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特開2024-172153粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム
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  • 特開-粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172153
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20241205BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J133/00
C09J133/26
C09J11/06
C09J133/06
C09J175/04
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089694
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA03
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD02
4J004CE01
4J004DA01
4J004EA06
4J004FA10
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040DF101
4J040EF022
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA22
4J040HA326
4J040HB06
4J040HB18
4J040HB30
4J040HC22
4J040HC24
4J040HD43
4J040JA01
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA32
4J040LA09
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
4J040PA20
4J040PA23
4J040PA33
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】加熱経時後の剥離力および汚染性の試験に関して、加熱試験条件が厳しくなっても要求を満足することができる、粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルムを提供する。
【解決手段】アクリル系ポリマーが、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部と、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドの少なくとも1種と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上とを共重合させた共重合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部のうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部と、さらに共重合可能なモノマー群として、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドの少なくとも1種と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上とを共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、
前記粘着剤組成物が、さらに(E)帯電防止剤と、(F)架橋促進剤と、(G)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドが、N-n-ペンチルアクリルアミド、N-tert-ペンチルアクリルアミド、N-n-ヘキシルアクリルアミド、N-tert-ヘキシルアクリルアミド、N-n-ヘプチルアクリルアミド、N-tert-ヘプチルアクリルアミド、N-n-オクチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-n-ノニルアクリルアミド、N-tert-ノニルアクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドを0.1~10重量部の割合で含有してなることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中のジエステル分が0.2%以下であり、
前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、水酸基を含有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、水酸基を含有しないメトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを1~50重量部の割合で含有してなることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(E)帯電防止剤が、ペンタフルオロフェニル(C基)を有するボレートアニオンとカチオンとからなり、融点が25℃以上のイオン性化合物であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(E)帯電防止剤を0.1~10重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記イオン性化合物のカチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、アンモニウムからなるカチオン群から選択した1種であることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(F)架橋促進剤が、アルミキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(F)架橋促進剤を0.001~0.5重量部と、前記(G)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部との割合で含有してなり、前記(G)ケトエノール互変異性体化合物と前記(F)架橋促進剤との重量部比率が70~1000であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記架橋剤が2官能以上のポリイソシアネート化合物であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記架橋剤を0.1~5重量部の割合で含有してなることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
樹脂フィルムの片面に、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層させたことを特徴とする粘着フィルム。
【請求項10】
ガラス板の片面上に、低反射表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて粘着剤を介して貼合した後、前記粘着剤層を厚さ38μmのポリエステル基材に積層させた粘着フィルムを前記偏光板の表面に貼合し、23℃、50%RHの環境下で3日および30日の期間に渡って保管した後に前記粘着フィルムを剥がし、前記偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察して、前記偏光板の表面に一切汚染が無く、
且つ、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層で表面処理された偏光板に貼り合わされた前記粘着フィルムを25mm幅で剥離角度180°、剥離速度300mm/minおよび30m/minで剥離した際に、(1)貼り合わせ20分後に剥離、(2)60℃90%RH×1000hr放置後に剥離、(3)85℃dry×1000hr放置後に剥離、のそれぞれの粘着力を測定して、(1)貼り合わせ20分後の粘着力を1としたときに、(2)および(3)の耐久経時条件後の粘着力が1.5以下であることを特徴とする請求項9に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、且つ、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層に対する前記粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3kV以上+0.3kV以下であることを特徴とする請求項9に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている請求項9に記載の粘着フィルム。
【請求項13】
請求項9に記載の粘着フィルムが用いられた、帯電防止表面保護フィルム。
【請求項14】
請求項9に記載の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項15】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている、粘着剤付き光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面保護フィルム用粘着剤には、架橋剤と反応させる官能基をアクリル系ポリマー付与するために水酸基含有モノマーを使用したり、剥離帯電性能、汚染性、粘着力を保持するためにカルボキシル基含有モノマーを併用したりしていた。近年、加熱経時後の剥離力および汚染性の試験に関して、加熱試験条件が厳しくなっても要求を満足することが難しくなってきていた。またカルボキシル基含有モノマーを用いることで架橋速度を向上する効果もあったため、代替する材料選定に苦慮していた。
【0003】
水酸基含有モノマーと併用することで性能を向上する効果が提案されている材料としてはアクリルアミド系化合物がある(例えば、特許文献1を参照)。しかし、アクリルアミドは労働安全衛生法上の規制があり、近年使用することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-216738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱経時後の剥離力および汚染性の試験に関して、加熱試験条件が厳しくなっても要求を満足することができる、粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部のうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部と、さらに共重合可能なモノマー群として、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドの少なくとも1種と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上とを共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、前記粘着剤組成物が、さらに(E)帯電防止剤と、(F)架橋促進剤と、(G)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなる。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上である。
【0008】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドが、N-n-ペンチルアクリルアミド、N-tert-ペンチルアクリルアミド、N-n-ヘキシルアクリルアミド、N-tert-ヘキシルアクリルアミド、N-n-ヘプチルアクリルアミド、N-tert-ヘプチルアクリルアミド、N-n-オクチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-n-ノニルアクリルアミド、N-tert-ノニルアクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドを0.1~10重量部の割合で含有してなる。
【0009】
本発明の第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中のジエステル分が0.2%以下であり、前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、水酸基を含有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、水酸基を含有しないメトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを1~50重量部の割合で含有してなる。
【0010】
本発明の第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記(E)帯電防止剤が、ペンタフルオロフェニル(C基)を有するボレートアニオンとカチオンとからなり、融点が25℃以上のイオン性化合物であり、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(E)帯電防止剤を0.1~10重量部の割合で含有する。
【0011】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記イオン性化合物のカチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、アンモニウムからなるカチオン群から選択した1種である。
【0012】
本発明の第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記(F)架橋促進剤が、アルミキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記(F)架橋促進剤を0.001~0.5重量部と、前記(G)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部との割合で含有してなり、前記(G)ケトエノール互変異性体化合物と前記(F)架橋促進剤との重量部比率が70~1000である。
【0013】
本発明の第8の態様は、第1~7のいずれか1の態様において、前記架橋剤が2官能以上のポリイソシアネート化合物であり、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、前記架橋剤を0.1~5重量部の割合で含有してなる。
【0014】
本発明の第9の態様は、樹脂フィルムの片面に、第1~8のいずれか1の態様の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を積層させたことを特徴とする粘着フィルムである。
【0015】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、ガラス板の片面上に、低反射表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて粘着剤を介して貼合した後、前記粘着剤層を厚さ38μmのポリエステル基材に積層させた粘着フィルムを前記偏光板の表面に貼合し、23℃、50%RHの環境下で3日および30日の期間に渡って保管した後に前記粘着フィルムを剥がし、前記偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察して、前記偏光板の表面に一切汚染が無く、且つ、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層で表面処理された偏光板に貼り合わされた前記粘着フィルムを25mm幅で剥離角度180°、剥離速度300mm/minおよび30m/minで剥離した際に、(1)貼り合わせ20分後に剥離、(2)60℃90%RH×1000hr放置後に剥離、(3)85℃dry×1000hr放置後に剥離、のそれぞれの粘着力を測定して、(1)貼り合わせ20分後の粘着力を1としたときに、(2)および(3)の耐久経時条件後の粘着力が1.5以下である。
【0016】
本発明の第11の態様は、第9または第10の態様において、前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、且つ、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層に対する前記粘着剤層の剥離帯電圧が-0.3kV以上+0.3kV以下である。
【0017】
本発明の第12の態様は、第9~11のいずれか1の態様において、前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が形成された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理がされている。
【0018】
本発明の第13の態様は、第9~12のいずれか1の態様の粘着フィルムが用いられた、帯電防止表面保護フィルムである。
本発明の第14の態様は、第9~12のいずれか1の態様の粘着フィルムが用いられた、偏光板用の帯電防止表面保護フィルムである。
本発明の第15の態様は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、第1~8のいずれか1の態様の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている、粘着剤付き光学フィルムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着剤組成物、粘着フィルム、帯電防止表面保護フィルム、偏光板用の帯電防止表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルムによれば、(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドを使用することで、加熱経時後の剥離力および汚染性の試験に関して、加熱試験条件が厳しくなっても要求を満足することができる。
【0020】
(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドがN-n-アルキルアミドである場合は、脂肪酸に由来する(直鎖の)n-アルキル基を有するモノマーがバイオマスモノマーにも分類されるため、環境配慮型になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】粘着フィルムが貼り合わされた偏光板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0023】
実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する。前記アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部のうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~50重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を50~99重量部と、さらに共重合可能なモノマー群として、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドの少なくとも1種と、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上とを共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーである。前記粘着剤組成物は、さらに(E)帯電防止剤と、(F)架橋促進剤と、(G)ケトエノール互変異性体化合物とを含有してなる。
【0024】
前記アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーと、(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドと、(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、のみからなる共重合体でもよく、さらにこれら以外のモノマーを含む共重合体でもよい。前記アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーのみを共重合させることが好ましい。
【0025】
本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとは、(メタ)アクリレートを重合性官能基とするモノマーである。(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートのいずれか一方でもよく、両方の併用でもよい。
【0026】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートのうち、アルキル基の炭素数がC1~C18の範囲内にあるモノマーである。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、非環状(直鎖状、分枝状)、環状のいずれでもよい。以下の説明では、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部を「(A)の合計100重量部」という場合がある。
【0027】
前記アクリル系ポリマーは、(A)の合計100重量部のうち、(a1)を1~50重量部と、(a2)を50~99重量部とを共重合させている。(a1)と(a2)との比率としては、例えば、1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50から選択される、いずれか2点を両端とする範囲が挙げられる。
【0028】
(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーのアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0029】
(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーのアルキル基としては、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、イソミリスチル、イソステアリル、シクロペンチル、シクロヘキシル等から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0030】
前記アクリル系ポリマーにおいて、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーは、後述する(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーに該当しない化合物である。
【0031】
(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドとしては、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの割合としては、特に限定されないが、(A)の合計100重量部に対して、1~50重量部が挙げられる。(B)の割合としては、例えば、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部から選択される、いずれか2点を両端とする範囲が挙げられる。
【0033】
(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドとしては、一般式がCH=CHCONHR(ただし、Rは炭素数がC5~C12のアルキル基)で表される化合物が挙げられる。(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドの割合としては、(A)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部の割合が挙げられる。
【0034】
(C)アルキル基の炭素数がC5~C12のN-アルキルアクリルアミドとしては、N-n-ペンチルアクリルアミド、N-tert-ペンチルアクリルアミド、N-n-ヘキシルアクリルアミド、N-tert-ヘキシルアクリルアミド、N-n-ヘプチルアクリルアミド、N-tert-ヘプチルアクリルアミド、N-n-オクチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-n-ノニルアクリルアミド、N-tert-ノニルアクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上が挙げられる。
【0035】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、一般式が、CH=CH(R)COO(RO)(ただし、Rは水素原子またはメチル、Rはアルキレン、Rは水素原子またはメチル、エチル等のアルキル)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
が水素原子なら、(D)はアクリレートであり、Rがメチルなら、(D)はメタクリレートである。Rのアルキレンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。Rが水素原子なら、(D)は水酸基を含有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。Rがメチルなら、(D)は水酸基を含有しないメトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。Rがエチルなら、(D)は水酸基を含有しないエトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0037】
nは、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイド(RO)の繰り返し数である。(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーのポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数としては、3~14が挙げられる。
【0038】
(D)は、不純物としてジエステル分を含有する場合がある。ジエステル分は、例えば、一般式がCH=CH(R)CO-O(RO)-COCH(R)=CHで表される化合物である。(D)の中のジエステル分が0.2%以下であることが好ましい。(D)として、ジエステル分を含有しない化合物を用いてもよい。
【0039】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、水酸基を含有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、水酸基を含有しないメトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、水酸基を含有しないエトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上が挙げられる。
【0040】
(D)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの割合としては、(A)の合計100重量部に対して、1~50重量部の割合が挙げられる。(D)の割合としては、例えば、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部から選択される、いずれか2点を両端とする範囲が挙げられる。
【0041】
前記アクリル系ポリマーとして用いられる共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレート系モノマーや(メタ)アクリルアミド系モノマー等のアクリル系モノマーを50~100重量%含むことが好ましい。
【0042】
前記粘着剤組成物は、(E)帯電防止剤を含有する。(E)帯電防止剤としては、アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物としては、融点は25℃以上のイオン性化合物が好ましく、温度25℃で固体のイオン性化合物であることが好ましい。(E)帯電防止剤の割合としては、(A)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部の割合が挙げられる。
【0043】
前記イオン性化合物のアニオンとしては、ボレートアニオンが好ましく、ペンタフルオロフェニル(C基)を有するボレートアニオンがより好ましい。ボレートアニオンは、4個の有機基を有してもよく、そのうち1以上がC基であってもよい。より具体的には、式(Cで表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンが挙げられる。
【0044】
前記イオン性化合物のカチオンとしては、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、アンモニウムからなるカチオン群から選択した1種が挙げられる。これらのうちリチウム(Li)以外のカチオンは、1または2以上の置換基を有してもよい。置換基としては、アルキル、フェニル、ベンジル等の炭化水素基が挙げられる。
【0045】
前記粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤は、アクリル系ポリマーの官能基と反して架橋することが好ましい。架橋剤の割合としては、(A)の合計100重量部に対して、0.1~5重量部の割合が挙げられる。架橋剤の具体例としては、2官能以上のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0046】
ポリイソシアネート化合物は、芳香族系でもよく、脂肪族系でもよく、2官能でもよく、3官能以上でもよい。芳香族系のイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の化合物、またはこれらから誘導される化合物が挙げられる。脂肪族系のイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の化合物、またはこれらから誘導される化合物が挙げられる。
【0047】
2官能イソシアネート化合物としては、TDI、XDI、MDI、HDI、IPDI等の一般式がOCN-A-NCO(ただし、Aは2価の有機基で表される化合物)でもよい。また、これらの化合物を一般式がHO-A-OH(ただし、Aは2価の有機基で表される化合物)で表されるジオール化合物と反応させて得られる化合物でもよい。ジオール化合物と反応させて得られる化合物の一般式は、例えば、OCN-A-(NHCO-O-A-O-CONH-A-NCO(ただし、pは1以上の整数)であってもよい。
【0048】
前記ジオール化合物としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールモノヒドロキシピバレート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。
【0049】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。前記アダクト体としては、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体が挙げられる。
【0050】
前記粘着剤組成物は、(F)架橋促進剤を含有する。(F)架橋促進剤の割合としては、(A)の合計100重量部に対して、0.001~0.5重量部の割合が挙げられる。(F)架橋促進剤としては、アルミキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された、少なくとも1種以上の金属キレート化合物が挙げられる。
【0051】
前記粘着剤組成物は、(G)ケトエノール互変異性体化合物を含有する。(G)ケトエノール互変異性体化合物の割合としては、(A)の合計100重量部に対して、0.1~300重量部の割合が挙げられる。(G)ケトエノール互変異性体化合物と(F)架橋促進剤との重量部比率は、(G)/(F)の比の値として、70~1000であることが好ましい。
【0052】
(G)ケトエノール互変異性体化合物としては、アセト酢酸エステルやβ-ジケトン等が挙げられる。アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等が挙げられる。β-ジケトンとしては、アセチルアセトン(別名2,4-ペンタンジオン)、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。
【0053】
(F)架橋促進剤に用いられる金属キレート化合物は、アセト酢酸エステルやβ-ジケトン等のケトエノール互変異性体化合物から誘導される多座配位子を有することが好ましい。金属キレート化合物に含まれる多座配位子は、粘着剤組成物に含まれる(G)ケトエノール互変異性体化合物と同一の構造を有してもよく、異なる構造を有してもよい。
【0054】
実施形態の粘着剤組成物は、以上の例示以外にも、任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、シランカップリング剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0055】
実施形態の粘着剤組成物は、粘着フィルムに用いることができる。粘着フィルムとしては、図2に示すように、樹脂フィルム等の基材12の片面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層11を積層させた構成が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル基材が挙げられる。樹脂フィルムの片面の、粘着剤層11が形成された側とは反対面13には、帯電防止処理および防汚処理(図示せず)がされてもよい。
【0056】
実施形態の粘着剤組成物を用いた粘着フィルム10は、偏光板20に貼り合わされたときの剥離力および汚染性を試験したとき、所定の要求水準を満足することが好ましい。試験体に用いられる基材12は、厚さ38μmのポリエステル基材である。偏光板20は、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層21で表面処理されている。
【0057】
剥離力に関する要求水準は、粘着フィルム10を25mm幅で剥離角度180°、剥離速度300mm/minおよび30m/minで剥離した際、次の6通り:(1a)~(3a)および(1b)~(3b)の粘着力を測定して、貼り合わせ20分後の粘着力を1としたときに、耐久経時条件後の粘着力が1.5以下である。
【0058】
剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、(1a)貼り合わせ20分後に剥離、(2a)60℃90%RH×1000hr放置後に剥離、(3a)85℃dry×1000hr放置後に剥離、のそれぞれの粘着力を測定する。(1a)の粘着力を1としたときの、(2a)および(3a)の粘着力の比の値を算出する。
【0059】
剥離角度180°、剥離速度30m/minの条件で、(1b)貼り合わせ20分後に剥離、(2b)60℃90%RH×1000hr放置後に剥離、(3b)85℃dry×1000hr放置後に剥離、のそれぞれの粘着力を測定する。(1b)の粘着力を1としたときの、(2b)および(3b)の粘着力の比の値を算出する。
【0060】
汚染性に関する要求水準は、ガラス板(図示せず)の片面上に、低反射表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて粘着剤を介して貼合した後、粘着剤層11を厚さ38μmのポリエステル基材12に積層させた粘着フィルム10を偏光板20の表面に貼合し、23℃、50%RHの環境下で3日および30日の期間に渡って保管した後に粘着フィルム10を剥がし、偏光板20の表面の汚染状態を目視にて観察して、偏光板20の表面(具体的には低屈折率層21)に一切汚染が無いことである。
【0061】
実施形態の粘着剤組成物を用いた粘着フィルム10は、粘着剤層11の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。さらに、フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層21に対する粘着剤層11の剥離帯電圧が-0.3kV以上+0.3kV以下であることが好ましい。
【0062】
実施形態の粘着剤組成物を用いた粘着フィルム10は、帯電防止表面保護フィルムに用いることができる。特に、偏光板用の帯電防止表面保護フィルムに用いることが好ましい。偏光板等の被着体に貼合される前の粘着フィルム10は、粘着剤層11の粘着面を保護するため、離型フィルム(セパレーター)を用いてもよい。離型フィルムとしては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。離型フィルムは、離型剤、コート剤、防汚処理、帯電防止処理を施したものでもよい。
【0063】
実施形態の粘着剤組成物を用いた粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0064】
偏光フィルム等の偏光板の表面に施されている表面処理としては、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された少なくとも1種以上であってもよい。ここで、AGとはアンチグレア(Anti-Glare)、LRとはローリフレクション(Low-Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti-Reflection)である。
【0065】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【実施例0066】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0067】
<アクリル系ポリマーの製造>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、表1に示すモノマーを、(a1)と(a2)との合計が100重量部となるように加えるとともに、溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0068】
【表1】
【0069】
表1において、(a1)群としては、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)を用いた。
また、(a2)群としては、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、イソオクチルアクリレート(IOA)、イソノニルアクリレート(INA)を用いた。
【0070】
(B)群としては、8-ヒドロキシオクチルアクリレート(8HOA)、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート(6HHA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を用いた。
【0071】
(C)群としては、N-tert-ヘキシルアクリルアミド(THAM)、N-n-オクチルアクリルアミド(OAM)、N-n-ノニルアクリルアミド(NAM)を用いた。
表1の「COOH」は、カルボキシル基を含有するモノマーを表し、比較例1~2にアクリル酸(Aac)を用いた。
【0072】
(D)群としては、n=12のポリプロピレングリコールモノアクリレート(D-1)、n=8のメトキシポリエチレングリコールアクリレート(D-2)、n=9のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(D-3)、n=13のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(D-4)、n=22のエトキシポリエチレングリコールアクリレート(D-5)を用いた。D-1~D-4はジエステル分の割合が0.2%以下であり、D-5はジエステル分0.8%を含む。
【0073】
<粘着剤組成物および粘着フィルムの製造>
上述したアクリル系ポリマー溶液に対して、表2に示す添加剤を加えて撹拌混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した。乾燥後の粘着剤を厚さ38μmのポリエステル基材に積層させ、粘着フィルムを得た。
【0074】
【表2】
【0075】
表2の「3官能」は3官能イソシアネート化合物を表し、コロネート(登録商標)HX、HL、Lおよびタケネート(登録商標)D-110N、D-127N、D-140Nを用いた。「HX」はHDIイソシアヌレート体、「HL」はHDIアダクト体、「L」はTDIのTMPアダクト体、「D-110N」はXDIのTMPアダクト体、「D-127N」は水添XDIイソシアヌレート体、「D-140N」はIPDIアダクト体である。
【0076】
表2の「2官能」は、ジイソシアネートとジオールをモル比(NCO/OH)=16の比率で混合し、120℃で3時間反応させた後、薄膜蒸発装置を使用して減圧下で未反応のジイソシアネートを除去して得られた化合物である。「G-1」は、ジイソシアネートにHDI、ジオールに分子量400のポリエチレングリコール(PEG)を用いて得られた。「G-2」は、ジイソシアネートにHDI、ジオールに2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールモノヒドロキシピバレートを用いて得られた。
【0077】
(E)群としては、「E-1」がトリフェニルメチリウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、「E-2」が1-ノニルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、「E-3」が1-オクチルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、「E-4」が1-ドデシルピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、「E-5」がリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、「E-6」が1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート塩である。E-1~E-5の融点は全て25℃以上であり、E-6の融点は15℃である。
【0078】
(F)群としては、チタン(Ti)キレートとして、チタニウムトリスアセチルアセトネート、鉄(Fe)キレートとして、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)を用いた。(G)群としては、アセチルアセトン(AA)、アセト酢酸エチル(EtAcAc)を用いた。表1~2で上記の略記号に続く数値は、重量部である。
【0079】
<粘着力の測定方法>
フッ素化合物を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成された低屈折率層で表面処理された偏光板に貼り合わされた粘着フィルムを25mm幅で剥離角度180°、剥離速度300mm/minおよび30m/minで剥離した。上述した(1a)~(3a)および(1b)~(3b)に従い、表3に示すように、6通りの粘着力を測定した。初期粘着力に対する耐久経時条件後の比率の粘着力の比率は、(1a)の粘着力に対して(2a)および(3a)の粘着力が何倍で、(1b)の粘着力に対して(2b)および(3b)の粘着力が何倍であるかを示す。
【0080】
<表面抵抗率および剥離帯電圧の測定方法>
表4の表面抵抗率は、粘着力の測定方法において、偏光板に粘着フィルムを貼り合わせる前に、抵抗率計を用いて測定した。表面抵抗率の値は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは小数、nは整数)により表記した。表4の剥離帯電圧は、上述の(4)貼り合わせ20分後に、剥離角度180°、剥離速度30m/minの剥離試験条件で剥離するときに、偏光板が帯電して発生する電圧(帯電圧)を、静電気センサを用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0081】
<汚染性の評価方法>
ガラス板の片面上に、表4の「表面処理」に示す低反射表面処理(LRまたはAG-LR)を施した偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層を介して貼合して、被着体を作製した。ガラス板と偏光板との貼合に用いる粘着剤層は、粘着フィルムの粘着剤層とは異なる。前記被着体のうち偏光板の表面に、貼合機を用いて粘着フィルムを貼合した。粘着フィルムを貼合した前記被着体を、23℃、50%RHの環境下で3日および30日の期間に渡って保管した後に、前記被着体から粘着フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察した。表4の汚染性は、偏光板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
実施例1~6の粘着剤組成物を用いた粘着フィルムによれば、耐久経時条件後の剥離力および汚染性の試験に関し、厳しい条件に対しても、要求を満足することができた。
比較例1~2の粘着剤組成物を用いた粘着フィルムは、厳しい条件に対して、要求を満足することができなかった。
【符号の説明】
【0085】
10…粘着フィルム、11…粘着剤層、12…基材、13…反対面、20…偏光板、21…低屈折率層。
図1