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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172292
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ペレット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/90 20060101AFI20241205BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20241205BHJP
   B29B 7/20 20060101ALI20241205BHJP
   B29B 9/14 20060101ALI20241205BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20241205BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20241205BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241205BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20241205BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B29B7/90
B29B9/06
B29B7/20
B29B9/14
C08J5/04 CFD
C08L67/04
C08K7/14
C08G63/06
B29K67:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089902
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】山下(常田) ゆきな
(72)【発明者】
【氏名】古▲高▼ 英浩
【テーマコード(参考)】
4F072
4F201
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB09
4F072AD37
4F072AD54
4F072AG05
4F072AH04
4F072AH23
4F201AA24
4F201AB16
4F201AB25
4F201AG14
4F201AR12
4F201AR20
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC13
4F201BD04
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK74
4F201BL08
4F201BL25
4J002CF181
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GB00
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
4J029AA02
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD05
4J029AD09
4J029AE01
4J029EB05A
4J029EC06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB161
4J029JC261
4J029KD01
4J029KE03
4J029KE06
4J029KF04
(57)【要約】
【課題】高温環境下でのガス(特に高沸点成分)の発生が抑制された成形品を形成可能なペレットを提供すること。
【解決手段】液晶ポリエステルと、繊維状フィラー(A)と、を含むペレットであって、前記繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、前記ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される前記繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)が、3500以上20000以下である、ペレット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルと、繊維状フィラー(A)と、を含むペレットであって、
前記繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、前記ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される前記繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)が、3500以上20000以下である、ペレット。
【請求項2】
前記繊維状フィラー(A)の含有割合Cが、0.05以上0.4以下である、請求項1に記載のペレット。
【請求項3】
前記スポットの円相当径の平均値が、9μm以上13μm以下である、請求項1に記載のペレット。
【請求項4】
前記繊維状フィラー(A)がガラス繊維を含む、請求項1に記載のペレット。
【請求項5】
前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位を含有する、請求項1に記載のペレット。
【請求項6】
前記単量体単位の含有量が、前記液晶ポリエステルを構成する全単量体単位の合計に対して、50モル%以上である、請求項5に記載のペレット。
【請求項7】
液晶ポリエステルと繊維状フィラーとの溶融混練及び成形により、ペレットを得る工程を含み、
前記工程が、前記ペレット中の繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、前記ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される前記繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)が、3500以上20000以下となるように、前記溶融混練及び前記成形を行う工程である、
ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、流動性、耐熱性及び寸法精度が高いことから、各種用途に使用されている。
【0003】
液晶ポリエステルは、通常、用途に応じた要求特性を満たすために、充填材等を含有させた液晶ポリエステル組成物として使用されており、例えば特許文献1には、非円形の断面形状を有するガラス繊維を配合した液晶ポリエステル組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-013703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の液晶ポリエステル組成物は、高温環境下で成形品表面から微量のガスが発生するという課題があった。
【0006】
本開示の目的は、高温環境下でのガス(特に高沸点成分)の発生が抑制された成形品を形成可能な液晶ポリエステルを含むペレットを提供することにある。本開示の他の目的は、該ペレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、例えば以下を提供する。
[1]
液晶ポリエステルと、繊維状フィラー(A)と、を含むペレットであって、
前記繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、前記ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される前記繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)が、3500以上20000以下である、ペレット。
[2]
前記繊維状フィラー(A)の含有割合Cが、0.05以上0.40以下である、[1]に記載のペレット。
[3]
前記スポットの円相当径の平均値が、9μm以上13μm以下である、[1]又は[2]に記載のペレット。
[4]
前記繊維状フィラー(A)がガラス繊維を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載のペレット。
[5]
前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位を含有する、[1]~[4]のいずれか一つに記載のペレット。
[6]
前記単量体単位の含有量が、前記液晶ポリエステルを構成する全単量体単位の合計に対して、50モル%以上である、[5]に記載のペレット。
[7]
液晶ポリエステルと繊維状フィラーとの溶融混練及び成形により、ペレットを得る工程を含み、
前記工程が、前記ペレット中の繊維状フィラー(A)の含有量割合Cに対する、前記ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される前記繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)が、3500以上20000以下となるように、前記溶融混練及び前記成形を行う工程である、
ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高温環境下でのガス(特に高沸点成分)の発生が抑制された成形品を形成可能な液晶ポリエステルを含むペレットを提供することができる。また、本開示によれば、該ペレットの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態のペレット(以下、単に「ペレット」ともいう。)は、液晶ポリエステルと繊維状フィラー(A)とを含む。本実施形態において、繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)は、3500以上20000以下である。
なお、本明細書中、繊維状フィラー(A)の含有割合Cは、ペレットの全質量に対する、繊維状フィラー(A)の全質量の比ということができる。
【0011】
本実施形態のペレットによれば、高温環境下でのガス(特に高沸点成分)の発生が抑制された成形品を形成できる。
【0012】
このような効果が奏される理由は、以下のように考えられる。
ペレット中で凝集した繊維状フィラーは、ペレット断面で一つのスポットとして観測される。すなわち、上記比(N/C)が大きいことは、ペレット中で繊維状フィラーがより開繊し、より分散していることを意味し、上記比(N/C)が小さいことは、ペレット中で繊維状フィラーがより凝集していることを意味する。本実施形態のペレットは、比(N/C)が十分に大きく、ペレット中で繊維状フィラーが十分に開繊していると言える。
本実施形態のペレットは、繊維状フィラーが十分に開繊しているため、繊維状フィラーの端部が成形品表面に露出しやすい。繊維状フィラーの端部が露出することで、成形品内部のガス成分(特に高沸点成分)が成形時の加熱によって揮発して成形品外に排出されやすい。すなわち、本実施形態のペレットで形成された成形品は、ガス発生の要因となる成分が成形時の加熱によって予め除去されており、高温環境下でのガス発生量が少ないと考えられる。
また、本実施形態のペレットは、ペレットの製造時に、繊維状フィラーの繊維束に含まれる集束剤が十分に熱分解し、繊維が解れて、樹脂中によく分散したものであると言える。このため、本実施形態のペレットは、残存する集束剤に由来するガス発生が抑制されている。
【0013】
以下、ペレットに含まれる各成分について詳述する。
【0014】
(1)液晶ポリエステル
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示すポリエステルであればよい。ペレットは、液晶ポリエステルを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0015】
液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上であってよく、270℃以上であってもよい。また、液晶ポリエステルの流動開始温度は、400℃以下であってよく、360℃以下であってもよく、340℃以下であってもよい。
すなわち、液晶ポリエステルの流動開始温度は、例えば250℃以上400℃以下、250℃以上360℃以下、250℃以上340℃以下、270℃以上400℃以下、270℃以上360℃以下、又は、270℃以上340℃以下であってもよい。
【0016】
本明細書において、液晶ポリエステルの流動開始温度は、フローテスターを用いて測定され、液晶ポリエステルを9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから溶融した液晶ポリエステルを押し出し、その粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度である。
【0017】
液晶ポリエステルは、原料モノマーに由来する構成単位(単量体単位ともいう。)を有する。液晶ポリエステルは、主な単量体単位(例えば、全単量体単位の合計に対して90モル%以上、95モル%以上又は99モル%以上の単量体単位、好ましくは全ての単量体単位)が、芳香族化合物に由来する単量体単位であってもよい。全ての単量体単位が芳香族化合物に由来する単量体単位である液晶ポリエステルは、全芳香族液晶ポリエステルともいう。
【0018】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位を有する重合体(好ましくは芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位を2種以上有する重合体)、芳香族ジカルボン酸に由来する単量体単位と芳香族ジオールに由来する単量体単位とを有する重合体、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位と芳香族ジカルボン酸に由来する単量体単位と芳香族ジオールに由来する単量体単位とを有する重合体、等が挙げられる。
【0019】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位としては、例えば、下記式(I)で表される単量体単位が挙げられる。芳香族ジカルボン酸に由来する単量体単位としては、例えば、下記式(II)で表される単量体単位が挙げられる。芳香族ジオールに由来する単量体単位としては、例えば、下記式(III)で表される単量体単位(但し、X及びYは酸素原子)が挙げられる。
【0020】
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーの重合によって形成される液晶ポリエステルの単量体単位において、原料モノマーが有する重合に寄与する官能基の化学構造が変化している一方、その他の構造変化を生じていないことを意味する。ここでの「由来」は、原料モノマーの重合可能な誘導体(例えば、原料モノマーが有する重合に寄与する官能基を、重合可能な他の基に変換してなる化合物)を由来とする場合も包含する概念である。
【0021】
液晶ポリエステルは、下記式(I)で表される単量体単位(以下、「単量体単位(I)」ともいう。)を有していてよい。なお、本明細書において、式中のCOはカルボニル基を表す。
-O-Ar-CO- (I)
[式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Arで表される基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。]
【0022】
液晶ポリエステルは、下記式(II)で表される単量体単位(以下、「単量体単位(II)」ともいう。)、及び/又は、下記式(III)で表される単量体単位(以下、「単量体単位(III)ともいう。)を更に有していてもよい。
-CO-Ar-CO- (II)
-X-Ar-Y- (III)
[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(IV)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。Arで表される基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。Arで表される基が有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。]
-Ar-Z-Ar- (IV)
[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルカンジイル基を表す。]
【0023】
Ar、Ar又はArが有する水素原子と置換可能なハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
Ar、Ar又はArが有する水素原子と置換可能なアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状であってよい。アルキル基は、例えば炭素数1~10のアルキル基であってよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0025】
Ar、Ar又はArが有する水素原子と置換可能なアリール基は、単環であってもよく、縮環であってもよい。アリール基は、例えば炭素数6~20のアリール基であってよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、トリル基のように、芳香環の水素原子がアルキル基で置換された基でもよい。
【0026】
Ar、Ar又はArが有する水素原子が上述した基で置換されている場合、置換数は、1個又は2個であってよく、1個であってもよい。
【0027】
Zにおけるアルカンジイル基は、直鎖状又は分岐状であってよい。アルカンジイル基は、炭素数1~10のアルカンジイル基であってよい。アルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基(例えばプロパン-2,2-ジイル基)、ブタンジイル基、オクタンジイル基(例えばオクタン-3,3-ジイル基)等が挙げられる。
【0028】
単量体単位(I)は、例えば、Arがフェニレン基である単量体単位、Arがナフチレン基である単量体単位又はArがビフェニリレン基である単量体単位であってよく、Arがフェニレン基である単量体単位又はArがナフチレン基である単量体単位であってもよく、Arが1,4-フェニレン基である単量体単位又はArが2,6-ナフチレン基である単量体単位であってもよい。液晶ポリエステルは、1種又は2種以上の単量体単位(I)を有していてもよい。
【0029】
単量体単位(II)は、例えば、Arがフェニレン基である単量体単位、Arがナフチレン基である単量体単位、Arがビフェニリレン基である単量体単位、又はArがジフェニルエーテル-ジイル基である単量体単位であってよく、Arがフェニレン基である単量体単位、Arがナフチレン基である単量体単位、又はArがビフェニリレン基である単量体単位であってもよく、Arがフェニレン基である単量体単位、又はArがナフチレン基である単量体単位であってもよい。フェニレン基は、1,4-フェニレン基、又は1,3-フェニレン基であってよい。ナフチレン基は、2,6-ナフチレン基、又は2,7-ナフチレン基であってよい。ビフェニリレン基は、4,4’-ビフェニリレン基であってよい。ジフェニルエーテル-ジイル基は、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基であってよい。液晶ポリエステルは、1種又は2種以上の単量体単位(II)を有していてもよい。
【0030】
単量体単位(II)は、例えば、Arが1,4-フェニレン基である単量体単位、Arが1,3-フェニレン基である単量体単位、Arが2,6-ナフチレン基である単量体単位、Arが2,7-ナフチレン基である単量体単位、Arが4,4’-ビフェニリレン基である単量体単位、又はArがジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基である単量体単位であってよく、Arが1,4-フェニレン基である単量体単位、Arが1,3-フェニレン基である単量体単位、又はArが2,6-ナフチレン基である単量体単位であってもよい。
【0031】
単量体単位(III)は、例えば、Arがフェニレン基である単量体単位、Arがナフチレン基である単量体単位、又はArがビフェニリレン基である単量体単位であってよく、Arがフェニレン基である単量体単位、又はArがビフェニリレン基である単量体単位であってもよく、Arが1,4-フェニレン基である単量体単位、又はArが4,4’-ビフェニリレン基である単量体単位であってもよい。液晶ポリエステルは、1種又は2種以上の単量体単位(III)を有していてもよい。
【0032】
単量体単位(III)は、X及びYがそれぞれ酸素原子である単量体単位(III)であってもよい。
【0033】
単量体単位(I)は、下記式(Ia)で表される単量体単位(以下、「単量体単位(Ia)」ともいう。)であってよく、単量体単位(II)は、下記式(IIa)で表される単量体単位(以下、「単量体単位(IIa)」ともいう。)であってよく、単量体単位(III)は、下記式(IIIa)で表される単量体単位(以下、「単量体単位(IIIa)」ともいう。)であってよい。
-O-Ar11-CO- (Ia)
-CO-Ar12-CO- (IIa)
-O-Ar13-O- (IIIa)
[式中、Ar11は、1,4-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基を表す。
Ar12は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、4,4’-ビフェニリレン基、又はジフェニルエ-テル-4,4’-ジイル基を表す。
Ar13は、1,4-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar11、Ar12又はAr13で表される基が有する水素原子の一部又は全部は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。]
【0034】
液晶ポリエステルは、例えば、単量体単位(Ia)を有する重合体であってもよく、単量体単位(Ia)及び単量体単位(IIa)を有する重合体であってもよく、単量体単位(Ia)、単量体単位(IIa)及び単量体単位(IIIa)を有する重合体であってもよい。
【0035】
液晶ポリエステルは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する単量体単位(以下、「単量体単位A」ともいう。)を有することが好ましく、単量体単位の多く(例えば50モル%以上)が単量体単位Aであってもよく、単量体単位が全て単量体単位Aであってもよい。
【0036】
液晶ポリエステルは、単量体単位Aとして、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する単量体単位、及び2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸に由来する単量体単位からなる群より選択される少なくとも1種の単量体単位を有していてもよい。
【0037】
単量体単位Aを有する液晶ポリエステルにおける単量体単位Aの数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、20モル%以上であってもよく、30モル%以上であってもよく、40モル%以上であってもよく、50モル%以上であってもよく、55モル%以上であってもよく、60モル%以上であってもよい。また、単量体単位Aを有する液晶ポリエステルにおける単量体単位Aの数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、100モル%以下であってもよく、95モル%以下であってもよく、90モル%以下であってもよく、85モル%以下であってもよく、80モル%以下であってもよい。
すなわち、単量体単位Aを有する液晶ポリエステルにおける単量体単位Aの数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば20モル%以上100モル%以下、20モル%以上95モル%以下、20モル%以上90モル%以下、20モル%以上85モル%以下、20モル%以上80モル%以下、30モル%以上100モル%以下、30モル%以上95モル%以下、30モル%以上90モル%以下、30モル%以上85モル%以下、30モル%以上80モル%以下、40モル%以上100モル%以下、40モル%以上95モル%以下、40モル%以上90モル%以下、40モル%以上85モル%以下、40モル%以上80モル%以下、50モル%以上100モル%以下、50モル%以上95モル%以下、50モル%以上90モル%以下、50モル%以上85モル%以下、50モル%以上80モル%以下、55モル%以上100モル%以下、55モル%以上95モル%以下、55モル%以上90モル%以下、55モル%以上85モル%以下、55モル%以上80モル%以下、60モル%以上100モル%以下、60モル%以上95モル%以下、60モル%以上90モル%以下、60モル%以上85モル%以下又は60モル%以上80モル%以下であってもよい。
【0038】
液晶ポリエステルが、単量体単位(I)を2種以上有する重合体であるとき、単量体単位(I)の少なくとも1種のArはナフチレン基であってよい。液晶ポリエステルが、単量体単位(I)と単量体単位(II)とを有する重合体であるとき、単量体単位(I)のAr及び単量体単位(II)のArのうち少なくとも一つはナフチレン基であってよい。液晶ポリエステルが、単量体単位(I)と単量体単位(II)と単量体単位(III)とを有する重合体であるとき、単量体単位(I)のAr、単量体単位(II)のAr、及び単量体単位(III)のArのうち少なくとも一つはナフチレン基であってよい。
【0039】
液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(I)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば30モル%以上であってよく、40モル%以上であってもよく、45モル%以上であってもよく、50モル%以上であってもよく、55モル%以上であってもよい。また、液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(I)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば80%以下であってよく、70%以下であってもよい。
すなわち、液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(I)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば30モル%以上80モル%以下、30モル%以上70モル%以下、40モル%以上80モル%以下、40モル%以上70モル%以下、45モル%以上80モル%以下、45モル%以上70モル%以下、50モル%以上80モル%以下、50モル%以上70モル%以下、55モル%以上80モル%以下、又は55モル%以上70モル%以下であってもよい。
【0040】
液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(II)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば35モル%以下であってよく、30モル%以下であってもよい。また、液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(II)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば5モル%以上であってよく、10モル%以上であってもよく、15モル%以上であってもよい。
すなわち、液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(II)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば5モル%以上35モル%以下、5モル%以上30モル%以下、10モル%以上35モル%以下、10モル%以上30モル%以下、15モル%以上35モル%以下、又は15モル%以上30モル%以下であってもよい。
【0041】
液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(III)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば35モル%以下であってよく、30モル%以下であってもよい。また、液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(III)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば5モル%以上であってよく、10モル%以上であってもよく、15モル%以上であってもよい。
すなわち、液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(III)の数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、例えば5モル%以上35モル%以下、5モル%以上30モル%以下、10モル%以上35モル%以下、10モル%以上30モル%以下、15モル%以上35モル%以下、又は15モル%以上30モル%以下であってもよい。
【0042】
液晶ポリエステルが単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)を有するとき、単量体単位(II)の数と単量体単位(III)の数との比([単量体単位(II)の数]/[単量体単位(III)の数])は、0.9/1~1/0.9であってもよく、0.95/1~1/0.95であってもよく、0.98/1~1/0.98であってもよい。
【0043】
液晶ポリエステルは、単量体単位(I)、単量体単位(II)及び単量体単位(III)以外の単量体単位を有してもよいが、その数は、液晶ポリエステルの全単量体単位の合計に対して、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、なおさらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0%である。
【0044】
本明細書において、液晶ポリエステルが有する各単量体単位の数は、特開2000-19168号公報に記載の分析方法によって求められる。具体的には、液晶ポリエステルを超臨界状態の低級アルコールと反応させて解重合し、解重合生成物(各単量体単位を誘導するモノマー)を液体クロマトグラフィーによって定量することで、全単量体単位に対する各単量体単位の数を算出することができる。
【0045】
液晶ポリエステルは、それを構成する単量体単位に対応する原料モノマーを重合させることによって製造することができる。例えば、特許第6439027号に記載の方法に従って製造することができる。
【0046】
液晶ポリエステルの含有量は、ペレットの全量基準で、例えば60質量%以上であってよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。また、液晶ポリエステルの含有量は、ペレットの全量基準で、例えば95質量%以下であってよく、90質量%以下であってもよく、88質量%以下であってもよい。すなわち、液晶ポリエステルの含有量は、ペレットの全量基準で、例えば60質量%以上95質量%以下、60質量%以上90質量%以下、60質量%以上88質量%以下、70質量%以上95質量%以下、70質量%以上90質量%以下、70質量%以上88質量%以下、80質量%以上95質量%以下、80質量%以上90質量%以下又は80質量%以上88質量%以下であってもよい。
【0047】
(2)繊維状フィラー
ペレットは、繊維状フィラー(A)を含む。
【0048】
繊維状フィラー(A)としては、例えば、ガラス繊維が挙げられる。繊維状フィラー(A)に占めるガラス繊維の割合は、例えば90質量%以上であってよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0049】
繊維状フィラー(A)に占める繊維長50μm以下の繊維状フィラー(A-1)の割合は、0.5質量%以下であり、0.3質量%以下、0.1質量%以下、又は0.05質量%以下であってもよい。
繊維長50μm以下の繊維状フィラー(A-1)の量が少ないと、成形品表面に繊維長50μm超の繊維状フィラー(A’)が露出しやすい。繊維状フィラー(A’)が表面に露出することで、成形品内部のガス成分(特に高沸点成分)が成形時の加熱によって揮発して成形品外に排出されやすい。このため、繊維長50μm以下の繊維状フィラー(A-1)の量が上記範囲であると、高温環境下でのガス発生量がより顕著に抑制される。
【0050】
繊維状フィラー(A)に占める繊維長50μm以下の繊維状フィラー(A-1)の割合は、0質量%であってもよい。また、繊維状フィラー(A)は繊維長50μm以下の繊維状フィラー(A-1)を少量含んでいてよく、このとき、繊維状フィラー(A-1)の割合は、例えば0.001質量%以上であってよく、0.005質量%以上であってもよく、0.01質量%以上であってもよい。
【0051】
繊維状フィラー(A)の数平均繊維長は、例えば50μm以上であってよく、100μm以上であってもよく、200μm以上であってもよい。これにより、成形品の機械的強度がより高くなる傾向がある。
【0052】
また、繊維状フィラー(A)の数平均繊維長は、例えば1500μm以下であってよく、1000μm以下であってもよく、500μm以上であってもよい。成形品における細部充填性がより向上する傾向がある。
【0053】
繊維状フィラー(A)の繊維長分布(繊維状フィラー(A-1)の割合、繊維状フィラー(A-2)の割合、数平均繊維長)は、以下の方法で測定される。
<繊維長分布の測定>
ペレット4gを600℃で4時間加熱し、灰分を得る。得られた灰分をエチレングリコールに分散させてプレパラートを作成し、光学顕微鏡で500倍の視野で観察する。視野内に収まった繊維(両端が視野内にある繊維)のうち、繊維径以上の長さを有する繊維の繊維長を測定する。500本以上の繊維について繊維長を測定し、繊維長分布を求める。
【0054】
繊維状フィラー(A)の繊維径(単繊維径)は、例えば5μm以上であってよく、6μm以上であってもよく、9μm以上であってもよい。また、繊維状フィラー(A)の繊維径(単繊維径)は、例えば17μm以下であってよく、15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよい。すなわち、繊維状フィラー(A)の繊維径(単繊維径)は、例えば5μm以上17μm以下、5μm以上15μm以下、5μm以上12μm以下、6μm以上17μm以下、6μm以上15μm以下、6μm以上12μm以下、9μm以上17μm以下、9μm以上15μm以下、又は9μm以上12μm以下であってもよい。
【0055】
繊維状フィラー(A)の含有割合Cは、ペレットの全量基準で、例えば0.05以上であってよく、0.1以上であってもよく、0.12以上であってもよい。また、繊維状フィラー(A)の含有割合Cは、ペレットの全量基準で、例えば0.4以下であってよく、0.35以下であってもよく、0.3以下であってもよく、0.2以下であってもよい。繊維状フィラー(A)の含有割合Cは、ペレットの全量基準で、例えば0.05以上0.4以下であってよく、0.1以上0.35以下であってもよく、0.1以上0.3以下であってもよく、0.1以上0.2以下であってもよく、0.12以上0.3以下であってもよく、0.12以上0.3以下であってもよく、0.12以上0.2以下であってもよい。
【0056】
繊維状フィラー(A)の含有割合Cは、以下の方法で測定される。
<繊維状フィラー(A)の含有割合Cの測定>
ペレット4gを600℃で4時間加熱し、灰分を得る。得られた灰分から、必要に応じて繊維状フィラー(A)に相当する灰分を選別し、繊維状フィラー(A)に相当する灰分の質量を測定する。その質量と灰化に用いたペレットの質量とから繊維状フィラー(A)の含有割合を求める。
なお、予めペレット中の繊維状フィラー(A)の配合量が分かっている場合は、その配合量から繊維状フィラー(A)の含有割合を求めてもよい。
【0057】
なお、ペレットを作製する際に使用するガラス繊維は、通常集束材を含んでおり、ガラス繊維の強熱減量を測定することにより、集束材量を見積もることができる。ガラス繊維の強熱減量は、JIS R3420に従って測定できる。
ガラス繊維の強熱減量(すなわち、集束材量)は、ガラス繊維の全量基準で、0.2%以上、0.25%以上又は0.3%以上であってもよく、1%以下、0.8%以下、又は0.5%以下であってもよい。
【0058】
ペレットは、液晶ポリエステル以外の樹脂を1種又は2種以上含み得る。該樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、(メタ)アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、イミド樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0059】
ペレットは、繊維状フィラー以外の添加剤を1種又は2種以上含み得る。該添加剤としては、例えば、充填材、着色剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、硬化剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、滑剤、離型剤等が挙げられる。
【0060】
本実施形態のペレットにおいて、繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)は、3500以上であり、例えば4000以上、4200以上又は4500以上であってもよい。これにより、上記効果がより顕著に奏される。
また、上記比(N/C)は、20000以下であり、例えば18000以下又は15000以下であってもよく、10000以下、8000以下又は6000以下であってもよい。この場合、繊維状フィラー(A)の折損がより抑制されていると言え、溶融混練中の樹脂への熱ダメージがより減り、発生ガス量がより減少する傾向がある。
すなわち、上記比(N/C)は、例えば3500以上20000以下、3500以上18000以下、3500以上15000以下、3500以上10000以下、3500以上8000以下、3500以上6000以下、4000以上20000以下、4000以上18000以下、4000以上15000以下、4000以上10000以下、4000以上8000以下、4000以上6000以下、4200以上20000以下、4200以上18000以下、4200以上15000以下、4200以上10000以下、4200以上8000以下、4200以上6000以下、4500以上20000以下、4500以上18000以下、又は4500以上15000以下、4500以上10000以下、4500以上8000以下、4500以上6000以下であってもよい。
【0061】
上記個数Nは、以下の方法で測定される。
<個数Nの測定>
溶融混練時の押し出し方向に垂直なペレットの断面のX線CT画像を下記条件によって取得する。任意の断面における画像を下記画像解析条件によって二値化し、断面中の繊維状フィラー(A)に相当するスポットの個数を測定する。なお、溶融混練時の押し出し方向は、ペレットの外観を目視などで観察することにより決定できる。
・X線CT画像の撮影条件
装置:Nano3DX(株式会社リガク製)
撮像モード:Continuous Scan
レンズ:2160
線源:Mo
Binning:1
露光時間:7s
撮像枚数:1000枚
XD距離:5mm
・画像解析
使用ソフト:Luzex AP(株式会社ニレコ製)
二値化方法:付属ソフトのマニュアルに従って自動モードで二値化。
【0062】
なお、スポットの円相当径の平均値及びペレットの断面の円相当径も上記画像から算出される。
【0063】
本実施形態のペレットのサイズは特に限定されない。ペレットの押出方向の長さは、例えば2.0mm以上であってよく、2.2mm以上であってもよく、2.5mm以上であってもよい。また、ペレットの押出方向の長さは、例えば8.0mm以下であってよく、6.0mm以下であってもよく、4.0mm以下であってもよい。
【0064】
ペレットの押出方向に垂直な断面の円相当径は、例えば2mm以上であってよく、2.2mm以上であってもよく、2.5mm以上であってもよい。また、ペレットの押出方向に垂直な断面の円相当径は、例えば8mm以下であってよく、6mm以下であってもよく、4mm以下であってもよい。
【0065】
本実施形態のペレットは、例えば、以下の方法で製造されてよい。
【0066】
(ペレットの製造方法)
本実施形態のペレットの製造方法は、液晶ポリエステルと繊維状フィラー(以下、繊維状フィラー(a)ともいう。)との溶融混練及び成形により、ペレットを得る工程を含むものであってよい。
【0067】
上記工程では、ペレット中の繊維状フィラー(A)の含有割合Cに対する、ペレットの押出方向に垂直な断面において観察される繊維状フィラー(A)由来のスポットの単位面積当たりの個数N(/mm)の比(N/C)が、3500以上20000以下となるように、溶融混練及び成形を行う。
【0068】
繊維状フィラー(a)は、例えば、繊維状フィラーを集束剤で束ねた繊維束であってよい。
【0069】
上記工程としては、例えば、液晶ポリエステルの溶融物に繊維状フィラー(a)を投入し、混練し、押出成形する方法が挙げられる。このような方法では、例えば、液晶ポリエステルの溶融物に繊維状フィラー(a)を投入してから混練までの時間を長くすること(例えば繊維状フィラーの投入口からニーディングディスク部までの長さを長くする)、及び、混練の時間を長くする(例えばニーディングディスク部の長さを長くする)ことで、繊維状フィラーを束ねる集束剤が分解して発生したガスが揮発し、繊維状フィラーが溶融物中でほぐれて、繊維状フィラーの凝集物がペレット中に残存しにくい。
【0070】
なお、液晶ポリエステルと繊維状フィラーとを混練するとき、液晶ポリエステル中に配合された繊維状フィラーが折れるなどして、短い繊維長の繊維状フィラーが形成される。このとき、繊維状フィラーが折れずに破砕してしまうと、顕著に短い繊維状フィラー(A-1)が形成されやすい。よって、上記工程では、繊維状フィラーの破砕が少なくなるような方法を選択することで、繊維状フィラー(A-1)の割合が0.5質量%以下のペレットが得られ易い。
例えば、液晶ポリエステルの溶融物に繊維状フィラー(a)を投入してから、混練までの時間を長くすることで、繊維状フィラーの破砕が少なくなる傾向がある。投入から混練までの時間を長くすることで、繊維状フィラー(a)が溶融物中でほぐれて、繊維状フィラー(a)の凝集物(例えば、集束剤で接着された繊維束)の破砕による繊維状フィラー(A-1)の形成が抑制される。
【0071】
上記工程は、例えば、二軸押出機を用いて実施してよい。
【0072】
本実施形態のペレットは、通信機器、電気機器、電子機器、医療機器、自動車、家電製品、産業用機械、日用雑貨品等の部品に好適に適用することができる。当該部品は、例えば、本実施形態のペレットを、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法等によって成形して、製造することができる。
【0073】
以上、本開示に係る発明の一実施形態について説明したが、本開示に係る発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0074】
以下、実施例を示して本開示に係る発明をさらに具体的に説明するが、本開示に係る発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り、質量基準である。
【0075】
(実施例1)
(1)液晶ポリエステルの製造
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸1118.8g(8.10モル)、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸547.4g(3.00モル)、無水酢酸1235.3g(12.1モル)、及び、0.17gの1-メチルイミダゾールを仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて140℃まで昇温し、温度を140℃に保持して1時間還流させた。その後、留出する副生酢酸を留去しながら3時間40分かけて280℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分の流動開始温度は235℃であった。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温(25℃)から235℃まで1時間かけて昇温し、235℃から240℃まで4時間10分かけて昇温し、240℃で5時間保持し、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(1)を得た。得られた液晶ポリエステル(1)の流動開始温度は277℃であった。
【0076】
(2)ペレットの製造
二軸スクリュー押出機(芝浦機械製、TEM48S)を用いて、液晶ポリエステル(1)とガラス繊維(日本電気硝子製、ECS03T-786H、強熱減量:0.35%)とを混練し、液晶ポリエステル(1)とガラス繊維とを含むペレットを製造した。
具体的には、二軸スクリュー押出機のメインフィード口から液晶ポリエステル(1)を供給し、サイドフィード口からガラス繊維を供給し、混練を行い、押出機のノズルから混練物を押し出して、ストランドを得た。なお、供給量は、液晶ポリエステル(1)85質量部に対して、ガラス繊維を15質量部とした。
ストランドに水を噴霧して冷却し、ストランドを固化させ、次いで空気を吹き付けて水を除去しつつ更に冷却した。固化したストランドをペレタイザーで切断して、液晶ポリエステル(1)とガラス繊維とを含むペレットを得た。
【0077】
(比較例1)
サイドフィード口の位置を下流側に移動し、サイドフィード口からニーディングディスク部までの長さを実施例1の0.9倍とし、ニーディングディスク部の長さを実施例1の0.5倍としたこと以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル(1)とガラス繊維とを含むペレットを得た。
【0078】
<繊維状フィラーの含有割合Cの測定>
ペレット4gを600℃で4時間加熱し、灰分を得た。得られた灰分の質量を測定し、当該質量と灰化に用いたペレットの質量とから繊維状フィラーの含有割合Cを求めた。
【0079】
<個数Nの測定>
溶融混練時の押し出し方向に垂直なペレットの断面のX線CT画像を下記条件によって取得した。任意の断面における画像を下記画像解析条件によって二値化し、断面中の繊維状フィラー(A)に相当するスポットの個数を測定した。また、上記画像から、スポットの円相当径の平均値及びペレットの断面の円相当径を測定した。
・X線CT画像の撮影条件
装置:Nano3DX(株式会社リガク製)
撮像モード:Continuous Scan
レンズ:2160
線源:Mo
Binning:1
露光時間:7s
撮像枚数:1000枚
XD距離:5mm
・画像解析
使用ソフト:Luzex AP(株式会社ニレコ製)
二値化方法:付属ソフトのマニュアルに従って自動モードで二値化。
【0080】
【表1】
【0081】
<スポットの円相当径>
個数Nの測定で取得した上記画像から、スポットの円相当径の平均値を測定した。その結果、実施例1におけるスポットの円相当径の平均値は、11.7μmであった。一方、比較例1におけるスポットの円相当径の平均値は、20.9μmであり、比較例1のペレットではガラス繊維の開繊が不十分であることが示唆された。
【0082】
<ガラス繊維の繊維長分布の測定>
実施例1及び比較例1で得られたペレットについて、以下の方法でガラス繊維の繊維長分布を測定した。
ペレット4gを600℃で4時間加熱し、灰分を得た。得られた灰分をエチレングリコールに分散させてプレパラートを作成し、光学顕微鏡で500倍の視野で観察した。視野内に収まった繊維(両端が視野内にある繊維)のうち、繊維径以上の長さを有する繊維の繊維長を測定した。500本以上の繊維について繊維長を測定し、繊維長分布を求めた。
得られた繊維長分布から、繊維長が50μm以下の繊維状フィラー(A-1)の割合、及び繊維状フィラーの数平均繊維長を求めた。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
<ガスの発生量の評価>
実施例1及び比較例1で得られたペレットについて、以下の方法でガスの発生量を評価した。
ペレットを用い、射出成形により、厚さ0.8mmのダンベル試験片を作成した。この試験片の平行部を5mm角に切断することで、5mm×5mm×0.8mmの測定サンプルを得た。測定サンプル4gをバイアル瓶に封入し、セプタムにて密閉した。バイアル瓶に封入したサンプルを120℃で20時間加熱したのち、ヘッドスペースガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製GC-2030AF)により、下記条件にてガス発生量を測定した。
<条件>
カラム:Restek製Rtx―1301(内径:0.25mm、長さ60m、膜厚1.4μm)
カラム温度:60℃で5分間保持し、10℃/分で220℃まで昇温、220℃で15分間保持
キャリアガス:ヘリウム
スプリット比:10
キャリアガス流量:10mL/分
検量線を用いてアセトン、酢酸、フェノール及び酢酸フェノールを定量し、それ以外の成分由来のピークについては、保持時間が15.5分以下の成分はアセトンに、15.5分を超える成分はフェノールにそれぞれ換算して定量した。保持時間が15.5分以下の低沸点成分、及び、保持時間が15.5分を超える高沸点成分の測定量を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示すとおり、実施例1のペレットでは、比較例1のペレットと比較して、高温環境下でのガス(特に高沸点成分)の発生が抑制された。