(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171819
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241205BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241205BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241205BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L25/04 C
H01L23/48 P
H01L23/48 G
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089062
(22)【出願日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】新開 次郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109EA02
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC09
(57)【要約】
【課題】より高い温度での使用時においても金属材と封止材との間の剥離を抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1主面を有する金属材と、前記第1主面の上に設けられた半導体チップと、前記半導体チップの周囲で前記第1主面の上の複数箇所に設けられた複数の第1焼結体と、前記金属材、前記半導体チップおよび前記第1焼結体を封止する封止材と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する金属材と、
前記第1主面の上に設けられた半導体チップと、
前記半導体チップの周囲で前記第1主面の上の複数箇所に設けられた複数の第1焼結体と、
前記金属材、前記半導体チップおよび前記第1焼結体を封止する封止材と、
を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、
前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、
前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の間および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の間とには隙間が存在し、
前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の中心同士の間の距離および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の中心同士の間の距離は、L/20以上L/4以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、
前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、
複数の前記第1焼結体は、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向に周期的に配置されており、
前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向での前記第1焼結体の周期は、L/20以上L/4以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1焼結体の高さは、10μm以上500μm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1焼結体の表面の平均算術粗さRaは、1μm以上10μm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップは、前記第1主面に対向する第2主面と、前記第2主面と反対の第3主面と、を有し、
前記第3主面の複数箇所に設けられた複数の第2焼結体を有する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップは、前記第3主面を構成する主電極を有する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップは、
主電極と、
前記主電極に接合され、前記第3主面を構成する緩衝板と、
を有する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記封止材は、隣り合う前記第1焼結体の間にあるフィラーを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記複数の第1焼結体は、
第1高さの複数の第3焼結体と、
前記第1高さより高い第2高さの複数の第4焼結体と、
を有し、
前記第1主面に垂直な方向からの平面視で、前記第4焼結体の個数密度が前記第3焼結体の個数密度よりも低い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記複数の第1焼結体は、
第1空孔率の複数の第5焼結体と、
前記第1空孔率よりも高い第2空孔率の第6焼結体と、
を有し、
前記第6焼結体は、前記第5焼結体よりも前記半導体チップから離れて配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1焼結体の空孔率は、10%以上50%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
第1主面を有する金属材と、
前記第1主面の上に設けられ、前記第1主面に対向する第2主面と、前記第2主面と反対の第3主面と、を有する半導体チップと、
前記第3主面の複数箇所に設けられた複数の第2焼結体と、
前記金属材、前記半導体チップおよび前記第2焼結体を封止する封止材と、
を有する、半導体装置。
【請求項14】
前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、
前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、
前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の間および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の間とには隙間が存在し、
前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の中心同士の間の距離および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の中心同士の間の距離は、L/20以上L/4以下である、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、
前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、
複数の前記第2焼結体は、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向に周期的に配置されており、
前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向での前記第2焼結体の周期は、L/20以上L/4以下である、請求項13に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールに好適な半導体装置の例として、ダイパッドに搭載された半導体チップが封止材により封止された半導体装置が知られている。また、ダイパッドと封止材との密着性の向上を目的とした半導体装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-206482号公報
【特許文献2】特開2019-106489号公報
【特許文献3】特開2011-208271号公報
【特許文献4】特開平10-199905号公報
【特許文献5】特開平8-046116号公報
【特許文献6】特開平10-237694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、より高温で使用可能な半導体装置に対する要請が高まっている。しかしながら、従来の半導体装置では、より高い温度での使用時にダイパッド等の金属材と封止材との間の剥離が生じるおそれがある。
【0005】
本開示は、より高い温度での使用時においても金属材と封止材との間の剥離を抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、第1主面を有する金属材と、前記第1主面の上に設けられた半導体チップと、前記半導体チップの周囲で前記第1主面の上の複数箇所に設けられた複数の第1焼結体と、前記金属材、前記半導体チップおよび前記第1焼結体を封止する封止材と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より高い温度での使用時においても金属材と封止材との間の剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第5実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第6実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図11】
図11は、第6実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、第1主面を有する金属材と、前記第1主面の上に設けられた半導体チップと、前記半導体チップの周囲で前記第1主面の上の複数箇所に設けられた複数の第1焼結体と、前記金属材、前記半導体チップおよび前記第1焼結体を封止する封止材と、を有する。
【0012】
封止材は第1主面だけでなく、複数の第1焼結体の各々の表面にも接触する。このため、強いアンカー効果が得られ、より高い温度での使用時においても金属材と封止材との間の剥離を抑制できる。
【0013】
封止材は半導体チップを外部環境に直接曝されないようにする機能を有する。外部環境の雰囲気に存在する酸化性ガスおよび腐食性ガスは半導体装置を含む電子機器全般に悪影響を及ぼし、短寿命化の原因となる。酸化性ガスの例として、水蒸気が挙げられる。腐食性ガスの例として、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、硫化水素(H2S)及びハロゲンが挙げられる。封止材は、これらの外部環境の雰囲気に存在する物質の半導体チップへの侵入を防止する。これに対し、封止材と金属材との間に剥離が発生すると、半導体チップと外部環境とを結ぶ経路が発生する。更に、剥離が生じた部分(剥離部)に水分が侵入した場合、高温下では水分が水蒸気化して体積が増加し、低温下では水分が凝集して体積が減少するというプロセスが繰り返されると、剥離が加速度的に進行するポップコーン現象が発生することもある。このような剥離部の拡大により、半導体チップが外部環境に直接曝されるようになり、半導体装置の信頼性が低下してしまう。従って、封止材と金属材および半導体チップとの間の剥離の抑制は、ディスクリートであっても、モジュールであっても、半導体装置の高温下での動作と高い信頼性を実現するための鍵の一つである。
【0014】
封止材と金属材または半導体チップとの間の剥離の有無は、光学式顕微鏡または電子顕微鏡を用いた半導体装置の断面観察により直接的に確認できる。この他にも、超音波顕微鏡を用いて、界面での音波の伝搬の仕方(位相差)を非破壊で観察することにより、剥離の有無を確認することも可能である。
【0015】
〔2〕 〔1〕において、前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の間および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の間とには隙間が存在し、前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の中心同士の間の距離および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第1焼結体の中心同士の間の距離は、L/20以上L/4以下であってもよい。この場合、強いアンカー効果を得やすい。
【0016】
〔3〕 〔1〕において、
前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、複数の前記第1焼結体は、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向に周期的に配置されており、前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向での前記第1焼結体の周期は、L/20以上L/4以下であってもよい。この場合、強いアンカー効果を得やすい。
【0017】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記第1焼結体の高さは、10μm以上500μm以下であってもよい。この場合、強いアンカー効果を得やすい。
【0018】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれかにおいて、前記第1焼結体の表面の平均算術粗さRaは、1μm以上10μm以下であってもよい。この場合、より強いアンカー効果を得やすい。
【0019】
〔6〕 〔1〕から〔5〕のいずれかにおいて、前記半導体チップは、前記第1主面に対向する第2主面と、前記第2主面と反対の第3主面と、を有し、前記第3主面の複数箇所に設けられた複数の第2焼結体を有してもよい。封止材は複数の第2焼結体の各々の表面にも接触するため、より強いアンカー効果を得やすい。
【0020】
〔7〕 〔6〕において、前記半導体チップは、前記第3主面を構成する主電極を有してもよい。この場合、主電極の上に第2焼結体が設けられ、主電極と封止材との間での剥離を抑制しやすい。
【0021】
〔8〕 〔6〕において、前記半導体チップは、主電極と、前記主電極に接合され、前記第3主面を構成する緩衝板と、を有してもよい。この場合、緩衝板の上に第2焼結体が設けられ、緩衝板と封止材との間での剥離を抑制しやすい。また、緩衝板が設けられることで、ワイヤボンディングの際の半導体チップへのダメージを抑制できる。
【0022】
〔9〕 〔1〕から〔8〕のいずれかにおいて、前記封止材は、隣り合う前記第1焼結体の間にあるフィラーを含んでもよい。この場合、フィラーの密度が、封止材の隣り合う第1焼結体間の部分と第1焼結体から離れた部分との間で同等となる。このため、金属材と封止材との間の剥離を抑制しやすい。
【0023】
〔10〕 〔1〕から〔9〕のいずれかにおいて、前記複数の第1焼結体は、第1高さの複数の第3焼結体と、前記第1高さより高い第2高さの複数の第4焼結体と、を有し、前記第1主面に垂直な方向からの平面視で、前記第4焼結体の個数密度が前記第3焼結体の個数密度よりも低くてもよい。この場合、より高温での動作温度での剥離の発生を抑制できる。また、動作温度の最低温度と最高温度の幅がより大きい動作条件での使用時でも、使用することが可能となる。この効果により、苛酷な動作環境下への適用が可能となるととに、標準的な動作環境下でもより高い信頼性が実現可能となる。
【0024】
〔11〕 〔1〕から〔10〕のいずれかにおいて、前記複数の第1焼結体は、第1空孔率の複数の第5焼結体と、前記第1空孔率よりも高い第2空孔率の第6焼結体と、を有し、前記第6焼結体は、前記第5焼結体よりも前記半導体チップから離れて配置されていてもよい。この場合、第6焼結体が第5焼結体よりも変形しやすい。また、金属材と封止材との間の熱変形の量の差は半導体チップから離れるほど大きくなる。従って、熱変形の量の差が大きくなる部分に変形しやすい第6焼結体があることになる。このため、金属材と封止材との間に作用する熱応力を、変形しやすい第6焼結体により緩和できる。
【0025】
〔12〕 〔1〕から〔11〕のいずれかにおいて、前記第1焼結体の空孔率は、10%以上50%以下であってもよい。この場合、金属材と封止材との間に作用する熱応力を、第1焼結体により緩和しやすい。
【0026】
〔13〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、第1主面を有する金属材と、前記第1主面の上に設けられ、前記第1主面に対向する第2主面と、前記第2主面と反対の第3主面と、を有する半導体チップと、前記第3主面の複数箇所に設けられた複数の第2焼結体と、前記金属材、前記半導体チップおよび前記第2焼結体を封止する封止材と、を有する。
【0027】
封止材は第1主面だけでなく、複数の第2焼結体の各々の表面にも接触する。このため、強いアンカー効果が得られ、より高い温度での使用時においても金属材と封止材との間の剥離を抑制できる。
【0028】
〔14〕 〔13〕において、前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の間および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の間とには隙間が存在し、前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の中心同士の間の距離および前記第2辺に平行な方向で隣り合う前記第2焼結体の中心同士の間の距離は、L/20以上L/4以下であってもよい。この場合、強いアンカー効果を得やすい。
【0029】
〔15〕 〔13〕において、前記半導体チップは、第1辺と、前記第1辺に垂直な第2辺とを備えた長方形状の平面形状を有し、前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同等ないし前記第2辺の長さ以上であり、複数の前記第2焼結体は、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向に周期的に配置されており、前記第1辺の長さをLとしたとき、前記第1辺に平行な方向および前記第2辺に平行な方向での前記第2焼結体の周期は、L/20以上L/4以下であってもよい。この場合、強いアンカー効果を得やすい。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。本明細書および図面において、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。X1-X2方向およびY1-Y2方向を含む面をXY平面とし、Y1-Y2方向およびZ1-Z2方向を含む面をYZ平面とし、Z1-Z2方向およびX1-X2方向を含む面をZX平面とする。便宜上、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向とする。また、本開示において平面視とは、Z1側から対象物を見ることをいう。
【0031】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、半導体装置に関する。
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0032】
図1および
図2に示すように、第1実施形態に係る半導体装置1は、主として、ダイパッド10と、トランジスタ20と、封止材30と、ゲート端子40と、ソース端子50と、ドレイン端子60と、複数の焼結体71とを有する。半導体装置1は、更に、ワイヤ84および85を有する。
図1では、封止材30を透視している。
【0033】
ダイパッド10、ゲート端子40、ソース端子50およびドレイン端子60は、それぞれ、例えば、銅(Cu)基材と、銅基材の表面に形成されためっき層とを有する。めっき層は、例えばニッケル(Ni)めっき層または錫(Sn)めっき層である。
【0034】
ダイパッド10は、主面10Aと、主面10Aとは反対の主面10Bとを有する。主面10Aは主面10BのZ1側にある。主面10Aおよび10BはXY平面に平行な面である。ダイパッド10の平面形状は長方形状である。ドレイン端子60はダイパッド10と一体に形成され、ダイパッド10からY2側に延びる。ゲート端子40はドレイン端子60のX2側にあり、ドレイン端子60と平行に延びる。ソース端子50はドレイン端子60のX1側にあり、ドレイン端子60と平行に延びる。ダイパッド10は金属材の一例である。主面10Aは第1主面の一例である。
【0035】
トランジスタ20は、主として、炭化珪素基板21と、ゲート電極24と、ソース電極25と、ドレイン電極26とを有する。トランジスタ20は、主面20Aと、主面20Aとは反対の主面20Bと有する。主面20Bはダイパッド10の主面10Aに対向する。例えば、主面20Aは、長辺の長さが7mm、短辺の長さが4mmの長方形状の平面形状を有し、トランジスタ20の厚さは150μm以上500μmである。主面20Bは第2主面の一例であり、主面20Aは第3主面の一例である。
【0036】
ゲート電極24およびソース電極25は炭化珪素基板21のZ1側の面に設けられている。ゲート電極24およびソース電極25は主面20Aを構成する。ドレイン電極26は炭化珪素基板のZ2側の面に設けられている。ドレイン電極26は主面20Bを構成する。ゲート電極24およびソース電極25は、例えばアルミニウム(Al)層を含む。ゲート電極24およびソース電極25がアルミニウム層に代えて、アルミニウム-シリコン合金(Al-Si合金)、Al-Si-Cu合金等のアルミニウム合金層を含んでいてもよい。ドレイン電極26は、オーミック層と、オーミック層の上に設けられた接合層とを有する。オーミック層は、例えばニッケルまたはニッケル合金を含む。ニッケルまたはニッケル合金は炭化珪素との間に良好な接触抵抗を有する。接合層はニッケル層を含む。接合層が、ニッケル層の上に設けられた金層または銀層を更に有していてもよい。ソース電極25は主電極の一例である。
【0037】
トランジスタ20はダイパッド10の主面10Aに設けられている。ドレイン電極26は、銀焼結体または銅焼結体等の接合材27を用いてダイパッド10に接合されている。接合材27の厚さは、例えば50μm以上100μm以下である。ドレイン電極26が接合層を有することで、ドレイン電極26とダイパッド10との間に良好な接合性が得られる。
【0038】
ワイヤ84はゲート電極24とゲート端子40とを接続する。ワイヤ85はソース電極25とソース端子50とを接続する。ワイヤ85が複数あってもよい。
【0039】
複数の焼結体71はトランジスタ20の周囲で主面10Aの複数箇所に設けられている。焼結体71は、例えば銅焼結体である。焼結体71の高さ、すなわち、Z軸方向の寸法は、例えば10μm以上500μm以下である。焼結体71は、例えば直径が200μm以上500μm以下の円形状の平面形状を有する。焼結体71は、例えば200μm500μm以下の周期(ピッチ)で主面10Aに格子状に配置されている。焼結体71の空孔率は、例えば10%以上50%以下である。焼結体71は第1焼結体の一例である。
【0040】
封止材30は、ダイパッド10と、トランジスタ20と、ワイヤ84および85と、ゲート端子40の一部と、ソース端子50の一部と、ドレイン端子60の一部とを封止する。ゲート端子40、ソース端子50およびドレイン端子60の封止材30に覆われていない部分が封止材30からY2側に延びる。封止材30は、基部31と、基部31中に分散したフィラー32とを含む。例えば、基部31の材料はエポキシ樹脂等の樹脂であり、フィラー32の材料はシリカおよびアルミナ等の無機材料である。フィラー32の直径は、例えば数μm以上数十μm以下であり、隣り合う2つの焼結体71の間の距離よりも小さい。一部のフィラー32は、隣り合う2つの焼結体71の間にある。フィラー32が隣り合う2つの焼結体71の間にある場合、フィラー32の密度が、封止材30の焼結体71の隙間内の部分と焼結体71から離れた部分との間で同等となる。このため、ダイパッド10と封止材30との間の剥離を抑制しやすい。
【0041】
第1実施形態に係る半導体装置1では、封止材30はダイパッド10の主面10Aだけでなく、複数の焼結体71の各々の表面にも接触する。このため、強いアンカー効果が得られ、より高い温度での使用時においてもダイパッド10と封止材30との間の剥離を抑制できる。
【0042】
また、一般に焼結体は高温になるほどヤング率が低下する性質を有する。これに対し、銅を一例として挙げると、一般に広く用いられているバルク材では、ヤング率の温度依存性を有しない。このため、高温下で封止材30とダイパッド10との間に作用する熱応力が焼結体71により緩和される。特に焼結体71の空孔率が10%以上50%以下であることで、熱応力を緩和しやすい。焼結体71の空孔率は15%以上45%以下であってもよく、20%以上30%以下であってもよい。
【0043】
X1-X2方向で隣り合う焼結体71の間およびY1-Y2方向で隣り合う焼結体71の間には隙間が存在する。例えば、トランジスタ20が長方形状の平面形状を有し、その長辺の長さをLとしたとき、X1-X2方向で隣り合う焼結体71の中心同士の間の距離(中心間距離)L1は、L/20以上L/4以下である。Y1-Y2方向で隣り合う焼結体71の中心間距離L2も、L/20以上L/4以下である。中心間距離L1またはL2がL/20未満では、焼結体71が過剰に密になり、封止材30が隣り合う焼結体71の間に入り込まなくなるおそれがある。中心間距離L1またはL2がL/4超では、焼結体71が過剰に疎になり、アンカー効果を得にくくなるおそれがある。中心間距離L1およびL2はL/10以上L/5以下であってもよい。複数の焼結体71がX1-X2方向およびY1-Y2方向に周期的に配置されている場合、焼結体71のX1-X2方向での周期は中心間距離L1と等しく、焼結体71のY1-Y2方向での周期は中心間距離L2と等しい。複数の焼結体71が周期的に配置されていない場合、中心間距離L1の平均値をX1-X2方向での焼結体71の周期とみなしてもよく、中心間距離L2の平均値をY1-Y2方向での焼結体71の周期とみなしてもよい。トランジスタ20の平面形状における長辺は第1辺の一例であり、短辺は第2辺の一例である。トランジスタ20の平面形状が正方形状である場合、互いに直交する2辺の一方が第1辺の一例であり、他方が第2辺の一例である。
【0044】
焼結体71の高さが10μm以上500μm以下であることで、強いアンカー効果を得やすい。焼結体71の高さが50μm以上400μm以下であってもよく、100μm以上300μm以下であってもよい。
【0045】
焼結体71に粗面化処理が行われていてもよく、焼結体71の表面の平均算術粗さRaが1μm以上10μm以下であってもよい。焼結体71の表面の平均算術粗さRaが1μm以上10μm以下であることで、強いアンカー効果を得やすい。焼結体71の表面の平均算術粗さRaが2μm以上9μm以下であってもよく、3μm以上8μm以下であってもよい。粗面化処理としては、例えば粗化ニッケルめっき処理およびウェットエッチングが挙げられる。主面10Aにも粗面化処理が行われていてよい。
【0046】
一部のフィラー32が隣り合う2つの焼結体71の間にあることで、強いアンカー効果を得やすい。
【0047】
焼結体71の形成では、例えば、焼結体71を形成しようとする部分に開口部が形成されたメタルマスクを用いて銅ペーストを主面10Aに塗布し、その後に銅ペーストの焼結を行う。銅ペーストの塗布をディスペンス法により行ってもよい。すなわち、焼結体71を形成しようとする部分に、ノズルを用いて銅ペーストを点状に直接塗布してもよい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として、ソース電極の上にも焼結体が設けられている点で第1実施形態と相違する。
図3は、第2実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図4は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図4は、
図3中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図3では、封止材30を透視している。
【0049】
図3および
図4に示すように、第2実施形態に係る半導体装置2は、ソース電極25の上面の複数箇所に設けられた複数の焼結体72を有する。すなわち、複数の焼結体72はトランジスタ20の主面20Aの複数箇所に設けられている。焼結体72は、例えば銅焼結体である。焼結体72の高さ、すなわち、Z軸方向の寸法は、例えば10μm以上500μm以下である。焼結体72は、例えば直径が200μm以上500μm以下の円形状の平面形状を有する。焼結体72は、例えば200μm500μm以下の周期で主面20Aに格子状に配置されている。焼結体72の空孔率は、例えば10%以上50%以下である。一部のフィラー32が、隣り合う2つの焼結体72の間にある。焼結体72は第2焼結体の一例である。
【0050】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0051】
第2実施形態によっても第1実施形態と同じ効果が得られる。また、複数の焼結体72が設けられていることで、ダイパッド10と封止材30との間の剥離を更に抑制しやすい。特に焼結体72の空孔率が10%以上50%以下であることで、熱応力を緩和しやすい。焼結体72の空孔率は15%以上45%以下であってもよく、20%以上30%以下であってもよい。
【0052】
焼結体72の高さが10μm以上500μm以下であることで、強いアンカー効果を得やすい。焼結体72の高さが50μm以上400μm以下であってもよく、100μm以上300μm以下であってもよい。
【0053】
焼結体72に粗面化処理が行われていてもよく、焼結体72の表面の平均算術粗さRaが1μm以上10μm以下であってもよい。焼結体72の表面の平均算術粗さRaが1μm以上10μm以下であることで、強いアンカー効果を得やすい。焼結体72の表面の平均算術粗さRaが2μm以上9μm以下であってもよく、3μm以上8μm以下であってもよい。
【0054】
一部のフィラー32が隣り合う2つの焼結体72の間にあることで、強いアンカー効果を得やすい。
【0055】
焼結体72の形成では、例えば、焼結体72を形成しようとする部分に開口部が形成されたメタルマスクを用いて銅ペーストを主面20Aに塗布し、その後に銅ペーストの焼結を行う。焼結体72を焼結体71と同時に形成してもよく、焼結体71とは別に形成してもよい。
【0056】
X1-X2方向で隣り合う焼結体72の間およびY1-Y2方向で隣り合う焼結体72の間には隙間が存在する。例えば、X1-X2方向で隣り合う焼結体72の中心間距離L3は、L/20以上L/4以下である。Y1-Y2方向で隣り合う焼結体72の中心間距離L4も、L/20以上L/4以下である。中心間距離L3またはL4がL/20未満では、焼結体72が過剰に密になり、封止材30が隣り合う焼結体72の間に入り込まなくなるおそれがある。中心間距離L3またはL4がL/4超では、焼結体72が過剰に疎になり、アンカー効果を得にくくなるおそれがある。中心間距離L3およびL4はL/10以上L/5以下であってもよい。複数の焼結体72がX1-X2方向およびY1-Y2方向に周期的に配置されている場合、焼結体72のX1-X2方向での周期は中心間距離L3と等しく、焼結体72のY1-Y2方向での周期は中心間距離L4と等しい。複数の焼結体72が周期的に配置されていない場合、中心間距離L3の平均値をX1-X2方向での焼結体72の周期とみなしてもよく、中心間距離L4の平均値をY1-Y2方向での焼結体72の周期とみなしてもよい。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として、トランジスタの構成の点で第2実施形態と相違する。
図5は、第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0058】
図5に示すように、第3実施形態に係る半導体装置3では、トランジスタ20が緩衝板22を有する。緩衝板22はソース電極25の上に設けられている。緩衝板22は、銀焼結体または銅焼結体等の接合材23を用いてソース電極25に接合されている。緩衝板22は、例えば、鉄-ニッケル合金層と、この鉄-ニッケル合金層を間に挟む2つの銅層とを有する。緩衝板22が鉄-ニッケル合金板であってもよい。緩衝板22は主面20Aを構成する。そして、複数の焼結体72は、ソース電極25の上面に代えて緩衝板22の上面の複数箇所に設けられている。ワイヤ85は、複数の焼結体72が設けられた緩衝板22とソース端子50とを接続する。
【0059】
第3実施形態の他の構成は第2実施形態と同じである。
【0060】
第3実施形態によっても第2実施形態と同じ効果が得られる。緩衝板22が設けられているため、ワイヤ85の接合の際のトランジスタ20へのダメージを抑制できる。
【0061】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主として、ダイパッド10の上に焼結体が設けられていない点で第2実施形態と相違する。
図6は、第4実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図7は、第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図7は、
図6中のVII-VII線に沿った断面図に相当する。
図6では、封止材30を透視している。
【0062】
図6および
図7に示すように、第4実施形態に係る半導体装置4では、ダイパッド10の上に焼結体71が設けられていない。
【0063】
第4実施形態の他の構成は第2実施形態と同じである。
【0064】
第4実施形態に係る半導体装置4では、封止材30はダイパッド10の主面10Aだけでなく、複数の焼結体72の各々の表面にも接触する。このため、強いアンカー効果が得られ、より高い温度での使用時においてもダイパッド10と封止材30との間の剥離を抑制できる。
【0065】
また、一般に焼結体は高温になるほどヤング率が低下する性質を有する。このため、高温下で封止材30とダイパッド10との間に作用する熱応力が焼結体72により緩和される。これに対し、銅のバルク材はヤング率の温度依存性を有しない。
【0066】
第4実施形態に緩衝板22が設けられていてもよい。
【0067】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主として、焼結体71の構成の点で第1実施形態と相違する。
図8は、第5実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図9は、第5実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図9は、
図8中のIX-IX線に沿った断面図に相当する。
図8では、封止材30を透視している。
【0068】
図8および
図9に示すように、第5実施形態に係る半導体装置5では、複数の焼結体71が、複数の焼結体73と、複数の焼結体74とを有する。焼結体73および74は、例えば銅焼結体である。焼結体74は焼結体73よりも高い。また、主面10Aに垂直な方向からの平面視で、焼結体74の個数密度は焼結体73の個数密度よりも低い。つまり、主面10Aの単位面積あたりの焼結体74の個数が焼結体73の個数よりも少ない。焼結体73および74は、例えば直径が200μm以上500μm以下の円形状の平面形状を有する。焼結体73および74の空孔率は、例えば10%以上50%以下である。焼結体73の高さ、すなわち、Z軸方向の寸法は、例えば10μm以上300μm以下である。焼結体74の高さ、すなわち、Z軸方向の寸法は、例えば200μm以上500μm以下である。焼結体74は、例えば700μm1000μm以下の周期で主面10Aに格子状に配置されている。焼結体73は、例えば、焼結体74とあわせて200μm500μm以下の周期で主面10Aに格子状に配置されている。焼結体73は第3焼結体の一例である。焼結体74は第4焼結体の一例である。焼結体73の高さは第1高さの一例である。焼結体74の高さは第2高さの一例である。
【0069】
第5実施形態の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0070】
第5実施形態によっても第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0071】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。第6実施形態は、主として、焼結体71の構成の点で第1実施形態と相違する。
図10は、第6実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図11は、第6実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図11は、
図10中のXI-XI線に沿った断面図に相当する。
図10では、封止材30を透視している。
【0072】
図10および
図11に示すように、第6実施形態に係る半導体装置6では、複数の焼結体71が、複数の焼結体75と、複数の焼結体76とを有する。焼結体75および76は、例えば銅焼結体である。焼結体76の空孔率は焼結体75の空孔率よりも高い。また、焼結体76は焼結体75よりもトランジスタ20から離れて配置されている。焼結体75および76の高さ、すなわち、Z軸方向の寸法は、例えば10μm以上500μm以下である。焼結体75および76は、例えば直径が200μm以上500μm以下の円形状の平面形状を有する。焼結体75および76は、例えば200μm500μm以下の周期で主面10Aに格子状に配置されている。焼結体75の空孔率は、例えば10%以上30%以下である。焼結体76の空孔率は、例えば30%以上50%以下である。焼結体75は第5焼結体の一例である。焼結体76は第6焼結体の一例である。焼結体75の空孔率は第1空孔率の一例である。焼結体76の空孔率は第2空孔率の一例である。
【0073】
第6実施形態の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0074】
第6実施形態によっても第1実施形態と同じ効果が得られる。また、ダイパッド10と封止材30との間の熱変形の量の差はトランジスタ20から離れるほど大きくなる。従って、熱変形の量の差が大きくなる部分に、空孔率が高く変形しやすい焼結体76があることになる。このため、ダイパッド10と封止材30との間に作用する熱応力を、変形しやすい焼結体76により緩和できる。
【0075】
第5実施形態および第6実施形態に、焼結体72が設けられていてもよく、緩衝板22が設けられていてもよい。
【0076】
焼結体の空孔率は、緩衝板の断面を電子顕微鏡により観察し、当該断面の面積に対する空孔の合計の面積の割合で定義される。断面観察に際しては、通常、試料の断面を機械的に研磨するが、その際に空孔を閉塞させないなどの細心の注意をはらう。機械的に研磨した後に表面のダメージをスパッタ法により除去したり、電子顕微鏡での観察時に電子線の加速電圧を高くして表面層の影響を排除したりすることで、空孔率をより正確に求めやすい。
【0077】
本開示において、半導体チップはトランジスタに限定されず、ショットキーバリアダイオード等のダイオードであってもよい。トランジスタは、電界効果トランジスタであってもよく、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであってもよい。また、本開示はディスクリート型の半導体装置だけでなく、絶縁基板の表面に形成された導電パターン(金属材)の上に複数の半導体チップが実装され、封止材により封止されたパワーモジュール(半導体装置)等にも適用できる。
【0078】
以上、実施形態について詳述したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3、4、5、6 半導体装置
10 ダイパッド(金属材)
10A 主面(第1主面)
10B 主面
20 トランジスタ
20A 主面(第3主面)
20B 主面(第2主面)
21 炭化珪素基板
22 緩衝板
23、27 接合材
24 ゲート電極
25 ソース電極(主電極)
26 ドレイン電極
30 封止材
31 基部
32 フィラー
40 ゲート端子
50 ソース端子
60 ドレイン端子
71 焼結体(第1焼結体)
72 焼結体(第2焼結体)
73 焼結体(第3焼結体)
74 焼結体(第4焼結体)
75 焼結体(第5焼結体)
76 焼結体(第6焼結体)
84、85 ワイヤ