(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171640
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01L29/78 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088763
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川 顕太郎
(72)【発明者】
【氏名】古田 建一
(72)【発明者】
【氏名】中村 友香
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA19
5F140BA01
5F140BA16
5F140BC12
5F140BE01
5F140BE07
5F140BF04
5F140BG28
5F140BH15
5F140BJ07
5F140BK13
5F140CB01
5F140CC03
5F140CC12
(57)【要約】
【課題】エッチピット状の欠陥に起因する酸化膜の耐圧低下を抑制する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板上にエピタキシャル成長により形成された半導体層の表面に第1の酸化膜を形成する工程と、第1の酸化膜を除去する工程と、第1の酸化膜を除去することにより露出した前記半導体層の表面に、第2の酸化膜を形成する工程と、を含む。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にエピタキシャル成長により形成された半導体層の表面に第1の酸化膜を形成する工程と、
前記第1の酸化膜を除去する工程と、
前記第1の酸化膜を除去することにより露出した前記半導体層の表面に、第2の酸化膜を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層の表面に前記第1の酸化膜を形成することにより前記半導体層の表面に形成されるエッチピット状の欠陥の底部を平坦化させる
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2の酸化膜の表面にゲートを形成する工程を更に含む
請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成された半導体層と、
前記半導体層の表面に形成された酸化膜と、
を有し、
前記半導体層は、底部が平坦化されたエッチピット状の欠陥を表面に有し、
前記酸化膜は前記欠陥を覆っている
半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層は、複数の鋭角面と、前記複数の鋭角面の間に設けられた平坦面とを含み、
前記酸化膜は前記複数の鋭角面及び前記平坦面上に一体的に設けられている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記酸化膜上に設けられたゲートを更に含む
請求項4又は請求項5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法に関する技術として、以下の技術が知られている。特許文献1には、第1導電型の半導体層を有する半導体基板の該半導体層の表面の所定領域をエッチングする工程と、エッチングされた所定領域を選択酸化することにより、選択酸化膜を形成する工程とを含み、半導体層の所定領域をエッチングする工程の前に、半導体基板のうち半導体層とは反対側の表面にゲッタリング層を形成する工程と、半導体層内に熱処理による拡散層を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が記載されている。特許文献1には、上記の製造方法によれば、U溝の内壁にエッチピットが形成されるのを抑制し、ゲート絶縁膜の耐圧を向上させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板上にエピタキシャル成長により形成される半導体層の表面には、エッチピット状の欠陥が形成される場合がある。エッチピット状の欠陥は、底部に鋭角部分を有する断面V字型の微小な窪みである。半導体層の表面に形成されるゲート酸化膜は、エッチピット状の欠陥の形状に沿って形成される。すなわち、ゲート酸化膜は、欠陥の鋭角部分に沿って形成される。この場合、ゲート酸化膜の欠陥の鋭角部分に対応する部分における応力が過大となり、ゲート酸化膜の耐圧が低下するおそれがある。特許文献1に記載の技術によれば、エッチピットの形成を抑制する効果を期待することはできるが、実際に形成されたエッチピット状の欠陥に起因する酸化膜の耐圧低下の問題を解決し得るものではない。
【0005】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、エッチピット状の欠陥に起因する酸化膜の耐圧低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にエピタキシャル成長により形成された半導体層の表面に第1の酸化膜を形成する工程と、前記第1の酸化膜を除去する工程と、前記第1の酸化膜を除去することにより露出した前記半導体層の表面に、第2の酸化膜を形成する工程と、を含む。
【0007】
開示の技術に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された半導体層と、前記半導体層の表面に形成された酸化膜と、を有し、前記半導体層は、底部が平坦化されたエッチピット状の欠陥を表面に有し、前記酸化膜は前記欠陥を覆っている。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、エッチピット状の欠陥に起因する酸化膜の耐圧低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】エピタキシャルウエハの構成の一例を示す断面図である。
【
図1B】エピタキシャルウエハの構成の一例を示す断面図である。
【
図2A】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2B】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2C】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2D】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2E】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2F】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2G】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図2H】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
初めに、半導体層の表面に形成されるエッチピットに起因する酸化膜の耐圧低下について
図1A及び
図1Bを参照しつつ説明する。半導体デバイスの製造に用いられるエピタキシャルウエハ100は、
図1Aに示すように、半導体基板101上に、エピタキシャル成長により形成される半導体層102を積層したものである。半導体層102の表面には、エッチピット状の欠陥200が形成される場合がある。エッチピット状の欠陥200は、底部に鋭角部分を有する断面V字型の微小な窪みである。
図1Bに示すように、半導体層102の表面に形成されるゲート酸化膜300は、欠陥200の形状に沿って形成される。すなわち、ゲート酸化膜300は、欠陥200の鋭角部分に沿って形成される。この場合、ゲート酸化膜300の、欠陥200の鋭角部分に対応する部分において応力が集中する。その結果、ゲート酸化膜300の、欠陥200の鋭角部分に対応する部分における応力が過大となる。なお、
図1Bに示す矢印は、ゲート酸化膜300において応力が作用する方向を示す。ゲート酸化膜300に作用する応力が過大となると、ゲート酸化膜300の耐圧が低下するおそれがある。以下において説明する開示の技術は、エッチピット状の欠陥に起因するゲート酸化膜の耐圧低下を抑制する効果を奏するものである。
【0011】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0012】
【0013】
はじめに、エピタキシャルウエハ100を用意する(
図2A)。エピタキシャルウエハ100は、半導体基板101上にエピタキシャル成長により形成される半導体層102を積層したものである。半導体層102は、エピタキシャル成長(気相成長)によって半導体基板101上に形成される。半導体基板101は、例えばシリコン基板である。半導体基板101をエピタキシャル炉の中で約1200℃にて加熱しつつ、炉内に気化した四塩化珪素(SiCl
4)、三塩化シラン(SiHCl
3)を流すことで、半導体基板101の表面に単結晶シリコン膜を含む半導体層102が形成される。半導体層102の表面には、エッチピット状の欠陥200が形成される場合がある。エッチピット状の欠陥200は、底部に鋭角部分を有する断面V字型の微小な窪みである。
【0014】
次に、半導体層102の表面に犠牲酸化膜400を形成する(
図2B)。犠牲酸化膜400は、例えば、熱酸化法により形成されるSiO
2膜である。犠牲酸化膜400の形成工程において、欠陥200の底部の鋭角部分における酸素導入の態様に起因して、犠牲酸化膜400の欠陥200の鋭角部分に対応する部分は、欠陥200の鋭角部分の形状を厳密に反映したものとはならず、平坦部分を有して形成される。犠牲酸化膜400は、開示の技術における「第1の酸化膜」の一例である。
【0015】
次に、犠牲酸化膜400を除去する(
図2C)。犠牲酸化膜400の除去には例えば、フッ化水素酸を用いることが可能である。またドライエッチングプロセスにより犠牲酸化膜400を除去することも可能である。犠牲酸化膜400を除去することにより半導体層102が露出する。上記したように、犠牲酸化膜400の欠陥200の鋭角部分に対応する部分は平坦部分を有して形成されるため、エッチピット状の欠陥200の底部の鋭角部分は平坦化される。すなわち、エッチピット状の欠陥200の底部において平坦面201が形成される。
【0016】
次に、半導体層102の表面にゲート酸化膜300を形成する(
図2D)。ゲート酸化膜300は、例えば、熱酸化法により形成されるSiO
2膜である。ゲート酸化膜300は開示の技術における「第2の酸化膜」の一例である。なお、ゲート酸化膜300を形成する前に、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法を用いて、半導体層102の所定位置にSiO
2等の絶縁体で構成される絶縁分離膜(図示せず)を形成してもよい。また、ゲート酸化膜300の形成後に、必要に応じて半導体層102表面のキャリア濃度を調整するためのイオン注入を行い、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)のスレッショルド電圧を調整してもよい。
【0017】
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、ゲート酸化膜300の表面全体を覆うポリシリコン膜(図示せず)を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、ポリシリコン膜をパターニングすることによりゲート500を形成する(
図2E)。なお、
図2E、
図2F、
図2G及び
図2Hにおいて、欠陥200の図示は省略されている。
【0018】
次に、ゲート酸化膜300のパターニングを行った後、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入技術を用いて半導体層102の表層部分に低ドーズ量にてヒ素を注入してLDD(Lightly Doped Drain)600を形成する(
図2F)。
【0019】
次に、CVD法を用いて、ゲート500を覆うシリコン窒化物(Si
3N
4)等の絶縁体で構成される絶縁膜を形成し、異方性エッチング技術を用いてこの絶縁膜をエッチバックすることで、ゲート500の側面を覆うサイドウォール510を形成する。続いて、イオン注入技術を用いて、半導体層102の表層部分に高ドーズ量にてヒ素を注入して、ソース701及びドレイン702を形成する。このイオン注入において、ゲート500及びサイドウォール510がマスクの一部として機能することで、ソース701及びドレイン702は、ゲート500およびLDD600に対して自己整合的に形成される。ソース701、ドレイン702及びゲート500によりMOSFETが構成される(
図2G)。
【0020】
次に、CVD法により、半導体層102の表面全体を覆うSiO
2等の絶縁体で構成される絶縁膜800を形成する。続いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いて絶縁膜800の表面を平坦化する(
図2H)。
【0021】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜800の表面からMOSFETのソース701、ドレイン702及びゲート500にそれぞれ達するコンタクトホール(図示せず)を形成する。次に、CVD法を用いて、絶縁膜800の表面全体を覆うようにチタン膜及びタングステン膜を順次形成する。これにより、先の工程で形成されたコンタクトホールの各々は、チタン膜とタングステン膜からなる積層膜によって埋められる。次に、エッチバック技術またはCMP技術を用いて、絶縁膜800上に堆積したチタン膜およびタングステン膜を除去する。これにより、MOSFETのソース701、ドレイン702及びゲート500にそれぞれ接続されたビア900が形成される(
図2H)。
【0022】
次に、スパッタ法を用いて、絶縁膜800の表面全体を覆うようにアルミニウム等の導電体で構成される導電膜を形成する。続いて。フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてこの導電膜をパターニングする。これにより、MOSFETのソース配線901、ドレイン配線902及びゲート配線903が形成される(
図2H)。以上の各工程を経ることにより半導体装置1000が完成する。
【0023】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板101上にエピタキシャル成長により形成された半導体層102の表面に犠牲酸化膜400を形成する工程と、犠牲酸化膜400を除去する工程と、犠牲酸化膜400を除去することにより露出した半導体層102の表面に、ゲート酸化膜300を形成する工程と、を含む。
【0024】
開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体層102の表面に犠牲酸化膜400を形成することにより、半導体層102の表面に形成されるエッチピット状の欠陥の底部が平坦化される。したがって、エッチピット状の欠陥に起因するゲート酸化膜の耐圧低下を抑制することが可能となる。
【0025】
また、開示の技術の実施形態に係る半導体装置は、半導体基板101と、半導体基板101の表面に形成された半導体層102と、半導体層102の表面に形成されたゲート酸化膜300と、を有する。半導体層102は、底部が平坦化されたエッチピット状の欠陥200を表面に有し、ゲート酸化膜300は欠陥200を覆っている。
【符号の説明】
【0026】
101 半導体基板
102 半導体層
200 欠陥
300 ゲート酸化膜
400 犠牲酸化膜
500 ゲート