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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171503
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】多層フィルム、それを用いた包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241205BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088544
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】木田 智久
(72)【発明者】
【氏名】小関 祐子
(72)【発明者】
【氏名】木村 菜々子
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD06
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA33
3E086BA44
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB59
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA35
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100AK46C
4F100AK51G
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA15
4F100CA18A
4F100DD07A
4F100EC182
4F100EH202
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EJ393
4F100EJ39A
4F100EJ403
4F100EJ553
4F100EJ943
4F100GB16
4F100JB05A
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JL06
4F100JL12A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、汚れや内容物残渣等の付着物が落としやすく、かつヒートシール性に優れた多層フィルム及びそれを用いたプラスチック容器やプラスチック包装材を提供することである。
【解決手段】本発明は、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を含み、前記シール層(A)が熱可塑性樹脂を含み、前記シール層(A)がさらに界面活性剤を含み、前記シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上である、多層フィルムを提供するものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を含み、
前記シール層(A)が熱可塑性樹脂を含み、
前記シール層(A)がさらに界面活性剤を含み、
前記シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上である、多層フィルム。
【請求項2】
前記シール層(A)の表面粗さ(Rz JIS)が1~15μmの範囲である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記シール層(A)中の界面活性剤の含有量が、0.1~8.0質量%である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記シール層(A)側表面の水接触角が、50度以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
請求項1~4に記載の多層フィルムに基材を積層した積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を用いた包装材。
【請求項7】
シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を積層する工程と、
前記シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上となるように、エンボス加工する工程を有し、
前記シール層(A)が熱可塑性樹脂を含み、
前記シール層(A)がさらに界面活性剤を含む、多層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
海洋プラスチック問題をきっかけに、消費材のリユースやリサイクルへの取り組みが活発になっている。特に、食品や日用品のプラスチック包装材やプラスチック容器(以下、プラスチック包装材等)のリサイクルに対し、注目が高まっている。
食品や日用品のプラスチック包装材等は、使用後に回収されてリユース又はリサイクルされる。このとき、内容物の残渣がリユースやリサイクルの推進の妨げになる。汚れたプラスチック包装材等は当然そのままリユースすることはできないし、汚れが不純物となるから、そのままではリサイクルもできない。
このような汚れたプラスチック包装材等をリサイクルするには、多量の水を使っての洗浄が必要になるため、リサイクルするために環境へ負荷をかけることにもなりかねない。特に、食品残渣はカビや雑菌の温床になるため不衛生であり、汚れたプラスチック包装材等を家庭や店舗でリサイクルの回収まで保管しておくことが難しく、燃えるゴミにせざるを得ない場合もある。
【0002】
以上のことから、汚れや内容物残渣等の付着物が落としやすいプラスチック包装材等により、リユースやリサイクルの取り組みを促進することが期待できる。当該付着物が落としやすいプラスチック包装材に使用可能なフィルム等としては、表面の樹脂構成により表面粗さを付与したプラスチック容器(例えば特許文献1)、表面に賦形による凹凸構造を有するヒートシール性樹脂フィルム(例えば特許文献2)、表面に酸化物微粒子を付着させた粒子状の樹脂を含む塗布膜を備える撥液性ヒートシール膜及びコーティング剤(例えば特許文献3)、コーティング剤の硬化による圧縮応力で凹凸を形成した積層体(例えば特許文献4)、撥水性微粒子を含む撥水層が積層されている撥水性物品(例えば特許文献5)、シリカ粒子とフッ素化アルキル基を有するアクリレートポリマーを含む撥液層を有する包装材(例えば特許文献6)、添加剤としてシリコーン成分と微粒子を含む包装用フィルム(例えば特許文献7)等が報告されている。
【0003】
しかしながら、相溶性の悪い樹脂の混合により表面凹凸を出す場合、シール性が劣りやすく、凹凸をシール面に付与できない場合があった。表面の粗さや微細な凹凸構造だけでは、内容物によっては付着が落ちにくい場合があった。微粒子を添加する場合は、微粒子が十分に表面に露出する必要があり、そのため多量の微粒子を添加することになり、フィルムとしての性能に懸念が生じる場合があった。コーティング剤を使用する場合は、塗布・乾燥の工程が増え、コーティング剤コストとともにプラスチック包装材等の価格に転嫁されるため、リサイクルを促進できるほど普及させることが困難であった。硬化条件により凹凸を付与する方法は、複雑な工程となり生産性に乏しかった。添加剤としてポリマーやシリコーン成分を添加する場合、ヒートシール性が著しく劣化するため、包装材としての使用が困難であった。添加剤としてフッ素系成分は撥水成分として良好な性能を示すが、地球規模での環境残留性及び生体蓄積性が明らかになったPFASを含む場合があり、使用が忌避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-034424号公報
【特許文献2】特開2017-218533号公報
【特許文献3】特開2020-163673号公報
【特許文献4】特開2021-154628号公報
【特許文献5】特開2020-121763号公報
【特許文献6】特開2022-108417号公報
【特許文献7】特開2017-001204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、汚れや内容物残渣等の付着物が落としやすく、かつヒートシール性に優れた多層フィルム及びそれを用いたプラスチック容器やプラスチック包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、界面活性剤を含むヒートシール層の、表面形状を制御することにより、付着しやすい内容物も落ちやすくなり、ヒートシール性も両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を含み、
前記シール層(A)が熱可塑性樹脂を含み、
前記シール層(A)がさらに界面活性剤を含み、
前記シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上である、多層フィルムを提供するものである。
また、本発明は、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を積層する工程と、
前記シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上となるように、エンボス加工する工程を有し、
前記シール層(A)が熱可塑性樹脂を含み、
前記シール層(A)がさらに界面活性剤を含む、多層フィルムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層フィルムは、内容物と接する表面に界面活性剤による親水性と適度な凹凸を付与したことによって、身離れ性(内容物の落としやすさ)及び洗浄容易性を発現しつつも、好適なシール強度を両立するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の多層フィルムは、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を含むものである。
【0010】
(シール層(A))
本発明のシール層(A)は、本発明の多層フィルムの一方の表面を形成し、内容物と接する層である。また、シール層(A)は、シール層(A)同士、熱可塑性樹脂層(B)と、あるいは熱可塑性樹脂フィルムとシールする層となる。当該シール層(A)は、熱可塑性樹脂と、界面活性剤を含み、さらに最適な表面の凹凸を有する。当該シール層(A)により、内容物が付着しづらく、付着しても容易に落とすことができ、さらに良好なヒートシール性を発揮できる。
【0011】
<熱可塑性樹脂>
本発明のシール層(A)は、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。特に、シール層(A)の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂を使用することが好ましく、ポリオレフィン樹脂を使用することがより好ましい。
このうち、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)の樹脂種がどちらも同類の樹脂のみで構成されていることが、モノマテリアルフィルムとなりリサイクル性に優れるため好ましい。ここで、「シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)の樹脂種がどちらも同類の樹脂のみで構成されている」とは、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を構成する樹脂全体の90質量%以上が同類の樹脂であることを指す。例えば、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)がどちらもポリエステル樹脂のみで構成されている、あるいはシール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)がどちらもポリオレフィン樹脂のみで構成されていることが好ましく、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)がどちらもポリオレフィン樹脂のみで構成されていることがより好ましい。さらに、ポリオレフィン樹脂の中でも、エチレン系樹脂のみ又はプロピレン系樹脂のみで構成されていることが好ましく、例えば、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)がどちらもエチレン系樹脂のみ又はプロピレン系樹脂のみで構成されていることが好ましく、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)がどちらもエチレン系樹脂のみで構成されていることがより好ましい。
【0012】
具体的には、シール層(A)がエチレン系樹脂をシール層(A)に含まれる樹脂中の80質量%~100質量%含有することが好ましく、90質量%~100質量%含有することがより好ましく、95質量%~100質量%含有することがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂層(B)がエチレン系樹脂を熱可塑性樹脂層(B)に含まれる樹脂中の80質量%~100質量%含有することが好ましく、90質量%~100質量%含有することがより好ましく、95質量%~100質量%含有することがさらに好ましい。
【0013】
また、本発明の多層フィルムを食品に使用する場合は、食品衛生法の、食品用器具・容器包装に関するポジティブリストに収載された樹脂のみで構成されていることが好ましい。
【0014】
上記ポリオレフィン樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ブチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等を使用できる。これらは単独で使用することもできるし、複数種の樹脂を併用することもできる。
エチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体、更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー、ポリエチレン系エラストマー等を例示できる。当該エチレン系樹脂は、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
当該エチレン系樹脂の中でも好適な耐衝撃性を得やすいことから、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを好ましく使用でき、低密度ポリエチレンを特に好ましく使用できる。
【0015】
上記低密度ポリエチレン(LDPE)とは、0.935g/cm未満の密度を有する、エチレンの単独重合体を意味する。当該低密度ポリエチレンの密度は、シール強度の観点から、0.900~0.930g/cmであることが好ましく、0.900~0.924g/cmであることがより好ましく、0.900~0.920g/cmであることがさらに好ましく、0.910~0.920g/cmであることが特に好ましい。
上記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とは、チーグラー・ナッタ触媒に代表されるマルチサイト触媒又はメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を使用して重合した、エチレンと、αオレフィンとの共重合体であり、密度が0.925g/cm未満のものを指す。したがって、エチレンの単独重合体である低密度ポリエチレン(LDPE)とは区別される。直鎖状低密度ポリエチレンのコモノマーとなるαオレフィンは、炭素原子数3以上のものであり、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-ノネン、4-メチルペンテン、3,3-ジメチルブテン等、及びこれらの混合物が挙げられる。
上記中密度ポリエチレン(MDPE)とは、0.925g/cm以上0.942g/cm未満の密度を有するエチレンとαオレフィンの共重合体を意味する。コモノマーとなるαオレフィンが増えると密度が低下するため、コモノマーは少ない方が好ましく、具体的にはコモノマー比率が0.5~1%であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
上記高密度ポリエチレン(HDPE)とは、0.942g/cm以上の密度を有するポリエチレンを意味する。エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンとαオレフィンの共重合体であっても構わないが、コモノマーとなるαオレフィンが増えると密度が低下するため、コモノマーは少ない方が好ましく、具体的にはコモノマー比率が0.5%未満であることが好ましい。
市販品では、コモノマー比率が開示されていない場合もあるため、直鎖状低密度ポリエチレンと中密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとは、密度で区別し、低密度ポリエチレンと中密度ポリエチレンでは、エチレンの単独重合体であるか否かで区別すればよい。
【0016】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系等の種々のシングルサイト触媒が挙げられる。
また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、積層フィルムとしたときの保存安定性(物性安定性)が良好となる。
【0017】
また、当該ポリエチレン系樹脂として、バイオマス由来のポリエチレンを使用することも好ましい。バイオマス由来のポリエチレンとしては、特に限定されないが、石油由来の製造方法に対して、原料がサトウキビ等の植物で、モノマ-生成までは異なるが、それ以外は、製造方法は同一である。
製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでよい。
例えば、チ-グラ-・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた製造法が上げられる。
【0018】
具体的には、チタン含有化合物自体又はチタン含有化合物をマグネシウム化合物等の担体に担持させたものを主触媒とし、有機アルミニウム化合物を助触媒とした触媒系で、プロピレン単独又は所望のエチレン等のα-オレフィンを添加して重合を行う方法を挙げることが出来る。
この重合は、スラリ-重合法、溶液重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0019】
また、均一系触媒を用いてもよく、従来から用いられているバナジュウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個を配位子とするジルコニウム、チタン、ハフニウム等の遷移金属化合物、該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物とアルミノキサンやイオン性化合物等の助触媒からなるメタロセン系触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。
メタロセン触媒は、必要により有機アルミ化合物を用いて、溶媒存在下の均一系重合のほか、スラリ-重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0020】
バイオマス由来のポリエチレンの市販品としては、例えばBraskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm、MFR:8.1g/10分)、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm、MFR:3.8g/10分)、Braskem社製のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:SLL118、密度:0.916g/cm、MFR:1.0g/10分)等が挙げられる。
【0021】
上記エチレン系樹脂の密度は、適度な剛性と良好な耐衝撃性を得やすく、耐ピンホール性も良好であることから、好ましくは0.960g/cm以下、より好ましくは0.950g/cm以下、さらに好ましくは0.940g/cmである。また、0.900g/cm以上であることが好ましく、0.910g/cm以上であることがより好ましい。
【0022】
上記エチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.5~50g/10分(190℃、21.18N)、好ましくは1~30g/10分(190℃、21.18N)、より好ましくは2~20g/10分(190℃、21.18N)である。MFRがこの範囲であると、良好な成膜性が得られる点で好ましい。
また、当該エチレン系樹脂の融点は、一般的には60~130℃の範囲であることが好ましく、70~120℃がより好ましい。
融点がこの範囲であれば、加工安定性や共押出加工性が向上する。
【0023】
プロピレン系樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタックチックポリプロピレン等のプロピレンの単独重合体(HOPP)、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体等のプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体(COPP)、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(BCOPP)、ポリプロピレン系エラストマー等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
これらのプロピレン系樹脂を用いた場合には、得られる積層フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、内容物を充填した後、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、又は100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌される場合にも好適に用いることができる。
【0024】
上記プロピレン系樹脂は、MFR(230℃における)が0.5~30.0g/10分で、融点が120~168℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃における)が2.0~15.0g/10分で、融点が125~162℃のものである。MFR及び融点が当該範囲であれば、ヒートシール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
【0025】
上記プロピレン系樹脂を本発明に使用するシール層に用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上する。
また、中でも、シール層にプロピレン-α-オレフィン共重合体を使用することが好ましく、ヒートシール強度を高くすることができるため、特に重量物の包装材として好適に用いることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂を使用することもでき、バリア性向上の観点から好ましい。当該環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」と称する場合がある)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」と称する場合がある)等が挙げられる。中でも、COP及びCOCの水素添加物が特に好ましい。
また、当該環状オレフィン系樹脂の質量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、より好ましくは7,000~300,000である。
【0027】
上記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0028】
上記ノルボルネン系共重合体(COC)は、上記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素原子数2~20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
【0029】
また、上記ノルボルネン系共重合体(COC)中のノルボルネン系単量体の含有比率は、40~90モル%が好ましく、より好ましくは50~80モル%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、引き裂き性、加工安定性が向上する。
【0030】
上記環状オレフィン系樹脂として使用できる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0031】
上記環状オレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、0.2~30g/10分(230℃、21.18N)が好ましく、3~17g/10分(230℃、21.18N)がより好ましく、5~15g/10分(230℃、21.18N)がさらに好ましい。
MFRがこの範囲であると、各種の多層成膜法において良好な成膜性が得られる点で好ましい。
【0032】
上記環状オレフィン系樹脂は、そのガラス転移温度が100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。また、下限は特に制限されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。
環状オレフィン系樹脂として当該ガラス転移温度のものを使用することで、良好な耐熱性や剛性を得やすく、また、落下等に対する耐破袋性を向上させやすくなる。
また、良好な相溶性を得やすくなり、外観ムラを抑制しやすくなる。
当該ガラス転移温度は、DSCにより測定して得られる値である。
【0033】
ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合して製造されるポリエステル樹脂が挙げられる。
上記多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ダイマー酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロへキセン-1,2-ジカルボン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
また、必要に応じて、その原料成分に、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等のモノカルボン酸を用いても良い。
さらに、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、ダイマー酸等については、植物由来原料を使用することも、環境負荷低減の観点から好ましい。
【0034】
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルトリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエチレングリコール、イソソルビド、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価アルコールが挙げられる。
これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0035】
上記の多価カルボン酸と多価アルコールとは、任意の組み合わせにより用いられる。
具体的には、テレフタル酸/エチレングリコール共重合体、テレフタル酸/1,4ブタンジオール共重合体、テレフタル酸/1,4-ブタンジオール/アジピン酸共重合体、テレフタル酸/ポリテトラメチレンエーテルグリコール/1,4ブタンジオール共重合体、テレフタル酸/イソフタル酸/1,4ブタンジオール/ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体、テレフタル酸/イソフタル酸/1,4ブタンジオール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4-シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド共重合体、テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合体、テレフタル酸/1,4-シクロヘキサンジメタノール/2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール共重合体等が挙げられる。
【0036】
上記ポリエステル樹脂としては、生分解性ポリエステル樹脂を使用することも好ましい。生分解性ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、及びその他の生分解性ポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂が好ましく、ポリブチレンサクシネート系樹脂がより好ましい。また、ポリ乳酸系樹脂とポリブチレンサクシネート系樹脂を併用することも好ましい。
【0037】
上記ポリ乳酸系樹脂としては例えば、ポリ乳酸(ポリ(D-乳酸)、ポリ(L-乳酸))、D-乳酸とL-乳酸の共重合体、D-乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ジカルボン酸及びジオールをエステル反応させて得られたポリエステル成分を乳酸成分と共重合させた重合体等が挙げられる。なかでも、成膜安定性や入手容易性等の観点からポリ乳酸が好ましく、主たる構造単位がL-乳酸であるポリ乳酸が寄り好ましい。これら重合体は、単独で使用しても併用して使用してもよい。
【0038】
上記ヒドロキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカプロン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類等のヒドロキシカルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0039】
上記ポリ乳酸系樹脂は、押出成形時に良好な流動性を実現しやすいことからメルトフローレート(190℃、21.18N)が、好ましくは0.5~30g/10分、より好ましくは2~25g/10分である。かかるメルトフローレートの範囲であると、押出成形が容易であり、また、共押出多層化するときに、隣接層との流動性も良好でより外観に優れた生分解性フィルムを得やすくなる。
【0040】
また、上記ポリ乳酸系樹脂の密度は1.20~1.26g/cmであることが好ましく、1.23~1.25g/cmであることがより好ましい。
【0041】
上記ポリブチレンサクシネート系樹脂としては、例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体(PBSA)が挙げられる。当該ポリ(ブチレンサクシネート)は、1,4-ブタンジオールとコハク酸の重縮合物であり、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、1,4-ブタンジオールとコハク酸に加えて、アジピン酸を加えた重縮合物である。かかるポリ(ブチレンサクシネート及びポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、分子量を上げるために、乳酸又は多官能イソシアネート化合物によって高分子量化することができ、適当な分子量に調整できる。
【0042】
ポリブチレンサクシネート系樹脂のメルトフローレート(190℃、21.18N)は、0.5~25g/10分程度がフィルム押出成形性の点から好ましく、さらに好ましくは1~20g/10分である。
【0043】
また、ポリブチレンサクシネート系樹脂の密度は1.20~1.29g/cmであることが好ましく、1.21~1.27g/cmであることがより好ましい。
【0044】
上記その他の生分解性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、β-プロピオラクトンやγ-バレロラクトン等の開環重合体等の脂肪族ポリエステル化合物;アジピン酸と1.4-ブタンジオ-ルとテレフタル酸のコポリエステル(ポリブチレンアジペートテレフタレート)、コハク酸とエチレングリコールよりなるポリエステル(ポリエチレンサクシネート)、アジピン酸と1.4-ブタンジオ-ルよりなるポリエステル、コハク酸と1.6-ヘキサンジオ-ルよりなるポリエステル、等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ-ルよりなるポリエステル等;及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0045】
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合物としては、上記した脂肪族ポリエステル化合物、又は、これらを合成する際に1~50質量%、好ましくは5~30質量%の、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やP-ヒドロキシ安息香酸、P-ヒドロキシエチル安息香酸、P-ヒドロキシフェニル酢酸等の芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を反応させた樹脂が挙げられる。
【0046】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの共重合体としては、ポリ乳酸とエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類とコハク酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの共重合体が挙げられる。乳酸系ポリエステルの製造で用いられる重合触媒としては、例えば、エステル交換触媒として知られる、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルト等の金属及びその化合物、特に金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物、なかでもオクタン酸錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン等が挙げられる。
【0047】
生分解性ポリエステル系樹脂としては、市販品を使用しても良い。市販品としては、「プラクセル」シリーズ(ポリカプロラクトン、株式会社ダイセル製)、「BIOMAX」(変性ポリエステル、DuPont製)等が挙げられる。
【0048】
シール層(A)中の生分解性ポリエステル系樹脂を使用する場合、その含有量は、シール層(A)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、複数の生分解性ポリエステル系樹脂を併用する場合は、その合計含有量が、シール層(A)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に樹脂成分がこれら樹脂のみからなるものであってもよい。このような含有量とすることで、生分解性を発揮することができ、環境負荷の低減につながる。
【0049】
シール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外のその他の生分解性樹脂を含有してもよい。その他の生分解性樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3-ヒドロキシ酪酸と4-ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリヒドロキシアルカノエート類;ポリビニルアルコール;プルラン;キトサン、澱粉系グリーンプラ、エステル化澱粉、セルロース、酢酸セルロース等の天然系の生分解性樹脂;等がある。
【0050】
上記その他の生分解性樹脂は、単独で使用しても良いし、併用しても良い。
また、上記その他の生分解性樹脂は、市販品を使用しても良い。市販品としては、「マタビー」(澱粉系、Novamont社製)、「エクセバール」(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ製)「プルラン」(株式会社林原製)等が挙げられる。
【0051】
上記その他の生分解性樹脂を使用する場合は、シール層(A)に含まれる樹脂成分中の20質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。このような含有量とすることで、各種材料への好適なヒートシール性や易開封性、耐衝撃性等を得やすくなる。
【0052】
<界面活性剤>
本発明で使用する界面活性剤は、シール層(A)の表面を親水化できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができる。中でもノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、ノニオン系界面活性剤を使用することがより好ましい。
【0053】
上記ノニオン系界面活性剤として具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系界面活性剤;グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等のグリセリン系界面活性剤;ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤;トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤;ラウリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等のジエタノールアルキルアミン系及びジエタノールアルキルアミド系界面活性剤;ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ソルビタン-ジグリセリン縮合体のモノ及びジステアレート等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、食品添加物として使用できる、ソルビタン系界面活性剤、グリセリン系界面活性剤を使用することが好ましく、性能の観点から、グリセリン系界面活性剤を使用することがより好ましい。
【0054】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩等のスルホン酸塩系界面活性剤;脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩等のカルボン酸塩系界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩系界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩系界面活性剤等が挙げられる。
中でも、炭素原子数12~18のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩が食品衛生上好ましく、例えば、ドデシルスルホン酸リチウム、トリデシルスルホン酸リチウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ペンタデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、ヘプタデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、トリデシルスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸カリウム、ペンタデシルスルホン酸カリウム、ヘキサデシルスルホン酸カリウム、ヘプタデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0055】
本発明で使用する界面活性剤は、フィルム製造時の揮発を抑制し、かつヒートシール性を発揮するため、分子量が100~10000であることが好ましい。分子量が100以上であれば、フィルム製造時の熱による揮発が起こりにくくなり、分子量が10000以下であれば、ヒートシール時に十分なヒートシール強度を得ることができる。
【0056】
本発明で使用するシール層(A)中の界面活性剤の含有量の下限としては、シール層(A)の全質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲で界面活性剤を用いることにより、シール層(A)表面を親水化しやすくなる。また当該含有量の上限は、シール層(A)の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲で界面活性剤を用いることにより、当該シール層と接触している層への界面活性剤の過剰な移行が起こりにくくなり、層間強度の低下を抑制できる。さらに、本発明の多層フィルムはシール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上であり、表面積が比較的大きいため、界面活性剤が少量であっても効果を示しやすい。したがって、シール層(A)中の界面活性剤の含有量は、シール層(A)の全質量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~8質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
シール層(A)の厚みとしては、特に限定されないが、3~30μmの範囲であることが好ましい。また、本発明の多層フィルムの総厚みに対して、シール層(A)の厚み比率が、10~50%の範囲であることが好ましい。
【0058】
(熱可塑性樹脂層(B))
本発明で用いる多層フィルムは、少なくともシール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)とを積層する。
このような多層構造のフィルムとすることによって、フィルムの剛性や成膜性等を用途によって調整しやすくなる。
【0059】
熱可塑性樹脂層(B)を構成する熱可塑性樹脂としては、上記シール層(A)との積層が可能であれば特に限定されず、シール層(A)に記載した熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0060】
シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)の樹脂種がどちらも同類の樹脂のみで構成されていることが、モノマテリアルフィルムとなりリサイクル性に優れるため好ましい。
【0061】
熱可塑性樹脂層(B)の厚みとしては、特に限定されるものではないが、20~70μmの範囲であることが好ましい。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂層(B)は、複数層で構成されていてもよい。
【0063】
(その他の添加剤)
前記の各層には、その他の添加剤を添加してもよい。当該その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料、生分解性促進添加剤等を例示できる。
これら添加剤を使用する場合には、各層に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは0.01~10質量部程度で使用する。
【0064】
(その他の層)
本発明の多層フィルムは、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)以外のその他の層を含んでいてもよい。当該その他の層としては、熱可塑性樹脂を含む層であることが好ましく、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)と樹脂種が同類の樹脂で構成されていることがより好ましい。当該その他の層が、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)の樹脂種が同類の樹脂にて構成されていると、モノマテリアルフィルムとなりリサイクル性に優れるため好ましい。具体的には、多層フィルム全質量に対するポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂の質量割合が、90質量%以上であることが好ましく、多層フィルム全質量に対するポリオレフィン樹脂の質量割合が、90質量%以上であることがより好ましく、多層フィルム全質量に対するエチレン系樹脂又はプロピレン系樹脂の質量割合が、90質量%以上であることがさらに好ましく、多層フィルム全質量に対するエチレン系樹脂の質量割合が、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0065】
(比表面積)
本発明の多層フィルムは、シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上である。
ここで、比表面積とは、非接触表面・層断面形状計測システム VertScan(登録商標)2.0(型番:R3300G Lite、株式会社菱化システム製)にて、下記測定条件にて3回測定したS/A比表面積の値の平均値を指す。
-測定条件-
・ カメラ:XC-HR50、1/3型IT方式プログレッシブスキャンCCD搭載
(ソニー株式会社製)
・ 対物レンズ:5倍
・ 鏡筒:単眼鏡筒
・ 波長フィルター:520nm
・ 表面測定モード:Phase
・ 視野サイズ:640×480pixels
当該比表面積が1.02以上である多層フィルムは、表面積が凹凸のないフィルムよりも大きいため、内容物が付着しにくい。また、界面活性剤が表面に出現しやすく、少量の界面活性剤であっても表面の親水化を図ることができ、結果として内容物の身離れ性や洗浄性が良好になる。さらに、界面活性剤が少量でも効果が出るため、ブリードによる層間強度の低下を抑制することができ、フィルム製造時の揮発による作業環境汚染が低減される。その上、良好なマット調の外観と、良好なシール強度を両立できる。
当該比表面積は、1.02以上であることを必須とするが、1.03以上であることが好ましく、1.04以上であることがより好ましい。また、上限は特に限定されないが、製造しやすさの点で、1.30以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましく、1.15以下であることがさらに好ましく、1.10以下であることが特に好ましい。
【0066】
本発明の多層フィルムは、シール層(A)の表面粗さ(Rz JIS)が1~15μmの範囲であることが好ましく、2~10μmの範囲であることがより好ましく、3~9μmの範囲であることがさらに好ましく、4~8μmの範囲であることが特に好ましい。当該表面粗さ(Rz JIS)がこの範囲であると、内容物が付着しにくく、また洗浄が容易となる。
当該表面粗さ(Rz JIS)は、上記非接触表面・層断面形状計測システム VertScan(登録商標)2.0(型番:R3300G Lite、株式会社菱化システム製)にて、下記測定条件にて測定したRz JIS断面粗さの値を指す。
【0067】
本発明の多層フィルムのシール層(A)側表面に凹凸を付与して、比表面積を調整するには、エンボスロール等によるエンボス加工(表面凹凸の付与)を実施してもよい。
当該シール層(A)にエンボスロール加工を施すことにより、比表面積が大きくなり、内容物が付着しにくくなり、良好なマット調の外観を得ることができる。
エンボスロールとしては、シール層(A)を構成する樹脂のガラス転移温度より50℃程度高い温度にて、ホットスタンプや加熱ロールを使用してもよいし、押出によるフィルム形成工程中のチルロールをエンボスロールとしてもよい。
エンボスロールは従来公知のものを使用でき、金属ロール表面に酸化アルミニウムや酸化珪素等の研削材を用いてブラスト処理を行い、次いで表面の過大ピークを減少させるためにバーチカル研削等を用いてラッピングを行うことにより、ロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロールが挙げられる。他にも、彫刻ミルを用い、エンボス模様(凹凸模様)を金属ロール表面に転写することにより、ロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロールが挙げられる。更に、エッチング(蝕刻)によりロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロール等が挙げられる。
【0068】
また、本発明の多層フィルムのシール層(A)は、シボ付離型紙によるエンボス加工により表面凹凸の付与が実施されていてもよい。
【0069】
(水接触角)
本発明の多層フィルムのシール層(A)側表面の水接触角は、50度以下であることが好ましく、40度以下であることがより好ましく、30度以下であることがさらに好ましく、20度以下であることが特に好ましい。当該水接触角が50度以下である多層フィルムは、界面活性剤が十分に表面親水性を高めているため、良好な身離れ性と洗浄容易性を発揮する。
当該水接触角は、DataPhysics社製接触角測定計OCA40にて、2μLの水液滴の静的接触角を測定した値を指す。
【0070】
(多層フィルムの製造方法)
本発明は、シール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)を積層する工程と、
前記シール層(A)側表面の比表面積が、1.02以上となるように、エンボス加工する工程を有し、
前記シール層(A)が熱可塑性樹脂を含み、
前記シール層(A)がさらに界面活性剤を含む、多層フィルムの製造方法を提供する。
【0071】
前記のシール層(A)と熱可塑性樹脂層(B)とを積層させる方法としては、特に限定されないが、例えば、シール層(A)、熱可塑性樹脂層(B)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。
この共押出法は、各層の厚みの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。
また、エンボス加工したシール層(A)となるフィルムと、熱可塑性樹脂層(B)となるフィルムを、接着剤にて積層(ラミネート)して得てもよい。
【0072】
また、前記シール層(A)中に添加する上記界面活性剤は、添加剤と同様に樹脂混合物中に添加して加熱溶融して混合してもよいし、マスターバッチとして添加してもよい。
【0073】
上記エンボス加工の方法としては、シール層(A)側表面の比表面積が1.02以上となれば特に限定されず、エンボスロール等によるエンボス加工であってもよいし、シボ付離型紙によるエンボス加工であってもよいが、離型紙の廃棄がない点から、エンボスロール等によるエンボス加工であることが好ましい。
エンボスロール等としては、シール層(A)を構成する樹脂のガラス転移温度より50℃程度高い温度にて、ホットスタンプや加熱ロールを使用してもよいし、押出によるフィルム形成工程中のチルロールをエンボスロールとしてもよく、多層フィルムの製造の容易さの点で、チルロールをエンボスロールとすることが好ましい。
エンボスロールは従来公知のものを使用でき、金属ロール表面に酸化アルミニウムや酸化珪素等の研削材を用いてブラスト処理を行い、次いで表面の過大ピークを減少させるためにバーチカル研削等を用いてラッピングを行うことにより、ロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロールが挙げられる。他にも、彫刻ミルを用い、エンボス模様(凹凸模様)を金属ロール表面に転写することにより、ロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロールが挙げられる。更に、エッチング(蝕刻)によりロール表面にエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロール等が挙げられる。
【0074】
さらに、熱可塑性樹脂層(B)には、後述の基材(C)との相間強度(接着強度)を向上させるために、前記熱可塑性樹脂層(B)に表面処理を施すこともできる。
またシール層(A)に対しても、同様に表面処理を施すこともでき、この場合は、(A)/(B)が積層してなるフィルムをロール状に巻いて保存する場合のブロッキングの防止に効果がある。
このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0075】
(積層体)
本発明の多層フィルムは、基材(基材(C))と積層して積層体とすることができる。
本発明の積層体の構成としては、
(1)基材/接着層/本発明の多層フィルム
(2)基材/接着層/印刷層/本発明の多層フィルム
(3)基材/接着層/第二の基材/印刷層/接着層/本発明の多層フィルム
(4)基材/接着層/第一の印刷層/第二の印刷層/本発明の多層フィルム
(5)基材/接着層/バリア層/接着層/本発明の多層フィルム
(6)基材/接着層/バリア層/印刷層/接着層/本発明の多層フィルム
(7)基材/印刷層/接着層/本発明の多層フィルム
(8)基材/第一の印刷層/第二の印刷層/接着層/本発明の多層フィルム
(9)基材/印刷層/接着層/バリア層/接着層/本発明の多層フィルム
等が挙げられるがこれに限定されず、さらに追加の基材を含んでいてもよい。
なお、第二及び追加の基材は未延伸の樹脂フィルムでもよいし、延伸された樹脂フィルムでもよいし、金属蒸着未延伸フィルムや金属蒸着延伸フィルムといった金属蒸着フィルムでもよいし、透明蒸着フィルムでもよいし、コート紙や上質紙等の紙類であってもよい。
また、複数の接着層は同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
さらに、接着層の接着強度を向上するため、アンカーコート層を層間に挟んでもよい。
【0076】
本発明の多層フィルムと基材フィルムをラミネート方法としては特に限定されず、ドライラミネート、ウェットラミネート、ノンソルベントラミネート、押出ラミネート、サンドラミネート、熱ラミネート等の複合化技術を用いればよい。
【0077】
上記延伸された樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
中でも、αオレフィン樹脂からなるフィルムが好ましく使用でき、特に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリプロピレン系樹脂フィルムを用いることが好ましい。
また、プラスチックフィルムとしてガスバリア性や、後述する印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティングが施されたものを用いてもよい。
コーティングが施されたプラスチックフィルムの市販品としては、K-OPPフィルムやK-PETフィルム等が挙げられる。
これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
【0078】
上記延伸された樹脂フィルムの厚みとしては、10~60μmであることが好ましく、20~40μmであることがより好ましく、20~30μmであることが更に好ましい。
当該延伸された樹脂フィルムの厚みがこの範囲であると、ラミネートフィルムの製造が容易となる。
【0079】
また、上記未延伸の樹脂フィルムとしては、CPPフィルム、ナイロンフィルム、PETフィルム、PVCフィルム等が挙げられる。
二種以上の基材の組み合わせも使用できる。
【0080】
また、上記基材は、バイオマスポリオレフィンにより形成されていてもよい。
当該バイオマスポリオレフィンとは、原料であるモノマーとして植物由来のオレフィンを用いたポリオレフィン樹脂を指す。
当該原料モノマーは、石油由来のモノマーを含んでいてもよく、植物由来のモノマーを100%含むものでなくてもよい。
当該バイオマスポリオレフィンとしては、市販品を使用することもできる。
市販品としては、ブラスケム社製、SGM9450F、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820等が例示できる。
【0081】
また、本発明の多層フィルムに積層する基材は、上記した樹脂フィルム上に、無機物及び/又は無機酸化物からなる蒸着層を設けた基材を用いてもよい。
当該蒸着層を設けた基材を用いることにより、本発明の積層体に、バリア性を付与することができる。
蒸着層は、公知の無機物又は無機酸化物を用いて、公知の方法により形成することができ、その組成及び形成方法は特に限定されない。
また、当該本発明の多層フィルムからなるラミネートフィルムは蒸着膜を2層以上有していてもよく、それらは同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0082】
上記蒸着層としては例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物又は無機酸化物の蒸着膜を使用することができる。
また、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物等の無機酸化物の蒸着膜は、透明性を有する。
【0083】
上記無機酸化物は、例えば、SiOx、AlOx等のようにMOx(ただし、式中、Mは、無機元素を表す。)と表記される。
xの値は、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1、5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~1、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。
上記において、x=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、xの値が範囲の上限である場合、完全に酸化していることを示す。
蒸着層としては、ケイ素(Si)やアルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、xの値が1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、xの値が0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0084】
上記蒸着層は、上記基材等の表面に真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等の方法により形成することができる。
【0085】
上記蒸着層の蒸着層の厚みは蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できれば特に制限はない。
厚みの好ましい範囲は蒸着する金属や金属酸化物の種類により異なるが、0.05~70nmが好ましく、0.1~70nmがより好ましく、3~70nmがより好ましく、5~60nmであることがさらに好ましい。
【0086】
上記金属蒸着フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルム、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。
また、上記透明蒸着フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。
シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。
【0087】
上記基材として、紙を用いることもできる。
例えば、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等の包材・パッケージ等の印刷に用いられるコートボール、カード紙、アイボリー紙、マニラボール等の板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、上質紙、クラフト紙、純白ロール紙、グラシンペーパー、パーチメント紙、マニラボール、白ボール、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙、ポリエチレンコート紙等の紙、各種合成紙、耐酸紙等を用いることができる。
【0088】
本発明の多層フィルムに上記基材又は印刷や蒸着を施した基材等を積層し、積層体とする場合の積層方法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
この時、シーラントフィルムと基材の間に位置する層は、接着層と呼称する。
【0089】
上記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、溶剤型の2液硬化型接着剤等が挙げられる。
「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいい、ポリイソシアネート組成物、ポリオール組成物と、それらを溶解(希釈)することが可能な有機溶剤を含む。
【0090】
上記2液硬化型接着剤において、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、上記ポリイソシアネート組成物あるいはポリオール組成物の原料として、植物由来原料(バイオマス原料)を使用することが好ましい。
バイオマス原料を適宜使用することで、環境負荷を低減することができる。
バイオマス原料としては、ひまし油、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ひまし油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のひまし油系ポリオールや、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸等の脂肪族多塩基酸や当該酸のアルキルエステル化物、ダイマー酸等が挙げられる。
【0091】
バイオマス原料を使用した上記接着剤としては市販品を利用することもできる。
市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載の接着剤等が使用でき、例えば、ディックドライBM(DIC株式会社製)、タケネートBM(三井化学株式会社)等が挙げられる。
【0092】
上記接着層の乾燥後の重量は、0.1~10g/mであることが好ましく、1~6g/mであることがより好ましく、2~5g/mであることがさらに好ましい。
また、当該接着層の厚みは、0.1~10μmが好ましく、1~7μmがより好ましく、2~5μmであることがより好ましい。
【0093】
また、上記接着層として各種の粘着剤を使用することもできるが、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。
当該感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体等の粘着付与剤を配合したもの、或いは、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が-20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤等を挙げることができる。
【0094】
上記接着剤や後述するアンカーコート剤としてガスバリア性を有する材料を使用すると、特にバリア性に優れるラミネートフィルムを得ることができる。
ガスバリア性に優れる接着剤として特に好ましくは、3g/m(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m/day/atm以下、又は水蒸気バリア性が120g/m/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。
市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
【0095】
また、上記接着層は、熱可塑性樹脂により形成することもでき、その形成方法は、従来公知の方法、例えば溶融押出しラミネート法やサンドラミネート法により形成することができる。
当該接着層に使用できる当該熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン系単量体の開環重合体(COP)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(COC)等のノルボルネン系重合体及びその水素添加物、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等の環状ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、ブテン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。
また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等も使用することができる。
また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、又は、共重合した樹脂等も用いることができる。
これらの樹脂は、単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、当該ポリエチレン系樹脂としては、バイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用することも好ましい。
【0096】
押出ラミネート法により接着層を積層する場合には、積層される側の層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート層を設けてもよい。
アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばポリブタジエン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリエチレンイミン、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキルチタネート等からなるアンカーコート剤や、上記接着剤を有機溶剤で希釈したアンカーコート剤が挙げられる。
なかでも、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、上記接着剤を有機溶剤で希釈したアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。
また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
【0097】
押出ラミネート法やサンドラミネート法にて本発明の多層フィルムと基材等を積層して本発明の積層体を得る場合、その積層時のニップロールやチルロールをエンボスロールにすることで、シール層(A)側表面にエンボス加工を施してもよい。
【0098】
本発明の積層体は、本発明の多層フィルムと上記基材の間に、さらに印刷層を設けてもよい。
当該印刷層とは、被印刷体に美粧性、内容物に関する様々な情報、及び機能性を付与するために、リキッド印刷インキにより所望の図柄を形成する層である。
当該印刷層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(以後リキッド印刷インキと称する)や、活性エネルギー線硬化型インキや、インクジェットインキを印刷してなる。
当該印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。
印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するリキッド印刷インキは同一のものであっても良いし、同一の組成で着色剤のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
また、リキッド印刷インキとインクジェットインキ等、2種類の印刷インキを併用した印刷であってもよい。
当該印刷層が複数ある場合としては、例えば着色剤を含有する印刷インキより形成された第一の印刷層と、着色剤として白色顔料を含有するリキッドインキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の白印刷層とをこの順に有する印刷物とすることができる。
第一の印刷層は着色剤による絵柄を形成させることができ、白色顔料を含有するリキッドインキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の印刷層は、絵柄の背景として使用することができる。
第二又は第三の印刷層をオーバープリントニスとする場合は、着色剤を含まなくてもよい。
【0099】
上記リキッド印刷インキは、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用され、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別される。
当該印刷層としては、汎用の有機溶剤型リキッド印刷インキであることが好ましい。
【0100】
上記有機溶剤型リキッド印刷インキは、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。
得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。
分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0101】
上記バインダー樹脂としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)等セルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルアクリル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を挙げることができる。
中でも、ポリウレタン樹脂を好ましく利用できる。
【0102】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとを重合したポリウレタン樹脂が好ましい。
また、当該ポリオールはポリエステルポリオールであることが好ましい。
また、必要に応じて、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール以外の汎用のポリオール、鎖伸長剤、及び末端封鎖剤等を併用してポリウレタン樹脂を合成してもよい。
さらに、当該ポリオールとポリイソシアネートを反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとし、ポリアミン化合物とを反応させて、ポリウレタン樹脂を合成してもよい。
当該ポリウレタン樹脂はリキッドインキ中に単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。
【0103】
上記顔料としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
当該有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。
また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0104】
当該無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。
無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。
酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
当該白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0105】
上記有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。
また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。
これらを単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
【0106】
尚、印刷時の作業衛生性及び包装材料の有害性の観点から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等を使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しないことがより好ましい。
中でも、ポリウレタン樹脂の溶解性の観点から、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/メトキシプロパノールの混合液がより好ましい。
また、乾燥調整のためにインキ全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加することも出来る。
【0107】
上記有機溶剤型リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
上記有機溶剤型リキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成されるリキッド印刷インキの膜厚は、0.1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましく、1~3μmであることがさらに好ましい。
また、印刷層の乾燥後の重量は、0.1~10g/mであることが好ましく、1~5g/mであることがより好ましく、1~3g/mであることがさらに好ましい。
【0108】
上記リキッド印刷インキにおいて、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、植物由来原料(バイオマス原料)を使用したリキッド印刷インキを使用することが好ましい。
植物由来原料としては例えば、セルロースアセテートプロピオネート樹脂や硝化綿等の繊維素系樹脂や、大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するダイマー酸あるいは重合脂肪酸を使用したポリアミド樹脂や、ポリカルボン酸として、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、リンゴ酸等、ポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,10-ドデカンジオール、ダイマージオール、イソソルビド等、ポリイソシアネートとして、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等の植物由来原料から合成したバイオマスポリウレタンや、ロジン樹脂、ダンマル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0109】
上記植物由来原料を使用したリキッド印刷インキは、市販品を使用することもできる。
市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載のインキ等が使用でき、例えば、フィナートBM(DIC株式会社製)、LP バイオシリーズ(東洋インキ株式会社製)、ベルフローラ(サカタインクス株式会社製)、NB300 BPシリーズ(大日精化工業株式会社製)等が挙げられる。
【0110】
上記印刷層は、所謂裏刷りにて、別の基材に印刷したうえで基材と本発明の多層フィルムとをドライラミネート・サンドラミネート・押出ラミネート等の方法で積層してもよい。押出ラミネート法は、本発明の多層フィルムの製造と基材との積層と、場合により当該多層フィルムのシール層(A)へのエンボス加工とを1工程で実施できるため、製造負荷が少なく好ましい。
また、アンカーコートワニスやオーバーコートワニス等を用いてもよい。
【0111】
本発明の多層フィルムは、特に限定されないが、共押出多層エンボス法により作製することが好ましい。
共押出多層エンボス法とは、例えば、シール層(A)、熱可塑性樹脂層(B)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により、溶融状態で例えば(A)/(B)の順でTダイから押し出された熱可塑性樹脂を、凹凸構造を有するチルロールにより加圧成形して、フィルム表面に凹凸構造を形成する方法である。この共押出多層エンボス法は、フィルムの成形と同時に賦型を行うことで、環境負荷が少なく、製造工程の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【0112】
(包装材)
本発明の多層フィルム及び積層体は、包装材として利用できる。
包装材は、包装容器、紙やプラスチックのカップ類、包装袋、蓋材等を含む。
【0113】
上記包装容器としては、本発明の多層フィルム又は積層体を、シール層(A)が内面になるように、二次成形して各種包装体として用いるものであるが、その成形方法としては、多層フィルム又はを加熱ゾーンで加熱軟化した後、常法により成形するものである。
成形方法としては、真空成形、圧空成形やこれらの応用として、リジッド成形、フリードローイング成形、プラグアンドリジッド成形、マッチドモールド成形、ストレート成形、エアスリップ成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形等やこれらを組み合わせた方法が採用できる。
【0114】
上記包装容器の適用範囲としては、特に限定されるものではなく、食品、医薬品、工業部品、雑貨等の用途に用いるトレーあるいは容器等が挙げられる。
【0115】
(カップ類)
本発明の多層フィルムに紙類を積層して得た積層体は、紙カップ等の紙容器に利用することが好ましい。
紙容器を製造する具体的態様として、例えば紙カップ様の紙容器の製造方法について具体的に述べる。
なお、本具体的態様に限定されない。
【0116】
具体的態様として、少なくとも容器内面及び容器を組み立てる際の貼り合わせ面に本発明の多層フィルムが位置する紙基材からなり、該紙基材の丸めて重ね合わせた両端部の貼り合わせ面を加熱溶着した筒状の胴部材(1)と、少なくとも容器内面及び容器を組み立てる際の貼り合わせ面に本発明の多層フィルムが位置する紙基材からなり前記胴部材(1)の下端へと加熱溶着された板状の底部材(2)とを有する紙容器の製造方法について述べる。
【0117】
前記筒状の胴部材(1)、前記板状の底部材(2)共に、本発明の多層フィルムが積層された積層体である紙基材を、所望の形状に切り抜いたものである。
まず、前記筒状の胴部材(1)は扇状に、前記板状の底部材(2)は円形に切り抜く。
前記扇状に切り抜かれた筒状の胴部材(1)の両端の貼り合わせ面をバーナーや熱風等の熱源で加熱しシール層(A)を加熱軟化させ、貼り合わせ面同士を重ね合わせ圧着する。
加熱、重ね合わせ、圧着の順に特に限定はなく、例えば貼り合わせ面を熱源で加熱した後該面同士を重ね合わせ、その後圧着でもよいし、貼り合わせ面同士を重ね合わせた後熱源で加熱しその後圧着でもよいし、貼り合わせ面同士を重ね合わせた後圧着しながら熱源で加熱してもよい。
貼り合わせ面を熱源で加熱した後該面同士を重ね合わせ、その後圧着する方法が、確実にシール層(A)が加熱軟化するので好ましい。
この時の加熱温度は150~300℃、加熱時間は0.1~3秒が好ましい。
これにより、シール層(A)が内側(内容物側)となった筒状の胴部材が得られる。
前記扇状の紙基材は、ブランカーと呼ばれる扇型に紙基材を打ち抜く機械を用いてよく、紙容器のブランク(胴部)を作製することができる。
【0118】
一方、前記円形に切り抜かれた底部材(2)は、前記筒状となった胴部材の内側に、シール層(A)がカップ内側となるように設置後、底部材と胴部材との接触部を熱源で加熱し底部材側と胴部材側のシール層(A)を前述と同様に加熱軟化し接着させる。
この時シール層(A)が軟化し底部材と胴部材の隙間と埋めるため、水漏れ等が生じることはない。
【0119】
紙カップの製造においては、この後公知の工程、例えば胴部材の底側の下端を内側に折り込み、回転する円形の型で圧着させ、紙カップ底部を仕上げる方法で紙カップを得ることができる。
仕上げの際に必要に応じ胴部材と底部材の連結をより強固にすべく、ヒートシール部分を前述の熱源で加熱させてもよい。
最後に、胴部材の上端の飲み口に相当する部分は、必要に応じツールを回転させながら紙カップの外側に巻き込むカーリングと呼ばれる成型処理を行う。
【0120】
前記具体的態様の紙容器は、主に底部材が円板状であるカップ形状の容器であるもののであるが、形状はこれに限定されず、例えば底部材が矩形板状の直方体、多角形あるいは立方体形状の容器であってもよい。
また、必要に応じて、別途製造された蓋材等によって容器を密封し、例えば、電子レンジ等で加熱する際には蓋材を外したり、あるいは一部を開封して使用するものであってもよい。
【0121】
上記方法により紙カップ様の紙容器を得ることができるが、本発明の積層体を紙積層体ではなくプラスチック積層体に代えることにより、プラスチックコップも得ることができる。
【0122】
上記カップ類は、コーヒー等の飲料カップ、みそ汁やカップ麺やカップ春雨等のインスタント食品用カップ、菓子類カップ等に用いることができる。
中でも、汚れが落ちにくくリサイクルが進んでいなかったコーヒーやカプチーノ等の飲料紙カップに用いられることが好ましい。
【0123】
包装袋は、本発明の多層フィルム又は積層体のシール層(A)面を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして袋状にして得られる。
製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。
本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。
本発明の多層フィルムは、良好なシール強度を発揮するため、自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。
ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0124】
上記包装袋にその開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールすることで本発明の包装材を使用した製品が製造される。
充填される内容物として、例えば食品としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子等の菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズ、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品の農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類等の畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子等の水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼ等の果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいも等の野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケ等を代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜等の調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳等の乳製品、液体調味料、レトルトカレー、中華丼、親子丼、パスタソース、マーボー豆腐の素等のインスタント食品、ペットフード等の食品類が挙げられる。
特に、内容物が付着しにくく洗浄が容易という本発明の効果を活かすため、内容物はカレーやミートボール、ハンバーグ、パスタソース等の粘調なソース類を含むものであることが好ましい。
【0125】
また非食品としては、タバコ、使い捨てカイロ、輸液パック等の医薬品、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、化粧水や乳液等の化粧品、真空断熱材、電池等、様々な包装材としても使用され得る。
【0126】
蓋材は、本発明の多層フィルム又は積層体の、内容物に触れる表面をシール層(A)として得られる。
蓋材を接合する容器は特に限定されるものではなく、紙カップ等であってもいし、単層あるいは積層体からなる容器であってもよい。
当該容器自体に易開封機能がついていると、密封性と易開封性が両立されやすいので好ましい。
【0127】
(その他の用途)
本発明の多層フィルム及び/又は積層体を、その他の用途に用いることもできる。
用途は汚れ等が落としやすい効果を発揮できる用途であれば特に限定されないが、例えば、化粧シート、壁紙、インモールドラベル、貼付ラベル、窓用目隠しフィルム、カーラッピングシート等が挙げられる。
【0128】
(リサイクル)
本発明の多層フィルム及び/又は積層体を用いた包装材は、内容物が付着しづらく、付着を落としやすいことから、付着内容物によるリサイクル性の低下を抑えることができる。
また、内容物の洗浄が容易になるため、リサイクルのための洗浄機を小型化することができ、リサイクル機械の普及にも貢献する。
さらに、容易に洗浄できるため、洗浄後の包装材を殺菌又は滅菌する等して、包装材のまま繰り返し再利用することもできる。
殺菌又は滅菌方法は特に限定されず、加熱殺菌、オゾン殺菌、紫外線殺菌及び紫外線滅菌、電子線(EB)滅菌、高周波滅菌、オートクレーブ滅菌等を利用することができる。
容器を一度破砕したのち再利用原料とする場合であっても、本発明の多層フィルム及び/又は積層体を用いた包装材は、通常の破砕工程や脱ラミ工程で取り扱うことができる。
【実施例0129】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
以下、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0130】
(実施例1)
シール層(A)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、メルトフローレート(以下MFRという)(190℃):7g/10分)90部とノニオン系界面活性剤10%含有ポリエチレンマスターペレット10部を用い、熱可塑性樹脂層(B)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、MFR(190℃):7g/10分)を用い、樹脂層(A)用押出機(口径40mm)と熱可塑性樹脂層(B)用押出機(口径40mm)のそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度250℃でTダイから(A)/(B)の各層の厚みが9μm/21μmになるように押出し、凹凸構造を有する40℃のチルロールにより加圧冷却してエンボス加工を行った後、、熱可塑性樹脂層(B)の濡れ張力が40mN/mとなるようにコロナ放電処理を施した後、ロールに巻き取り、40℃の熟成室で24時間熟成させて、全厚が30μmの共押出フィルムを得た。
得られたフィルムのラミネート熱可塑性樹脂層(B)にウレタン系接着剤を使用して膜厚25μmのポリアミドフィルムをラミネートすることにより、積層体を得た。
【0131】
(実施例2)
シール層(A)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、MFR(190℃):7g/10分)95部とノニオン系界面活性剤10%含有ポリエチレンマスターペレット5部を用いた以外は実施例1と同様にして共押出フィルム及び積層体を得た。
【0132】
(実施例3)
(A)/(B)の各層の厚みが15μm/35μmになるように押出し、全厚が50μmの共押出積層フィルムを得た以外は実施例1と同様にして共押出フィルム及び積層体を得た。
【0133】
(比較例1)
シール層(A)及び熱可塑性樹脂層(B)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、MFR(190℃):7g/10分)を用い、樹脂層(A)用押出機(口径40mm)と熱可塑性樹脂層(B)用押出機(口径40mm)のそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度250℃でTダイから(A)/(B)の各層の厚みが9μm/21μmになるように押出し、40℃のチルロールにより加圧せずに冷却し、熱可塑性樹脂層(B)の濡れ張力が40mN/mとなるようにコロナ放電処理を施した後、ロールに巻き取り、40℃の熟成室で24時間熟成させて、全厚が30μmの共押出フィルムを得た。
得られたフィルムのラミネート熱可塑性樹脂層(B)にウレタン系接着剤を使用して膜厚25μmのポリアミドフィルムをラミネートすることにより、積層体を得た。
【0134】
(比較例2)
シール層(A)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、MFR(190℃):7g/10分)90部とノニオン系界面活性剤10%含有ポリエチレンマスターペレット10部を用いた以外は比較例1と同様にして共押出フィルム及び積層フィルムを得た。
【0135】
(比較例3)
シール層(A)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、MFR(190℃):7g/10分)を用いた以外は実施例1と同様にして共押出フィルム及び積層体を得た。
【0136】
(比較例4)
シール層(A)用の樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm、MFR(190℃):7g/10分)98部と変性シリコーン50%含有ポリエチレンマスターペレット2部を用いた以外は実施例1と同様にして共押出フィルム及び積層体を得た。
【0137】
(比較例5)
シール層(A)用の樹脂としてプロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm、MFR:9g/10分間)40部と高密度ポリエチレン(密度:0.96g/cm、MFR:0.4g/10分間)60部を用いた以外は実施例1と同様にして共押出フィルム及び積層体を得た。
【0138】
得られた共押出フィルム及び積層体について、以下の方法で各種評価を実施した。
【0139】
(1)表面張力
得られた共押出フィルムのシール層(A)面について、DataPhysics社製接触角測定計OCA40を用いて、2μLの水液滴の静的接触角を測定した。
【0140】
(2)表面粗さ
得られた共押出フィルムについて、非接触表面・層断面形状計測システム VertScan(登録商標)2.0(型番:R3300G Lite、株式会社菱化システム製)を用いてシール層(A)表面の表面粗さ(RzJIS)を測定した(単位:μm)。
【0141】
(3)比表面積
得られた共押出フィルムについて、非接触表面・層断面形状計測システム VertScan(登録商標)2.0(型番:R3300G Lite、株式会社菱化システム製)を用いてシール層(A)表面の比表面積(S/A)を測定した。
【0142】
(4)フォームミルク付着性
得られた共押出フィルムのシール層(A)面に、60℃に加熱したミルクを攪拌装置泡立てて作成したフォームミルクを乗せ、24時間後に指先で軽く拭取った際の付着性を下記の基準で評価した。
○:固化物が容易に剥離し、跡が残らない。
△:固化物が容易に剥離するが、跡が残る。
×:固化物が容易に剥離しない。
【0143】
(5)ミートソース付着性
得られた積層体を10cm角に2枚カットし、内面をシール層(A)となるように重ね合わせ、三方をヒートシールすることで袋を作成した。袋内にミートソースを満たした後、ミートソースを取り出した際の付着性を下記の基準で評価した。
○:汚れが残らない。
△:一部汚れが付着している。
×:全面に汚れが付着している。
【0144】
(6)ミートソース洗浄性
ミートソース付着性を評価したサンプルの袋内を流水で10秒洗浄した際の付着性を下記の基準で評価した。
○:汚れが残らない。
△:一部汚れが付着している。
×:全面に汚れが付着している。
【0145】
(7)シール強度
得られた積層体を精密ヒートシーラー(テスター産業製)を用いて温度180℃及び200℃、圧力0.2MPaで、1.0秒間ヒートシールした後、放冷し、次いでヒートシール部から15mm幅の試験片を切り取り、23℃、50%RHの恒温室において引張速度300mm/分の条件で、万能型引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)で180度方向に剥離して最大荷重を測定し、下記の基準で評価した。
◎:50N/15mm以上
○:40~49N/15mm
△:25~39N/15mm
×:24N/15mm以下
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
本発明の多層フィルムである実施例1~3の多層フィルムは、フォームミルクやミートソースが比較的付着しづらく、またミートソース洗浄性にも優れていた。さらに、良好なシール強度を両立することができた。
【0149】
一方、比較例1の多層フィルムは、界面活性剤を含まず、凹凸構造を有する40℃のチルロールにより加圧冷却していないため比表面積が1.00であり、シール強度は良好であるがフォームミルクやミートソースが付着してしまい洗浄性にも劣っていた。比較例2の多層フィルムは、界面活性剤を含むものの、凹凸構造を有する40℃のチルロールにより加圧冷却していないため比表面積が1.00であり、ミートソースの付着や洗浄性は良好になったが、フォームミルクは付着してしまった。比較例3の多層フィルムは、界面活性剤を含まないため、比表面積が1.02以上であってもミートソース付着性や洗浄性に劣っていた。比較例4の多層フィルムは、界面活性剤の代わりに変性シリコーンを含有するため、フォームミルクやミートソースの付着性や洗浄性はやや良好であったが、シール強度が落ちてしまった。比較例5の多層フィルムは、エチレン系樹脂とプロピレン系樹脂を混合することにより比表面積が1.02以上となったが、界面活性剤を含まないため、特にミートソースの付着性や洗浄性に劣っており、シール強度も不良となった。