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特開2024-172399電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジ
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  • 特開-電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172399
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/113 352
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090097
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】大光司 真人
(72)【発明者】
【氏名】長山 将志
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 亨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智美
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健都
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB05
2H500CA04
2H500CA16
2H500CB07
2H500CB09
2H500CB10
2H500CB14
2H500CB18
2H500EA44E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】抵抗値変動、非画像部へのキャリア付着および帯電変動を抑制し得る電子写真画像形成用キャリアを提供する。
【解決手段】芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有し、前記被覆層は、樹脂、カーボンブラックおよび粒子Aを含有し、前記カーボンブラックおよび粒子Aは、前記被覆層の厚み方向に濃度勾配を有し、前記被覆層の表面に向かうほど前記粒子Aの濃度は高く、前記カーボンブラックの濃度は低くなり、前記被覆層の表面から深さ0.0~0.1[μm]の範囲において、前記被覆層中の前記カーボンブラックの体積割合が0[%]以上30[%]以下であり、かつ前記粒子Aは、無機微粒子からなる基体と、アンチモンを含有する粒子とを含む電子写真画像形成用キャリアによって上記課題を解決した。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有する電子写真画像形成用キャリアであって、
前記被覆層は、樹脂、カーボンブラックおよび粒子Aを含有し、
前記カーボンブラックおよび粒子Aは、前記被覆層の厚み方向に濃度勾配を有し、前記被覆層の表面に向かうほど前記粒子Aの濃度は高く、かつ前記カーボンブラックの濃度は低くなり、
前記被覆層の表面から深さ0.0~0.1[μm]の範囲において、前記被覆層中の前記カーボンブラックの体積割合が0[%]以上30[%]以下であり、かつ
前記粒子Aは、無機微粒子からなる基体と、アンチモンを含有する粒子とを含むことを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【請求項2】
前記アンチモンを含有する粒子が、アンチモンをドープした酸化スズを含有することを特徴とする、請求項1の記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項3】
前記アンチモンが、五酸化二アンチモンであることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項4】
前記無機微粒子からなる基体が、酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項5】
前記被覆層が、前記粒子A以外に粒子Bを含有し、前記粒子Bが少なくとも硫酸バリウムを含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項6】
請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリアを含有することを特徴とする、電子写真画像形成用現像剤。
【請求項7】
請求項6に記載の電子写真画像形成用現像剤を用いて画像形成することを特徴とする、電子写真画像形成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の電子写真画像形成用現像剤を含むことを特徴とする、電子写真画像形成装置。
【請求項9】
請求項6に記載の電子写真画像形成用現像剤を備えることを特徴とする、プロセスカートリッジ。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法、静電写真法等の画像形成方法においては、潜像担持体上に形成された静電潜像を現像するために、トナーとキャリアとを撹拌混合することによって得られる現像剤が使用される。この現像剤は、適当に帯電された混合物であることが要求される。一般に静電潜像を現像する方法としては、トナーとキャリアとを混合して得られる二成分系現像剤を使用する方法と、キャリアを含まない一成分系現像剤を使用する方法が公知である。二成分現像方式は、キャリアを使用することからトナーに対する摩擦帯電面積が広く、一成分方式に比較して帯電特性が安定しており、長期に渡って高画質を維持する上で有利である。また、現像領域へのトナー量供給能力が高いことから、特に高速機に多く採用されている。また、レーザービームなどで感光体上に静電潜像を形成し、この潜像を顕像化するデジタル方式電子写真システムにおいても、前述の特徴が有用であることから二成分現像方式が広く採用されている。
【0003】
このような二成分系現像方式に使用されるキャリアは、キャリア表面へのトナーのスペント防止、キャリア均一表面の形成、表面酸化防止、感湿性低下の防止、現像剤の寿命の延長、感光体のキャリアによるキズあるいは摩耗からの保護、帯電極性の制御または帯電量の調節等を目的として、適当な樹脂材料で被覆等を施すことにより、高耐久性化を図る検討が成されている。例えば特定の樹脂材料で被覆されたもの(特許文献1)、さらにその被覆層に種々の添加剤を添加するもの(特許文献2~8)、さらに、キャリア表面に添加剤を付着させたものを用いるもの(特許文献9)などが開示されている。また、特許文献10にはグアナミン樹脂と該グアナミン樹脂と架橋可能な熱硬化樹脂でキャリア被覆材を構成するものが開示され、特許文献11には、メラミン樹脂とアクリル樹脂の架橋物をキャリア被覆材として用いることが開示されている。
【0004】
樹脂被覆キャリアは、樹脂被覆に伴って絶縁化され、現像電極として働かなくなるので、特にベタ画像部でエッジ効果が生じやすくなるといった欠点がある。また、トナー離脱時のカウンターチャージも過大となるので、静電現像による非画像部へのキャリア付着が発生しやすくなる。そこで、この問題を解決するために、例えば、キャリアの被覆層中に導電剤として導電性カーボンや導電性フィラーを分散した樹脂被覆キャリアが提案されている(例えば、特許文献12~15)。また、特許文献16には、導電性材料(カーボンブラック)を芯材表面に存在させて、被覆層中に導電性材料を存在させないキャリアが提案されている。また、特許文献17には、被覆層がその厚み方向にカーボンブラックの濃度勾配を持ち、該被覆層は表面に向かうほどカーボンブラック濃度が低くなり、しかも、該被覆層の表面にはカーボンブラックが存在しないキャリアが提案されている。また、特許文献18には、芯材粒子表面に導電性カーボンを含有した内部被覆層を設け、更に、その上に白色系導電性材料を含有した表面被覆層を設けてなる2層コート型キャリアが提案されている。特許文献19~21では、キャリア被覆層中に導電性フィラーを含有させたキャリアが示されている。これらのキャリアでは、カーボンに限定せずに導電性フィラーを導電性微粒子として使用することが可能であることから、キャリアから脱離した有色物のトナーへの影響を少なくするために着色量の少ない材料を選択することが可能である。また特許文献22~23には、キャリア被覆層中にアンチモンを含むスズの酸化物を含有したキャリアが提案されている。アンチモンをドープした酸化スズは導電性が高く、高い抵抗調整能力を有し、且つ、色味も薄いため色汚れ抑制にも有効である。特許文献24には、キャリアの被覆層が、カーボンブラックと、無機微粒子A及び無機微粒子Bの2種類の無機微粒子とを含有し、無機微粒子A及びカーボンブラックが被覆層の厚み方向に濃度勾配を持って存在し、キャリアの表面側に向かうほど、無機微粒子Aの濃度が高く、かつカーボンブラックの濃度が低くなり、キャリア表面からの被覆層の脱離が少なく、キャリア付着も問題ない現像装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、抵抗値変動、非画像部へのキャリア付着および帯電変動を抑制し得る電子写真画像形成用キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とを有する電子写真画像形成用キャリアであって、
前記被覆層は、樹脂、カーボンブラックおよび粒子Aを含有し、
前記カーボンブラックおよび粒子Aは、前記被覆層の厚み方向に濃度勾配を有し、前記被覆層の表面に向かうほど前記粒子Aの濃度は高く、かつ前記カーボンブラックの濃度は低くなり、
前記被覆層の表面から深さ0.0~0.1[μm]の範囲において、前記被覆層中の前記カーボンブラックの体積割合が0[%]以上30[%]以下であり、かつ
前記粒子Aは、無機微粒子からなる基体と、アンチモンを含有する粒子とを含むことを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抵抗値変動、非画像部へのキャリア付着および帯電変動を抑制し得る電子写真画像形成用キャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明のプロセスカートリッジの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
本発明の電子写真画像形成用キャリアは、上記構成1)に示す通りであるが、本発明は、下記2)~9)の形態も好適に含むものである。
【0010】
2)前記アンチモンを含有する粒子が、アンチモンをドープした酸化スズを含有することを特徴とする、上記1)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
3)前記アンチモンが、五酸化二アンチモンであることを特徴とする、上記1)または2)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
4)前記無機微粒子からなる基体が、酸化アルミニウムであることを特徴とする、上記1)~3)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
5)前記被覆層が、前記粒子A以外に粒子Bを含有し、前記粒子Bが少なくとも硫酸バリウムを含有することを特徴とする、上記1)~4)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
6)上記1)~5)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリアを含有することを特徴とする、電子写真画像形成用現像剤。
7)上記6)に記載の電子写真画像形成用現像剤を用いて画像形成することを特徴とする、電子写真画像形成方法。
8)上記6)に記載の電子写真画像形成用現像剤を含むことを特徴とする、電子写真画像形成装置。
9)上記6)に記載の電子写真画像形成用現像剤を備えることを特徴とする、プロセスカートリッジ。
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、キャリアの被覆層が、樹脂、カーボンブラックおよび粒子Aを含有し、前記カーボンブラックおよび粒子Aは、前記被覆層の厚み方向に濃度勾配を有し、前記被覆層の表面に向かうほど前記粒子Aの濃度は高く、かつ前記カーボンブラックの濃度は低くなり、前記被覆層の表面から深さ0.0~0.1[μm]の範囲において、前記被覆層中の前記カーボンブラックの体積割合が0[%]以上30[%]以下であり、かつ前記粒子Aは、無機微粒子からなる基体と、アンチモンを含有する粒子とを含むことで、抵抗値変動、非画像部へのキャリア付着および帯電変動を抑制し得る電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供できることを見出した。
【0012】
本発明において、前記被覆層の表面から深さ0.0~0.1[μm]の範囲において、前記被覆層中の前記カーボンブラックの体積割合は、0[%]以上30[%]以下である。前記カーボンブラックの体積割合が30[%]を超えると、トナーへの色汚れという不具合が発生する。さらに好ましい前記被覆層中の前記カーボンブラックの体積割合は、0[%]以上15[%]以下である。
【0013】
本発明で使用される前記粒子Aは、無機微粒子からなる基体と、アンチモンを含有する粒子とを含む。前述のように、電気抵抗の調整を目的として被覆層中に含有させる抵抗調整剤として、アンチモンは効率の良い材料である。アンチモンは、キャリア抵抗を下げる能力が優れており、少ない処方量で所望のキャリア抵抗値まで下げることができる。これにより前記被覆層の樹脂に対するアンチモンを含有する粒子量が減ることで、該粒子が樹脂により固定され、粒子脱離を抑制することができる。粒子脱離を抑制することで、抵抗変動を抑制でき、安定した画像品質(キャリア付着抑制)を得ることができる。
アンチモンを含有する粒子は、アンチモンの単体粒子であることができるが、無機微粒子を基体とし、アンチモンを含有する粒子をその表面に存在させることが好ましい。アンチモンの単体粒子を使用する場合、粒子が崩れると被覆層から離脱しやすくなるが、無機微粒子を基体とすることで、粒子の崩れを抑制し、被覆層から離脱しにくくなるため、経時での電気抵抗の変動をより効果的に抑制することができる。
【0014】
また本発明において、前記カーボンブラックおよび粒子Aは、前記被覆層の厚み方向に濃度勾配を有し、前記被覆層の表面に向かうほど前記粒子Aの濃度は高く、かつ前記カーボンブラックの濃度は低くなる。
前記濃度勾配を設ける方法としては、特に制限されないが、例えば、以下の(1)または(2)の方法が挙げられる。
(1)キャリアの芯材粒子に対し、カーボンブラックおよび粒子Aを含有した樹脂溶液を多数回コーティングする手法を取り、後工程ほどカーボンブラックの濃度が低く、粒子Aの濃度が高い樹脂溶液を使用する方法。
(2)複数本のスプレーコートノズルを用い、カーボンブラックを含有させた樹脂溶液をスプレーするノズルと、粒子Aを含有させた樹脂溶液をスプレーするノズルに分け、カーボンブラックを含有させた樹脂溶液のスプレー速度を連続的に低下させつつ、粒子Aを含有させた樹脂溶液のスプレー速度を連続的に上昇させる方法。
【0015】
前記被覆層中のカーボンブラックおよび前記粒子Aの所在、並びに表面付近での体積割合を確認する方法としては、従来公知の手法を取ることができる。例えば、FIB(集束イオンビーム)にてキャリア表面の被覆層を切断し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)、EDX(エネルギー分散X線分光法)にて観察することで確認をすることができる。以下に例を挙げるが、これに限られるものではない。
カーボンテープ上に試料を付着させ、表面保護及び導電処理のため、オスミウムを約20nmコーティングする。Carl Zeiss(SII社製 NVision40)を用いて、以下の条件にてFIB処理を行なう。
〔FIB処理条件〕
・加速電圧 2.0kV
・アパーチャ 30μm
・High Current ON
・検出器 SE2, InLens
・導電処理なし
・W.D 5.0mm
・試料傾斜 54°
Thermo Fisher Scientific社製 電子冷却型SDD検出器UltraDry(Φ30mm)と解析ソフトThermo Fisher Scientific社製 NORAN System6(NSS)を用いて、以下の条件にてSEM観察、及び元素のマッピングを行ない、カーボンブラックおよび粒子Aの存在位置、表面付近での断面での専有面積を確認する。
・加速電圧 3.0kV
・アパーチャ 120μm
・High Current ON
・導電処理 Os
・ドリフト補正 有り
・W.D 10.0mm
・測定法 Area Scan
・積算時間 10sec
・積算回数 100回
・試料傾斜 54°
キャリア被覆層の表面付近でのカーボンブラックの体積の占める割合は、表面から深さ0.0μm~0.1μmに範囲における断面積の3/2乗に対して、カーボンブラックの断面積の3/2乗の割合を計算することにより求める。
【0016】
本発明において、前記アンチモンを含有する粒子は、アンチモンをドープした酸化スズを含有することが好ましい。アンチモンをドープした酸化スズは、非常に優れた抵抗調整剤として機能し、これにより、より少ない処方量で所望のキャリア抵抗値まで下げることができるため、前記被覆層の樹脂に対する該粒子量が減ることで、粒子が樹脂により固定され、粒子の脱離を抑制することができる。
【0017】
なお、一般に抵抗調整を目的として用いられるアンチモンである三酸化二アンチモンは、人体に対する有害性が指摘されており、好ましく用いられる材料ではない。そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、前記アンチモンを含有する粒子として、三酸化二アンチモンではなく、五酸化二アンチモンを含有する粒子を採用することで、人体への有害性が低く、かつ、効率のよい抵抗調整能力と色汚れ抑制効果も得られることを見出した。
【0018】
前記アンチモンを含有する粒子は、五酸化二アンチモン自体を粒子として使用することが可能であるが、特に、五酸化二アンチモンを酸化スズにドープして使用することで、非常に優れた抵抗調整剤とすることができる。
【0019】
前記基体としては、公知の無機微粒子を用いることが可能であるが、特に酸化アルミニウムを用いると抵抗調整能力が顕著となるため好ましい。また、酸化アルミニウムは、高硬度であるため、粒子の崩れを抑制することができ、被覆層から離脱しにくくなる。
【0020】
本発明において、粒子Aは、被覆層に含まれる樹脂100質量部に対して40~120質量部含まれるのが好ましく、60~100質量部含まれるのがさらに好ましい。
また、粒子Aの体積平均粒径は、400nm以上1000nm以下であることが望ましい。400nm以上であると、粒子径が小さすぎることがなく、キャリア抵抗を効率良く下げることができる。また1000nm以下であると、被覆層表面からの脱離が発生しにくくなる。
【0021】
また被覆層は、前記粒子A以外に無機微粒子からなる粒子Bを含有することが好ましい。
このような粒子Bを含有することで、被覆層の摺擦に対する耐久性が向上し、摩耗や削れによる劣化を抑制することができる。前記アンチモンを含有する粒子の存在によっても被覆層の耐久性は向上するが、前記アンチモンを含有する粒子の量によってキャリアの電気抵抗値が変化してしまうため、耐久性を向上させることを目的として被覆層中の量を調整することはできない。そのため、この粒子Bによって被覆層の耐久性を担保させることが好ましい。この粒子Bは従来公知の材料を用いることが可能である。また、粒子Bに用いられる無機微粒子は、白色であることが好ましい。例えば五酸化二アンチモンは色味の薄い材料であるが、全くの白色ではなく、また、酸化スズにドープして使用する場合は、白色に近くなるものの、ドーパント量によって色味が変化する。粒子Bにおける無機微粒子の色を白色のものにすることで、被覆層中の微粒子の色を全体的に薄めることができるため、色汚れの抑制に有効となる。
【0022】
粒子Bとしては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。それらの中でも酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウムを用いると、トナーに負帯電を付与する効果が向上するため好ましく、特に、硫酸バリウムは、その効果が顕著であるため好適である。
粒子Bとして硫酸バリウムを用いる場合、硫酸バリウムは単体であることが好ましい。硫酸バリウムは被覆層表面に存在してトナーと接触することで帯電付与効果を発揮するが、硫酸バリウムが単体であると、トナーとの接触確率が上昇し、帯電付与効果を最大限に発揮できる。
【0023】
本発明において、粒子Bは、体積平均粒径400nm以上900nm以下であることが望ましい。この範囲であると、被覆表面に対して粒子Bを凸の状態で存在させることができ、トナーとの帯電性を確保できる。安定した帯電能力、現像能力を確保するためには、粒子Bの体積平均粒径は600nm以上であることがより好ましい。また、粒子Bの体積平均粒径が900nm以下であると、被覆層の厚みに対して粒子Bの粒径が大きすぎることがないために、結着樹脂に十分保持され、被覆層の樹脂膜から脱離しにくくなるため好ましい。粒子Bは、被覆層に含まれる樹脂100質量部に対し30~100質量部含まれるのが好ましく、50~80質量部含まれるのがさらに好ましい。
【0024】
本発明において、被覆層は樹脂を含有する。このような樹脂としてはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらを併用して使用することができる。これは、アクリル樹脂は接着性が強く脆性が低いので耐磨耗性に非常に優れた性質を持つが、その反面、表面エネルギーが高いため、スペントし易いトナーとの組み合わせでは、トナー成分スペントが蓄積することによる帯電量低下など不具合が生じる場合がある。その場合、表面エネルギーが低いためトナー成分のスペントがし難く、膜削れが生じるためのスペント成分の蓄積が進み難い効果が得られるシリコーン樹脂を併用することで、この問題を解消することができる。しかし、シリコーン樹脂は接着性が弱く脆性が高いので、耐磨耗性が悪いという弱点も有するため、この2種の樹脂の性質をバランス良く得ることが重要であり、これによりスペントがし難く耐摩耗性も有する被覆膜を得ることが可能となる。これは、シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いためトナー成分のスペントがし難く、膜削れが生じるためのスペント成分の蓄積が進み難い効果が得られるためである。
【0025】
本明細書でいうシリコーン樹脂とは、一般的に知られているシリコーン樹脂全てを指し、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコンや、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂などが挙げられるが、これに限るものではない。例えば、市販品としてストレートシリコン樹脂としては、信越化学製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2400、SR2406、SR2410等が挙げられる。この場合、シリコーン樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。さらに、変性シリコーン樹脂としては、信越化学製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などが挙げられる。
【0026】
縮重合触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒が揚げられるが、本発明では、これら各種触媒のうち、優れた結果を齎らすチタン系触媒の中でも、特にチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が触媒として最も好ましい。これは、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。
【0027】
本明細書でいうアクリル樹脂とは、アクリル成分を有する樹脂全てを指し、特に限定するものではない。また、アクリル樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分を少なくとも1つ以上同時に用いることも可能である。ここでいう架橋反応する他成分とは、例えばアミノ樹脂、酸性触媒などが挙げられるが、これに限るものではない。ここでいうアミノ樹脂とはグアナミン、メラミン樹脂等を指すが、これらに限るものではない。また、ここでいう酸性触媒とは、触媒作用を持つもの全てを用いることができる。例えば、完全アルキル化型、メチロール基型、イミノ基型、メチロール/イミノ基型等の反応性基を有するものであるが、これらに限るものではない。
【0028】
また、被覆層は、アクリル樹脂とアミノ樹脂の架橋物を含有することがさらに好ましい。これにより、適度な弾性を維持したまま、被覆層同士の融着を抑制することができる。
アミノ樹脂としては、特に限定されないが、キャリアの帯電付与能力を向上させることができるため、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。また、適度にキャリアの帯電付与能力を制御する必要がある場合には、メラミン樹脂及び/又はベンゾグアナミン樹脂と、他のアミノ樹脂を併用してもよい。
アミノ樹脂と架橋し得るアクリル樹脂としては、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有するものが好ましく、ヒドロキシル基を有するものがさらに好ましい。これにより、芯材粒子や導電性微粒子との密着性をさらに向上させることができ、導電性微粒子の分散安定性も向上させることができる。このとき、アクリル樹脂は、水酸基価が10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。
【0029】
本発明において、被覆層を形成するための組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、導電性微粒子を安定に分散させることができる。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0030】
シランカップリング剤の市販品としては、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940(東レ・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0031】
シランカップリング剤の添加量は、シリコーン樹脂に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.1質量%以上であることにより、芯材粒子や導電性微粒子とシリコーン樹脂の接着性が向上し、長期間の使用中での被覆層の脱落を防止でき、10質量%以下であることにより、長期間の使用中でのトナーのフィルミングを防止できる。
【0032】
本発明において使用されるキャリアの芯材粒子の体積平均粒径は特に制限するものではないが、キャリア付着、キャリア飛散防止の点から、体積平均粒径が20μm以上であるものが好ましく、キャリアスジ等の異常画像発生を防止して、画像品質の低下を防止する観点から、100μm以下のものが好ましく、特に、20~60μmのものを用いることで、近年の高画質化に対して、より好適に応えることができる。なお、体積平均粒径は、例えば、マイクロトラック粒度分布計モデルHRA9320-X100(日機装社製)を用いて測定することができる。
【0033】
本発明のキャリアに用いる芯材粒子は、電子写真画像形成用二成分キャリアとして公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;これらの磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子等が挙げられる。中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Mn-Mg-Srフェライトが好ましい。具体的には、LDC-200(パウダーテック社製)、DFC-400M(DOWAエレクトロニクス社製)が好適な例として挙げられる。
【0034】
前記被覆層の平均厚みは、0.2μm以上1.0μm以下が好ましく、0.4μm以上0.8μm以下がさらに好ましい。
ここで、前記被覆層の平均厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面を観察して測定することができる。
【0035】
本発明の現像剤は、本発明のキャリアを含み、さらにトナーを含有することができる。
トナーは結着樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤、外添剤等を含有することができ、モノクロトナー、カラートナー、白色トナー、透明トナー、金属的な光沢を有するトナーのいずれであってもよく、その製法も、粉砕法、重合法等の従来既知のものであっても、それ以外の製法であってもよい。本発明の効果は、カラートナー、特にイエロートナー、もしくは白色トナー、透明トナーと組み合わせた現像剤として利用する際に顕著である。
【0036】
トナーは、粉砕法、重合法等の公知の方法を用いて製造することができる。例えば、粉砕法を用いてトナーを製造する場合、まず、トナー材料を混練することにより得られる溶融混練物を冷却した後、粉砕し、分級して、母体粒子を作製する。次に、転写性、耐久性をさらに向上させるために、母体粒子に外添剤を添加し、トナーを作製する。
このとき、トナー材料を混練する装置としては、特に限定されないが、バッチ式の2本ロール;バンバリーミキサー;KTK型2軸押出し機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出し機(東芝機械社製)、2軸押出し機(KCK社製)、PCM型2軸押出し機(池貝鉄工社製)、KEX型2軸押出し機(栗本鉄工所社製)等の連続式の2軸押出し機;コ・ニーダ(ブッス社製)等の連続式の1軸混練機等が挙げられる。
【0037】
また、冷却した溶融混練物を粉砕する際には、ハンマーミル、ロートプレックス等を用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機、機械式の微粉砕機等を用いて微粉砕することができる。なお、平均粒径が3~15μmとなるように粉砕することが好ましい。
さらに、粉砕された溶融混練物を分級する際には、風力式分級機等を用いることができる。なお、母体粒子の平均粒径が5~20μmとなるように分級することが好ましい。
また、母体粒子に外添剤を添加する際には、ミキサー類を用いて混合攪拌することにより、外添剤が解砕されながら母体粒子の表面に付着する。
【0038】
結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリp-スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
圧力定着用の結着樹脂としては、特に限定されないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体;エポキシ樹脂、ポリエステル、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0039】
着色剤(顔料又は染料)としては、特に限定されないが、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色顔料;カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料等が挙げられ、二種以上を併用してもよく、透明トナーの場合は使用しなくてもよい。
【0040】
離型剤としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナウバワックス、エステルワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0041】
また、トナーは、帯電制御剤をさらに含有してもよい。帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン;炭素数が2~16のアルキル基を有するアジン系染料;C.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料;これらの塩基性染料のレーキ顔料;C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩;ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物;ジアルキルスズボレート化合物;グアニジン誘導体;アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂;モノアゾ染料の金属錯塩;サルチル酸;ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体;スルホン化した銅フタロシアニン顔料;有機ホウ素塩類;含フッ素4級アンモニウム塩;カリックスアレン系化合物等が挙げられるが、二種以上併用してもよい。なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好ましい。
【0042】
外添剤としては、特に限定されないが、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機粒子;ソープフリー乳化重合法により得られる平均粒径が0.05~1μmのポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、表面が疎水化処理されているシリカ、酸化チタン等の金属酸化物粒子が好ましい。さらに、疎水化処理されているシリカ及び疎水化処理されている酸化チタンを併用し、疎水化処理されているシリカよりも疎水化処理されている酸化チタンの添加量を多くすることにより、湿度に対する帯電安定性に優れるトナーが得られる。
【0043】
本発明の電子写真画像形成方法は上記本発明の現像剤を用いて画像形成することを特徴とし、本発明の電子写真画像形成装置は上記本発明の現像剤を含むことを特徴とする。
具体的には、本発明の電子写真画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程(静電潜像担持体を帯電させる帯電工程と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光工程とを含む)と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該潜像担持体を帯電させる帯電手段と、該潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有しており、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなるものであり、現像剤として本発明の現像剤を用いるものである。
【0044】
画像形成装置の実施形態について、図1を用いて説明する。図1に示されるように、まず、静電潜像担持体11が所定の周速度で回転駆動され、帯電装置32により、静電潜像担持体11の周面が正又は負の所定電位に均一に帯電される。次に、露光装置33により静電潜像担持体11の周面が露光され、静電潜像が順次形成される。さらに、静電潜像担持体11の周面に形成された静電潜像は、現像装置40により、本発明の現像剤を用いて現像され、トナー像が形成される。次に、静電潜像担持体11の周面に形成されたトナー像は、静電潜像担持体11の回転と同期され、給紙部から静電潜像担持体11と転写装置50との間に給紙された転写紙に、順次転写される。さらに、トナー像が転写された転写紙は、静電潜像担持体11の周面から分離されて定着装置に導入されて定着された後、複写物(コピー)として、画像形成装置100の外部へプリントアウトされる。一方、トナー像が転写された後の静電潜像担持体11の表面は、クリーニング装置60により、残留したトナーが除去されて清浄化された後、除電装置70により除電され、繰り返し画像形成に使用される。
【0045】
図2に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。このプロセスカートリッジは、感光体(120)と、近接型のブラシ状の帯電手段(132)、本発明の現像剤を収納する現像装置(142)、クリーニング手段(161)を少なくとも有するクリーニング装置を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在である。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機、プリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱自在に構成することができる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は質量部を、「%」は質量%を表す。
【0047】
[トナーの作製]
(結着樹脂合成例1)
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸276部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下230℃で8時間反応し、さらに10~15mmHgの減圧で5時間反応した後、160℃まで冷却して、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応した。
次いで、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソフォロンジイソシアネート188部と2時間反応を行ないイソシアネート含有プレポリマー(P1)を得た。
次いでプレポリマー(P1)267部とイソホロンジアミン14部を50℃で2時間反応させ、重量平均分子量64000のウレア変性ポリエステル(U1)を得た。
上記と同様にビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、テレフタル酸276部を常圧下、230℃で8時間重縮合し、次いで10~15mmHgの減圧で5時間反応して、ピーク分子量5000の変性されていないポリエステル(E1)を得た。
ウレア変性ポリエステル(U1)200部と変性されていないポリエステル(E1)800部を酢酸エチル/MEK(1/1)混合溶剤2000部に溶解、混合し、結着樹脂(B1)の酢酸エチル/MEK溶液を得た。
一部減圧乾燥し、結着樹脂(B1)を単離した。
【0048】
(マスターバッチ作成例1)
顔料:C.I.Pigment Yellow 155:40部
結着樹脂:ポリエステル樹脂A:60部
水:30部
【0049】
(ポリエステル樹脂A合成例)
テレフタル酸:60部
ドデセニル無水コハク酸:25部
無水トリメリット酸:15部
ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド:70部
ビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド:50部
上記組成物を、温度計、攪拌器、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた容量1Lの4つ口丸底フラスコ内に入れ、このフラスコをマントルヒーターにセットし、窒素ガス導入管より窒素ガスを導入してフラスコ内を不活性雰囲気下に保った状態で昇温し、次いで0.05gのジブチルスズオキシドを加えて温度を200℃に保って反応させポリエステル樹脂Aを得た。
【0050】
上記原材料をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ-ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルベライザーで1mmφの大きさに粉砕し、マスターバッチ(M1)を得た。
【0051】
(トナー製造例A)
ビーカー内に前記の結着樹脂(B1)の酢酸エチル/MEK溶液240部、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点81℃、溶融粘度25cps)20部、マスターバッチ(M1)8部を入れ、60℃にてTK式ホモミキサーにて12000rpmで攪拌し、均一に溶解、分散させ、トナー材料液を用意した。
ビーカー内にイオン交換水706部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(日本化学工業(株)製スーパタイト10)294部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を入れ均一に溶解した。
次いで、60℃に昇温し、TK式ホモミキサーにて12000rpmに攪拌しながら、上記トナー材料液を投入し10分間攪拌した。
ついでこの混合液を攪拌棒および温度計付のコルベンに移し、98℃まで昇温して溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、母体トナー粒子Aを得た。
母体トナー粒子A100部に、疎水性シリカ1.0部と、疎水化酸化チタン1.0部をヘンシェルミキサーにて混合して、トナーAを得た。
トナー粒径を、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTA2」を用い、アパーチャ径100μmで測定したところ、トナーAは体積平均粒径(Dv)=6.2μm、個数平均粒径(Dn)=5.1μmであった。
【0052】
[キャリアの作製]
(キャリア製造例1)
<樹脂液1-1>
-組成-
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 400部
・シリコーン樹脂溶液 4,000部
(SR-2410 東レ・ダウコーニング固形分濃度:20%)
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 10部
・カーボンブラック(ケッチェンブラック) 80部
・チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート) 40部
・トルエン 6,000部
【0053】
<樹脂液1-2>
-組成-
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 400部
・シリコーン樹脂溶液 4,000部
(SR-2410 東レ・ダウコーニング固形分濃度:20%)
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 10部
・粒子1:基体として酸化チタンを用いた五酸化二アンチモン 640部
・チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート) 40部
・トルエン 6,000部
【0054】
樹脂液1-1および樹脂液1-2のそれぞれにおいて、以上の各材料をホモミキサーにて10分間分散し、被覆層形成液を調合した。芯材粒子として粒径35μmのCu-Znフェライトを用い、樹脂液1-1をスピラコーター(岡田精工社製)により55℃の雰囲気下で30g/minに割合で塗布し、追って、樹脂液1-2を同様に塗布し、その後、乾燥させた。層厚の調整は液量によって行った。得られたキャリアを、電気炉中にて150℃で1時間放置して焼成し、冷却後に目開き100μmの篩を用いて解砕して、被覆層を有するキャリア1を得た。
【0055】
<芯材粒子の粒径>
芯材粒子の体積平均粒径の測定は、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社)のSRAタイプを使用し、0.7μm以上、125μm以下のレンジ設定で行ったものを用いた。
【0056】
<濃度勾配、及びカーボンブラックの体積割合>
カーボンブラックおよび粒子1の濃度勾配、並びに、カーボンブラックの体積割合については、本明細書に記載の方法により確認した。概略を説明すると、FIB(集束イオンビーム)にてキャリア表面の被覆層を切断し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)、EDX(エネルギー分散X線分光法)にて観察することで確認した。
【0057】
(キャリア製造例2)
粒子1を以下にしたこと以外はキャリア製造例1と同様にしてキャリア2を得た。
・粒子1:基体として酸化チタンを用いた三酸化二アンチモン 640部
【0058】
(キャリア製造例3)
粒子1を以下にしたこと以外はキャリア製造例1と同様にしてキャリア3を得た。
・粒子1:基体として酸化チタンを用いた五酸化二アンチモンドープ酸化スズ 600部
【0059】
(キャリア製造例4)
粒子1を以下にしたこと以外はキャリア製造例1と同様にしてキャリア4を得た。
・粒子1:基体としてアルミナを用いた五酸化二アンチモンドープ酸化スズ 600部
【0060】
(キャリア製造例5)
<樹脂液1-2>において粒子1を以下にしたこと、また粒子2として硫酸バリウムを別途使用したこと以外はキャリア製造例1と同様にしてキャリア5を得た。
・粒子1:基体としてアルミナを用いた五酸化二アンチモンドープ酸化スズ 600部
・粒子2:硫酸バリウム 650 部
【0061】
(キャリア製造例6)
粒子1を以下にしたこと以外はキャリア製造例1と同様にしてキャリア6を得た。
・粒子1:基体として酸化チタンを用いたタングステンドープ酸化スズ 800部
【0062】
(キャリア製造例7)
粒子1を以下にしたこと以外はキャリア製造例1と同様にしてキャリア7を得た。
・粒子1:五酸化二アンチモン 640部
【0063】
キャリア製造例1~7のキャリアを表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
なお、上記各粒子1の体積平均粒径は、510nm~550nmである。
また、得られたキャリアの被覆層の平均厚みは、0.21~0.24μmである。
キャリア1~7に含まれるカーボンブラックおよび粒子1は、被覆層の厚み方向に濃度勾配を有し、被覆層の表面に向かうほど粒子1の濃度は高く、かつカーボンブラックの濃度は低いものであった。キャリア1~7の被覆層の表面から深さ0.0~0.1[μm]の範囲において、被覆層中のカーボンブラックの体積割合は0[%]であった。
【0066】
(実施例1)
トナー製造例で得たトナーAを7質量部と、キャリア製造例1で得たキャリア1を93質量部用い、ミキサーで10分攪拌して現像剤1を作成した。得られた現像剤1を用いた以下の評価を実施した。
【0067】
<キャリア抵抗値変化量測定>
キャリア抵抗値変化量の測定は以下の方法にて行った。
キャリアを抵抗計測平行電極の電極間(ギャップ2mm)に投入し、DC1000Vを印加して30sec後の抵抗値をハイレジスト計で計測した。得られた値を体積抵抗率に変換した値を初期抵抗値とする。次に、下記のランニング後の現像剤中のトナーを前記ブローオフ装置にて除去し、得たキャリアに対して前記抵抗値変化量の測定方法と同様の方法で抵抗測定を行い、得られた値を体積抵抗率に変換し、初期抵抗値との差をキャリア抵抗値変化量とする。結果を表2に示した。下記の◎および〇評価が合格である。
-評価基準-
◎:2.0[Log(Ω・cm)]未満
○:2.0~2.2[Log(Ω・cm)]未満
△:2.2~2.4[Log(Ω・cm)]未満
×:2.4[Log(Ω・cm)]以上
【0068】
<ベタキャリア付着>
得られた現像剤を用いて、ランニング評価を実施した。デジタルカラー複写機・プリンタ複合機(RICOH Pro C9100、株式会社リコー製)に、得られた現像剤を用いて、画像面積率40%で1万枚、及び100万枚のランニング後のベタキャリア付着を評価した。
ベタ画像を所定の現像条件(帯電電位(Vd):-600V、画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:-100V、現像バイアス:DC、-500V)にて作像中に電源をOFFにする等の方法で作像を中断し、転写後の感光体上のキャリア付着の個数を数えて、以下の評価基準に基づき、1万枚、及び100万枚のランニング後のベタキャリア付着を評価した。評価結果を表2に示した。
なお、評価する領域は感光体上の10mm×100mmの領域とした。また、下記基準において、△以上が、使用可能である。
-評価基準-
◎:0個
○:1個~3個
△:4個~10個
×:11個以上
【0069】
<帯電低下量>
初期剤と経時剤のそれぞれにおいて、帯電低下量の評価を行なった。
まず、初期のキャリア93重量%に対しトナー7重量%の割合で混合し摩擦帯電させたサンプルを、一般的なブローオフ法(東芝ケミカル株式会社製、TB-200)にて測定し、この値を初期帯電量とする。次に、経時剤(前記ランニング後のサンプル)からトナーを前記ブローオフ装置にて除去し、得られたキャリア93重量%に対し新規にトナーAを7重量%の割合で混合し、初期のキャリアと同様に摩擦帯電させたサンプルを、初期のキャリアと同様に帯電量測定を行い、初期帯電量との差を帯電低下量とする。帯電低下量の目標値は10μC/g未満である。
-評価基準-
◎:5μC/g未満
○:5~10μC/g未満
△:10~15μC/g未満
×:15μC/g以上
【0070】
[実施例2~5、比較例1、2]
キャリアとして、キャリア2~7を用い、現像剤2~7としたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0071】
各実施例、比較例に用いた現像剤のキャリア及び評価結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【符号の説明】
【0073】
11 静電潜像担持体
32 帯電装置
33 露光装置
40 現像装置
50 転写装置
60 クリーニング装置
70 除電装置
120 感光体
132 帯電手段
142 現像手段
161 クリーニング手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開昭58-108548号公報
【特許文献2】特開昭54-155048号公報
【特許文献3】特開昭57-40267号公報
【特許文献4】特開昭58-108549号公報
【特許文献5】特開昭59-166968号公報
【特許文献6】特公平1-19584号公報
【特許文献7】特公平3-628号公報
【特許文献8】特開平6-202381号公報
【特許文献9】特開平5-273789号公報
【特許文献10】特開平8-6307号公報
【特許文献11】特許第2683624号公報
【特許文献12】特開昭56-75659号公報
【特許文献13】特開平4-360156号公報
【特許文献14】特開平5-303238号公報
【特許文献15】特開平11-174740号公報
【特許文献16】特開平7-140723号公報
【特許文献17】特開平8-179570号公報
【特許文献18】特開平8-286429号公報
【特許文献19】特開平4-360156号公報
【特許文献20】特開平5-303238号公報
【特許文献21】特開平11-174740号公報
【特許文献22】特開2007-248614号公報
【特許文献23】特開2011-197569号公報
【特許文献24】特開2018-155970号公報
図1
図2