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特開2024-171726レーザー照射装置、レーザー照射方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171726
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】レーザー照射装置、レーザー照射方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20241205BHJP
【FI】
B23K26/00 Z
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088892
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】市川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊茂
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA02
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB19
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA16
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】レーザー照射装置の冗長性を高めることを課題とする。
【解決手段】主光源13A,13Bを有する複数のレーザー照射器10A、10Bと、補助光源11と、補助光源11のレーザー光の経路を変更する経路変更部12と、を備えたレーザー照射装置1であって、補助光源11は、経路変更部12によりレーザー光L11の経路を変更されることにより、任意の主光源13A,13Bに代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へレーザー光を照射することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主光源を有する複数のレーザー照射器と、
補助光源と、
前記補助光源のレーザー光の経路を変更する経路変更部と、を備えたレーザー照射装置であって、
前記補助光源は、前記経路変更部によりレーザー光の経路を変更されることにより、任意の前記主光源に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へレーザー光を照射することを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項2】
前記補助光源から前記照射対象へ照射されるレーザー光の経路は、前記補助光源が代替する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路、あるいは、前記補助光源が追加でレーザー光を照射する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路と、経路の一部が共通する請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項3】
前記主光源の光量が設定された基準値を下回る場合に、前記主光源に加えて、前記補助光源が前記照射対象へレーザー光を照射する請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項4】
前記主光源あるいは前記補助光源が照射したレーザー光を走査する光走査部を有し、
前記光走査部よりもレーザー光の照射方向の下流側に、前記主光源あるいは前記補助光源のレーザー光の光量あるいは位置の少なくともいずれかの情報を取得する取得部を有する請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項5】
前記取得部が取得した情報に基づいて、前記主光源あるいは前記補助光源が照射するレーザー光の進行方向を補正する補正部を有する請求項4記載のレーザー照射装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記補助光源の照射するレーザー光と前記主光源の照射するレーザー光とが同軸になる方向へ前記補助光源あるいは前記主光源から照射されたレーザー光を補正する請求項5記載のレーザー照射装置。
【請求項7】
前記取得部が取得した情報に基づいて、前記主光源あるいは前記補助光源の少なくとも何れかが照射するレーザー光の光量を調整する請求項4記載のレーザー照射装置。
【請求項8】
前記取得部はアレイセンサーを含む請求項4記載のレーザー照射装置。
【請求項9】
前記取得部は、自身に照射される位置によってレーザー光を部分的に通過させる部分通過部を含む請求項4記載のレーザー照射装置。
【請求項10】
前記主光源あるいは前記補助光源が照射したレーザー光を走査する光走査部と、
前記主光源あるいは前記補助光源の照射するレーザー光の光量の情報を取得する光源取得部とを有し、
前記光源取得部が、取得するレーザー光の経路の前記光走査部よりも上流側に設けられる請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項11】
前記経路変更部は、前記補助光源から照射されるレーザー光を異なる複数の方向へ分割する光分割素子を含む請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項12】
前記経路変更部が移動可能に設けられる請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項13】
前記経路変更部は、レーザー光を反射する光反射素子を含む請求項12記載のレーザー照射装置。
【請求項14】
前記経路変更部は偏光素子を含む請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項15】
前記主光源と前記補助光源の照射するレーザー光の波長が異なる請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項16】
前記経路変更部は、各主光源および前記補助光源の少なくともいずれかの波長域のレーザー光を反射し、少なくともいずれかの波長域のレーザー光を通過させる請求項15記載のレーザー照射装置。
【請求項17】
前記主光源および前記補助光源が同じ照射対象へレーザー光を照射し、
当該主光源あるいは前記補助光源がレーザー光を照射するタイミングに遅延を発生させることで、両者のレーザー光が前記照射対象へ照射されるタイミングのずれを補正する請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項18】
前記主光源から特定の照射対象へレーザー光を照射するまでの経路長と前記補助光源から当該照射対象へレーザー光を照射するまでの経路長との差の絶対値をLとし、当該主光源のパルス周期をT、光速をCとすると、下記式(1)を満たす請求項1記載のレーザー照射装置。
L<C×T/2・・・(1)
【請求項19】
前記照射対象に対して前記主光源あるいは前記補助光源がレーザー光を分担して照射し、
前記主光源あるいは前記補助光源による分担の割合が順番に切り替えられる請求項1記載のレーザー照射装置。
【請求項20】
乱数発生部を有し、
前記乱数発生部により、前記主光源あるいは前記補助光源による分担の割合が決められる請求項19記載のレーザー照射装置。
【請求項21】
補助光源から照射されたレーザー光が、経路変更部によりその経路を変更されることにより、任意の主光源に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へレーザー光を照射するレーザー照射方法。
【請求項22】
前記補助光源から前記照射対象へ照射されるレーザー光の経路は、前記補助光源が代替する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路、あるいは、前記補助光源が追加でレーザー光を照射する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路と、経路の一部が共通する請求項21記載のレーザー照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー照射装置、レーザー照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレーザー照射器を有し、製造ラインを流れる製造物にラベリングを行うレーザー照射装置が従来から存在する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2022-86338号公報)では、レーザー照射装置に複数の照射ユニットが設けられる。これらの照射ユニットが有する主光源により、製造ラインを流れるペットボトルに対して逐次レーザー光が照射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主光源が故障すると、復旧するまでの間はその主光源を有するレーザー照射器から照射対象へレーザー光を照射できなくなり、レーザー照射装置による照射対象へのレーザー照射の速度が大きく低下してしまう。特に、複数のレーザー照射器を有するレーザー照射装置では、このような問題が顕著である。
【0005】
本発明では、レーザー照射装置の冗長性を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、主光源を有する複数のレーザー照射器と、補助光源と、前記補助光源のレーザー光の経路を変更する経路変更部と、を備えたレーザー照射装置であって、前記補助光源は、前記経路変更部によりレーザー光の経路を変更されることにより、任意の前記主光源に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へレーザー光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レーザー照射装置の冗長性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図2図1と経路変更部の配置が異なる図である。
図3図1と経路変更部の配置が異なる図である。
図4】第一実施形態のレーザー照射装置が有する制御部を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図6図5と経路変更部の配置が異なる図である。
図7図5と経路変更部の配置が異なる図である。
図8図5のレーザー照射装置において、第1主光源と補助光源のレーザー光を合成した図である。
図9図5のレーザー照射装置において、第2主光源と補助光源のレーザー光を合成した図である。
図10】本発明の第三実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図11図10の経路変更部の波長ごとの反射率を示す図である。
図12】本発明の第四実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図13】本発明の第五実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図14】本発明の第六実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図15】本発明の第七実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図16図15のレーザー照射装置において、第1主光源および第2主光源からレーザー光を照射した状態の図である。
図17図15のレーザー照射装置において、第1主光源および補助光源からレーザー光を照射した状態の図である。
図18】本発明の第八実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図19】本発明の第九実施形態に係るレーザー照射装置において、取得部を含むレーザー光の照射範囲を示す図である。
図20】取得部における受光タイミングのずれを示す図である。
図21】アレイセンサーが受光するレーザー光を示す図である。
図22】反射素子を含む取得部の例を示す図である。
図23】虹彩絞りを含む取得部の例を示す図である。
図24】補正部を示す図である。
図25】主光源および補助光源のレーザー光を重ねて照射した図である。
図26】補助光源のレーザー光を主光源のレーザー光内に収まるように照射した図である。
図27】取得部を含むレーザー照射装置の制御部を示す機能ブロック図である。
図28】本発明の第十実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図29】遅延生成部を含むレーザー照射装置の制御部を示す機能ブロック図である。
図30】本発明の第十一実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図31】主光源のレーザー光のパルス周期および主光源と補助光源のレーザー光の照射のずれを示す図である。
図32】主光源と補助光源のレーザー光の照射のずれが大きい場合の図である。
図33】主光源と補助光源のレーザー光の照射のずれが小さい場合の図である。
図34】本発明の第十二実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図35】時間の推移による光源からのレーザー光の光量の変化を示す図である。
図36】(a)~(b)は、姿勢変更により経路変更部が経路切り替えの有無を切り替える図である。
図37】(a)~(b)は、移動変更により経路変更部が経路切り替えの有無を切り替える図である。
図38】(a)~(b)は、回転により経路変更部が経路切り替えの有無を切り替える図である。
図39】本発明の第十三実施形態に係るレーザー照射装置の概略構成図である。
図40】時間の推移による光源に必要な電流値の変化を示す図である。
図41】記憶部を含むレーザー照射装置の制御部を示す機能ブロック図である。
図42】単一の光源を発光させた場合と分散して発光させた場合の累計発光時間の変化を示す図である。
図43】乱数発生部を含むレーザー照射装置の制御部を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
図1に示すように、レーザー照射装置1は、複数のレーザー照射器である第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bと、補助光源11と、経路変更部12とを含む。第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bは、その配置以外の構成が同じであるため、第1レーザー照射器10Aを中心に説明する。
【0011】
レーザー照射装置1は、第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bにより、搬送機101上を流れる照射対象W1,W2に対して、それぞれレーザー光を照射する。本実施形態では、第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bが異なる照射対象にレーザー光を照射するが、単一の照射対象に対して逐次レーザー光を照射する構成であってもよい。本実施形態では、搬送機101の一例としてコンベアが設けられる。
【0012】
本実施形態の照射対象W1,W2はペットボトルであり、レーザー照射装置1がレーザー光を照射してその表面にラベリングする。しかし、照射対象やその形状およびレーザー照射の目的はこれに限らず、有色のプラスチック容器やガラス容器へのパターニング、金属粉体のレーザー焼結、紙面などへの熱変性によるマーキングなどが挙げられる。また照射対象を搬送機により搬送する場合を例示したが、チャンバーにセットして入れ替えるなど、適宜の方法でレーザー照射位置に照射対象を配置できる。
【0013】
第1レーザー照射器10Aは、第1主光源13Aと、光走査部14と、集光部15と、を含む。主光源13Aはレーザー光L1を照射する。また第2レーザー照射器10Bは第2主光源13Bを有する。主光源13Bはレーザー光L2を照射する。図1では、主光源13A,13Bがオン状態でそれぞれレーザー光を照射し、補助光源11はオフ状態でレーザー光を照射していない。本実施形態の主光源13A、13Bは、主として照射対象へレーザー光を照射する光源である。本実施形態の補助光源11は、任意の主光源13A、13Bに代えて照射対象へレーザー光を照射する光源である(ただし、任意の主光源に加えてレーザー光を照射する光源であってもよい)。
【0014】
光走査部14としては、ガルバノミラーやポリゴンミラー、MEMSなどを採用できる。光走査部14は、主光源13Aから照射されたレーザー光L1を所定の方向へ走査(偏光)する。光走査部14は、レーザー光が照射対象上に位置を異ならせながら照射されるように走査できればよい。
【0015】
集光部15としては、f-θレンズや凹面鏡、単レンズなどを採用できる。集光部15は、レーザー光が照射対象側へ進むにつれて集光するものであればよい。集光部15により集光されたレーザー光が照射対象に照射される。
【0016】
経路変更部12はレーザー光の経路を変更し、特に本実施形態では補助光源11のレーザー光の経路を変更する。本実施形態の経路変更部12はミラーである。このミラーは、本発明の光反射素子の一例であり、他にプリズムなどであってもよい。また本実施形態の経路変更部12は、第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bの間で往復移動可能に設けられる。これにより、経路変更部12は図1図3に示すそれぞれの位置を取ることができる。図1の経路変更部12の位置は、第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bの主光源13A、13Bのレーザー光L1、L2の経路上から退避した位置である。図2の経路変更部12の位置は、レーザー光L1の経路上に配置された位置である。図3の経路変更部12の位置は、レーザー光L2の経路上に配置された位置である。
【0017】
以上の本実施形態では、搬送機101上を次々に流れていく照射対象に対して、第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bの主光源13A、13Bが逐次レーザー光を照射してラベリングを行う。しかし、いずれかの主光源13A、13Bが故障するなどしてレーザー光を照射できない状態になると、その上流下流を含めた製造工程全体が停止してしまい、その影響が大きい。特に本実施形態のように、複数のレーザー照射器を有するレーザー照射装置では、その数だけ、いずれかのレーザー照射器が停止してしまう可能性が大きくなる。
【0018】
そこで、主となるレーザー照射器に対して、バックアップのレーザー照射器を一対一で用意する構成が存在する。これにより、主となるレーザー照射器が故障した場合には、バックアップのレーザー照射器が代わりにレーザー光を照射することができる。しかし、本実施形態のように複数のレーザー照射器を備えたレーザー照射装置では、設備の大型化およびコストアップという問題がある。
【0019】
以下、上記の課題を解決する本実施形態のレーザー照射装置およびレーザー照射装置によるレーザー照射方法について説明する。
【0020】
図2に示すように、補助光源11は、主光源13A、13Bとは90度異なる方向である、図2の右から左方向へレーザー光L11を照射する。本実施形態では、補助光源11は、その設置姿勢が異なる以外は主光源13A、13Bと同様の構成である。
【0021】
図2では、主光源13B、補助光源11がオン状態で、主光源13Aがオフ状態である。そして、経路変更部12が主光源13Aのレーザー光L1(図1参照)の経路上に配置され、経路変更部12が補助光源11のレーザー光L11をレーザー光L1の照射方向と同一の方向へ反射する。これにより、補助光源11が主光源13Aに代えて照射対象にレーザー光を照射する。この際、補助光源11のレーザー光L11の経路は、主光源13Aがレーザー光L1を照射する際の経路と、経路変更部12よりも下流側で共通している。
【0022】
図3では、主光源13A、補助光源11がオン状態で、主光源13Bがオフ状態である。経路変更部12が主光源13Bのレーザー光L2(図1参照)の経路上に配置され、経路変更部12が補助光源11のレーザー光L11をレーザー光L2の照射方向と同一の方向へ反射する。これにより、補助光源11が主光源13Bに代えて照射対象にレーザー光を照射する。この際、補助光源11のレーザー光L11の経路は、主光源13Bがレーザー光L2を照射する際の経路と、経路変更部12よりも下流側で共通している。
【0023】
以上のように本実施形態では、経路変更部12によって補助光源11のレーザー光L11を反射することで、主光源13Aのレーザー光L1あるいは主光源13Bのレーザー光L2に代えて、レーザー光L11を照射対象へ照射できる。これにより、いずれのレーザー照射器10A,10Bの主光源13A,13Bが故障した場合でも、照射対象へのレーザー光の照射を継続できる。また、一つの補助光源11だけでこのような効果を得ることができる。従って、簡易な構成により、レーザー照射装置1の冗長性を高めるとともに、レーザー照射装置1のコストダウンおよび小型化を実現することができる。
【0024】
本実施形態では一つの経路変更部12が第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10B間を移動する構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、主光源13Aおよび主光源13Bのレーザー光の経路上にそれぞれミラーが配置され、このミラーがそれぞれのレーザー光の経路上から退避可能な構成としてもよい。
【0025】
図4は、第一実施形態のレーザー照射装置が有する制御部を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、レーザー照射装置に設けられた制御部50は、変更制御部51と、光源制御部52とを含む。変更制御部51は、経路変更部12を移動させることで、補助光源11のレーザー光の経路を変更する。光源制御部52は、主光源13A、13B、補助光源11のオンオフおよびその光量を変更する。
【0026】
次に、レーザー照射装置の変形例について順に説明する。以下の説明では、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0027】
図5に示す実施形態では、レーザー照射装置1が経路変更部16を有する。経路変更部16は偏光プリズムである。偏光プリズムは本発明の偏光素子の一例である。偏光素子は特定の偏光方向のレーザー光を反射し、特定の偏光方向のレーザー光を通過(透過)させる。経路変更部16は、主光源13A,13Bの位置からのレーザー光L1、L2を通過させ、補助光源11の位置からのレーザー光Lを反射する。経路変更部16は第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bの間で往復移動可能に設けられる。
【0028】
本実施形態においても、補助光源11が、いずれかの主光源13A、13Bに代えて、レーザー光を照射対象に照射できる。つまり、図6に示すように、経路変更部16を主光源13Aのレーザー光の経路上に配置することで、補助光源11が、主光源13Aに代えて、照射対象にレーザー光L11を照射できる。図6では、主光源13B、補助光源11がオン状態で、主光源13Aがオフ状態である。また図7に示すように、経路変更部16を主光源13Bのレーザー光の経路上に配置することで、補助光源11が、主光源13Bに代えて、照射対象にレーザー光L11を照射できる。図7では、主光源13A、補助光源11がオン状態で、主光源13Bがオフ状態である。
【0029】
また本実施形態では、補助光源11が、いずれかの主光源13A,13Bに加えて、レーザー光を照射対象に照射できる。例えば図8では、図6に加えて、主光源13Aがオン状態であり、主光源13Aからもレーザー光L1が照射される。この場合、レーザー光L1は、経路変更部16を通過して照射対象へ照射される。つまり、第1レーザー照射器10A側では、主光源13Aのレーザー光L1と補助光源11のレーザー光L11が合成されて照射対象へ照射される。また図9では、図7に加えて、主光源13Bがオン状態であり、主光源13Bからもレーザー光L2が照射される。この場合、レーザー光L2は、経路変更部16を通過して照射対象へ照射される。つまり、第2レーザー照射器10B側では、主光源13Bのレーザー光L2と補助光源11のレーザー光L11が合成されて照射対象へ照射される。
【0030】
以上のように、経路変更部16により、補助光源11のレーザー光を、いずれかの主光源13A,13Bのレーザー光に代えて、あるいはこれに加えて、照射対象に照射できる。つまり、簡易な構成により、レーザー照射装置1の冗長性を高めることができる。なお、補助光源11からレーザー光を照射せずに、主光源13A,13Bのいずれか、あるいは両方のみがレーザー光を照射してもよいことはもちろんである。
【0031】
以上の説明では、主光源13A,13Bのレーザー光と補助光源11のレーザー光との発振波長を同一にしたが、異ならせてもよい。例えば、主光源13A,13BをUV、補助光源11を可視光とすることで、レーザー光を照射する光源が補助光源11に切り替わったことを視覚的に判断できる。
【0032】
また波長の違いにより、経路変更部による通過と反射を使い分けることもできる。例えば図10に示すレーザー照射装置1は、主光源13A,13Bのレーザー光と補助光源11のレーザー光との発振波長が異なる。
【0033】
レーザー照射装置1は経路変更部17を有する。経路変更部17は特定の範囲の波長の光を反射し、特定の範囲の波長の光を通過させることができる波長選択反射素子である。この経路変更部17として、例えばダイクロイックミラーやコールドミラーを採用できる。具体的には図11に示すように、経路変更部17は、主光源13A,13Bのレーザー光L1、L2の波長域の反射率が低く、補助光源11のレーザー光L11の波長域の反射率が高い。このため、経路変更部17は、主光源13A,13Bのレーザー光L1、L2を通過(透過)させ、補助光源11のレーザー光L11を反射させることができる。なお、ここで言う主光源13A,13Bのレーザー光L1、L2を通過(透過)させるとは、レーザー光の全てを通過させる場合に限らず、図11のようにその反射率が低く、反射する割合よりも通過させる割合が多い場合を含むものである。また図10に示すように、経路変更部17は第1レーザー照射器10Aおよび第2レーザー照射器10Bの間で往復移動可能に設けられる。
【0034】
経路変更部17をいずれかの主光源13A、13Bのレーザー光の経路上に配置することで、補助光源11のレーザー光L11を反射して照射対象へ照射することができる。図10では、主光源13Bに代えて、補助光源11が照射対象へレーザー光L11を照射する例を示している。また経路変更部17は、主光源13A、13Bからのレーザー光を通過させることができる。図10では、経路変更部17が主光源13Aのレーザー光L1を通過する様子を示している。なお図10では、便宜上、主光源13A、13Bの経路上の両方に経路変更部17が配置されているが、実際は、レーザー照射装置1は経路変更部17を一つのみ有する。経路変更部17は、左右方向の移動により、主光源13A、13Bのそれぞれのレーザー光の経路上に配置される。
【0035】
以上により、本実施形態のレーザー照射装置1では、補助光源11のレーザー光L11を、いずれかの主光源13A,13Bのレーザー光に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へ照射することができる。これにより、レーザー照射装置の冗長性を高めることができる。
【0036】
また本発明は、図10のように補助光源11が主光源13A、13Bの両方と波長が異なる場合に限らない。例えば図12に示すレーザー照射装置1では、補助光源11のレーザー光L11は、主光源13Aのレーザー光L1とその波長が異なり、主光源13Bのレーザー光L2とその波長が同じである。
【0037】
主光源13Aのレーザー光L1の経路上には経路変更部17が配置される。経路変更部17は、主光源13Aのレーザー光L1を通過させ、補助光源11のレーザー光L11を反射させる。これにより、補助光源11のレーザー光L11を、主光源13Aのレーザー光L1に代えて、あるいはこれに加えて、照射対象へ照射できる。
【0038】
主光源13Bのレーザー光L2の経路上には経路変更部16が配置される。本実施形態の経路変更部16は偏光プリズム(偏光素子)である。また補助光源11と経路変更部16との間には経路変更部18が設けられる。経路変更部18は偏光調整素子である。経路変更部18は、補助光源11のレーザー光L11の偏光を調整する。これにより、レーザー光L11を経路変更部16によって反射させるか、あるいは、通過させるかを変更することができる。これにより、補助光源11のレーザー光L11を、主光源13Aのレーザー光L1に代えて、あるいはこれに加えて、照射対象へ照射できる。このように、主光源13A,13Bのそれぞれのレーザー光の経路上に経路変更部を配置してもよい。
【0039】
また図11とは逆に、経路変更部17が、補助光源11のレーザー光L11を通過させ、主光源13A,13Bのレーザー光L1,L2を反射させる構成であってもよい。例えば図13に示すレーザー照射装置1は、経路変更部17A~17Cを有する。経路変更部17Bは、図11と同様に主光源13Aのレーザー光L1を通過させ、補助光源11のレーザー光L11を反射する。また経路変更部17A,17Cは、主光源13A,13Bのレーザー光L1,L2を反射し、補助光源11のレーザー光L11を通過させる。
【0040】
主光源13Aのレーザー光L1は、経路変更部17Aによって反射され、経路変更部17Bを通過して照射対象へ照射される。主光源13Bのレーザー光L2は、経路変更部17Bによって反射され、照射対象へ照射される。また補助光源11のレーザー光L11は経路変更部17Aを通過して照射対象へ照射される。これにより、補助光源11が主光源13Aに代えて、あるいはこれに加えて、レーザー光L11を照射対象へ照射する。また経路変更部17Bをレーザー光L11へ移動させる(図13の右方向へ移動させる)。これにより、補助光源11のレーザー光L11は、経路変更部17B,12によって反射され、経路変更部17Cを通過する。これにより、補助光源11が主光源13Bに代えて、あるいはこれに加えて、レーザー光L11を照射対象へ照射する。
【0041】
また図14に示すレーザー照射装置1は経路変更部17を有する。経路変更部17は主光源13A,13Bのレーザー光L1,L2を反射し、補助光源11のレーザー光L11を通過させる。主光源13Aのレーザー光L1は、経路変更部17により反射された後、経路変更部16Aを通過して照射対象へ照射される。主光源13Bのレーザー光L2は、経路変更部16Bを通過して照射対象へ照射される。経路変更部16A,16Bは偏光プリズム(偏光素子)である。また補助光源11のレーザー光L11は、経路変更部18によって偏光を調整された後、経路変更部17および経路変更部16Aを通過して照射対象へ照射される。これにより、補助光源11が主光源13Aに代えて、あるいはこれに加えて、レーザー光L11を照射対象へ照射する。経路変更部18は偏光調整素子である。また経路変更部18をレーザー光L11の経路上から退避させた(図14の左側へ移動させる)場合には、レーザー光L11は経路変更部17を通過した後に経路変更部16A,16Bによって反射され、照射対象へ照射される。これにより、補助光源11が主光源13Bに代えて、あるいはこれに加えて、レーザー光L11を照射対象へ照射する。
【0042】
以上のように、図11とは逆に、経路変更部17が主光源13A、13Bのレーザー光L1,L2を反射し、補助光源11のレーザー光L11を通過させる構成であってもよい。また図11とは逆に、補助光源11のレーザー光L11の波長が主光源13A、13Bのレーザー光L1、L2の波長よりも大きくてもよい。
【0043】
図15に示すレーザー照射装置1は経路変更部19を有する。本実施形態の経路変更部19はハーフミラーである。ハーフミラーは本発明の光分割素子の一例である。光分割素子は、自身に入射したレーザー光を複数の方向へ分割して進行させる。つまり経路変更部19は、補助光源11のレーザー光L11の一部を反射し、一部を反射せずに通過させる。また、主光源13A、13Bのレーザー光L1、L2の経路上にそれぞれ経路変更部16A,16Bが配置される。本実施形態の経路変更部16A,16Bは、偏光プリズム(偏光素子)である。
【0044】
本実施形態では、補助光源11のレーザー光L11の一部は経路変更部19に反射され、経路変更部16Aに反射された主光源13Aのレーザー光L1と合成される。そして、これらのレーザー光が照射対象へ照射される。経路変更部16Aは経路変更部19に反射されたレーザー光L11を通過させる。また、補助光源11のレーザー光L11の一部は経路変更部19を通過し、経路変更部16Bに反射される。そして、このレーザー光L11の一部は主光源13Bのレーザー光L2と合成される。経路変更部16Bは主光源13Bのレーザー光L2を通過させる。
【0045】
また図16に示すように、補助光源11からレーザー光を照射せず、それぞれの主光源13A、13Bのレーザー光L1,L2により、それぞれの照射対象へ照射することもできる。また図17に示すように、補助光源11のレーザー光L11のみにより、それぞれの照射対象へレーザー光を照射することもできる。以上のように本実施形態でも、補助光源11のレーザー光L11を、いずれかの主光源13A,13Bのレーザー光に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へ照射することができる。これにより、レーザー照射装置の冗長性を高めることができる。
【0046】
特に本実施形態では、同時に複数の主光源13A、13Bが故障した場合でも、補助光源11が、主光源13A、13Bに代えてレーザー光を照射でき、レーザー照射装置1の冗長性をさらに高めることができる。本実施形態では光分割素子としてハーフミラーを用いたが、反射型の偏光素子であってもよい。この場合、補助光源11のレーザー光の偏光方向を調整することにより、経路変更部において一部のレーザー光を反射して一部のレーザー光を通過させることができる。
【0047】
また、補助光源11のレーザー光L11が3つ以上の方向へ分割されて、それぞれ照射対象へ照射される構成であってもよい。例えば図18に示すレーザー照射装置1は、補助光源11のレーザー光L11の直線進路上に、経路変更部19A,19B,12Aが配置される。経路変更部19A,19Bはハーフミラー(光分割素子)であり、経路変更部12Aはミラー(光反射素子)である。
【0048】
本実施形態では、補助光源11のレーザー光L11は、その一部が経路変更部19Aに反射されて経路変更部19Cの側へ照射される。経路変更部19Cはハーフミラー(光分割素子)である。経路変更部19Cに入射したレーザー光は、その一部が経路変更部19Cに反射され、その後、経路変更部12B、経路変更部16Aにより反射されて主光源13Aのレーザー光L1に合成される。また経路変更部19Cを通過したレーザー光は、経路変更部16Bにより反射されて主光源13Bのレーザー光L2に合成される。経路変更部12Bはミラー(光反射素子)である。経路変更部16A、16Bは偏光プリズム(偏光素子)である。
【0049】
また経路変更部19Aを通過したレーザー光の一部は経路変更部19Bにより反射された後、経路変更部16Cに反射されて主光源13Cのレーザー光L3に合成される。経路変更部16Cは偏光プリズム(偏光素子)である。経路変更部19Bを通過したレーザー光は経路変更部12A、そして経路変更部16Dに反射され、主光源13Dのレーザー光L4に合成される。経路変更部16Dは偏光プリズム(偏光素子)である。主光源13A~13Dのレーザー光L1~L4は、経路変更部16A~16Dを通過する。
【0050】
以上のように本実施形態では、補助光源11のレーザー光L11を分割して、主光源13A~13Dのレーザー光にそれぞれ合成する、あるいは主光源13A~13Dのレーザー光に代えて照射対象へそれぞれ照射できる。なお、補助光源11のレーザー光L11の光量は、合成あるいは代わりに照射する全ての主光源の光量を加算した光量以上であることが好ましい。複数のレーザー照射器10A~10Dを時間差で作動させる構成の場合には、それぞれの主光源13A~13Dごとの経路長の差が、この時間差に相当する長さになるように調整してもよい。
【0051】
また、照射対象へ照射されるレーザー光の情報を取得する取得部を設けることもできる。
【0052】
図19は、レーザー照射装置において、取得部を含むレーザー光の照射範囲を示す図であり、光走査部14から集光部15(図1参照)へ偏光されるレーザー光を照射方向と垂直な平面(図1の上下方向に垂直な平面)で見た図である。
本実施形態では、光走査部14と集光部15との間(図1参照)であって、図19に示すように、レーザー光の偏光範囲A1内で照射対象への描画範囲A2よりも外側に取得部20が配置される。
【0053】
取得部20として、アレイ型の受光センサーを採用できる。アレイ型の受光センサーは、単一の受光素子がアレイ状に配置されたセンサーを指す。本実施形態の取得部20は受光の信号出力によってレーザー光の光量の情報を取得できる。この情報を基に、例えば主光源や補助光源の出力を上げたり、主光源に補助光源を合成したりして、照射対象へ照射される光の光量を一定以上に保つことができる。また各受光素子の相互の位置関係の情報を事前に備えておくことにより、図20に示すように、光走査部の稼働条件により想定される取得部20の受光タイミングと、実際に取得部20が受光するタイミングとの時間差を検出できる。この時間差を位置情報に変換することにより、レーザー光の位置ずれを検知できる。
【0054】
また取得部20として、図21に示すアレイセンサーを採用できる。これによって、より詳細なセンサー座標と光量分布を取得でき、レーザー光Lの照射範囲をより精度良く検知できる。アレイセンサーとしては、CMOSやCCDカメラを採用できる。
【0055】
また図22に示す実施形態では、取得部20が、反射素子21と光検知部22とを含む。光検知部22は、本実施形態ではカメラである。反射素子21は、レーザー光Lの微小な一部を反射して光検知部22へ入射させる。光検知部22は、入射した光を画像として取得することにより、光量やレーザー光の位置などの情報を取得する。光検知部22はアレイセンサーなどであってもよい。
【0056】
また図23に示す実施形態では、取得部20に虹彩絞り23が含まれる。虹彩絞り23はその中央にレーザー光Lを通過させる孔部を有する。虹彩絞り23は、自身に照射されたレーザー光Lの一部を、照射される位置によって部分的に通過させる部分通過部の一例である。レーザー光位置によってレーザー光を空間的に遮断できる場合、ピンホールを有する部分通過部であってもよい。本実施形態の取得部20は、虹彩絞り23を通過した光量を検知する検知部を含む。この検知部により、レーザー光Lが虹彩絞り23を通過できる範囲内にあるかの位置情報と、通過したレーザー光Lの光量を取得できる。本実施形態では、検知部にフォトダイオードセンサーなどのより低コストの受光素子を採用できる。
【0057】
また、上記取得部に加えて、レーザー光の進行方向を補正する補正部を備えることもできる。
【0058】
図24に示すように、本実施形態の補正部24は平行平板である。補正部24により補正部24の前後でレーザー光をシフトさせることができる。補正部24は、主光源および補助光源から照射されたレーザー光が同軸になる方向へ、いずれかのレーザー光を補正することができ、特に同軸となる様に補正することが好ましい。補正部24を複数の平板により構成してシフトできる軸方向を増やしてもよいし、補正部24をガルバノミラーのようなミラー対により構成してもよい。
【0059】
図25に示すように、主光源からのレーザー光L1と補助光源からのレーザー光L2とが接するように調整し、これらのレーザー光の情報を取得する取得部を設けてもよい。これにより、主光源のレーザー光L1と補助光源のレーザー光L11の光線同士の中心位置の距離を、互いの光線半径の和に設定できる。これにより、主光源と補助光源とを切り替えた際の影響を容易に推定でき、光線のずれの誤差を抑制できる。
【0060】
また図26に示すように、一方のレーザー光内に他方のレーザー光が収まるように両者のレーザー光の照射範囲を設定してもよい。図26では、補助光源のレーザー光L11が主光源のレーザー光L1内に収まっている。これにより、主光源と補助光源の両方からレーザー光を照射して合成した際に、レーザー光L1内におけるエネルギー量を容易に把握できる。ただし、補助光源のレーザー光L11内に主光源のレーザー光L1が収まっていてもよい。
【0061】
次に、上記取得部および補正部を有するレーザー照射装置の制御部について、図27を用いて説明する。ただし、取得部のみを有するレーザー照射装置であってもよい。
図27に示すように、制御部50は、光源制御部52と補正制御部53とを含む。光源制御部52は、取得部20によって取得した光量が基準値に達していない場合、つまり光量が不足する場合には、各主光源の出力を上げたり、主光源に補助光源を合成したりする。補正制御部53は、取得部20の取得したレーザー光の位置情報に基づいて、補正部24によりレーザー光の照射位置を補正する。
【0062】
図28の実施形態では、移動可能な経路変更部12により、補助光源11が、複数の主光源13A~13Dのいずれかの代わりにレーザー光を照射対象に照射できる。このように、補助光源が代替する(あるいは加算する)主光源が多いと、代替する主光源によって補助光源11のレーザー光L11の経路長の差が大きくなってしまう。そこで、図29に示すように、レーザー照射装置の制御部50が有する光源制御部52に遅延生成部54を設ける。遅延生成部54は、主光源13A~13Dあるいは補助光源11がレーザー光を照射するタイミングを遅延させることで、レーザー光を照射するタイミングを合わせることができる。
【0063】
また主光源のレーザー光の経路と補助光源のレーザー光の経路との少なくともいずれか一方の経路長を経路変更部により調整することで、両者の照射対象へ照射されるタイミングのずれを軽減することもできる。例えば図30に示す実施形態では、主光源13Aのレーザー光L1は、経路変更部12A,12Bにより反射され、その進路が変更されることで、直進時よりも経路が長くなっている。経路変更部12A,12Bはミラー(光反射素子)である。また主光源13Bのレーザー光L2は、経路変更部12E、経路変更部16Cにより反射され、その経路が長くなっている。経路変更部12Eはミラー(光反射素子)である。経路変更部16Cは偏光プリズム(偏光素子)である。
【0064】
補助光源11からのレーザー光L11は、経路変更部18により、主光源13A、13Bのいずれのレーザー光に代えて、あるいは加えて照射対象へ照射されるかが変更される。経路変更部18は偏光調整素子である。経路変更部18により、レーザー光が、その下流側の経路変更部16Bによって反射されるか通過するかを変更する。経路変更部16Bは偏光プリズム(偏光素子)である。経路変更部16Bを通過したレーザー光は、経路変更部12C、経路変更部16Aに反射されて、主光源13Aのレーザー光に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へ照射される。また経路変更部16Bに反射されたレーザー光は、経路変更部12Dに反射され、経路変更部16Cを通過して、主光源13Bのレーザー光に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へ照射される。経路変更部12C,12Dはミラー(光反射素子)である。
【0065】
図30の実施形態では、主光源13Aのレーザー光L1の照射対象へ照射される経路と補助光源11のレーザー光L11が経路変更部16B、経路変更部12C、経路変更部16Aを経て照射対象へ照射される経路との長さが略同じに設けられる。また、主光源13Bのレーザー光L2の照射対象へ照射される経路と補助光源11のレーザー光L11が、経路変更部16B、経路変更部12D、経路変更部16Cを経て照射対象へ照射される経路との長さが略同じに設けられる。
【0066】
ここで、光速をC〔mm/sec〕、主光源から照射対象までの経路長と補助光源から照射対象までの経路長との差の絶対値をL〔mm〕とすると、図31に示すように、主光源のレーザー光と補助光源のレーザー光の照射タイミングはL/C〔sec〕だけずれる。そして、図32(a)では、主光源からのパルスD1に対する補助光源からのパルスD11のずれHが、主光源のパルス周期Tに相当する距離Hの半分以上の場合が示される。この場合、図32(b)に示す二値化パターンでは、上段の主光源のパルスD1と下段の補助光源のパルスD11とのタイミングがずれてしまう。一方、図33(a)では、主光源からのパルスD1に対する補助光源からのパルスD11のずれHが、Hの半分未満の場合が示される。この場合、図33(b)に示す二値化パターンでは、パルスD1とパルスD11との間に位置ずれによるパターンのずれがなく、パルスD1とパルスD11とのタイミングのずれにより、パルスD11が主光源の次のパルスD2と混合されないようにすることができる。これにより、両者の照射タイミングのずれを許容範囲に収めることができる。つまり、下記式(1)を満たす場合、主光源と補助光源によるレーザー光の照射タイミングのずれを許容範囲に収めることができる。
L<C×T/2・・・(1)
【0067】
図34に示す実施形態では、主光源13A,13B、そして補助光源11に、それぞれ、光源取得部25A~25Cが設けられる。前述の取得部は、反射や通過などをした後のレーザー光の光量や位置情報を取得する。これに対して、光源取得部25A~25Cは、経路変更部および光走査部14よりもレーザー光の経路の上流側に設けられ、主光源13A,13B、あるいは補助光源11が出力する光の強さの情報を取得する。
【0068】
図35は光源取得部が取得した光量の推移を示す図で、横軸に日、縦軸に光源の出力〔%〕を示している。出力は一日目を100%とした値である。
図35に示すように、光源取得部により光源の出力の情報を取得することで、光源の出力が時間の経過とともに低下していることがわかる。このように、光源の出力の経時劣化を、システム影響を排して高精度に把握できる。これにより、光源の交換のタイミングや出力増あるいは補助光源を主光源に合成するタイミングをより高精度に決定できる。
【0069】
次に、経路変更部による経路変更の有無の切り替え方法について、順に説明する。
【0070】
まず、図1の実施形態のように、経路変更部12を移動させることにより、経路変更部12をレーザー光の経路上あるいは経路外に配置し、レーザー光の反射あるいは通過を切り替えてもよい。
【0071】
また図36(a)→(b)に示すように、起立した姿勢から倒れた姿勢へ切り替えることで、レーザー光Lの反射と通過とを切り替えることができる。
【0072】
図37(a)は、経路変更部18によりレーザー光Lを変更させ、経路変更部16により反射する構成である。経路変更部18は偏光調整素子であり、経路変更部16は偏光プリズム(偏光素子)である。この構成において、図37(b)のように経路変更部18をレーザー光Lの経路上から退避させることで、レーザー光Lが経路変更部16に反射されず通過する。
【0073】
図38(a)→図38(b)のように、経路変更部18を90度回転させることにより、経路変更部18に入射するレーザー光の反射と通過とを切り替えてもよい。
【0074】
また図38のように経路変更部18の回転によりレーザー光の反射と通過とを切り替えることにより、補助光源が代替する、あるいは合成する主光源を選択できるようにしてもよい。例えば図39に示す実施形態では、経路変更部18の回転により、レーザー光L11の経路変更部16Aの反射と通過とを切り替えることができる。経路変更部16Aに反射されたレーザー光L11は、主光源13Aのレーザー光L1に代えて、あるいはこれに加えて、照射対象へ照射される。また経路変更部16Aを通過したレーザー光L11は、主光源13Bのレーザー光L1に代えて、あるいはこれに加えて、照射対象へ照射される。
【0075】
図40は光源の経時劣化を示す図で、横軸が光源の稼働時間、縦軸が所定の光量を出力するのに必要な電流値である。
図40に示すように、光源は、一定以上の稼働時間を超えてから徐々に劣化し始めて必要な電流値が上昇していく。
【0076】
図41に示す実施形態では、光源制御部52が記憶部55を有する。光源制御部52は、記憶部55に記憶された順序で、主光源あるいは補助光源が分担してレーザー光を照射する。これにより、それぞれの光源が劣化するまでの時間を長くすることができる。
【0077】
図42は、単一の光源を発光させた場合(点線)と分散して発光させた場合(実線)の累計発光時間の変化を示す図である。横軸に時間、縦軸に累計の発光時間を示している。
図42に示すように、発光させる光源を分散させた方が傾きは緩やかになり、光源が劣化するまでの時間が長くなる。図42の場合の各光源による照射光量の分担割合の例を表1に示す。
【表1】
【0078】
また図43に示すように、光源制御部52に乱数発生部56を設けてもよい。乱数発生部56の発生させた乱数により、光源制御部52は、無作為に各主光源あるいは補助光源を発光させる。これにより、発光する光源を分散させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0080】
以上の説明では、補助光源が全ての主光源のいずれかに代えて、あるいは加えて、照射対象へレーザー光を照射する場合を示したが、レーザー照射装置が供える一部の主光源のうちの任意の主光源に代えて、あるいは加えて、照射対象へレーザー光を照射する構成であってもよい。
【0081】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
主光源を有する複数のレーザー照射器と、
補助光源と、
前記補助光源のレーザー光の経路を変更する経路変更部と、を備えたレーザー照射装置であって、
前記補助光源は、前記経路変更部によりレーザー光の経路を変更されることにより、任意の前記主光源に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へレーザー光を照射することを特徴とするレーザー照射装置である。
<2>
前記補助光源から前記照射対象へ照射されるレーザー光の経路は、前記補助光源が代替する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路、あるいは、前記補助光源が追加でレーザー光を照射する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路と、経路の一部が共通する<1>記載のレーザー照射装置である。
<3>
前記主光源の光量が不足する場合に、前記主光源に加えて、前記補助光源が前記照射対象へレーザー光を照射する<1>または<2>記載のレーザー照射装置である。
<4>
前記主光源あるいは前記補助光源が照射したレーザー光を走査する光走査部を有し、
前記光走査部よりもレーザー光の照射方向の下流側に、前記主光源あるいは前記補助光源のレーザー光の光量あるいは位置の少なくともいずれかの情報を取得する取得部を有する<1>から<3>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<5>
前記取得部が取得した情報に基づいて、前記主光源あるいは前記補助光源が照射するレーザー光の進行方向を補正する補正部を有する<4>記載のレーザー照射装置である。
<6>
前記補正部は、前記補助光源の照射するレーザー光と前記主光源の照射するレーザー光とが同軸になる方向へ前記補助光源あるいは前記主光源から照射されたレーザー光を補正する<5>記載のレーザー照射装置である。
<7>
前記取得部が取得した情報に基づいて、前記主光源あるいは前記補助光源の少なくとも何れかが照射するレーザー光の光量を調整する<4>から<6>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<8>
前記取得部はアレイセンサーを含む<4>から<7>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<9>
前記取得部は、自身に照射される位置によってレーザー光を部分的に通過させる部分通過部を含む<4>から<7>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<10>
前記主光源あるいは前記補助光源が照射したレーザー光を走査する光走査部と、
前記主光源あるいは前記補助光源の照射するレーザー光の光量の情報を取得する光源取得部とを有し、
前記光源取得部が、取得するレーザー光の経路の前記光走査部よりも上流側に設けられる<1>から<9>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<11>
前記経路変更部は、前記補助光源から照射されるレーザー光を異なる複数の方向へ分割する光分割素子を含む<1>から<10>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<12>
前記経路変更部が移動可能に設けられる<1>から<10>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<13>
前記経路変更部は、レーザー光を反射する光反射素子を含む<12>記載のレーザー照射装置である。
<14>
前記経路変更部は偏光素子を含む<1>から<10>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<15>
前記主光源と前記補助光源の照射するレーザー光の波長が異なる<1>から<10>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<16>
前記経路変更部は、各主光源および前記補助光源の少なくともいずれかの波長域のレーザー光を反射し、少なくともいずれかの波長域のレーザー光を通過させる<15>記載のレーザー照射装置である。
<17>
前記主光源および前記補助光源が同じ照射対象へレーザー光を照射し、
当該主光源あるいは前記補助光源がレーザー光を照射するタイミングに遅延を発生させることで、両者のレーザー光が前記照射対象へ照射されるタイミングのずれを補正する<1>から<16>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<18>
前記主光源から特定の照射対象へレーザー光を照射するまでの経路長と前記補助光源から当該照射対象へレーザー光を照射するまでの経路長との差の絶対値をLとし、当該主光源のパルス周期をT、光速をCとすると、下記式(1)を満たす<1>から<17>いずれか記載のレーザー照射装置である。
L<C×T/2・・・(1)
<19>
前記照射対象に対して前記主光源あるいは前記補助光源がレーザー光を分担して照射し、
前記主光源あるいは前記補助光源による分担の割合が順番に切り替えられる<1>から<18>いずれか記載のレーザー照射装置である。
<20>
乱数発生部を有し、
前記乱数発生部により、前記主光源あるいは前記補助光源による分担の割合が決められる<19>記載のレーザー照射装置である。
<21>
補助光源から照射されたレーザー光が、経路変更部によりその経路を変更されることにより、任意の主光源に代えて、あるいは、これに加えて、照射対象へレーザー光を照射するレーザー照射方法である。
<22>
前記補助光源から前記照射対象へ照射されるレーザー光の経路は、前記補助光源が代替する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路、あるいは、前記補助光源が追加でレーザー光を照射する主光源の前記照射対象へ照射するレーザー光の経路と、経路の一部が共通する<21>記載のレーザー照射方法である。
【符号の説明】
【0082】
1 レーザー照射装置
10A,10B レーザー照射器
11 補助光源
12 経路変更部
13A、13B 主光源
14 光走査部
20 取得部
23 虹彩絞り(部分通過部)
24 補正部
25A~25C 光源取得部
50 制御部
51 変更制御部
52 光源制御部
56 乱数発生部
L、L1、L2、L11 レーザー光
W1,W2 照射対象
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2022-86338号公報
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