(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171510
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】パッケージデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241205BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20241205BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20241205BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L23/14 S
H01L21/56 R
H01L21/78 Q
H01L21/78 F
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088555
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小日向 恭祐
(72)【発明者】
【氏名】寺西 俊輔
【テーマコード(参考)】
5F061
5F063
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA07
5F061CA22
5F061CB03
5F061CB12
5F061CB13
5F061DA06
5F063AA46
5F063BA18
5F063CC41
5F063DD02
5F063DD26
(57)【要約】
【課題】基板面内におけるチップ実装領域の深さばらつきを抑制しつつ、外周縁からの樹脂漏れを抑制することができるパッケージデバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】パッケージデバイスの製造方法は、複数の交差する分割予定ラインを有する基板に対して、隣接する分割予定ラインに挟まれた領域にデバイスチップを収容可能な溝を形成する溝形成ステップ101と、溝形成ステップ101で形成された溝にデバイスチップを接着して配設するデバイスチップ配設ステップ102と、基板に対してモールド樹脂を供給してデバイスチップをモールド樹脂で被覆する樹脂モールドステップ103と、基板を分割予定ラインに沿って分割して個片化する分割ステップ104と、を備え、溝形成ステップ101では、溝が延びる方向の両端部が基板の外周縁に至らないように溝を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージデバイスの製造方法であって、
複数の交差する分割予定ラインを有する基板に対して、隣接する分割予定ラインに挟まれた領域にデバイスチップを収容可能な溝を形成する溝形成ステップと、
該溝形成ステップで形成された溝にデバイスチップを接着して配設するデバイスチップ配設ステップと、
該デバイスチップ配設ステップを実施した後、該基板に対してモールド樹脂を供給して該デバイスチップをモールド樹脂で被覆する樹脂モールドステップと、
該樹脂モールドステップを実施した後、該基板を該分割予定ラインに沿って分割して個片化する分割ステップと、
を備え、
該溝形成ステップでは、
該溝が延びる方向の両端部が該基板の外周縁に至らないように該溝を形成することを特徴とする、
パッケージデバイスの製造方法。
【請求項2】
該溝形成ステップでは、
切削ブレードを回転させながら該基板に対して当該基板の表面に垂直な方向に切り込ませた後、該切削ブレードと該基板とを相対的に移動させることにより該溝を形成することを特徴とする、
請求項1に記載のパッケージデバイスの製造方法。
【請求項3】
該樹脂モールドステップを実施した後、該デバイスチップを被覆する該モールド樹脂を研削して薄化するモールド樹脂研削ステップを備えることを特徴とする、
請求項1または2に記載のパッケージデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの小型化、高集積化に伴い、デバイスチップのパッケージ技術の開発が進んでいる。中でも、複数の半導体チップをウェーハ上に載置して半導体用の封止材(モールド樹脂)で封止し、再配線層(Redistribution Layer:RDL)を形成した後に個片化する実装方式は、通常のパッケージに必要なパッケージ基板が不要となることから、モジュールの薄型化や低コスト化、配線の短距離化等が可能となり、次世代技術として注目を浴びている。
【0003】
しかしながら、デバイスチップをモールド樹脂で被覆して封止する際に、モールド樹脂の収縮によって基板全体が沿ってしまい、その後の膜形成や電極形成、薄化等が困難になるという課題があった。これに対し、モールド樹脂の量を削減して反りを抑制するために、チップを搭載する領域以外の領域に隙間を埋めるための部材を配置する技術(特許文献1参照)や、基板に窪みを設けてその窪みにチップを配置する技術(特許文献2参照)等が提案されている。
【0004】
ところで、上記のプロセスで使用される隙間埋め部材や基板の窪みはドライエッチングを用いて形成されるのが一般的であるが、エッチングを実施するためにはマスクの形成が必須である他、除外設備の導入等も必要となるため、コストがかかるという問題が存在する。また、エッチングによって形成された窪みの底面におけるTTV(Total Thickness Variation)が大きく、窪みの内部にチップを複数搭載する場合のチップの高さばらつきが懸念されていた。
【0005】
そこで、本発明者らは、切削ブレードによりデバイスチップを収容可能な溝を形成することで、チップ実装領域の深さばらつきを抑制する方法を開発した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-92147号公報
【特許文献2】特表2019-512168号公報
【特許文献3】特開2022-147411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の方法では、切削ブレードにより基板の外周縁まで溝加工を施すことにより、後に続く工程でモールド樹脂を充填する際に、外周縁から樹脂が外に漏れてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板面内におけるチップ実装領域の深さばらつきを抑制しつつ、外周縁からの樹脂漏れを抑制することができるパッケージデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のパッケージデバイスの製造方法は、複数の交差する分割予定ラインを有する基板に対して、隣接する分割予定ラインに挟まれた領域にデバイスチップを収容可能な溝を形成する溝形成ステップと、該溝形成ステップで形成された溝にデバイスチップを接着して配設するデバイスチップ配設ステップと、該デバイスチップ配設ステップを実施した後、該基板に対してモールド樹脂を供給して該デバイスチップをモールド樹脂で被覆する樹脂モールドステップと、該樹脂モールドステップを実施した後、該基板を該分割予定ラインに沿って分割して個片化する分割ステップと、を備え、該溝形成ステップでは、該溝が延びる方向の両端部が該基板の外周縁に至らないように該溝を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のパッケージデバイスの製造方法において、該溝形成ステップでは、切削ブレードを回転させながら該基板に対して当該基板の表面に垂直な方向に切り込ませた後、該切削ブレードと該基板とを相対的に移動させることにより該溝を形成してもよい。
【0011】
また、本発明のパッケージデバイスの製造方法において、該樹脂モールドステップを実施した後、該デバイスチップを被覆する該モールド樹脂を研削して薄化するモールド樹脂研削ステップを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、基板面内におけるチップ実装領域の深さばらつきを抑制しつつ、外周縁からの樹脂漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態のパッケージデバイスの構成例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るパッケージデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係るパッケージデバイスの製造方法の加工対象であるウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す溝形成ステップの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す溝形成ステップの一状態を示すウェーハの平面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す溝形成ステップの別の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2に示すデバイスチップ配設ステップの一状態を一部断面で示すウェーハの要部の側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示す樹脂モールドステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図2に示す樹脂モールドステップの
図9の後の一状態を一部断面で示すウェーハの要部の側面図である。
【
図11】
図11は、
図2に示す分割ステップの一状態を一部断面で示すウェーハの要部の側面図である。
【
図12】
図12は、変形例に係るパッケージデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るパッケージデバイス1の製造方法について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態のパッケージデバイス1の構成について説明する。
図1は、実施形態のパッケージデバイス1の構成例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、パッケージデバイス1は、基板2と、デバイスチップ3と、モールド樹脂4と、を備える。
【0016】
図1に示す基板2は、例えば、シリコン、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等から構成される。基板2は、表面5から凹状に形成される溝6を含む。
【0017】
デバイスチップ3は、基板2に形成された溝6の内部に配設される。デバイスチップ3は、例えば、デバイスチップ3に貼着または塗布された接着剤、あるいは溝6の底面7に塗布された接着剤等によって、溝6の底面7に接着される。デバイスチップ3は、電極を備える。デバイスチップ3は、例えば、IC(Integrated Circuit)、またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、あるいはコンデンサ、抵抗等の受動部品である。
【0018】
モールド樹脂4は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、またはポリイミド樹脂等の絶縁性を有する合成樹脂により構成される。モールド樹脂4は、デバイスチップ3を被覆する。モールド樹脂4は、実施形態において、溝6内のデバイスチップ3の側面と基板2との間に充填され、基板2の表面5および溝6ごと、デバイスチップ3の表面8および側面を覆っている。モールド樹脂4は、実施形態において、熱硬化性樹脂により構成される。モールド樹脂4は、加熱され軟化した状態で基板2に供給され、硬化してデバイスチップ3を被覆する。
【0019】
次に、実施形態に係るパッケージデバイス1の製造方法を説明する。
図2は、実施形態に係るパッケージデバイス1の製造方法の流れを示すフローチャートである。実施形態のパッケージデバイス1の製造方法は、
図2に示すように、溝形成ステップ101と、デバイスチップ配設ステップ102と、樹脂モールドステップ103と、分割ステップ104と、を備える。
【0020】
図3は、実施形態に係るパッケージデバイス1の製造方法の加工対象であるウェーハ10の一例を示す斜視図である。
図3に示すように、ウェーハ10は、基板2を含む円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。ウェーハ10は、実施形態において、直径が300mmである。ウェーハ10(基板2)は、表面5に、複数の交差する分割予定ライン20と、隣接する分割予定ライン20に挟まれた複数の領域23と、を有する。
【0021】
分割予定ライン20は、実施形態において、第一の分割予定ライン21と、第二の分割予定ライン22と、を含む。第一の分割予定ライン21は、第一の方向11と平行な方向に延びる分割予定ライン20である。第一の方向11は、ウェーハ10の水平な表面5内の一方向である。
【0022】
第二の分割予定ライン22は、第二の方向12と平行な方向に延びる分割予定ライン20である。第二の方向12は、ウェーハ10の水平な表面5内において、第一の方向11と交差する方向である。第二の方向12は、実施形態において、第一の方向11と直交する方向である。すなわち、分割予定ライン20は、ウェーハ10の表面5において、第一の分割予定ライン21と第二の分割予定ライン22とによって格子状に設定される。
【0023】
領域23は、格子状に設定された分割予定ライン20によって区画される。それぞれの領域23には、後述のデバイスチップ配設ステップ102において、デバイスチップ3(
図1参照)が配設される。ウェーハ10は、後述の分割ステップ104において、分割予定ライン20に沿って分割され、個々のデバイスチップ3を有する領域23毎に個片化されて、パッケージデバイス1(
図1参照)に製造される。個片化されたパッケージデバイス1は、実施形態において、一辺が7mmの正方形状である。なお、パッケージデバイス1は、実施形態において、正方形状であるが、長方形状であってもよい。
【0024】
(溝形成ステップ101)
図4は、
図2に示す溝形成ステップ101の一例を示す斜視図である。
図5は、
図2に示す溝形成ステップ101の一状態を示すウェーハ10の平面図である。
図6は、
図5に示すII-II線に沿う断面図である。溝形成ステップ101は、隣接する分割予定ライン20に挟まれた領域23にデバイスチップ3を収容可能な溝6を形成するステップである。なお、実施形態では、ウェーハ10に100μm深さかつ3mm幅の溝61を形成する。溝6は、第一の方向11に平行な方向に延びる溝61と、第二の方向12に平行な方向に延びる溝62と、を含む。以下では、
図5および
図6に示す溝61を形成した後、
図5に示す溝62を形成するものとして説明するが、溝61のみを形成してもよい。
【0025】
図4に示す溝形成ステップ101では、切削装置30による切削加工によって、ウェーハ10の表面5に溝6を形成する。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。実施形態の切削装置30は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。切削装置30は、保持面32を有するチャックテーブル31と、切削ユニット33と、チャックテーブル31と切削ユニット33とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、不図示の撮像ユニットと、を備える。
【0026】
切削ユニット33は、円板形状の切削ブレード34と、切削ブレード34の回転軸となるスピンドル35と、スピンドル35に装着され切削ブレード34が固定されるマウントフランジ36(
図11参照)と、を備える。切削ブレード34およびスピンドル35は、切削対象のウェーハ10を保持するチャックテーブル31の保持面32に対して平行な回転軸を備える。切削ブレード34は、スピンドル35の先端に装着される。
【0027】
図4に示す溝形成ステップ101では、まず、チャックテーブル31の保持面32にウェーハ10の裏面9側を吸引保持する。なお、ウェーハ10は、環状のフレームに貼着された貼着テープ90(
図8等参照)によって裏面9側から支持され、貼着テープ90越しにチャックテーブル31の保持面32に保持されてもよい。
【0028】
図4に示す溝形成ステップ101では、次に、切削ユニット33とウェーハ10との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットが、チャックテーブル31を切削ユニット33の下方の加工領域まで移動させ、不図示の撮像ユニットでウェーハ10を撮影しアライメントする。これにより、ウェーハ10の第一の方向11を、加工送り方向であるX軸方向に平行な方向に一致させるとともに、切削ブレード34の加工点を、隣接する第一の分割予定ライン21に挟まれた領域23であって、ウェーハ10(基板2)の外周縁13から所定距離内側の位置に位置合わせする。所定距離内側の位置とは、切削ブレード34が所定切り込み量(実施形態では、100μm深さ)切り込み送りされた場合に、形成される溝61の外周縁13側の端部が外周縁13より径方向内側となる位置をいう。
【0029】
図4に示す溝形成ステップ101では、次に、ウェーハ10の表面5側に向けて切削水の供給を開始させ、切削ブレード34を回転させながら保持面32に直交する方向に切り込み送りしてウェーハ10に当接させ、所定切り込み量(実施形態では、100μm深さ)切り込ませる。次に、不図示の移動ユニットによって、チャックテーブル31と切削ユニット33の切削ブレード34とを隣接する第一の分割予定ライン21に挟まれた領域23に沿って相対的に移動させて加工送りさせながら、ウェーハ10に所定切り込み量の溝61を形成する。そして、切削ブレード34によって形成される溝61が反対側の外周縁13に至らない位置で加工送りを停止させ、切削ブレード34を保持面32から離隔させる。これにより、
図5に示すように、第一の分割予定ライン21に挟まれた領域23に、第一の方向11に平行な方向に延び、かつ両端部が基板2の外周縁13に至らない溝61が形成される。
【0030】
溝形成ステップ101では、次に、ウェーハ10の第二の方向12を、加工送り方向であるX軸方向に平行な方向に一致させるとともに、切削ブレード34の加工点を、隣接する第二の分割予定ライン22に挟まれた領域23であって、ウェーハ10(基板2)の外周縁13から所定距離内側の位置に位置合わせする。次に、ウェーハ10の表面5側に向けて切削水の供給を開始させ、切削ブレード34を回転させながら保持面32に直交する方向に切り込み送りしてウェーハ10に当接させ、所定切り込み量(実施形態では、溝61の深さと同一量)切り込ませる。次に、不図示の移動ユニットによって、チャックテーブル31と切削ユニット33の切削ブレード34とを隣接する第二の分割予定ライン22に挟まれた領域23に沿って相対的に移動させて加工送りさせながら、ウェーハ10に所定切り込み量の溝62を形成する。そして、切削ブレード34によって形成される溝62が反対側の外周縁13に至らない位置で加工送りを停止させ、切削ブレード34を保持面32から離隔させる。これにより、
図6に示すように、第二の分割予定ライン22に挟まれた領域23に、第二の方向12に平行な方向に延び、かつ両端部が基板2の外周縁13に至らない溝62が形成される。
【0031】
図4に示す溝形成ステップ101において切削装置30によって溝6を形成する場合、溝6の幅より細い幅の切削ブレード34で、複数パスで切り込んでもよいし、溝6の幅と同じ太い幅の切削ブレード34で、1パスで切り込んでもよい。
【0032】
溝形成ステップ101は、レーザー加工装置40によるアブレーション加工によって、ウェーハ10の表面5に溝6を形成してもよい。
図7は、
図2に示す溝形成ステップ101の別の一例を示す斜視図である。実施形態のレーザー加工装置40は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。レーザー加工装置40は、保持面42を有するチャックテーブル41と、レーザービーム照射ユニット43と、チャックテーブル41とレーザービーム照射ユニット43とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、撮像ユニット44と、を備える。
【0033】
図7に示す溝形成ステップ101では、まず、チャックテーブル41の保持面42にウェーハ10の裏面9側を吸引保持する。次に、レーザービーム照射ユニット43とウェーハ10との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットがチャックテーブル41を加工位置まで移動させ、不図示の撮像ユニットでウェーハ10を撮像しアライメントする。これにより、ウェーハ10の第一の方向11を、加工送り方向であるX軸方向に平行な方向に一致させるとともに、レーザービーム照射ユニット43の照射部を、隣接する第一の分割予定ライン21に挟まれた領域23であって、ウェーハ10(基板2)の外周縁13から所定距離内側の位置に位置合わせする。所定距離内側の位置とは、ウェーハ10の表面5に照射されるレーザービーム45の被照射範囲の全てが外周縁13より径方向内側となる位置をいう。
【0034】
図7に示す溝形成ステップ101では、次に、不図示の移動ユニットによって、レーザービーム照射ユニット43に対してチャックテーブル41を相対的に加工送り方向に移動させながら、レーザービーム45を、ウェーハ10の表面5または表面5近傍に集光点を位置付けて照射する。レーザービーム45は、基板2に対して吸収性を有する波長のレーザービームである。溝形成ステップ101では、ウェーハ10の表面5または表面5近傍に集光点を位置付けたレーザービーム45を、隣接する第一の分割予定ライン21に挟まれた領域23に沿って照射し、レーザービーム45の被照射範囲が反対側の外周縁13に至らない位置で加工送りを停止させる。これにより、第一の分割予定ライン21に挟まれた領域23に、第一の方向11に平行な方向に延び、かつ基板2の外周縁13に至らない溝61が形成される。
【0035】
図7に示す溝形成ステップ101においても、溝61を形成した後、第二の方向12に平行な方向に延びる溝62を形成してもよい。すなわち、ウェーハ10の第二の方向12を、加工送り方向であるX軸方向に平行な方向に一致させるとともに、レーザービーム照射ユニット43の照射部を、隣接する第二の分割予定ライン22に挟まれた領域23であって、ウェーハ10(基板2)の外周縁13から所定距離内側の位置に位置合わせする。不図示の移動ユニットによって、レーザービーム照射ユニット43に対してチャックテーブル41を相対的に加工送り方向に移動させながら、レーザービーム45を、ウェーハ10の表面5または表面5近傍に集光点を位置付けて照射する。
図7に示す溝形成ステップ101では、ウェーハ10の表面5または表面5近傍に集光点を位置付けたレーザービーム45を、隣接する第二の分割予定ライン22に挟まれた領域23に沿って照射し、レーザービーム45の被照射範囲が反対側の外周縁13に至らない位置で加工送りを停止させる。これにより、第二の分割予定ライン22に挟まれた領域23に、第二の方向12に平行な方向に延び、かつ基板2の外周縁13に至らない溝62が形成される。
【0036】
(デバイスチップ配設ステップ102)
図8は、
図2に示すデバイスチップ配設ステップ102の一状態を一部断面で示すウェーハ10の要部の側面図である。デバイスチップ配設ステップ102は、溝形成ステップ101で形成された溝6にデバイスチップ3を接着して配設する。デバイスチップ配設ステップ102では、例えば、まず、デバイスチップ3の裏面に接着剤を塗布する。次に、デバイスチップ3の接着剤を塗布した裏面側を溝6の底面7に合わせて接着する。
【0037】
デバイスチップ配設ステップ102では、デバイスチップ3の裏面に接着剤を塗布する代わりに、接着シートを貼着してもよい。また、デバイスチップ配設ステップ102では、例えば、デバイスチップ3の裏面ではなく、溝6の底面7に接着剤を塗布してもよい。
【0038】
(樹脂モールドステップ103)
図9は、
図2に示す樹脂モールドステップ103の一状態を一部断面で示す側面図である。
図10は、
図2に示す樹脂モールドステップ103の
図9の後の一状態を一部断面で示すウェーハ10の要部の側面図である。樹脂モールドステップ103は、デバイスチップ配設ステップ102を実施した後に実施される。樹脂モールドステップ103は、ウェーハ10(基板2)に対してモールド樹脂4を供給してデバイスチップ3をモールド樹脂4で被覆するステップである。
【0039】
図9および
図10に示す樹脂モールドステップ103では、圧縮成形機50によって、デバイスチップ3をモールド樹脂4で被覆する。圧縮成形機50は、保持面52を有する上型51と、保持面52と対向するキャビティ54を有する下型53と、を備える。
【0040】
図9に示すように、樹脂モールドステップ103では、まず、上型51の保持面52にウェーハ10の裏面9側を固定する。ウェーハ10は、実施形態において、ウェーハ10を支持する貼着テープ90越しに、上型51の保持面52に固定される。次に、下型53のキャビティ54に所定量の液状のモールド樹脂4を充填する。次に、上型51を下型53の方向に移動させて、ウェーハ10の表面5側をキャビティ54内のモールド樹脂4に押し付ける。
【0041】
図10に示すように、ウェーハ10の表面5側をキャビティ54内のモールド樹脂4に押し付けることによって、液状のモールド樹脂4は、ウェーハ10の表面5からデバイスチップ3が収容された溝6のデバイスチップ3との間に入り込み、デバイスチップ3の側面側の空間に充填される。この際、外周縁13から所定距離内側までの領域には溝6が形成されていないため、モールド樹脂4が外周縁13より外側に漏出することが抑制される。更に、液状のモールド樹脂4は、上型51から圧力がかかることによって、キャビティ54とウェーハ10の表面5との間で圧縮されて硬化し、デバイスチップ3を被覆した状態に固定される。
【0042】
(分割ステップ104)
図11は、
図2に示す分割ステップ104の一状態を一部断面で示すウェーハ10の要部の側面図である。分割ステップ104は、樹脂モールドステップ103を実施した後に実施される。分割ステップ104は、溝6にデバイスチップ3が配設され、デバイスチップ3がモールド樹脂4により被覆されたウェーハ10(基板2)を、分割予定ライン20に沿って分割して個片化するステップである。
【0043】
図11に示す分割ステップ104では、切削装置30による切削加工によって、ウェーハ10を分割する。すなわち、分割ステップ104は、切削ブレード34と基板2とを相対的に移動させることで分割予定ライン20に沿ってウェーハ10を切削する切削ステップを含む。切削装置30は、
図4に示す溝形成ステップ101で使用した装置と同一または同様の装置でもよい。分割ステップ104では、溝6よりも細い幅の切削ブレード34を用いる。
【0044】
分割ステップ104では、まず、チャックテーブル31の保持面32にウェーハ10の裏面9側を吸引保持する。なお、ウェーハ10は、環状のフレームに貼着された貼着テープ90によって裏面9側から支持され、貼着テープ90越しにチャックテーブル31の保持面32に保持されることが好ましい。
【0045】
分割ステップ104では、次に、切削ユニット33とウェーハ10との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットが、チャックテーブル31を切削ユニット33の下方の加工領域まで移動させ、不図示の撮像ユニットでウェーハ10を撮影しアライメントすることで、切削ブレード34の加工点を、ウェーハ10の分割予定ライン20に位置合わせする。
【0046】
分割ステップ104では、次に、ウェーハ10(基板2)の表面5側に向けて切削水の供給を開始させ、切削ブレード34を回転させながらウェーハ10に当接させる。次に、不図示の移動ユニットによって、チャックテーブル31と切削ユニット33の切削ブレード34とを分割予定ライン20に沿って相対的に移動させながら、ウェーハ10の裏面9側に達するまで切り込ませて、ウェーハ10を分割予定ライン20に沿って分割する。
【0047】
すべての分割予定ライン20に沿ってウェーハ10(基板2)を分割することにより、ウェーハ10は、デバイスチップ3毎に個片化され、パッケージデバイス1に製造される。ウェーハ10がパッケージデバイス1に分割された後は、例えば、ピックアップ工程において、周知のピッカーで貼着テープ90からパッケージデバイス1がピックアップされる。
【0048】
〔変形例〕
次に、変形例に係るパッケージデバイス1の製造方法を説明する。
図12は、変形例に係るパッケージデバイス1の製造方法の流れを示すフローチャートである。変形例のパッケージデバイス1の製造方法は、
図12に示すように、溝形成ステップ201と、デバイスチップ配設ステップ202と、樹脂モールドステップ203と、モールド樹脂研削ステップ204と、基板研削ステップ205と、分割ステップ206と、を備える。なお、変形例の溝形成ステップ201、デバイスチップ配設ステップ202、および樹脂モールドステップ203、および分割ステップ206は、実施形態の溝形成ステップ101、デバイスチップ配設ステップ102、樹脂モールドステップ103、および分割ステップ104と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
(モールド樹脂研削ステップ204)
図13は、
図12に示すモールド樹脂研削ステップ204の一例を示す側面図である。モールド樹脂研削ステップ204は、樹脂モールドステップ203を実施した後、分割ステップ206を実施する前に実施される。モールド樹脂研削ステップ204は、デバイスチップ3を被覆するモールド樹脂4を研削して薄化するステップである。
【0050】
図13に示すモールド樹脂研削ステップ204では、研削装置70による研削加工によって、ウェーハ10(基板2)の表面5を被覆するモールド樹脂4を研削する。研削装置70は、保持面72を有するチャックテーブル71と、研削ユニット73と、を備える。研削ユニット73は、回転軸部材であるスピンドル74と、スピンドル74の下端に取り付けられたホイール基台75と、ホイール基台75の下面に装着される研削砥石76と、を備える。ホイール基台75は、チャックテーブル71の軸心と平行な回転軸で回転する。
【0051】
モールド樹脂研削ステップ204では、まず、チャックテーブル71の保持面72にウェーハ10の裏面9側を吸引保持する。次に、チャックテーブル71を軸心回りに回転させた状態で、ホイール基台75を軸心回りに回転させる。加工位置に研削水を供給するとともに、ホイール基台75の下面に装着された研削砥石76をチャックテーブル71に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石76でウェーハ10の表面5を被覆するモールド樹脂4を、表面側から研削する。これにより、モールド樹脂4を薄化する。
【0052】
(基板研削ステップ205)
図14は、
図12に示す基板研削ステップ205の一例を示す側面図である。基板研削ステップ205は、分割ステップ206を実施する前に実施される。また、変形例の基板研削ステップ205は、モールド樹脂研削ステップ204を実施した後に実施される。基板研削ステップ205は、基板2の裏面9側を研削して薄化するステップである。
【0053】
図14に示す基板研削ステップ205では、研削装置70による研削加工によって、ウェーハ10(基板2)の裏面9全面を研削する。研削装置70は、モールド樹脂研削ステップ204で用いた研削装置70と同一の装置でもよいし、別個の装置でもよい。
【0054】
基板研削ステップ205では、まず、チャックテーブル71の保持面72にウェーハ10の表面5を被覆するモールド樹脂4側を吸引保持する。次に、チャックテーブル71を軸心回りに回転させた状態で、ホイール基台75を軸心回りに回転させる。加工位置に研削水を供給するとともに、ホイール基台75の下面に装着された研削砥石76をチャックテーブル71に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石76でウェーハ10を裏面9側から研削する。これにより、基板2を薄化する。
【0055】
以上説明したように、実施形態および変形例のパッケージデバイス1の製造方法では、ウェーハ10(基板2)に形成した溝6にデバイスチップ3を実装する。溝6を形成する方法として、切削装置30による切削や、レーザー加工装置40によるアブレーションを実施することによって、エッチングと比較してTTVを改善でき、更に、基板2面内におけるデバイスチップ3実装領域の深さばらつきを低減することができる。また、エッチング用のマスクを形成する必要がないためプロセスを減らすことで加工時間の短縮ができ、コストや工数の削減が可能となる。
【0056】
上記の実施形態における
図4に示す切削装置30による溝形成ステップ101、201では、例えば、30mm/secで44ライン加工すると、所用時間が10min程度である。これに対し、エッチングで100μm深さの溝6を形成する場合、例えば、エッチングレートが7μm/minであり、所要時間が15min程度である。エッチングでは除去領域が広く深い程、加工時間が増加するが、切削による溝加工では深さが変動しても加工時間は変化しない。したがって、実施形態および比較例の溝形成ステップ101、201は、エッチングと比較して加工時間を更に短縮することができる。
【0057】
また、実施形態および変形例のパッケージデバイス1の製造方法では、ウェーハ10(基板2)にデバイスチップ3を配設する溝6を形成する際に、外周縁13から所定距離内側までの領域を切断しないように切削ブレード34やレーザービーム45によって溝加工を施す。これにより、後に続く樹脂モールドステップ103、203において、この溝6にモールド樹脂4を充填する際、外周縁13からモールド樹脂4が漏出してしまうことを抑制できるという効果を奏する。
【0058】
また、溝6の外周縁13側の端部までモールド樹脂4が充填されていない場合、外周領域が中空状態となり、ウェーハ10(基板2)の裏面9を研削する際に研削不良を引き起こす可能性があるが、上述した実施形態および変形例の方法により、溝6全体にモールド樹脂4を充填することができ、中空が生まれないため、研削不良を未然に防ぐことも可能となる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0060】
例えば、溝形成ステップ101、201において、レーザービーム45によって溝6を形成する場合、レーザー加工装置40は、ポリゴンミラーでレーザービーム45をスキャンする光学系を備えてもよい。これにより、溝6の底面7におけるTTVを向上させることができる。
【0061】
また、溝形成ステップ101、201において、実施形態では、隣接する分割予定ライン20に挟まれた領域23に1本の溝6を形成したが、本開示では、隣接する分割予定ライン20に挟まれた領域23に複数本の溝6を形成してもよい。この場合、分割ステップ104において分割され個片化された後のパッケージデバイス1は、それぞれが複数の溝6を有する。この場合、例えば、各溝6には、デバイスチップ3が少なくとも一つ配設されるのが望ましい。
【0062】
また、デバイスチップ配設ステップ102、202は、
図8に示す実施形態ではウェーハ10(基板2)の表面5側を上面としてデバイスチップ3を上方から溝6内に接着するが、本発明ではデバイスチップ3に対して上からウェーハ10を被せるように接着してもよい。
【0063】
また、樹脂モールドステップ103、203において、実施形態では、下型53のキャビティ54に所定量の液状のモールド樹脂4を充填し、上型51を下型53の方向に移動させて、ウェーハ10の表面5側をキャビティ54内のモールド樹脂4に押し付けたが、本発明では、これに限定されない。例えば、下型53のキャビティ54に所定量の顆粒状のモールド樹脂4を入れ、キャビティ54内のモールド樹脂4を溶融させた後、上型51を下型53の方向に移動させて、ウェーハ10の表面5側をキャビティ54内のモールド樹脂4に押し付けてもよい。また、上記のような所謂フェイスダウン方式に限定されず、平坦な下型上にウェーハ10を載置した状態で、ウェーハ10の表面5上にモールド樹脂4を供給し、ウェーハ10の表面5と対向するキャビティを有する上型を上方から移動させて下型側に押し付ける、所謂フェイスアップ方式によって、モールド樹脂4を圧縮し、硬化させてもよい。
【0064】
また、分割ステップ104、206は、実施形態(
図11)および変形例では切削ブレード34によるフルカットによって基板2を分割するが、本発明ではハーフカットした後にウェーハ10の裏面9を研削することによって基板2を分割してもよい。また、切削ブレード34によるハーフカットで切り込みを形成する代わりに、ウェーハ10に対して透過性を有するレーザービームによって分割起点となる改質層を形成してもよい。
【0065】
すなわち、実施形態の分割ステップ104は、ハーフカットを実施した後にウェーハ10(基板2)の裏面9側を研削して薄化する基板研削ステップ(手順は、変形例の基板研削ステップ205と同様)を含んでもよい。このような基板研削ステップは、溝形成ステップ101を実施する前に実施されてもよい。また、変形例の基板研削ステップ205は、溝形成ステップ201を実施する前に実施されてもよい。
【0066】
また、本発明のパッケージデバイス1の製造方法は、基板2およびデバイスチップ3が積層されるパッケージデバイス1にも適用可能である。すなわち、モールド樹脂研削ステップ204の後、溝6にデバイスチップ3を接着してモールド樹脂4で被覆しモールド樹脂4を薄化した状態の基板2である前述したウェーハ10と、他の基板とを積層する積層ステップを備えてもよい。この場合、他の基板として、ウェーハ10と同様に構成された他のウェーハをウェーハ10に積層してもよいし、キャリアウェーハ等を積層してもよい。ウェーハ10に他の基板であるキャリアウェーハを積層する(貼り付ける)場合、積層した(貼り付けた)後に、ウェーハ10およびキャリアウェーハにシリコン貫通電極、再配線層等を周知の方法で形成するのが望ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 パッケージデバイス
2 基板
3 デバイスチップ
4 モールド樹脂
6、61、62 溝
10 ウェーハ
11 第一の方向
12 第二の方向
13 外周縁
20 分割予定ライン
21 第一の分割予定ライン
22 第二の分割予定ライン
23 領域
34 切削ブレード
101、201 溝形成ステップ
102、202 デバイスチップ配設ステップ
103、203 樹脂モールドステップ
104、206 分割ステップ
204 モールド樹脂研削ステップ
205 基板研削ステップ