(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171566
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基板処理装置、および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241205BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088639
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】和村 有
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 一秀
(72)【発明者】
【氏名】両角 友一朗
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA44
4K030EA05
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4K030EA11
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4K030KA02
5F045AA08
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5F045EH18
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】基板処理の均一性を促すことが可能となり、かつ生産性を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、処理容器と、前記処理容器の内部に回転可能に設けられる回転テーブルと、回転テーブルの回転中心から離れた位置で基板を載置し、回転テーブルに対して相対的に回転可能な複数の載置台と、を備える。また、基板処理装置は、回転テーブルの回転に伴って複数の載置台の中心が通過する位置に配置される複数のノズルを有する。複数のノズルは、回転テーブルの回転に伴って移動する複数の載置台の基板に対して、当該基板の半径よりも短い径方向範囲に処理ガスを吐出する処理ガス吐出部と、処理ガス吐出部よりも外側においてガスを吸引するガス吸引部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器の内部に回転可能に設けられる回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転中心から離れた位置で基板を載置し、前記回転テーブルに対して相対的に回転可能な複数の載置台と、
前記回転テーブルの回転に伴って前記複数の載置台の中心が通過する位置に配置される複数のノズルと、を備え、
前記複数のノズルは、
前記回転テーブルの回転に伴って移動する前記複数の載置台の前記基板に対して、当該基板の半径よりも短い径方向範囲に処理ガスを吐出する処理ガス吐出部と、
前記処理ガス吐出部よりも外側においてガスを吸引するガス吸引部と、を有する、
基板処理装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、
前記処理ガスとして前記基板に吸着させる吸着ガスを前記処理ガス吐出部から吐出する第1ノズルと、
前記基板に付着した前記吸着ガスと反応する反応ガスを前記処理ガス吐出部から吐出する第2ノズルと、を含む、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1ノズルが前記吸着ガスを吐出する期間と、前記第2ノズルが前記反応ガスを吐出する期間とは、相互に異なる、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理容器は、周方向に沿って複数の前記第1ノズルを等間隔に備えると共に、周方向に沿って複数の前記第2ノズルを等間隔に備える、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理容器は、前記処理容器の中心から前記処理容器の側壁に向かって延在し、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルを固定する隔壁部材を有する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1ノズルは、前記隔壁部材における前記回転テーブルの第1回転方向の側面に固定され、
前記第2ノズルは、前記隔壁部材における前記回転テーブルの前記第1回転方向と反対方向である第2回転方向の側面に固定される、
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記複数のノズルは、前記処理ガス吐出部と前記ガス吸引部との間に、パージガスを吐出するパージガス吐出部を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数のノズルのうち少なくとも1つは、前記処理ガス吐出部の内部においてプラズマを生成するアンテナを備える、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記ノズルに前記処理ガスを供給するガス供給部と、
前記ノズルから前記ガスを吸引するガス排出部と、
前記ガス供給部、前記ガス排出部、前記回転テーブルおよび前記複数の載置台の回転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の載置台を回転させると共に、前記ガス供給部による前記処理ガスの供給および前記ガス排出部による前記ガスの吸引を行った状態で、前記回転テーブルを回転させる、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数のノズルと相対的に前記回転テーブルを往復させる、
請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記基板の外縁に対向する位置よりも前記基板の中心に対向する位置において、前記回転テーブルの速度を速くする、
請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項12】
処理容器と、
前記処理容器の内部に回転可能に設けられる回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転中心から離れた位置で基板を載置し、前記回転テーブルに対して相対的に回転可能な複数の載置台と、
前記回転テーブルの回転に伴って前記複数の載置台の中心が通過する位置に配置される複数のノズルと、を備える基板処理装置の基板処理方法であって、
前記複数のノズルの処理ガス吐出部により、前記複数の載置台に載置される前記基板の半径よりも短い径方向範囲に処理ガスを吐出し、かつ前記複数のノズルのガス吸引部により、前記処理ガス吐出部よりも外側においてガスを吸引する工程と、
前記複数の載置台を前記回転テーブルと相対的に回転させ、かつ前記回転テーブルの回転により前記複数の載置台を移動させ、前記複数のノズルに対向させる工程と、を有する、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化や高性能化に伴い、基板処理装置は、成膜処理等の基板処理において膜厚分布の均一性を促進する等の対応が求められている。その一方で、基板処理装置は、基板処理の生産性を向上させることも要望されている。
【0003】
特許文献1には、真空容器内に複数の基板を収容して、基板処理を各基板に施す基板処理装置が開示されている。この基板処理装置は、複数の載置台を有する回転テーブルを公転させながら、この回転テーブルと相対的に各載置台を自転させ、さらに真空容器内に処理ガスを供給することで、各載置台に載置された各基板に対して成膜処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板処理の均一性を促すことが可能となり、かつ生産性を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、処理容器と、前記処理容器の内部に回転可能に設けられる回転テーブルと、前記回転テーブルの回転中心から離れた位置で基板を載置し、前記回転テーブルに対して相対的に回転可能な複数の載置台と、前記回転テーブルの回転に伴って前記複数の載置台の中心が通過する位置に配置される複数のノズルと、を備え、前記複数のノズルは、前記回転テーブルの回転に伴って移動する前記複数の載置台の前記基板に対して、当該基板の半径よりも短い径方向範囲に処理ガスを吐出する処理ガス吐出部と、前記処理ガス吐出部よりも外側においてガスを吸引するガス吸引部と、を有する、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、基板処理の均一性を促すことが可能となり、かつ生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る基板処理装置を示す平面図である。
【
図2】
図1の基板処理装置のII‐II線の模式的な断面図である。
【
図3】基板保持部の構成を抜き出して示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、第1ノズルを示す側面断面図である。
図4(B)は、第1ノズルを基板側から見た平面図である。
【
図5】
図5(A)は、第2ノズルを示す側面断面図である。
図5(B)は、第2ノズルを基板側から見た平面図である。
【
図6】基板処理方法の処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】
図7(A)~
図7(D)は、吸着ステップの回転テーブルの動作を示す平面図である。
【
図8】
図8(A)は、第1ノズルに対する基板の軌道を示す平面図である。
図8(B)~
図8(D)は、回転テーブルの速度を変更する例を示す説明図である。
【
図9】
図8(A)~
図8(D)は、酸化ステップの回転テーブルの動作を示す平面図である。
【
図10】第1変形例に係る基板処理方法の処理フローを示すフローチャートである。
【
図11】第2変形例に係る基板処理装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
実施形態に係る基板処理装置1は、
図1に示すように、複数(4つ)の基板Wを同時に処理可能な装置に構成される。具体的には、基板処理装置1は、処理容器10と、基板保持部20と、ガス供給部30と、ガス排出部40と、ノズル構造部50と、を備える。また、基板処理装置1は、当該基板処理装置1の各構成の動作を制御する制御部90を有する。なお、
図1では、説明の便宜のために、処理容器10の天板12の図示を省略している。
【0011】
実施形態に係る基板処理装置1は、基板処理として、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法または分子層堆積(MLD:Molecular Layer Deposition)法による成膜処理を行う。なお、基板処理装置1は、基板処理として成膜処理を行う構成に限定されず、例えば、基板W上の膜をエッチングするエッチング処理、または基板W上のデポを除去するクリーニング処理等を行う装置であってもよい。
【0012】
基板処理が施される基板Wとしては、シリコン半導体、化合物半導体または酸化物半導体等の半導体ウエハがあげられる。基板Wは、トレンチ、ビア等の窪みパターンを有するものでもよい。
【0013】
図1および
図2に示すように、処理容器10は、石英等により形成され、複数の基板Wを収容し、また減圧可能な内部空間を有する。処理容器10は、平面視で正円形状を有し、水平方向の直径よりも短い鉛直方向長さを有する円筒形状に形成されている。なお、処理容器10は、角筒形状(平面視で方形状)に形成されてもよい。具体的には、処理容器10は、本体11と、本体11の天井を覆う天板12と、本体11の下側に連結される収容容器13と、を有する(
図2参照)。
【0014】
本体11は、円盤形状の底壁111と、底壁111の外縁から鉛直方向に突出する側壁112と、を備える。底壁111と側壁112は、互いに一体に連なっており、その内側の凹空間を囲っている。また、本体11は、底壁111を固定および支持する固定軸113を、底壁111の中心に有する。
【0015】
底壁111の上面には、基板保持部20に保持される各基板Wを温調するための温調部14が設置されている。温調部14は、例えば、底壁111に設置されるヒータ141と、ヒータ141の上に配置されるカバー142と、を含む。ヒータ141は、例えば、電熱線を内部に備えた円板に形成され、図示しない温調ドライバ等を介して制御部90に接続されている。これにより、ヒータ141は、制御部90により温度が調整される。カバー142は、ヒータ141の略全体を覆うことで、ガス供給部30により内部空間に供給されたガスがヒータ141に触れることを遮断する。なお、温調部14は、ヒータ141に限定されず、熱交換器やチラー等により温調した温調媒体を、底壁111の内部や天板12の内部に形成された流路(不図示)に循環させて、各基板Wを温調する構成等を適当してよい。
【0016】
固定軸113は、本体11を支持すると共に、温調部14に対する電力供給または温調媒体の流通を行うための図示しない空間を内部に有する。また例えば、固定軸113は、底壁111よりも鉛直方向上側に突出して天板12を支持すると共に、基板保持部20の回転テーブル21の内側を軸支している。
【0017】
天板12は、本体11の凹空間を塞ぐように側壁112に固定されることで、本体11と協働して処理容器10の内部空間を形成する。側壁112と天板12との接触部には、内部空間を気密に閉塞可能な図示しないシール部材が設けられている。
【0018】
また、処理容器10は、固定軸113と天板12との間を連結する中心固定部121を、天板12の中心に備える。さらに、処理容器10は、中心固定部121から本体11の側壁112に向かって放射状に延在する複数(4つ)の隔壁部材122を有する(
図1も参照)。
【0019】
各隔壁部材122は、天板12の下面に連結されると共に、後記のノズル構造部50の第1ノズル60および第2ノズル70を保持している。各隔壁部材122は、天板12から突出して、第1ノズル60や第2ノズル70よりも基板保持部20の回転テーブル21の上面に近接する位置に下端を配置している。各隔壁部材122は、処理容器10の回転テーブル21よりも上側の空間を区画している。4つの隔壁部材122によって、処理容器10の回転テーブル21よりも上側は、内部空間を90°毎に4分割した区画が形成される(以下、4分割した区画を第1象限Q1~第4象限Q4という場合もある)。ただし、内部空間は、完全に隔てられるものではなく、隔壁部材122よりも下側では相互に連通している。なお、隔壁部材122は、図示しない流路を内部に有すると共に、下面(回転テーブル21の対向面)に設けられ流路に連通する1以上の吐出口(不図示)からパージガスを吐出する構成でもよい。このパージガスの吐出によって、第1象限Q1~第4象限Q4にそれぞれ供給するガス同士を分離できる。
【0020】
処理容器10は、本体11の側壁112の適宜の位置(4分割した領域の1つの領域の周方向中間位置)に側口112aを備える。側口112aには、基板Wを搬送する搬送装置2が進入および後退する。基板処理装置1および搬送装置2を有する基板処理システムは、この側口112aを介して各基板Wの搬入出を行う。側壁112には、側口112aを開閉するためのゲートバルブ15が設けられている。
【0021】
図1および
図2に示すように、基板処理装置1の基板保持部20は、処理容器10に収容される4つの基板Wを公転可能かつ自転可能に保持する。このため、基板保持部20は、回転テーブル21と、回転テーブル21の外周部の上面において各基板Wをそれぞれ支持する複数(4つ)の載置台22と、を有する。また、基板保持部20は、各載置台22を公転させる構成として、回転テーブル21を支持する支持体23と、支持体23を回転可能に支持する回転軸24と、回転軸24を回転させる公転駆動部25と、を含む。さらに、基板保持部20は、各載置台22を自転させる構成として、支持体23内に設けられる自転駆動部26と、自転駆動部26から突出する自転軸27と、を含む。
【0022】
回転テーブル21は、処理容器10の内部空間において、固定軸113周りに回転可能となっている。回転テーブル21は、石英等により形成され、円環板形状を呈している。回転テーブル21の中心には、磁性流体等の軸受部211を介して固定軸113に軸支される軸支孔21hが設けられている。
図3に示すように、回転テーブル21の下面は、支持体23から突出する複数の支柱部28に固定されている。各支柱部28は、処理容器10の底壁111および温調部14を厚み方向に貫通するように設けられた通路16を介して、本体11の内側と外側との間を延在している。これにより、支持体23が回転すると各支柱部28が通路16内を周回して、その回転力を回転テーブル21に伝達できる。
【0023】
4つの載置台22は、回転テーブル21の中心から同じ距離(径方向位置)に設けられ、また周方向に沿って等間隔(すなわち、90°間隔毎)に配置されている。各載置台22は、石英により形成され、基板Wよりも僅かに大きい正円形状を呈している。各載置台22は、基板Wを載置する平坦状の載置面22sを上面に有する。各載置台22の下面には、自転軸27がそれぞれ連結されている。
【0024】
自転駆動部26は、各載置台22の鉛直方向下側にそれぞれ設けられ、自転軸27を回転可能に支持している。自転駆動部26は、サーボモータ等のモータおよび回転伝達機構を有し(共に不図示)、また制御部90に接続されている。自転駆動部26は、制御部90の制御下に回転することで、自転軸27を介して鉛直方向に対向する載置台22を適宜の速度で回転させる。
【0025】
各自転軸27は、支持体23の上部、本体11の底壁111および温調部14の通路16を通過し、また回転テーブル21の孔部を貫通している。自転軸27は、載置台22の中心に連結され、載置台22をその中心回りに回転させる。各自転軸27および各支柱部28は、支持体23の上方において同じ周方向上に配置され、共に通路16内を周回することができる。
【0026】
支持体23は、本体11の鉛直方向下側において設置され、その中心部において回転軸24に連結されている。支持体23は、回転軸24の回転に連れて固定軸113周りに回転する。また、支持体23は、処理容器10の本体11に連結される収容容器13に収容され、収容容器13と相対的に回転可能となっている。
【0027】
回転軸24は、鉛直方向に延在して、収容容器13の貫通孔13hを貫通している。回転軸24と収容容器13の貫通孔13hの間には、磁性流体シール等のシール部材29が設けられる。
【0028】
回転軸24の下部には、公転駆動部25が連結されている。公転駆動部25は、サーボモータ等のモータおよび回転伝達機構を有し(共に不図示)、また制御部90に接続されている。公転駆動部25は、制御部90の制御下に回転することで、回転軸24を回転させて、これに連れて回転テーブル21および支持体23を一体に回転させる。
【0029】
また、実施形態に係る公転駆動部25は、回転テーブル21を周方向に往復動作させる。例えば、公転駆動部25は、回転テーブル21を
図1の時計回りに90°回転させた後、回転テーブル21を
図1の反時計回りに90°回転させる動作を行う。この回転テーブル21の動作については、後に詳述する。
【0030】
図1および
図2に示すように、ガス供給部30は、処理容器10の外部において処理ガス(吸着ガス、反応ガス)、パージガス等のガスを流通させる複数の供給経路31を有し、各供給経路31を介して処理容器10内に当該ガスを供給する。
【0031】
処理容器10に供給される処理ガスは、基板Wに成膜する膜の種類に応じて、適宜のガスが選択される。例えば、酸化シリコン膜(SiO2膜)を成膜する場合、吸着ガスとしては、シラン系ガス等のシリコン含有ガスを適用することができる。また、反応ガスとしては、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス等の酸素含有ガスを適用することができる。さらに、パージガスとしては、窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスを適用することができる。
【0032】
図2に示すように、複数の供給経路31は、吸着ガスを流通させる吸着ガス用供給経路31A、反応ガスを流通させる反応ガス用供給経路31B、およびパージガスを流通させるパージガス用供給経路31Cを含む。吸着ガス用供給経路31Aは、ノズル構造部50の第1ノズル60に接続されている。反応ガス用供給経路31Bは、ノズル構造部50の第2ノズル70に接続されている。パージガス用供給経路31Cは、第1ノズル60および第2ノズル70の両方に接続されている。なお、パージガス用供給経路31Cは、上記した隔壁部材122の流路に接続され、パージガスを供給する構成でもよい。
【0033】
上記したように第1ノズル60および第2ノズル70は、それぞれ4つ設けられており、吸着ガス用供給経路31A、反応ガス用供給経路31Bおよびパージガス用供給経路31Cは、適宜の位置で分岐して各第1ノズル60や各第2ノズル70に接続される。
【0034】
各供給経路31は、ガスを貯留する複数のタンク32と、各供給経路31をそれぞれ開閉する複数の開閉バルブ33と、各供給経路31の流路を流れるガスの流量を調整する複数の流量調整器34と、を備える。複数のタンク32としては、吸着ガスを貯留する吸着ガス用タンク32A、反応ガスを貯留する反応ガス用タンク32B、パージガスを貯留するパージガス用タンク32Cがあげられる。各開閉バルブ33および各流量調整器34は、制御部90にそれぞれ接続されている。制御部90は、基板処理の適宜のタイミングで、各供給経路31の開閉バルブ33を開放して、流量調整器34によりガスの流量を調整することで、目的のガスを処理容器10に供給する。
【0035】
一方、ガス排出部40は、処理容器10の外部においてガス(反応済みのガス、未反応のガス、パージガス等)を流通させる複数の排出経路41を有し、各排出経路41を介して処理容器10内に供給されたガスを排出する。本実施形態では、複数の排出経路41は、後記のノズル構造部50の第1ノズル60、第2ノズル70に応じて、2系統に分けている。
【0036】
第1排出経路42は、第1ノズル60およびその近傍位置に接続され、第1ノズル60から吐出されるガスを主に排出する。第1排出経路42は、複数(2つ)に分岐した分岐排出経路421と、各分岐排出経路421が合流してガスをまとめて排気する合流排出経路422と、を有する。一方の分岐排出経路421Aは、第1ノズル60に直接連結され、この第1ノズル60のガスを排出する。分岐排出経路421Aには、第1ノズル60において吸引するガス圧を調整するための圧力調整バルブ423Aが設けられている。
【0037】
他方の分岐排出経路421Bは、処理容器10の底壁111に接続され、回転テーブル21の周辺において内部空間のガスを排気する。底壁111には、環状に周回する排出溝17が設けられている(
図1も参照)。分岐排出経路421Bは、この排出溝17の底部に連通している。なお、排出溝17の上側の開口には、周方向においてガスの排出時のコンダクタンスを均一にするために、排気網18が設けられていることが好ましい。
【0038】
合流排出経路422には、第1排出経路42全体のガスを吸引するために、吸引機構424(例えば、ターボ分子ポンプ、真空ポンプ)が接続されている。さらに、合流排出経路422には、第1系統全体において吸引するガス圧を調整するための圧力調整バルブ423Bが設けられている。
【0039】
第2排出経路43は、第2ノズル70およびその近傍位置に接続され、第2ノズル70のガスを主に排出する。第2排出経路43も、第1排出経路42と同様に、複数(2つ)に分岐した分岐排出経路431と、各分岐排出経路431が合流してガスをまとめて排気する合流排出経路432と、を有する。一方の分岐排出経路431Aは、第2ノズル70に接続され、この第2ノズル70のガスを排出する。分岐排出経路431Aには、第2ノズル70において吸引するガス圧を調整するための圧力調整バルブ433Aが設けられている。他方の分岐排出経路431Bは、処理容器10の底壁111(排出溝17の底部)に接続され、回転テーブル21の周辺において内部空間のガスを排気する。
【0040】
合流排出経路432には、第2排出経路43全体のガスを吸引するために、吸引機構434(例えば、ターボ分子ポンプ、真空ポンプ)が設けられている。さらに、合流排出経路432には、第2系統全体において吸引するガス圧を調整するための圧力調整バルブ433Bが設けられている。
【0041】
そして、ノズル構造部50は、処理容器10内の適宜の位置において、各基板Wの上面(表面)に処理ガスおよびパージガスを吐出する共に、基板Wの上方のガスを吸引する。ノズル構造部50は、処理容器10の天板12にガスを供給する複数のノズル51を備える。複数のノズル51は、処理ガスおよびパージガスを吐出する第1ノズル60、および反応ガスおよびパージガスを吐出する第2ノズル70を含む。第1ノズル60および第2ノズル70は、処理容器10にそれぞれ4つ設けられる。換言すればノズル構造部50は、合計8つのノズル51を備える。
【0042】
第1ノズル60および第2ノズル70は、4つの隔壁部材122の各々に固定される。例えば、各隔壁部材122は、
図1中の反時計回り側の側面において第1ノズル60を保持している一方で、
図1中の時計回り側の側面において第2ノズル70を保持している。換言すれば、各隔壁部材122で区画された第1象限Q1~第4象限Q4の各々に、第1ノズル60、第2ノズル70が1つずつ配置されている。4つの隔壁部材122が周方向に等間隔(90°毎)に設けられることで、4つの第1ノズル60同士も等間隔(90°毎)に配置され、かつ4つの第2ノズル70同士も等間隔(90°毎)に配置される。
【0043】
第1ノズル60および第2ノズル70の各々は、
図2に示すように、処理容器10の天板12を貫通するように設けられ、処理容器10の外側において、ガス供給部30およびガス排出部40に接続されている。そして、処理容器10に内側の第1ノズル60および第2ノズル70は、鉛直方向下側に対してガスの吐出および吸引を行う。これにより、第1ノズル60の鉛直方向下側には、第1処理点領域PR1(
図4(A)参照)が形成される。また、第2ノズル70の鉛直方向下側には、第2処理点領域(
図5(A)参照)が形成される。
【0044】
図4(A)および
図4(B)に示すように、第1ノズル60は、円筒形状のヘッド61と、ヘッド61の上部に連設される突出部62とを有する。ヘッド61には、ガス排出部40の第1排出経路42(分岐排出経路421A)が接続されている。突出部62には、ガス供給部30の吸着ガス用供給経路31Aおよびパージガス用供給経路31Cが接続されている。これにより、第1ノズル60は、基板処理時に、吸着ガスおよびパージガスを基板Wに吐出すると共に、吐出した吸着ガスおよびパージガスを吸引する第1処理点領域PR1を形成する。
【0045】
具体的には、第1ノズル60は、ヘッド61の中央および突出部62の中央に、吸着ガスを吐出する処理ガス吐出部63を有する。処理ガス吐出部63は、基板Wの半径よりも短い径方向範囲に吸着ガス(処理ガス)を吐出する。例えば、処理ガス吐出部63の径方向範囲としては、基板Wの半径の1/2~1/10程度に設定されるとよい。
【0046】
処理ガス吐出部63は、ヘッド61および突出部62にわたって延在する内壁と、ヘッド61の基板Wに対向する底壁とで囲われた部位である。底壁は、例えば、ヘッド61に固定される吐出用プレート66により構成される。処理ガス吐出部63は、吐出路63aを内部に有すると共に、底壁において吐出路63aに連通する複数の吐出孔63bを有する。この吐出路63aに連通するように、吸着ガス用供給経路31Aが突出部62に接続されている。なお、処理ガス吐出部63は、吸着ガスを加熱するヒータ67を吐出路63a内に備えてもよい。
【0047】
処理ガス吐出部63の各吐出孔63bは、ヘッド61の底面の中心において、マトリックス状に配置されている。これにより、処理ガス吐出部63は、第1処理点領域PR1の中心に略円形状の吸着ガスの吐出領域PR11を形成する。吐出領域PR11は、基板W全体の面積に対して充分に狭いサイズとなる。
【0048】
さらに、第1ノズル60は、処理ガス吐出部63の周囲に、パージガスを吐出するパージガス吐出部64を有する。パージガス吐出部64は、突出部62の内壁および外壁の間と、ヘッド61の内壁および隔壁の間と、底壁とで囲われた部位である。パージガス吐出部64は、吐出路64aを内部に有すると共に、底壁において吐出路64aに連通する複数の吐出孔64bを有する。この吐出路64aに連通するように、パージガス用供給経路31Cが突出部62に接続されている。
【0049】
パージガス吐出部64の各吐出孔64bは、処理ガス吐出部63の各吐出孔63bを周回する環状を呈している。これにより、パージガス吐出部64は、吸着ガスの吐出領域PR11の外側に環状のパージガスの吐出領域PR12を形成する。パージガス吐出部64は、基板処理時にパージガスの吐出によって、処理ガス吐出部63が吐出した吸着ガスが外側に広がることを抑えることができる。
【0050】
また、第1ノズル60は、パージガス吐出部64の周囲に、ガスを吸引するガス吸引部65を有する。ガス吸引部65は、ヘッド61の隔壁および外壁で囲われた部位である。ガス吸引部65は、吸引路65aを内部に有すると共に、吸引路65aに連通する一連の開口65bとを有する。この吸引路65aに連通するように、第1排出経路42が連結されている。例えば、第1排出経路42内の流路は、吸着ガス用供給経路31Aの流路やパージガス用供給経路31Cの流路よりも大きな流路断面積を有している。
【0051】
開口65bは、ヘッド61の底壁の外周部を周回する環状に形成されている。すなわち、ガス吸引部65は、パージガスの吐出領域の外側に環状の吸引領域PR13を形成する。これにより、ガス吸引部65は、基板処理時にパージガスの周囲において、基板W上に吐出された吸着ガスやパージガスをスムーズに吸引できる。
【0052】
図5(A)および
図5(B)に示すように、第2ノズル70も、基本的には第1ノズル60と同様に形成され、円筒形状のヘッド71と、ヘッド71の上部に連設される突出部72とを有する。ヘッド71には、ガス排出部40の第2排出経路43(分岐排出経路431A)が接続されている。突出部62には、ガス供給部30の反応ガス用供給経路31Bおよびパージガス用供給経路31Cが接続されている。これにより、第2ノズル70は、基板処理時に、反応ガスおよびパージガスを基板Wに吐出すると共に、吐出した反応ガスおよびパージガスを吸引する第2処理点領域PR2を形成する。
【0053】
具体的には、第2ノズル70は、ヘッド71の中央および突出部72の中央に、反応ガスを吐出する処理ガス吐出部73を有する。この処理ガス吐出部73は、基板Wの半径よりも短い径方向範囲に反応ガス(処理ガス)を吐出する。例えば、処理ガス吐出部73の径方向範囲としては、基板Wの半径の1/2~1/10程度に設定されるとよい。
【0054】
処理ガス吐出部73は、ヘッド71および突出部72にわたって延在する内壁と、ヘッド71の基板Wに対向する底壁(吐出用プレート76)とで囲われた部位である。処理ガス吐出部73は、吐出路73aを内部に有すると共に、底壁において吐出路73aに連通する吐出口73bを有する。この吐出路73aに連通するように、反応ガス用供給経路31Bが突出部72に接続されている。なお、吐出口73bは、吐出路73aに一連に連通する正円形状であるが、第2ノズル70は、この吐出口73bに限定されず、第1ノズル60と同様に複数の吐出孔を備えた構成でもよい。処理ガス吐出部73は、反応ガスを加熱するヒータ77を吐出路73a内に備えてもよい。
【0055】
さらに処理ガス吐出部73は、基板処理に応じて、反応ガスをそのまま(または加熱して)吐出してもよく、反応ガスをプラズマ化(ラジカル化)して吐出する構成でもよい。以下では、処理ガス吐出部73が反応ガスをプラズマ化して吐出する構成について詳述していく。処理ガス吐出部73は、突出部72の内壁の外周面を周回するプラズマ用のアンテナ78を有する。アンテナ78は、図示しない配線を介して処理容器10の外部に設けられた高周波電力供給部(不図示)に接続されている。基板処理時には、高周波電力供給部から配線を介してアンテナ78に高周波電力が供給され、吐出路73a内を流通する反応ガスにプラズマを生成させる。
【0056】
反応ガスをプラズマ化する場合、反応ガスは、例えば、O2、H2、NH3、Ar、N2等を適宜混合した混合ガスを使用すればよい。また、高品質の酸化膜を成膜するために、プラズマの生成におけるパージガスは、O3を含むパージガスを供給するとよい。これにより、処理ガス吐出部73は、反応ガスの吐出時に、第2処理点領域PR2の中心にプラズマ化した略円形状の反応ガスの吐出領域PR21を形成する。吐出領域PR21は、基板W全体の面積に対して充分に狭いサイズとなる。
【0057】
さらに、第2ノズル70は、処理ガス吐出部73の周囲に、パージガスを吐出するパージガス吐出部74を有する。パージガス吐出部74は、突出部72の内壁および外壁の間と、ヘッド71の内壁および隔壁の間と、底壁とで囲われた部位である。パージガス吐出部74は、吐出路74aを内部に有すると共に、底壁において吐出路74aに連通する複数の吐出孔74bを有する。この吐出路74aに連通するように、パージガス用供給経路31Cが突出部72に接続されている。
【0058】
パージガス吐出部74の各吐出孔74bは、処理ガス吐出部73の各吐出口73bを周回する環状を呈している。これにより、パージガス吐出部74は、反応ガスの吐出領域PR21の外側に環状のパージガスの吐出領域PR22を形成する。パージガス吐出部74は、基板処理時にパージガスの吐出によって、処理ガス吐出部73が吐出した反応ガスが外側に広がることを抑えることができる。
【0059】
また、第2ノズル70は、パージガス吐出部74の周囲に、ガスを吸引するガス吸引部75を有する。ガス吸引部75は、ヘッド71の隔壁および外壁で囲われた部位である。ガス吸引部75は、吸引路75aを内部に有すると共に、吸引路75aに連通する一連の開口75bとを有する。この吸引路75aに連通するように、第2排出経路43が連結されている。例えば、第2排出経路43内の流路は、反応ガス用供給経路31Bの流路やパージガス用供給経路31Cの流路よりも大きな流路断面積を有している。
【0060】
開口75bは、ヘッド71の底壁の外周部を周回する環状に形成されている。すなわち、ガス吸引部75は、パージガスの吐出領域PR22の外側に環状の吸引領域PR23を形成する。これにより、ガス吸引部75は、基板処理時にパージガスの周囲において、基板W上に吐出された反応ガスやパージガスをスムーズに吸引できる。
【0061】
以上の第1ノズル60の中心および第2ノズル70の中心は、回転テーブル21に設けられた各載置台22の中心に対向するように設置される。これにより、第1ノズル60および第2ノズル70は、回転テーブル21の回転に伴って、各載置台22に載置された基板Wの鉛直方向上側で、かつその中心を通るようになる。そして、基板処理時には各載置台22が自転しているため、第1ノズル60および第2ノズル70は、結果的に基板Wの全面に対向することが可能となる。
【0062】
図1に戻り、基板処理装置1を制御する制御部90は、プロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェース等を有するコンピュータを適用することができる。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を適宜組み合わせたものである。
【0063】
メモリ92は、基板処理装置1を動作させるプログラムおよび基板処理のプロセス条件等のレシピを記憶している。プロセッサ91は、メモリ92のプログラムを読み出して実行することで、基板処理装置1の各構成を制御する。なお、制御部90は、ネットワークを介して情報通信するホストコンピュータまたは複数のクライアントコンピュータにより構成されてもよい。
【0064】
実施形態に係る基板処理装置1は、基本的には以上のように構成され、以下その基板処理方法について、
図6~
図9(D)を参照しながら説明する。
【0065】
制御部90は、基板処理装置1の各構成を制御して、
図6のフローチャートに示すステップS101~S107を順に実行することで、処理容器10内の各基板Wに対して成膜処理を行う。また以下の基板処理方法では、各載置台22を回転(自転)させた状態で、回転テーブル21を時計回りおよび反時計回りに往復させる動作について詳述していく。
【0066】
具体的には、制御部90は、まず基板搬入ステップを行う(
図6のステップS101)。基板搬入ステップでは、制御部90は、
図1に示すように、ゲートバルブ15を開放すると共に搬送装置2により基板Wを搬送して、側口112aを介して処理容器10に基板Wを搬送する。また処理容器10では、基板Wを1枚搬送する毎に回転テーブル21を一定角度だけ回転させることで、各載置台22に基板Wを載置していく。そして例えば、4つの載置台22の全てに基板Wを載置すると、制御部90は、基板搬入ステップを終了してゲートバルブ15を閉塞する。
【0067】
次に、制御部90は、成膜処理のための事前準備ステップを行う(
図6のステップS102)。例えば、事前準備ステップでは、制御部90は、ガス供給部30およびガス排出部40を動作させて、第1ノズル60および第2ノズル70からパージガスを供給しつつ処理容器10のガスを排出することで、処理容器10の内部空間を目標の圧力とする。目標の圧力は、基板処理の種類等に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、1Torr~10Torrの範囲に設定できる。
【0068】
さらに、事前準備ステップにおいて、制御部90は、温調部14を動作させて基板保持部20に保持された各基板Wを目標の温度に温調(加熱)する。目標の温度も、基板処理の種類等に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、100℃前後~800℃の範囲に設定できる。
【0069】
事前準備ステップを行うと、制御部90は、各自転駆動部26を動作させて、各載置台22の自転を開始する(
図6のステップS103)。これにより、各載置台22に載置された基板Wが、その中心を基点に回転(自転)する。各載置台22の回転の速度(自転速度)は、後の回転テーブル21の速度(公転速度)に応じて設定されることが好ましく、例えば、10rpm~1000rpmの範囲で設定される。特に、載置台22の自転速度は、回転テーブル21の公転速度よりも速く設定されるとよい。そして、制御部90は、成膜処理が終了するまで、設定した自転速度で各載置台22の回転を継続する。
【0070】
次に、制御部90は、成膜処理として吸着ステップを実行する(
図6のステップS104)。具体的には、制御部90は、ガス供給部30を動作させて各第1ノズル60から吸着ガスおよびパージガスの吐出を行いながら、ガス排出部40を動作させて各第1ノズル60によりガスの吸引を行う。またこの際、制御部90は、各第2ノズル70におけるガスの吐出や吸引について停止した状態とする。さらに、制御部90は、各載置台22の自転を維持したまま、回転テーブル21を第1方向(例えば、時計回り)に回転させる。
【0071】
図7(A)に示すように、各載置台22に載置された各基板Wは、回転テーブル21の時計回りの回転(公転)により、時計回りの前端側から第1ノズル60の鉛直方向下側に進入していく。この際、各載置台22は、回転テーブル21の公転速度よりも速い自転速度で自転している。各載置台22に載置された各基板Wの外縁側は、第1ノズル60の鉛直方向下側において周方向に回転を継続することで、当該第1ノズル60に対して周方向全周にわたって対向する。
【0072】
第1ノズル60は、吸着ガス、パージガスの吐出と、ガスの吸引を行う第1処理点領域PR1を、鉛直方向下側に形成している(
図4(A)参照)。これにより、第1ノズル60の鉛直方向下側を通過する基板Wの上面の外縁側に吸着ガスが吸着される。なお、
図7(A)~
図7(D)では、ガスの吐出および吸引を行うノズル51を黒丸で示している。そして、
図7(B)に示すように、回転テーブル21の時計回りの回転により、隔壁部材122の鉛直方向下側を通過していくことで、その近傍の第1ノズル60により各基板Wの中心側にも吸着ガスが吸着される。
【0073】
図7(C)に示すように、回転テーブル21の時計回りの回転により、各基板Wの時計回りの後端側が第1ノズル60の鉛直方向下側を通過する。例えば、第1象限Q1に位置していた基板Wは、第1ノズル60および隔壁部材122を通過することで第2象限Q2に移動する。そして、各基板Wは、以上の第1ノズル60および隔壁部材122の鉛直方向下側を通過している間に、自転によって第1ノズル60に複数回対向することになる。その結果、各基板Wの全面に吸着ガスが吸着されるようになる。
【0074】
詳細には
図8(A)に示すように、回転テーブル21の時計回りの移動によって、基板Wは、回転テーブル21の円弧軌道に沿って第1ノズル60の鉛直方向下側を通過する。また第1ノズル60と相対的に基板Wが時計回りの前端から後端に移動するまでの間に、第1ノズル60は基板Wの半径を2回通過することになる。基板処理装置1は、第1処理点領域PR1の基板W上の径方向位置を変化させながら、基板Wの中心回りの自転によって、第1処理点領域PR1を基板W上の周方向全周に対向させることができる。例えば、制御部90は、基板W(載置台22)の自転速度を基板Wの径方向位置において第1処理点領域PR1が1回~10回程度通過する速度に設定する。これにより、基板Wの全面に吸着ガスを良好に吸着させることが可能となる。
【0075】
さらに、第1ノズル60は、吸着ガスの吐出領域PR11の周囲においてパージガスの吐出領域PR12を形成することで、吸着ガスの広がりを抑えて吸着ガスの吐出領域PR11を容易に制御できる。そして、第1ノズル60は、パージガスの吐出領域PR12の外側の吸引領域PR13でガスを吸引することで、基板Wの上面付近に吸着ガスが残存することを低減でき、基板Wの第1処理点領域PR1以外の箇所に吸着ガスが付着することを抑制できる。
【0076】
なお、制御部90は、第1ノズル60の鉛直方向下側を通過する際に、第1ノズル60に対する回転テーブル21および各載置台22の相対的な速度を変動させる構成としてもよい。すなわち、基板処理がなされる基板Wの上面は、外縁側の表面積が広い一方で、中心側の表面積が狭くなる。この基板Wの上面の表面積に応じて、回転テーブル21および各載置台22の相対的な速度を変動させることにより、第1処理点領域PR1が対向する時間を、基板Wの径方向上において均一にすることが可能となる。
【0077】
例えば、
図8(B)~
図8(D)に示すように、基板処理装置1は、回転テーブル21の公転速度について、基板Wの外縁側では遅い速度に設定し、基板Wの中心側では速い速度に設定する。言い換えれば、制御部90は、基板Wの外縁に対向する位置よりも基板Wの中心に対向する位置において、回転テーブル21の速度を速くする。なお、
図8(B)~
図8(D)では、基板Wの上面を低速領域SP1、中速領域SP2、高速領域SP3の3つに分けて、第1ノズル60の外縁が、それぞれの領域の境界を越えることに基づき、速度変化させる例を示している。ただし、回転テーブル21の公転速度は、段階的に変化させる構成に限定されず、基板Wの径方向上の移動に伴って徐々に(滑らかに)変化させてもよい。
【0078】
このように、基板処理装置1は、回転テーブル21の公転速度を変えることで、自転する各基板Wに対して第1処理点領域PR1を均一に対向させることができる。したがって、基板処理装置1は、基板Wを成膜する場合に、基板Wの表面に成膜される膜の均一化をより促すことが可能となる。なお、上記では回転テーブル21の公転速度を変える例を説明したが、基板処理装置1は、これに限らず、回転テーブル21の公転速度を一定とする一方で、各載置台22の自転速度を変える構成としてもよい。
【0079】
図7(D)に示すように、制御部90は、回転テーブル21の時計回りの回転を、回転開始位置から略90°の範囲まで行うと、吸着ステップを一旦終了する。これにより、制御部90は、吸着ステップにおいて、第2ノズル70を一旦通過した位置まで、各基板W(各載置台22)を移動させることができる。
【0080】
その後、制御部90は、成膜処理として酸化ステップを実行する(
図6のステップS105)。なお、吸着ステップと酸化ステップの間には、処理ガスの吐出を停止して、パージガスの吐出およびガスの吸引を行うインターバル期間を設定してもよい。
【0081】
酸化ステップにおいて、制御部90は、ガス供給部30を動作させて各第2ノズル70から反応ガスおよびパージガスの吐出を行いながら、ガス排出部40を動作させて各第2ノズル70によりガスの吸引を行う。またこの際、制御部90は、各第1ノズル60におけるガスの吐出や吸引について停止した状態とする。そして、制御部90は、各載置台22の自転を維持したまま、回転テーブル21を第2方向(例えば、反時計回り)に回転させる。
【0082】
図9(A)に示すように、各載置台22に載置された各基板Wは、回転テーブル21の反時計回りの回転(公転)により、反時計回りの前端側から第2ノズル70の鉛直方向下側に進入していく。この際、各載置台22は、回転テーブル21の公転速度よりも速い自転速度で回転している。各載置台22に載置された各基板Wの外縁側は、第2ノズル70の鉛直方向下側において周方向に回転を継続することで、当該第2ノズル70に対して周方向全周にわたって対向する。
【0083】
第2ノズル70は、反応ガス、パージガスの吐出と、ガスの吸引を行う第2処理点領域PR2を、鉛直方向下側に形成している(
図5(A)参照)。これにより、第2ノズル70の鉛直方向下側を通過する基板Wの外縁側において、吸着ガスに反応ガスが供給され、吸着ガスと反応ガスとの反応を促すことができる。そして、
図9(B)に示すように、回転テーブル21の反時計回りの回転により、隔壁部材122および第2ノズル70の鉛直方向下側を通過していくことで、各基板Wの中心側にも反応ガスを供給できる。
【0084】
図9(C)に示すように、回転テーブル21の反時計回りの回転により、各基板Wの時計回りの後端側が第2ノズル70の鉛直方向下側を通過する。吸着ステップと同様に、各基板Wは、第2ノズル70を通過している間に、その自転により第2ノズル70に対して複数回対向することになり、その全面に反応ガスが供給されるようになる。
【0085】
さらに、第2ノズル70も、反応ガスの吐出領域PR12の周囲においてパージガスの吐出領域PR22を形成することで、反応ガスの広がりを抑えて反応ガスの吐出領域PR12を容易に制御できる。そして、第2ノズル70は、パージガスの吐出領域PR22の外側の吸引領域PR23でガスを吸引することで、基板Wの上面付近に反応ガスが残存することを低減でき、基板Wの第2処理点領域PR2以外の箇所に反応ガスが向かうことを抑制できる。
【0086】
なお、制御部90は、酸化ステップでも、第2ノズル70の鉛直方向下側を通過する際に、第2ノズル70に対する回転テーブル21および各載置台22の相対的な速度を変動させる構成としてもよい。この回転テーブル21および各載置台22の相対的な速度を変動させることにより、第2処理点領域PR2が対向する時間を、基板Wの径方向上において均一にすることが可能となる。
【0087】
図9(D)に示すように、制御部90は、回転テーブル21の反時計回りの回転を、回転開始位置から略90°の範囲まで行うと、酸化ステップを一旦終了する。これにより、制御部90は、酸化ステップにおいて、第1ノズル60を一旦通過した位置まで、各基板W(各載置台22)を移動させることができる。
【0088】
そして、吸着ステップおよび酸化ステップをそれぞれ1度ずつ行うと、制御部90は、基板処理を終了するか否かを判定する(
図6のステップS106)。膜厚の判定は、例えば、吸着ステップおよび酸化ステップの実施回数または実施期間をカウントすることで推定してもよく、処理容器10に設置した図示しない膜厚測定装置により基板Wの膜厚を実測してもよい。例えば、制御部90は、基板W上に成膜される膜の膜厚が目標の膜厚に達した場合に、基板処理の終了を判定し(ステップS106:YES)、ステップS107に進む。逆に、制御部90は、基板W上に成膜される膜の膜厚が目標の膜厚に達していない場合に、基板処理の継続を判定し(ステップS106:NO)、ステップS104に戻り、吸着ステップおよび酸化ステップを再び繰り返す。
【0089】
最後に、制御部90は、処理容器10内の各基板Wを搬出する基板搬出ステップを行う(
図6のステップS107)。基板搬出ステップにおいて、制御部90は、ゲートバルブ15を開放し、側口112aを介して進入した搬送装置2により処理後の各基板Wを搬出していく。
【0090】
以上のように、基板処理装置1および基板処理方法は、基板Wの中心が第1ノズル60および第2ノズル70を通るように、回転テーブル21の公転(往復動作)および各載置台22の自転を行うことで、基板Wの全面にガスを良好に供給できる。その結果、基板Wに対する基板処理の面内均一性を高めることができ、基板処理の品質を一層向上させることが可能となる。
【0091】
なお、本開示に係る基板処理装置1および基板処理方法は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、第1ノズル60および第2ノズル70は、パージガス吐出部64、74を備えずに、処理ガスの吐出とガスの吸引のみを行う構成としてもよい。
【0092】
また例えば、
図10に示すように、第1変形例に係る基板処理方法では、各基板Wの位置を、周方向の象限位置(第1象限Q1~第4象限Q4)にずらしていく構成としている。これにより、基板処理方法は、4つの第1ノズル60および4つの第2ノズル70の全てに対して、複数の基板Wの各々を対向させることが可能となる。以下、この基板処理方法について説明していく。
【0093】
図10のステップS201~S209は、制御部90の制御下に実行される。
図10のステップS201~S205までは、上記の実施形態(
図6)のステップS101~S105と略同一であり、その詳細な説明を省略する。ステップS206において、制御部90は、各基板Wにガスを吐出している第1象限Q1~第4象限Q4を変更するか否かを判定する。例えば、制御部90は、吸着ステップと酸化ステップを繰り返した繰り返し回数をカウントし、繰り返し回数が予め設定した回数となった場合に象限位置の変更を判定する(ステップS206:YES)。一方、繰り返し回数が予め設定した回数未満の場合に、制御部90は、象限位置の継続を判定して(ステップS206:NO)、ステップS204に戻る。
【0094】
象限位置の変更では、制御部90は、例えば、回転テーブル21を90°回転させることで、現在の象限位置から隣接する象限位置に各基板Wを移動させる(ステップS207)。この際、第1ノズル60および第2ノズル70からのガスの吐出は停止している。例えば、第1象限Q1にある基板Wは、回転テーブル21の公転に伴い第2象限Q2に移動する。これにより、各基板Wは、次の吸着ステップや酸化ステップにおいて隣接する第1ノズル60および第2ノズル70に対向可能な位置に配置される。以降のステップS208およびS209は、上記の実施形態(
図6)のステップS106~S107と略同一であり、その詳細な説明を省略する。
【0095】
以上のように、第1変形例に係る基板処理方法は、吸着ステップおよび酸化ステップを複数回行う際に、各基板Wの象限位置を変更する。これにより、基板処理装置1および基板処理方法は、各第1ノズル60の機差や各第2ノズル70の機差をなくして、各基板W同士の間における基板処理の均一化(膜厚の均一化等)を促すことができ、基板処理の精度を一層高めることが可能となる。
【0096】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置1および基板処理方法では、回転テーブル21を往復させて、第1ノズル60および第2ノズル70によりガスの供給および排出を行う構成とした。しかしながら、基板処理装置1および基板処理方法は、回転テーブル21を往復させずに、
図1の時計回りまたは反時計回りのうち一方向に回転テーブル21を回転させながら、第1ノズル60および第2ノズル70によりガスの供給および排出を行う構成でもよい。すなわち、吸着ステップでは、基板Wを時計回りに移動させて隣接する象限位置に基板Wを配置した後、酸化ステップでは、反時計回りにより元の象限位置に戻したが、酸化ステップで時計回りに移動させても第2ノズル70による処理を行うことができる。
【0097】
したがって、基板処理装置1は、回転テーブル21を一方向に回転させながら、第1ノズル60によるガスの吐出および吸引のタイミングと、第2ノズル70によるガスの吐出および吸引のタイミングとを切り替えることでも、上記と同様の効果を得ることができる。この際、基板処理装置1は、象限位置が切り替わる毎に回転テーブル21を停止する間欠的な回転を行ってもよく、象限位置の切り替わりによらず回転テーブル21を継続的に回転させてよい。あるいは、基板処理装置1は、回転テーブル21の一方向の回転を複数回繰り返して第1ノズル60および第2ノズル70による処理を行った後、回転テーブル21の逆方向の回転を複数回繰り返して第1ノズル60および第2ノズル70による処理を行ってもよい。
【0098】
図11に示す第2変形例に係る基板処理装置1Aは、処理容器10内に6つの基板Wを収容して基板処理を行う構成とした点で、上記の実施形態に係る基板処理装置1と異なる。この場合、基板処理装置1Aは、6つの載置台22の数に対応して、隔壁部材122、第1ノズル60および第2ノズル70をそれぞれ6つずつ備えればよい。要するに、処理容器10において処理する基板Wの数は、特に限定されず、第1ノズル60および第2ノズル70は、この基板Wの数に応じて適切な数だけ設置されればよい。
【0099】
また、基板処理装置1、1Aは、ノズル構造部50として1つ基板Wに対して第1ノズル60および第2ノズル70を適用せずに、吐出する処理ガス(吸着ガスと反応ガス)を切り替える1つのノズル51を適用してもよい。あるいは、基板処理装置1は、ノズル構造部50として1つの基板Wに対して3つ以上のノズルを設置して、種々の処理(例えば、吸着ステップ、酸化ステップ、エッチングステップ)を行う構成としてもよい。
【0100】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0101】
本開示の第1の態様に係る基板処理装置1、1Aは、処理容器10と、処理容器10の内部に回転可能に設けられる回転テーブル21と、回転テーブル21の回転中心から離れた位置で基板Wを載置し、回転テーブル21に対して相対的に回転可能な複数の載置台22と、回転テーブル21の回転に伴って複数の載置台22の中心が通過する位置に配置される複数のノズル51と、を備え、複数のノズル51は、回転テーブル21の回転に伴って移動する複数の載置台22の基板Wに対して、当該基板Wの半径よりも短い径方向範囲に処理ガスを吐出する処理ガス吐出部63、73と、処理ガス吐出部63、73よりも外側においてガスを吸引するガス吸引部65、75と、を有する。
【0102】
上記によれば、基板処理装置1、1Aは、複数のノズル51によって、回転テーブル21および各載置台22により回転する各基板Wの対向面の全面に対して、処理ガスを供給することができる。これにより、基板処理装置1、1Aは、各基板Wの基板処理を精度よく行うことが可能となる。また、基板処理装置1、1Aは、処理容器10に収容した複数の基板Wを同時に基板処理することができるので、生産性を大幅に向上させることができる。
【0103】
また、複数のノズル51は、処理ガスとして基板Wに吸着させる吸着ガスを処理ガス吐出部63から吐出する第1ノズル60と、基板Wに付着した吸着ガスと反応する反応ガスを処理ガス吐出部73から吐出する第2ノズル70と、を含む。これにより、基板処理装置1、1Aは、ガス種によってノズル51を使い分けることができ、各基板に対する基板処理を安定して行うことができる。
【0104】
また、第1ノズル60が吸着ガスを吐出する期間と、第2ノズル70が反応ガスを吐出する期間とは、相互に異なる。これにより、基板処理装置1は、吸着ガスを吐出するステップと、反応ガスを吐出するステップとを異なるタイミングで行うことができ、基板処理時のガスの分離を容易に行うことができる。
【0105】
また、処理容器10は、周方向に沿って複数の第1ノズル60を等間隔に備えると共に、周方向に沿って複数の第2ノズル70を等間隔に備える。これにより、基板処理装置1は、各基板Wに対する基板処理を均等的に行うことができる。
【0106】
また、処理容器10は、処理容器10の中心から処理容器10の側壁112に向かって延在し、第1ノズル60および第2ノズル70を固定する隔壁部材122を有する。これにより、基板処理装置1は、処理容器10内において、第1ノズル60および第2ノズル70を強固に支持することができる。
【0107】
また、第1ノズル60は、隔壁部材122における回転テーブル21の第1回転方向の側面に固定され、第2ノズル70は、隔壁部材122における回転テーブル21の第1回転方向と反対方向である第2回転方向の側面に固定される。これにより、基板処理装置1は、隔壁部材122を間に挟んで第1ノズル60の領域と第2ノズル70の領域とを区分けすることができ、吸着ガスと反応ガスの混合を低減することが可能となる。
【0108】
また、複数のノズル51は、処理ガス吐出部63、73とガス吸引部65、75との間に、パージガスを吐出するパージガス吐出部64、74を有する。これにより、基板処理装置1は、処理ガスの吐出方法をパージガスにより適切に制御することが可能となる。
【0109】
また、複数のノズル51のうち少なくとも1つは、処理ガス吐出部63、73の内部においてプラズマを生成するアンテナ78を備える。これにより基板処理装置1は、プラズマ化した処理ガスを基板Wに対して供給することができる。
【0110】
また、ノズル51に処理ガスを供給するガス供給部30と、ノズル51からガスを吸引するガス排出部40と、ガス供給部30、ガス排出部40、回転テーブル21および複数の載置台22の回転を制御する制御部90と、を備え、制御部90は、複数の載置台22を回転させると共に、ガス供給部30による処理ガスの供給およびガス排出部40によるガスの吸引を行った状態で、回転テーブル21を回転させる。これにより、基板処理装置1は、回転テーブル21により移動してきた基板Wの狭い範囲に処理ガスを吹き付けると共に、ガスを吸引できる。そして、載置台22により回転している基板Wの全面に対して基板処理を行うことができる。
【0111】
また、制御部90は、複数のノズル51と相対的に回転テーブル21を往復させる。これにより、基板処理装置1は、各ノズル51と各載置台22とを安定して対向させて基板処理を行うことができる。
【0112】
また、制御部90は、基板Wの外縁に対向する位置よりも基板の中心に対向する位置において、回転テーブル21の速度を速くする。これにより、基板処理装置1は、基板Wに対する基板処理の面内均一性を一層高めることができる。
【0113】
また、本開示の第2の態様は、処理容器10と、処理容器10の内部に回転可能に設けられる回転テーブル21と、回転テーブル21の回転中心から離れた位置で基板Wを載置し、回転テーブル21に対して相対的に回転可能な複数の載置台22と、回転テーブル21の回転に伴って複数の載置台22の中心が通過する位置に配置される複数のノズル51と、を備える基板処理装置1の基板処理方法であって、複数のノズル51の処理ガス吐出部63、73により、複数の載置台22に載置される基板Wの半径よりも短い径方向範囲に処理ガスを吐出し、かつ複数のノズル51のガス吸引部65、75により、処理ガス吐出部63、73よりも外側においてガスを吸引する工程と、複数の載置台22を回転テーブル21と相対的に回転させ、かつ回転テーブル21の回転により複数の載置台22を移動させ、複数のノズル51に対向させる工程と、を有する。この場合でも、基板処理方法は、基板処理の均一性を促すことが可能となり、かつ生産性を向上させることができる。
【0114】
今回開示された実施形態に係る基板処理装置1および基板処理方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0115】
1、1A 基板処理装置
10 処理容器
21 回転テーブル
22 載置台
51 ノズル
63、73 処理ガス吐出部
65、75 ガス吸引部
W 基板