(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024171986
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】浄化装置とセメント製造排ガスの処理装置と浄化方法とセメント製造排ガスの処理方法及びセメントクリンカ製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20241205BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20241205BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D53/50 110
B01D53/56 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 200
B01D53/83
B01D53/68
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089382
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 佳典
(72)【発明者】
【氏名】中村 建翔
(72)【発明者】
【氏名】樋口 敬太
(72)【発明者】
【氏名】松島 正明
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智彦
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA12
4D002AA17
4D002AA40
4D002AB01
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4D002AC07
4D002BA02
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4D002CA01
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4D002DA12
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4D002EA01
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4D002HA01
4D002HA08
4D002HA10
4D020AA03
4D020AA05
4D020BA01
4D020BA07
4D020BA08
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB08
4D020CB25
4D020CC05
4D020CD02
4D020CD03
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC28
4G146JD05
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】活性炭を長期に利用することができる浄化装置を提供する。
【解決手段】有害成分を含むガスを粉炭又は粉炭の灰によって浄化する第一浄化部222と、第一浄化部222を通過したガスを活性炭によって浄化する第二浄化部223と、を備えている。例えば第一浄化部222は、粉炭又は粉炭の灰の流動層を形成する流動部を備え、流動部は、下から上へガスを流すガス管路と、ガス管路の内部を下部と流動層を配置する上部とに分けると共にガスを分散する分散板と、ガス流路に形成されていて流動層の表面側の粉炭又は粉炭の灰を排出する分岐部と、を備えている。この場合、第一浄化部222は、好ましくは流動部を通過したガスに含まれる粉炭又は粉炭の灰を分離する固気分離器をさらに備えている。第一浄化部222は、粉炭又は粉炭の灰の噴流層を形成する噴流部と、噴流部を通過したガスに含まれる粉炭又は粉炭の灰を分離する固気分離器と、を備えてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害成分を含むガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一浄化部と、
前記第一浄化部を通過した前記ガスを活性炭によって浄化する第二浄化部と、を備えていることを特徴とする、浄化装置。
【請求項2】
前記第一浄化部は、前記粉炭又は前記粉炭の灰の流動層を形成する流動部を備え、
前記流動部は、下から上へ前記ガスを流すガス管路と、前記ガス管路の内部を下部と前記流動層を配置する上部とに分けると共に前記ガスを分散するための分散板と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記第一浄化部は、前記粉炭又は前記粉炭の灰の噴流層を形成する噴流部を備え、
前記噴流部は、下から上へ前記ガスを流すガス管路と、前記ガス管路の内部を下部と前記噴流層を配置する上部とに分けると共に前記ガスを分散するための分散板と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記ガス管路を通過した前記ガスに含まれる前記粉炭又は前記粉炭の灰を分離する固気分離器をさらに備えていることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記第一浄化部が前記粉炭の灰によって前記ガスを浄化し、
さらに前記粉炭の灰の強熱減量が5.5%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記ガスをアルカリスクラバーによって浄化する前洗浄部をさらに備え、
前記第一浄化部は前記前洗浄部で洗浄された前記ガスを浄化することを特徴とする、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項7】
セメント製造設備に接続されたセメント製造排ガスの処理装置であって、
セメント製造排ガスからCO2をCO2吸収液によって回収するCO2回収装置と、
前記CO2回収装置でCO2を回収される前の前記セメント製造排ガスを前記ガスとして、又は前記CO2回収装置で前記セメント製造排ガスから回収されたCO2ガスを前記ガスとして、有害成分を除去する請求項1から3及び請求項5のいずれかに記載の浄化装置と、を備えていることを特徴とする、セメント製造排ガスの処理装置。
【請求項8】
有害成分を含むガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一浄化工程と、
前記第一浄化工程を経た前記ガスを活性炭によって浄化する第二浄化工程と、を備え、
前記ガスが排ガス又は該排ガスからCO2吸収液によって回収したCO2ガスであることを特徴とする、浄化方法。
【請求項9】
セメント製造排ガスから有害成分を除去する排ガス浄化工程と、
前記排ガス浄化工程を経た前記セメント製造排ガスからCO2をCO2吸収液によって回収するCO2回収工程と、を備え、
前記排ガス浄化工程は、前記セメント製造排ガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一排ガス浄化工程と、
前記第一排ガス浄化工程を経た前記セメント製造排ガスを活性炭によって浄化する第二排ガス浄化工程と、を備えていることを特徴とする、セメント製造排ガスの処理方法。
【請求項10】
前記第一排ガス浄化工程を行う前に、前記セメント製造排ガスをアルカリスクラバーによって浄化するガス洗浄工程をさらに備えていることを特徴とする、請求項9に記載のセメント製造排ガスの処理方法。
【請求項11】
セメント製造排ガスからCO2をCO2吸収液によって回収するCO2回収工程と、
前記CO2回収工程で回収されたCO2ガスから有害成分を除去するCO2浄化工程と、を備え、
前記CO2浄化工程は、前記CO2ガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一CO2ガス浄化工程と、前記第一CO2ガス浄化工程を経た前記CO2ガスを活性炭によって浄化する第二CO2ガス浄化工程と、を備えていることを特徴とする、セメント製造排ガスの処理方法。
【請求項12】
セメント製造設備で化石燃料を燃焼させてセメント原料を焼成し更に該セメント原料を冷却してセメントクリンカを製造するセメントクリンカ製造工程と、
前記セメント製造設備からのセメント製造排ガス又は/及び該セメント製造排ガスからCO2吸収液によって回収されたCO2ガスを浄化する浄化工程と、を備え、
前記浄化工程は、
前記セメント製造排ガスを浄化する場合には、前記セメント製造排ガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一浄化工程と、前記第一浄化工程を経た前記セメント製造排ガスを活性炭によって浄化する第二浄化工程と、を備え、
前記CO2ガスを浄化する場合には、前記CO2ガスを前記粉炭又は前記粉炭の灰によって浄化する第一CO2ガス浄化工程と、前記第一CO2ガス浄化工程を経た前記CO2ガスを前記活性炭によって浄化する第二CO2ガス浄化工程と、を備え、
前記セメント製造排ガスの浄化と前記CO2ガスの浄化とを行う場合には、前記第一浄化工程と、前記第二浄化工程と、前記第一CO2ガス浄化工程と、前記第二CO2ガス浄化工程と、を備え、
前記セメントクリンカ製造工程は、前記浄化工程によって有害成分が付着した前記粉炭、前記粉炭の灰及び前記活性炭の少なくともいずれかを前記セメント製造設備で燃焼させてセメントクリンカ製造に用いることを特徴とする、セメントクリンカ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造設備等で使用されているキルンからの排ガス中に含まれる揮発性有機化合物(volatile of organic compound: 以下、VOCと称す。)等の有害成分を除去する浄化装置とセメント製造排ガスの処理装置と浄化方法とセメント製造排ガスの処理方法及びセメントクリンカ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却設備やセメント製造設備等で使用されているキルンからの排ガス中には、VOC等の有害成分が含まれている。これら有害成分は、排ガスを大気放出する前に排ガス中から除去することが必要である。
【0003】
この有害成分を排ガスから除去する方法として、従来では、特許文献1に示される処理方法がある。この処理方法は、キルンからの排ガスを活性炭等の吸着剤に接触させて、排ガス中の水銀及び有機塩素化合物を吸着させた後、その吸着剤を窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とした加熱炉内で加熱し、吸着されていた水銀を揮発させて除去し、かつ有機塩素化合物を分解して除去する方法である。吸着剤に用いる活性炭は再生処理により、繰り返しの利用が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有害物資の除去を好適に実施するために、性能が劣化した活性炭を新しいものへの交換を行うことになるが、このような活性炭の交換を頻繁に行うことになると、ランニングコストが嵩むことになる。そのため、活性炭を長期に利用することが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、活性炭を長期に利用することができる浄化装置とセメント製造排ガスの処理装置と浄化方法、セメント製造排ガスの処理方法及びセメントクリンカ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の浄化装置は、有害成分を含むガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一浄化部と、前記第一浄化部を通過した前記ガスを活性炭によって浄化する第二浄化部と、を備えている。
【0008】
「有害成分」は、排ガスに含まれる酸性成分(例えば、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガス)、ハロゲン及びVOCの少なくとも何れかを含む。
「粉炭」は、石炭を砕いて構成されたものであり、例えば30mm以下の粒径のものを利用することができる。この粉炭が、例えばセメント製造設備(仮焼炉や焼成用ロータリキルン)での燃焼に用いる微粉炭であれば、粒径が100μm程のものも用いることができる。
「粉炭の灰」は、粉炭が燃焼して生じた微粉炭灰やフライアッシュであり、未燃炭素を含んでいてもよい。「フライアッシュ」は微粉炭を燃焼して生成される灰であり、JISA6201では四種ある。ここでは、「微粉炭灰」は、前記のフライアッシュ(JISA6201の四種)に該当しない所謂「非JIS灰」を指す。
「活性炭」としては、石炭系、植物系等のものを利用することができ、石炭系の活性炭は、前記の粉炭と比べると、賦活が施された多孔質体である。活性炭の寸法や重量は限定されるものではない。
粉炭や粉炭の灰の粒度は、限定されるものではないが、粉炭(微粉炭)の場合、好ましくは目開き500μmでの篩上残分が0%以上20%以下、より好ましくは目開き100μmでの篩上残分が5%以上20%以下である。粉炭の灰の場合、好ましくは目開き50μmの篩上残分が0%以上20%以下、より好ましくは目開き10μmでの篩上残分が5%以上20%以下である。なお、粒度の分析はレーザー光法でも行うことができる。このレーザー光法では、レーザーを光源とした光散乱式粒度分析計(マイクロトラック)により測定する。粒子(粉炭や粉炭の灰)を分散させるための前処理として分散材トリトンX-100の0.5%水溶液を50mLビーカーに5mLを取り、この中に粉炭や粉炭の灰を1g入れ、浸漬攪拌する。また、500mLビーカーに200mLの水を取り、これに浸漬攪拌した粉炭や粉炭の灰を入れ、さらに攪拌したものを超音波(40kHz)で5分間分散させた後、測定器のコンディショナーにあけ、さらに5分間攪拌した後に測定を行う。
【0009】
活性炭を用いる第二浄化部での浄化の前に、第一浄化部で粉炭又は粉炭の灰を用いて浄化を行う。これにより、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。この場合、粉炭はセメント製造設備等で燃料として用いられる石炭を粉砕したもの等であるので、使用後は燃料として用いることができ、粉炭の灰の処分も容易である。
【0010】
本発明の浄化装置は、好ましくは、前記第一浄化部が、前記粉炭又は前記粉炭の灰の流動層を形成する流動部を備え、前記流動部は、下から上へ前記ガスを流すガス管路と、前記ガス管路の内部を下部と前記流動層を配置する上部とに分けると共に前記ガスを分散する分散板と、を備えている。
流動層を形成することで、排ガスに含まれる有害成分を粉炭又は粉炭の灰に吸着させることができる。流動部は、流入ガス量の変動に対する運転の許容幅が広い利点がある。
【0011】
本発明の浄化装置は、好ましくは、前記第一浄化部が、前記粉炭又は前記粉炭の灰の噴流層を形成する噴流部備え、前記噴流部は、下から上へ前記ガスを流すガス管路と、前記ガス管路の内部を下部と前記噴流層を配置する上部とに分けると共に前記ガスを分散する分散板と、を備えている。
噴流層を形成することで、排ガスに含まれる有害成分を粉炭又は粉炭の灰に吸着させることができる。噴流部は、流動部に比べて大流量のガスを扱える。
【0012】
本発明の浄化装置は、好ましくは、前記ガス管路を通過した前記ガスに含まれる前記粉炭又は前記粉炭の灰を分離する固気分離器をさらに備えている。
固気分離器によって、有害成分が吸着した粉炭又は粉炭の灰を分離することで、有害成分が吸着した粉炭又は粉炭の灰が外部に排出することを防止できる。
【0013】
本発明の浄化装置は、好ましくは、前記ガスをアルカリスクラバーによって浄化する前洗浄部をさらに備え、前記第一浄化部は前記前洗浄部で洗浄された前記ガスを浄化する。
粉炭又は粉炭の灰を用いる第一浄化部での浄化の前に、前洗浄部でガスの浄化を行う。このアルカリスクラバーによって、NOx、SOx、ハロゲン等の有害成分を除去することができるので、第一洗浄部の負担を軽減でき、粉炭又は粉炭の灰の劣化を低減させて長期使用を可能にすることができる。
【0014】
本発明の浄化装置は、好ましくは、前記第一浄化部が前記粉炭の灰によって前記ガスを浄化し、粉炭の灰の強熱減量は、限定されるものではないが、例えば5.5%以上、好ましくは8.0%以上である。
強熱減量が5.5%以上であると、水素炎イオン化形分析計による測定結果から求めた最大VOC除去率を30%以上にすることができる。強熱減量が8.0%以上であると、水素炎イオン化形分析計による測定結果から求めた最大VOC除去率を40%以上にすることができる。ここで、「最大VOC除去率」は、吸着剤として未使用の粉炭や粉炭の灰を充填したカラムにガスを空間速度10000/hで通気後、5分以上15分以下の間におけるVOCの除去率の最大値である。なお、未燃炭素の割合が0であるものが燃焼前の「粉炭」に相当するため、粉炭の灰としては、強熱減量100%未満のものを利用することができる。
粉炭の灰であっても未燃炭素が含まれるので、有害成分を吸着させることが可能であり、かつ粉炭の灰(強熱減量が小さいものも含む。)は従来からセメント原料の粘土代替として利用しているため廃棄処理などを伴うことなく、有効活用できる。
【0015】
本発明は、セメント製造設備に接続されたセメント製造排ガスの処理装置であって、セメント製造排ガスから二酸化炭素(CO2)をCO2吸収液によって回収するCO2回収装置と、前記CO2回収装置でCO2を回収される前の前記セメント製造排ガス又は前記CO2回収装置で前記セメント製造排ガスから回収されたCO2ガスを前記ガスとして、有害成分を除去する前記いずれかに記載の浄化装置と、を備えている。
【0016】
CO2回収装置と浄化装置とによってCO2と有害成分を除去することができ、さらに活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。
また、セメント製造排ガスに含まれるSOx、NOx、ハロゲン等の酸性成分及び、ダスト等の有害成分は、CO2吸収液に影響を与えCO2吸収能力を劣化させたり、CO2回収装置の圧力損失の増加による通気量の減少やガス吸引のためのポンプやファン等の電力量を増加させるおそれがあり、CO2回収前に有害成分を除去することで、アミン化合物の吸収液(CO2吸収液)の劣化を防止するとともに、吸収能力の低下を抑制することができる。また回収後のCO2を用いて例えばメタンやメタノール、オレフィン(ポリオレフィンを含む)などの有価物に転換する場合にもセメント製造排ガス由来の有害成分が触媒等の材料に影響を与える可能性があるため、その触媒等の材料性能の低下を抑制することもできる。
【0017】
ここで、CO2回収用のCO2吸収液への不純物の影響は、化学吸収法及び物理吸着法のいずれもアミン化合物と不純物成分との親和性に大きな差はないと考えられる。CO2の回収では、排ガス中のSOxはCO2吸収液中のアミン化合物と結合し、アミン化合物のCO2吸収能力を阻害し、時間の経過とともに吸収率が大きく低下する。このようにアミン化合物は塩基性が強く、SOx以外のNOx、Cl及びF等のハロゲンはCO2吸収液に吸着される傾向にある。
さらに、回収したCO2ガスに含まれる有害成分を除去することで、メタン化の触媒への影響を低減することができる。例えば、メタン化の触媒として広く用いられるNi触媒は、原料ガスに混在する硫黄化合物により、Ni触媒の表面で硫黄化合物が反応し表面を覆いメタン化の収率を悪化させるため、除去しておく必要がある。同様に、NOx、Cl及びF等のハロゲンについてもNi触媒表面に付着しメタン化の収率を悪化させる可能性があるため、除去しておく必要がある。
【0018】
本発明の浄化方法は、有害成分を含むガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一浄化工程と、前記第一浄化工程を経た前記ガスを活性炭によって浄化する第二浄化工程と、を備え、前記ガスが排ガス又は該排ガスからCO2吸収液によって回収したCO2ガスである。
【0019】
活性炭を用いる第二浄化工程での浄化の前に、第一浄化工程で粉炭又は粉炭の灰を用いて浄化を行う。これにより、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。
【0020】
本発明のセメント製造排ガスの処理方法は、セメント製造排ガスから有害成分を除去する排ガス浄化工程と、前記排ガス浄化工程を経た前記セメント製造排ガスからCO2をCO2吸収液によって回収するCO2回収工程と、を備え、前記排ガス浄化工程は、前記セメント製造排ガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一排ガス浄化工程と、前記第一排ガス浄化工程を経た前記セメント製造排ガスを活性炭によって浄化する第二排ガス浄化工程と、を備えている。
【0021】
CO2を回収する前に有害成分を除去することで、CO2吸収液の劣化などを防止できる。
【0022】
本発明のセメント製造排ガスの処理方法は、好ましくは、前記第一排ガス浄化工程を行う前に、前記セメント製造排ガスをアルカリスクラバーによって浄化するガス洗浄工程をさらに備えている。
ガス洗浄工程を行うことで、粉炭又は該粉炭の灰が吸着性能を発揮する時間を延ばすことができる。
【0023】
本発明のセメント製造排ガスの処理方法は、セメント製造排ガスからCO2をCO2吸収液によって回収するCO2回収工程と、前記CO2回収工程で回収されたCO2ガスから有害成分を除去するCO2浄化工程と、を備え、前記CO2浄化工程は、前記CO2ガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一CO2ガス浄化工程と、前記第一CO2ガス浄化工程を経た前記CO2ガスを活性炭によって浄化する第二CO2ガス浄化工程と、を備えている。
回収したCO2ガスの用途は限定されるものではないが、回収したCO2ガスを用いて例えばメタンやメタノール、オレフィン(ポリオレフィンを含む)などの有価物に転換する場合にもセメント製造排ガス由来の有害成分が触媒等の材料に影響を与える可能性があるため、その触媒等の材料性能の低下を抑制することもできる。
【0024】
本発明のセメントクリンカ製造方法は、セメント製造設備で化石燃料を燃焼させてセメント原料を焼成し更に該セメント原料を冷却してセメントクリンカを製造するセメントクリンカ製造工程と、前記セメント製造設備からのセメント製造排ガス又は/及び該セメント製造排ガスからCO2吸収液によって回収されたCO2ガスを浄化する浄化工程と、を備え、前記浄化工程は、前記セメント製造排ガスを浄化する場合には、前記セメント製造排ガスを粉炭又は該粉炭の灰によって浄化する第一浄化工程と、前記第一浄化工程を経た前記セメント製造排ガスを活性炭によって浄化する第二浄化工程と、を備え、前記CO2ガスを浄化する場合には、前記CO2ガスを前記粉炭又は前記粉炭の灰によって浄化する第一CO2ガス浄化工程と、前記第一CO2ガス浄化工程を経た前記CO2ガスを前記活性炭によって浄化する第二CO2ガス浄化工程と、を備え、前記セメント製造排ガスの浄化と前記CO2ガスの浄化とを行う場合には、前記第一浄化工程と、前記第二浄化工程と、前記第一CO2ガス浄化工程と、前記第二CO2ガス浄化工程と、を備え、前記セメントクリンカ製造工程は、前記浄化工程によって有害成分が付着した前記粉炭、前記粉炭の灰及び前記活性炭の少なくともいずれかを前記セメント製造設備で燃焼させてセメントクリンカ製造に用いる。
【0025】
セメント製造排ガスの浄化又は/及びCO2ガスの浄化に用いた粉炭、粉炭の灰及び活性炭をセメント製造設備でセメントクリンカ製造(焼成や仮焼の燃料代替、または原料代替として)に有効活用することができる。また、有害成分を吸着させる吸着剤として微粉炭を用いる場合、微粉炭の有害成分(VOCなど)の吸着性能は活性炭より低いが、もともとセメント製造での焼成用ロータリキルンや仮焼炉の燃料として購入しているため、有害成分(VOCなど)の除去に伴うランニングコストとしては浄化に伴う電力費用が大半であり、費用が嵩むのを一層抑えて排ガス処理を行うことができる。さらに、粉炭、粉炭の灰及び活性炭の燃焼によって発生する排ガスも処理することができる。また有害成分を吸着させる吸着剤として粉炭の灰(その多くは、火力発電所で発生した産業廃棄物)を用いる場合、粉炭の灰の有害成分(VOCなど)の吸着性能は活性炭より低いが、もともとセメント製造の原料代替として利用しているため、有害成分(VOCなど)の除去に伴うランニングコストとしては浄化に伴う電力費用が大半であり、費用が嵩むのを一層抑えて排ガス処理を行うことができる。さらに、粉炭、粉炭の灰及び活性炭の燃焼によって発生する排ガスも処理することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、活性炭を用いた浄化を行う前に、粉炭又は粉炭の灰を用いた浄化を行うことで、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るセメント製造システムを示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るセメント製造システムの処理装置を示すブロック図である。
【
図3】(a)及び(b)は本発明の第一実施形態に係るセメント製造システムの第一浄化部を示す図である。
【
図4】(a)は微粉炭の吸着性能の時間変化を示すグラフであり、(b)はリファレンスガスで計測されるVOCの濃度の時間変化を示すグラフである。
【
図5】(a)は微粉炭灰とフライアッシュの吸着性能の時間変化を示すグラフであり、(b)はリファレンスガスで計測されるVOCの濃度の時間変化を示すグラフである。
【
図6】VOC除去率の最大値と強熱減量との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の第二実施形態に係るセメント製造システムを示す図である。
【
図8】(a)及び(b)は本発明の処理装置の変形例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の処理装置を備えた火力発電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第一実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の第一実施形態のセメント製造システム1について説明する。
セメント製造システム1は、セメント製造設備10と、このセメント製造設備10に接続されていてセメント製造設備10からのセメント製造排ガス(以下、排ガスと称す。)から有害成分の除去とCO2の回収を行う処理装置20と、を備えている。
【0029】
[セメント製造設備の構成]
セメント製造設備10は、
図1に全体を示したように、セメント原料として石灰石、粘土、珪石、鉄原料等を個別に貯蔵する原料貯蔵庫11と、これらセメント原料を粉砕、乾燥する原料ミル及びドライヤ12と、原料供給管13を介して供給され、この原料ミルで得られた粉体状のセメント原料を予熱するプレヒータ14と、プレヒータ14によって予熱されたセメント原料を仮焼する仮焼炉15と、仮焼されたセメント原料を焼成する焼成用ロータリキルン16と、焼成用ロータリキルン16で焼成された後のセメントクリンカを冷却するためのクーラ17等とを備えている。
【0030】
焼成用ロータリキルン16は、横向きで若干傾斜した円筒状の回転がまであり、軸芯回りに回転することにより、その窯尻部16Aにプレヒータ14から供給されるセメント原料を窯前部16Bに送りながら、その送る過程で窯前部16Bのバーナ161によって1450℃程度に加熱焼成してセメントクリンカを生成し、このセメントクリンカを窯前部16Bからクーラ17に送り出すようになっている。バーナ161には、石炭(微粉炭)、石油等の化石燃料を供給する燃料供給ライン162が接続されている。また、燃料供給ライン162とは別に、熱エネルギーを補うために、廃プラスチックや廃タイヤなどの代替熱源の供給系(図示略)も備えられている。セメントクリンカは、クーラ17で所定温度まで冷却された後、仕上げ工程へ送られることになる。
【0031】
プレヒータ14は、
図1に示すように、焼成用ロータリキルン16で発生した排ガスを流通させる複数のサイクロン141が上下方向に連結状態とされて構築されたものであり、最下段のサイクロン141とその上のサイクロン141との間に仮焼炉15が接続されているとともに、仮焼炉15の燃焼ガスによって仮焼されたセメント原料を最下段のサイクロン141から焼成用ロータリキルン16の窯尻部16Aに供給するようになっている。
【0032】
仮焼炉15は、内部にバーナ151を有しており、燃料供給ライン152から供給される石炭(微粉炭)等の燃料を燃焼させることで、上段のサイクロン141から送られてくるセメント原料を仮焼し、その仮焼により生じた排ガスとともにライジングダクト18を介して最下段のサイクロン141に供給する。そのセメント原料は、最下段のサイクロン141から焼成用ロータリキルン16の窯尻部16Aに供給される。一方、ライジングダクト18は焼成用ロータリキルン16の窯尻部16Aから排ガスを最下段のサイクロン141に送り出しており、仮焼炉15で生じた排ガスも、このライジングダクト18を介してサイクロン141に供給される。このため、焼成用ロータリキルン16の排ガス及び仮焼炉15からの排ガスが一体となってプレヒータ14を下方から上方に経由した後、排気管19を通って原料ミル及びドライヤ12に導入される。
【0033】
原料ミル及びドライヤ12は、仮焼炉15及び焼成用ロータリキルン16からの排ガスが導入されることにより、セメント原料の粉砕と乾燥を同時に行うようになっている。この原料ミル及びドライヤ12には、集塵機121、煙突122等を備える排ガスライン120が接続されている。
【0034】
[処理装置の構成]
図2に示すように、処理装置20は、排ガス収集ライン21と、排ガス収集ライン21からの排ガスを浄化する浄化装置22と、浄化装置22を通過した排ガスからCO
2を回収するCO
2回収装置23と、排ガス戻しライン24と、を備えている。
【0035】
排ガス収集ライン21は、セメント製造設備10の集塵機121から煙突122への排ガスライン120の分岐部21Aに接続していて、煙突122から排出される前の焼成用ロータリキルン16及び仮焼炉15で発生した排ガスを収集する。
排ガス収集ライン21から送られてくる排ガスは、石炭、石油コークス、重油などの化石燃料や廃プラスチックや廃タイヤなどの燃焼排ガスであるため、CO2が例えば、数%~20数%程度含まれるとともに、CO2以外のガスや酸性成分及び有害成分が含まれている。また排ガスは、原料である石灰石由来の排ガス(主にCO2)を多く含んでいる。
【0036】
浄化装置22は、排ガス収集ライン21からの排ガスを浄化する前処理部221と、前処理部221からの排ガスを粉炭又は粉炭の灰によって浄化する第一浄化部222と、第一浄化部222を通過した排ガスを活性炭によって浄化する第二浄化部223と、を備えている。
【0037】
前処理部221は、排ガス中の有害成分の除去を行うものであり、その構成は限定されるものではないが、CO2回収装置23で用いるCO2吸収液へ影響(CO2吸収能力を劣化させたり、CO2回収装置での圧力損失の増加による通気量の減少やガス吸引のためのポンプやファン等の電力量を増加させる等)を及ぼす有害成分を低減するように構成され、さらに好ましくは下流に配置された第一浄化部222や第二浄化部223で用いる吸着剤とは異なる吸着剤を用いる。前処理部221は、例えばNaOH水溶液などを充填したアルカリスクラバーなどの湿式浄化装置(前洗浄部)であり、排ガスから酸性成分(例えば、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガス)、ハロゲン及び一部のVOC等を除去する。乾式の脱硫装置や脱硝装置なども利用することができる。
【0038】
(第一浄化部222)
第一浄化部222は、排ガスが流れる管路内に粉炭又は該粉炭の灰を設けて、粉炭又は粉炭の灰に排ガスに含まれる有害物資を吸着させて、排ガスを浄化する。
第一浄化部222で用いる粉炭は、例えばセメント製造設備10の燃料として用いる石炭を砕いて構成されたものであり、大きさは限定されるものではないが500μm以下の粒径のものを利用することができる。この粉炭が、例えば仮焼炉15や焼成用ロータリキルン16のバーナ151,161の燃料に用いる微粉炭であれば、粒径が100μm程のものも用いることができる。なお、第一吸着剤の粒径は、後述の流動層や噴流層を形成させる場合、粒子の真密度や流すガス種にもよるが、例えば500μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは50μm以上150μm以下である。第一吸着剤の粒径が500μmよりも大きくなると、流動層や噴流層を形成することが難しくなる。
粉炭の灰は、粉炭が燃焼して生じた微粉炭灰やフライアッシュであり、未燃炭素を含んでいてもよく、強熱減量は限定されるものではない。「フライアッシュ」は微粉炭を燃焼して生成される灰であり、JISA6201では四種ある。「微粉炭灰」は、前記のフライアッシュ(JISA6201の四種)に該当しない所謂「非JIS灰」である。
粉炭や粉炭の灰の粒度は、限定されるものではないが、粉炭(微粉炭)の場合、好ましくは目開き500μmでの篩上残分が0%以上20%以下、より好ましくは目開き100μmでの篩上残分が5%以上20%以下である。粉炭の灰の場合、好ましくは目開き50μmの篩上残分が0%以上20%以下、より好ましくは目開き10μmでの篩上残分が5%以上20%以下である。なお、粒度の分析はレーザー光法でも行うことができる。このレーザー光法では、レーザーを光源とした光散乱式粒度分析計(マイクロトラック)により測定する。粒子(粉炭や粉炭の灰)を分散させるための前処理として分散材トリトンX-100の0.5%水溶液を50mLビーカーに5mLを取り、この中に粉炭や粉炭の灰を1g入れ、浸漬攪拌する。また、500mLビーカーに200mLの水を取り、これに浸漬攪拌した粉炭や粉炭の灰を入れ、さらに攪拌したものを超音波(40kHz)で5分間分散させた後、測定器のコンディショナーにあけ、さらに5分間攪拌した後に測定を行う。
以下、粉炭とこの粉炭の灰とを総称する場合の用語として第一吸着剤を用い、粉炭とこの粉炭の灰のいずれにも該当することを意味し、粉炭(微粉炭)の場合、目開き100μmでの篩上残分が5%以上20%以下であり、粉炭の灰の場合、目開き10μmでの篩上残分が5%以上20%以下である場合を前提として、第一吸着剤によって浄化を行う場合を説明する。
【0039】
図3(a)に示すように、第一浄化部222は、第一吸着剤が流動した状態(以下、流動層と称す。)を形成する流動部222Aと、流動部222Aの下流側の端部につながった排ガスの排出管路222Bと、排出管路222Bからの排ガスに含まれる第一吸着剤を分離する固気分離器222Cと、流動部222Aから排出した第一吸着剤を収容する吸着剤貯留部222Dと、を備えている。
流動部222Aは、下から上へガスを流すガス管路222Eと、ガス管路222Eの内部を下部222Fと流動層222Gを配置する上部222Hとに分けると共にガスを分散する分散板222Jと、を備えている。
【0040】
ガス管路222Eの下部222Fは、円錐型排ガス管路として形成されていて、中心軸と直交する半径方向に沿った寸法が上流から下流へ向けて漸次大きくなっていて、内面がテーパ状に下流側へ拡開している。
ガス管路222Eの上部222Hは、円筒体に形成されていて、この円筒体を貫通する吸着剤供給口222Kを設けており、この吸着剤供給口222Kには図示省略の第一吸着剤用の供給管が接続されている。
分散板222Jは、管路内を仕切ると共に、複数の孔が貫通している。また通気のためのノズル構造を有していてもよい。
第一吸着剤が吸着剤供給口222Kからガス管路222Eの上部222Hの内部に入れられ、排ガスと混ざり、ガス管路222Eの上部222Hでは、分散板222Jの複数の孔から流入する排ガスによって、流動層222Gが形成される。この流動層222Gで、排ガスが第一吸着剤に接触することで、排ガスに含まれる有害成分が第一吸着剤に吸着される。この第一吸着剤によって、有害成分として、排ガスから酸性成分(例えば、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガス)、ハロゲン及びVOC等を除去し、有害成分が低減した排ガスは流動層222Gから下流の排出管路222Bへ流れる。
流動部222Aは、流入ガス量の変動に対する運転の許容幅が広い利点がある。
【0041】
さらに、第一浄化部222では、粉炭又は粉炭の灰を分散板222Jより下流の上部222H内に供給し、さらに流動層222Gの一部の粉炭又は粉炭の灰を排ガスが流れる管路の外に排出する。ガス管路222Eの上部222Hには、分岐部222Lが設けられており、この分岐部222Lから吸着剤貯留部222Dに第一吸着剤へ向けて排出される。なお、分岐部222Lは、吸着剤供給口222Kよりも高い位置に設けられていて、溢流口として流動層222Gの表面側の粉炭又は粉炭の灰を排出する。
【0042】
また、ガス管路222Eの上部222Hから下流の排出管路222Bに流れ込む排ガスにも、第一吸着剤が含まれるが、固気分離器222Cにて第一吸着剤が排ガスから分離される。
固気分離器222Cとしては、サイクロン式の分離装置、電気式の集塵機などを用いることができる。
【0043】
(噴流部)
前記の説明では、第一浄化部222が粉炭又は粉炭の灰を流動した状態を構成する場合を説明したが、流動層222Gに代えて、第一吸着剤が噴流した状態(以下、噴流層と称す。)で有害成分を第一吸着剤に吸着させるように、第一浄化部222は構成されてもよい。噴流層を構成する場合は、
図3(b)に示すように、第一浄化部222は、第一吸着剤の噴流層222G′を形成する噴流部222A′と、噴流部222A′の下流側の端部につながった排ガスの排出管路222Bと、排出管路222Bからの排ガスに含まれる第一吸着剤を分離する固気分離器222Cと、噴流部222A′から排出した第一吸着剤を収容する吸着剤貯留部222Dと、を備えている。
噴流部222A′は、下から上へガスを流すガス管路222E′と、ガス管路222E′の内部を下部222Fと噴流層222G′を配置する上部222Hとに分けると共にガスを分散する分散板222Jと、を備えている。
噴流部222A′のガス管路222Eは、前記の流動部222Aのガス管路222Eと比べると、第一吸着剤を排出するための分岐部222Lを省いて構成され、第一吸着剤は固気分離器222Cにて排ガスから分離される。なお、
図3(b)には、
図3(a)の第一浄化部222の構成と同様の構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
噴流部222A′では、第一吸着剤が吸着剤供給口222Kからガス管路222E′の上部222Hの内部に入れられ、排ガスと混ざり、ガス管路222E′の上部222Hでは、分散板222Jの複数の孔から流入する排ガスによって、噴流層222G′が形成される。この噴流層222Gで、排ガスが第一吸着剤に接触することで、排ガスに含まれる有害成分が第一吸着剤に吸着される。この第一吸着剤によって、有害成分として、排ガスから酸性成分(例えば、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガス)、ハロゲン及びVOC等を除去し、有害成分が低減した排ガスは噴流層222Gから下流の排出管路222Bへ流れる。
噴流部222A′は、流入ガス量の変動に対する運転の許容幅は狭いが、大流量のガスを扱える。
【0044】
以下、微粉炭と、微粉炭灰とフライアッシュのVOCの吸着性能について説明する。
【0045】
(微粉炭の吸着性能)
図4(a)は微粉炭の吸着性能の時間変化を示すグラフであり、排ガスの通気に従ってVOCの除去率は低下する傾向にある。共に瀝青炭であるが微粉炭Aと微粉炭Bは異なる炭種(銘柄)である。
【0046】
図4(a)のVOC除去率は、微粉炭A又は微粉炭Bを充填したカラム(固定相)にVOCを含むセメント排ガスから回収したCO
2ガス(移動相)を流し、カラムに流入する前のCO
2ガスから採取バッグにて約3リットルのリファレンスガスを採取すると共にカラムを通過した後のCO
2ガスから採取バッグにて約3リットルのサンプルガスを採取する。CO
2ガスの空間速度を10000/hとしている。この空間時間は、ガスの単位時間あたりの流量q[m
3/h]をカラムに充填した微粉炭の総体積v[m
3]で除した値(=q/v)である。
VOC削減率[%]は、採取したCO
2ガスそれぞれ分析装置を用いて含まれるVOCの濃度[ppmC]を計測し、得られた各計測値と下記の式(1)から算出している。
【0047】
【0048】
なお、分析装置は、水素炎イオン化形分析計(Flame Ionization Detector:以下、FID)であり、株式会社島津製作所製造のFID式VOC分析計(型式:VMS-1000F)を用いた。この分析計では、水素と空気、及び採取したガスが供給されて、水素炎中で燃焼する際に発生するイオン量が、採取したガスに含まれる炭化水素濃度にほぼ比例して増加するため、このイオン量を測定することで、ガス中のVOC濃度[ppmC]が測定される。
図4(b)は各リファレンスガスで計測されるVOCの濃度[ppmC]の時間変化を示している。
【0049】
(微粉炭灰とフライアッシュの吸着性能)
図5(a)は微粉炭灰A,BとフライアッシュCの吸着性能の時間変化を示すグラフであり、それぞれCO
2ガスの通気に従ってVOCの除去率は低下する傾向にある。微粉炭灰A,Bは、所謂「非JIS灰」である。微粉炭灰A,BとフライアッシュCそれぞれの強熱減量を下記の表1に示す。
【0050】
【0051】
図5(a)のVOC除去率は、
図4(a)の微粉炭A,BのVOC除去率と同様に、吸着剤(微粉炭灰A,BとフライアッシュC)を充填したカラムの上流と下流のガスから、リファレンスガスとサンプルガスを採取して、分析装置で計測したそれぞれのVOC濃度と前記の式(1)とから算出している。
図5(b)は各リファレンスガスで計測されるVOCの濃度[ppmC]の時間変化を示している。
【0052】
通気開始から5min以上15min以下の間に行った初回のガスの採取で計測したVOC除去率が最も高いものであり、微粉炭灰Aでは通気開始から5minを経過した時点でのVOC除去率が58.9%であり、微粉炭灰Bでは通気開始から10minを経過した時点でのVOC除去率が43.6%であり、フライアッシュCでは通気開始から20minを経過した時点でのVOC除去率が15.5%である。
これらの測定値からは、吸着剤の強熱減量と吸着性(VOC除去率の最大値)とには
図6に示すように相関関係があり、吸着性能は未燃炭素の割合に依存する可能性があると考えられる。
また、
図6のグラフによれば、破線で指すように、強熱減量が5.5%であると、FIDによる最大VOC除去率は凡そ31%である。また、強熱減量が8.0%以上であると、FIDによる最大VOC除去率は40%である。
なお、強熱減量と未燃炭素の割合に強い相関関係があることは一般的に知られている。このことから、強熱減量が5.5%以上であると、水素炎イオン化形分析計による測定結果から求めた最大VOC除去率を30%以上にすることができ、強熱減量が8.0%以上であると、水素炎イオン化形分析計による測定結果から求めた最大VOC除去率を40%以上にすることができると考えられる。ここで、「最大VOC除去率」は、吸着剤として未使用の粉炭や粉炭の灰を充填したカラムにガスを空間速度10000/hで通気後、5分以上15分以下の間におけるVOCの除去率の最大値である。なお、未燃炭素の割合が0であるものが燃焼前の「粉炭」に相当するため、粉炭の灰としては、強熱減量100%未満のものを利用することができる。
【0053】
(使用済みの第一吸着剤の取り扱い)
第一浄化部222の吸着剤貯留部222Dで捕集された第一吸着剤、つまり有害成分が吸着した第一吸着剤は、焼却処分される。処理装置20に附帯して焼却施設を設けてもよいが、好ましくは吸着剤送付ライン222Mによってセメント製造設備へ送出して、セメント原料を焼成する際の燃料の一部として、第一吸着剤を用いるとよい。なお、
図3(a)及び(b)に一点鎖線で示す分岐ライン222Nを設けて、吸着剤送付ライン222Mの一部を分岐させて吸着剤供給口222Kへ第一吸着剤を送る供給ライン222Pに繋ぐことで第一吸着剤の循環利用することも可能である。これは、VOC濃度が低い場合には第一吸着剤の吸着性能がまだ十分に高い状態であることが多く、第一吸着剤の利用効率をより高めるために行う。第一吸着剤の循環利用する場合、分岐ライン222Nで第一吸着剤を空気などのガスと共に送出する図示省略の送出手段を設ける。
粉炭が焼成用ロータリキルン16のバーナ161で燃焼させる微粉炭であれば、バーナ161の燃料の一部として利用でき、粉炭が仮焼炉15のバーナ151で燃焼させる微粉炭であれば、バーナ151の燃料の一部として利用できる。微粉炭よりも粒径の大きい粉炭の場合は、熱源として利用可能な箇所であればセメント製造工程のどこから投入してもよく、特に限定されない。
また、粉炭の灰は、例えば窯尻部16Aの投入口(図示省略)から投入して、セメントの原料代替として利用できる。なお、粉炭の灰は未燃炭素を含むため発熱量を有することから、セメントの原料代替だけではなく熱源としても利用でき、その際の投入箇所は特に限定されない。
【0054】
(第二浄化部223)
第二浄化部223は、排ガスに含まれる有害成分を活性炭に吸着させて、排ガスを浄化する。
活性炭としては、石炭系、植物系等のものを利用することができ、例えば吸着塔内に充填されて使用に供される。
有害成分が吸着した活性炭は、再生処理を施して繰り返して使用することができる。
また、吸着性能が劣化した活性炭は焼却処分される。処理装置20に附帯して焼却施設を設けてもよいが、好ましくは吸着剤送付ライン223Aによってセメント製造設備へ送出して、セメント原料を焼成する際の燃料の一部として、活性炭を用いるとよい。
活性炭は、例えば窯尻部16Aの投入口(図示省略)から投入して、セメント原料の焼成の際に燃焼させてもよい。
【0055】
なお、石炭系の活性炭は、前記の粉炭と比べると、賦活が施された多孔質体である。石炭系の活性炭の寸法や重量は限定されるものではないが、以下の説明では、石炭系の活性炭が粉炭と比べると、流動層や噴流層を構成し得ない大きさ、且つ重さであり、吸着塔内に充填されている場合を前提に説明する。
【0056】
(CO2回収装置23)
CO2回収装置23は、有害成分を除去した排ガスからCO2を回収する。このCO2回収装置23は、一般的なCO2回収装置からなり、この内部にはCO2を吸収するCO2吸収液(アミン化合物を水に溶解した液体等)が設けられ、有害成分が除去された後の排ガスがこれに接触することにより、排ガス中のCO2がCO2吸収液に吸収される。そして、CO2を吸収したCO2吸収液を加熱する等により、CO2吸収液からCO2を取り出して回収する。
回収したCO2を貯留するためのタンク23Aが設けられている。また、CO2が除去された排ガスを排ガスライン120に戻す排ガス戻しライン24が設けられている。
【0057】
次に、セメント製造システム1における排ガスの処理を説明する。
セメント製造設備10では、セメント原料としての石灰石、粘土、珪石、鉄原料等を粉砕、乾燥させることにより得られた粉体状のセメント原料を予熱し、予熱されたセメント原料を仮焼した後焼成し、これを冷却することによりセメントクリンカが製造される(セメントクリンカ製造工程)。このセメントクリンカの製造に伴い焼成用ロータリキルン16及び仮焼炉15で排ガスが発生する。発生した排ガスは、プレヒータ14を下方から上方に経由した後、排気管19を通って原料ミル及びドライヤ12に導入され、セメント原料の乾燥に用いられた後、集塵機121を介して煙突122から排出される。
【0058】
このセメント製造プロセスにおいて、セメント焼成時に生じた排ガスの一部を排ガスライン120の集塵機121と煙突122との間の分岐部21Aから処理装置20の排ガス収集ライン21に送り出して収集する。
【0059】
次に、処理装置20では、セメント製造設備10からの排ガスを浄化装置22で浄化する(浄化工程)。具体的には、前処理部221、第一浄化部222,第二浄化部223の順で、排ガスは処理される。前処理部221では例えばアルカリスクラバーによって浄化(ガス洗浄工程)を行い、第一浄化部222で排ガスを粉炭又は粉炭の灰によって浄化(第一排ガス浄化工程)を行い,第二浄化部223で排ガスを活性炭によって浄化(第二排ガス浄化工程)を行う。これらにより、排ガスに含まれる、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)、ハロゲン,VOCなどの有害成分を低減する。
そして、CO2回収装置23により、吸収液を用いてCO2を回収する(CO2回収工程)。これにより、CO2はタンク23Aに貯留される。
CO2や有害成分が除去された排ガスは、CO2回収装置23から排ガスライン120の合流部24Aに接続する排ガス戻しライン24へ送られ、煙突から外部へ排気される。また、排ガス戻しライン24に代えて、図示省略の煙突から排気させてもよい。
なお、排ガスライン120において合流部24Aは、分岐部21Aよりも上流に設けられている。
【0060】
第一浄化部222で浄化に用いて有害成分が付着した粉炭や粉炭の灰は、第一浄化部222の吸着剤貯留部222Dよりセメント製造設備10へ送られて、燃料や原料代替の一部として利用される。
また、第二浄化部223で浄化に用いて有害成分が付着した活性炭は、第二浄化部223から取り出されて再生処理が施される。なお、有害成分の吸着性能が劣化した活性炭は、セメント製造設備10へ送られて、燃料の一部として利用される。
なお、排ガスの浄化に用いた粉炭、粉炭の灰及び活性炭を全てセメント製造設備10で燃焼させる場合に限らず、少なくともいずれかをセメント製造設備10で燃焼させるようにしてもよい。
【0061】
実施形態の処理装置20によれば、活性炭を用いる第二浄化部223での浄化の前に、第一浄化部222で第一吸着剤を用いて浄化を行うことで、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。活性炭を再生処理するまでの使用時間の延長は、処理装置20のサイズや段数(浄化処理を行う回数)などの縮小化に寄与し、設備コスト低減に効果がある。活性炭を焼却処分するまでの使用時間の延長は、ランニングコスト低減に効果がある。
活性炭による浄化を行う前に、第一吸着剤を用いた浄化を行っていないと、活性炭の機能を好適な状態を長く維持することができず、活性炭を頻繁に交換することになり、ランニングコストが嵩むことになる。
【0062】
さらに、有害成分を吸着させる吸着剤として微粉炭を用いる場合、微粉炭の有害成分(VOCなど)の吸着性能は活性炭より低いが、もともとバーナ151,161の燃料として購入したものを用いるため、有害成分(VOCなど)の除去に伴うランニングコストとしては処理装置20の運転における電力費用が大半であるため、費用が嵩むのを一層抑えて排ガス処理を行うことができる。
粉炭の灰であっても未燃炭素が含まれるので、有害成分を吸着させることが可能であり、かつ粉炭の灰は従来からセメント原料の粘土代替として利用しているため、廃棄処理などを伴うことなく、有効活用できる。
また、処理装置20では、CO2回収前に有害成分を除去することで、アミン化合物の吸収液(CO2吸収液)の劣化を防止するとともに、吸収能力の低下を抑制することができる。
【0063】
[第二実施形態]
図7に示すセメント製造システム1Aでは、セメント製造プロセスで生じる排ガスを用いてメタンを製造し、このメタンをセメント焼成用の燃料に用いる。セメント製造システム1Aの処理装置20Aは、前記のセメント製造システム1の処理装置20の構成に加えて、メタン化装置25とメタン供給装置26を備えている。
【0064】
メタン化装置25は、CO2回収装置23で回収されたCO2に水素ガスを供給して混合する水素混合部251と、水素が混合されたCO2からメタンを生成するメタン製造部252と、を備えている。
【0065】
水素混合部251は、除湿されたCO2に水素ガスを供給して混合し、加圧する。水素ガスは、再生可能エネルギーを利用した人工光合成、水の分解等によって生成したものを利用することができる。この水素混合部251による水素の添加は、水素が混合されたCO2からメタンを製造しやすい濃度に適宜設定される。メタン製造部252は、水素が混合されたCO2からメタンを生成する。このメタン製造部252は、一般的なメタン製造装置からなり、メタン化に活性を示す触媒(例えば、水素化触媒としてNi、Pt、Pd、Cuが利用されるが、メタン化においては特に、Al2O3、Cr2O3、SiO2、MgAl2O4、TiO2、ZrO2など担持されたNi及びNi合金が触媒として利用される)が充填された反応器(図示省略)を複数備えており、これら反応器に水素が混合されたCO2を供給して反応させることによりメタンを製造する。一般的なメタン化の反応(CO2+4H2→CH4+2H2O)の際の条件は、温度が200℃~700℃、好ましくは200℃~350℃、圧力は0.1~3MPaであり、メタンの反応収率を向上させるため多段で反応させる。
【0066】
メタン供給装置26は、
図7に示すように、メタン化装置25により製造されたメタンを貯留するタンク261と、タンク261に接続され、メタンを窯前部16Bのバーナ161及び仮焼炉15のバーナ151のそれぞれに送るメタン供給ライン262及び図示省略のポンプを備えている。このメタン供給ライン262は、焼成用ロータリキルン16のバーナ161に石炭や石油等の燃料を供給する燃料供給ライン162及び仮焼炉15のバーナ151に石炭等の燃料を供給する燃料供給ライン152のそれぞれに接続されている。
【0067】
セメント製造システム1Aによれば、セメント製造システム1と同様に、排ガス中のVOCを低減することができ、さらにセメント製造設備10からの排ガスから回収したCO2をメタンに変換することにより、セメント製造設備10から排出されるCO2を削減できるとともに、このメタンをセメント焼成用キルン16及び仮焼炉15の代替燃料として使用することでメタンを有効活用できる。
また、セメント製造システム1Aでは、処理装置20Aによって、CO2回収後にCO2ガスから有害成分を除去することで、セメント製造排ガス由来の有害成分が触媒等の材料性能の低下させることを抑制して、回収後のCO2を用いて例えばメタンやメタノール、オレフィン(ポリオレフィンを含む)などの有価物への転換を良好に行うことができる。
【0068】
(処理装置の変形例)
前記の処理装置20,20Aでは、CO2回収装置23の上流に第一浄化部222や第二浄化部223を設けているが、前記のCO2回収装置23では、排ガスから回収する主な対象がCO2であるが、CO2だけを回収する工程ではなく、有害成分の一部もCO2吸収液に吸収されてしまうため、CO2ガスにも有害成分が含まれる。そこで、第一浄化部222や第二浄化部223はCO2回収装置23の下流に配置されてもよい。
【0069】
図8(a)に示す処理装置20Bは、排ガス収集ライン21と、排ガス収集ライン21からの排ガスを浄化する第一浄化装置22Aと、第一浄化装置22Aからの排ガスからCO
2を回収するCO
2回収装置23と、CO
2回収装置23でCO
2が回収された排ガスを排ガスライン120へ送る排ガス戻しライン24と、CO
2回収装置23で排ガスから回収されたCO
2ガスを浄化する第二浄化装置22Bと、第二浄化装置22Bによって有害成分が低減されたCO
2ガスを用いてメタンを生成するメタン化装置25とを備えている。
前記の処理装置20,20Aと同等の構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
第一浄化装置22Aは、排ガス中の有害成分の除去を行うものであり、前処理部221を備えている。
第二浄化装置22Bは、第一CO2ガス浄化工程としてCO2回収装置23で排ガスからCO2吸収液によって回収されたCO2ガスを粉炭又は粉炭の灰によって浄化する第一浄化部222と、第二CO2ガス浄化工程として第一浄化部222を通過したCO2ガスを活性炭によって浄化する第二浄化部223と、を備えている。
処理装置20Bによれば、前記の処理装置20と同様に、排ガス中の有害成分を除去することができると共に、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。さらに、処理装置20Bによれば、回収したCO2ガスから有害成分を除去することで、メタン化の触媒への影響を低減することができる。
第一浄化部222でCO2ガスの浄化に用いて有害成分が付着した粉炭や粉炭の灰は、第一浄化部222の吸着剤貯留部222Dよりセメント製造設備10へ送られて、燃料や原料代替の一部として利用される。
また、第二浄化部223でCO2ガスの浄化に用いて有害成分が付着した活性炭は、第二浄化部223から取り出されて再生処理が施される。なお、有害成分の吸着性能が劣化した活性炭は、セメント製造設備10へ送られて、燃料の一部として利用される。
なお、CO2ガスの浄化に用いた粉炭、粉炭の灰及び活性炭を全てセメント製造設備10で燃焼させる場合に限らず、少なくともいずれかをセメント製造設備10で燃焼させるようにしてもよい。
【0071】
図8(b)に示す処理装置20Cは、排ガス収集ライン21と、排ガス収集ライン21からの排ガスを浄化する浄化装置22と、浄化装置22からの排ガスからCO
2を回収するCO
2回収装置23と、CO
2回収装置23でCO
2が回収された排ガスを排ガスライン120へ送る排ガス戻しライン24と、CO
2回収装置23で排ガスから回収されたCO
2ガスを浄化する第二浄化装置22Bと、第二浄化装置22Bによって有害成分が低減されたCO
2ガスを用いてメタンを生成するメタン化装置25とを備えている。
前記の処理装置20,20A,20Bと同等の構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
処理装置20Cによれば、前記の処理装置20と同様に、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。さらに、処理装置20Cによれば、処理装置20Bと同様に、回収したCO
2ガスから有害成分を除去することで、メタン化の触媒への影響を低減することができる。処理装置20Cにおいても、セメント製造設備10からの排ガスの浄化と、CO
2ガスの浄化とに用いて有害成分が付着した粉炭、粉炭の灰、活性炭を、セメント製造設備10へ送って、燃料の一部として利用することができる。
なお、排ガスの浄化とCO
2ガスの浄化とに用いた粉炭、粉炭の灰及び活性炭を全てセメント製造設備10で燃焼させる場合に限らず、少なくともいずれかをセメント製造設備10で燃焼させるようにしてもよい。
【0072】
本発明は上記の実施形態に限らず実施をすることができる。
浄化装置や処理装置は、セメント製造設備に限らず、排ガスを排出する設備に対して利用することができる。
【0073】
例えば
図9に示す火力発電システム2は、火力発電所30と処理装置20とを備えていて、処理装置20が火力発電所30から排出される排ガスの一部を処理する。処理装置20では、集塵機121′から煙突122へ排ガスを送る排ガスライン120′に接続された排ガス収集ライン21と、排ガス収集ライン21から送られてくる火力発電所30から排ガスを浄化する浄化装置22と、浄化装置22で浄化した排ガスからCO
2を回収するCO
2回収装置23と、CO
2回収装置23でCO
2が回収された排ガスが排ガス戻しライン24によって火力発電所30の排ガスライン120′へ戻す排ガス戻しライン24と、を備えている。前記のセメント製造システム1や処理装置20などと同等の構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
このような、火力発電所からの排ガスを浄化する場合にも、処理装置20では、活性炭を用いる第二浄化部223での第二浄化工程の前に、第一浄化部222で第一吸着剤を用いて第一浄化工程を行うことで、活性炭を再生処理するまでの使用時間、性能劣化により焼却処分するまでの使用時間を延ばすことができる。回収したCO
2はタンク23Aなどで貯留される。VOCなどの吸着に利用された第一吸着剤(粉炭や粉炭の灰)や活性炭は、第一浄化部222や第二浄化部223から吸着剤送付ライン27A,27Bによって火力発電所へ送られて燃料の一部として利用することができる。
【0074】
また、少なくとも第一浄化工程として有害成分を含む排ガスやこの排ガスから回収したCO2ガスの浄化を粉炭又は粉炭の灰を用いて行う第一浄化部と、第二浄化工程として第一浄化工程を経た排ガスやCO2ガスに対して活性炭を用いて浄化を行う第二浄化部とを備えた浄化装置は、塗装設備、接着設備、印刷設備、工業用洗浄設備、VOC貯蔵設備などでも利用することができ、VOCなどの有害成分を低減させることができる。
【0075】
第一浄化部は、流動層又は噴流層を形成する構成に代えて、粉炭又は粉炭の灰を充填した吸着塔を利用することもできる。
【0076】
また、浄化に使用した微粉炭や排ガスを用いて生成したメタンを焼成用ロータリキルン16及び仮焼炉15の両方に供給するようにしたが、いずれか一方に供給するようにしてもよい。
さらに、焼成用ロータリキルン16及び仮焼炉15の両方の排ガスを処理したが、仮焼炉を有しないセメント製造設備への適用も可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A セメント製造システム
2 火力発電システム
10 セメント製造設備
20,20A,20B,20C 処理装置
22,22A,22B 浄化装置
221 前処理部(前洗浄部)
222 第一浄化部
223 第二浄化部
222G 流動層
222G′ 噴流層
222A 流動部
222A′ 噴流部
222E,222E′ ガス管路
222F 下部
222H 上部
222J 分散板
222L 分岐部
222C 固気分離器
23 CO2回収装置
25 メタン化装置
26 メタン供給装置
30 火力発電所