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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171619
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蓄電システム及び電池管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241205BHJP
   G06Q 10/30 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088725
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝典
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】リユース電池を採用した蓄電システムの導入に必要な費用を低減すること。
【解決手段】蓄電池として採用したリユース電池と、リユース電池の診断結果を出力する電池診断ユニットと、を備える蓄電システムであって、診断結果に基づき、運用中のリユース電池の電池寿命を推定する電池寿命推定手段と、推定した電池寿命に基づき、運用中のリユース電池の交換要否を判定する電池交換要否判断手段と、運用中のリユース電池の交換要と判定された場合、蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する電池交換管理システムに電池交換要求を出力する電池交換要求出力手段と、を有することで上記課題を解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池として採用したリユース電池と、前記リユース電池の診断結果を出力する電池診断ユニットと、を備える蓄電システムであって、
前記診断結果に基づき、運用中の前記リユース電池の電池寿命を推定する電池寿命推定手段と、
推定した前記電池寿命に基づき、運用中の前記リユース電池の交換要否を判定する電池交換要否判断手段と、
運用中の前記リユース電池の交換要と判定された場合、前記蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する電池交換管理システムに電池交換要求を出力する電池交換要求出力手段と、
を有する蓄電システム。
【請求項2】
前記電池診断ユニットは、運用中の前記リユース電池の電圧、電流、及び温度の少なくとも一つを前記リユース電池のデータとして取得し、取得した前記リユース電池のデータに基づいて前記リユース電池の劣化診断を行い、前記劣化診断の結果を出力する
請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記リユース電池の撮影画像を解析した結果に基づいて前記リユース電池の異常診断を行い、前記異常診断の結果を出力する異常判定部、
を更に備える請求項1又は2記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記電池寿命推定手段は、前記診断結果、前記異常診断の結果、前記蓄電システムが設置された現場の使用環境計測データ、及び前記蓄電システムの電力運用データの少なくとも一つに基づいて、運用中の前記リユース電池の電池寿命をシミュレーションにより推定する
請求項3記載の蓄電システム。
【請求項5】
発電装置と、前記発電装置が発電した電力を蓄電する蓄電システムと、を備える電池管理システムであって、
前記蓄電システムは、
蓄電池として採用したリユース電池と、前記リユース電池の診断結果を出力する電池診断ユニットと、を備え、
前記診断結果に基づき、運用中の前記リユース電池の電池寿命を推定する電池寿命推定手段と、
推定した前記電池寿命に基づき、運用中の前記リユース電池の交換要否を判定する電池交換要否判断手段と、
運用中の前記リユース電池の交換要と判定された場合、前記蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する電池交換管理システムに電池交換要求を出力する電池交換要求出力手段と、
を有する電池管理システム。
【請求項6】
前記電池診断ユニットは、運用中の前記リユース電池の電圧、電流、及び温度の少なくとも一つを前記リユース電池のデータとして取得し、取得した前記リユース電池のデータに基づいて前記リユース電池の劣化診断を行い、前記劣化診断の結果を前記電池寿命推定手段に出力する
請求項5記載の電池管理システム。
【請求項7】
前記リユース電池及び前記発電装置の少なくとも一方の撮影画像を解析した結果に基づいて前記リユース電池及び前記発電装置の少なくとも一方の異常診断を行い、前記異常診断の結果を出力する異常判定部、
を更に備える請求項5又は6記載の電池管理システム。
【請求項8】
前記電池寿命推定手段は、前記診断結果、前記異常診断の結果、前記蓄電システムが設置された現場の使用環境計測データ、及び前記蓄電システムの電力運用データの少なくとも一つに基づいて、運用中の前記リユース電池の電池寿命をシミュレーションにより推定する
請求項7記載の電池管理システム。
【請求項9】
前記電池交換管理システムを更に備え、
前記電池交換管理システムは、
回収した前記リユース電池の品質に関する電池品質情報を管理する電池品質情報管理手段と、
回収した前記リユース電池の在庫に関する電池在庫情報を管理する電池在庫情報管理手段と、
前記電池交換要求を受け付けた場合、前記リユース電池の前記電池品質情報及び前記電池在庫情報に基づき、前記交換要と判定された前記リユース電池と交換するリユース電池の情報を設備管理者に通知する通知手段と、
を有する請求項5又は6記載の電池管理システム。
【請求項10】
前記通知手段は、前記電池交換要求を受け付けた場合、前記リユース電池の前記電池品質情報及び前記電池在庫情報に基づき、前記交換要と判定された前記リユース電池を交換する交換タイミングの情報を前記設備管理者に通知する
請求項9記載の電池管理システム。
【請求項11】
前記電池交換管理システムは、
前記交換要と判定された前記リユース電池と交換するリユース電池の情報、及び前記交換要と判定された前記リユース電池を交換する交換タイミングの情報に基づき、前記蓄電システムの運用及び保守点検のプランを作成し、前記通知手段を用いて前記設備管理者に通知するプラン作成手段、
を更に有する請求項10記載の電池管理システム。
【請求項12】
前記電池交換管理システムは、前記リユース電池の前記電池品質情報及び前記電池在庫情報に基づき、前記交換要と判定された前記リユース電池と交換するリユース電池を前記電池在庫情報から指定する交換電池指定手段、
を更に有し、
前記交換電池指定手段は、交換する前記リユース電池の在庫が無い場合に、前記蓄電システムにおける前記リユース電池の運用条件の変更指示を、前記通知手段を用いて前記設備管理者に通知する
請求項10記載の電池管理システム。
【請求項13】
前記プラン作成手段は、前記リユース電池の運用条件の変更指示に基づいて変更される前記運用条件に合致する前記リユース電池の在庫があった場合に、前記プランを再作成して前記設備管理者に通知する
請求項11記載の電池管理システム。
【請求項14】
前記蓄電システムから供給される電力を利用する顧客に対する課金の料金プランを管理する課金システムを更に備え、
前記課金システムは、前記顧客の料金負担を前記顧客に供給した電力供給量に基づいて決定し、前記電池管理システムの運用及び保守点検の費用を、前記電池管理システムを運用する事業者に負担させる
請求項12記載の電池管理システム。
【請求項15】
前記課金システムは、前記変更指示に基づいて変更される前記運用条件の単位時間当たりの最大電力供給量が変動する可能性があることを前提とした料金プランを前記顧客に提供する
請求項14記載の電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システム及び電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電装置及び蓄電システムを用いて、発電余剰電力を有効利用することが可能となった。蓄電システムが備える蓄電池は高価であるため、電気自動車(EV)又はハイブリッド自動車(HEV)で使用済みの蓄電池を回収して、リユース電池としてリマニュファクチャリングすることで蓄電システムの蓄電池が低コスト化することが知られている。例えば特許文献1には、EV又はHEVで使用済みのリチウムイオンバッテリ(LIB)などの二次電池を、定置用蓄電池としてリユースすることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、EV又はHEVで使用済みの蓄電池は、劣化状態にバラツキがあるという問題が知られている。したがって、EV又はHEVで使用済みの蓄電池を蓄電システムのリユース電池として採用しようとする場合は、リユース電池であるが故の品質懸念があるため、蓄電システムの運用及び保守点検の低コスト化が難しく、蓄電システムの導入に経済的な障壁があった。
【0004】
本開示は、リユース電池を採用した蓄電システムの導入に必要な費用を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、蓄電池として採用したリユース電池と、前記リユース電池の診断結果を出力する電池診断ユニットと、を備える蓄電システムであって、前記診断結果に基づき、運用中の前記リユース電池の電池寿命を推定する電池寿命推定手段と、推定した前記電池寿命に基づき、運用中の前記リユース電池の交換要否を判定する電池交換要否判断手段と、運用中の前記リユース電池の交換要と判定された場合、前記蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する電池交換管理システムに電池交換要求を出力する電池交換要求出力手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、リユース電池を採用した蓄電システムの導入に必要な費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る電池管理システムの一例の構成図である。
図2】本実施形態に係る蓄電システムの一例のハードウェア構成図である。
図3】本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
図4】本実施形態に係る蓄電システムの一例の機能構成図である。
図5】本実施形態に係る電池交換管理システムの一例の機能構成図である。
図6】本実施形態に係る電池管理システムの処理手順の一例を示したフローチャートである。
図7】本実施形態に係る電池交換管理システムの処理の一例の説明図である。
図8】本実施形態に係る電池交換管理システムの処理手順の一例を示したフローチャートである。
図9】本実施形態に係る電池管理システムにより実現するビジネスモデルの一例の説明図である。
図10】本実施形態に係る電池管理システムにより実現するサーキュラー型フローの一例の説明図である。
図11】本実施形態に係る電池管理システムの一例の構成図である。
図12】本実施形態に係る電池管理システムの一例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0009】
<概要>
本実施形態では、車載用リチウムイオン二次電池をリマニュファクチャリングし、太陽光発電した電力の余剰分を貯めておく蓄電システムとして活用する事で、再生可能エネルギーの利用を促進する例を説明する。リマニュファクチャリングとは、廃棄段階となった商品を分解し、再生利用可能な部品に再生処理を施して再利用することを言う。
【0010】
事業化を考えたとき、蓄電システムを含む装置一式を顧客に販売するやり方が一般的ではあるが、リマニュファクチャリングしたリユース電池であるとしても、蓄電システムを含む装置一式は高額であり、導入に経済的な障壁が存在する。
【0011】
また、リユース電池を採用した蓄電システムは、リユース電池であるが故の品質的な懸念点もあり、リユース電池の劣化診断、異常診断、又は寿命予測の為にシミュレーションなどが必要となる場合もあった。
【0012】
また、蓄電システム内の電池パックは、電池セルが多直列(例えば96直列)されて構成されており、電池容量を確保するために電池パックが並列接続されて構成されている。電池品質(劣化状態又は安全状態など)を調べ、懸念点を取り除くためには、蓄電システム内の全ての電池セルの状態を調べる必要があり、膨大な電池データ(BIG DATA)を取得して演算処理にて分析、及びシミュレーション予測をすることが求められる。
【0013】
したがって、リユース電池を採用した蓄電システムは、リユース電池の電池品質を管理する電池管理システムの費用、又はリユース電池の電池品質を管理する為の人件費が掛かることとなり、リユース電池を採用した蓄電システムの導入に経済的な障壁がある。
【0014】
例えば太陽光発電装置及び蓄電システムに掛かる顧客の初期投資を低減する方法の一例としては、リース方式がある。また、太陽光発電装置については、太陽光発電の事業者と再生可能エネルギー由来の電気を購入したい顧客とが電力購入契約(Power Purchase Agreement:PPA)を結ぶPPA方式により、顧客の初期投資を低減する方法がある。
【0015】
しかしながら、上記のリース方式及びPPA方式では、リユース電池を採用した蓄電システムにより顧客に電力を供給する事業者側の負担が減らず、ビジネスとしての成立が難しい。このように、事業者がリユース電池を採用した蓄電システムにより顧客に電力を供給するビジネスを成立させる為には、蓄電システムを低コスト化することと、リユース電池の電池品質を管理する費用を低減することが必要となる。
【0016】
蓄電システムの低コスト化対策は、蓄電システムの中で大きなコスト割合を占める蓄電池を、電気自動車(EV)又はハイブリッド自動車(HEV)から廃棄されるリチウムイオンバッテリを回収し、リユースすることで実現が可能である。
【0017】
また、リユース電池の電池品質を管理する費用の低減策としては、リユース電池の品質及び安全性を維持する為に、リユース電池の状態を監視し、必要に応じてリユース電池を交換するオペレーションを効率化する仕組みが求められる。
【0018】
本実施形態では、例えば電力供給先の一例である顧客のデータセンタ(DC)の近傍に太陽光発電装置などの再生可能エネルギーを発電する発電装置と、発電装置が発電した電力を蓄電する蓄電システムとを設置する。本実施形態では、蓄電システムのリユース電池の状態をリアルタイムに監視し、リユース電池の交換要否を判定することで、交換が必要なリユース電池を交換するリードタイムを短縮し、リユース電池の状態を管理する管理費を低減し、また、電力供給を絶やさないようにマネジメントを行う。
【0019】
例えば、膨大な電池データを遠隔地の設備管理者に送付し、設備管理者が電池データの解析作業を行い、リユース電池の交換要否を判断する場合は、必要な保守部材(リユース電池など)を用意し、蓄電システムの設置されている現地に赴き、リユース電池の交換作業などのメンテナンス作業の工程が、数日から数週間となるケースも考えられる。
【0020】
そこで、本実施形態では、蓄電システムの設置されている現地において蓄電システムのリユース電池の状態をリアルタイムに監視し、リユース電池の交換要否を判定した結果を遠隔地の設備管理者に通知することで、次プロセスの行動(例えば電池交換、駆付け対応などのO&Mサービス)までの時間を短縮する。また、本実施形態では、リユース電池の採用による蓄電システムの低コスト化と、リユース電池の品質及び安全性を維持する為の運用及び保守点検の費用の低減を実現し、事業者がリユース電池を採用した蓄電システムにより顧客に電力を供給するビジネスモデルを後述のように成立させる。
【0021】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る電池管理システム1の一例の構成図である。図1の電池管理システム1は、発電装置10と、蓄電システム12と、サーバ装置14と、監視カメラ16A及び16Bと、電池交換管理システム20と、設備管理者端末22と、を備える。
【0022】
蓄電システム12と、サーバ装置14と、監視カメラ16A及び16Bと、電池交換管理システム20と、設備管理者端末22とは、インターネット等の通信ネットワーク30を介してデータ通信可能に接続されている。
【0023】
図1において現場は、電力供給先の一例である顧客のデータセンタの近傍である。発電装置10、蓄電システム12、監視カメラ16A、及び監視カメラ16Bは、現場に設置されている。
【0024】
発電装置10は、太陽光発電装置などの再生可能エネルギーを発電する。蓄電システム12は、発電装置10が発電した電力を蓄電する。蓄電システム12は、交換が可能な蓄電池(電池パック)を備える。蓄電システム12は、EV又はHEVで使用済みの蓄電池をリユース電池として採用する。蓄電システム12は、顧客のデータセンタの例えばサーバ装置14に電力を供給する。
【0025】
監視カメラ16Aは、発電装置10の状態を撮影する。例えば監視カメラ16Aは、発電装置10の太陽光パネルの状態を撮影する。監視カメラ16Bは、蓄電システム12の状態を撮影する。例えば監視カメラ16Bは、蓄電システム12において蓄電池として採用されているリユース電池の状態を撮影する。
【0026】
蓄電システム12は、運用中のリユース電池の交換要否を後述のように判定し、運用中のリユース電池の交換要と判定された場合、電池交換管理システム20に電池交換要求を出力する。
【0027】
図1において遠隔地は、例えば顧客のデータセンタの遠方である。遠隔地の電池交換管理システム20は、蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する。電池交換管理システム20は、蓄電システム12から電池交換要求を受け付け、例えば交換要と判定されたリユース電池と交換するリユース電池の情報及び交換タイミングなどを、設備管理者が操作する設備管理者端末22に出力する。したがって、設備管理者は例えば交換要と判定されたリユース電池と交換するリユース電池の情報及び交換タイミングなどを、設備管理者端末22に表示して確認できる。
【0028】
電池交換管理システム20は、PC又はワークステーション等である。電池交換管理システム20は、サーバ装置、ASP(Application Service Provider)、又はクラウドコンピューティングにより実現してもよい。また、設備管理者端末22は、PC(Personal Computer)、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、又はPDA(Personal Digital Assistant)等である。
【0029】
図1に示す電池管理システム1の構成は一例である。例えば蓄電システム12の機能の少なくとも一部は、サーバ装置14に設けてもよい。また、電池交換管理システム20の機能の少なくとも一部は、蓄電システム12又はサーバ装置14に設けてもよい。
【0030】
<ハードウェア構成>
ここでは、本実施形態に係る電池管理システム1のハードウェア構成のうち、本実施形態の説明に不要な箇所について適宜図示及び説明を省略する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る蓄電システム12の一例のハードウェア構成図である。蓄電システム12は、1つ以上のリユース電池42を収納する電池収納スペース40、及び予備電池収納スペース44を備える。予備電池収納スペース44は、後述のようにリユース電池42の運用条件の変更により電池必要数が増えた場合にリユース電池42を収納するための収納スペースである。
【0032】
また、蓄電システム12は、通信部50、電池診断ユニット52、画像解析ユニット54、及び演算ユニット56を備える。通信部50は、蓄電システム12がデータ通信をする為のインタフェースであり、通信ネットワーク30を介して電池交換管理システム20等とデータ通信を行う。
【0033】
電池診断ユニット52は、運用中のリユース電池42の電圧、電流、及び温度の少なくとも一つを計測し、運用中のリユース電池42のデータ(各種パラメータ)として取得する。電池診断ユニット52は、例えば交流インピーダンス測定機を含む。また、電池診断ユニット52は、取得したリユース電池42のデータに基づいてリユース電池42の劣化診断を行う。なお、取得したリユース電池42のデータに基づいてリユース電池42の劣化診断を行う手法は、既存の手法を用いればよい。
【0034】
画像解析ユニット54は、監視カメラ16Bが撮影した蓄電システム12のリユース電池42の撮影画像を取得し、リユース電池42の異常診断に必要な画像解析を行う。画像解析ユニット54は、監視カメラ16Aが撮影した発電装置10の撮影画像及び監視カメラ16Bが撮影した蓄電システム12のリユース電池42の撮影画像を取得し、発電装置10及びリユース電池42の異常診断に必要な画像解析を行ってもよい。
【0035】
演算ユニット56は、例えばコンピュータであって、プログラムに従って後述するような各種演算を行う。演算ユニット56は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。ROMはプログラムを記憶する。RAMはCPUのワークエリアとして使用される。CPUはプログラムに従い、後述するような各種演算を行う。
【0036】
図1のサーバ装置14及び電池交換管理システム20は、例えば図3のハードウェア構成のコンピュータ500により実現される。また、図1の設備管理者端末22は、PCである場合、例えば図3のハードウェア構成のコンピュータ500により実現される。図3は本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
【0037】
コンピュータ500は、CPU501、ROM502、RAM503、HD504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、データバス510、キーボード511、ポインティングデバイス512、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0038】
CPU501は、プログラムに従ってコンピュータ500全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御に従ってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0039】
ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウインドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインタフェースである。外部機器は、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ等である。ネットワークI/F509は通信ネットワーク30を利用してデータ通信をするためのインタフェースである。データバス510は、CPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0040】
キーボード511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0041】
なお、図3に示したハードウェア構成は一例であり、図3に示した構成要素を全て含む必要はなく、又は、図3に示した構成要素以外を含むものであってもよい。
【0042】
<機能構成>
本実施形態に係る蓄電システム12の演算ユニット56は、例えば図4に示すような機能を有するように構成される。図4は、本実施形態に係る蓄電システム12が備える演算ユニット56の一例の機能構成図である。なお、図4の機能構成図は、本実施形態の説明に不要な構成について適宜省略している。蓄電システム12の演算ユニット56は、プログラムを実行することにより、例えば図4の機能構成を実現する。
【0043】
図4の蓄電システム12は、電池寿命推定部70、異常判定部72、電池交換要否判断部74、及び電池交換要求出力部76を有する。
【0044】
電池寿命推定部70は、電池診断ユニット52による運用中のリユース電池42の劣化の診断結果に基づき、運用中のリユース電池42の電池寿命を推定する。リユース電池42の劣化の診断結果に基づき、リユース電池42の電池寿命を推定する手法は、既存の手法を用いればよい。
【0045】
異常判定部72は、画像解析ユニット54による画像解析の結果に基づき、運用中のリユース電池42の異常診断を行う。例えば異常判定部72は、運用中のリユース電池42の膨張などの異常診断を行う。また、異常判定部72は、画像解析ユニット54による画像解析の結果に基づき、運用中の発電装置10及びリユース電池42の異常診断を行うようにしてもよい。なお、画像解析ユニット54による画像解析の結果に基づき、運用中の発電装置10及びリユース電池42の少なくとも一方の異常診断を行う手法は、既存の手法を用いればよい。
【0046】
電池交換要否判断部74は、電池寿命推定部70が推定した運用中のリユース電池42の電池寿命に基づき、運用中のリユース電池42の交換要否を判定する。例えば電池交換要否判断部74は、推定した電池寿命が所定時間よりも短いリユース電池42の交換が必要(リユース電池42の交換要)と判定する。
【0047】
電池交換要求出力部76は、電池交換要否判断部74がリユース電池42の交換要と判定した場合、電池交換管理システム20に電池交換要求を出力する。なお、電池交換管理システム20への電池交換要求は、リアルタイムに行ってもよいし、所定時間(例えば1日など)毎にまとめて行ってもよい。
【0048】
また、電池寿命推定部70は、電池診断ユニット52による運用中のリユース電池42の劣化の診断結果、異常判定部72による異常診断の結果、蓄電システム12が設置された現場の使用環境計測データ、及び蓄電システム12の電力運用データの少なくとも一つに基づいて、運用中のリユース電池42の電池寿命をシミュレーションにより推定してもよい。なお、図4の機能構成は一例であって、図4に示した演算ユニット56の機能の少なくとも一部をサーバ装置14に設けるようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る電池交換管理システム20は、例えば図5に示すような機能を有するように構成される。図5は、本実施形態に係る電池交換管理システム20の一例の機能構成図である。なお、図5の機能構成図は、本実施形態の説明に不要な構成について適宜省略している。電池交換管理システム20は、OS及びアプリケーション等のプログラムを実行することにより、例えば図5の機能構成を実現する。
【0050】
図5の電池交換管理システム20は、リユース電池情報受付部90、電池品質情報管理部92、電池在庫情報管理部94、プラン作成部96、交換電池指定部98、及び通知部100を有する。
【0051】
リユース電池情報受付部90は、例えばEV又はHEVから回収された使用済みの蓄電池の劣化状態、推定寿命、及び容量などの検査結果を含むリユース電池情報の入力を電池検査者から受け付ける。
【0052】
電池品質情報管理部92は、リユース電池情報受付部90が入力を受け付けたリユース電池情報に基づき、蓄電システム12のリユース電池42として採用が可能なリユース電池42の品質に関する電池品質情報を管理する。
【0053】
電池在庫情報管理部94は、リユース電池情報受付部90が入力を受け付けたリユース電池情報に基づき、蓄電システム12のリユース電池42として採用が可能なリユース電池42の在庫に関する電池在庫情報を管理する。
【0054】
プラン作成部96は、蓄電システム12の運用及び保守点検のプランを作成する。運用及び保守点検のプランの作成については、後述する。交換電池指定部98は、蓄電システム12から電池交換要求を受け付けた場合、電池品質情報管理部92が管理する電池品質情報及び電池在庫情報管理部94が管理する電池在庫情報に基づき、交換要と判定された運用中のリユース電池42と交換する在庫のリユース電池42を指定する。
【0055】
通知部100は、交換電池指定部98が指定した在庫のリユース電池42の情報を設備管理者に通知する。このように、通知部100は、電池交換管理システム20が蓄電システム12から電池交換要求を受け付けた場合に、交換要と判定された蓄電システム12で運用中のリユース電池42と交換する在庫のリユース電池42の情報を設備管理者に通知する。また、通知部100は、電池交換管理システム20が蓄電システム12から電池交換要求を受け付けた場合に、交換要と判定された蓄電システム12で運用中のリユース電池42を交換する交換タイミングの情報を設備管理者に通知してもよい。
【0056】
また、通知部100は、プラン作成部96が作成した蓄電システム12の運用及び保守点検のプランを設備管理者に通知してもよい。通知部100は、交換要と判定された蓄電システム12で運用中のリユース電池42と交換する在庫のリユース電池42が無かった場合に、蓄電システム12におけるリユース電池42の運用条件の変更指示を、設備管理者に通知してもよい。さらに、通知部100は、蓄電システム12におけるリユース電池42の運用条件の変更指示に基づいて変更される運用条件に合致する在庫のリユース電池42があった場合に、再作成されたプランを設備管理者に通知してもよい。
【0057】
<処理>
本実施形態に係る電池管理システム1の処理手順について説明する。図6は、本実施形態に係る電池管理システム1の電池交換要求処理の一例を示したフローチャートである。
【0058】
ステップS10において、蓄電システム12の電池診断ユニット52は、蓄電池として採用し、運用中のリユース電池42の電圧、電流、及び温度を計測し、運用中のリユース電池42のデータとして取得する。電池診断ユニット52は、取得したリユース電池42のデータに基づいて運用中のリユース電池42の劣化診断を行う。
【0059】
ステップS12において、蓄電システム12の電池寿命推定部70は、ステップS10の運用中のリユース電池42の劣化診断の結果に基づき、運用中のリユース電池42の電池寿命を推定する。
【0060】
ステップS14において、蓄電システム12の電池交換要否判断部74は、ステップS12で推定した運用中のリユース電池42の電池寿命に基づき、運用中のリユース電池42の交換要否を判定する。例えば電池交換要否判断部74は、推定した電池寿命が所定時間よりも短いリユース電池42を交換要と判定し、推定した電池寿命が所定時間よりも短くないリユース電池42を交換要と判定しない。
【0061】
ステップS16において、蓄電システム12の電池交換要求出力部76は、電池交換要否判断部74が交換要と判定した運用中のリユース電池42があれば、ステップS18及びステップS20の処理を行う。蓄電システム12の電池交換要求出力部76は、電池交換要否判断部74が交換要と判定した運用中のリユース電池42が無ければ、ステップS18及びステップS20の処理をスキップする。
【0062】
ステップS18において、蓄電システム12の電池交換要求出力部76は、電池交換要否判断部74が交換要と判定した運用中のリユース電池42の電池交換要求を、電池交換管理システム20に出力する。ステップS20において、電池交換管理システム20の通知部100は、電池交換要求のあった運用中のリユース電池42の情報、交換要と判定された運用中のリユース電池42と交換する在庫のリユース電池42の情報、又は交換要と判定された運用中のリユース電池42を交換する交換タイミングの情報を、設備管理者に通知する。
【0063】
設備管理者への通知は、電池交換要求のあった運用中のリユース電池42の情報、交換要と判定された運用中のリユース電池42と交換する在庫のリユース電池42の情報、又は交換要と判定された運用中のリユース電池42を交換する交換タイミングの情報を、例えば設備管理者端末22に表示することで行う。図6のフローチャートの処理は、蓄電システム12のリユース電池42の状態の監視を中止するまで繰り返される。
【0064】
本実施形態に係る電池交換管理システム20は、例えば図7及び図8を用いて説明するように処理を行う。図7は、本実施形態に係る電池交換管理システム20の処理の一例の説明図である。図8は、本実施形態に係る電池交換管理システム20の処理手順の一例を示したフローチャートである。
【0065】
図7に示すように、解体業者は、例えばEV又はHEVを解体し、使用済み電池(使用済みの蓄電池)を回収する。電池管理システム1の事業者は、解体業者から使用済み電池を購入し、物流業者に輸送させる。例えば電池管理システム1の事業者が複写機メーカであれば、複写機の静脈物流(混在積載)を利用してもよい。静脈物流とは、最終消費者が使用したあとの使用済みの製品を輸送する物流である。
【0066】
電池検査者は、物流業者によって輸送された使用済み電池の劣化状態、推定寿命、及び容量などの検査を行う。電池検査者は、物流業者によって輸送された使用済み電池の劣化状態、推定寿命、及び容量などを検査した結果データ(検査結果)を含むリユース電池情報を電池交換管理システム20に入力する。
【0067】
このように、電池交換管理システム20には、解体業者から購入した使用済み電池の電池品質情報及び電池在庫情報が登録される。電池交換管理システム20は、蓄電システム12からの電池交換要求を受け付けると、例えば交換要と判定された運用中のリユース電池42と交換する在庫のリユース電池42の情報及び交換タイミングなどを、設備管理者が操作する設備管理者端末22に表示し、設備管理者に通知する。
【0068】
したがって、設備管理者は、交換要と判定された運用中のリユース電池42の交換作業を作業者に指示できる。作業者は、例えば電池交換O&Mサービス部隊である。作業者は蓄電システム12が設置されている現地に赴き、交換要と判定された運用中のリユース電池42を、指定された在庫のリユース電池42に交換する交換作業を行う。
【0069】
図8のステップS30において、電池交換管理システム20は蓄電システム12からの電池交換要求を受け付けたか否かを判定する。蓄電システム12からの電池交換要求を受け付けたと判定すると、ステップS32の処理を行う。
【0070】
ステップS32において、電池交換管理システム20の交換電池指定部98は、電池品質情報管理部92が管理する電池品質情報及び電池在庫情報管理部94が管理する電池在庫情報に基づき、電池交換要求を満たす在庫のリユース電池42から選択する。
【0071】
電池交換要求を満たす在庫のリユース電池42があれば、電池交換管理システム20の通知部100はステップS36の処理に進み、在庫から選択したリユース電池42の情報と交換タイミングの情報とを設備管理者に通知する。
【0072】
また、電池交換要求を満たす在庫のリユース電池42がなければ、電池交換管理システム20はステップS38の処理に進む。ステップS38において、電池交換管理システム20の交換電池指定部98は、蓄電システム12におけるリユース電池42の運用条件の変更指示を、通知部100を用いて設備管理者に通知する。例えば設備管理者は蓄電システム12におけるリユース電池42の運用条件の変更指示に基づいて、例えば満充電電圧を引き下げ、リユース電池42をいたわるリユース電池42の運用条件に変更する。
【0073】
ステップS40において、プラン作成部96は、変更された運用条件を満たす電池必要数及び容量を再計算する。プラン作成部96は、変更されたリユース電池42の運用条件に合致する在庫のリユース電池42があった場合に、蓄電システム12の運用及び保守点検のプランを再作成する。図8のフローチャートの処理は、蓄電システム12のリユース電池42の状態の監視を中止するまで繰り返される。
【0074】
本実施形態に係る電池交換管理システム20によれば、電池交換要求を満たす在庫のリユース電池42がなければ、蓄電システム12におけるリユース電池42の運用条件を変更し、変更したリユース電池42の運用条件に合致する在庫のリユース電池42があった場合に、蓄電システム12の運用及び保守点検のプランを再作成できる。また、電池管理システム1の事業者は、再作成した蓄電システム12の運用及び保守点検のプランに基づいたO&Mサービスを顧客に提供できる。
【0075】
図9は、本実施形態に係る電池管理システム1により実現するビジネスモデルの一例の説明図である。図9のビジネスモデルに必要なリユース電池42は、後述の図10に示すようなサーキュラー型フロー(循環型フロー)の中で回収から検査及び選別の工程を経てリマニュファクチャリングされ、顧客への電力供給のビジネスで利用され、使用済みのリユース電池42が最終工程で再資源化業者によりマテリアルリサイクルされる。
【0076】
図9のビジネスモデルのターゲットは、再生可能エネルギーにより脱炭素化を目指している顧客であり、例えばデータセンタの事業者を設定する。これは、近年推進されているデジタルトランスフォーメーションによりAI、IoT、及び5Gなどの技術を採用する例が増加し、データを処理するデータセンタの重要性が高まっているという事と、その結果、データセンタの消費電力の増加が社会課題になっているという背景を考慮したものである。図9のビジネスモデルでは、事業者が用意する太陽光発電装置と蓄電システムとをデータセンタの敷地内又は近傍に設置し、発電した再生可能エネルギー電力を顧客であるデータセンタの運用者に提供して、事業者が顧客から電気料金を徴収する。
【0077】
また、事業者は、使用済み電池を解体業者から購入し、購入した使用済み電池の輸送を物流業者に依頼し、使用済みのリユース電池42のリサイクルなどの最終処理を再資源化業者に依頼する。さらに、事業者は、設備製造会社から発電装置10及び蓄電システム12を購入する。
【0078】
図9のビジネスモデルでは、本実施形態に係る電池管理システム1を利用し、蓄電システム12の低コスト化と、リユース電池の電池品質を管理する費用の低減とを実現することにより、顧客に安価な再生可能エネルギーの提供が可能となっている。
【0079】
図10は、本実施形態に係る電池管理システムにより実現するサーキュラー型フローの一例の説明図である。
【0080】
自動車メーカはEV又はHEVを消費者に販売する。消費者が使用し廃車になったEV又はHEVは、解体業者によって解体され、使用済みのリチウムイオン電池(LIB)が回収される。事業者は、解体業者から使用済みのリチウムイオン電池を購入する。
【0081】
事業者が複写機メーカの場合、事業者は解体業者から購入した使用済みのリチウムイオン電池を、複写機のリユース及びリサイクル事業で展開している静脈物流に混載させることで、使用済みのリチウムイオン電池を効率良くリユース拠点に回収する。
【0082】
リユース拠点において、事業者は使用済みのリチウムイオン電池を、再利用目的から設定された基準にて検査及び選別する。事業者は、合格となった使用済みのリチウムイオン電池を蓄電システム12のリユース電池42として採用する。また、事業者は設備製造会社から蓄電システム12の筐体、制御回路、及び周辺装置などを購入し、リユース電池42を組み込み、蓄電システム12を完成させる。また、事業者は設備製造会社から太陽光発電装置などの発電装置10を購入する。事業者は、発電装置10及び蓄電システム12を組み合わせ、顧客に提供する電池管理システム1を準備する。
【0083】
事業者は、再生可能エネルギー電力を供給するデータセンタの近傍に発電装置10及び蓄電システム12を設置しているが、発電装置10及び蓄電システム12を販売するのではなく、データセンタの運用者に再生可能エネルギー電力を販売するビジネスモデルを展開する。
【0084】
本実施形態に係る電池管理システム1は、運用中のリユース電池42の電池寿命を推定して、運用中のリユース電池42の交換要否を判定することで、再生可能エネルギーの電力供給が止まることが無いように電力供給のサービスを行う。
【0085】
本実施形態に係る電池管理システム1において、運用中のリユース電池42の電池交換要求が出力されると、交換要と判定されたリユース電池42は在庫のリユース電池42と交換され、取り出される。交換要と判定され、取り出されたリユース電池42は、検査及び選別が行われる。三次利用できるリユース電池42は、次の用途も用いられる。廃棄するリユース電池42は再資源化業者により最終処理が行われる。最終処理では、例えば燃焼によりリサイクル可能なマテリアルを取り出す。なお、最終処理では、燃焼以外によりリサイクル可能なマテリアルを抽出してもよい。リサイクルされたマテリアルは、新規のリチウムイオン電池の原材料として電池メーカへ共有される。電池メーカは、再資源化業者から供給された原材料を用いてリチウムイオン電池を製造する。電池メーカは、製造したリチウムイオン電池を自動車メーカに供給する。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る電池管理システム1によれば、リユース電池42の採用による蓄電システム12の低コスト化と、リユース電池42の品質及び安全性を維持する為の運用及び保守点検の費用の低減を実現し、事業者がリユース電池を採用した蓄電システム12により顧客に電力を供給するビジネスモデルを成立できる。
【0087】
図1の電池管理システム1の構成は一例であって、例えば図11に示す構成であってもよい。図11は、本実施形態に係る電池管理システム1の一例の構成図である。図11の電池管理システム1は、図1の電池管理システム1に電池交換要否判断装置18が追加された構成である。電池交換要否判断装置18は、PC又はワークステーション等である。電池交換管理システム20は、サーバ装置、ASP、又はクラウドコンピューティングにより実現してもよい。
【0088】
電池交換要否判断装置18は、例えば図3のCPU501がプログラムを実行することにより、例えば図4に示した電池交換要否判断部74及び電池交換要求出力部76として機能する。図11の電池管理システム1では、蓄電システム12が運用中のリユース電池42の電池寿命を推定し、電池交換要否判断装置18が運用中のリユース電池42の交換要否を判定する。電池交換要否判断装置18は、リユース電池42の交換要と判定した場合に、電池交換管理システム20に電池交換要求を出力する。
【0089】
図1又は図11の電池管理システム1の構成は、課金システム24が追加された構成であってもよい。ここでは、図11の電池管理システム1に課金システム24が追加された構成例を図12に示す。図12は、本実施形態に係る電池管理システム1の一例の構成図である。
【0090】
図12の電池管理システム1の課金システム24は、蓄電システム12から供給される再生可能エネルギー電力を利用する顧客(データセンタの運用者)に対する課金の料金プランを管理する。課金システム24は、顧客から課金の料金プランに従って電気料金を徴収する為の処理を行う。なお、課金システム24は、顧客の料金負担を顧客に供給した電力供給量に基づいて決定し、電池管理システム1の運用及び保守点検の費用を、電池管理システム1を運用する事業者に負担させるように、課金の料金プランを管理する。
【0091】
また、課金システム24は、変更指示に基づいて変更される運用条件の単位時間当たりの最大電力供給量が変動する可能性があることを前提とした料金プランを顧客に提供するようにしてもよい。
【0092】
変更指示に基づいて変更される運用条件の単位時間当たりの最大電力供給量が変動する可能性があることを前提とした料金プランの一例としては、例えば発電装置10の出力が最大30kW、蓄電システム12の出力が最大20kWである場合に、最大電力供給量50kWで顧客と契約する。そして、運用条件の変更により蓄電システム12の出力が最大15kWになった場合は、運用条件の変更による最大電力供給量の低下(最大電力供給量50kW→45kWへの変動)に従い料金を引き下げる。
【0093】
<まとめ>
国内外においてデジタルトランスフォーメーションが推進され、AI、IoT、及び5Gなどの技術を採用する例が増加し、データを処理するデータセンタの重要性が高まっている。一方、データセンタの消費電力の増加が予測されているが、石炭、重油、LNGを燃料とする火力発電源から脱却してCO2排出量の削減が求められている。再生可能エネルギーのひとつである太陽光発電装置及び蓄電装置を用いて、発電余剰電力を有効利用する方法が既に知られているが、蓄電池が高価であるために普及の妨げになっている。
【0094】
EV又はHEVで使われた電池を回収し、リユース電池としてリマニュファクチャリングすることで、低コスト化する手法が知られている。しかし、リユース電池であるが故の品質懸念があるだけでなく、バラツキも存在するので、リユース電池を管理し、修理及び交換などのメンテナンスを実施するための効率のよい手法が必要になる。
【0095】
本実施形態に係る電池管理システム1では、データセンタの運用者である顧客に再生可能エネルギー電力を供給するケースにおいて、発電した再生可能エネルギー電力を顧客に提供し、事業者が電気料金を徴収するというビジネスモデルを実現する。
【0096】
本実施形態に係る電池管理システム1では、主に事業者の負担となっていたリユース電池の品質及び安全性を維持する為の運用及び保守点検の費用を低減し、リユース電池の採用による蓄電システムのコスト低減と合わせ、ビジネスの成立、ビジネスモデルの構築を実現した。
【0097】
本実施形態によれば、事業者が運用中の蓄電システム12のリユース電池の電池品質を監視し、一方で修理又は交換に必要な保守用のリユース電池を準備し、交換作業が必要と判断された場合、交換作業を効率的に短期間で実施する事が可能になる。本実施形態によれば、事業者の負担が減少し、顧客に提供する電気料金を下げることにつながる。
【0098】
また、リユース電池を回収から検査、リマニュファクチャリング、メンテナンス、及び顧客電力供給サービスからなる事業活動と、再生可能エネルギー電力の顧客提供サービスがビジネス的につながり、再生可能エネルギー電力供給のビジネスモデルを構築することができる。
【0099】
さらに、このビジネスモデルを拡大展開していくことで、世の中の再生可能エネルギー電力利用の普及率を高めることにつながり、脱炭素社会実現の貢献に寄与するという大きなメリットとなる。
【0100】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0101】
実施例に記載された装置群は本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。本実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、及び、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0102】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1>
蓄電池として採用したリユース電池と、前記リユース電池の診断結果を出力する電池診断ユニットと、を備える蓄電システムであって、
前記診断結果に基づき、運用中の前記リユース電池の電池寿命を推定する電池寿命推定手段と、
推定した前記電池寿命に基づき、運用中の前記リユース電池の交換要否を判定する電池交換要否判断手段と、
運用中の前記リユース電池の交換要と判定された場合、前記蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する電池交換管理システムに電池交換要求を出力する電池交換要求出力手段と、
を有する蓄電システム。
<2>
前記電池診断ユニットは、運用中の前記リユース電池の電圧、電流、及び温度の少なくとも一つを前記リユース電池のデータとして取得し、取得した前記リユース電池のデータに基づいて前記リユース電池の劣化診断を行い、前記劣化診断の結果を出力する
前記<1>記載の蓄電システム。
<3>
前記リユース電池の撮影画像を解析した結果に基づいて前記リユース電池の異常診断を行い、前記異常診断の結果を出力する異常判定部、
を更に備える前記<1>又は<2>記載の蓄電システム。
<4>
前記電池寿命推定手段は、前記診断結果、前記異常診断の結果、前記蓄電システムが設置された現場の使用環境計測データ、及び前記蓄電システムの電力運用データの少なくとも一つに基づいて、運用中の前記リユース電池の電池寿命をシミュレーションにより推定する
前記<3>記載の蓄電システム。
<5>
発電装置と、前記発電装置が発電した電力を蓄電する蓄電システムと、を備える電池管理システムであって、
前記蓄電システムは、
蓄電池として採用したリユース電池と、前記リユース電池の診断結果を出力する電池診断ユニットと、を備え、
前記診断結果に基づき、運用中の前記リユース電池の電池寿命を推定する電池寿命推定手段と、
推定した前記電池寿命に基づき、運用中の前記リユース電池の交換要否を判定する電池交換要否判断手段と、
運用中の前記リユース電池の交換要と判定された場合、前記蓄電池として採用が可能なリユース電池の情報を管理する電池交換管理システムに電池交換要求を出力する電池交換要求出力手段と、
を有する電池管理システム。
<6>
前記電池診断ユニットは、運用中の前記リユース電池の電圧、電流、及び温度の少なくとも一つを前記リユース電池のデータとして取得し、取得した前記リユース電池のデータに基づいて前記リユース電池の劣化診断を行い、前記劣化診断の結果を前記電池寿命推定手段に出力する
前記<5>記載の電池管理システム。
<7>
前記リユース電池及び前記発電装置の少なくとも一方の撮影画像を解析した結果に基づいて前記リユース電池及び前記発電装置の少なくとも一方の異常診断を行い、前記異常診断の結果を出力する異常判定部、
を更に備える前記<5>又は<6>記載の電池管理システム。
<8>
前記電池寿命推定手段は、前記診断結果、前記異常診断の結果、前記蓄電システムが設置された現場の使用環境計測データ、及び前記蓄電システムの電力運用データの少なくとも一つに基づいて、運用中の前記リユース電池の電池寿命をシミュレーションにより推定する
前記<7>記載の電池管理システム。
<9>
前記電池交換管理システムを更に備え、
前記電池交換管理システムは、
回収した前記リユース電池の品質に関する電池品質情報を管理する電池品質情報管理手段と、
回収した前記リユース電池の在庫に関する電池在庫情報を管理する電池在庫情報管理手段と、
前記電池交換要求を受け付けた場合、前記リユース電池の前記電池品質情報及び前記電池在庫情報に基づき、前記交換要と判定された前記リユース電池と交換するリユース電池の情報を設備管理者に通知する通知手段と、
を有する前記<5>乃至<8>の何れか一項に記載の電池管理システム。
<10>
前記通知手段は、前記電池交換要求を受け付けた場合、前記リユース電池の前記電池品質情報及び前記電池在庫情報に基づき、前記交換要と判定された前記リユース電池を交換する交換タイミングの情報を前記設備管理者に通知する
前記<9>記載の電池管理システム。
<11>
前記電池交換管理システムは、
前記交換要と判定された前記リユース電池と交換するリユース電池の情報、及び前記交換要と判定された前記リユース電池を交換する交換タイミングの情報に基づき、前記蓄電システムの運用及び保守点検のプランを作成し、前記通知手段を用いて前記設備管理者に通知するプラン作成手段、
を更に有する前記<10>記載の電池管理システム。
<12>
前記電池交換管理システムは、前記リユース電池の前記電池品質情報及び前記電池在庫情報に基づき、前記交換要と判定された前記リユース電池と交換するリユース電池を前記電池在庫情報から指定する交換電池指定手段、
を更に有し、
前記交換電池指定手段は、交換する前記リユース電池の在庫が無い場合に、前記蓄電システムにおける前記リユース電池の運用条件の変更指示を、前記通知手段を用いて前記設備管理者に通知する
前記<10>又は<11>記載の電池管理システム。
<13>
前記プラン作成手段は、前記リユース電池の運用条件の変更指示に基づいて変更される前記運用条件に合致する前記リユース電池の在庫があった場合に、前記プランを再作成して前記設備管理者に通知する
前記<11>記載の電池管理システム。
<14>
前記蓄電システムから供給される電力を利用する顧客に対する課金の料金プランを管理する課金システムを更に備え、
前記課金システムは、前記顧客の料金負担を前記顧客に供給した電力供給量に基づいて決定し、前記電池管理システムの運用及び保守点検の費用を、前記電池管理システムを運用する事業者に負担させる
前記<12>又は<13>記載の電池管理システム。
<15>
前記課金システムは、前記変更指示に基づいて変更される前記運用条件の単位時間当たりの最大電力供給量が変動する可能性があることを前提とした料金プランを前記顧客に提供する
前記<14>記載の電池管理システム。
【符号の説明】
【0103】
1 電池管理システム
10 発電装置
12 蓄電システム
14 サーバ装置
16A~16B 監視カメラ
18 電池交換要否判断装置
20 電池交換管理システム
22 設備管理者端末
24 課金システム
40 電池収納スペース
42 リユース電池
44 予備電池収納スペース
50 通信部
52 電池診断ユニット
54 画像解析ユニット
56 演算ユニット
70 電池寿命推定部
72 異常判定部
74 電池交換要否判定部
76 電池交換要求出力部
90 リユース電池情報受付部
92 電池品質情報管理部
94 電池在庫情報管理部
96 プラン作成部
98 交換電池指定部
100 通知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開2021-48997号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12