(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172443
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電源制御装置、画像形成装置、及び電源制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241205BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20241205BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20241205BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241205BHJP
【FI】
G03G21/00 398
G03G15/20 510
H02M7/06 G
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090163
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA30
2H033BB18
2H033CA46
2H270MG01
2H270MG02
2H270ZC04
2H270ZC05
5H006AA01
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC02
5H770AA05
5H770AA19
5H770BA09
5H770CA02
5H770HA02W
5H770HA06Z
(57)【要約】
【課題】直流安定化電源回路のコストの増大を抑制しつつ、直流安定化電源回路への入力電流に起因する高調波電流の発生を抑制する。
【解決手段】電源制御装置は、交流電源からの交流電圧を位相制御して交流負荷へ供給する位相制御回路と、前記交流電源からの前記交流電圧をコンデンサにより平滑化して直流電圧を生成して直流負荷へ供給する直流安定化電源回路と、温度センサにより検出される、前記交流負荷により加熱される部材の温度を目標温度にする電力を前記交流負荷に供給する位相制御を前記位相制御回路に実施させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記コンデンサへの入力尖頭電流が発生する位相角で前記交流負荷が通電されるように前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、を特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を位相制御して交流負荷へ供給する位相制御回路と、
前記交流電源からの前記交流電圧をコンデンサにより平滑化して直流電圧を生成して直流負荷へ供給する直流安定化電源回路と、
温度センサにより検出される、前記交流負荷により加熱される部材の温度を目標温度にする電力を前記交流負荷に供給する位相制御を前記位相制御回路に実施させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記コンデンサへの入力尖頭電流が発生する位相角で前記交流負荷が通電されるように前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、
を特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記交流電圧の周期の整数倍の制御周期において1/2周期毎に設定する複数の位相角でそれぞれ示される複数の通電パターンのうちのいずれかを、前記直流負荷の大きさにより変化する前記入力尖頭電流が発生する位相角に応じて選択し、選択した前記通電パターンにしたがって前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、
を特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制御周期内のn個(nは2以上の整数)の1/2周期のうち、少なくとも半分において、前記交流負荷の通電を開始する位相が前記入力尖頭電流が発生する位相角と重なる前記通電パターンを選択すること、
を特徴とする請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記位相制御回路及び前記直流安定化電源回路は、定格電圧が100V系の前記交流電源からの前記交流電圧を入力すること、
を特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電源制御装置と、
記録媒体上のトナーを加熱して前記記録媒体上に定着させる定着装置を含む画像形成部と、を有し、
前記交流負荷は、前記定着装置に搭載されるヒータであり、
前記部材は、前記定着装置に搭載される定着ローラであること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
交流電源からの交流電圧を位相制御して交流負荷へ供給する位相制御回路と、前記交流電源からの前記交流電圧をコンデンサにより平滑化して直流電圧を生成して直流負荷へ供給する直流安定化電源回路と、を有する電源制御装置の電源制御方法であって、
温度センサにより検出される、前記交流負荷により加熱される部材の温度を目標温度にする電力を前記交流負荷に供給する位相制御を前記位相制御回路に実施させ、
前記コンデンサへの入力尖頭電流が発生する位相角で前記交流負荷が通電されるように前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、
を特徴とする電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置、画像形成装置、及び電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機等の熱定着器を有する機器は、交流電源の位相角を制御して交流負荷への給電電力を調整する位相制御回路と、交流電源からの交流電流を整流して直流負荷に供給する直流電源を生成する直流安定化電源回路とを有する。この種の機器は、位相制御回路から交流負荷への電流供給期間に交流電源から直流安定化電源への電流供給を停止することで、高調波電流の発生を抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱定着器等では、位相角の制御により交流負荷への電流供給期間を調整することで温度を制御するため、例えば、現在温度と設定温度との差に応じて電流供給期間である位相角は変化する。位相角の変化に合わせて直流安定化電源回路に入力される入力電流を制御するために、昇圧チョッパを有する制御回路(力率改善回路)が使用される場合、回路が大型化し、コストが増大するという課題がある。
【0004】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、直流安定化電源回路のコストの増大を抑制しつつ、直流安定化電源回路への入力電流に起因する高調波電流の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の電源制御装置は、交流電源からの交流電圧を位相制御して交流負荷へ供給する位相制御回路と、前記交流電源からの前記交流電圧をコンデンサにより平滑化して直流電圧を生成して直流負荷へ供給する直流安定化電源回路と、温度センサにより検出される、前記交流負荷により加熱される部材の温度を目標温度にする電力を前記交流負荷に供給する位相制御を前記位相制御回路に実施させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記コンデンサへの入力尖頭電流が発生する位相角で前記交流負荷が通電されるように前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
直流安定化電源回路のコストの増大を抑制しつつ、直流安定化電源回路への入力電流に起因する高調波電流の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電源制御装置を含む画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【
図2】
図1の電源制御装置と電源制御装置に接続される要素の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図2の直流安定化電源回路及び位相制御回路の一例を示す回路図である。
【
図4】
図3に示した交流電圧Vac、Vac-ΔV及び直流電圧Vcの電圧波形と、コンデンサ及びヒータに流れる電流の波形の一例を示す図である。
【
図5】点灯パターンに応じてヒータに流れる交流電流とコンデンサへの入力尖頭電流との一例を示す波形図である。
【
図6】点灯パターンに応じてヒータに流れる交流電流とコンデンサへの入力尖頭電流との別の例を示す波形図である。
【
図7】
図1の操作部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る電源制御装置を含む画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
図1に示す画像形成装置1は、例えば、複写機能、プリント機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等を有するデジタル複合機(MFP:Multi-Function Printer)である。なお、画像形成装置1は、記録紙等の記録媒体上のトナー像を記録媒体に定着させる定着装置を有するものであれば、デジタル複合機以外でもよい。
【0010】
画像形成装置1は、アプリケーションの切り替えにより、コピー機能、プリント機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能をそれぞれ実現する動作モードを相互に切り替えることが可能である。画像形成装置1は、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリント機能の選択時にはプリントモードとなり、スキャナ機能の選択時にはスキャナモードとなり、ファクシミリ機能の選択時にはファクシミリモードとなる。
【0011】
例えば、画像形成装置1は、自動原稿送り装置2(ADF:Auto Document Feeder)、画像読み取り装置3、書き込みユニット4、プリンタユニット5、電源制御装置100、制御部210及び操作部220を有する。プリンタユニット5は、感光体ドラム6、現像装置7、搬送ベルト8及び定着装置9と、給紙トレイ10が収納される収納空間とを有する。
【0012】
プリンタユニット5は、画像情報に基づいて用紙等の記録媒体に転写するトナー像を作成する。プリンタユニット5は、画像を形成する画像形成部の一例である。以下、画像形成装置1での画像の形成の流れの一例として、動作モードがコピーモードに設定されている場合について簡単に説明する。
【0013】
コピーモードでは、コピーの対象である複数枚の原稿が自動原稿送り装置2にセットされ、あるいは、コピーの対象である原稿が画像読み取り装置3上にセットされる。操作部220の操作パネルに表示されるスタートボタンが押されると、自動原稿送り装置2は、原稿を1枚ずつ画像読み取り装置3に給送する。画像読み取り装置3は、自動原稿送り装置2から順に送られる原稿の各々又は画像読み取り装置3にセットされた原稿の画像情報を読み取る。画像読み取り装置3により読み取られた画像情報は、例えば、制御部210に含まれる画像処理部により処理される。
【0014】
書き込みユニット4は、画像処理部により処理された画像情報を光情報に変換する。感光体ドラム6は、感光体ドラム6に対向する位置に配置される帯電器により一様に帯電された後、書き込みユニット4により変換された光情報を含むレーザ光により露光される。露光により、感光体ドラム6上には静電潜像が形成される。現像装置7は、感光体ドラム6上の静電潜像を現像し、感光体ドラム6上にトナー像を形成する。搬送ベルト8は、トナー像を記録媒体に転写する。
【0015】
定着装置9は、トナー像を記録媒体に定着させる。そして、原稿の画像がコピーされた転写紙は、排出部から排出される。例えば、定着装置9は、図示しない定着ローラと、ハロゲンランプ等のヒータと、温度センサとを有する。
【0016】
制御部210は、内蔵するCPU(Central Processing Unit)等のコントローラに制御プログラムを実施させることで、プリンタユニット5の制御、通信の制御及び操作部220への入力の制御等、画像形成装置1の全体の動作を制御する。プリンタユニット5の制御は、定着装置9のヒータのオン/オフ制御を含む。そして、制御部210は、制御プログラムを実施することで記録媒体に転写する画像を形成する。
【0017】
操作部220は、ユーザの操作に応じた各種の入力を受け付けるとともに、操作部220の操作パネルに各種の情報を表示する。例えば、操作パネルに表示される情報は、入力を受け付けた操作を示す情報、画像形成装置1の動作状況を示す情報、又は、画像形成装置1の設定状態を示す情報などである。
【0018】
電源制御装置100は、商用電源等の交流電源20から供給される交流電圧を複数種の直流電圧に変換する。電源制御装置100は、変換した複数種の直流電圧を画像形成装置1のプリンタユニット5内の負荷と、制御部210に搭載されるCPU及びメモリ等とにそれぞれ供給する。
【0019】
例えば、プリンタユニット5内の負荷として、各種モータ、感光体ドラム6を帯電させる帯電器及び現像装置7の現像ローラ等がある。また、電源制御装置100は、交流電源20から供給される交流電圧を位相制御して定着装置9のヒータへ供給する。電源制御装置100の例は、
図2及び
図3で説明される。
【0020】
図2は、
図1の電源制御装置100と電源制御装置100に接続される要素の一例を示すブロック図である。電源制御装置100は、直流安定化電源回路110と位相制御回路120とを有する。
【0021】
直流安定化電源回路110は、交流電源20からの交流電圧に基づいて直流電圧を生成し、生成した直流電圧を操作部220及び制御部210等の直流負荷に供給する。位相制御回路120は、交流電源20からの交流電圧を位相制御することで位相制御された交流電圧を生成し、生成した交流電圧を定着装置9のヒータに供給する。
【0022】
例えば、温度センサ92は、定着装置9の定着ローラに近接する位置に配置され、ヒータにより加熱される定着ローラの温度を検出する。温度センサ92は、検出した温度を示す温度情報を制御部210に出力する。
【0023】
例えば、制御部210は、温度センサ92からの温度情報に基づいて、点灯パターンテーブル230に保持された複数の点灯パターンのいずれかを選択する。なお、点灯パターンテーブル230は、制御部210に搭載されるROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリに記憶されてもよい。
【0024】
制御部210は、選択した点灯パターンにしたがってタイミング信号を位相制御回路120に出力し、位相制御回路120に位相制御を実施させる。位相制御回路120は、制御部210からの指示に基づいて、ヒータに供給する交流電圧のオン/オフを制御する位相制御を実施する。点灯パターン及び位相制御については、
図5及び
図6で説明される。点灯パターンは、ヒータの導通パターンの一例である。
【0025】
図3は、
図2の直流安定化電源回路110及び位相制御回路120の一例を示す回路図である。交流電源20は、インダクタL1及び抵抗R1による電源インピーダンス成分を含む。
【0026】
例えば、交流電源20の定格電圧は100V系である。定格電圧が100V系の場合、定格電圧が200V系の場合に比べて交流負荷の電流による電圧降下を大きくすることができ、コンデンサCapへの入力電流をヒータ電流と合成されやすくすることができる。このため、全体の入力電流が交流電源20からの交流電圧と同様に正弦波に近づきやすくなり、高調波電流の抑制効果を大きくすることができる。
【0027】
直流安定化電源回路110は、交流電源20からの交流電圧を整流して直流負荷に供給する直流電圧Vcを生成するダイオードブリッジ111と、生成された直流電圧による電荷が充電されるコンデンサCapとを有する。
【0028】
位相制御回路120は、トライアック121と、トライアック121のゲートにパルス電流PSを印加するヒータトリガ122とを有する。位相制御回路120は、パルス電流PSによりトライアック121をオン/オフさせることで、交流電源20から定着装置9のヒータ91に供給される交流電圧の位相制御を実施する。ヒータトリガ122は、
図2の制御部210からのタイミング信号に基づいて、パルス電流PSを生成する。
【0029】
例えば、交流電源20から供給される交流電圧Vacのうち、交流電圧ΔVがヒータ91に供給され、交流電圧Vac-ΔVがダイオードブリッジ111に供給される。
【0030】
図4は、
図3に示した交流電圧Vac、Vac-ΔV及び直流電圧Vcの電圧波形と、コンデンサCap及びヒータ91に流れる電流の波形の一例を示す図である。コンデンサCapに流れるCap電流は、コンデンサCapへの入力尖頭電流である。入力尖頭電流は、直流安定化電源回路110に接続される直流負荷の大きさによって発生タイミング(すなわち、位相)が変化する。例えば、トナー像が定着された記録紙にステイプル処理などの仕上げ処理を実施するフィニッシャーを動作させる場合、直流負荷は大きくなる。
図4に示す電流波形では、Cap電流が発生する位相期間とヒータ電流の通電を開始する位相とが重なる。
【0031】
この実施形態では、制御部210は、コンデンサCapへの入力尖頭電流の発生タイミングに応じて、入力尖頭電流が発生する位相角でヒータ91が通電されるように位相制御回路120に位相制御を実施させる。換言すれば、制御部210は、ヒータ91の通電を開始する位相が入力尖頭電流が発生する位相角と重なる通電パターンを点灯パターンテーブル230から選択する。
【0032】
これにより、ヒータ91の通電期間に合わせてコンデンサCapへの入力尖頭電流の発生タイミングを変更する制御を不要にでき、直流安定化電源回路110の回路規模の増大を抑制することができる。この結果、画像形成装置1のコストの増大を抑制することができる。なお、この実施形態で採用しているコンデンサCapへの入力尖頭電流の発生タイミングに合わせてヒータ91の通電期間を変更する制御は、点灯パターンテーブル230から点灯パターンを選択するだけで実施することができる。
【0033】
図5及び
図6は、点灯パターンに応じてヒータ91に流れる交流電流とコンデンサCapへの入力尖頭電流との一例を示す波形図である。
図5及び
図6に示す波形は、
図2の電源制御装置100が電源制御方法を実施することにより生成される。
図5及び
図6に示すヒータ91に流れる交流電流は、点灯パターンテーブル230から選択される点灯パターンも示している。例えば、交流電源20からの交流電圧の波形は、正弦波である。
【0034】
図5及び
図6に示す例では、
図2の制御部210は、交流電源20からの交流電圧の2周期を制御周期とし、1/2周期(0.5周期)毎に位相角を設定する。また、
図5及び
図6に示す例では、定着ローラを所定温度に設定するために要求される点灯DUTYが50%であるとする。点灯DUTYは、交流電圧の2周期におけるヒータ91の平均通電率である。なお、制御周期は、交流電源20からの交流電圧の2周期に限定されず、1以上の整数倍であればよい。
【0035】
図5において、入力尖頭電流の発生タイミングが位相角50%付近の場合、制御部210は、4つの1/2周期のそれぞれでのヒータ91の通電率(点灯率)を、ゼロクロス点を基準にしてそれぞれ50%、50%、50%、50%に設定する。換言すれば、入力尖頭電流の発生タイミングが位相角50%付近の場合、制御部210は、ヒータ91の通電率がそれぞれ50%、50%、50%、50%の点灯パターンを選択する。
【0036】
図6において、直流負荷が増えたことで入力尖頭電流の発生タイミングが位相角60%付近であれば、制御部210は、4つの1/2周期のそれぞれでのヒータ91の通電率(点灯率)を、ゼロクロス点を基準にしてそれぞれ60%、40%、40%、60%に設定する。換言すれば、入力尖頭電流の発生タイミングが位相角60%付近の場合、制御部210は、ヒータ91の通電率がそれぞれ60%、40%、40%、60%の点灯パターンを選択する。なお、通電期間の60%と40%との順序は、
図6に示す順序に限定されない。
【0037】
図6に示す例では、制御部210は、制御周期内の4つの1/2周期のうちの半分において、ヒータ91の通電を開始する位相がコンデンサCapへの入力尖頭電流が発生する位相角と重なる点灯パターンを選択する。制御周期内の複数の1/2周期のうちの少なくとも半分において、ヒータ91の通電開始位相が入力尖頭電流が発生する位相角と重なる点灯パターンを選択することで、入力尖頭電流がどの位相角で発生しても、点灯DUTYを要求された比率にすることができる。
【0038】
図7は、
図1の操作部220のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。操作部220は、CPU231とROM232とRAM233とを有する。また、操作部220は、入力インタフェース部234と出力インタフェース部235と入出力インタフェース部236と通信インタフェース部237とを有する。
【0039】
例えば、CPU231とROM232とRAM233と入力インタフェース部234と出力インタフェース部235と入出力インタフェース部236と通信インタフェース部237とは、バスBUSを介して相互に接続される。
【0040】
CPU231は、OS(Operating System)及びアプリケーション等の各種プログラムを実施する。ROM232は、各種プログラムをCPU231により実施可能にするための基本プログラムや各種パラメータ等を保持する。RAM233は、CPU231により実施される各種プログラムや、プログラムで使用するデータ等を記憶する。例えば、各種プログラムは、画像読み取り装置3で読み取った原稿画像の画像処理を実施する画像処理プログラムを含んでもよい。
【0041】
入力インタフェース部234は、操作パネルの入力部である。出力インタフェース部235は、操作パネルの表示部である。入出力インタフェース部236には、図示しないHDD(Hard Disk Drive)及び記録メディア等の入出力装置300が接続されてもよい。通信インタフェース部237は、操作部220をネットワーク等に接続可能であり、画像形成装置1のサービス拠点と通信することができる。
【0042】
なお、
図1の制御部210のハードウェア構成は、
図7の操作部220のハードウェア構成と同様である。ただし、制御部210は、入力インタフェース部234、出力インタフェース部235、入出力インタフェース部236及び通信インタフェース部237は、持たなくてもよい。
【0043】
以上、この実施形態では、直流安定化電源回路110に入力される入力電流を制御することなく、入力尖頭電流の発生期間とヒータ91の通電を開始する期間とを重ねることができる。この結果、全体の入力電流が正弦波に近づくため、直流安定化電源回路110のコストの増大を抑制しつつ、直流安定化電源回路110のコンデンサCapへの入力尖頭電流に起因する高調波電流の発生を抑制することができる。
【0044】
直流負荷が変化する場合、直流負荷の変化に応じて入力尖頭電流の発生タイミングは変化するため、位相制御で設定する適切な位相角も変化させる必要がある。この実施形態では、直流負荷に応じて点灯パターンを切り替えるため、直流負荷が変化する場合にも、入力尖頭電流の発生タイミングの変化に合わせて、適切な位相角を設定することができ、高調波電流の発生を抑制することができる。
【0045】
制御部210は、入力尖頭電流の発生タイミング(位相角)に応じて、入力尖頭電流の発生期間とヒータ91の通電を開始する期間とが重なる点灯パターンを点灯パターンテーブル230から選択する。これにより、回路規模を増大させることなく、また、既存の回路を使用して、直流安定化電源回路110のコンデンサCapへの入力尖頭電流に起因する高調波電流の発生を抑制することができる。
【0046】
制御周期内の複数の1/2周期のうちの少なくとも半分において、ヒータ91の通電開始位相が入力尖頭電流が発生する位相角と重なる点灯パターンを選択することで、入力尖頭電流がどの位相角で発生しても、点灯DUTYを要求された比率にすることができる。
【0047】
定格電圧が100V系の交流電源20からの交流電流を直流安定化電源回路110及び位相制御回路120に入力することで、コンデンサCapへの入力電流をヒータ電流と合成されやすくすることができる。これにより、全体の入力電流が正弦波に近づきやすくなり、高調波電流の抑制効果を大きくすることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、交流負荷が画像形成装置1の定着装置9のヒータ91である例が説明された。しかしながら、交流負荷は、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、被覆部材であるフィルムを用紙等の表面に熱圧着するラミネータ、又は、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどでもよい。
【0049】
また、上述した実施形態は、定着装置9の定着ローラを加熱するヒータ91の制御に適用する例について述べた。しかしながら、上述した実施形態は、定着装置の定着ベルトをヒータ部材で加熱する、いわゆる摺動定着方式におけるヒータ部材の制御にも適用することができる。
【0050】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1>
交流電源からの交流電圧を位相制御して交流負荷へ供給する位相制御回路と、
前記交流電源からの前記交流電圧をコンデンサにより平滑化して直流電圧を生成して直流負荷へ供給する直流安定化電源回路と、
温度センサにより検出される、前記交流負荷により加熱される部材の温度を目標温度にする電力を前記交流負荷に供給する位相制御を前記位相制御回路に実施させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記コンデンサへの入力尖頭電流が発生する位相角で前記交流負荷が通電されるように前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、
を特徴とする電源制御装置。
<2>
前記制御部は、前記交流電圧の周期の整数倍の制御周期において1/2周期毎に設定する複数の位相角でそれぞれ示される複数の通電パターンのうちのいずれかを、前記直流負荷の大きさにより変化する前記入力尖頭電流が発生する位相に応じて選択し、選択した前記通電パターンにしたがって前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、
を特徴とする<1>に記載の電源制御装置。
<3>
前記制御部は、前記制御周期内のn個(nは2以上の整数)の1/2周期のうち、少なくとも半分において、前記交流負荷の通電を開始する位相が前記入力尖頭電流が発生する位相角と重なる前記通電パターンを選択すること、
を特徴とする<2>に記載の電源制御装置。
<4>
前記位相制御回路及び前記直流安定化電源回路は、定格電圧が100V系の前記交流電源からの前記交流電圧を入力すること、
を特徴とする<1>ないし<3>のいずれか1項に記載の電源制御装置。
<5>
<1>ないし<4>のいずれか1項に記載の電源制御装置と、
記録媒体上のトナーを加熱して前記記録媒体上に定着させる定着装置を含む画像形成部と、を有し、
前記交流負荷は、前記定着装置に搭載されるヒータであり、
前記部材は、前記定着装置に搭載される定着ローラであること、
を特徴とする画像形成装置。
<6>
交流電源からの交流電圧を位相制御して交流負荷へ供給する位相制御回路と、前記交流電源からの前記交流電圧をコンデンサにより平滑化して直流電圧を生成して直流負荷へ供給する直流安定化電源回路と、を有する電源制御装置の電源制御方法であって、
温度センサにより検出される、前記交流負荷により加熱される部材の温度を目標温度にする電力を前記交流負荷に供給する位相制御を前記位相制御回路に実施させ、
前記コンデンサへの入力尖頭電流が発生する位相角で前記交流負荷が通電されるように前記位相制御回路に前記位相制御を実施させること、
を特徴とする電源制御方法。
【0051】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成装置
2 自動原稿送り装置
3 画像読み取り装置
4 書き込みユニット
5 プリンタユニット
6 感光体ドラム
7 現像装置
8 搬送ベルト
9 定着装置
10 給紙トレイ
20 交流電源
91 ヒータ
92 温度センサ
100 電源制御装置
110 直流安定化電源回路
111 ダイオードブリッジ
120 位相制御回路
121 トライアック
122 ヒータトリガ
210 制御部
220 操作部
230 点灯パターンテーブル
231 CPU
232 ROM
233 RAM
234 入力インタフェース部
235 出力インタフェース部
236 入出力インタフェース部
237 通信インタフェース部
300 入出力装置
Cap コンデンサ
L1 インダクタ
R1 抵抗
Vac、ΔV、Vac-ΔV 交流電圧
Vc 直流電圧
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】