(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171480
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241205BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088509
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】穂積功樹
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200JA29
2H200JC03
2H200PA03
2H200PA22
2H200PB05
2H270LA07
2H270MA24
2H270MB27
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】中間転写体や像担持体を長寿命化しつつ、最適な一次転写電圧を低コストに求めることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、複数色のトナー像を担持する複数の像担持体1a、1b、1c、1dと、複数の像担持体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写する中間転写体3と、像担持体と中間転写体3の外周面とが接触する一次転写部で像担持体から中間転写体にトナー像を一次転写する複数の一次転写部材11a、11b、11c、11dと、一次転写部材に電圧を印加する一次転写電源27BK,29FCと、所定の電圧の印加時に一次転写部材に流れる電流を検知する検知部28と、検知電流値Xに基づき一次転写電圧を決定する制御部30とを備える。検知部は一色の像担持体1aに対応する一次転写部材11aにのみ接続され、制御部30は検知電流値Xに基づき全色に対応する一次転写部材の一次転写電圧値を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のトナー像を担持する複数の像担持体と、
前記複数の像担持体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写する移動可能な中間転写体と、
前記像担持体と前記中間転写体の外周面とが接触する一次転写部で前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を一次転写させる複数の一次転写部材と、
前記一次転写部材に電圧を印加する一次転写電源と、
所定の電圧を前記一次転写部材に印加した際に前記一次転写部材に流れる電流を検知する一次転写電流検知部と、
前記一次転写電流検知部によって検知した電流値に基づき一次転写電圧を決定する制御部と、を備える画像形成装置において、
前記一次転写電流検知部は、全色の前記像担持体のうち一色の前記像担持体に対応する前記一次転写部材にのみ接続され、前記制御部は、前記検知した電流値に基づいて全色に対応する前記一次転写部材の一次転写電圧値を決定する、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記一次転写電源は複数設けられ、そのうちの一つはブラックトナー像用の前記像担持体に対応する前記一次転写部材に接続され、前記一次転写電流検知部もブラックトナー像用の前記像担持体に対応する前記一次転写部材に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一次転写電圧値は、前記検知した電流値の大きさに対応する複数の固定値から決定される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記一次転写電圧値は、前記検知した電流値を変数とする変換式により決定される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記一次転写電圧値のための前記変換式が、前記検知した電流値を独立変数とする二次関数である、ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記一次転写電圧値をY[V]、前記検知した電流値をX[μA]として、
前記二次関数は、Y=A1*X2+B1*X+C(A1≠0)である、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記一次転写電圧値は、前記検知した電流値の大きさに応じる、前記検知した電流値を変数とする複数の変換式により決定される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記一次転写電圧値をY[V]、前記検知した電流値をX[μA]として、
前記複数の変換式は、
X<αの場合、Y=A2*X2+B2*X+C2、
X≧αの場合、Y=D2*X+E2であり、
α>0、A2≠0、D2≠0である、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体と前記中間転写体の接触領域と、前記一次転写部材と前記中間転写体の接触領域が前記中間転写体の移動方向に関して重ならないように、前記一次転写部材は前記中間転写体の内周面に接触する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転写部材に印可される転写バイアスを制御可能な画像形成装置及び方法として、記録媒体が転写部に無いときに転写ローラなどの転写部材に印加される転写バイアスの電圧値を検出し、その検出結果に基づいて記録媒体が転写部を通るときの転写バイアスの制御目標値を決定するものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、用紙が転写部へ通紙していない時に転写部位の抵抗を検知し、その抵抗検出結果に基づいて直接トナー像を用紙に転写する時の転写部材に印可する転写バイアスを決定することが開示されている。これにより、転写材を介した状態と転写材を介さない状態で、像担持体の転写後電位が等しくなるように転写バイアスを制御し、濃度が均一な高画質の画像を得ることができる。
【0004】
しかし、抵抗値が変動しやすい転写部材を使用するために転写部材のコストが高いという問題点があった。また、転写部材の抵抗値が変動するため、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対して転写部材の抵抗を検知しなければならず、よって4つの抵抗検知手段を用いなければ最適な転写バイアスを求めることができず、これも装置の高コスト化をもたらしていた。
【0005】
特許文献2では、複数のトナー像を被転写体上に重ね合わせて画像を形成する場合でも、転写部材の抵抗に基づいて転写バイアスの制御目標値を適切に決定し、被転写体から像担持体への逆転写のない良好な画像を形成できる画像形成装置が提供されている。
【0006】
しかし、経時変化や環境変化により転写部材の抵抗値が上昇するため、経時にわたって、また環境が変わるたびに転写バイアスの目標値を変えるための制御が必要で、そのたびに中間転写装置や像担持体を駆動させなければならず、ユニット寿命が縮まるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、中間転写体や像担持体を長寿命化しつつ、最適な一次転写電圧を低コストに求めることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、複数色のトナー像を担持する複数の像担持体と、前記複数の像担持体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写する移動可能な中間転写体と、前記像担持体と前記中間転写体の外周面とが接触する一次転写部で前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を一次転写させる複数の一次転写部材と、前記一次転写部材に電圧を印加する一次転写電源と、所定の電圧を前記一次転写部材に印加した際に前記一次転写部材に流れる電流を検知する一次転写電流検知部と、前記一次転写電流検知部によって検知した電流値に基づき一次転写電圧を決定する制御部と、を備える画像形成装置において、前記一次転写電流検知部は、全色の前記像担持体のうち一色の前記像担持体に対応する前記一次転写部材にのみ接続され、前記制御部は、前記検知した電流値に基づいて全色に対応する前記一次転写部材の一次転写電圧値を決定する、ことを特徴とする画像形成装置によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
中間転写体や像担持体を長寿命化しつつ、最適な一次転写電圧を低コストに求めることができる画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プリンタとして構成された画像形成装置100の一例を示す概略構成図である。
【
図2】一次転写電圧と転写率の関係を示すグラフである。
【
図3】中間転写ベルト抵抗値と検知電流の関係を示すグラフである。
【
図4】検知電流値Xと一次転写バイアスYの関係を示す図である。
【
図5】検知電流値Xと一次転写バイアスYの変換式を示す図である。
【
図6】検知電流値Xと一次転写バイアスYの別な変換式を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に従う一次転写電圧の決定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1はプリンタとして構成された画像形成装置100の一例を示す概略構成図であり、ここに示した画像形成装置100は、その本体筐体内に配置された複数の感光体(像担持体の一例)、図示した例では第1乃至第4の4つの感光体1a、1b、1c、1d(以下、色を識別しない場合に適宜「感光体1」という)が設けられている。各感光体上には互いに異なる色のトナー像がそれぞれ形成され、
図1に示した例では、これらの感光体1a、1b、1c、1d上に、ブラックトナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。なお、
図1に示した各感光体1a、1b、1c、1dはドラム状に形成されているが、複数のローラに巻き掛けられて回転駆動される無端ベルト状の感光体を用いることもできる。
【0012】
第1乃至第4の感光体1a、1b、1c、1dに対向して中間転写体として構成された中間転写ベルト3が配置され、各感光体1a、1b、1c、1dが中間転写ベルト3の表面に当接している。中間転写ベルト3は、感光体1a、1b、1c、1dから自身に一次転写されたトナー像を転写材に二次転写する。ここに示した中間転写ベルト3は、駆動ローラ4、テンションローラ5、入口ローラ7に巻き掛けられ、これらの支持ローラのうちの1つ、例えば支持ローラ4が駆動源(図示せず)によって駆動される駆動ローラで構成され、該ローラの駆動により中間転写ベルト3が矢印A方向に回転駆動される。中間転写ベルト3は、多層構造、単層構造でも構わないが、多層構造であればベース層を例えば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDFシート、ポリイミド系樹脂でつくり、表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被ってなるものが好ましい。また、単層であればPVDF、PC、ポリイミド等の材質を用いるものがよい。
【0013】
感光体1a、1b、1c、1d上にトナー像を形成する構成と、その各トナー像を中間転写ベルト3上に転写する構成は実質的に全て同一であり、形成される各トナー像の色が異なるだけである。よって、第1の感光体1aにブラックトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト3上に転写する構成と作用だけを説明する。この感光体1aは
図1において示される矢印の如く反時計方向に回転駆動され、このとき感光体表面に図示していない除電装置からの光が照射され、該感光体1aの表面電位が初期化される。初期化された感光体表面は帯電装置8によって所定の極性、この例ではマイナス極性に一様に帯電される。この帯電面に、露光装置9から出射する光変調されたレーザビームLが照射され、感光体1aの表面に書き込み情報に対応した静電潜像が形成される。
図1に示した画像形成装置100においてはレーザビームを出射するレーザ書き込み装置より成る露光装置9が用いられているが、LEDアレイと結像手段を有する露光装置などを用いることもできる。
【0014】
感光体1aに形成された静電潜像は、これが現像装置10を通るとき、ブラックトナー像として可視像化される。一方、中間転写ベルト3の内側には、そのベルトを挟んで感光体1aにほぼ対向して位置する一次転写部材である一次転写ローラ11a、11b、11c、11d(以下、色を識別しない場合に適宜「一次転写ローラ11」という)が配置されている。この一次転写ローラ11が中間転写ベルト3の裏面に当接し、感光体1aと中間転写ベルト3との適正な転写ニップが確保されている。この一次転写ローラ11は金属で構成されるため、感光体1に対して若干オフセットして配置されている(間接転写方式)。本実施形態においては、感光体1と一次転写ローラ11間のどちらにも接触していないベルト距離(オフセット量)は4~5mmとしている。
【0015】
上記一次転写ローラ11には、感光体1a上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性、この例ではプラス極性の転写電圧が印加される。これにより、感光体1aと中間転写ベルト3との間に転写電界が形成され、感光体1aと中間転写ベルト3の外周面とが接触する一次転写部で、感光体1a上のトナー像が、その感光体1aと同期して回転駆動される中間転写ベルト3上に静電的に転写される(一次転写)。トナー像を中間転写ベルト3に転写したあとの感光体1a表面に付着する転写残トナーは、クリーニング装置12によって除去され、感光体1aの表面が清掃される。
【0016】
全く同様にして、第2乃至第4の各感光体1b、1c、1dには、マゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成され、その各色のトナー像は、ブラックトナー像の転写された中間転写ベルト3上に順次重ねて静電転写される。
【0017】
このとき、各4色のトナー像を使うフルカラーモードとブラック単色のみを使用するブラック単色モードの2種類のモードがある。フルカラーモード時には、中間転写ベルト3と4色の感光体1が当接して、4色とも中間転写ベルト3上にトナーが転写される。一方、ブラック単色モードでは、ブラックの感光体1aのみが中間転写ベルト3に当接し、ブラックトナーのみが中間転写ベルト3に転写される。このとき、中間転写ベルト3とマゼンタ、シアン、イエローの感光体1b、1c、1dは当接されておらず、画像形成装置100に備えられた接離機構により一次転写ローラ11b,11c,11dが感光体1b,1c,1dから離間する。
【0018】
本実施形態に係る画像形成装置100では、感光体1と中間転写ベルト3の接触領域と、一次転写ローラ11と中間転写ベルト3の接触領域が中間転写ベルト3の移動方向に関して重ならないように、一次転写ローラ11は中間転写ベルト3の内周面に接触する。
【0019】
一方、
図1に示すように、装置本体内の下部には給紙装置14が配置され、給紙装置14は給紙ローラ15の回転によって、例えば転写紙より成る記録媒体Pが矢印B方向に送り出される。送り出された記録媒体Pは、レジストローラ対16によって、所定のタイミングで支持ローラ4に巻き掛けられた中間転写ベルト3の部分と、これに対置された転写装置の一例である二次転写ローラ17との間に給送される。このとき、二次転写ローラ17には所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト3上の合成トナー像が記録媒体Pに二次転写される。
【0020】
合成トナー像を二次転写された記録媒体Pは、さらに上方に搬送されて定着装置18を通り、このとき記録媒体P上のトナー像が熱と圧力の作用により定着される。定着装置18を通過した記録媒体Pは、排紙部に設けられた排紙ローラ対19を介して画像形成装置外に排出される。
【0021】
また、トナー像転写後の中間転写ベルト3上に付着する転写残トナーはベルトクリーニング装置20によって除去される。本実施例におけるベルトクリーニング装置20では、ウレタン等で構成されたブレード形状のクリーニングブレード21を用いており、当該クリーニングブレード21を中間転写ベルト3の回転方向に対してカウンタ方向に当接させている。しかしながら、当業者には明らかなように、クリーニング装置20には適宜様々な種類のものを用いることが可能であり、例えば、クリーニング装置を静電容量式のものとしても良い。
【0022】
クリーニングブレード21によって中間転写ベルト3上から除去された転写残トナーはクリーニングケース内の廃トナーコイルによって、長手方向後側に送られ、装置本体に設けられた廃トナー経路を通って、廃トナー容器へ搬送される。
【0023】
図1は、本実施形態にて使用される印加電源の模式図の一例を示している。
一次転写ローラ11aに電圧を印加する一次転写電源である一次転写バイアス電源27BKが、検知部28及び制御部30に接続されており、検知部28は、一次転写バイアス電源27BK、一次転写ローラ11a及び制御部30に接続されている。ここで、検知部28は、全色の感光体1a、1b、1c、1dのうち一色(本実施形態ではブラック)の感光体1aに対応する一次転写ローラ11aにのみ接続されている。
【0024】
一次転写バイアス電源27BKの出力が定電圧制御されている場合には、検知部28は、一次転写ローラ11aへのバイアス印加時における一次転写ローラ11aに流れる電流量を検知する一次転写電流検知部である。一次転写バイアス電源27BKの出力が定電流制御されている場合には、検知部28は、一次転写バイアス電源27BKの出力バイアスを検知する。
【0025】
他の一次転写ローラ11b,11c,11dは、別の一次転写電源29FCによって印加されている。
よって、画像形成装置100は、複数の一次転写電源27BK,29FCを備え、そのうちの一つはブラックトナー像用の感光体1aに対応する一次転写ローラ11aに接続され、検知部28も、ブラックトナー像用の感光体1aに対応する一次転写ローラ11aにのみ接続されている。これにより、画像形成装置100は1つの検知部28を有するだけで済むため、中間転写ユニットの構成及び抵抗検知構成の低コスト化を図ることができる。また、経時にわたって、また環境が変わるたびに転写バイアスの目標値を変えるための制御が不要となり、そのたびに中間転写装置や像担持体を駆動させる必要も無いため、中間転写体や像担持体を長寿命化することができる。
【0026】
制御部30は、一次転写バイアス電源27BK、一次転写電源29FC及び検知部28に接続されており、検知部28による検知結果、すなわち検知部28によって検知した電流値Xに基づき全色に対応する一次転写ローラ11aの一次転写電圧を決定する。
【0027】
以下、一次転写バイアス電源27BKが定電圧制御されている場合を例にして、本発明の実施形態の詳細を説明する。
一次転写バイアス電源27BKが定電圧制御されている場合、中間転写ベルト3の抵抗によって転写率が変化してしまい、最適な転写電圧が変化する為(
図2参照)、印刷前に一次転写バイアス電源27BKの補正を実施する。
【0028】
図2は、一次転写電圧と転写率の関係を示すグラフである。
中間転写ベルト3の抵抗が、それぞれ、9.5LogΩ/□、9.7LogΩ/□、10.0LogΩ/□、10.2LogΩ/□と変化しており、そのため4つの矢印で示すように最適な転写電圧も変化する。
【0029】
ここでは、ブラックの一次転写バイアス電源27BKにより一次転写ローラ11aに所定のバイアス(2000V)を中間転写ベルト約1周分にわたって印加したときに検知部28で検出した平均電流値を元に中間転写ベルト抵抗値を推測し、一次転写ローラ11aに印加する電圧値を決定する。
図3は、中間転写ベルト抵抗値と検知電流の関係を示すグラフであり、図示のように検知電流が大きいほどベルト抵抗は小さくなる。
【0030】
このとき、ブラックの一次転写バイアス電源27BKと検知部28BKで中間転写ベルト抵抗値を推測しているが、他の3色に印加する一次転写電源29FCの値もこの検知部28による結果に基づき決定する。
図2の中間転写ベルト抵抗値と転写率のデータと、
図3の中間転写ベルト抵抗値と検知電流のデータより、検出した電流値から中間転写ベルト抵抗値を推測し、その中間転写ベルト抵抗値のときの最適な一次転写電圧値を算出し、一次転写バイアス電源27BKの一次転写バイアスの補正を実施する。
【0031】
検知した電流値による一次転写バイアスの補正の実施方法は、装置により複数考えられる。
まず、
図4のように検知電流値X(「検知した電流値X」とも言う)の大きさに応じて、一次転写バイアスY(「一次転写電圧値Y」とも言う)の固定値を決定する方法がある。
図4のバイアステーブルでは、検知電流値Xの大きさが4つの範囲に分けられ、それらに対応する4つの一次転写バイアスY1,Y2,Y3,Y4が定められている。このバイアステーブルは画像形成装置100のメモリーに格納されている。この方法を使うことで、制御部30は、一次転写バイアスYとして、検知電流値Xの大きさに応じて4つの固定値のいずれかを選択するだけで済むため、一次転写バイアスYの補正の制御を単純化できる。
【0032】
次に、
図5のように検知電流値Xを変換式に入れて一次転写バイアスYを算出する方法がある。つまり、一次転写電圧値Yは、検知電流値Xを変数とする変換式により決定される。この方法によれば、制御部30によって中間転写ベルト抵抗値のばらつきに対応する最適な一次転写バイアス値をより細かく決定することができる。
【0033】
本発明者による検証により、この変換式として二次関数を使用することで最もフィットすることが分かった。ただし、一次転写部周りの条件、例えば感光体1と一次転写ローラ11の距離や使用する中間転写ベルト3の抵抗値やトナー種類により、最適な変換式は変わってくると考えられる。
【0034】
一例として、検知電流値X[uA]と一次転写バイアスY[V]の変換式は、
Y=A1*X2+B1*X+C(A1≠0)である。
すなわち、一次転写バイアスYのための変換式は検知電流値Xを独立変数とする二次関数である。
ここで、A1=0.5,B1=-77,C=3700である。
X=50[uA]のとき、Y=1100[V]となる。
この方法によれば、制御部30によって中間転写ベルト抵抗値のばらつきに対応する最適な一次転写バイアスYをより細かく決定することができる。
【0035】
また
図6のように、検出した検知電流値Xの範囲によって変換式を変えてもよい。この方法によれば、制御部30による一次転写バイアスの補正の制御が複雑になるが、より適正な一次転写バイアスYを求めることができる。
【0036】
また一例として、検知電流値X[μA]と一次転写バイアスY[V]の変換式は、
X<50[μA]の場合、Y=A2*X2+B2*X+C2(A2≠0)であり、
X≧50[μA]の場合、Y=D2*X+E2(D2≠0)である。
すなわち、一次転写バイアスYのための変換式は、検知電流値Xの大きさに応じる、検知電流値Xを変数とする複数の変換式により決定される。
ここで、A2=0.5,B2=-77,C2=3700、D2=-22、E2=2200である。
よって、X=60[μA]のとき、Y=880[V]となる。
この方法によれば、制御部30によって中間転写ベルト抵抗値のばらつきに対応する最適な一次転写バイアス値をより細かく決定することができる。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に従う一次転写電圧の決定方法を示すフローチャートである。
画像形成装置100において、制御動作が開始されると(S1)、中間転写ベルト3が駆動される(S2)。次に、制御部30により、一次転写ローラ11に一定の電圧が印加される(S3)。ここで、本実施形態では、電圧を印加する一次転写ローラは一次転写ローラ11aであるが、他の一次転写ローラであってもよい。その際、検知部28によって一次転写ローラ11に流れる電流を検知する(S4)。次に、制御部30により、検知電流(検知電流値X)に基づき通常印刷時に印加すべき一次転写電圧を計算する(S5)。ここで、一次転写電圧は、全色に対応する一次転写ローラ11a、11b、11c、11dのための一次転写電圧値である。これにより、通常印刷時に印加すべき一次転写電圧が決定される(S6)。
【0038】
以上の一次転写バイアスの補正制御は、中間転写ベルト抵抗値が経時にわたって殆ど変化しない場合は、中間転写ベルトユニットの使用開始時に実施するだけでもよい。その方が、不必要に中間転写体や像担持体を走行させることなく最低限の走行量で済むため、他部品の寿命も延ばすことができる。
【0039】
また、上記実施形態では上記変換式を用いて標準的な一次転写バイアスYを算出しているが、使用環境やベルト線速(紙種・モード)によっては、さらに使用環境とベルト線速の補正係数を検知電流値Xに乗じて実際に印加すべき一次転写バイアスYが決定される。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態に係る画像形成装置100では、転写部材を抵抗上昇の少ない間接転写方式で構成し、一次転写バイアス電源BKから一次転写ローラ11に一定の電圧を印加したときの一次転写ローラ11に流れる電流値を検知する検知部28が1つだけ備えられる。その検知電流結果を元に全色に対応する一次転写バイアスYを決定することで、中間転写ユニットの構成及び抵抗検知構成の低コスト化を図ることができる。
【0041】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(態様1)
複数色のトナー像を担持する複数の像担持体と、
前記複数の像担持体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写する移動可能な中間転写体と、
前記像担持体と前記中間転写体の外周面とが接触する一次転写部で前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を一次転写させる複数の一次転写部材と、
前記一次転写部材に電圧を印加する一次転写電源と、
所定の電圧を前記一次転写部材に印加した際に前記一次転写部材に流れる電流を検知する一次転写電流検知部と、
前記一次転写電流検知部によって検知した電流値に基づき一次転写電圧を決定する制御部と、を備える画像形成装置において、
前記一次転写電流検知部は、全色の前記像担持体のうち一色の前記像担持体に対応する前記一次転写部材にのみ接続され、前記制御部は、前記検知した電流値に基づいて全色に対応する前記一次転写部材の一次転写電圧値を決定する、ことを特徴とする画像形成装置。
(態様2)
前記一次転写電源は複数設けられ、そのうちの一つはブラックトナー像用の前記像担持体に対応する前記一次転写部材に接続され、前記一次転写電流検知部もブラックトナー像用の前記像担持体に対応する前記一次転写部材に接続される、ことを特徴とする態様1に記載の画像形成装置。
(態様3)
前記一次転写電圧値は、前記検知した電流値の大きさに対応する複数の固定値から決定されることを特徴とする態様1又は2に記載の画像形成装置。
(態様4)
前記一次転写電圧値は、前記検知した電流値を変数とする変換式により決定されることを特徴とする態様1又は2に記載の画像形成装置。
(態様5)
前記一次転写電圧値のための前記変換式が、前記検知した電流値を独立変数とする二次関数であることを特徴とする態様4に記載の画像形成装置。
(態様6)
前記一次転写電圧値をY[V]、前記検知した電流値をX[μA]として、
前記二次関数は、Y=A1*X2+B1*X+C(A1≠0)である、
ことを特徴とする態様5に記載の画像形成装置。
(態様7)
前記一次転写電圧値は、前記検知した電流値の大きさに応じる、前記検知した電流値を変数とする複数の変換式により決定されることを特徴とする態様1~6のいずれか一つに記載の画像形成装置。
(態様8)
前記一次転写電圧値をY[V]、前記検知した電流値をX[μA]として、
前記複数の変換式は、
X<αの場合、Y=A2*X2+B2*X+C2、
X≧αの場合、Y=D2*X+E2であり、
α>0、A2≠0、D2≠0である、
ことを特徴とする態様7に記載の画像形成装置。
(態様9)
前記像担持体と前記中間転写体の接触領域と、前記一次転写部材と前記中間転写体の接触領域が前記中間転写体の移動方向に関して重ならないように、前記一次転写部材は前記中間転写体の内周面に接触する、ことを特徴とする態様1~8のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0042】
1a、1b、1c、1d 感光体(像担持体)
3 中間転写ベルト(中間転写体)
11a、11b、11c、11d 一次転写ローラ(一次転写部材)
27BK,29FC 一次転写電源
28 検知部(一次転写電流検知部)
30 制御部
100 画像形成装置
X 検知した電流値
Y 一次転写電圧値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2003-57969号公報
【特許文献2】特開2013-101195公報