層を有していてもよい。当該処理層はSiを含む酸化物であり、当該酸化物が、前記第1の部材及び第2の部材のいずれかに対して不動態層を形成する遷移金属を含むことが好ましい。
前記処理層は、第4族及び第5族から選択される遷移金属を少なくとも1種含有することが好ましく、Hf、Ta、及びZrから選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。Hf、Ta、及びZrのうち、少なくとも1種以上をSiO2膜に導入すると、それらの遷移金属種は非常に強くOと結合し、不動態層を形成する。このとき、膜の充填性向上に加えて、酸性、アルカリ性両方の液体に接触した際の腐食反応を強く抑制することができる。これにより、酸性やアルカリ性の液体に耐性をもった酸化物を形成でき好適である。
【0100】
前記処理層に含まれるSi量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、17at%以上であることが好ましく、20at%以上であることがより好ましい。前記処理層に含まれるSi量が17at%以上であることで、完全な透明膜を作ることができ好適である。
前記処理層に含まれる遷移金属量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、2at%以上であることが好ましく、3.5at%以上13.5at%以下であることがより好ましい。前記処理層に含まれる遷移金属量が2at%以上であることで、処理層の密度が向上し、液体への耐性が向上するため好適である。また、処理層は欠陥が少なく、かつ充填率の高い構造をとることができるため、インクへの耐性を獲得し易くなり好適である。
前記処理層に含まれるSi量、及び遷移金属量の測定方法としては、XPSなどによって測定することができる。
【0101】
前記処理層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、10nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましい。前記処理層の平均厚みが10nm以上であることにより、前記第1の部材、及び前記第2の部材に欠陥があった場合、その欠陥部を十分に覆うことができ好適である。
前記処理層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、200nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。前記処理層の平均厚みが200nm以下であることにより、圧力発生手段の動作に影響を与えるといった問題を解消することができ好適である。
前記処理層の平均厚みの測定方法としては、例えば、白色干渉計によって測定することができる。
【0102】
接着強度を高める観点から、前記第1の部材、及び前記第2の部材に対して表面処理を行ってもよい。前記第1の部材及び前記第2の部材が金属である場合、当該金属と樹脂組成物からなる樹脂層とを共有結合で結合させるには、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤を使用することが効果的である。接着される金属部材表面に対してカップリング剤を直接処理してもよいし、カップリング剤の結合性を高める表面処理を行ってからカップリング処理をしてよい。
【0103】
当該シランカップリング剤としては、上述の<<その他の成分>>に記載のものを使用してもよいし、それ以外のものを使用してもよい。前記第1の部材及び前記第2の部材に対して表面処理を行うシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(1,3-ジメチル-ブチリデン)-プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N-(2-(ビニルベンジンアミノ)エチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、1,2-エタンジアミン,N-{3-(トリメトキシシリル)プロピル}-N-{(エテニルフェニル)メチル}誘導体・塩酸塩、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
当該シランカップリング剤の有機性基に関してはエポキシ樹脂と反応する官能基を有するものが好ましく、上記のカップリング剤はその一例である。これらは、信越化学工業株式会社、東レダウコーニング社、チッソ社などから購入可能である。
【0104】
当該チタネート系カップリング剤、及び当該アルミネート系カップリング剤としては、例えば、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム-i-プロポキシオクチレングリコレート、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ポリ(ジ-i-プロポキシ・オキシチタン)、ポリ(ジ-n-ブトキシ・オキシチタン)、ジ-n-ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
前記チタネート系カップリング剤、及び当該アルミネート系カップリング剤は、無機表面に高分子有機被膜を形成し、樹脂層の濡れ性を向上させることにより接着強度を向上させる。前記チタネート系カップリング剤、及び前記アルミネート系カップリング剤は一例であり、限定されるものではない。これらは三菱ガス化学社、日本曹達社、味の素ファインテクノ社より購入可能である。
【0105】
前記カップリング剤としては、エポキシ基又はアミン基を有するものが好ましい。当該カップリング剤を樹脂組成物に添加して効果を発揮させるためには、樹脂組成物の使用有効期間の観点、及び常温で反応が進まない観点から、エポキシ基を有するカップリング剤がより好ましい。
カップリング処理の前に行う表面処理としては、シランカップリング剤に対しては、SiO2、SiOC、SiTaOx、SiZrOx等のシリコンを含んだ酸化物形成、即ち、前記処理層の形成が非常に有効である。工法としては蒸着法、スパッタ法、Chemical Vapor Deposition法、Atomic Layer Deposition法等の薄膜形成が容易な処理が効果的である。TiO2やTiN処理は、チタネート系カップリング剤だけでなくシランカップリング剤に対しても効果的である。
【0106】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、例えば、刺激発生部材などが挙げられる。
当該刺激発生部材は、液体(インク)に対して印加する刺激を発生する部材である。
当該刺激発生部材における刺激としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
前記刺激発生部材としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。当該刺激発生部材の具体例としては、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0108】
前記刺激が「熱」の場合、前記液体吐出ヘッド内の液体(インク)に対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。当該熱エネルギーにより当該インクに気泡を発生させ、当該気泡の圧力により、ノズル板のノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記液体吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加すると当該圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル孔から前記液体(インク)を液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加して液体(インク)を飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
【0109】
<液体>
前記液体としては、上述の通り、前記液体吐出ヘッドで吐出可能な液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク(インクジェット用インク、光重合性インク等)、前処理液、定着処理液、レジスト、パターン形成材料、接着剤などが挙げられる。これらの中でも、インクであることが好ましい。
【0110】
<<インク>>
前記インクは、色材、有機溶剤、及び樹脂を含有していてもよく、更に必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0111】
<<<色材>>>
前記色材としては、特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
【0112】
前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色等の光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0113】
前記無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
前記有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0114】
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー35、C.I.ピグメントイエロー37、C.I.ピグメントイエロー42(黄色酸化鉄)、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド101(べんがら)、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108(カドミウムレッド)、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ)、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド219、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット16、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー)、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4(フタロシアニンブルー)、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー56、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン17、C.I.ピグメントグリーン18、C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0115】
前記染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドイエロー44、C.I.アシッドイエロー79、C.I.アシッドイエロー142、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド80、C.I.アシッドレッド82、C.I.アシッドレッド249、C.I.アシッドレッド254、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー45、C.I.アシッドブルー249、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、C.I.アシッドブラック24、C.I.アシッドブラック94、C.I.フードブラック1、C.I.フードブラック2、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトイエロー24、C.I.ダイレクトイエロー33、C.I.ダイレクトイエロー50、C.I.ダイレクトイエロー55、C.I.ダイレクトイエロー58、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトイエロー142、C.I.ダイレクトイエロー144、C.I.ダイレクトイエロー173、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.ダイレクトレッド9、C.I.ダイレクトレッド80、C.I.ダイレクトレッド81、C.I.ダイレクトレッド225、C.I.ダイレクトレッド227、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.ダイレクトブルー15、C.I.ダイレクトブルー71、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトブルー98、C.I.ダイレクトブルー165、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ダイレクトブルー202、C.I.ダイレクドブラック19、C.I.ダイレクドブラック38、C.I.ダイレクドブラック51、C.I.ダイレクドブラック71、C.I.ダイレクドブラック154、C.I.ダイレクドブラック168、C.I.ダイレクドブラック171、C.I.ダイレクドブラック195、C.I.リアクティブレッド14、C.I.リアクティブレッド32、C.I.リアクティブレッド55、C.I.リアクティブレッド79、C.I.リアクティブレッド249、C.I.リアクティブブラック3、C.I.リアクティブブラック4、C.I.リアクティブブラック35などが挙げられる。
【0116】
前記インク中の色材の含有量は、吐出安定性が良好となる観点から、インク全量に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0117】
前記顔料をインク中に分散させてインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などが挙げられる。
【0118】
前記顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルフォン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散性顔料などが使用できる。
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。これらの中でもインクの定着性、貯蔵安定性、および吐出信頼性の観点から、樹脂被覆顔料が好ましい。
前記分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。当該分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。当該分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0119】
前記顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。当該顔料分散体における顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られる観点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0120】
<<<有機溶剤>>>
本発明に使用する有機溶剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類などが挙げられる。
前記有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコール-N-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0122】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の観点から、インク全量に対して10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0123】
<<<樹脂>>>
前記樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、及びこれらの共重合体などが挙げられる。
【0124】
前記樹脂としては、上述した樹脂からなる樹脂粒子を用いることができる。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0125】
前記樹脂の含有量としては、インク全量に対して5質量%以上15質量%未満が好ましく、8質量%以上12質量%以下がより好ましい。
【0126】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましい。固形分には、樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。インク中の固形分の粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0127】
<<<その他の成分>>>
前記インクにおけるその他の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、界面活性剤、消泡剤、防備防黴剤、防錆剤などが挙げられる。
【0128】
-水-
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0129】
-界面活性剤-
前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0130】
--シリコーン系界面活性剤--
前記シリコーン系界面活性剤は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pH(pH11~14)でも分解しないものが好ましい。高pH(pH11~14)でも分解しないシリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、親水性が向上し、水に対する溶解性が高くなる観点から、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが特に好ましい。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもできる。当該ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0131】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0132】
【化1】
・・・一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0133】
前記シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(いずれも、信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(いずれも、日本エマルジョン株式会社製)、DOWSIL(登録商標)FZ-2105、DOWSIL(登録商標)FZ-2118、DOWSIL(登録商標)FZ-2154、DOWSIL(登録商標)FZ-2161、DOWSIL(登録商標)FZ-2162、DOWSIL(登録商標)FZ-2163、DOWSIL(登録商標)FZ-2164(いずれも、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(いずれも、ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)などが挙げられる。
【0134】
--フッ素系界面活性剤--
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フッ素置換した炭素の数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素の数が4~16である化合物がより好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0135】
これらの中でも、起泡性が少ない観点から、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が好ましく、一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤がより好ましい。
【0136】
【化2】
・・・一般式(F-1)
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与する観点から、mは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0137】
CnF2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)a-Y
・・・一般式(F-2)
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1(mは1~6の整数)、又はCH2CH(OH)CH2-CmF2m+1(mは4~6の整数)、又はCpH2p+1(pは1~19の整数)である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0138】
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3などが挙げられる。
【0139】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS-111、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-121、サーフロンS-131、サーフロンS-132、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも、AGC株式会社製);フルラードFC-93、フルラードFC-95、フルラードFC-98、フルラードFC-129、フルラードFC-135、フルラードFC-170C、フルラードFC-430、フルラードFC-431(いずれも、スリーエムジャパン株式会社製);メガファックF-470、メガファックF-1405、メガファックF-474(いずれも、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、キャプストーンFS-31、キャプストーンFS-3100、キャプストーンFS-34、キャプストーンFS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A、ポリフォックスPF-156A、ポリフォックスPF-151N、ポリフォックスPF-154、ポリフォックスPF-159(いずれも、オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、及び均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス社製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N、及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが好ましい。
【0140】
--両性界面活性剤--
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0141】
--ノニオン系界面活性剤--
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0142】
--アニオン系界面活性剤--
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0143】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、インク全量に対して0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0144】
-消泡剤-
前記その他の成分として用いられる界面活性剤は、消泡剤として用いることもできる。
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0145】
-防腐防黴剤-
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0146】
-防錆剤-
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0147】
-pH調整剤-
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0148】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を用いて測定することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0149】
(液体吐出ヘッドの製造方法)
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記第1の部材に、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物を付与する付与工程と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを前記樹脂組成物を介して貼り合わせる貼合工程と、
前記樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する硬化工程と、を含むことを特徴とする。
なお、「第1の部材」、「第2の部材」、「(A)エポキシ樹脂」、「(B)エピスルフィド樹脂」、「(C)ポリチオール化合物」、「(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれか」、「樹脂組成物」、及び「樹脂層」は、上述の(液体吐出ヘッド)の項目で記載されたものと同様であるため説明を省略する。
【0150】
<付与工程>
前記付与工程は、前記第1の部材に対して樹脂組成物を付与する工程である。当該付与工程は、付与手段によって好適に実施することができる。
当該付与手段は、前記第1の部材に対して樹脂組成物を付与する手段である。当該付与手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、インクジェット法(方式)、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法(方式)が好ましい。インクジェット法によって塗工する場合には、基材全域にわたって均一に付与することができ、かつ液滴サイズを調整することによって必要最小限の量を塗工できるため好ましい。
【0151】
前記第1の部材に対して樹脂組成物を付与するときの、当該樹脂組成物の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、良好な接着強度が発現するという観点から1.0μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0152】
<貼合工程>
前記貼合工程は、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記樹脂組成物を介して貼り合わせる工程である。当該貼合工程は、貼合手段によって好適に実施することができる。
当該貼合手段は、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記樹脂組成物を介して貼り合わせる手段である。当該貼合手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、接着剤を塗布した第1の部材に第2の部材を載せる方法などが挙げられる。
【0153】
<硬化工程>
前記硬化工程は、前記樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する工程である。当該硬化工程は、硬化手段によって好適に実施することができる。
当該硬化手段は、前記樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する手段である。当該硬化手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、加熱手段、反応を促進させる触媒添加などが挙げられる。
【0154】
前記硬化手段が加熱手段である場合、前記樹脂組成物の硬化温度としては、60℃以上120℃以下が好ましく、硬化時間としては10分間以上4時間以下が好ましい。
当該加熱手段としては、特に制限はないが、例えば、電気オーブンを用いて行うことができる。
【0155】
ここで、本発明の液体吐出ヘッドの一例について
図1~3を参照して説明する。
図1は、本発明の液体吐出ヘッドの説明に供する断面説明図である。
図2は、
図1におけるA部の一例を示す拡大概略断面図である。
図3は、
図1におけるA部の他の一例を示す拡大概略断面図である。
【0156】
液体吐出ヘッド100は、液滴を吐出するノズル101が形成されたノズル板102と、ノズル101が連通する流路(圧力室)103を形成する流路板104と、圧力室103の壁面を形成する振動板105とが積層されている。ここで、ノズル板102、流路板104、及び振動板105は、樹脂層113で接合されて流路を形成する流路形成部材である。
そして、振動板105の圧力室103とは反対側の面に、電気機械変換素子140からなる圧電アクチュエータが設けられている。
【0157】
電気機械変換素子140は、振動板105上に、密着層としての酸化物電極141、第1の電極(下部電極)142、電気機械変換膜144、及び第2の電極(上部電極)145を順次積層形成したものである。
【0158】
第1の電極142及び第2の電極145としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、Pt、Au等の導電性の高い材料などによって形成されている。
電気機械変換膜144としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などによって形成されている。
流路板104としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、SUSやシリコンなどによって形成されている。
ノズル板102としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、SUS、ニッケル、又はポリイミドなどによって形成されている。
【0159】
ノズル板102と流路板104とは、樹脂層113によって接合されている。
ここで、ノズル板102の表面、流路板104の表面、当該ノズル板102と樹脂層113との接着面、及び当該流路板104と樹脂層113との接着面には、それぞれ処理層112が成膜されていてもよい。なお、
図2は処理層112が形成されていない例、
図3は処理層112が形成されている例である。
図3の形態は、ノズル板102の接着後に処理層112を成膜することで得ることができる。当該処理層112を、流路形成部材の流路壁面となる表面に成膜する場合、160℃以下の温度にてALD(Atomic Layer Deposition)法で成膜することが好ましく、120℃以下の温度にてALD法で成膜することがより好ましい。当該ALD法は、単分子層レベルでの制御が可能で、表面反応による成膜のため、
図1に示すような垂直壁や斜面壁がある部材に対しても非常に均一な膜を成膜することができる。
【0160】
ここで、本発明の液体吐出ヘッドの一例について
図4~
図6を参照して説明する。
図4は、本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す概略図であり、
図5は、本発明の液体吐出ヘッドの他の一例を示す概略図であり、
図6は、本発明の液体吐出ヘッドのさらに他の一例を示す概略図である。具体的には、
図5は、ノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図であり、
図6は、液体吐出ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。
【0161】
液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、振動板部材3とを積層接合している。また、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材としてのフレーム部材20とを備えている。
【0162】
液体吐出ヘッドは、ノズル板1、流路板2、及び振動板部材3によって、液滴を吐出する複数のノズル4に連なって通じる個別液室6と、前記個別液室6に液体を供給する流体抵抗部7と、流体抵抗部7に通じる液導入部8とを有している。
【0163】
フレーム部材20の共通液室10から振動板部材3に形成したフィルタ部9を通じて、液導入部8、流体抵抗部7を経て複数の個別液室6に液体を供給する。
【0164】
ここで、ノズル板1は、各個別液室6に対応して直径10μm~35μmのノズル4を形成し、流路板2と樹脂層で接合している。また、当該ノズル板1の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には、撥水層が設けられていてもよい。
【0165】
流路板2は、SUS基板等の金属板を酸性エッチング液でエッチングし、若しくはプレス等の機械加工を行って、個別液室6、流体抵抗部7、液導入部8などを構成する溝部を形成している。なお、当該流路板2は、単結晶シリコン基板などの他部材で形成することもできる。
【0166】
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する壁面部材及びフィルタ部9を形成するフィルタ部材を兼ねている。当該振動板部材3は、個別液室6側から第1層3A、第2層3B、第3層3Cの3層(2層又は4層以上でもよい)からなる複層構造としている。また、第1層3Aで個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0167】
当該振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
なお、前記「駆動素子」は、圧電アクチュエータに限らず、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用することもできる。
【0168】
当該圧電アクチュエータ11は、金属部材からなるベース部材13上に接着剤接合した複数の積層型圧電部材12を有し、当該積層型圧電部材12には、ハーフカットダイシングによる溝加工によって、1つの積層型圧電部材12に対して所要数の圧電柱12A及び12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0169】
当該積層型圧電部材12の圧電柱12A及び12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動圧電柱(駆動柱、以下「駆動素子」ともいう。)12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動圧電柱(非駆動柱)12Bとして区別している。
【0170】
そして、駆動柱12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、非駆動柱12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。
【0171】
当該圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、駆動柱12Aの外部電極に駆動信号を伝達するための、撓むことができるフレキシブル配線基板としてのFPC等からなる第1配線部材15が接続されている。当該第1配線部材15には、フレキシブル配線基板としての金属シールド部材付きのFFC等からなる第2配線部材16が接続されている。
【0172】
フレーム部材20は、例えば、エポキシ樹脂、若しくは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成し、図示しないヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室10が形成されている。
【0173】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって駆動柱12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
その後、駆動柱12Aに印加する電圧を上げて駆動柱12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液滴が吐出(噴射)される。
そして、駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域30が初期位置に復元し、個別液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から個別液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0174】
なお、当該液体吐出ヘッドの駆動方法については、上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0175】
(液体吐出ユニット)
本発明の液体吐出ユニットは、液体吐出ヘッドを有することを特徴とし、必要に応じて、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構、及びその他の手段を有していてもよい。
換言すると、本発明の液体吐出ユニットは、液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれかと、前記液体吐出ヘッドとが一体化していることが好ましい。
なお、「液体吐出ヘッド」は、上述の(液体吐出ヘッド)の項目に記載したものと同様であるため説明を省略する。
【0176】
(液体吐出装置)
本発明の液体吐出装置は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備えることを特徴とし、必要に応じて、その他の手段を有していてもよい。
なお、「液体吐出ヘッド」及び「液体吐出ユニット」は、上述の(液体吐出ヘッド)及び(液体吐出ユニット)の項目に記載したものと同様であるため説明を省略する。
【0177】
<その他の手段>
前記液体吐出装置におけるその他の手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、制御手段などが挙げられる。
当該制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0178】
[画像形成装置]
本発明の液体吐出装置は、画像を形成する画像形成装置として使用することもできる。
当該画像形成装置は、インク収容手段と、液体吐出ヘッドと有していてもよく、必要に応じてその他の手段を有していてもよい。
なお、「液体吐出ヘッド」は、前記(液体吐出ヘッド)の項目で記載したものと同様であるため説明を省略する。
【0179】
<インク収容手段>
前記インク収容手段は、インクを収容する手段であり、例えば、タンク、インクカートリッジなどが挙げられる。なお、前記液体吐出装置においては、「液体」が当該インクに相当する。
前記インクカートリッジは、当該インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて、適宜選択したその他の部材などを有してなる。当該容器としては、特に制限はなく目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋等を有するものなどが好適である。
【0180】
前記画像形成装置使用時に用いられる記録用メディアとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、OHPシート、フィルムなどが挙げられる。
【0181】
ここで、本発明の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置であるインクジェット記録装置の一例について
図7~
図9を参照して説明する。
図7は、本発明に関する画像形成装置の機構部の一例を示す概略側面図であり、
図8は、本発明に関する画像形成装置の機構部の他の一例を示す概略平面図であり、
図9は、本発明の液体吐出ユニットの一例を示す正面説明図である。
【0182】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A及び221Bに対して横架したガイド部材である主従のガイドロッド231及び232によって、キャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持している。そして、図示しない主走査モータによって、タイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0183】
キャリッジ233には、
図7にも示すように、本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234と、同ヘッド234に供給するインクを収容するタンク235を一体化したヘッドユニットとを搭載している。当該記録ヘッド234は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0184】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する。記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出する。また、記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0185】
また、記録ヘッド234のタンク235には、各色の供給チューブ236を介して、供給ユニットによって各色のインクカートリッジ210(210k、210c、210m、210y)から各色のインクが補充供給される。
【0186】
給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243、及び給紙コロ243に対向する分離パッド244を備えている。
【0187】
給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えている。更に、給送された用紙242を静電吸着して、記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0188】
搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電ローラ256を備えている。当該帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。当該搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによって、タイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0189】
記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0190】
装置本体の背面部には、両面ユニット271が着脱可能に装着されている。当該両面ユニット271は、搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、両面ユニット271の上面に、手差しトレイ272を備えている。
【0191】
キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構281を配置している。
当該維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ282a、282bを備えている。また、当該維持回復機構281は、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材283を備えている。さらに、当該維持回復機構281は、増粘した記録液を排出するために、記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0192】
キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために、記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置している。当該空吐出受け288には、記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0193】
このように構成した画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙されてガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送される。当該用紙242は、先端を搬送ガイド247で案内されて、先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0194】
上述したとおり、前記画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0195】
前記「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
前記「液体吐出装置」は画像形成装置を含み、媒体に液体を吐出する装置を意味する。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
前記画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【0196】
なお、上記においては、本発明に係る液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドに適用したが、インク以外の液体、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する液体吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液体吐出ヘッドなどにも適用することできる。
【実施例0197】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0198】
[樹脂組成物の作製]
下記表3~7に示した配合で混合し、樹脂組成物を調製し、下記項目について評価した。なお、表3~7に記載の各成分の含有量は、すべて質量部とした。
【0199】
<保存安定性>
粘弾性測定装置(レオメーター、TAインスツルメンツ製)を用いて、各樹脂組成物の25℃における複素粘度を測定して粘度変化を測定した。測定開始1000秒後における測定初期からの粘度変化を測定し、下記判定基準に基づき判定した。結果を表3~7に示す。
―保存安定性の判定基準―
〇:粘度変化率が、150%未満
△:粘度変化率が、150%以上200%未満
×:粘度変化率が、200%以上
【0200】
<垂れ性>
ガラス基板上に、サグテスター(たるみ性試験・垂れ試験)で平均厚み0.6mm~1mmになるように組成物を塗布し、当該ガラス基板を垂直(重力方向と平行)に立てた。5分間静置後、下記判定基準に基づき判定した。結果を表3~7に示す。
―垂れ性の判定基準―
〇:樹脂組成物の垂れが、生じない
×:樹脂組成物の垂れが、生じる
【0201】
<接着性>
SUS板(株式会社テストピース製)に対して、平均厚み100μmとなるように各樹脂組成物をアプリケーターで塗布した後、幅2.5mmの銅箔の半分を樹脂組成物に付着させ、硬化温度90℃、硬化時間1時間にて樹脂組成物を硬化させた。その後、万能型ボンドテスター4000plus(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社製)を用いて、剥離速度0.2mm/sの条件で90°ピール試験を行い、下記判定基準に基づき判定した。結果を表3~7に示す。
―接着性の判定基準―
〇:接着強度が、1.1N/mm以上
△:接着強度が、0.5N/mm以上1.1N/mm未満
×:接着強度が、0.5N/mm未満
【0202】
<硬化性>
各樹脂組成物を鋼板上に、平均厚み100μmとなるようにアプリケーターで塗布し、硬化温度90℃、硬化時間1時間にて、硬化の有無を確認し下記判定基準に基づき判定した。結果を表3~7に示す。
―硬化性の判定基準―
〇:完全に硬化した
×:未硬化又は十分に硬化していない
【0203】
<耐膨潤性>
各樹脂組成物をPTFE製の型に満たし、硬化温度90℃、硬化時間3時間にて加熱・硬化させた後に離型し、幅10mm、長さ500mm、厚み1mmの樹脂組成物の硬化物(樹脂層)を作製した。得られた樹脂層を、N-メチルピロリドンと純水とを1:1の比率で混合した評価用試験液に浸漬(50℃、24日間)した。当該評価用試験液への浸漬前後の質量を基に、下記式1を用いて膨潤率を算出した。下記判定基準に基づき、耐膨潤性を判定した。結果を表3~7に示す。
[式1]
膨潤率(%)=[(試験後の質量-試験前の質量)/試験前の質量]×100
[判定基準]
◎:膨潤率が、3%未満
〇:膨潤率が、3%以上6%未満
△:膨潤率が、6%以上10%未満
×:膨潤率が、10%以上
【0204】
[接合体の作製]
―剥離試験片の作製―
まず、長さ80mm、幅17mm、厚み400μmに加工したSUS304に対して、精密プレス装置を用いて、150dpi(dots per inch)ピッチ、幅140μm、長さ2,000μmのスリットを形成した。同様に、42.3μmピッチでスリットを形成し続け、スリット群を作製した。当該スリット群を4列作製し、これを剥離試験片とした。なお、当該剥離試験片の接着可能面積は、スリット形成面におけるスリット形成前の表面積を100%としたとき、64.7%であった。
【0205】
―接合―
得られた剥離試験片のスリット形成面に対して、各樹脂組成物をグラビアコート法で平均厚み2.5μmになるように塗布した。
剥離試験片における樹脂組成物が塗布された面と、長さ80mm、幅19mm、厚み20μmに圧延したSUS304とを重ね合わせて、長さ100mm、幅25mm、厚み2mmの平滑なガラス基板に挟み込み20Nの加重をかけた状態で、硬化温度90℃、硬化時間3時間にて接着・硬化させた。このとき、接合後の樹脂層の平均厚みが1.5μmであった。
以上により、剥離試験用サンプルを作製した。
【0206】
-評価用インク1の調製-
下記表1に示した配合で混合し、0.8μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去し、評価用インク1とした。
【0207】
【表1】
なお、各成分の商品名、及び製造会社名については下記の通りである。
・顔料樹脂分散剤:商品名;REGAL660R分散液、キャボット社製
・N-メチル-2-ピロリドン:三菱化学株式会社製
・グリセリン:阪本薬品工業株式会社製
・1,3-ブタンジオール:東京化成工業株式会社製
・1,2-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
・シリコーン系界面活性剤:商品名;BYK-348、ビックケミージャパン株式会社製
【0208】
-評価用インク2の調製-
下記表2に示した配合で混合し、0.8μmセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去し、評価用インク2とした。
【0209】
【表2】
なお、各成分の商品名、及び製造会社名については下記の通りである。
・C.I.ピグメントブラック7:三菱化学株式会社製
・ソルスパース37500:ルーブリゾール社製
・エチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート:東京化成工業株式会社製
・プロピオン酸アミル:東京化成工業株式会社製
・シクロヘキサノン:東京化成工業株式会社製
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル:東京化成工業株式会社製
・N-メチル-2-ピロリドン:三菱化学株式会社製
・フッ素系界面活性剤:商品名;BYK-340、ビックケミージャパン株式会社製
・メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート共重合体:商品名;パラロイドB60、ローム・アンド・ハース社製
【0210】
<インク浸漬前の平均剥離強度>
各剥離試験用サンプルを、卓上型材料試験機(テンシロンSTA-1150、株式会社オリエンテック製)にて、90°方向剥離強度測定1mm/minの速度で、5mm剥離させたときの剥離強度を5回測定した。平均剥離強度を求め、下記判定基準に基づき、インク浸漬前の平均剥離強度を評価した。結果を表3~7に示す。
[判定基準]
◎:平均剥離強度が、1.5N以上
〇:平均剥離強度が、1.0N以上1.5N未満
△:平均剥離強度が、0.5N以上1.0N未満
×:平均剥離強度が、0.5N未満
【0211】
<インク浸漬後の平均剥離強度>
各剥離試験用サンプル全体を、60℃、60日間にて、前記評価用インク1~2に浸漬させた。浸漬後、上記<インク浸漬前の剥離強度>と同様の条件で、平均剥離強度を測定した。平均剥離強度を求め、下記判定基準に基づき、インク浸漬後の剥離強度を評価した。結果を表3~7に示す。
[判定基準]
◎:平均剥離強度が、1.5N以上
〇:平均剥離強度が、1.0N以上1.5N未満
△:平均剥離強度が、0.5N以上1.0N未満
×:平均剥離強度が、0.5N未満
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
なお、各成分の商品名、及び製造会社名については下記の通りである。
・EP1:アデカレジンEP-3950S〔株式会社ADEKA製、アミノフェノールエポキシ樹脂(エポキシ当量95g/eq)〕
・EP2:EPPN-502H〔日本化薬株式会社製、芳香族多官能エポキシ樹脂(エポキシ当量158~178g/eq)〕
・EP3:アデカレジンEP-4088S〔株式会社ADEKA製、ジシクロペンタジエンジメタノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/eq)〕
・EPS1:水添ビスフェノールA-ビスエピスルフィド〔田岡化学工業株式会社製〕
・T1:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)〔SC有機化学株式会社製〕
・T2:1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル〔SC有機化学株式会社製〕
・T805:AEROXIDE T805〔エボニック社製;オクチルシランで表面処理された疎水性ヒュームドチタニア〕
・NKT90:AEROXIDE NKT90〔エボニック社製;オルガノシランで表面処理された疎水性ヒュームドチタニア〕
・AluC805:AEROXIDE AluC805〔エボニック社製;オクチルシランで表面処理された疎水性ヒュームドアルミナ〕
・P25:AEROXIDE P25〔エボニック社製;未変性ヒュームドチタニア〕
・P90:AEROXIDE P90〔エボニック社製;未変性ヒュームドチタニア〕
・R805:AEROXIDE R805〔エボニック社製;疎水性ヒュームドシリカ〕
・IM-1:2MUSIZ〔四国化成工業株式会社製、3-(1-(2-メチルイミダゾリル))プロピルカルバモイル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン〕
【0218】
実施例から明らかであるように、エポキシ樹脂、エピスルフィド樹脂、及びポリチオール化合物を使用する系において、疎水化処理された酸化チタン及び/又は疎水化処理されたアルミナを使用することによって、耐膨潤性及び剥離強度に優れる樹脂層を得ることができた。
【0219】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドであって、
前記樹脂層が、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<2>
前記(A)エポキシ樹脂が、多価フェノールのポリグリシジルエーテル化合物、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物、及びジシクロペンタジエンジメタノールのポリグリシジルエーテル化合物から選ばれる少なくともいずれかを含む、前記<1>に記載の液体吐出ヘッドである。
<3>
前記(B)エピスルフィド樹脂が、芳香環及び脂環構造の少なくともいずれかを有する、前記<1>から前記<2>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<4>
前記(C)ポリチオール化合物が、チオール基を4個以上有する、前記<1>から前記<3>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<5>
前記(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかが、アルキルシラン構造を有する、前記<1>から前記<4>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<6>
前記樹脂層における前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量を100.0質量部としたとき、前記樹脂層における前記(D)の含有量は、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下である、前記<1>から前記<5>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドである。
<7>
前記<1>から前記<6>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを有することを特徴とする液体吐出ユニットである。
<8>
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、及び前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれかと、前記液体吐出ヘッドとが一体化した、前記<7>に記載の液体吐出ユニットである。
<9>
前記<1>から前記<6>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを有することを特徴とする液体吐出装置である。
<10>
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材を接合する樹脂層とを有し、前記樹脂層の少なくとも一部が露出した流路を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記第1の部材に、(A)エポキシ樹脂と、(B)エピスルフィド樹脂と、(C)ポリチオール化合物と、(D)疎水化処理された酸化チタン及び疎水化処理されたアルミナから選ばれる少なくともいずれかと、を含有する樹脂組成物を付与する付与工程と、
前記第1の部材と、前記第2の部材とを、前記樹脂組成物を介して貼り合わせる貼合工程と、
前記樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する硬化工程と、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
<11>
前記樹脂層における前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量を100.0質量部としたとき、前記樹脂層における前記(D)の含有量は、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の総含有量に対して、1.0質量部以上10.0質量部以下である、前記<10>に記載の液体吐出ヘッドの製造方法である。