(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171630
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法及び面取り部除去装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241205BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241205BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20241205BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20241205BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241205BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20241205BHJP
C03B 29/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 622W
H01L21/304 631
B23K26/53
B28D5/04 A
B26F3/00 Z
B24B7/04 A
C03B33/09
C03B29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088747
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 勇人
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬人
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彬
【テーマコード(参考)】
3C043
3C060
3C069
4E168
4G015
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043CC04
3C043DD06
3C060AA10
3C060AB04
3C060CB09
3C060CB14
3C069AA03
3C069BA07
3C069BA08
3C069BB04
3C069CA05
3C069CB02
3C069CB05
3C069DA07
3C069EA01
4E168AE01
4E168CA15
4E168CB01
4E168CB07
4E168DA02
4E168GA01
4E168GA02
4E168HA02
4E168JA12
4E168JA13
4G015FA04
4G015FA06
4G015FB02
4G015FC02
4G015FC10
5F057AA05
5F057AA21
5F057BA11
5F057BA19
5F057BB03
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5F057FA37
5F057FA45
5F057GA12
5F057GB13
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】研削装置による研削加工を実施する前に、効果的にウエーハの外周から面取り部を除去することが可能になるウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】有効領域と該有効領域を囲繞する外周の端部に面取り部を有するウエーハの加工方法であって、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該有効領域と該面取り部との境界部の内部に位置付けて照射して、該面取り部に沿って改質層を形成する改質層形成工程と、該ウエーハの有効領域を保持し、ウエーハの外周に外力を付与して面取り部を除去する面取り部除去工程と、該面取り部が除去されたウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する加工工程と、を含み構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効領域と該有効領域を囲繞する外周の端部に面取り部を有するウエーハの加工方法であって、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該有効領域と該面取り部との境界部の内部に位置付けて照射して、該面取り部に沿って改質層を形成する改質層形成工程と、
該ウエーハの有効領域を保持し、ウエーハの外周に外力を付与して面取り部を除去する面取り部除去工程と、
該面取り部が除去されたウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する加工工程と、
を含み構成されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該面取り部除去工程において、ウエーハの外周に付与する外力は、高圧エアー、高圧水、高圧エアー及び高圧水の混合流体、ピッカーのうちいずれかである請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該ウエーハは、第一のウエーハと第二のウエーハとが積層された積層ウエーハであり、
該第一のウエーハに対して、該改質層形成工程と、該面取り部除去工程と、該加工工程と、を実施する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
請求項1に記載の面取り部除去工程を実施する面取り部除去装置であって、
ウエーハの有効領域を保持する保持面を有する保持手段と、該保持手段によって保持され該保持面から外方に張り出した外周に外力を付与して該有効領域から面取り部を除去する面取り部除去手段と、
を含み構成される面取り部除去装置。
【請求項5】
該面取り部除去手段は、高圧エアー、高圧水、高圧エアー及び高圧水の混合流体、ピッカーのうちいずれかによって外周に外力を付与する手段である請求項4に記載の面取り部除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効領域と該有効領域を囲繞する外周の端部に面取り部を有するウエーハの加工方法、及び面取り部除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域が表面に形成されたウエーハは、裏面が研削されて所望の厚みに加工された後、切削装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ウエーハの外周には面取り部が形成されていて、ウエーハの裏面を研削して薄化すると、該面取り部がナイフエッジのように鋭利となり、オペレータが怪我をしたり、ウエーハの外周から亀裂が入りデバイスを損傷させたりするという問題がある。
【0004】
そこで、ウエーハの裏面を研削する前に、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を面取り部の内側に位置付けて照射し、リング状にウエーハの内部に改質層を形成することで、研削加工を実施する際に面取り部が除去されるようにした技術が本出願人によって提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載の技術によれば、研削加工時に加わる外力によって面取り部が除去されることになるが、研削加工時に発生する研削屑を含む研削水が排出される排水パン内にウエーハから脱落した面取り部の破片が滞留し、該排水パン内を度々清掃しなければならず、煩に堪えないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、研削装置による研削加工を実施する前に、効果的にウエーハの外周から面取り部を除去することが可能になるウエーハの加工方法、及び面取り部除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、有効領域と該有効領域を囲繞する外周の端部に面取り部を有するウエーハの加工方法であって、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該有効領域と該面取り部との境界部の内部に位置付けて照射して、該面取り部に沿って改質層を形成する改質層形成工程と、該ウエーハの有効領域を保持し、ウエーハの外周に外力を付与して面取り部を除去する面取り部除去工程と、該面取り部が除去されたウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する加工工程と、を含み構成されるウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
該面取り部除去工程において、ウエーハの外周に付与する外力は、高圧エアー、高圧水、高圧エアー及び高圧水の混合流体、ピッカーのうちいずれかであることが好ましい。さらに、該ウエーハは、第一のウエーハと第二のウエーハとが積層された積層ウエーハであり、該第一のウエーハに対して、該改質層形成工程と、該面取り部除去工程と、該加工工程と、を実施することが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記したウエーハの加工方法における面取り部除去工程を実施する面取り部除去装置であって、ウエーハの有効領域を保持する保持面を有する保持手段と、該保持手段によって保持され該保持面から外方に張り出した外周に外力を付与して該有効領域から面取り部を除去する面取り部除去手段と、を含み構成される面取り部除去装置が提供される。
【0011】
該面取り部除去手段は、高圧エアー、高圧水、高圧エアー及び高圧水の混合流体、ピッカーのうちいずれかによって外周に外力を付与する手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエーハの加工方法は、有効領域と該有効領域を囲繞する外周の端部に面取り部を有するウエーハの加工方法であって、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該有効領域と該面取り部との境界部の内部に位置付けて照射して、該面取り部に沿って改質層を形成する改質層形成工程と、該ウエーハの有効領域を保持し、ウエーハの外周に外力を付与して面取り部を除去する面取り部除去工程と、該面取り部が除去されたウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する加工工程と、を含み構成されることから、ウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する前に、効果的にウエーハの外周から面取り部を除去することが可能になり、面取り部が該加工工程を実施する研削装置の排水パンに滞留することがなく、該排水パンを度々清掃しなければならず、煩に堪えないという問題が解消する。
【0013】
また、本発明の面取り部除去装置は、上記したウエーハの加工方法における面取り部除去工程を実施する面取り部除去装置であって、ウエーハの有効領域を保持する保持面を有する保持手段と、該保持手段によって保持され該保持面から外方に張り出した外周に外力を付与して該有効領域から面取り部を除去する面取り部除去手段と、を含み構成されることから、ウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する前に、効果的にウエーハの外周から面取り部を除去することが可能になり、面取り部が上記したウエーハの加工方法における加工工程を実施する研削装置の排水パンに、面取り部の破片が滞留することがなく、該排水パンを度々清掃しなければならず、煩に堪えないという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)本実施形態のウエーハの加工方法によって加工される単体のウエーハを示す斜視図、(b)本実施形態のウエーハの加工方法によって加工される第一のウエーハと第二のウエーハとが積層されたウエーハの斜視図である。
【
図2】(a)
図1(a)に示すウエーハがレーザー加工装置のチャックテーブルに保持される態様を示す斜視図、(b)チャックテーブルに保持されたウエーハに改質層を形成する態様を示す斜視図である。
【
図3】(a)~(d)改質層形成工程により形成される改質層の態様を示す一部拡大断面図である。
【
図4】(a)面取り部除去装置の保持手段によりウエーハが保持される態様を示す斜視図、(b)面取り部除去装置の流体噴射ノズルによって流体が噴射される態様を示す斜視図である。
【
図5】(a)
図4(b)に示す態様の一部を拡大した側面図、(b)面取り部が除去されたウエーハの一部を拡大した側面図、(c)全周に渡り面取り部が除去されたウエーハの全体斜視図である。
【
図6】面取り部除去手段として、ピッカーが配設された例を示す斜視図である。
【
図7】(a)~(c)
図6に示すピッカーにより面取り部が除去される態様を示す一部を拡大した側面図、(d)全周に渡り面取り部が除去されたウエーハの全体斜視図である。
【
図8】加工工程を実施する態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法、及び面取り部除去装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0016】
図1(a)には、本発明に基づき構成されるウエーハの加工方法によって加工されるウエーハ10A及び保護テープTが示されている。図示のウエーハ10Aは、例えば、直径が300mmであって、厚みが700μmのシリコンのウエーハであり、複数のデバイス12Aが分割予定ライン14Aによって区画され表面10Aaに形成されている。ウエーハ10Aは、表面10Aaと裏面10Abとを有し、製品として使用されるデバイス12Aが形成された中央寄りの有効領域16Aと、有効領域16Aを囲繞する外周の端部に形成された面取り部17Aと、該有効領域16Aと外周の面取り部17Aとの間であって製品となるデバイス12Aが形成されていない境界部18Aとが形成されている。本実施形態のウエーハの加工方法によって加工される際には、図示のように、表面10Aa側に保護テープTを貼着して一体とする。
【0017】
図1(b)には、本発明に基づき構成されるウエーハの加工方法によって加工される別のウエーハWが示されている。ウエーハWは、第一のウエーハ10Bと、第二のウエーハ10Cとを積層し一体とした積層ウエーハである。第一のウエーハ10Bは、例えば、上記したウエーハ10Aと同一の構成であって、表面10Baと裏面10Bbとを備え、直径が300mm、厚みが700μmのシリコンのウエーハであり、複数のデバイス12Bが分割予定ライン14Bによって区画され表面10Baに形成されたシリコンのウエーハである。第一のウエーハ10Bには、製品として使用されるデバイス12Bが形成された中央寄りの有効領域16Bと、有効領域16Bを囲繞する外周の端部に形成された面取り部17Bと、該有効領域16Bと外周の面取り部17Bとの間であって製品となるデバイス12Bが形成されていない境界部18Bとが形成されている。第二のウエーハ10Cも、該第一のウエーハ10Bと同様の構成を備え、図示はされていないが、図中下面側の表面10Caに、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され形成されたシリコンのウエーハである。第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとは、例えば、第一のウエーハ10Bの表面10Baと第二のウエーハ10Cの表面10Caとを貼り合わせて熱処理することによるシロキサン結合で結合され積層され一体とされている。
【0018】
なお、以下に説明する本実施形態のウエーハの加工方法によって加工されるウエーハは、上記した単体のシリコンのウエーハ10A、2枚のシリコンのウエーハを積層したウエーハWに限定されず、有効領域と該有効領域を囲繞する外周の端部に面取り部を有する様々なウエーハが含まれる。例えば、窒化ガリウム(GaN)のウエーハ、ガリウム砒素(GaAs)のウエーハ、リチウムタンタレート(LiTaO3)のウエーハ、リチウムナイオベート(LiNbO3)のウエーハであってもよく、さらには、中央領域にデバイスが形成されていないが、中央領域が後に加工されて製品として使用されるウエーハ(例えばガラスウエーハ)であってもよい。以下に説明する実施形態では、上記したウエーハ10A、積層ウエーハであるウエーハWを例にしながら、本実施形態のウエーハの加工方法、及び好適な面取り部除去装置について説明する。
【0019】
本実施形態のウエーハの加工方法をウエーハ10Aに対して実施するに際し、ウエーハ10Aに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、上記した有効領域16Aと面取り部17Aとの境界部18Aの内部に位置付けて照射して、面取り部17Aに沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
【0020】
用意したウエーハ10Aを、
図2(a)、(b)に示すレーザー加工装置20(一部のみを示している)に搬送する。レーザー加工装置20は、
図2(a)に示すチャックテーブル21と、
図2(b)に示すレーザー光線照射手段22とを少なくとも備えている。チャックテーブル21は、上面側の保持面を構成する通気性を有するポーラス部材により形成された吸着チャック21aと、該吸着チャック21aを囲繞する枠体21bとを備えている。レーザー光線照射手段22は、ウエーハ10Aを構成するシリコンに対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振するレーザー発振器(図示は省略する)と、該レーザー発振器により発振されたレーザー光線LBを集光して照射する集光器23とを備えている。レーザー加工装置20は、さらに、チャックテープ21を移動させる移動手段、チャックテーブル21を回転させる回転駆動手段、吸着チャック21aの上面に負圧を生成する吸引手段(いずれも図示は省略する)を備えている。
【0021】
レーザー加工装置20にウエーハ10Aを搬送したならば、
図2(a)に示すように、保護テープT側を下方に向け、ウエーハ10Aの裏面10Ab側を上方に向けて、チャックテーブル21に載置し、図示を省略する吸引手段を作動して吸引保持する。該チャックテーブル21に吸引保持されたウエーハ10Aに対し、レーザー加工装置20に配設されたアライメント手段及び高さ検出手段(図示は省略する)を用いてアライメントが実施され、ウエーハ10Aの面取り部17Aが形成された外周の端部の位置とウエーハ10Aの中心位置を検出すると共に、ウエーハ10Aの裏面10Abの上面の高さを検出し、上記した境界部18Aにおいてレーザー光線LBを照射すべき加工位置を検出する。ウエーハ10Aの面取り部17Aが形成された外周の端部の位置とウエーハ10Aの中心位置を検出することにより、例えば、ウエーハ10Aの外周の端部から面取り部17Aが形成された領域(例えば外周の端部から0.5mmの領域)よりも内側であって、上記した境界部18Aに対応して環状に設定されるウエーハ10Aの中心点から例えば半径147mmの位置が所定の加工位置として検出される。このようにして検出された加工位置の位置情報は、図示しない制御手段に記憶される。
【0022】
上記したアライメントによって検出された加工位置の情報に基づきチャックテーブル21を移動して、
図2(b)に示すように、上記した所定の加工位置上にレーザー光線照射手段22の集光器23を位置付ける。次いで、ウエーハ10Aの境界部18Aの内部にレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射すると共に、チャックテーブル21を矢印R1で示す方向に回転してウエーハ10Aの面取り部17Aに沿って全周に渡り改質層を形成する。なお、本実施形態における改質層は、追って詳述する面取り部除去工程における面取り部17Aの除去効果を向上させるべく、1層ではなく、上下方向に複数の層で形成することが好ましい。例えば、該改質層の一例として示す
図3(a)に示す改質層100は、上下方向に4層の改質層で構成されており、最初に、レーザー光線LBの集光点を境界部18Aに設定された加工位置の内部の最深部に位置付けてレーザー光線LBを照射すると共にチャックテーブル21を回転して面取り部17Aに沿って1層目の環状の改質層を形成し、その後、該集光点を3回に渡って裏面10Ab側(上面側)に上昇させて面取り部17Aに沿って改質層を形成することにより、合計4層の環状の改質層を形成したものである。以上により改質層形成工程が完了する。
【0023】
上した改質層形成工程を実施する際のレーザー加工条件は、例えば、以下のように設定される。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :60kHz
平均出力 :2.4W
チャックテーブルの回転速度:107.3deg/s
【0024】
なお、本発明の改質層形成工程によって面取り部17Aに沿って形成される改質層の形態は、
図3(a)に示す形態に限定されない。例えば、
図3(b)に示すように、上記した上下方向に延びる改質層100を形成した後、境界部18Aにおける内部の面取り部17A側(外側)にレーザー光線LBの集光点を複数回に渡って移動して照射して、面取り部17Aに沿って裏面10Ab側に1層の環状の改質層102、104、106を形成するようにしてもよい。また、
図3(c)に示すように、上記した改質層100を形成した後、境界部18Aにおける内部の面取り部17A側にレーザー光線LBの集光点を移動して照射して、改質層100と同様に、複数の改質層からなる上下方向に延びる改質層110、120を形成するようにしてもよい。さらに、
図3(d)に示すように、境界部18Aの内部において、最深部に集光点を位置付けて面取り部17Aに沿って1層目の改質層を形成した後、複数回に渡りウエーハ10Aの裏面10Ab側(上面側)に集光点を移動すると共にウエーハ10Aの中心側に該集光点を移動することにより、ウエーハ10Aの中心側に向けて傾斜する改質層130を形成するようにしてもよい。さらには、図示のように改質層130に対して並列に、面取り部17A側(外側)に該改質層130と同様の改質層140、150を複数形成するようにしてもよい。なお、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとを積層したウエーハWの第一のウエーハ10Bに対して改質層形成工程を実施して改質層を形成する場合も、上記した
図3(a)~(d)に示した改質層と同様の改質層を形成することが可能であり、上記したウエーハ10Aに対して改質層を形成する手順に対し、第二のウエーハ10Cを下方に向けてレーザー加工装置20のチャックテーブル21に吸引保持する以外は同一の手順で実施されることから、詳細な説明は省略する。以下の説明では、改質層形成工程によって、ウエーハ10A及びウエーハWの第一のウエーハ10Bに対し、
図3(a)に示す改質層100を形成したものとして説明を続ける。
【0025】
上記した改質層形成工程を実施したならば、上記した改質層が形成されたウエーハの有効領域を保持し、ウエーハの外周に外力を付与して面取り部を除去する面取り部除去工程を実施する。
【0026】
図4(a)、(b)には、改質層形成工程が施されたウエーハ10Aに対して、面取り部除去工程を実施するのに好適な面取り部除去装置30が示されている(一部のみを示している)。本実施形態の面取り部除去装置30は、ウエーハ10Aの有効領域16Aを保持する保持手段32と、ウエーハ10Aの有効領域16Aから面取り部17Aを除去する面取り部除去手段として配設された流体噴射手段34とを含み構成されている。保持手段32は、下面側に保持面32aを備えた円板状の吸引部32bと、該吸引部32bの中央に連結され図示を省略する回転駆動手段を備えた支持軸32cとを備えている。保持面32aは通気性を有する部材によって生成され、支持軸32cには、図示を省略する吸引手段と該保持面32aとを接続する通路33が形成され、該通路33を介して吸引されて保持面32aに負圧Vが生成される。吸引部32bは、ウエーハ10Aよりも小さい寸法であって、ウエーハ10Aの有効領域16Aに相当する寸法で形成される。
【0027】
図4(b)に示す流体噴射手段34は、上記した保持手段32によって有効領域16Aが保持され保持面32aから外方に張り出したウエーハ10Aの外周に外力を付与して、有効領域16Aから面取り部17Aを除去する手段であり、図示の流体噴射手段34は、流体噴射ノズル36と、該流体噴射ノズル36に対して高圧水Lを供給する水源37と、該流体噴射ノズル36に対して高圧エアーPを供給するエアー供給源38とを備えている。図示の流体噴射ノズル36は2流体ノズルであり、水源37は、調量弁37bを含む連通路37aによって流体噴射ノズル36のノズル本体36aに形成された高圧水導入口36bに接続され、エアー供給源38は、調量弁38bを含む連通路38aによってノズル本体36aに形成された高圧エアー導入口36cに接続される。上記した高圧水導入口36bからノズル本体36aに導入された高圧水Lと、高圧エアー導入口36cからノズル本体36aに導入された高圧エアーPが、ノズル本体36aの内部で混合されて、高圧水L及び高圧エアーPの混合流体L+Pが、噴射口36dから噴射される。
【0028】
本実施形態では、該面取り部除去装置30が、上記したレーザー加工装置20に並設された例を示し、面取り部除去工程を実施するに際しては、
図4(a)に示すように、保持手段32をレーザー加工装置20のチャックテーブル21上に位置付ける。次いで、保持手段32を下降してウエーハ10Aの有効領域16Aに当接させ、図示を省略する吸引手段を作動して、ウエーハ10Aの裏面10Abにおいて有効領域16Aに対応する領域を吸引する。そして、チャックテーブル21の吸着チャック21aに生成していた負圧を解除して、ウエーハ10Aを面取り部除去装置30の保持手段32側に保持させる。次いで、該保持手段32を移動させる図示を省略する移動手段を作動して、
図4(b)に示すように、上記した流体噴射手段34の流体噴射ノズル36の噴射口36d近傍に、ウエーハ10Aの外周に形成された面取り部17Aを位置付ける。
【0029】
次いで、上記した調量弁37b、38bを開として、水源37、エアー供給源38から、高圧水L(例えば0.3MPa)と、高圧エアーP(例えば0.6MPa)を流体噴射ノズル36に導入し、
図5(a)に示すように、噴射口36dからウエーハ10Aの面取り部17Aが形成された外周に向けて、混合流体L+Pを噴射する。なお、図示の実施形態では、流体噴射ノズル36の噴射口36aをウエーハ10Aの裏面10Abよりも若干下方に位置付け、噴射される混合流体L+Pの噴射方向が水平方向に対してやや上方に向かうように設定している。これにより、ウエーハ10Aの外周の面取り部17Aに対して混合流体L+Pによる外力が付与されると共に、混合流体L+Pが保護テープTとウエーハ10Aの外周とが離反するように作用することで、面取り部17Aが改質層100に沿って破断され、
図5(b)に示すように、ウエーハ10Aの外周から面取り部17Aが除去される。なお、このとき破断されるのは、上記した混合流体L+Pが噴射された近傍の領域である。
【0030】
そして、上記したように液体噴射ノズル36から混合流体L+Pをウエーハ10Aの外周に向けて噴射しながら、保持手段32を
図4(b)に矢印R2で示す方向に回転させることでウエーハ10Aの外周の全体に渡り混合流体L+Pが噴射され、
図5(c)に示すように、ウエーハ10Aの外周全域に渡って面取り部17Aが有効領域16Aから除去される。以上により、面取り部除去工程が好適に実施される。なお、上記した面取り部除去装置30は、ウエーハ10Aを保持した保持手段32と流体噴射ノズル36とにより面取り部除去工程を行うための専用の閉鎖空間を備えており、該閉鎖空間に位置付けられて面取り部除去工程が実施されるため、流体噴射手段34から噴射される高圧水Lと、ウエーハ10Aの外周から飛散する面取り部17Aの破片とを効率的に回収することができる。したがって、追って説明する研削装置50(
図8を参照)によってウエーハ10Aの裏面10Abを研削する前に、効果的にウエーハ10Aの外周から面取り部17Aを除去することが可能になり、面取り部17Aが研削装置の排水パンに滞留するという問題がなく、度々清掃しなければならず煩に堪えないという問題が解消される。なお、上記した実施形態では、
図3(a)に示す改質層100を除去の起点として面取り部17Aを除去する例を示したが、
図3(b)~(d)に示す改質層によっても、上記したのと同様にウエーハ10Aの有効領域16Aから面取り部17Aを効率よく除去することができる。
【0031】
上記した実施形態では、ウエーハ10Aの外周に付与する外力を、流体噴射手段34の流体噴射ノズル36によって高圧エアーPと高圧水Lとを混合した混合流体L+Pとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、高圧エアーPのみを噴射して面取り部17Aを除去する外力としたり、又は高圧水Lのみを噴射して面取り部17Aを除去する外力としたりすることもできる。その際は、上記した2流体噴射可能な流体噴射ノズル36である必要はなく、単体の流体を噴射する流体噴射ノズルでよい。
【0032】
さらに、本発明の面取り部除去手段は、上記したような流体を外力として使用する面取り部除去手段に限定されず、上記した流体噴射手段34に替えて面取り部除去手段として配設される
図6、7に示すピッカー40を使用するものであってもよい。
【0033】
ピッカー40は、
図6に示すように、上下方向に延びる本体部41と、該本体部41の下端部に形成される外力作用部42と、を備えている。外力作用部42は、固定プレート42aと、該固定プレート42aに対して間隔が調整可能に構成された可動プレート42bと、該可動プレート42bを移動させて固定プレート42aと可動プレート42bとの間隔を調整するねじ構造からなる間隔調整部43とを備えている。ピッカー40は、図示を省略する移動手段を介して面取り部除去装置30に支持されており、ピッカー40を矢印R3で示す方向に昇降させると共に、保持手段32に向かう図中矢印R4で示す方向(水平方向)にも移動可能に構成されている。また、ピッカー40は、本体部41を保持手段32が位置付けられる図中矢印R5で示す方向に傾斜させることで、ピッカー40の外力作用部42を傾斜させる。
【0034】
上記したピッカー40は、
図1(b)に基づき説明した第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとを積層したウエーハWにおける第一のウエーハ10Bの面取り部17Bを除去する場合に好適である。よって、以下の説明では、上記した改質層形成工程において、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとが積層されたウエーハWの第一のウエーハ10Bの有効領域16Bと面取り部17Bとの境界部18Bの内部に、面取り部17Bに沿って改質層100を形成したウエーハWに対して面取り部除去工程を実施する態様について説明する。
【0035】
ウエーハWの第一のウエーハ10Bに対して改質層形成工程を施したならば、
図4に基づき説明したのと同様の手順により、保持手段32によってウエーハWを構成する第一のウエーハ10Bの有効領域16Bを保持し、図示を省略する移動手段を作動して、
図6に示すように、ピッカー40の外力作用部42の近傍に位置付ける。
【0036】
次いで、上記した間隔調整部43を回転させることによって、
図7(a)に示すように可動プレート42bを矢印R6で示す方向で調整し、固定プレート42aと可動プレート42bとの間隔を第一のウエーハ10Bの外周の厚みを受け入れ可能な間隔に調整すると共に、可動プレート42bの位置を、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとが積層された境界の高さに位置付ける。次いで、
図7(b)に示すように、図示を省略する移動手段を作動して、ピッカー40を矢印R7で示す方向に移動して。可動プレート42bを、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとが積層された境界に挿入する。可動プレート42bを前記したように、挿入したならば、
図7(c)に示すように、本体部41を矢印R8に示す方向に傾斜させる。これにより、可動プレート42bが第一のウエーハ10Bの面取り部17Bを含む外周に作用して、上記した境界部18Bに形成した改質層100に沿って破断する。該破断は、該可動プレート42bが挿入された領域とその近傍のみで生じるため、ピッカー40を一旦第一のウエーハ10Bから離反させると共に、該本体部41を垂直に戻して
図7(a)に示す状態に戻す。先に破断された面取り部17Bの破片は、この間に、ピッカー40から脱落する。次いで、保持手段32を、
図6に矢印R2で示す方向に所定の角度で回転させて、破断されていない面取り部17Bが残る外周をピッカー40の外力作用部42の近傍に位置付ける。そして、上記した
図7(b)、(c)に示す動作を再度実施して、外周から面取り部17Bを除去する。これらを複数回繰り返すことにより、
図7(d)に示すように、第一のウエーハ10Bの外周の全域に渡って、上記した有効領域16Bから面取り部17Bが除去されたウエーハWが得られ、面取り部除去工程が完了する。
【0037】
なお、上記した実施形態では、流体を噴射する流体噴射手段34を使用して、単体のウエーハ10Aの面取り部17Aを除去する例、ピッカー40を使用して、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとを積層したウエーハWであって第一のウエーハ10Bの面取り部17Bを除去する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記した流体噴射手段34を使用して、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとを積層したウエーハWにおける第一のウエーハ10Bの面取り部17Bを除去したり、ピッカー40を使用して、単体のウエーハ10Aの面取り部17Aを除去したりすることも可能である。
【0038】
上記した面取り部除去工程が完了したならば、ウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する加工工程を実施する。加工対象となるウエーハは、面取り部除去工程が施されたウエーハである。以下の説明では、上記した面取り部除去工程によって面取り部17Bが除去された第一のウエーハ10Bを含むウエーハWの裏面10Bbを研削して所望の厚みに加工する加工工程を実施する形態について説明する。
【0039】
面取り部除去工程が施されたウエーハWを、
図8に示す研削装置50(一部のみ示している)に搬送する。図示のように、研削装置50は、チャックテーブル51上に吸引保持されたウエーハWの第一のウエーハ10Bの裏面10Bbを研削して薄化するための研削手段52を備えている。研削手段52は、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル52aと、回転スピンドル52aの下端に装着されたホイールマウント52bと、ホイールマウント52bの下面に取り付けられる研削ホイール52cとを備え、研削ホイール52cの下面には複数の研削砥石52dが環状に配設されている。
【0040】
ウエーハWを研削装置50に搬送し、第二のウエーハ10C側を下方に向けてチャックテーブル51上に載置して、図示を省略する吸引手段を作動して吸引保持したならば、研削手段52の回転スピンドル52aを
図8において矢印R9で示す方向に、例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル51を矢印R10で示す方向に、例えば300rpmで回転させる。そして、図示しない研削水供給手段により、研削水を第一のウエーハ10Bの裏面10Bb上に供給しつつ、研削砥石52dを第一のウエーハ10Bの裏面10Bbに接触させ、研削ホイール52cを、例えば1μm/秒の研削送り速度で、矢印R11で示す下方に向けて研削送りする。この際、図示しない接触式又は非接触式の測定ゲージによりウエーハWの厚みを測定しながら研削を進めることができ、第一のウエーハ10Bの裏面10Bbを所定量研削して、ウエーハWを所望の厚みとしたならば、研削手段52を停止し、該加工工程が完了する。なお、前記加工工程が完了したならば、適宜、詳細を省略する洗浄、乾燥工程等が実施される。上記した加工工程では、第一のウエーハ10Bと第二のウエーハ10Cとを積層したウエーハWにおける第一のウエーハ10Bの裏面10Bbを研削して所望の厚みに加工する形態を示したが、先に説明したウエーハ10Aの裏面10Abを研削して所望の厚みに加工する場合も、上記した研削装置50によって、同様の手順によって加工することができる。以上により本実施形態のウエーハの加工方法が完了する。
【0041】
上記した実施形態の加工方法によれば、ウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する前に、効果的にウエーハの外周から面取り部を除去することが可能になり、面取り部が該加工工程を実施する研削装置の排水パンに滞留することがなく、研削装置の排水パンを度々清掃しなければならず、煩に堪えないという問題が解消する。
【0042】
また、本実施形態の加工方法における面取り部除去工程を、上記した面取り部除去装置30によって実施するようにすれば、ウエーハの裏面を研削して所望の厚みに加工する加工工程によってウエーハを研削する前に、効果的にウエーハの外周から面取り部を除去することが可能になり、面取り部が該加工工程を実施する研削装置の排水パンに滞留することがなく、該排水パンを度々清掃しなければならず、煩に堪えないという問題が解消する。
【0043】
上記した実施形態では、レーザー加工装置20に、上記した面取り部除去装置30を並設する例を示したが、本発明はこれに限定されず、レーザー加工装置20とは別に、独立した面取り部除去装置30を設置してもよい。その場合は、レーザー加工装置20において改質層形成工程を実施した後、レーザー加工装置20から搬出されたウエーハを面取り部除去装置30に搬入し、その後、保持手段32に保持させて、上記した面取り部除去工程を実施すればよい。
【符号の説明】
【0044】
10A:ウエーハ
10Aa:表面
10Ab:裏面
12A:デバイス
14A:分割予定ライン
16A:有効領域
17A:面取り部
18A:境界部
10B:第一のウエーハ
10Ba:表面
10Bb:裏面
12B:デバイス
14B:分割予定ライン
16B:有効領域
17B:面取り部
18B:境界部
10C:第二のウエーハ
10Ca:表面
10Cb:裏面
20:レーザー加工装置
21:チャックテーブル
21a:吸着チャック
21b:枠体
22:レーザー光線照射手段
23:集光器
30:面取り部除去装置
32:保持手段
32a:保持面
32b:吸引部
32c:支持軸
33:連通路
34:流体噴射手段
36:流体噴射ノズル
36a:ノズル本体
36b:高圧水導入口
36c:高圧エアー導入口
36d:噴射口
37:水源
37a:連通路
37b:調量弁
38:エアー供給源
38a:連通路
38b:調量弁
40:ピッカー
41:本体部
42:外力作用部
42a:固定プレート
42b:可動プレート
43:間隔調整部
50:研削装置
51:チャックテーブル
52:研削手段
52a:回転スピンドル
52b:ホイールマウント
52c:研削ホイール
52d:研削砥石
100:改質層
102、104、106:改質層
110、120:改質層
130、140、150:改質層