(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172541
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基板処理システム及び表示方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241205BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241205BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090326
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹永 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】康 榮太
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BB16
5F004BB19
5F004BB29
5F004BD04
5F004CA08
5F045AA08
5F045AF03
5F045BB02
5F045DP19
5F045DP28
5F045EB03
5F045EB10
5F045EC05
5F045EF03
5F045EF09
5F045EF11
5F045EK06
5F045EM09
5F045EM10
5F045GB13
5F045GB17
(57)【要約】
【課題】基板処理結果のサマリーデータから基板上の面内分布を推定する。
【解決手段】複数枚の基板を処理容器内に搬送するボートを有する基板処理装置と、前記基板処理装置における基板処理結果を測定する測定器と、前記基板処理結果に基づき、基板上の複数点における基板処理結果を推定する情報処理装置と、を備える基板処理システムが提供される。基板処理システムの前記情報処理装置は、測定した前記基板処理結果から抽出されたサマリーデータを入力する入力部と、前記サマリーデータに基づき前記複数点における基板処理結果を示す複数の推定値を演算する演算部と、前記複数の推定値を表示装置に表示する表示制御部と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を処理容器内に搬送するボートを有する基板処理装置と、
前記基板処理装置における基板処理結果を測定する測定器と、
前記基板処理結果に基づき、基板上の複数点における基板処理結果を推定する情報処理装置と、
を備える基板処理システムであって、
前記情報処理装置は、
測定した前記基板処理結果から抽出されたサマリーデータを入力する入力部と、
前記サマリーデータに基づき前記複数点における基板処理結果を示す複数の推定値を演算する演算部と、
前記複数の推定値を表示装置に表示する表示制御部と、
を有する基板処理システム。
【請求項2】
前記測定器は、前記基板処理結果として膜厚を測定し、
前記入力部は、測定した前記膜厚から抽出された膜厚に関する前記サマリーデータを入力し、
前記演算部は、前記サマリーデータから前記複数点における膜厚の推定値を演算する、
請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記サマリーデータは、基板上の平均膜厚及び膜厚形状を少なくとも含む、
請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記サマリーデータは、前記膜厚形状が凹型又は凸型の場合、測定した前記膜厚の最大値と最小値の差分を含む、
請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記サマリーデータは、前記膜厚形状がM字型又はW字型の場合、測定した前記膜厚のうち基板の中心の膜厚、基板の中間の平均膜厚及び基板の外周の平均膜厚を含む、
請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項6】
入力条件を記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記サマリーデータが前記入力条件を満たすかを判定する判定部と、を有し、
前記演算部は、前記サマリーデータが前記入力条件を満たすと判定された場合、前記サマリーデータから前記複数の推定値を演算する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記サマリーデータが前記入力条件を満たさないと判定された場合、前記サマリーデータが前記入力条件を満たさないことを表示する、
請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記入力部は、目標となる膜厚形状を入力し、
前記演算部は、前記複数の推定値から算出される膜厚形状と前記目標となる膜厚形状とのギャップを埋めるようなプロセス条件を算出し、
制約条件を記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記プロセス条件が前記制約条件を満たすかを判定する判定部と、を有し、
前記表示制御部は、前記プロセス条件が前記制約条件を満たすと判定された場合、前記プロセス条件を表示装置に表示する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記プロセス条件が前記制約条件を満たさないと判定された場合、前記制約条件を超えていることを表示する、
請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
複数枚の基板を処理容器内に搬送するボートを有する基板処理装置と、
前記基板処理装置における基板処理結果を測定する測定器と、
前記基板処理結果に基づき、基板上の複数点における基板処理結果を推定する情報処理装置と、
を備える基板処理システムにおける表示方法であって、
測定した前記基板処理結果から抽出されたサマリーデータを入力することと、
前記サマリーデータに基づき前記複数点における基板処理結果を示す複数の推定値を演算することと、
前記複数の推定値を表示装置に表示することと、
を有する表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理システム及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、基板を熱処理する熱処理装置を提案する。熱処理装置は、測定した熱処理結果と、目標とする熱処理結果と、熱処理変化モデルとに基づいて、目標とする熱処理結果となる温度および圧力を算出する算出手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理結果のサマリーデータから基板上の面内分布を推定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、複数枚の基板を処理容器内に搬送するボートを有する基板処理装置と、前記基板処理装置における基板処理結果を測定する測定器と、前記基板処理結果に基づき、基板上の複数点における基板処理結果を推定する情報処理装置と、を備える基板処理システムが提供される。基板処理システムの前記情報処理装置は、測定した前記基板処理結果から抽出されたサマリーデータを入力する入力部と、前記サマリーデータに基づき前記複数点における基板処理結果を示す複数の推定値を演算する演算部と、前記複数の推定値を表示装置に表示する表示制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、基板処理結果のサマリーデータから基板上の面内分布を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図2】一実施形態に係る基板処理システムの一例を示す構成図。
【
図3】一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図4】一実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す図。
【
図5】一実施形態に係るサマリーデータ及び膜厚推定値の一例を示す図。
【
図6】一実施形態に係る表示方法の一例を示すフローチャート。
【
図7】一実施形態に係るサマリーデータを説明するための図。
【
図8】近似モデルに基づきサマリーデータから膜厚推定値を算出する方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理装置]
複数枚の基板に所望の成膜処理を行うバッチ式の基板処理装置について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る基板処理装置10の一例を示す断面模式図である。基板処理装置10は、複数枚のウェハ2を処理容器11に収容し、複数枚のウェハに同時に膜を成膜する。
【0010】
基板処理装置10は、複数枚のウェハ2を処理するバッチ式の縦型熱処理装置である。ただし、基板処理装置10は、バッチ式の熱処理装置に限らない。例えば、基板処理装置10は、ウェハを一枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。また、基板処理装置10は、数枚の基板を一括処理するセミバッチ式の装置であってもよい。セミバッチ式の装置は、回転テーブルの回転中心線の周りに配置した複数枚のウェハを、回転テーブルと共に回転させ、異なるガスが供給される複数の領域を順番に通過させる装置でもよい。また、基板処理装置10は、成膜装置に限らず、エッチング装置やスパッタ装置等、基板を処理可能な装置であってよい。
【0011】
基板処理装置10は、ウェハ2を収容し、ウェハ2が処理される空間を内部に形成する処理容器11と、処理容器11の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体20と、ウェハ2を保持するボート30とを有する。ウェハ2は、例えば半導体基板(単に「基板」ともいう。)であって、例えばシリコンウェハである。
【0012】
処理容器11は、下端が開放された有天井の円筒形状の処理容器の本体12を有する。処理容器の本体12は、例えば石英により形成される。処理容器の本体12の下端には、フランジ部13が形成される。また、処理容器11は、例えば円筒形状のマニホールド14を有する。マニホールド14は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド14の上端にはフランジ部15が形成され、そのフランジ部15には処理容器の本体12のフランジ部13が設置される。フランジ部15とフランジ部13との間には、Oリング等のシール部材16が配置される。
【0013】
蓋体20は、マニホールド14の下端の開口に、Oリング等のシール部材21を介して気密に取り付けられる。蓋体20は、例えばステンレス鋼により形成される。蓋体20の中央部には、蓋体20を垂直方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴には、回転軸24が配置される。蓋体20と回転軸24の隙間は、磁性流体シール部23によってシールされる。回転軸24の下端部は、昇降部25のアーム26に回転自在に支持される。回転軸24の上端部には、回転プレート27が設けられる。回転プレート27上には、保温台28を介してボート30が設置される。
【0014】
ボート30は、複数枚のウェハ2を垂直方向に保持する。例えば200枚のウェハ2を保持できるボート30では、1~200のスロット番号が付与されたスロットが垂直方向に配置され。各スロットにウェハ2を配置することにより、複数枚のウェハ2がそれぞれ水平に間隔をおいて保持される。ボート30は、例えば石英(SiO2)または炭化珪素(SiC)により形成される。昇降部25を上昇させると、蓋体20およびボート30が上昇し、ボート30が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。また、昇降部25を下降させると、蓋体20およびボート30が下降し、ボート30が処理容器11の外部に搬出される。また、回転軸24を回転させると、回転プレート27と共にボート30が回転する。
【0015】
基板処理装置10は、3本のガス供給管40A、40B、40Cを有する。ガス供給管40A、40B、40Cは、例えば石英(SiO2)により形成される。ガス供給管40A、40B、40Cは、処理容器11の内部にガスを供給する。ガスの種類については後述する。なお、1本のガス供給管が1種類又は複数種類のガスを順番に吐出してもよい。また、複数本のガス供給管が同じ種類のガスを吐出してもよい。
【0016】
ガス供給管40A、40B、40Cは、マニホールド14を水平に貫通する水平管43A、43B、43Cと、処理容器11の内部に鉛直に配置される鉛直管41A、41B、41Cを有する。鉛直管41A、41B、41Cは、垂直方向に間隔をおいて複数の給気口42A、42B、42Cを有する。水平管43A、43B、43Cに供給された各種ガスは、鉛直管41A、41B、41Cに送られ、複数の給気口42A、42B、42Cから水平に吐出される。鉛直管41Cは、プラズマボックス19内に配置されている。鉛直管41A、41Bは、処理容器11内に配置されている。
【0017】
基板処理装置10は、排気管45を有する。排気管45は、図示しない排気装置に接続される。排気装置は、真空ポンプを含み、処理容器11の内部を排気する。処理容器11の内部を排気すべく、処理容器の本体12には排気口18が形成される。その排気口18は、給気口42A、42B、42Cと対向するように配置される。給気口42A、42B、42Cから水平に吐出されたガスは、排気口18を通った後、排気管45から排気される。排気装置は、処理容器11の内部のガスを吸引して除害装置に送る。除害装置は、排気ガスの有害成分を除去したうえで排気ガスを大気に放出する。
【0018】
基板処理装置10は、更に加熱部60を有する。加熱部60は、処理容器11の外部に配置され、処理容器11の外側から処理容器11の内部を加熱する。例えば、加熱部60は、処理容器の本体12を取り囲むように円筒形状に形成される。加熱部60は、例えば電気ヒータで構成される。加熱部60は、処理容器11の内部を加熱することにより、処理容器11内に供給されるガスの処理能力を向上させる。
【0019】
処理容器の本体12の周方向の一部には開口部17が形成される。その開口部17を囲むように、プラズマボックス19が処理容器11の側面に形成される。プラズマボックス19は、処理容器の本体12から径方向外方に突き出すように形成され、例えば垂直方向視でU字状に形成される。
【0020】
プラズマボックス19を挟むように一対の電極対が配置される。電極対は、プラズマボックス19の外側に対面して設置した一対の並行電極である。電極対は、鉛直管41Cと同様に、互いに対向して垂直方向に細長く形成される。電極対は、整合器を介してRF電源に接続され、RF電源から高周波電圧を印加される。
【0021】
基板処理装置10は、制御装置100を有する。制御装置100は、種々の基板処理工程を基板処理装置10に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御装置100は、種々の基板処理工程を実行するように基板処理装置10の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御装置100の一部又は全てが基板処理装置10に含まれてもよい。制御装置100は、処理部、記憶部及び通信インターフェースを含んでもよい。制御装置100は、例えばコンピュータにより実現される。処理部は、記憶部からレシピ及びプログラムを読み出し、読み出されたレシピ及びプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。レシピ及びプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。処理部はCPUであってもよい。記憶部は、RAM、ROM、HDD等であってもよい。通信インターフェースは、LAN等の通信ネットワークを介して基板処理装置10と測定器200と情報処理装置300(
図2参照)との間で通信してもよい。
【0022】
[基板処理システム]
次に、基板処理システム1について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、一実施形態に係る基板処理システム1の一例を示す構成図である。基板処理システム1は、基板処理装置10、測定器200及び情報処理装置300を有し、これらの機器が、インターネットやLANなどの通信ネットワークNを介してデータ通信可能に接続されている。制御装置100は、基板処理装置10に組み込まれている。
【0023】
図1に示すように、基板処理装置10は、複数枚のウェハ2が載置されたボート30を処理容器11内に搬入して複数枚のウェハ2上に成膜を実施する。測定器200は、基板処理装置10で成膜されたウェハ2のうち、モニタウェハの測定点の膜厚を測定する。測定器200としては、たとえば、エリプソメータ又は光学干渉計(一例として、UV干渉計)等を用いることができる。
【0024】
測定器200により測定された、モニタウェハの測定点の膜厚(膜厚測定値)は、作業者の操作に従い情報処理装置300に入力される。モニタウェハの測定点の数及び測定点の座標は、予めパラメータに設定されている。情報処理装置300は、膜厚測定値に基づき、基板上の複数点における膜厚を推定する。以下では、測定器200が測定する測定値は膜厚であることを前提に説明するが、基板処理結果を示す測定値は膜厚に限らない。情報処理装置300は、基板処理結果に基づき、基板上の複数点における基板処理結果を推定することができる。
【0025】
従来、情報処理装置300は、複数の測定点のそれぞれにおける複数の膜厚測定値に基づき、ウェハ2上に形成された膜厚の面内形状を把握し、目標となる膜厚の面内形状とのギャップ(差)を埋めるようなプロセス条件を算出し、レシピを最適化していた。
【0026】
この手法では、基板処理装置10においてウェハ2の面内均一性の最適化計算を行うには、ウェハ2内の測定点に対応する膜厚をすべて入力する必要があった。例えば、測定点が49点の場合、測定点(49)×モニタウェハ枚数分の膜厚測定値の入力が必要であり、作業者の操作負担が大きい。また、面内均一性の最適化計算の計算精度を確保するためには、測定点とモニタウェハ枚数のデータ数は多い方が望ましい。
【0027】
成膜結果の膜厚測定値を情報処理装置300に転送することができる場合、転送された膜厚測定値を、成膜結果を示す表にコピー&ペーストすればよい。しかし、成膜結果を情報処理装置300に転送できない場合には、ウェハ2上の膜厚の面内均一性の最適化計算ができない。例えば、情報管理の運用の都合上、膜厚測定値を、基板処理装置10が配置された工場の外部に持ち出せない場合、上記の測定点とそれに対応する膜厚測定値のすべてをメモした後に手動で情報処理装置300に入力する必要がある。また、膜厚測定値のほとんどは小数点以下まで有し、作業者の負荷が大きい。一方、膜厚測定値のデータ量が少ないと、膜厚の面内均一性の最適化計算が困難になる場合もある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置300では、測定点×モニタウェハ枚数分の膜厚測定値の入力の替わりに、基板処理結果から抽出されたサマリーデータの入力で代用する。そして、入力されたサマリーデータから複数の測定点における膜厚推定値を近似して算出する。これにより、ウェハ2上の膜厚の面内形状(面内分布)を推定できる。演算した複数の推定値は、制御装置100や基板処理装置10が有するディスプレイ等の表示装置に表示される。これにより、測定点×モニタウェハ枚数分の膜厚測定値の入力を不要とし、作業者の操作負担を軽減しつつ、複数の膜厚推定値に基づき、膜厚の面内均一性の最適化計算を実施することができる。
【0029】
本実施形態では、情報処理装置300は、推定した複数の測定点における複数の膜厚測定値に基づき、ウェハ2上の膜厚の面内形状を把握し、目標となる膜厚の面内形状とのギャップを埋めるようなプロセス条件を算出し、レシピを最適化する。
【0030】
使用するレシピの最適化を行う際、情報処理装置300は、例えば膜厚等といった基板処理結果を示す測定値を入力することが多い。レシピ最適化装置230は、測定値を入力し、その測定値が示す基板処理結果を目標値に近づけるために、圧力、温度等のレシピの設定値の最適化を行う。
【0031】
最適化されたレシピは、情報処理装置300から制御装置100に送信される。制御装置100は、最適化されたレシピに基づき基板処理装置10を制御する。これにより、制御装置100は、最適化されたレシピに基づき、更に目標の成膜に近づけるように基板処理装置10を制御することができる。
【0032】
なお、
図2の基板処理システムは一例であって、情報処理装置300と制御装置100とは一体化されて基板処理装置10に内蔵されていてもよく、基板処理装置10とは別体に設けられてもよい。また、通信ネットワークNに接続される基板処理装置10、情報処理装置300、測定器200の数は一つに限らず、二つ以上であってよい。レシピの最適化は、情報処理装置300とは別体のレシピ最適化装置で実施してもよい。
【0033】
[ハードウェア構成]
情報処理装置300は例えば
図3に示すハードウェア構成のコンピュータにより実現される。
図3は実施形態に係る情報処理装置300のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置300は、例えばコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)311、ROM(Read Only Memory)312、RAM(Random Access Memory)313を有する。また、情報処理装置300は、I/Oポート314、操作パネル315、HDD316(Hard Disk Drive)を有する。各部はバスBによって接続されている。
【0034】
CPU311は、ROM312やHDD316などの記憶装置からプログラムやデータをRAM313上に読み出し、基板処理を実行することで、情報処理装置300全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0035】
ROM312は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成され、CPU311が使用するプログラムを記憶する記憶媒体である。RAM313は、CPU311のワークエリア等として機能する。CPU311が使用するプログラムには、後述する表示方法を実行するためのプログラムが含まれる。
【0036】
I/Oポート314は、測定器200が測定した膜厚等の測定値を取得し、CPU311に送信する。また、I/Oポート314には、ユーザが情報処理装置300を操作する操作パネル315が接続されている。
【0037】
HDD316は補助記憶装置であり、プログラム等が格納されてもよい。また、HDD316には、測定器200が測定した膜厚等の基板処理結果を示すデータのログ情報が格納されてもよい。
【0038】
[機能構成]
次に、情報処理装置300の機能構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る情報処理装置300の機能構成の一例を示す。情報処理装置300は、入力部301、演算部302、判定部303、表示制御部304及び記憶部305を有する。
【0039】
入力部301は、基板処理結果を示す複数の測定値から抽出されたサマリーデータを入力する。本実施形態の場合、基板処理結果を示す複数の測定値の一例として膜厚を挙げて説明する。この場合、測定器200は、基板処理結果としての膜厚を測定し、入力部301は、測定した膜厚から抽出された膜厚に関するサマリーデータを入力する。記憶部305は、サマリーデータ306を記憶する。サマリーデータ306は、複数の膜厚測定値から導かれる膜厚形状と膜厚形状の特徴部分を数値化したデータである。
【0040】
図5(a)は、一実施形態に係るサマリーデータ306の一例を示す。
図5(a)の例では、サマリーデータ306は、スロット番号361、平均膜厚362、膜厚形状363、面内レンジ364、基板の中心膜厚365、基板の中間平均膜厚366及び基板の外周平均膜厚367を含む。
【0041】
スロット番号361は、ボート30に設けられたスロットの番号である。平均膜厚362は、各スロット番号に配置されたモニタウェハに形成された膜について、測定器200が測定した膜厚測定値の平均値である。膜厚形状363は、測定した膜厚測定値から推定される、モニタウェハ上の膜厚の面内形状(膜表面の形状)である。膜厚形状363は、自動で判断してもよいし、人が目視により判断してもよい。膜厚形状363は、フラット(平坦)、凹型、凸型、M字型(中間が凸型)、W字型(中間が凹型)のいずれかである。面内レンジ364は、面内形状が凹型又は凸型のときの、測定した膜厚の最大値と最小値の差分である。
【0042】
中心膜厚365、中間平均膜厚366及び外周平均膜厚367は、基板を中心点、中間領域、中間領域を囲む外周領域に分けたときの中心点の膜厚測定値、中間の膜厚測定値の平均値、外周の膜厚測定値の平均値をそれぞれ示す。
【0043】
バッチ式の基板処理装置10の場合、処理容器11の上側は下側よりも供給されるガス流量が少ない傾向があり、この場合、凹型又はW字型の膜厚形状になることがある。一方、処理容器11の下側はガス流量が多い傾向があり、この場合、凸型又はM字型の膜厚形状になることがある。また、ボート30の垂直方向で温度の揺らぎがあるため、複数枚のウェハ2において膜厚の面内均一性を図るときに膜厚測定値を見て温度制御を行うことが必要になってくる。
【0044】
これまでは、測定器200で測定した膜厚測定値を
図5(b)に一例を示す表等に入力していたが、入力作業中に入力ミスや抜けが生じることがある。また、
図5(b)の測定点(X,Y)毎に複数のスロット(スロット番号5,31、57、83、109)のそれぞれについて膜厚測定値を入力する必要があり作業者の負荷が大きい。膜厚測定値の入力量が少ない場合には、膜厚の面内均一性の最適化計算が困難になる場合もある。
【0045】
そこで、本実施形態では、
図5(b)に一例を示す表等への入力作業は不要であり、
図5(a)のサマリーデータの入力のみ行えばよい。情報処理装置300は、サマリーデータ及び近似モデルに基づき、
図5(b)の測定点(X,Y)毎に膜厚推定値を自動計算し、表示(出力)する。これにより、膜厚調整のために、作業者が膜厚を入力する手間を省くことができる。また、自動計算した膜厚推定値に基づき、膜厚の面内均一性の最適化計算を行うことができる。
【0046】
サマリーデータ306は、膜厚形状363の種類によって異なる情報が入力される。膜厚形状363がフラットな場合、サマリーデータ306は、スロット番号毎の平均膜厚362及び膜厚形状363である。膜厚形状363が凹型又は凸型の場合、サマリーデータ306は、スロット番号毎の平均膜厚362、膜厚形状363及び面内レンジ364である。膜厚形状363がM字型又はW字型の場合、サマリーデータ306は、スロット番号毎の平均膜厚362、膜厚形状363、中心膜厚365、中間平均膜厚366及び外周平均膜厚367である。
【0047】
このようにサマリーデータ306は、平均膜厚362及び膜厚形状363を含む。加えて、膜厚形状363が凹型又は凸型の場合、サマリーデータ306は更に面内レンジ364を含み、膜厚形状363がM字型又はW字型の場合、サマリーデータ306は更に中心膜厚365、中間平均膜厚366及び外周平均膜厚367を含む。
【0048】
演算部302は、サマリーデータ306に基づき、複数点における基板処理結果を示す複数の推定値を演算する。例えば、演算部302は、膜厚の面内分布の情報として複数点(例えば複数の測定点)における膜厚推定値を近似して算出する。膜厚推定値は、基板処理結果を示す複数の推定値の一例である。
【0049】
判定部303は、記憶部305を参照し、サマリーデータ306が入力条件307を満たすかを判定する。入力条件307は予め記憶部305に記憶されている。
【0050】
演算部302は、サマリーデータ306が入力条件307を満たすと判定された場合、サマリーデータ306から複数の推定値を演算する。
【0051】
表示制御部304は、サマリーデータ306が入力条件307を満たさないと判定された場合、サマリーデータ306が入力条件307を満たさないことを表示(通知)する。サマリーデータ306として例えば桁違いの入力値が入力された場合に、判定部303は、サマリーデータ306が入力条件307を満たさないと判定し、表示制御部304は、膜厚等の入力桁が間違えていることを表示する。
【0052】
レシピの最適化のために、入力部301は、例えば目標となる膜厚形状(膜厚の面内形状)を入力する。演算部302は、複数の膜厚推定値から算出される膜厚形状(膜厚の面内形状)と目標となる膜厚形状とのギャップ(差)を埋めるようなプロセス条件を算出する。
【0053】
判定部303は、算出したプロセス条件が制約条件308を満たすかを判定する。制約条件308は予め記憶部305に記憶されている。表示制御部304は、プロセス条件が制約条件308を満たさないと判定された場合、装置の制約条件308に抵触すると判断し、プロセス条件が制約条件を超えているため、十分な改善効果が得られないことを表示(通知)する。一方、プロセス条件が制約条件308を満たすと判定された場合、そのプロセス条件によりレシピが最適化され、最適化されたレシピに基づき、基板処理装置10において次の成膜処理が実行される。
【0054】
なお、入力部301は、例えば操作パネル315及びI/Oポート314により実現される。演算部302、判定部303、表示制御部304は、例えばCPU311により実現される。記憶部305は、例えばROM312、RAM313、HDD316により実現される。
【0055】
[補正方法]
図6~
図8を参照しながら、一実施形態に係る表示方法の一例について説明する。
図6は、一実施形態に係る表示方法の一例を示すフローチャートである。
図7は、一実施形態に係るサマリーデータを説明するための図である。
図8は、近似モデルに基づきサマリーデータから膜厚推定値を算出する方法を説明するための図である。
【0056】
本実施形態に係る表示方法は、情報処理装置300により実行される。測定器200による膜厚の測定は、基板処理装置10により基板処理される25枚のウェハが格納されたロット毎に少なくとも1枚のモニタウェハを用意して、そのモニタウェハに対して実施される。
【0057】
図6の表示方法の処理が開始されると、ステップS1において、入力部301は、成膜結果である膜厚測定値から抽出したサマリーデータ及び目標の膜厚形状を入力する。サマリーデータ及び目標の膜厚形状は記憶部305に記憶される。次に、ステップS2において、判定部303は、記憶部305に記憶した入力条件を参照して、入力したサマリーデータが入力条件を満たすかを判定する。入力条件としては、例えば平均膜厚362として取り得る通常の膜厚の範囲が設定されている。
【0058】
ステップS2において、判定部303は、入力したサマリーデータが入力条件を満たしていないと判定した場合、ステップS3において、表示制御部304は、サマリーデータが入力条件を満たさないことを表示(通知)する。例えば、サマリーデータの膜厚等の入力桁が間違えていたら、表示制御部304は、膜厚等の入力桁の間違えを表示する。そして、ステップS1に戻り、入力部301は新なサマリーデータ等を入力し、ステップS2の処理に進む。
【0059】
ステップS2において、判定部303は、入力したサマリーデータが入力条件を満たしていると判定した場合、ステップS4に進み、演算部302は、サマリーデータに基づき、膜厚の面内分布の近似を行う。これにより、演算部302は、複数点における成膜結果を示す複数の膜厚推定値を算出する。
【0060】
例えば、
図5(a)のスロット番号5に示すサマリーデータの膜厚形状363がフラットの場合、演算部302は、複数点における複数の膜厚推定値に平均膜厚を代入する。
【0061】
例えば、
図5(a)のスロット番号31,57に示すサマリーデータの膜厚形状363が凹型又は凸型の場合、演算部302は、近似式T=ar
2+b(式A)を使用して、ウェハ2の中心からの距離rの膜厚Tを算出する。ここで、aは膜厚形状、bはウェハ2の中心の膜厚を示す。
【0062】
膜厚形状363が凹型の場合、最外周の膜厚の近似式(式A)を変形すると、
図8(a)の曲線Aに示すように、最外周の膜厚が膜厚の最大値T
rmaxを示し、中心膜厚が膜厚の最小値T
r0を示す。よって、面内レンジ364は、最外周の膜厚から中心膜厚を引いた値になり、次の式で示される。
【0063】
Trmax-Tr0=armax
2+Tr0-Tr0
以上から式(1)が導かれる。
【0064】
【数1】
膜厚形状363が凸型の場合、最外周の膜厚の近似式(式A)を変形すると、
図8(b)の曲線Bに示すように、中心膜厚が膜厚の最大値T
r0を示し、最外周の膜厚が膜厚の最小値T
rmaxを示す。よって、面内レンジ364は、中心膜厚から最外周の膜厚を引いた値になり、次の式で示される。
【0065】
Trmax-Trmax=armax
2+Tr0-Trmax
以上から式(2)が導かれる。
【0066】
【数2】
式(1)、式(2)から、aが算出される。aは膜厚形状を示す値である。次にbを算出する。bは中心膜厚である。ウェハ1枚の平均膜厚T
aveは式(3)により算出される。
【0067】
【数3】
式(3)の「pointNum」は、中心からの距離が同じ測定点の数を指す。例えば、
図7に示す測定点を使用して近似する。式(4)をそれぞれの測定点について代入する。
【0068】
【数4】
入力された平均膜厚T
aveも代入して中心膜厚T
r0を算出する。これにより、近似式(式A)T=ar
2+bのa(膜厚形状)、b(中心膜厚)が定まる。
【0069】
よって、演算部302は、膜厚形状363が凹型の場合、式(1)に基づき求めたa及び中心膜厚bを近似式(式A)に代入し、その近似式を用いて中心からの距離rから複数点(X,Y)における複数の膜厚推定値Tを算出する。
【0070】
また、演算部302は、膜厚形状363が凸型の場合、式(2)に基づき求めたa及び中心膜厚bを近似式(式A)に代入し、その近似式を用いて中心からの距離rから複数点(X,Y)における複数の膜厚推定値Tを算出する。
【0071】
膜厚形状363がM字型又はW字型の場合、演算部302は、中心膜厚365、中間平均膜厚366及び外周平均膜厚367をそのまま膜厚推定値に代入する。例えば、
図7に示すようにウェハ2の中心C、中間領域M、外周領域Eのそれぞれに測定点Dが設定されているとする。演算部302は、中心膜厚365をウェハ2の中心Cの測定点の膜厚推定値に代入する。また、演算部302は、中間平均膜厚366をウェハ2の中間領域M内の測定点の膜厚推定値に代入する。また、演算部302は、外周平均膜厚367をウェハ2の外周領域E内の測定点の膜厚推定値に代入する。例えば、
図5(a)のスロット番号83のサマリーデータから、中心Cの測定点の膜厚推定値に「5.00」を代入する。また、中間領域M内の測定点の膜厚推定値に「5.50」代入する。また、外周領域E内の測定点の膜厚推定値に「4.50」代入する。
【0072】
図6に戻り、次に、ステップS5において、演算部302は、面内調整のための最適化計算を実施する。具体的には、演算部302は、推定した複数の測定点における複数の膜厚測定値に基づき、ウェハ2面内の膜厚分布を把握し、目標となる膜厚の面内形状とのギャップを埋めるようなプロセス条件を算出し、レシピの最適化計算を実施する。
【0073】
次に、ステップS6において、判定部303は、算出した最適化計算結果のプロセス条件が制約条件308を満たすかを判定する。判定部303は、当該プロセス条件が制約条件308を満たすと判定した場合、ステップS8において、表示制御部304は、最適化計算結果のプロセス条件を表示装置に表示し、本処理を終了する。表示装置は、制御装置100や基板処理装置10のディスプレイであってよい。
【0074】
ステップS6において、判定部303は、当該プロセス条件が制約条件308を満たさないと判定した場合、ステップS7において、表示制御部304は、当該プロセス条件が基板処理装置10の制約条件を超えていることを表示(通知)する。例えば、基板処理装置10の性能以上の温度範囲を設定するプロセス条件は制約条件に違反する。このように最適化で変更して良い温度幅の制約条件や、基板処理装置10に設置されたヒーターパワー(温度制御)等の制約条件を満たしていない場合、表示制御部304は、制約条件を超えており、十分な改善効果が得られないことを通知する。その後、ステップS8において、表示制御部304は、最適化計算結果のプロセス条件を表示装置に表示し、本処理を終了する。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態の表示方法及び情報処理装置300によれば、ユーザが膜の面内調整を行うための膜厚測定値の入力の負荷を軽減できる。つまり、測定点×モニタウェハ枚数分の膜厚測定値の入力の替わりに、基板処理結果から抽出されたサマリーデータの入力で代用する。そして、入力されたサマリーデータから複数の測定点における膜厚推定値を近似して算出する。これにより、ウェハ2上の膜厚形状(膜厚の面内分布)を推定することができる。演算した複数の膜厚推定値は、例えば
図5(b)に示す表形式にして、制御装置100や基板処理装置10が有するディスプレイに表示される。これにより、測定点×モニタウェハ枚数分の膜厚測定値の入力を不要とし、作業者の操作負担を軽減することができる。例えば、情報管理の運用の都合上、膜厚測定値を、基板処理装置10が配置された工場の外部に持ち出せない場合でも、本実施形態に係る表示方法により作業者の負荷を軽減しつつ、膜厚の面内均一性の最適化計算が可能になる。
【0076】
今回開示された実施形態に係る表示方法及び情報処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 基板処理システム
2 ウェハ
10 基板処理装置
11 処理容器
30 ボート
100 制御装置
200 測定器
300 情報処理装置
301 入力部
302 演算部
303 判定部
304 表示制御部
305 記憶部