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特開2024-172518飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172518
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241205BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L7/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090293
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 妙子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 美由希
(72)【発明者】
【氏名】倉坪 美奈
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE11
4B023LE14
4B023LG01
4B023LG04
4B023LK05
4B023LL03
4B023LP11
4B023LP20
4B023LT03
4B023LT27
4B023LT41
4B023LT43
4B023LT44
4B023LT60
4B023LT65
(57)【要約】
【課題】米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができる飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法を提供する。
【解決手段】炊飯した米飯をほぐし、ほぐした米飯によって飯類を作成する飯類作成装置1であって、モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部32と、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクを検出するトルク検出部74と、トルク検出部74によって検出したトルクに基づいて、米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部75と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯した米飯をほぐし、ほぐした前記米飯によって飯類を作成する飯類作成装置であって、
モータ駆動で前記米飯をほぐすほぐし部と、
前記米飯をほぐすときの前記ほぐし部のトルクを検出するトルク検出部と、
前記トルク検出部によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部と、を備えたことを特徴とする飯類作成装置。
【請求項2】
前記ほぐれ度合い判定部は、前記トルク検出部によって検出した前記トルクが、前記ほぐれ度合いが良好となる適正範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の飯類作成装置。
【請求項3】
前記ほぐれ度合い判定部によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、米飯の炊飯における炊飯油量を調整する炊飯油量調整部を、更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の飯類作成装置。
【請求項4】
前記ほぐれ度合い判定部によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、米飯の炊飯における炊飯水量を調整する炊飯水量調整部を、更に備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の飯類作成装置。
【請求項5】
前記ほぐれ度合い判定部によって判定したほぐれ度合いの良否を報知する報知部を、更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の飯類作成装置。
【請求項6】
モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部のトルクを検出するトルク検出部と、
前記トルク検出部によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部と、を備えたことを特徴とするほぐれ判定装置。
【請求項7】
モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部のトルクを検出するトルク検出工程と、
前記トルク検出工程によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定工程と、を実行することを特徴とするほぐれ判定方法。
【請求項8】
米飯を炊飯し、炊飯した前記米飯をほぐし、ほぐした前記米飯によって飯類を作成する飯類作成方法であって、
モータ駆動で前記米飯をほぐすほぐし部のトルクを検出するトルク検出工程と、
前記トルク検出工程によって検出した前記トルクが、前記米飯のほぐれ度合いが良好となる適正範囲内であるか否かを判定するほぐれ度合い判定工程と、
前記ほぐれ度合い判定工程によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、前記米飯の炊飯における炊飯油量又は炊飯水量を調整する調整工程と、を実行することを特徴とする飯類作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飯類の作成は、炊飯した米飯をほぐし、ほぐした米飯を成形することで行われてきた。例えば、飯類作成装置として、米飯(炊飯米)の米粒を互いに離間してバラバラ状態に攪拌するほぐし部を備えたおにぎり成形装置がある(特許文献1参照)。このおにぎり成形装置は、ほぐし部(攪拌部)と、米飯のおにぎり一個分を計量し分別する計量分別部と、分別したおにぎり一個分の米飯をおにぎり形状に成形する成形部と、成形した米飯に具材を充填するための穴に穿孔する具材用穿孔部と、穿孔した穴に具材を充填する具材充填部と、を備えている。このおにぎり成形装置では、米飯をほぐすほぐし部を設けたことで、米飯のほぐれ度合いを良好な状態に調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7193279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のおにぎり成形装置では、ほぐれ度合いの判定を人の官能(目視や喫食等)によって行うため、米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができず、米飯のほぐれ度合いを精度良く調整できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができる飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、炊飯した米飯をほぐし、ほぐした前記米飯によって飯類を作成する飯類作成装置であって、モータ駆動で前記米飯をほぐすほぐし部と、前記米飯をほぐすときの前記ほぐし部のトルクを検出するトルク検出部と、前記トルク検出部によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部と、を備えたことを特徴とする飯類作成装置を提供する。なお、ここにいう飯類とは、米飯を使って作成した商品であり、米飯をほぐす工程を経たものである。飯類としては、例えば、おにぎり、海苔巻き、容器に詰められた白米(例えば、弁当用の御飯)等が挙げられる。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するため、モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部のトルクを検出するトルク検出部と、前記トルク検出部によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部と、を備えたことを特徴とするほぐれ判定装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記目的を達成するため、モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部のトルクを検出するトルク検出工程と、前記トルク検出工程によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定工程と、を実行することを特徴とするほぐれ判定方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記目的を達成するため、米飯を炊飯し、炊飯した米飯をほぐし、ほぐした前記米飯によって飯類を作成する飯類作成方法であって、モータ駆動で前記米飯をほぐすほぐし部のトルクを検出するトルク検出工程と、前記トルク検出工程によって検出した前記トルクが、前記米飯のほぐれ度合いが良好となる適正範囲内であるか否かを判定するほぐれ度合い判定工程と、前記ほぐれ度合い判定工程によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、前記米飯の炊飯における炊飯油量又は炊飯水量を調整する調整工程と、を実行することを特徴とする飯類作成方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法は、米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るおにぎり作成装置の構成例を示した構成図である。
図2】成形装置の構成例を示した構成図である。
図3】おにぎり作成動作を示したフローチャートである。
図4】試験装置の構成例を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る飯類作成装置、ほぐれ判定装置、ほぐれ判定方法及び飯類作成方法を適用したおにぎり作成装置について説明する。このおにぎり作成装置は、本発明の飯類作成装置で必須のほぐし部、トルク検出部、ほぐれ度合い判定部を有し、それ以外の本発明の飯類作成装置に任意に選択可能な装置部を含む装置である。また、本おにぎり作成装置は、飯類の一例として、おにぎりを作成するものであり、米飯を炊飯し、炊飯した米飯をほぐし、ほぐした米飯によっておにぎりを作成する装置である。特に、本おにぎり作成装置は、米飯をほぐすほぐし部のトルクを指標値として、米飯のほぐれ度合い(ほぐれ性)を判定するものである。なお、おにぎり作成装置は、飯類作成装置の一例である。
【0013】
(おにぎり作成装置の構成)
図1に示すように、おにぎり作成装置1は、米飯を炊飯する炊飯装置11と、炊飯された米飯をおにぎり状に成形する成形装置12と、成形装置12による成形途中又は成形後の米飯に対し、具の充填、成形した米飯に対する調味料の塗布、海苔等の装着等の追加処理を行う追加処理装置13と、これらを制御する制御端末14と、を備えている。
【0014】
炊飯装置11は、炊飯釜21と、炊飯釜21を加熱するヒータ22と、炊飯釜21に米を供給する米供給部23と、炊飯釜21に水(炊飯水)を供給する水供給部24と、炊飯釜21に炊飯油を供給する油供給部25と、を備えている。
【0015】
米供給部23は、米を貯留し、制御端末14からの指示に従って、貯留した米を炊飯釜21に供給する。水供給部24は、水を貯留し、制御端末14からの指示に従って、貯留した水を炊飯釜21に供給する。油供給部25は、炊飯油を貯留し、制御端末14からの指示に従って、貯留した炊飯油を炊飯釜21に供給する。なお、米、水、炊飯油の炊飯釜21への供給は、人の手によって手動で行う構成であってもよいし、自動で供給する構成であってもよい。
【0016】
米供給部23から供給された米と、水供給部24から供給された水と、油供給部25から供給された炊飯油とが、炊飯釜21に入れられた状態で、図外の蓋で炊飯釜21を閉塞してヒータ22を駆動することで、米の炊飯が行われる。
【0017】
図2に示すように、成形装置12は、上部に米飯導入部31aが形成された攪拌ケース31と、攪拌ケース31に導入された米飯をモータ駆動でほぐすほぐし部32と、ほぐし部32によってほぐされた米飯をおにぎり1個分だけ計量し分別する米飯量調整部33と、分別された米飯をおにぎり状に成形する成形部34と、を備えている。炊飯装置11によって炊飯された米飯は、米飯導入部31aから攪拌ケース31に導入される。なお、炊飯装置11からの米飯の搬送は、人の手によって手動で行う構成であってもよいし、ベルトコンベア等によって自動で行う構成であってもよい。
【0018】
ほぐし部32は、攪拌ケース31内の米飯を攪拌するパドル41と、パドル41を回転駆動する駆動モータ42と、パドル41と駆動モータ42の出力軸との間に介設され、駆動モータ42のトルクを検出するトルクメータ43と、を備えている。
【0019】
パドル41は、例えば、駆動モータ42の出力軸に対し、トルクメータ43を介して軸着されたシャフト41aと、シャフト41aから径方向に突出して形成された複数の攪拌フィン41bと、を一体として有している。駆動モータ42の駆動によって、パドル41が回転することで、複数の攪拌フィン41bによって米飯が攪拌される。これにより、米飯がほぐされ、米飯の米粒がバラされて、米飯がほぐれた状態となる。
【0020】
駆動モータ42は、パドル41を回転駆動可能に構成されており、制御端末14の制御によって、駆動/非駆動の制御及び回転速度の制御が可能に構成されている。
【0021】
トルクメータ43は、パドル41を回転させたときに駆動モータ42の主軸に負荷するトルクを測定する。以下、駆動モータ42の主軸に負荷するトルクを、単に「ほぐし部32のトルク」と呼称する。詳細は後述するが、本実施形態では、このトルクメータ43によって測定したほぐし部32のトルクが、米飯のほぐれ度合いの良否判定に用いられる。
【0022】
米飯量調整部33は、例えば、シャッター機構等で構成され、米飯の量をおにぎり1個分だけ計量し分別して成形部34に引き渡す。
【0023】
成形部34は、例えば、おにぎり状の成形型枠体(おにぎり型)等で構成され、米飯量調整部33によって分別された米飯を、おにぎり状に成形する。
【0024】
追加処理装置13は、例えば、おにぎり状に成形された米飯が導入され、当該米飯内への具の充填、当該米飯に対する調味料の塗布、当該米飯への海苔の装着等を行う。これらの追加処理によって、おにぎりの作成を完了させる。
【0025】
図1に示すように、制御端末14は、制御部51及び記憶部52を備えた情報処理装置である。記憶部52は、例えば、フラッシュROM等で構成されており、炊飯装置11、成形装置12及び追加処理装置13を制御するための各種データを記憶する。本実施形態では、記憶部52は、トルク範囲データベース61を記憶している。
【0026】
トルク範囲データベース61は、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクについて、米飯のほぐれ度合いを良好となる適正範囲を記憶したデータベースである。すなわち、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクと、当該米飯のほぐれ度合いとは、相関関係(対応関係)になっている。そのため、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクが、米飯のほぐれ度合いの指標値として利用できることを勘案し、米飯におけるほぐれ度合いの良品範囲に対応するトルクの適正範囲を予め取得しておき、トルク範囲データベース61に記憶している。具体的には、トルク範囲データベース61は、当該適正範囲におけるトルクの上限値及び下限値を記憶している。なお、米飯のほぐれ度合いとは、米飯をほぐしたときに、どの程度ほぐれるかの度合いであり、すなわち、米飯をほぐしたとき、米飯の米粒同士が塊りになる程度を示すものである。
【0027】
制御部51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成されており、炊飯装置11、成形装置12及び追加処理装置13を制御する。また、制御部51は、所定のプログラムを実行することで、炊飯装置制御部71、成形装置制御部72、追加処理装置制御部73、トルク検出部74、ほぐれ度合い判定部75及び炊飯油量調整部76として機能する。なお、ほぐれ判定装置は、トルクメータ43、トルク検出部74及びほぐれ度合い判定部75によって構成されている。
【0028】
炊飯装置制御部71は、炊飯装置11を制御して、米飯の炊飯を行う。具体的には、炊飯装置制御部71は、米供給部23を制御して、設定米量だけ、炊飯釜21に米を供給する。また、炊飯装置制御部71は、水供給部24を制御して、設定炊飯水量だけ、炊飯釜21に水を供給する。また、炊飯装置制御部71は、油供給部25を制御して、設定炊飯油量だけ、炊飯釜21に炊飯油を供給する。また、炊飯装置制御部71は、ヒータ22を制御して、米、水及び炊飯油が入れられた炊飯釜21を加熱して、米飯の炊飯を行う。本実施形態では、設定米量を変更することで、炊飯時の米量を調整することができ、設定炊飯水量を変更することで、炊飯時の炊飯水量を調整することができ、設定炊飯油量を変更することで、炊飯時の炊飯油量(添加量)を調整することができるようになっている。
【0029】
成形装置制御部72は、成形装置12を制御して、炊飯装置11によって炊飯された米飯をおにぎり状に成形する。具体的には、成形装置制御部72は、ほぐし部32を制御して、米飯をほぐす。また、成形装置制御部72は、米飯量調整部33を制御して、おにぎり1個分だけ米飯を分別する。また、成形装置制御部72は、成形部34を制御して、米飯をおにぎり状に成形する。
【0030】
追加処理装置制御部73は、追加処理装置13を制御して、米飯内への具の充填、米飯に対する調味料の塗布、米飯への海苔の装着等を行う。
【0031】
トルク検出部74は、ほぐし部32におけるトルクメータ43の測定値を受け付けて、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクを検出する。本実施形態では、米飯のほぐれ度合いと、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクが相関関係にあることを鑑み、ほぐれ度合いの指標値として、当該トルクを検出する。
【0032】
ほぐれ度合い判定部75は、トルク検出部74によって検出した、米飯をほぐすときのほぐし部32のトルクに基づいて、当該米飯のほぐれ度合いの良否を判定する。具体的には、ほぐれ度合い判定部75は、トルク検出部74によって検出したほぐし部32のトルクが、トルク範囲データベース61に記憶された適正範囲内であるか否かを判定する。より具体的には、ほぐれ度合い判定部75は、トルクが適正範囲における下限値未満か、トルクが適正範囲における下限値以上かつ上限値以下か、トルクが適正範囲における上限値を超えているか、を判定する。
【0033】
炊飯油量調整部76は、ほぐれ度合い判定部75による判定結果に基づいて、炊飯装置制御部71における設定炊飯油量を変更する。具体的には、炊飯油量調整部76は、ほぐれ度合い判定部75によってトルクが適正範囲内でないと判定された場合、設定炊飯油量を変更して炊飯油量を調整する。より具体的には、炊飯油量調整部76は、トルクが適正範囲における下限値未満であると判定された場合、ほぐれ度合いが高すぎると評価し、設定炊飯油量を一定量(例えば、米に対して0.1質量%)減少させる。一方、炊飯油量調整部76は、トルクが適正範囲における上限値超であると判定された場合、ほぐれ度合いが低すぎると評価し、設定炊飯油量を一定量(例えば、米に対して0.1質量%)増加させる。このように、トルクに基づいてほぐれ度合いをフィードバックして炊飯油量を更新することで、最適なほぐれ度合いの米飯でおにぎり(飯類)を作成することができる。
【0034】
(おにぎり作成動作)
次に図3を参照して、おにぎり作成装置1によるおにぎり作成動作について説明する。このおにぎり作成動作は、米飯を炊飯し、炊飯した米飯によっておにぎりを作成する動作であり、制御端末14の制御の下に行われる。なお、おにぎり作成動作は、米飯作成方法の一例である。
【0035】
図3に示すように、制御端末14は、まず、炊飯装置制御部71によって、炊飯装置11を制御し、米飯を炊飯する(S1~S4)。すなわち、炊飯装置制御部71によって、米供給部23を制御し、炊飯釜21に設定米量だけ米を供給する(S1)。また、炊飯装置制御部71によって、水供給部24を制御し、炊飯釜21に設定炊飯水量だけ水を供給する(S2)。また、炊飯装置制御部71によって、油供給部25を制御し、炊飯釜21に設定炊飯油量だけ炊飯油を供給する(S3)。炊飯釜21に、米、水及び油を入れたら、炊飯装置制御部71によって、ヒータ22を制御し、炊飯釜21を加熱して、米飯を炊飯する(S4)。
【0036】
米飯を炊飯したら、炊飯した米飯を成形装置12に搬送し、攪拌ケース31に導入する(S5)。炊飯した米飯を攪拌ケース31に導入したら、成形装置12によって、ほぐし部32を制御して、攪拌ケース31に導入された米飯をほぐす(S6)。
【0037】
ここで、トルク検出部74によって、米飯をほぐしたときのほぐし部32のトルクを検出する(S7)(トルク検出工程)。すなわち、トルク検出部74によって、トルクメータ43からトルクの測定値を受け付けて、ほぐし部32のトルクを取得する。
【0038】
ほぐし部32のトルクを取得したら、ほぐれ度合い判定部75によって、ほぐれ度合いの良否を判定する(S8)(ほぐれ度合い判定工程)。すなわち、検出したほぐし部32のトルクが、トルク範囲データベース61に記憶された適正範囲における下限値未満であるか、トルク範囲データベース61に記憶された適正範囲における上限値を超えているか、トルク範囲データベース61に記憶された適正範囲における下限値以上かつ上限値以下であるか、をほぐれ度合い判定部75によって判定する。なお、ほぐれ判定方法は、トルク検出工程(S7)及びほぐれ度合い判定工程(S8)によって構成されている。
【0039】
ほぐれ度合いの良否を判定したら、炊飯油量調整部76によって、S8の判定結果に基づき、炊飯装置11の炊飯における炊飯油量を調整する(S9~S11)(調整工程)。すなわち、トルクが適正範囲における下限値未満であると判定された場合(S9:A)、設定炊飯油量を一定量(例えば、米に対して0.1質量%)減少させる(S10)。一方、トルクが適正範囲における上限値超であると判定された場合(S9:B)、設定炊飯油量を一定量(例えば、米に対して0.1質量%)増加させる(S11)。
【0040】
その後、成形装置制御部72によって、米飯量調整部33を制御し、おにぎり1個分、米飯を分別する(S12)。その後、成形装置制御部72によって、成形部34を制御し、分別された米飯をおにぎり状に成形する(S13)。そして、米飯の成形途中又は成形後に、追加処理装置制御部73によって、追加処理装置13を制御し、米飯に対し追加処理を行う(S14)。これにより、おにぎりを作成し、本おにぎり作成動作を終了する。
【0041】
(試験装置及び試験方法)
次に図4を参照して、トルク範囲データベース61を作成するための試験装置101及び試験方法について説明する。図4に示すように、試験装置101は、米飯を導入される攪拌ケース111と、攪拌ケース111に導入された米飯を攪拌するパドル112と、パドル112を回転駆動する駆動モータ113と、駆動モータ113とパドル112との間に介設され、駆動モータ113のトルクを検出するトルクメータ114と、を備えている。パドル112、駆動モータ113及びトルクメータ114は、成形装置12のパドル41、駆動モータ42及びトルクメータ43と同様のものを用いる。なお、攪拌ケース111は、その底面を、パドル112の回転軌跡に倣う半円状に形成することが好ましい。
【0042】
この試験装置101を用いた試験方法では、異なる炊飯油量で炊飯された米飯を複数用意し、当該複数の米飯によって複数回のトルク試験を行う。トルク試験では、米飯を攪拌ケース111に導入した状態で駆動モータ113を駆動して当該米飯をほぐし、当該米飯をほぐしたときのトルクをトルクメータ114によって検出すると共に、当該米飯のほぐれ度合いの良否を人の官能(目視又は喫食)によって評価する。なお、トルク試験は、米飯の量200g、米飯の温度20℃~25℃の条件で行い、トルクの検出値は、6~20回転の各回転の測定値における平均値を用いる。また、回転速度及び米の銘柄は、おにぎり作成装置1と同一とすることが好ましい。複数回のトルク試験で得られた各トルク試験におけるトルクの検出値とほぐれ度合いの良否との組によって、ほぐれ度合いが良好となるトルクの適正範囲の下限値及び上限値を取得し、トルク範囲データベース61に記憶する。
【0043】
なお、複数回のトルク試験で得られたトルクの適正範囲の下限値及び上限値をそのまま、おにぎり作成装置1に用いる構成であってもよいし、試験装置101とおにぎり作成装置1のほぐし部32との環境等の違いを考慮し、下限値及び上限値を環境等の違いに基づいて補正して用いる構成であってもよい。また、下限値及び上限値を補正する補正値について、おにぎり作成装置1においても上記トルク試験を行い、試験装置101での試験結果と、おにぎり作成装置1での試験結果とを比較して、当該補正値を算出する構成であってもよい。
【0044】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができる。すなわち、従来の構成では、おにぎりの作成の都度、人の官能によってほぐれ度合いを判定していたため、米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができなかった。これに対し、上記実施形態の構成では、ほぐし部32のトルクを指標値とし、当該トルクに基づいて機械的にほぐれ度合いを判定する構成であるため、米飯のほぐれ度合いを正確に判定することができる。また、米飯を喫食する等の手間がなく、米飯のほぐれ度合いを容易かつ瞬時に判定することができる。
【0045】
また、上記実施形態の構成によれば、ほぐし部32のトルクに基づいて判定したほぐれ度合いに基づき、炊飯油量を調整する構成であるため、米飯のほぐれ度合いを良好にするための炊飯油量の調整を精度良く行うことができる。また、米飯のほぐれ度合いを容易かつ瞬時に判定することができるため、当該炊飯油量の調整を容易かつ瞬時に行うことができる。
【0046】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、成形装置12によって米飯をおにぎり状に成形し、おにぎりを作成する構成であったが、米飯を容器に充填して例えば弁当用の御飯を作成する構成であってもよく、また、成形装置12によって米飯を円柱状又は円筒状に成形し、海苔巻きを作成する構成等であってもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、米飯のほぐれ度合いの良否に基づいて、炊飯油量を調整する構成であったが、米飯のほぐれ度合いの良否に基づいて、炊飯水量を調整する構成であってもよい。すなわち、おにぎり作成装置1が、炊飯油量調整部76に代えて、ほぐれ度合い判定部75によってトルクが適正範囲内でないと判定された場合、米飯の炊飯における炊飯水量を調整する炊飯水量調整部を備え、調整工程(S9~S11)において、米飯のほぐれ度合いの良否に基づき、炊飯水量を調整する構成であってもよい。また、炊飯油量調整部76と炊飯水量調整部との両方を備え、炊飯油量及び炊飯水量の両方を調整する構成であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、米飯のほぐれ度合いの良否に基づいて、炊飯油量を調整する構成であったが、米飯のほぐれ度合いの良否に基づいて、米飯の炊飯における炊飯油の種類を調整(変更)する構成であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、炊飯時に炊飯油を入れ、入れる炊飯油量を調整することで、米飯のほぐれ度合いを調整する構成であったが、炊飯時に炊飯改良剤を入れ、入れる炊飯改良剤の量を調整することで、米飯のほぐれ度合いを調整する構成であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、試験装置101による試験によって取得したトルクの適正範囲(上限値及び下限値)を用いてほぐれ度合いの判定を行う構成であったが、ほぐれ度合いの判定に用いるトルクの適正範囲を、実機、すなわち、成形装置12によるトルク試験によって取得する構成であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、ほぐれ度合い判定部75において、攪拌ケース31に入れられる米飯の量(以下、攪拌米飯量)に係わらず、共通の適正範囲のデータを用いる構成であったが、単位時間当たりの攪拌米飯量毎の適正範囲をトルク範囲データベース61に記憶し、単位時間当たりの攪拌米飯量によって、ほぐれ度合いの判定に用いる適正範囲を切り替える構成であってもよい。また、米の銘柄毎の適正範囲をトルク範囲データベース61に記憶し、米の銘柄によって、ほぐれ度合いの判定に用いる適正範囲を切り替える構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、ほぐれ度合い判定部75による判定結果に基づいて、炊飯油量を調整する構成であったが、ほぐれ度合い判定部75による判定結果を報知する構成であってもよい。すなわち、おにぎり作成装置1が、ほぐれ度合い判定部75によって判定したほぐれ度合いの良否を報知する報知部を、更に備える構成であってもよい。例えば、報知部は、トルクが適正範囲における下限値未満であると判定された場合、ほぐれ度合いが高すぎる旨を報知し、トルクが適正範囲における上限値未満であると判定された場合、ほぐれ度合いが低すぎる旨を報知する。
【0054】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施形態から把握される技術思想について、実施形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、請求の範囲における構成要素を実施形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0055】
《1》炊飯した米飯をほぐし、ほぐした前記米飯によって飯類を作成する飯類作成装置(1)であって、モータ駆動で前記米飯をほぐすほぐし部(32)と、前記米飯をほぐすときの前記ほぐし部(32)のトルクを検出するトルク検出部(74)と、前記トルク検出部(74)によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部(75)と、を備えたことを特徴とする飯類作成装置(1)。
《2》前記ほぐれ度合い判定部(75)は、前記トルク検出部(74)によって検出した前記トルクが、前記ほぐれ度合いが良好となる適正範囲内であるか否かを判定することを特徴とする《1》に記載の飯類作成装置(1)。
《3》前記ほぐれ度合い判定部(75)によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、米飯の炊飯における炊飯油量を調整する炊飯油量調整部(76)を、更に備えたことを特徴とする《2》に記載の飯類作成装置(1)。
《4》前記ほぐれ度合い判定部(75)によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、米飯の炊飯における炊飯水量を調整する炊飯水量調整部を、更に備えたことを特徴とする《2》又は《3》に記載の飯類作成装置(1)。
《5》前記ほぐれ度合い判定部(75)によって判定したほぐれ度合いの良否を報知する報知部を、更に備えたことを特徴とする《1》乃至《4》のいずれか1つに記載の飯類作成装置(1)。
《6》モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部(32)のトルクを検出するトルク検出部(74)と、前記トルク検出部(74)によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定部(75)と、を備えたことを特徴とするほぐれ判定装置。
《7》モータ駆動で米飯をほぐすほぐし部(32)のトルクを検出するトルク検出工程(S7)と、前記トルク検出工程(S7)によって検出した前記トルクに基づいて、前記米飯のほぐれ度合いの良否を判定するほぐれ度合い判定工程(S8)と、を実行することを特徴とするほぐれ判定方法。
《8》米飯を炊飯し、炊飯した前記米飯をほぐし、ほぐした前記米飯によって飯類を作成する飯類作成方法であって、モータ駆動で前記米飯をほぐすほぐし部(32)のトルクを検出するトルク検出工程(S7)と、前記トルク検出工程(S7)によって検出した前記トルクが、前記米飯のほぐれ度合いが良好となる適正範囲内であるか否かを判定するほぐれ度合い判定工程(S8)と、前記ほぐれ度合い判定工程(S8)によって前記トルクが前記適正範囲内でないと判定された場合、前記米飯の炊飯における炊飯油量又は炊飯水量を調整する調整工程(S9~S11)と、を実行することを特徴とする飯類作成方法。
【符号の説明】
【0056】
1:おにぎり作成装置、 14:制御端末、 32:ほぐし部、 74:トルク検出部、 75:ほぐれ度合い判定部、 76:炊飯油量調整部
図1
図2
図3
図4